ポケモン小説wiki
初めては手取り足取り の変更点


#include(第四回仮面小説大会情報窓・エロ部門,notitle)

[[まとめページへ>BCWF物語]]
[[作者ページへ>リング]]


#contents
「ポケモンとテレパシーで会話する方法……堀川&ruby(いつき){一樹};監修……」
 過剰包装に定評のある密林的通販サイトで購入したブルーレイディスクを手に、男は呟く。
 彼の傍らには、神通力を遺伝したゾロア。先日、知り合いから譲ってもらった雄の子である。

 そのゾロアと手にしたディスクの何が関係あるかって、それは当然このゾロアにテレパシーを覚えさせるためである。ディスクをデッキに差し込んで起動すると、まず最初に再生されたメニューから進む初歩の初歩。その名も、『どっちの手にあるかな?』。
 堀川一樹本人が丁寧に説明する方法は、要点をまとめるとこんなものだ。

・小石でもパチンコ玉でもいいので、手の平に包める小さな何かを用意する。
・それをポケモンに、左右どちらかの手で隠させる。
・トレーナーが、ポケモンがどちらに小石を持っているかを当てる。
・それが百発百中になるまで繰り返す。
 と、言うものである。無論、このテレパシーは初歩の初歩。エスパータイプの素養を持っていなくとも、この程度ならばできるようになるポケモンも少なくなく、神通力を遺伝させたゾロアならば軽くクリアしてもらわないと困るものである。
 軽く、とはいっても三日間で出来れば上出来。一週間くらいでようやく普通といった所。二週間たっても出来なかったら諦めろとの事。厳しいようだが、そこまでやって出来なければ才能がないという事なのだろう。どうか尻尾を振って自分に懐いてくれるゾロアに才能がないなんてことになりませんようにと、男は祈って練習を始めるのであった。
「それじゃあ、アイル。始めようか」
 まずは無難に、ご褒美を与える事から始めましょう。最初は一回当てられれば好物を与える。次は二回連続で、その次は三回連続で。そうして回を重ねるごとにノルマを増やすことで、テレパシーを覚える意欲をつけさせるのが、この練習で一番大事なことであるのだと。
 ご褒美として一番わかりやすいのは、肉であったり、木の実であったり、ポフィンやポロックであったり。角砂糖や美味しい蜜を与えると喜ぶポケモンもいる。なんにせよ、食事に向かう気力が意欲に使われている以上、食いしん坊な子はとりわけ意欲が高くなるし、普段の餌を少なくするのも効果的である。
 幸い、このアイルというゾロアは食い意地の張った男の子。テレパシーの成功のため、ひいては餌のためによく頑張ってくれる子であった。

「俺に当てさせられたら、ビーフジャーキーをあげるからな。俺に伝えられるように頑張るんだぞ?」
 なんて、大好物のジャーキーを見せびらかして説明すれば、かわいらしいアイルは目を輝かせてトレーナーに飛びつき、押し倒してでもジャーキーを取ろうとする。それぐらい食い意地の張ったアイルだが、額の毛を押さえつけて阻止し続けていると、やがて強引なおねだりは無駄だとわかったらしい。
 ぎらつかせた目を落ち着かせたアイルは、素直にトレーナーのルールに従うことにした。まず最初に、トレーナーが後ろを向いている間にアイルが小さなコインを踏みつける。
 アイルがコインを踏んだら、額と額を合わせてごっつんこ。どちらの足の下にコインを踏んだかをテレパシーで教えられるようになるまで頑張るのだ。ただひたすら頑張る。それに尽きる。
 まず、一回目は失敗。二回目は成功したが、これでは完全に運である。ビーフジャーキーを口に含んでご満悦なアイルには悪いが、まだまだ先は長そうだ。

 二回連続成功、三回連続成功とやって行くうちに、当然成功までの道のりは遠くなってゆく。一時間ほどやったら成否にかかわらずその日は休めという。テレパシーの練習をあまりにやりすぎると、うつ病になっても責任はとれないとのお達しだから、休まないわけにはいかない。言葉通りに休んだ時は六回連続成功に挑戦している最中であった。当然、ここまでの道のりはすべて運のみである。
「すまんな、アイル。疲れただろ?」
「ワゥ!!」
 トレーナーの労いの言葉に『当たり前だ』とばかりに不平を込めてアイルは吠える。ずっと餌をお預けされていたせいで流れ出ていた唾液も床に水滴が垂れるほど酷くなっており、確かめるまでもなく欲求不満なのが手に取るようにわかる。
「わかってるって、はい」
 さすがに、このまま何も与えないで終わらせてしまえば今後のモチベーションに関わる。アイルを労うためにもと、トレーナーはビーフジャーキーを差し出した。
 アイルは目をきらりと輝かせてジャーキーに飛びつき、夢中でかぶりついた。固いジャーキーを唾液でふやけさせて食む姿は、年齢通りの童顔と相まって非常に可愛らしい。ほとんど進展は見られなかったが、こんな姿を見られただけでもやる価値はあったかもしれないと、トレーナーは思った。


