ポケモン小説wiki
僕のスペシャルタネ の変更点


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「そいやあっ!!」
 先頭に立つブイゼルが、首の浮き袋を張らして快活な号令をかける。
 息を合わせた我々は、一斉に力を込めて巨大な籠を持ち上げた。
 目の前には、青々と葉を茂らせた枝で天を覆う一本の大樹。
 辺りを見回すと、我々同様に大籠を担いだポケモンの群があと2組。
 赤い籠の群。黄色い籠の群。我らの上には青い籠。
 その3群で囲んだ真ん中には、幹の前に立つ影4つ。
 内3頭はそれぞれに、籠と同じ色の羽織を纏ったポケモンだった。
 赤い羽織のヒヒダルマ。黄色い羽織のシママ。そして青い羽織の、
「うお~っ! やったるぜぇっ!!」
 ひと際大きく奇声を上げて、気勢を上げているジグザグマ。
 唯一羽織を身につけていないのはルンパッパで、つば広の帽子に似た葉の下で丸い身体をリズミカルに揺らしていた。
 と、おもむろにその大きな手が開かれ、一陣の風を切って振り下ろされた。
「それでは……始め!」
「おりゃあぁぁぁぁぁっ!!」
 合図を受けて、真紅の豪腕が、黄を翻した白黒の蹴撃が、青に包まれた茶白の体当たりが。
 大樹の幹へと、続けざまに撃ち込まれる。
 ドゥンッ!!
 鳴動が幹を駆け昇り、天を震わせて。
 ざぁ……っとざわめく音と共に、雨が降り注いだ。
 赤、橙、黄、緑、青、紺、紫、桃。
 8つの色に彩られた、木の実の雨が。

 ☆

 高原の彼方に開けた、ルンパッパたちが暮らす緑豊かな村、パッパ・ヴィレッジ。
 この地にそびえる大樹は、7月~8月という真夏の時期に、鮮やかな色とりどりの実を結ぶ。
 硬くて水気がなく食用には的さないが、粉にして火薬と混ぜ合わせると、実の色に準じた色合いの炎を放つ。このため花火の原料として活用され、『花火の木』になる『花火のタネ』として知られていた。
 とりわけ、5年周期で僅かに採取される『スペシャルタネ』と呼ばれる珍しい実からは、昼の青空すら華やかに彩るほどに光輝く最高の花火が生まれるのだ。
 生来陽気でお祭り好きなルンパッパたちは、スペシャルタネがなる頃になると、広く各地から大勢のポケモンたちを呼び寄せて花火のタネの収穫を手伝わせたのち、彼らと一緒にできあがった花火を打ち上げては、踊り歌ってパッパ・ヴィレッジ中を練り歩き、様々な催し事を開いて賑やかに祝うのである。
 これが5年に1度の大祭『ルンパ・カーニバル』。2009年に行われた前大会は、『ポケモンだいすきクラブ』が協賛したため人間も大勢参加したので、覚えている人も多いだろう。((ブラウザゲーム大会『夏休み大作戦2009』。ちなみに5年に1度と言うのは公式設定。))それから5年目となる今夏、いよいよ2014年度大会を迎えたのであった。

 ☆

 花火のタネ集めは、祭りの準備であると同時に、それ自体が既に祭りの一環でもある。
 集められたポケモンたちは、仮宿に選んだ場所で3つのエリアに分かれ、タネの収穫量を競い合うのだ。
 赤い籠と羽織は&ruby(ピュール){『炎』};・エリア。黄色い籠と羽織は&ruby(フォース){『雷』};・エリア。((フォースを直訳すると『力』だが、この3エリアはジョウト3犬に対応しているので、ライコウのエリアであるフォースは『雷』に意訳した。))青い籠と羽織は&ruby(ヒュドル){『水』};・エリア。
 定められた時間内で、木を揺さぶってタネを落とし、籠に受けた数で勝負を決める。珍しいスペシャルタネなら、普通のタネ10個分だ。
 対戦はカーニバルのグランドフィナーレまで毎日行われ、その日1位を取ったエリアのポケモンたちには、夜の花火大会での特等席とご馳走が与えられる。更に最終日までの累計で1位となったエリアのポケモンにも賞品が用意されているそうだ。
 だが、最高の報奨である参加賞は、祭りで身をぶつけ合う高揚感そのもの。
 籠で受け損なってこぼれたタネが甲羅や鰭を穿つ度に、身を砕くような痛みが迸る。籠を先導しているブイゼルなど、小麦色の額を赤く滲ませている有様だ。それでも我々が笑って籠を担ぐのは、唯ひと重にその悦びのためなのであった。

