[[空蝉]] ジュカイン(♂)×人間(♂)で、ものすごく物足りない感じのエロです。 ポケモンと人間が普通に会話しているなんだかよくわからない世界観です。細かい事は気にしないでスルーしてください<(_ _)>。 ---- ついさっきまで賑わっていた母屋の方が、いつの間にか静かになっていた。夕方から始まった誕生日パーティーも、夜中近くなってようやくお開きになったらしい。 納屋を改造した離れの屋根の上で、ジュカインが一匹酔い覚ましがてら月見を楽しんでいる。 ここは随分人の手の入った田園地域だが、町に居る時よりは余程森の匂いが近くて心地良い。もっとも今の時期は、森の匂いよりも刈り取られた麦の乾いた匂いの方が強く漂っているが、それもまた良いものだとジュカインは思う。 久々に故郷に帰ってきた、そんな気分になれる匂いだ。 この土地を離れて久しい。遠い町で暮らしているので、此処に帰ってくるのは毎年この時期、ジュカインの主人の誕生日の頃だけだった。 「ブリッジ、此処?」 下の方から、青年の声が呼ぶ。ブリッジと呼ばれたそのジュカインは、「おう」と短く返事をした。 梯子が揺れる音がして、ほろ酔い顔の主人が屋根の上によじ登ってきた。 「おいヒロ、お前どんだけ呑んだんだよ。フラついてんぞ」 ブリッジは足元の覚束ない主の手を慌てて掴んで、自分の横に座らせた。 ブリッジの主───ヒロは、随分上機嫌でにこにこと笑いながら、夜風に冷やされたブリッジの肌に気持ち良さそうに密着して、甘えるようにもたれかかっている。 いつもならそうやってじゃれてくるヒロを「重い」だの「鬱陶しい」だのと言って追い払うのだが、今日だけは特別サービスで許してやることにした。 せっかくの誕生日なのだ。年に一度の主人公に、少しぐらいは良い思いをさせてやろうなどと考えて、ブリッジはヒロの肩を抱いてやる。 いつもならあり得ないブリッジのそんな優しい仕草に、ヒロはぷっと吹き出した。 「どういう風の吹き回しだか」 判っていてそうからかう。ブリッジはムッとしながらも、そのままヒロの肩を抱き続けた。 月明かりの落ちる屋根の上は、穏やかな静けさに包まれている。 秋虫の声と、防風林の梢が囁く声。 そして時折、身じろぐブリッジの身体から聞こえる葉擦れの声。 「誕生日おめでとう……」 長い沈黙の中、ぽつりとブリッジが呟いた。 ヒロはしばらく何も言葉を返さなかった。眠ってしまったのだろうかとブリッジが思った頃、ようやくヒロが顔を上げた。 「十年だ……」 脈絡のないヒロの言葉に、ブリッジは首を捻る。酔っぱらいのうわ言かとヒロの眼を覗き込むが、そこには不思議なほどはっきりとした意思が見てとれた。 ゆるぎのない瞳で、ブリッジをまっすぐに見上げてくる。ブリッジは思わず胸が高鳴るのを感じてしまった。 「俺がお前を知らなかった時間と、お前と出会ってからの時間が、今日でやっと同じ長さになった」 ああそうか、とブリッジは合点がいった。そういえば、ヒロは今日で二十歳になったのだった。 出会って十年。まだ声変わりもしていないあどけない少年だったヒロと、世間知らずの小さなキモリだった自分が、初めて出会ったのが、ヒロの十歳の誕生日の日だった。 行き当たりばったりで二人で旅をした。たくさんの困難、たくさんの喜びを、いつも二人で分かち合ってきた。 いつだったかヒロがトレーナーの道を諦めてしまったときも、ブリッジはヒロを見捨てず付き従った。 「こんな俺についてきてくれて、ありがとうな。ブリッジ」 神妙な声でヒロが感謝の言葉を告げる。ブリッジは何と返せば良いのか判らなかった。 ヒロの側に居る以外の選択肢など自分には無かった。一緒に居て当然だと思っていたから、感謝されるなどとは思いもよらなかった。 「この十年の上に、お前との時間がこれからも毎日毎日重なっていくんだ。お前を知らなかった俺の時間を遥かに超えて。だから今日、絶対に言いたかった」 ヒロはそこで一旦言葉を切った。 もたれかかっていた身体を起こし、真っ正面からブリッジを見つめる。 「これからも、俺の側に居て欲しい」 僅かの間を置いて、ブリッジはヒロを抱きしめていた。胸が震えるような愛しさと感動が沸き上がり、このままヒロをどうにかしてしまいたくなる。 ブリッジは大きく一呼吸して、その衝動を耐えた。 「……ああ、当然だ」 掠れた声でそう答えるのがやっとだった。 きつく回した腕の中で、ヒロが僅かに身じろいだ。見上げてくる眼が笑っている。 「なんだ。感激して襲いかかってくるかと思ったのに」 空気読めよとヒロが笑う。ブリッジは溜息をついて脱力した。 「お前何考えてる」 「ん、盛大に泣かせてもらおうとか」 少し酔った眼が、とろりとブリッジを見上げている。 