 三日目。テレパシーの精度の高さを調べるために、コイン当ての結果を成功の青と失敗の赤で色分けで記入していると、心なしか成功の青色が多く見えるようになってきた。数えてみれば、百回中六十二回成功と、微妙ではあるが成果が見えると言えなくもないような成果が見える。
 思えば、時折頭にアイルがコインを隠した時のイメージ映像が伝わって来る時があり、その時は百発百中のような気がする。しかし、それも時折であれば意味がない。
 テレパシーを使って人間と話すポケモンはとても流暢に言葉を操り、それは人間と比べてもそん色がないほどだという。その域に達するまで、テレパシーを鍛えなくては。
 そう思って、四日、五日と回数を重ねていくと、上がって行った精度はついに二十回連続成功の域まで達する。これは、無作為にやった場合は確率としては百万回に一回。次の二十一回連続も、五回目の挑戦で成功した。
 餌欲しさゆえの執念でこんなことをやっているアイルだが、意欲の分だけ才能も生かされているようである。はじめはどうなることかと思ったが、六日目にはコツをつかんだのか、まさしく百発百中でトレーナーに左右を当てさせられるようになったのだ。
 額と額を合わせて想いを伝えようとすれば、右か左にぼんやりと光る何かが見えるような気がする。その『気がする』を与える事。初歩の課題は、見事クリアである。

 ◇

 男、西条祐次が苦労してテレパシーを覚えさせるのにはわけがある。
 彼は変態である。彼は人間に興味がなく、要はオスケモを中心に自身の萌えと性欲を貫く男であった。過去に女性と付き合ったこともあるが、理不尽な理由(本人談)によって振られてしまってからは、もう女なんてどうでもいいやと開き直ってしまったらしい。本音は世間には隠しているが、ポケモンの方がよっぽど可愛いし、従順で懐いてくれるから人間の女なんかよりもずっといいと思っている。
 そして、彼は絵師であり、アラブル・ドーブルの筆と呼ばれるオスケモ中心のイラストサイトでは、中堅程度の人気を得ている男なのだが、いかんせん最近はインスピレーションがわかないのだ。
 そのため、彼は初めてからマニアックな領域まで一緒に踏み込める仲間が欲しかった。しかし、マニアックな領域まで踏み込むためには、綿密な意志の疎通が必要不可欠であり、テレパシーの練習に勤しむのもそんな意思の疎通のためであった。ゾロアの進化形であるゾロアークを求めるのも、マニアックなプレイには雰囲気づくりに幻影が一役買ってくれると思っていたから。
 そんな、色んな思惑が混ざり合って、ゾロアのアイルとの訓練は続く。
 彼は変態である。彼は人間に興味がなく、要はオスケモを中心に自身の萌えと性欲を貫く男であった。完全に女性への興味が無いわけではなく、世間体や寂しさに負けて現在進行形で女性と付き合ってはいるのだが、酷く束縛する女なので今現在もう女なんてどうでもいいやと開き直ってしまっている最中だ。
 もちろん本音は世間には隠しているが、ポケモンの方がよっぽど可愛いし従順で懐いてくれるから、人間の女なんかよりもずっといいと思ってさえいた。

 加えて彼は絵師であり、アラブル・ドーブルの筆と呼ばれるオスケモ中心のイラストサイトでは、中堅程度の人気を得ている男なのだが、いかんせん最近はインスピレーションがわかないのだ。
 そのため、彼は初めてからマニアックな領域まで一緒に踏み込める仲間が欲しかった。しかし、マニアックな領域まで踏み込むためには、綿密な意志の疎通が必要不可欠であり、テレパシーの練習に勤しむのもそんな意思の疎通のためであった。ゾロアの進化形であるゾロアークを求めるのも、マニアックなプレイには雰囲気づくりに幻影が一役買ってくれると思っていたからだ。
 そんな、色んな思惑が混ざり合って、ゾロアのアイルとの訓練は続く。束縛する恋人なんてそっちのけだ。


 左右どちらの手に石を握っているかの訓練は六日で終了し、七日目からは次のステップに入る。次は、色のついたカードを用いて、その色を当てるゲームである。ポケモンによっては色の見え方が異なるために苦労することもあるのだがアイルは色覚には一応問題がないようで、五色全てをきちんと見分ける程度には色を見分けてくれる。
 まず、やり方はこうだ。トレーナーが適当に切った五色のカードを、表面を見ずにポケモンに渡す。ポケモンはそれを裏返して覗き、その色をトレーナーに当てさせる。色という抽象的な概念を当てさせるという事がそもそも難しく、選択肢が先ほどよりも多いことも相まって一筋縄にはいかない。
 しかしこれも、真面目にやれば上達は難しいことではない。無尽蔵の食欲を誇るアイルは、餌欲しさに執念でテレパシーの成功率を上げていく。そのたびにこれは食費がかかりそうだと苦笑しながら、ユウジはビーフジャーキーをアイルに寄越す。
 嬉々として、無心でそれをほおばるアイルの姿はかわいらしいが、ユウジにとってはそんな可愛らしさよりもゾロアークの凛々しく精悍な顔やくびれた腰のナイスバディと、そこから伸びるいやらしい男根の方がよっぽど重要なのである。

「美味いか、アイル?」
「アウッ!!」
 話しかけると、アイルは顔を上げ、口に物が入ったままの状態で答えを返す。放っておけば胃袋が破裂するまで食べるんじゃないかと思えるようなこの大食漢は、答える声も適当に、また顔を戻して食べ始めてしまった。
「はぁ……散歩を長めに行ってやらないと太るな、こりゃ」
 良く食べてよく運動。健康的でいい事かもとプラス思考に考えて、ユウジは日々の時間を愛ポケ、アイルに潰すこととなる。テレパシーに散歩に、躾に、ポケモンバトル。ここまで時間が潰されて絵を描き続けるのは苦労もしたが、その分ゲームの時間が少しだけ減って、毎日外を歩くおかげか健康的な生活である。