 ☆

「どっせいっ!」
 ヒヒダルマが逞しい両腕で、幹に強烈な揺さぶりをかける。
「うわあぁっ!?」
 地面ごと揺るがすほどの激震に、シママとジグザグマは弾き飛ばされた。さすがにパワーでは、今回ピュールが圧倒的に優位か。
「何くそ負けるかぁっ!!」
 しかし、ジグザグマは果敢にも立ち上がり、再び幹に身体を打ちつける。
「何度倒されても諦めずに戦い抜いて、最後に勝利を掴み取るのがヒュドル魂だ! 前大会だって、そうやって大逆転で総合優勝を決めたんだからな! 今回も絶対勝ってやるぞおぉぉっ!!」
 熱い。炎ポケモンのヒヒダルマよりも熱い。っていうかむしろ暑苦しい。ヒュドルの仲間でなかったらアクアジェットでツッコんでやりたいところだ。
「まったく、ジグザグマさんときたら……」
 鼻白んだのは私だけではないようで、先導役のブイゼルも、血と汗を拭いながら呆れ顔でボヤいていた。
「相変わらず、毎度の事ながら、今回はいつにも増して身も蓋も何もありゃしませんよ。本当にどうしたらあそこまで開き直れるのやら。いやはや、何をか言わんや……」
「というと、お友達で?」
 ふと訊ねてみると、ブイゼルは苦笑を浮かべながら2本の尻尾をまとめて振った。
「あぁ、あなたのところは、5年前はまだパッパと交流がなかったから知らないんですね。あのジグザグマさんは前大会でもヒュドル・エリアで僕と一緒だったんですが、とにかくルンパッパさんたち以上のお祭り好きの上に超のつく負けず嫌いな方でして。ランキングのつくイベントに首を突っ込んでは、勝つためになりふり構わず暴れ回る大会荒らしとして有名だったんですよ。僕もしばしば巻き込まれては酷い目に遭わされたもんです」
「ふむ、しかしお祭りですからな。あれぐらい殻を破っても文句は言えんでしょうなぁ……お察し申し上げる」
 暑苦しいジグザグマを庇うのではなく、文句を言えないブイゼルに同情する意味での感想だった。
「ははは、そう思ってあげたいところですが、あの方の場合、大会以外は殻に籠もってばかりという問題もありまして。あの無駄なやる気を半分にして普段に回せばいいのに、ってみんな言っていますよ」
 などと、口では閑談に興じながらも、ブイゼルは間断なく前脚を振って指揮を執り続けていた。
 これが実に的確で、籠をタネが多く落ちてくる下へと効率的に誘導していく。たちまち青い籠の中が極彩色のモザイクで埋まっていった。大した手腕だ。前大会の総合優勝にもさぞ貢献していたのだろう。
 と、頭上の枝に、青い煌めきの影が見えた。
 青く神秘的な光を宿す、交差する2枚の環に縁取られた、それは大ぶりのタネだった。