大好きなヒロの顔が目の前にある。嬉しい筈なのに何故か逃げを打ってしまう自分自身が、ブリッジには情けなかった。 「ここはしんみり感動する場面だろうが……せっかく俺が我慢してんのに、どうしてそうなんだ、このガキは。一つ年とったんだから少しは大人になったらどうだ」 わざと逆撫でするような事を言ってやる。しかし反発するかと思ったヒロは、何故か悲しそうな顔をした。 「ずっとガキでいい……年なんてとらなくていいよ」 彼らしからぬ、駄々をこねるような声。泣き上戸なのかとブリッジは不思議そうにヒロを見下ろした。 「お前もガキのままでいいのに。進化して急に落ち着きやがって。ちっこいキモリだったくせに」 「おいおい……」 「俺が一つ年とる間に、お前は五つも六つも年食ってくような気がする。そんな急いで大人になるな。そんな急いで……」 ヒロの腕がきつく抱きついてきた。ブリッジの胸に顔をすりつける。 ブリッジは大きく溜息をついた。 「つまらん事を考えるな。大人になろうがガキのままだろうが、与えられた寿命は変えられん」 「いきなり核心つくなよっ!」 ヒロが顔を上げた。泣き顔と怒り顔が混じったような表情でブリッジを睨む。 「いずれ俺はお前を置いていく。一緒に過ごす時間があとどれぐらいあるか判らんが、その後お前は俺を失った時間を生きることになる」 ヒロは泣きそうに顔を歪めた。 「だが、それはずっと先のことだ。俺はまだ当分死ぬつもりは無いんでな」 ブリッジは立ち上がり、ヒロをひょいと抱き上げた 「来い。抱いてやる」 「ちょっ……ブリッジ!」 言い終わる前に、ブリッジは屋根から飛んでいた。 慣れない落下感にヒロは悲鳴を上げそうになるが、ブリッジにしがみついて何とか耐えた。 ブリッジはふわりと着地すると同時に、離れの建物の中にヒロを連れ込んだ。 「おま……唐突すぎ!」 「期待してんだろ」 ベッドにヒロを下ろし、そのまま覆い被さる。その手はもうヒロの服の中だ。 「展開早ッ!」 「そこでツッコまない」 テンポ良く掛け合ったところで、ブリッジがヒロの口を塞ぐ。長い舌でヒロの口腔を探り、舌を誘い出す。ヒロはすぐに応じた。濃厚に舌を絡め合いながら、時折ヒロが唇で吸う。 酔うように目を閉じてキスに没頭していたヒロが、ぴくりと小さく身体を跳ね上げた。 「可愛いねぇ」 口づけを解いたブリッジがにやにやしながら上から見下ろしている。器用な手はヒロの服をあらかた剥いでいた。 「さて、盛大に泣かせてやろうかね。もっとも俺が泣かせなくても勝手に泣いてるようだがな。この酔っぱらいは」 やわらかな肌の上に爪先を這わせながら、ブリッジは意地悪い笑みを見せた。 酔いのせいなのか、興奮のせいなのか、頬を火照らせたヒロがもどかしそうに身を蠢かせる。 「早く……しろ、我慢できそうにない」 ヒロの手がブリッジの身体をまさぐり、腹の下に露わになった猛りを捕まえる。少し酔った眼が、逃げを許さないとでも言いたげにブリッジを見据える。 「淫乱なご主人様だ」 屋根の上に居る時からブリッジ自身も相当追いつめられていた。もう強がりを見せるのも限界かもしれない。 ブリッジは性急にヒロを求めた。捕らわれた自身はそのままヒロに任せて、同じようにヒロのものを掴み扱き上げる。 片手でそうしておいて、残った片手でヒロの胸元の突起を摘んだり転がしたりして責める。悲鳴を上げようとする口はキスで封じた。 「ん……やっ、ブリッ……ジ」 急激に性感だけが高められて感情が取り残される。翻弄される熱い波の中で、ヒロは辛そうに喘ぎながら、無意識に自身の股間をブリッジの手にこすりつけていた。 「もっとか?我が儘だな」 「そのまま入れていい……っ、早く」 いつもよりずっと余裕を無くしているのはアルコールのせいなのか。こんなふうに無茶を強請るヒロは滅多に見られない。可愛いものだとブリッジは笑う。 流石にその言葉どおりに入れてしまったら酷い事になるのは目に見えているので、密着した身体を一旦離してヒロの脚を大きく広げさせてその間に顔を埋めた。 「んああっ!」 ヒロの身体が派手に跳ねて、甘い声が上がる。 長い舌をヒロの肉棒の根元から巻き付け、舌先でその先端をチロチロと舐める。同時に指は後ろの孔にゆっくりと潜らせた。 「やぁ……んっ、もっとぉ……」 ヒロの手がブリッジの頭を股間に押しつける。随分切羽詰まっている。 このまま一度イッてしまうつもりなのかとブリッジは察したが、自分自身ももうそんなに余裕はない。口淫で虐めてやるのは後にして、自身の獣欲を優先することにした。 股間から顔を上げて、ヒロと重なる位置までずり上がる。期待にとろけた眼が身体の下から見上げてくる。 「一晩中犯してやるよ。十年の上の最初の一日目を、繋がったまま迎えさせてやる。