 色当てが終わると、次は○や△、☆といった図形を当てる訓練。幼児向けのカード式ポケモン図鑑を当てる訓練。離れた場所までテレパシーを飛ばす訓練と順調に続き、そのすべてを終えたころには、近所の子供よりも流暢に喋るアイルの姿があった。
 それまでの過程に、ダイエットもはさむ必要があるほど食い意地の張ったアイルだが、現在は減量がそれなりに功を奏したおかげで何とか見れる体型にはなっている。現在は、主に休日にゾロアークに進化するべく体を鍛えている真っ最中。意思の疎通が十分可能になったテレパシーは、もう無理に成長させる必要もなく、これからは夜の日常会話だけで練習も事足りる。
 そのため、夜しか相手をしてやれない業務の日にやることはランニングと技の練習くらいで、実践的なバトルらしいバトルはもっぱら休日に行われた。


 そうして、バトルとテレパシーの訓練を続け、アイルを飼い始めてから一年ほどたったとある休日。このころになると、アイルも手がかからなくなって絵を描く時間もきちんと取れるようになっていた。その分休日に遊ぶ時間を多めにしてやっている日々である。アイルの話す言葉は流暢で、何不自由なく日常会話をこなすアイルのテレパシー能力は高いレベルまで成長している。

 今日は秋の日差しが温かい昼下がり。ビル街のど真ん中にある近所の巨大な公園のはずれでは小さなスペースをバトルフィールドに見立てて子供達がバトルに興じている。今日は世間一般の社会人は仕事のようだが、カジノの調理場スタッフをしているユウジの休みは不定期で、公園をうろついている大人の姿は非常に少なかった。
 大人の姿を気にすることなく大戦を眺めてみると、ガマガルとシママを戦わせている現在の対戦は、言ってしまえば相性は最悪といった所であろうか。
 シママが素早さで相手を翻弄しようと頑張るが、電気はもちろん効かないし、焼いても効果は薄い。よって、シママに残された選択肢なんてて突進くらいしかなく、それでゴリ押ししようにも待ち構えるガマガルには後出しの法則とでもいうべきか。
 まっすぐ向かってくるシママに泥をかけ、それだけで視界を封じると、次に放つのは水鉄砲。強い技ではないのだが、視界を封じた状態では技の強弱なんてたいして関係ない。逞しい太ももに水鉄砲が当たると、目が見えていない状態でシママは飛び上がり、逃げようとするうちに段差に躓いて転んでしまう。
 まだ戦えないコンディションにはなっていないが、これでは実質負けだろう。ここまで相性の悪い戦いとは可哀想にと思いながらユウジはその戦いを見ていたが、アイルは逆に気分が乗ってきているようで、子供達がポケモンをボールに戻したのを見て、立ち上がって尻尾を振っていた。
 やる気になったアイルに続いてユウジも立ち上がり、愛ポケと一緒に伸びをしてから体を震わせ血液を巡らせる。
「なぁ、アイル。今日はどいつと戦う?」
『そうだな。俺、あのイシズマイと戦う』
「弱点だぞ、良いのか?」
 わざわざ虫タイプの相手を選んで闘うアイルに、ユウジは大丈夫かと声をかけるが、アイルはさほど気にしていない様子。
『強けりゃ、小細工なんて必要ないだろ?』
 少々自信過剰なところもあるけれど、こういうふてぶてしさはやはり悪タイプらしさといった所か。近所の子供達が持つポケモンとアイルはそれほど年齢は変わらなかったし、身体能力も特別高いわけではない。しかし、そこはユウジも大人の貫録というべきだろう、きちんとアイルの育てる能力の的を絞り、有効に戦えるように指南している。
 ユウジのトレーナーとしての実力は、本職のトレーナーやブリーダーが育てたそれには遠く及ばないものの、それなりの実力で小学生達を圧倒することもしばしばである。
 テレパシーが出来るという事は基本的に秘密にしているため、ただの何の変哲もないポケモンとして認識されているアイルだが、指示が欲しい時にテレパシーを飛ばし、すべてを指示に頼らないところも一つの強みである。
 人間と会話しあうことによって得られた頭の良さは、指示によって生じるタイムラグを打ち消すには十分すぎるほど発揮されているのだ。