「あれは……スペシャルタネ!?」
「ジグザグマさん!」
「よっしゃキターー!!」
 雄叫びを上げて、ジグザグマは羽織の下から朱い塊を取り出す。
 パンチング・グローブ。打撃力を増す公認アイテムだ。
 手早く左前足に装着すると、茶白のジグザグ模様を骨格的に無理のある方向に捻って、竜巻の如きコークスクリュー・フックを繰り出した。
「うおおっ! 唸れ、ブーメラン!!」
 ギャラァァァァッ!!
 自乗した威力が、有り得ない爆音を轟かせて炸裂する。((往年の人気ボクシング漫画『リングにかけろ』より、主人公高嶺竜児の必殺ブロー『ブーメランスクエアー』。))
 グローブの効果らしいが、深く考えるのは諦めよう。
 余りの衝撃に大樹が傾ぎ、勢いで枝が大きくしなって、スペシャルタネがちぎれ落ちる。
「やった!」
 ――と思った刹那、しなり切った枝が跳ねて、スペシャルタネを振り飛ばした。
 宙を舞った青いスペシャルタネは、幹を飛び越えて反対側に落ち、下にいたフォースの黄色い籠の中にパサリ、と収まった。((木の裏側にいる籠にタネが入ってしまうバグ。))
「あ゛~~~~っ!?」
「うっひょお! 超儲け!!」
 ヒュドルの悲鳴とフォースの歓声が、明暗鮮やかに重なった。
「何やってんだ下手くそ共ォっ!? せっかく落としたんだからちゃんと拾えよ!!」
 一発でズタボロになってしまったパンチング・グローブを振り回してジグザグマが怒鳴る。あんな不規則な落ち方をされて、どうちゃんとしていたら拾えたのかと言い返したくなったが、実際捕れなかったのは我々なので、顎を噛み締めて罵声に堪えるしかなかった。
「今度スペシャルタネを落としても捕れなかったら、お前ら全員の恥ずかしい話を世間に吹聴してやるから覚悟しろ!」
「……はぁ!?」
 続いた恫喝を、しかし今度は聞き流せなかったらしく、ブイゼルが白い眉を釣り上げる。
「それは、『ちゃんと捕れたら吹聴しない』という意味だと思っていいんでしょうね!? 5年前に僕にしてくれた仕打ちの数々、まさか忘れたとは言わせませんよ!?」
「ぎくっ!?」
 なんか図星らしい。5年前に何があったのかはあとで訊くしかないが、あのジグザグマの前では迂闊に殻を破らぬようにすべきだということはよく解った。
「やったぁ、またミラクルゲットォッ!!」
 つまらない件でもめている内に、またしてもフォースが、今度はピュールの籠の縁で跳ねてこぼれた、スターの実に似た形状の紅いスペシャルタネをリバウンドキャッチしたところであった。((これもよく起こった現象。))
 悲喜こもごもを飲み込んで、祭りの風は熱を増していく。

