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五月蠅い竜と俺との無駄話 の変更点


Writer:[[&fervor>&fervor]]
&color(red){*官能小説です。そういった表現がいくつも含まれておりますので、お気をつけ下さい。};
&color(red){*また、この作品は};&color(white){自慰、人×ポケ、3P};&color(red){を含んでおります。駄目な人はお帰りください。};
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目の前で崩れ落ちるのは一匹のムクホーク。翼には無数の水滴と小さな氷塊。
その前に立ち、勝利の味をゆっくりと噛みしめている俺。
後ろで年甲斐もなく歓喜しているのは、紛れもなく俺のパートナー、ルーフその人だ。
…まったく、恥ずかしいってーの。…でもまあ、喜んでくれるのは嬉しいけどさ。

「今日も快勝、快勝っと!…やっぱ俺たち、強くなったよなぁ?!」
これで現在五連勝目の俺たち。今までこんなに勝ったことが無かったルーフは、今までになく上機嫌。
「だよな。…この調子で、また次も勝とうな、ルーフ!」
なんだかんだで俺もけっこう浮かれているわけで。うきうきしながら帰路に着く。
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そんないつもの帰り道。さほど大きくもない、その割にはきれいな池。その隅には見慣れない物が。
そのひょろっと細長い、青と白で出来たぐにゃぐにゃ。…ハクリューが、そこに転がっていた。
俺とルーフはお互い目を合わせ合って、お互いに首を振って。…俺は知らないし、ルーフも知らないみたいだ。
この池にハクリューが住んでいるなんて、聞いたことがない。
「あ、ちょっとそこの貧乏そうな人間のお兄さんとグレイシアさん。…君たちなら僕の気持ち、分かってくれそうだね」
…とりあえず、失礼な奴だということだけは分かった。見ず知らずの奴らにそんな声はかけないだろ、普通…。
「スフュール。…行こう」
「…ああ、そうだな」
こんな奴の声は聞かなかったことにしよう。そう思った上で、俺とルーフはそそくさと家に歩を進める。
「ま…待って待って!…ひどいよもう!…普通、困ってそうなポケモン見たら助けたくなるでしょ?!」
どうやら…たちの悪い奴に捕まったらしい。それにしても、…聞いてると苛つくな、こいつの声。
暫く立ち止まり、考えた末に。…ルーフと俺は、そいつの側まで行ってやることにした。
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そいつの側まで行って、どっかりと座り込んでいるルーフ。俺はその間で、ちょこんと座っている。
「で、どのようにお困りでございましょうかねぇ…?」
イライラが言葉から伝わってくる。…ルーフ、顔が怖いって…。
そんなことは意に介さず、お気楽な調子で話を始めるこのハクリュー。
「あのさ、僕、結構生活困っててさ。捨てられちゃって。…で、何にも食べてない訳よ。だから、何か食べさせてよ」
…あまりのアホっぷりに声も出ない。ただただ苛立ちだけが募っていく。
「…スフュール、ちょっとどいてくれ。…一発殴らせろ」
文句はない。何も言わずにスペースを空ける俺。ルーフは思いっきり腰をひねって、固く握った拳を思いっきり…。
「だから、僕の話聞いてよもう!…君たちも貧乏だから分かるだろうけど、とにかくお腹が空いたわけ。
 で、特に行く当てもない、このかわいそうなかっこ可愛いポケモンを、君たちは殴ろうとするわけ?