「次、俺でいいかな?」
 場所が空いたのを見計らって立ち上がったユウジは、対岸のベンチに座っている小学生の前まで歩き、アイルを撫でるためにしゃがんでから話しかける。成人男性として平均的な身長を持つユウジは、立ち上がってしまえば小学生を上から見下ろすことになり、威圧的な印象を受けてしまう。
 アイルを撫でるついでに視点を合わせて話しかけると、お互い自己紹介すらしておらずフルネームすら知らないというのに遊び友達となっている小学生達はうんと頷いた。
「じゃあ俺な!! アイルにゃまけねーぞ!!」
 なんて、勇ましく飛び出してくるのはメラルバを持った子供。当初予定していたイシズマイではなかったが、結局は苦手な虫タイプだから、アイルにとっては願ったりかなったりの相手だ。
「だとさ、アイル。行けるな?」
『当たり前さ』
 答えも勇ましく、意気揚々とアイルは駆け出す。
「いけ、フカフカ!!」
 フカフカと名付けられたメラルバもバトルフィールドに立つ。
「それでは、シングル一対一、試合開始!!」
 こんな野試合なので審判は先ほどまで試合をしていた子供が適当に試合開始の宣言をするくらいである。その宣言でまず動いたのはアイルである。彼は小さく吠えて自身を奮い立てる。ポケモンには物理攻撃と、特殊攻撃で得手不得手があるが、ゾロアヤゾロアークは比較的どちらでも行ける。
 しかし、得意分野だけで戦うなんてことが戦いでそう上手く出来るわけもなく、どちらも強化できるこの振るい立てはそれなりの有用性がある。
「行け、ニトロチャージだ!!」
 そうやって吠えて振るい立てている間に、フカフカは炎を纏って体当たり。腹這いになって歩むが故の機動力の無さを、補うためには有効な手段だ。
 やればやるほど速さと鋭さを増してゆくその初撃を、アイルは前方に向かって体当たりを跳び越し避ける。飛び上がる際に少し体を捻って次の攻撃に移るまでの時間を短縮したアイルは、振り向きざまにナイトバースト。地面にぶち当てた暗黒の球が破裂して、周囲にある者を吹き飛ばす。巻き上がる粉じんや土ぼこりから、アイルは目を瞑って視界を守り、フアフカは逆に目を瞑ることも出来なかった。
 視界がふさがれている間に、アイルはもう一度吠える。こうして、隙を作っては攻撃力を上げる行動をとるのがアイルの戦法だ。そうしてアオーンと声を上げて吠えている間に、霧散した悪のオーラの中からフカフカが姿を現す。フカフカは目にゴミが入ったのか片目をつぶっており、左目の視界がふさがれている。
「よし、アイル。やつの左側から攻めろ!! 技は任せる!!」
『合点承知』
 アイルがテレパシーで答える。
「フカフカ、糸を吐いて動きを止めるんだ!!」
 相手トレーナーは命令する。フカフカは体を回してアイルを捉えようとするものの、片目では素早く動くアイルを捉える事すら難しい。糸を吐いても、遠近感もめちゃくちゃな視界の中ではまともに狙いをつけることも出来ない。
 そうこうしているうちにアイルは、吐いた糸を持て余しているフカフカの至近距離で再びのナイトバースト。きっちりと視界の塞がれた左側から攻撃したために、受け身も防御も出来やしない。まともに食らってふっとんだフカフカはその一撃でノックアウト、勝負ありである。

「あっちゃー……やっぱりアイルは強いなぁ……」
 戦っているうちに熱を帯びて、まだ陽炎が発生しているフカフカにモンスターボールを向け、子供はフカフカを収納する。
「おーし、良くやったぞぉ、アイル」
 アイルを撫でながらユウジは対戦相手を見る。
「対戦ありがとう」
「ありがとうございます」
 ユウジのあいさつに続いて、相手も挨拶を返す。
「あー……どうやったらフカフカもアイルみたいに強くなれるのかなぁ……」
 対戦が終わって、相手はすぐに愚痴をこぼした。
「大丈夫さ、初手でニトロチャージを見舞って後のために強化しようって意気込みはよかったぞ? でも、最初っからまっすぐにあてに入るよりも、左右に振っていつ来るかわからなくさせたほうがよっぽどいいと思うよ。たとえば、飛び上がって避けると、空中では身動きが取れないじゃない?
 真っ直ぐに突進してくると、アイルが安心して飛び上がれるような状況を作ってしまうことになるからね」
 そんな相手を見て、ユウジはきちんと大人の視点からアドバイスをする。
「なるほどぉ、お兄さんありがとう」
「いえいえ、もっと強くなれるように、きちんとその子の良いところを生かしてあげるんだよ」
 そうやって語りかけている間に、ずっとアイルの毛皮を撫でていたのだが、どうにも感触が変だった。何が起こっているのかと視線を落としてみると、アイルは全身の体毛を逆立て、苦しそうに震えている。
「ど、どうしたアイル?」
『体が……熱いよ、ユウジ』
 話しかけると、アイルが思わずテレパシーを漏らす。いつものようにユウジ一人に向けられたものではなく、近くにいる者全員に向けられてしまったらしく、心の声を聞いた周りの子供達は一斉に驚きを露わにする。
「ちょ、今の何?」
「こいつ……喋るぞ!?」
「ユウジのゾロアは化物か?」
「い、いや……今はそんなことはどうでもいいから。だ、だ、大丈夫なのか? アイル」
『苦しくはないけれど……あぁ……』
 テレパシーがだだ漏れな状態でアイルが答える。次の瞬間、アイルは真っ白な光に包まれる。
「なんだぁ、進化かぁ……」
 初めての進化という事もあって、アイルも戸惑っていたのだろう。しかし、昔見た進化の瞬間の反応であることがわかってユウジは安心してその様子を見守る。そのうち、アイルの体を包む光は強くなり、形状が変わってゆく。
 地面についている脚は長くなり、腕も長くなってはいるのだが脚と比べると相対的に短いか。太く短かったふさふさの尻尾は退化して消失し、代わりに伸びた鬣が背中を覆う。
 光が収まると、背中一面を覆う紅色の派手なタテガミの先端付近には、翠色の球。切れ長になった顔つきには、口の端や眼の端の所々に赤い模様。首を覆っていた体毛は、今では胸を覆うようになり、猫背からくびれた腰までのラインが美しい。

「おぉぉ……ゾロアークに進化した……おめでとう、アイル」
『おぉう、これが俺か? なんかもう、別の生き物って感じだな……』
 自分の腕を見て、鬣を見て、アイルは自分の見た目を確かめる。あとで鏡を見せたらどんな反応をするのだろうかと思いながら、ユウジはアイルを抱きしめる。毛皮のボリュームがアップしたので、もふっとした感触や鬣の柔らかさ、温かさが腕を通して伝わってくる。
「おー、本当にゾロアークだ。イリュージョンじゃない」
『わわわわわ、なんだよ、やめてくれよユウジ』