 ☆

 稲妻の5連撃((『リングにかけろ』より、志那虎一城の必殺ブロー『スペシャルローリングサンダー』。))を打ち尽くしたシママが、破れたパンチング・グローブを脱ぎ取って蹴り捨てるとほぼ同時に、クワッ! とルンパッパの声が鳴り響く。
 残り時間があと僅かだという事を知らせる合図だった。
 現時点で、フォース・エリアの籠には、調子良く集めた様々な形のスペシャルタネが並んでいる。
 ピュール・エリアの籠にも、先刻ヒヒダルマがパンチング・グローブによる銀河をも撃ち抜く拳((『リングにかけろ』より、剣崎 順の必殺ブロー『ギャラクティカマグナム』。))で見事に落とした、紫地に黄色い帯が入った毬のようなスペシャルタネが転がっていた。
 それらに対し、我がヒュドル・エリアの籠は、普通のタネこそブイゼルによる巧みな指揮のお陰で群を抜いていたものの、スペシャルタネはジグザグマの要領と運と性格の悪さが災いしてか、いまだに一個も採れていない有様だった。
 いくら普通のタネの数では勝っていても、10個分もの得点になるスペシャルタネで差をつけられていては、ピュールはともかくフォースには恐らく届かないだろう。
 既に全エリアがパンチング・グローブを使い切っており、これ以上スペシャルタネが落ちてきそうな気配もない。最早大勢は決したか。
「ところがどっこい、かくなる上は最後の手段っ!!」
 突然妙な声を上げて、ジグザグマが大樹に跳びついた。
 幹の表皮に爪を立てて、器用にヒョコヒョコと登り始める。
「何だ? あいつ、登ってどうする気だ!?」
「まさか、タネを直接木から物拾いする気か!? 反則だぞ」
 このタネ集めは、あくまで叩き役が木を揺らして、落ちてきたタネを籠で受け止めるルール。木に登ってタネをもぎ取ったり、地面に落ちたタネを拾って籠に入れても点にはならない。認められていない技や道具を使ったり、叩き役以外が木を揺らしたりしても得点を無効にされる。
「ちょ、ちょっとジグザグマさん!? あなた一体、何をやって……!?」
 ブイゼルの詰問を遮るかのように、ジグザグマは羽織の懐から何かを投げ落とした。
 紅白に塗り分けられた球体、モンスターボール。
 しかし地に着いた途端、そのモンスターボールはズドンッ! と十数倍に膨れ上がり、私の身長と同じぐらいの直径にまで巨大化した。
 紅い部分に口が開いてニヤリと嗤う。
 白い部分に円らな双眸が怪しく閃く。
 そして天頂部には、くるりと曲がった矢印模様。
「マルマイン……!? でも、何だあの矢印の輪は?」
「さぁ……? どっちにせよ、マルマインにタネを落とさせたって得点には…………」
「違う……!?」
 いち早く事態を理解したブイゼルが、声を戦慄かせて叫ぶ。
「ジグザグマさんが落とそうとしているのは、木の上のタネではありません! 僕たちが持っている、籠の中にあるタネの方です!!」
「な、何ィ~~っ!?」
「ふはは、そのとーりっ! こいつの名は籠全滅マルマイン、F5君だ!((『花火のタネ集め』は1日1度しかできないゲームだったが、終了前にブラウザを更新(F5キー)する事で何度でもやり直せる裏技があった。)) 大爆発で籠をひっくり返して、全部チャラにしてくれるわ!!」
 高笑いするジグザグマ。わざわざ行おうとする悪事を自ら解説する事もないだろうに。調子に乗るにもほどがある。
 しかし確かにジグザグマの言う通り、試合終了時点で全エリアの得点が同じ……例えば0点ずつだったりならば仕切り直して再試合となる。あの矢印の輪は、振り出しに戻すという意思表示か。((ブラウザの更新マーク。))
 終局直前に碁盤を転覆させようとする暴挙に、たちまち怒号が噴出した。
「くらぁーーっ! リセットするなぁ!!」((『どうぶつの森』より、リセットさんの決め台詞。))
「汚いなさすがヒュドル汚い!」
「あの野郎、毛柄だけじゃなくて根性までジグザグにひん曲がってやがる!!」
 と、他エリアから抗議が上がれば、
「やめろみっともない! ヒュドルの面汚しめ!!」
「あんた、ヒュドル魂はどこへやったんだよ!?」
「本気なんですか!? 私たちが頑張ってタネを集めた時間が、何もかもなかった事になっちゃうんですよ!?」((『どうぶつの森』より、村を作り直す時にしずえさんが言う台詞をアレンジ。))
 と、ヒュドルの仲間からも非難が飛ぶ。トップのエリアはもちろん、下位にとっても、重い籠を背負ってタネの礫に打たれた苦労がやり直しになるなど冗談ではないのだ。
「ジグザグマさん、悪ふざけもいい加減にしてください。 よりにもよって大会で、ここまで無茶苦茶して許されるとでも思っているんですか!?」
 ブイゼルも厳しい叱責を突き付けたが、しかしジグザグマは動じることもなく、それら全てを鼻先でせせら笑った。
「もちろん許されるさ! なんせ、前大会じゃエリアを問わず、みんなF5君のお世話になっていたんだもんねっ!!」
「あ~、そう言われれば、なぜかちょくちょく籠が全部倒れて仕切り直しになってたなぁ」
 ルンパッパが脳天気にも納得していた。審判仕事しろ。
「はっはっは! 逃げたい奴は急いで逃げろ! タネ満載の籠を運びながら、爆発の効果範囲外まで逃げ切れるものならな! それじゃF5君、大・爆・はーーつ!!」
 悪役ノリを悪ノリに極めたジグザグマが、幹の上からとどめの指令を下す。が、一瞬早く――