 全く、近頃こういう情けの欠片もない若者多いよね。僕がせっかくこうして頼み込んでるのに。
 大体、最近の社会が悪いんだよ。成績だけで中身の無いような馬鹿な奴らがはびこってさぁ。
 そういう奴らに限ってまた出世して金持ちになって。…不公平な世の中だよね。
 僕みたいなか弱い美少年はやっぱりお金とは縁がないんだよね。『色男金と力はなかりけり』ってよくいったもんだよ。
 昔ながらの暖かみのある地域社会とか、人間やポケモンが持ってた助け合いの心とか、どこやったんだか。
 こういう血も涙もない人間とポケモンがはびこるようじゃ、この世界もそう長くないって。
 そもそも君たちみたいにすぐかっとなって殴ろうとするような奴が居るから社会の空気が悪くなるんだよ。
 殴る前に自分達に非がなかったか、とか考えないのかなぁ?…自分のやることには責任がつきものなんだから。
 言ったりやったりする前にまずは自分達の行動を冷静に考えるとかしたらどう?…そういう冷静さが欠けてるから駄目なんだよ。
 後で冷静になったら自分が悪かったです、ごめんなさい。で通用するとでも思ってるのかな?…甘いよねぇ、ほんと。
 まずは責任感を持って行動するのが大事だよ。…う~ん、自分でもいいこと言うなって思ったよ、今。
 僕みたいに賢いポケモンや人間が増えれば少しはましになるはずなんだけどねぇ。
 尤も、そんなこと言っても僕一人の力じゃ限界があるからなぁ。…今はこの目の前の馬鹿を諭すので精一杯。
 まあ、これで君たちも少しは常識人、常識ポケとしてまた一つ賢くなれたわけだから。
 僕に感謝の意を表するのが当たり前だよね。…僕、本当に偉いなぁ。自分で自分を褒めても絶対いいと思うな。
 賢くてかっこよくて可愛くて性格良くて。…僕の欠点を見つけるのが難しいくらいだよ。
 お金なんてそんなものを考える凡人とは違うからねぇ。ただ、よく考えたら頑張りすぎかな?
 ついつい人に色々諭しちゃうんだよねぇ。…僕が賢すぎるから駄目なのか。
 それだからみんな僕を妬んだりしちゃう。…はぁ、僕って罪なポケモンだよねぇ。
 そんな僕が君たちの家にお邪魔してあげるなんて、最高の名誉だと思わないと。
 あ、ひょっとして萎縮しちゃってる?大丈夫だって、僕はきちんとした食べ物なら何でも食べてあげるから。
 そんなに高価な物じゃなくてもいいんだよ?大切なのはなんと言っても心だからね。
 僕に対する感謝がこもってれば、後はどんな食べ物だって大丈夫だよ。さ、そろそろ行ってあげるから。
 ほら、どうしたの?もっと喜んでもいいんだよ?…あ、照れてるの?…そんな反応されると、こっちが照れちゃうなぁ…。
 固くならなくても、友達感覚で話してくれればいいからさ。…あれ…どうしたの…?」
話を無事聞き終えた俺たちは、どうやってこいつに天誅を下そうか考えていた。
「スフュール…何発までならいいと思う?…俺としては16発ぐらいかな、って思ってるんだが…」
ルーフが細々と俺に話しかけてくる。…当然、あいつには聞こえないように。
「じゃあ、俺があいつの周りの地面、凍らせて動けなくするから、…24発ぐらいならいいと思うぞ。それぐらいは許されるだろ」
…よし、あとは実行あるのみだ。…俺は地面に付いていた奴の尾を完全に凍らせる。もう身動きは出来ない。
「あ、あのさ、僕の話聞いてた?…ちょ、ちょっと待って…偉そうに語った僕が悪かったからさ…許してよ、ね?」
俺は、そしてルーフはにっこりと奴に微笑みかける。あいつもそれにつられて微笑みを返してくる。
「………許すかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
ルーフは超特大の"メガトンパンチ"――と言ってもいいくらいの勢いのパンチ――をそいつに思いっきり浴びせまくる。
俺はと言うと、ドラゴン最大の弱点である「氷」の技。"ふぶき"を繰り出す準備をしている。
「ルーフ。交代だ。………喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
…俺とルーフが怒りを発散し終えたのは、それから3分半後だった。
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「ったたたた…酷いなぁもう。さすがの僕でも見ちゃいけない川が見えるところだったよ…」
性懲りもなく、のっそりとしゃべり出すこの竜。…もう一発お見舞いしてやろうか、と一瞬考えてしまった。
「にしてもお前…何で耐えきれるんだ?あれだけ食らったら普通…」
そうだ。確かにおかしい。さすがに本気を出してはいなかったけど…それでも、普通のハクリューなら楽に倒せたはず。
「はぁ。…ほんっとに見る目がないねぇお兄さん達。…い~い?僕は…」
そこまで言ったところで、会話は途切れた。…というのも…。