 抱いた瞬間からアイルは手で押しのけようとするが、それでもユウジは離さない。
「嫌がるなよ、たまにはこんな抱擁もいいだろ?」
「ねーねー」
 そんな熱い抱擁に水を差すのは子供達だ。
「おや、なんだい?」
 抱擁を邪魔するなと、不機嫌な気持ちを出さないように努めてユウジは言う。
「アイルが……さっき喋ってなかったー?」
「う……」
 先ほどのテレパシーが漏れてしまったのがバレたらしい。
「い、いや……そんなことはないよなぁ、アイル?」
「ガゥッ」
 アイルはテレパシーを使わずに頷く。
「えー? でも、皆聞いていたよなぁ」
 一人の男の子が仲間に尋ねると、口々に上がる賛同の声。
「うん、聞いた聞いた」
「喋ってたよー」
「頭の中に話しかけてくるっていうか―」
「ねーどうなのー?」
 子供は無邪気である。無邪気だからこそ、ここで面白がってネタにされ、色々広まってしまうと面倒なことになりかねない。
「そ、それは……その……」
 ユウジはチラリとアイルを見る。
『す、すまんユウジ……つい取り乱して喋っちまった』
 その言葉を聞きながら、ユウジはアイルの手を握る。
「よし、逃げるぞ」
 耳打ちするようにアイルに言うと、アイルの言葉は『合点承知』。ユウジが手を引いてアイルと共に逃げる。ある意味憧れのシチュエーションではあるが、手を繋いだこの体勢はスピードが出無い上に、そもそもアイルの方が足は速い。
 公園を抜けるまでは子供達が追いかけてくる声も聞こえ、自転車による追走もしばらくされたのだが、自転車では通れないビルの路地裏を通ることで、子供達もようやく追跡を諦める。走り抜けて子供を煙に巻いた二人は、公園近くの住宅街の路地裏に座り込んで、息切れしながら笑いあった。
「お前格好良くなったなぁ」
 アイルに肩を寄せてユウジは彼の容姿を褒める。
『そう思う? そりゃ光栄だけれど、結構よろけちゃって済まないなぁ』
 褒められて照れているのか、目を逸らしながら話題を逸らしてアイルは言う。
「いいのいいの、新しい身体にはじっくり慣れていけば。それより、家に帰ろうぜ。お前の姿、家の鏡でも見てみるといいよ」
『そうだな。それも楽しみだ』
 息切れしている最中の話はこれで終わり。呼吸が苦しいのに会話なんてしていたせいで、しばらく話しかけるのも億劫になった二人は、空を見上げてゆっくり休むと、体に慣れる意味合いも込めて、日が暮れるまで散歩を楽しんでから家に帰る。
 視点が高くなったことで得られる感動を感じながらの散歩は、いつもとは違う新鮮な驚きに満ちたアイルのはしゃぎ声がユウジには嬉しかった。

 ◇

『ふえー……すっげぇ。これが俺?』
「だろ、格好良くって素敵だよ。いつも人を乗せて空を飛んでるゴルーグなんか目じゃないくらい格好いいぜ?」
 ベタベタと自分の顔を触って、感無量にアイルは言う。
『身長もまぁ、ずいぶん高くなったよなぁ……』
「大人になったってことでいいじゃないか。これでアイルも大人の仲間入りなんだし、今までできなかったことも色々出来るようになるぞ?」
『色々って、例えば?』
 鏡越しの会話をやめ、アイルが直接ユウジの方を見て尋ねる。
「たとえば、火炎放射とか気合い玉とか、そういう技が仕えるようになるのは一つの長所だな」
『なるほど。今までできなかった技も出来るのか……』
 それが何とも不思議な気分なのだろう、アイルは自分の手の平をまじまじと眺める。
「バトル以外でも色んなことが出来るしな。出来ることは何でもあるから、いろいろ試そうな?」
『おう、合点承知だ』
 歯切れのいいアイルの答えを聞いて、ユウジは微笑んだ。
「それじゃあ、今からちょっと試したいことがあるから、俺の部屋に来てくれー」
『お、何を試すんだ?』
「そうだなぁ……体が大人の階段を上ったところで、心も大人の階段に登れるようにって」
『はぁ……良くわからないが……』
「大丈夫、怖くはないから」
 にっこりと笑ってユウジはアイルの疑問を吹き飛ばす。アイルの心のもやもやはぬぐえなかったが、何がこるかはすぐにわかることだからと、気にせずアイルはユウジについて行く。
 基本的にこの家は玄関と風呂と、キッチン兼ダイニングと、寝室くらいしかない。俺の部屋というのは、ペンタブとパソコンが置かれた寝室の事を指す。
 寝室にたどり着いたユウジは早速以って布団を敷く。
『あれ、寝るの?』
「寝るわけじゃないけれど、寝転がるかな。まぁ、とりあえずは……」
 そう言っている間に布団が敷かれ、枕が置かれる。
「さ、アイル。この布団の上に仰向けで寝てくれよ」
『仰向け……はぁ』
 何をされるのかもピンとこないまま、アイルは言われた通りに寝転がる。髪の珠は邪魔なので、体の横にそれさせることで仰向けになる。仰向けのまま天井を見るのも久しぶりだと思いながら眺めていると、ユウジはビデオカメラをセットし始める。
『何しているんだ?』
「いやなに、ちょっと撮影をね」
 目を逸らしながらのユウジの回答。
『というか、何をやるつもり?』
「ほらぁ、たまにお前が覗いていただろ? 俺がパソコンで描いた絵をさ。だから、それを再現してみようかなぁ、なんて」
『あぁ、あれかぁ……何をやっているのかよくわからなかったけれど、良いぞ?』
 何をしているのかよくわからないから、何をされるかもよくわからない。本当にヤバイ絵はアイルが寝静まり、モンスターボールに収納してからしか描いていないので、それも仕方がない。
 ユウジがアイルに見せられる画は、すべてR-18のタグをつけなくても済むような健全絵ばかりであったが、アイルの進化を皮切りにユウジはもうそんなものも必要ないとばかりの積極性だ。まず、ユウジは仰向けになったアイルのそばで膝立ちになり、彼の肢体を見下ろす。
 ふさふさの体毛に隠れ、目立たない彼の陰茎。いきなりそれに触れるなんてがっついた真似なんてしない。まずは彼の体を撫でることから始める。
「いや、しかし本当に成長したなぁ……アイル」
『まーな。個の体って意外に足も速いし、良いもんだよ。もしかしたらテレパシー使えることがバレちゃったかもしれないけれど、これからもなんとか子供達とうまくやって行けるように頼むぜ? 人間の知恵ってもんをこういうところで見せてくれよな』
『まーな。この体って意外に足も速いし、良いもんだよ。もしかしたらテレパシー使えることがバレちゃったかもしれないけれど、これからもなんとか子供達とうまくやって行けるように頼むぜ? 人間の知恵ってもんをこういうところで見せてくれよな』
「それはもちろん。上手く言い訳できるように考えておくさ。まぁ、今はそんなことよりも……こっちに集中してくれ」
『う、うん。だが、これは結局なんなんだ?』
「いやなに、毛づくろいの一環さ」
 ユウジはアイルの右手に正座の体勢で座り、屈んでアイルの頬を撫でる。両手でそっと撫でられると、目に指が入らないようにアイルが目を瞑る。そのまま頬をやさしくもみくちゃにすると、うっとおしそうだが同時に嬉しそうにアイルが表情を変える。
 そのまま右手の人差し指から小指までの4本の指でアイルのマズルを撫で、鼻先を親指で撫でる。顔マズルの根元から先端へと向けた愛撫を終えると、次はその逆。鼻先から根元をなで、最後に尖った耳の抓むようにして撫でる。
 調子に乗って頬をつまんで両側に引っ張ってみたり。アイルはうっとおしそうに顔をゆがめるけれど、構ってもらえるのが嬉しいから、いつでも気分はまんざらではない。ここら辺まではゾロアの頃からずっと同じ、アイルを可愛がる時の撫で方である。