「お願いします、アバゴーラさん!」
「心得た!」

 ブイゼルの合図を受けて、私は飛び出していた。
 マルマインを前に踵を返し背を向けて、甲羅に秘めた力を解き放つ。
「ワイドガード!!」
 甲羅の形を取った光の盾が、私の背中から大きく広がる。
 次の瞬間、ズガアンッ!! と空気を打ち割って襲いかかってきた爆風を、しかし私の盾はいずれの籠にも届かせる事なく完璧に遮った。
 行き場を失った爆風は、逆流してぶつかり合い、渦を巻いて上へと向かい。
 幹からジグザグマを攫って、天に舞い上げた。
「…………へ?」
 起こった事を理解できなかったか、パッチリ開いたままのくりくり目玉が、張り出した枝に叩き付けられる。
「ホゲエェェェェッ!?」
 反動で弾き返され、爆速で急降下する茶白の毛玉。このままでは地表に激突した挙げ句、貫通して地獄へと一直線である。
「全速前進!!」
 ブイゼルの号令一番、ヒュドルの籠が走り出す。ワイドガードを解いた私も即座に列に加わった。
 いまだ立ち込める爆煙の残滓を掻き分けて突き進み、流れ星のように落ちてきたそれと地面との間に、最後にはほとんど投げ出す勢いで青い籠を割り込ませる。
 ザシャアァッ!!
 8色のタネが激しく踊り、その内側でキュウ、と茶白のスペシャルタネが気絶した、丁度その時。
 クワックワックワワァッ!! と、ルンパッパの三連呼が、試合の終了を告げたのだった。

 ★

「っておい待て!? 今の何!? 僕がスペシャルタネって、え、どゆことぉ~~っ!?」
 黄昏も色濃い、パッパ・ヴィレッジの丘の上。
 &ruby(そら){宇宙};を貫く槍の如き特大ロケット花火の円筒に縛りつけられて、茶色に白のジグザグ模様が入ったスペシャルタネが喚いていた。
「言葉の通りです。あなたを入れて本日の勝利エリアはヒュドルに決まりました。ルンパッパさんにも、ピュールやフォースの皆さんにも納得して頂きましたので悪しからず」
 祭りの傷を治療した可愛らしい顔に、小悪魔な笑みを浮かばせて語るブイゼル。その後ろには我々ヒュドル・エリアの面々が肩を並べ、打ち上げの時を楽しく待っていた。
「いや悪しいよ!? 何考えてんの、これガチでシャレになってないから!?」
 何を考えていたのかはこっちがそっちに訊きたい話だ。大爆発はシャレの内か。
「あなたの存在自体がシャレそのものです。シャレらしく今夜はジグザグ祭りということで、景気よく盛り上げて行きましょう」
「上げる方向と方向性が著しく間違ってるし!? それに、ダジャレオチでいいならヒヒダル祭りでもシマ祭りでもいいじゃないかぁっ!?」
「あなたを打ち上げる事にこそ意義がある!!」
「異議なし!!」
 私も含めた異口同音の咆哮が丘にこだまする。
 当然である。この決着を納得して貰うため、勝利エリアへの賞品である祭りのご馳走を他の両エリアに譲ってまでして、みんなここに立っているのだ。
 最高の報奨は、祭りの高揚感そのもの。こんな美味しい肴を今更他に譲ろうなどと思う者は、誰もいなかった。
「ほ、ほら、みんなイギはないって……」
「打ち上げ賛成って意味でしょどう考えても! 夏の星座にでもぶら下がって、上から花火を見下ろしていらっしゃい!((アニメ『まっすぐにいこう。』のED『花火』のサビの一節。こんなに好きなんです仕方ないんです♪)) それではルンパッパさん、点火をお願いします!!」
「O・K♪」
「いぎぃぃぃぃっ!? ちょ、ちょ、ちょ……」
 足掻く声を尻目に、ルンパッパが大きな拳を真っ赤に燃やし、炎のパンチを導火線に打ち当てる。
 炎が導火線を根元まで舐め尽くすのに、大した時間はかからなかった。
「ちょっとたンまやあぁぁぁぁぁぁーーーーっ!?」
 スペシャルタネの虚しい悲鳴が、灯りかけの星空を引き裂いて遠ざかり、やがて――――
 ドッカァーーーーンッ!!
 と、大輪のジグザグマ花火を咲かせたのであった。

 ~おしまい☆開会日から丁度5年目の2014年7月22日に~

 [[茶白のスペシャルタネ>狸吉]]の[[第六回短編小説大会>第六回短編小説大会のお知らせ]]参加作品
からたち島の恋のうた・豊穣編
 ''~&ruby(たぬきち){僕};&ruby(=){の};スペシャルタネ~''