「おう、そこの兄ちゃん。ポケモンバトルでもしねーか?お前、いくらもってんだ?見せろよ」
この辺には、最近たちの悪い奴らがいるって聞いたけど…こいつらのことか…。
「何でお前らなんかに見せる必要があるんだよ!」
「まあ、別に嫌なら嫌でいいんだけどなぁ。…ただ、少々痛い目見るぜ?」
ルーフの後ろにはもう一人別の男が。…完全に逃げ場を失った。
さすがにルーフも無理だと判断したのか、財布を素直に取り出し、そいつらに見せる。
「…ふ~ん、1万5千ねぇ…ま、そんなもんか。…じゃ、そんだけ賭けて勝負って事で」
「な…、ふざけるな!俺は……」
「何だ?まさか、勝負から逃げるなんて事はないよな?…ほら、そのちっこいので戦うんだろ?早くしろよ」
…まずい、こいつら、絶対強い。…俺なんかじゃ…。でも、戦わないとルーフが…。
何か言いたそうにしているルーフをよそに、俺は奴らの前に出て行く。
「ちょっと待ってよ。…そこのヤンキーさん達。…相手、僕じゃ駄目なの?」
…その男――ヤンキーと呼ばれた奴ら――は当然キレたが、お構いなしに話を続ける。
「…ほら、お兄さん。"いいきずぐすり"ぐらい持ってるでしょ?それぐらいあれば十分だから。…さっさと頂戴よ」
「…でも、そしたらお前が…」
でも、このハクリューはもうやる気みたいだ。ルーフも観念して、"いいきずぐすり"をさっと塗る。
「ありがと、お兄さん。…さて、そこのグレイシア君も下がってくれて良いから。ま、テキトーに片付けるよ」
「適当?…なめてもらっちゃ、痛い目見るぞ、このくそ野郎が!!」
…俺はルーフの隣にゆっくりと引き下がる。…正直心配だ。さっきのダメージも残ってるはずだし…。
ルーフも、今回ばかりは真剣な面持ちで見守っている。それを知ってか知らずか、楽しそうに浮かんでいるハクリュー。
数秒後、奴のかけ声と共に。…火蓋は切って落とされた。
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「じゃ、いつも通り、頼んだぜ、ブーバーン」
あいつが出してきたのはブーバーン。…俺がもし戦ってたら…と思うとぞっとする。
なんて言うか…こう…とにかく分かるんだ。あいつは間違いなく強い。…あの竜、ほんとに勝てるのか…?
「早速行かせてもらうぜぇ…食らいな!」
飛んでくるクロスチョップをひらりと躱し、そのまま後ろに回り込むハクリュー。
もらった、という表情と共にドラゴンの力をため込み――
「そこだ!"れいとうパンチ"!」
口へと溜めたエネルギーを放出する間もなく、ハクリューはまともにパンチを食らい、後ろの草むらへと姿を消す。
その猛攻は止まることなく、さらに放たれる"だいもんじ"。その身体を、炎が容赦なく包み込む。
ハクリューはもう、全く動かなかった。まるで、ただの壊れた人形のようにそこに転がっていた。
「なんだぁ?口先だけじゃねーか。大したことねーな。…マスター、金もらうんだろ?」
「さ、さっさと金出しな。…あんなぼろぼろの奴使って、俺たちに勝てると思うのが間違ってんだよ」
別の男に掴まれたままのルーフは、逃げることも出来ない。…もう駄目だ。…俺じゃあいつらには勝てないし…。
…ハクリュー…俺たちのせいで巻き込んで……ごめん…。
「はぁ…。君たちの目、どうかしてるんじゃないの?…僕はここ。まだバトルは終わってないよ?」
どこかで聞いたような、妙に耳に付く声。空から聞こえたその声に、奴らは…そしてブーバーンは身構える。
「な…お前、どうやって…」
「どうやって、って…普通知ってると思うんだけどな、"みがわり"。…後はただ高みの見物。まあ、その間に色々させてもらったけどね~」
あいつは宙に浮かび、独特な動きの舞を踊っている。…確かあれは…"りゅうのまい"。
自身の気を瞬時に高め、練り上げることで、自らの素早さ、そして攻撃力を上げる技。…まさかあいつ、この間ずっと…。
「ちょうど終わったところだし。…ま、お疲れ様、って事で。…"げきりん"!!」
高速の蒼い竜が、ブーバーンに襲いかかる。限界まで鍛え上げられたその力、その素早さに、対抗できるはずもない。
――あっという間の決着だった。

「さてと。…そこでくすぶってる炎、消しといてねグレイシアさん。…あ、そうだ。…お金くれるんだったっけ?…まさか逃げるとか…ないよね?」
命令されるのは癪だけど消さないわけにもいかない。まだ燃えているその草むら一帯を、俺の冷気で包み込む。
その間に後ろで聞こえた話によれば、…どうやら、素直にお金を置いて逃げたようだ。
無事に消火を終えて戻って来た俺。ルーフと一緒に、ハクリューにお礼を言おうと…。
「これで一件落着だね。やり過ぎちゃったかなぁ…でもまあ、正義の鉄槌って事で。
 それにしても僕、よくやったと思うなぁ。君たちの家計が守られたのも僕のおかげだよ?感謝してくれるよね?