「どうだ、気持ちいいか?」
『ちょっとかゆいところを掻いてくれてるから気持ちいいよ』
 笑顔で語りかけると、アイルは笑って答えてくれる。その反応に愛おしさを感じながら、ユウジは体をアイルに重ね合わせ、彼の後頭部に手を添える。そっと顎を持ち上げると、おもむろにキスをした。アイルは何をされているのかもよくわからず呆然としてその口付けをされるがまま。上顎を軽くつかんだユウジにそっと口をこじ開けられ、鋭い牙の隙間を縫うようにユウジの舌が侵入して来ても、固まった思考は動いてくれない。
 ユウジがアイルの口の中の唾液を掬い取って舐め、口を離す。
『あの、今のは……』
「あれだ。好きだって気持ちを伝えるための儀式だ。ほら、お前だってよく俺の顔舐めただろう?」
『まぁ、そうだけれど……人間はこうするもんなのか……そうなのか』
 嘘ではないが、人間同士ならば普通は男女でやるものであると、そんな説明が抜けている。とはいえ、愛情表現のために顔を何度も舐めてきたアイルが相手である。納得してもらうのはむずかしいことではない。
 そうして、騙したままユウジの愛撫は進行する。さらけ出された首筋を甘噛みし、ピアノを弾くように指を上下させて鎖骨を撫でる。その官能的な手つきをそのままに、胸の豊かな体毛を掻きわける。揉みしだくように胸の体毛をまさぐられ、そのままわき腹を下ってユウジの手はついに股間に伸びる。
 全く開発もされず、性についても疎いアイルはこれまでの行為で感じるようなことは一切なかったが、さすがにこれには本能的に何か触れてはいけないものを感じ取ったらしい。
『ちょ、ちょ、ちょ……ちょっと待てユウジ。何をしているんだ?』
「それはもちろん……毛繕いだ!!」
『そ、それは嬉しいんだけれど……なんか、変なんだよなぁ。体が跳ね上がるというか……』
 アイルは頬を掻いて、戸惑いがちに言う。
「確かに、この毛繕いはちょっと特殊だからなぁ……まぁ、でもなんだ? お前の進化祝いのようなものだから、今日だけは黙って受け取ってくれないか?」
『う、うむ……わかった』
 アイルの許可を受け、ユウジはアイルの男根の根元に触れる。まだ膨らむ前の亀頭球を包皮越しに感じながら、さらにその下、睾丸をやさしく転がす。
『おいおい……ユウジ。そんなところを触るのが本当に毛繕いなのかい?』
 普段は触れられないところを弄られ、気が気でない様子のアイルは不安げに尋ねる。
「普通の毛づくろいじゃないって言ったろ?」
 言うなり、ユウジは彼の陰茎を握りしめる。アイルは反射的に腰を突き上げたが、その動作はいかにも控えめだ。
『あ、あの……本当にこれは何? なんか……すごく変』
「大丈夫、誰でも変になる」
『あの、それ怖いんだけれど……』
「変になっても危険はないさ」
 優しく諭すようにユウジは言う。
「というか、むしろ変になれ」
 きっぱりと言い切ってユウジは笑う。
『えー……っと。どう反応すればいいのやら』
「大丈夫だって」
 ユウジがアイルを宥めつつ、まだ大して膨らみのない亀頭球のあたりを包皮越しに握り、上下に揺さぶる。ゾロアにとっては一番感じる部分だ。
『ちょ、ダメ……なんか、変だって……』
 そこを触れられたアイルは、腰が疼く。湧き上がった本能に押し流されるように、腰を動かした。まだまだ恥ずかしさや理性が残っているのか、腰使いは激しくもないし大きくもない。そんなアイルの反応に気を良くしたユウジは、握っていた手をパッと放す。
 腰を振っているうちに肥大化した陰茎は、包皮からくすんだピンクの肉棒をのぞかせ、急に刺激がやんだそれはビクンと跳ねて物欲しそうに震えている。全然洗ってやっていなかったせいか、さすがに中は汚れて恥垢がこびりついていて、匂いも鼻を突くようにきつい。
「くぅぅぅ……」
 先ほどまでの盛り上がった気分を台無しにされて、アイルは気合いの抜けた鳴き声を吐き出す。
『ユウジー……今の、本当になんなんだ?』
「まぁ、なんだ。毛繕いというのは嘘だ」
 急に真顔に戻り、ユウジはしれっと言う。
『やっぱりか……』
「あれはな、子づくりの練習だ」
『はぁ……』
 ピンとこないアイルがあいまいに頷く。いまだに彼は布団に寝そべったまま見上げているが、その目は潤んでいるおかげで先ほどよりもずっと色っぽい。
「まぁ、詳しいことは後で話すが……続ける?」
『……続ける』
 どうやら、羞恥のようなものはあまりないらしい。いろんなことを教えることなく純粋無垢に育てたおかげもあるし、小学生たちが持っていたポケモンが子供ばかりで大人と話す機会がなかったのもあるのだろう。こういう初々しい反応は見ていて堪らない。
 無知で無垢な童貞の初めてをカメラに収める。そんなことを人間相手に出来るはずもないし、そもそも人間にあまり興味のないユウジには関係のない事。
 ポケモンが相手ならば、数々の&ruby(しがらみ){柵};も乗り越えられるし、相手が今まで手塩にかけて育てたアイルだと考えれば、愛着補正も相まって効果は抜群だ。
 ズボンの中で暴れるものを押さえつけつつ、ユウジはアイルの求めるままに行為を再開する。先ほどまでの不安げなアイルの顔はもうない。
「アイル。お前、もう怖くないのか?」
『えっと、まぁ……というか、もっとやってくれよ……途中でやめられて、すごくうずうずしちゃってさ……』
 照れのない、無垢な望みである。ここまで素直すぎると、外に出した時に何か問題が起こるかもしれないが、恥を仕込まないことでこうまで積極的になってもらえたかと思うと、今までの教育方針も間違っていなかったのだとユウジは思う。常識的に考えれば間違いだが、とにかく楽しいから良しである。
 さぁ、相手も気分が乗ってきたようだ。ここまで、どんなことをやられるのかと怯えた表情を快楽に変えるのもそそるものがあったが、やはりやる気になっている相手を欲望の赴くままにさせてあげるというのはたまらない。