いいだろう?」 「……ああ、最高だ……ん」 ヒロの言葉を最後まで聞かず、ブリッジは猛ったものをヒロの孔に押し込んだ。 「んーっ……くぅ」 苦しげな悲鳴を喉の奥で耐えている。そんなヒロを見下ろしながら、ブリッジは少しずつ身を進めていく。 きつすぎる中の刺激と、犯され喘ぐヒロの媚態に、今すぐにでも激しく動いてしまいたい衝動に駆られる。そうしてもヒロは赦してくれるだろうが、苦痛は少しでも減らしてやった方が良い。完全に快楽の虜になったヒロの激しさとその絶頂感の凄まじさをブリッジは知っている。 「あ……あぁ」 震える声。苦痛が溶けていくのを知らせるような。身体は完全に根元まで繋がった。ブリッジはきわどい笑みを浮かべた。 「んじゃ、泣いてもらおうか……」 脚を大きく広げさせて抱え上げる。勃ち上がり濡れる辛そうなヒロのものと、自分自身のもので繋がるそこが視界に露わになる。ずるりと引き出し、また沈み込む肉塊。その生々しい視覚的刺激にブリッジの興奮がさらに高まる。 それはヒロも同じで、どうしようもない格好をさせられている自分の下肢と、その間で雄の本能のまま腰を突き動かすブリッジを恍惚として見上げている。雌のように雄を受け入れている自分自身の被虐的な姿、その快感に酔いしれる。そして両手で自分のものを慰め始める。 「しっかり……見とけよ、ヒロ。お前を犯してるのが……誰かってな」 「んうぅ、は……あぁ、ブリッジ……」 突き上げる動きは深く早くなり、繋がる場所から漏れる水音混じりの結合音はさらに激しく淫猥に響く。 ヒロの口からはもう意味を為さない喘ぎと悲鳴しか上がらない。 ブリッジの声ももう獣のそれに変わっていた。 草色の獣と人間とが絡み合い深くまぐわう奇怪な光景。それすら当人たちの興奮を高める媚薬でしかなかった。 「グォゥ、ガアァァッ!」 「はぁ、あ……あぁんっ!」 ギリギリまで高まっている。もう二人とも果てる事だけを追っている。 潰すような勢いでブリッジが突き上げる。はちきれんばかりの強烈な快感。 「も……あ、あああぁぁぁ───っ!」 ヒロの悲鳴と、ブリッジの叫びが重なる。 直後、無音の絶頂の中で互いの欲望が弾け迸る。何も考えられない、呼吸も止まりそうなほどの真っ白なエクスタシー。 結局宣言通り、ブリッジはヒロを一晩中抱き続けた。 途中からはブリッジ自身ももう訳が判らなくなって何をどうしたのかよく覚えていなかったが、はっと眼をさますと身体の下でものすごいことになっているヒロが眠っていて、慌てて後始末をしてやった。眠る彼の目尻に残った涙の後が痛々しくて、少しだけ反省もした。 今は満足げな顔をして安眠を貪っている愛しい主人。 ブリッジもその隣に潜り込んで、もう一眠りすることにした。 十年の上に重なる一日目。この幸せな時間があとどれだけ続いてくれるのか…… ───その後お前は俺を失った時間を生きることになる─── 我ながら酷い事を言ってしまったと思う。きっとヒロは酷く傷付いただろう。 けれど、覚悟はしてもらわないといけない。自分の寿命は、人間に比べれば随分短い。勿論ポケモンの研究に詳しいヒロがそれを知らない訳はないのだが。 「まあせいぜい長生きしてやるさ。寂しがりなご主人様のためにな」 ヒロの暖かい身体に擦り寄って眼を閉じる。 この時期は朝日が遅い。暖かな布団にくるまって思う存分寝坊するのも悪くない。そんなことを考えながら、ブリッジは眠りに落ちた。 今はただ、この幸せだけを貪っていたかった。 ─────────────────────────── (後日談) ヒロがポケモン研究者として第一線に立ってもう四十年近くになる。髪にも白いものが混じり始め、成熟した大人の魅力が滲んでいる。 ブリッジは……まだバリバリの現役だった。勿論性的な意味でも。 稀に通常の寿命を遥かに越えて生きるポケモンがいるが、その理由は判らない。ヒロはブリッジをその研究素材にしようかと考えた事もあったが、そのためには彼の日々の生活を赤裸々に記さなければならないので、早々に諦めた。 神秘は神秘のままにしておいた方が良い。 ブリッジとヒロとの日々はまだ当分続きそうだ。 ---- なんか馬鹿っぽいオチですみません。最初はシリアスオチで考えてたんですが。たまにはハピエンもやっとかないとなぁということで。 おまけ小ネタ 「[[俺とご主人。さらに俺の仔?]]」 やっぱり馬鹿っぽい話。 [[空蝉]] ---- コメントなどありましたらお願いします #pcomment(コメント/十年の上に重なる,15,above); ---- 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