 いや、まあ別に物が欲しい訳じゃないんだけどさ。…とりあえずお腹がね。
 ま、何でも良いからおごってよ。それぐらい当然でしょ?…ある意味『命の恩人』だよ?
 それにしても全く、最近の馬鹿はほんと手に負えないね。身代わりにも気づかないなんて。
 あ、まあ君たちはまだそんなに強くもなさそうだから当たり前かもしれないけど。あいつらには拍子抜けだったなぁ。
 それなりに強いかと思ったのに、技を出すタイミングも威力も全然。これじゃまださっきの"ふぶき"のほうが強かったよ。
 そもそも、"れいとうパンチ"一発であんなに効くわけ無いじゃん。ハクリューだって飛べるんだから、空を見るぐらいしないのかなぁ?
 所詮は単純馬鹿、ってところか。…割と早く終わっちゃったし。…にしても、僕、やっぱり強いなぁ。
 強すぎると今度は抑えるのが大変なんだよね。さっきの"げきりん"も、本気でやったらまずそうだったし。
 …ほんとはもっと暴れたいんだけどねぇ。他に迷惑かけるわけにもいかないし。…我慢だよね、この辺は。
 それに、お兄さん達も僕を見習って、もう少し強くなって欲しいなぁ。…せめて身代わりぐらいは見分けられないと。
 まあ、僕がついでに教えてあげるからさ。きっと馬鹿なりに賢くなれるよ?さ、いこっか!」
ふと隣を見ると、そこにルーフはいなかった。…ただ、長年のつきあいだから分かる。
俺はすうっとハクリューから離れる。その光景を不思議そうに見つめるハクリュー。
ルーフ渾身の"メガトンキック"が無事奴を捉え、奴がボールに収まるまで、あと3秒だった。
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ようやく家に着いた俺たち。気づけばもう外は真っ暗だ。…最近、日が落ちるの早いなぁ…。
「よし。…ま、とりあえず出てこい」
ルーフはボールを宙に放り投げる。紅い光に包まれて出てきたのは、ぼろぼろのハクリュー。
いくら身体はぼろぼろでも、どうやら喋る事には疲れていないらしい。出てきたかと思うともう喋っている。
「…ったたた…全く、酷いよもう!…何度も言うけど、僕は命の恩人だよ?もっと感謝するとかさぁ…
 だいたい、君たちはちょっと怒りっぽすぎるんじゃ…」
…また長くなりそうだ。そんな予感をきちんと感じ取ったのか、ルーフはこいつの話を半ばで遮った。
「…だったらまずはその性格なんとかしろよ…。…はぁ、疲れた…。…とりあえず食え、飯、用意したから」
ルーフのため息は、俺にもよく分かる。こいつの話、いちいち聞いてたらきりがない気がするしな。
というか、どういう生活したらこんな性格になるんだよ。…ったく、せっかく今日はルーフとゆっくりしようと思ったのに…。
「まあ、とりあえずお礼だけは言っとかないとな。…ありがとな、…え~と…お前、名前とかないのか?」
でも、案外律儀なルーフ。…こういうとこだけはほんと、しっかりしてるよなルーフ。
「名前?…前の主人は、ニックネームなんてつけなかったからねぇ~」
用意したご飯を貪り食いしてるこいつ。…米粒たくさん付いてるんだが。…前足とか手とかがないって、不便じゃないのか…?