 いやらしくはみ出した舌は、上気した体のほてりを逃がすように熱を帯び、激しい息遣いで熱気を飛ばしている。はがしい呼吸で先端が揺れ、気化熱を奪ってもらうために唾液に濡れたアイルの綺麗な舌の、なんといやらしい事か。
 透明な雫を帯びた舌は、揺れる先端からぽたりと珠を落として胸を濡らし、あれから触れてすらいない陰茎は、花を咲かす時期を今か今かと待ちわびるように雄々しく立ち上がっている。色はまだ未熟なピンク色、波打つ赤と青の血管がうっすら見えるものの、くすみや汚れのない綺麗なものである。
 もちろん根元には膨れ上がった亀頭球。弾力のある先端から中ほどまでとは比べ物にならない硬さのそれは、雌の膣内に入れた時に、精液が零れ出ないよう栓をするためのもの。これを突っ込むことで、交尾の目的である子づくりを円滑に行えるため、体の構造はここが一番感じるようにできている。
 真ん中あたりの僅かに太い部分や、切った竹のような形状の先端も感じるには感じるけれど、それは本懐ではない。

 故に、ただイかせるだけならば亀頭球を重点的に攻めればよい。しかしそれではつまらないので、ユウジはまずもって先端を攻め立てる。まだ包皮に包まれていた、刺激に弱い粘膜の先端をつまむように、捻るように。
 捻る運動は根元の方まで刺激を伝えるが、それでは刺激も弱いし何かが違う。その、表現しがたい『何か』のおかげで、刺激を受けた陰茎は生温い快感しか与えてくれない。結果、悲鳴のように漏れ出たアイルの吐息。口には出さないが、もっと強い刺激をくれよと言いたいのが丸わかりだ。
 そんな表情を無視して、意地悪な攻めをずっと続ける。
「どう、アイル? ちょっと物足りないかもしれないけれど」
『物足りないのはちょっとじゃないんだけれど……これ自分でやっちゃだめなのか?』
「ダメだ。だが、こうしていると最終的に普通にやるより気持ちよくなるから我慢な?」
 泣き言をいうアイルに対して、ユウジは有無を言わさない。
『わ、わかったけれどさ……なるべく早く終わらしてくれよぉ……』
 恥じらいの感情を仕込んでいないため、恥ずかしがるようなことをしないアイルだが、基本的にこの子はユウジには従順だ。ユウジがそういうのならばと、この耐え難い生殺しをアイルは必死でこらえる。
 握ったままの亀頭球を上下に擦りあげることもしない。ただただ、握る指の一本一本の強さに波をつけて、焦らすだけ。太ももに、足爪に、手に、尻に。アイルの疼く体は本能的に刺激を求めようとして動こうとするが、理性で以ってアイルはそれを阻止する。
 こういうところは、幼いころからきちんとしつけたユウジの教育の賜物で、気持ち良いのにそれをあからさまな態度に出せないアイルのもどかしそうな顔。時折切なげに漏れる声、進化したての童顔。このままおねだりのポーズの一つでも覚えさせて意地悪するのもいいのだが、それは後々に譲るとしよう。