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*ノベルチェッカー結果 [#a494d00a]
【原稿用紙(20×20行)】	23.7(枚)
【総文字数】	7223(字)
【行数】	198(行)
【台詞:地の文】	30:69(%)|2211:5012(字)
【漢字:かな:カナ:他】	32:47:13:5(%)|2377:3467:979:400(字)
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*ツッコみどころだらけのあとがき [#h5809deb]

 匿名参加の短編小説大会に、[[自分の作品>波乗りNight☆Stage]]のキャラを出しただけでは飽き足らず、''作者自ら出演''するという神をも恐れぬ暴挙をやらかした挙げ句、優勝まで頂いてしまいました、ジグザグマの狸吉ですw

**『ルンパ・カーニバル』 [#n1d88aab]
**『ルンパ・カーニバル』 [#h7b194df]

#ref(2009プロローグ.jpg)
&color(#808000){ハルキ「この『ルンパ・カーニバル』は''5年に1回''開かれる大イベントで、ポケモンもいっぱい遊びに来るんだよ」};

『まつり』がテーマということで、物の試しに&ruby(ルンパ・カーニバル){過去の栄光};を掘り返して、これを見つけた時は盛大に吹きました。2009年の祭りが〝5年に1回〟ということは、次回の開催は今年、っていうか今ってことじゃありませんか!?
 余りにタイムリー過ぎて、もしやrootさんに誘導されているのではとまで疑いましたがw、とにかくそうと分かった以上、今回この祭りで行くのは当然、僕と泳流ちゃんの参加も必然だったのです。''『フレ! フレ! ポケライン』の覇者''が出ないことには祭りが始まりませんので!!
 とはいえ仮面は被らなければいけませんが、実は『[[波乗りNight☆Stage]]』では、僕は人間のヘタれたおっさんとして『フレ! フレ! ポケライン』のコンダクターを務めていたことになっていましたので、今回は''ジグザグマの仮面''を被りました。これで正体については問題なしですね。どこからか巨大なアイアントの足音が聞こえてきましたが、空耳でしょう。
 すみません冗談ですw もちろん最低限の仮面として、例えば『フレ! フレ! ポケライン』の順位など、100%僕や泳流だと特定される情報は隠してあります。単に『前大会でヒュドル・エリアに所属していた、お祭り好きなジグザグマ』なら、僕の他に何頭いたっておかしくはないわけですしね。ね?
 ポケラインが使えないこともあって、ネタにするミニゲームは、エリア対抗戦で盛り上げやすい『花火のタネ集め』にすぐ決まりました。

**アバゴーラ [#j49d358f]

 僕や泳流を主人公にすると、どうしても余計なことを口走りそうだったので、5年前のことを知らない第5世代以降のポケモンを語り役にしました。
 &ruby(ヒュドル){『水』};・エリアらしい水ポケモンで、大爆発を使わせつつ爆風から籠を守れるポケモン((湿り気などで大爆発そのものを防いでしまったら、僕が吹っ飛べないため。))ということでアバゴーラを選んだのですが、ついつい思いつくままに殻ネタを使いまくったので、却って仮面の露出度が上がってしまったようなw
 クライマックスの盛り上げを狙って、活躍場面の直前まで種族名を伏せてみました。作者の方はろくに自重していないのにwww

**その多ネタ [#t7a3193a]

 F5ブラウザ更新による籠リセットを宣言した時、抗議の声の中に、特別ゲストとして『どうぶつの森』から御二方ほど出演頂いていますw こんなHNを使っていながらぶつ森未プレイの身ですので、ネットで台詞を検索して描きました。
 リセットネタにリセットさんを使うのは普通にお約束なので、まさかぶつ森キャラを出したことで作者を狸吉だと特定できた人はまずいないでしょう。なぜか庭のバタフリーがバタバタと悶死路蝶になりましたが、原因は不明です。

 パンチング・グローブの技は、アイテムの効果とムリヤリ理屈立てて、小さい頃大好きだった『リングにかけろ』のネタを盛り込みました。っていうかある意味、本作自体が『リングにこけろ』((1980年に週刊少年ジャンプで開催された、人気作家による読み切り漫画コンテスト『愛読者賞』の第9回大会で、『リングにかけろ』の作者車田正美が描いた自己パロ漫画。作者とアシスタントがリンかけのキャラに試合を挑んで、全員返り討ちに遭うという内容。読者投票で愛読者賞1位となった。))みたいなものですがwww

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*投票時に頂いたコメントへのレス [#l8997516]

>>2014/07/29(火) 22:28さん
>>もはや安定と言っていいくらいの透明な仮面!安心の笑いのクオリティ!迷わず1票入れさて頂きます! 
 何かもうバレという次元でなくてすみませんw 今回はセミヌードの限界に挑戦しちゃいましたww 確信の上での投票ありがとうございます!