 そう、今やるべきは、アイルが精通を迎えた際の表情、鳴き声をビデオに収め、そしてその時の言葉と感想を自身の胸に刻むことだ。このままアイルを辱める事など今は無粋だ。ユウジはウェットティッシュを取り出して、露わになったアイルの肉棒を丁寧に拭きとる。
『な、何しているんだ?』
「なにって、見ての通り綺麗にしているんだ」
 包皮に包まったまま長い事洗っていなかったそこは、どうあがいても不衛生だ。アイルが汚いとは言わないが、初めて露わになったそこをそのまま咥えてやるのも少々気が引ける。消毒用のアルコールが含まれた清潔な布を当ててやると、熱を持った血流のおかげですっかり火照っている肉棒が冷たさに触れる。
 その独特のアルコールの匂いもさることながら、揮発性の高いアルコールの気化熱で熱が奪われる感覚に、戸惑うアイルはぴくぴくと逸物を上下させている。厚手のティッシュを二枚ほど使い終わったところで見てみると、大分汚れも落ちた逸物は先ほどよりも鑑賞に足るものとなっている。
 鼻を突くようなにおいも今は穏やかになり、新鮮な先走りの匂いが立ち上るばかり。深呼吸してまで味わいたいとは思わないが、嫌にならない程よい牡臭さ。
『あれ、お前が匂い嗅ぐなんて珍しいなぁ』
 人間には確かに珍しい行為。しかし、それを珍しいで済まそうとするのが、いい意味での教育不足といった所か。
 その匂いを味わい、根元の亀頭球は握ったままアイルの先端を咥える。
『ちょ、やめろよ……喰う気じゃねえだろうな?』
「ないない」
 さすがに、この行動にはアイルも肩を竦ませるが、ユウジは笑って否定する。
「歯は立てないよ。痛かったら言ってくれ」
『なんか怖いけれど……約束だぞ?』
 まだ噛みつかれるとでも思っているのだろう。せっかくの興も覚めてしまいそうだが、下の中で弄ばれる感触に、手とはまた違う印象に、アイルは反応を決めかねていた。
 唾液に濡れた口の中で弄ばれると、それ自体は気持ちよいのだが、いかんせん歯を立てないようにするにはあまり力が入れられない。結果、気持ち良いのに快感は得られないというおかしな板挟み。しかして根元をゆっくり上下させられているから刺激には事欠かない。
 唇と舌を押し付けるような先端の愛撫と、根元への執拗な焦らしの手つき。徐々に込み上がった射精への欲求にも、喉を突くことが気が引けるアイルは必死でこらえて歯を食いしばる。上目づかいでもそんな表情の変化を見逃さず、ユウジは手つきを激しくした。
『ちょ、激しいよ……ユウジ……なんかもう、限界っ……』
 絶頂の手前でお預けを喰らい続けていたアイルは、いきなりの不意打ちに抵抗の間もなく堰を切る。本能的に腰を突き上げられたが、運よく喉の奥を突かれることもなく、ユウジはアイルの射精を受け止める。上顎で精液の勢いを殺し、滴るそれを舌で受け止める。汗のようにしょっぱくて、雄臭い精液の香りと味。
 勢いよく出た数秒が終わると、アイルの逸物は小刻みに震えながら小さな射精を繰り返す。このころにはもう精根尽き果てていたようで、アイルは布団に体を投げ出し、休みの体勢に入っていた。ユウジが精液を飲み込むのも気にせずにへたばっていると、うつろな目の色を浮かべていた顔に飼い主の手が添えられる。
「どうだった?」
『そりゃ、気持ちよかったけれど……もう、しばらくはいいや』
「おーやおや……」
 様式美のように完全な賢者タイムに入り込んだアイルを見て、ユウジは苦笑する。未熟な表現方法しか持たなかったアイルだったが、恥じらいなしに率直な感想が聞けたという事で良しとしよう。
 とりあえず、精通の感想は聞けたのだ。これからは色んなおもちゃやいろんな拘束具で遊んで焦らして、アイルにはもっといい声で鳴いてもらおう。覚えさせたテレパシーが無駄にならないように、この子にはもっともっといろんなことを覚えさせねば。
 そうだ、家事の一つや二つ覚えさせてみるのもいいかもしれないと、力尽きたアイルをよそにユウジは考えにふけるのであった。
----
皆勤賞を狙いたい……そう思った結果がこれだよ!!

いや、ね。コンセプト的には、[[コミュニケーション]]が『ホワイトフォレストを舞台に女性主人公が活躍するお話』ならば、こっちは『ブラックシティを舞台に男性主人公が活躍するお話』だったんですよ。エロ有りと無しでも対になっておりますし……だからって人気まで対になることなかったじゃないかorz
もともと、参加することに意義があるのだと急いで描いた作品ではありましたが、この結果は予想外でした。

と、とりあえず……読んでくださった方はありがとうございます。
----
**コメント [#y11628e5]
**コメント [#w9c4c619]
#pcomment

IP:182.170.114.229 TIME:"2012-10-16 (火) 22:05:27" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AF%E6%89%8B%E5%8F%96%E3%82%8A%E8%B6%B3%E5%8F%96%E3%82%8A" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

トップページ   編集 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.