>>2014/08/01(金) 02:32さん
>>成長が見れて楽しかった
 泳流ちゃんのことでしょうか。『[[波乗りNight☆Stage]]』以来の登場となりました。
 ポケラインの戦績について語るわけにはいかなかったため、その分チャンピオンらしい指揮能力をアピールしています。
 僕にとって、持ちキャラの中でもトップレベルに思い入れのある娘ですので、また彼女とタイトルが取れて嬉しいです。お楽しみ頂いてありがとうございました!

>>2014/08/03(日) 00:28さん
>>公式でやってたイベントですね、懐かしい。
 本当に懐かしいですね。気づけばあっという間に5年も経っていました。……その間長編が一切進められていないという事実orz 

>>哀れジグザグマ、最後は名前すら呼んでもらえないとは…w
 タイトルで既に、『&ruby(ジグザグマ){僕};のスペシャルタネ』ですからw

>>とにかく所々に小ネタが挟んであり面白かったです。 
 何ぶん古いゲームなので記憶と手元の資料だけでは足らず、当時の2chログや攻略サイトなどを掘り漁ってネタを集めました。評価頂いて報われました。ありがとうございます!

>>2014/08/03(日) 14:41さん
>>面白かったです(笑)
>>ポケモンたちが必死に頑張ってるのに、それを滅茶苦茶にしようとするジグザグマの行動の対比が良く表れていたと感じました。
>>そしてあの人なのだろうなぁ(ガラスの仮面 
 プレパラートのカバーグラス並みな仮面でしたw 多分察しの通りのジグザグマです。投票ありがとうございました!
 実物はいくらお祭り好きといってもここまでテンションが上がることはまずないのですが、空気の読まなさぶりに関してはまんまだと言えますw (小説大会にこんな作品を描いてくる時点でwww)
 
>>2014/08/03(日) 23:40さん
>>テンポのいいギャグと花火落ちでとある米国のネコとネズミのアニメを思い出してしまいましたw
 いわゆるカートゥーン的表現って奴ですね。どうせぶっ飛ばされるのは僕なんだからと目一杯はっちゃけましたw

>>1万字という限られた文章の中でここまでタネを詰め込み、体を張って楽しませてくれたジグザグマさんに一票。
 はっちゃけまくった結果、僕の短編小説大会作品としては最長の文字数になりました。第六回仮面小説大会の両作品よりも長くなっています。(というより『[[風船彼女]]』と『[[イカサマトレード]]』が短いんですがw)
 最初は『自爆』や『捨て身』など、体を張ったらしい言葉をタイトルに入れようと考えていましたが、捻りを加えて『僕&ruby(=){の};スペシャルタネ』なりました。決勝の一票をありがとうございます!



 熾烈な大接近の中、皆さんの支持を受けてWiki大会4度目、短編小説大会では3度目の栄冠に輝けました。
 次回の大会ではもう少し自重しつつw できればそろそろ自重しなくていい方向でも頑張ろうと思います。改めて、本当にありがとうございました!!

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*コメント帳 [#n2d7c2bb]

・狸吉「それではまた、2019年にお会いしましょう!」
・泳流「5年後もやる気とかっ!? また小説大会でやらかす気なら、さすがにもう付き合いませんよ!?」

#pcomment(スペシャルタネへのコメント帳);

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[[歪んでいます……おかしい……何かが……物語のっ……>カラタチトリックルーム豊穣編短編#q7a4b3fb]]

IP:27.135.39.246 TIME:"2015-02-11 (水) 22:10:15" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.3; Win64; x64; rv:25.2) Gecko/20150122 Firefox/31.9 PaleMoon/25.2.1"

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