「なるほど…じゃあ…スフュール、考えてくれ」
…何で俺だよ!…と思わず突っ込んだ俺。…名前、ねぇ…。そんな急に言われても…。
……………………………………………………………………よし、これだ。
「『ボレス』…とか?」
「ふーん…ま、僕はそれで良いよ。…別段悪い名前でもなさそうだし。考えてくれたわけだし。
 色々ありがとう。…ご飯ももらえたし、名前もつけてもらったし。…その分はきちんと働くからさ。
 ほんと、ありがとね、お兄さんも、グレイシアさんも」
意外と素直に喋るボレス。…なんだ、良い奴じゃないか。正直見直したぞ。
…そう言えば、まだ名前教えてなかったっけ。俺もルーフも。
「あのな、もう『お兄さん』って呼ぶのはやめろよ。俺の名前は『ルーフ』だ。覚えてくれよな」
「………『&ruby(馬鹿){フール};』?」
思わず食べていた物を喉に詰まらせる俺。…こいつ、分かってるじゃん。
「違う!!!」
早速一発たたかれたボレス。無性にすかっとする、気持ちいい音が響き渡る。
「まあ…あながち間違いでもないけどな…いたっ!!」
…ルーフの手のひらは寸分の違いもなく、俺の顔にも飛んできた。…ほんとのことなのに…。
「ボレス、こいつはスフュール。…『俺』って言ってるけど、一応雌だからさ、その辺よろしくな」
「りょーかいだよ。…じゃあ、これからよろしくね、ルーフ、スフュール。
 …さて、僕の自己紹介しないとね。…まだ話してないこと、たくさんあるし…」
話してないこと…こいつの過去の話、ってことか。…確かに、どうやってここまで強くなったのか、すんごく気になるな。
「ああ。…お前が良いなら、話してくれないか、お前の…過去の話」
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「僕の前のトレーナーはさ。とにかく強くなって、全国一のトレーナーになるのが夢だったんだよね。
 僕は強いからって理由で育てられて…そのために色々教えられたんだ。…いろんなポケモンの弱点とかもね。
 でもさ、僕はずっとカイリューになるのを渋ってたんだ。…だって、今の姿の方が僕、好きだし。
 そしたら大げんか。しばらくは育ててくれてたけど…さすがに成長も鈍ってきて、ついにキレられてさぁ。
 …で、昨日家をほっぽり出されて、僕も怒りながら出てきたのは良かったんだけど、行く当てもなくて。
 なんだかんだで湖を見つけて、そこで暮らしてたんだけど…さすがにご飯が無くってねぇ~。
 木の実もほとんど無かったからさ、もう無理かなーとか思ってたところに来たのがルーフ達だったんだ。
 最初は正直こんな奴らはやだなぁとか思ってたんだけど…でも、むしろ貧乏な方が僕の気持ち、分かってくれるかと思って。
 何となく声をかけて、僕が説教し始めたらいきなりあれだもん。正直失敗したな、とは思ったね。
 全く、ルーフ達はちょっと短気すぎだよ?これじゃ将来社会に出たとき大変だって。
 過去の話もここまでで、またこの話に戻るんだけどさ。ほんと、責任を考えて行動するのって大切だよ?
 学校でもこういう事を教えないから駄目なんだよ。大体勉強だけ出来たら良いって訳じゃないんだから。
 …いや、ルーフは大丈夫だよ?勉強は出来なくても、『いい人』だから。…ただ、やっぱりちょっとかっとなる癖があるよね。
 欠点はそこ。カルシウムとかきちんと摂ってる?ちゃんと寝てる?…お金無くて、ストレス溜まってるんじゃないの?
 あと、スフュールはもっとおとなしくなったら可愛いと思うんだけどなぁ。…今はちょっと…暴力的だよ?
 まあ、別に雌がどういう性格してようが自由だけどね。これ言ってると男女差別だし。
 ただアドバイスを一つだけ。…君は可愛いんだからさ、もっとこう…雄を誘ってみたらどうかな?
 そしたらきっと……ん?………あ!そっか、ひょっとして二人とも…なるほどなるほど。
 ルーフもなかなかやるんだねぇ、こんな可愛い子に惚れられるなんてさ。うらやましいな~。
 まさか、その先までいったとか?…さすがにそれはないかぁ。でも、二人ともなかなかお似合いだよ。
 二人とも性格似てるもん。そりゃぴったり息も合うって訳かぁ。良いカップルだよほんと。
 …あ、ひょっとして、僕お邪魔だった?…あれだったらさ、いつもはボールに入れて、別の部屋に置いといてくれても良いからさ。
 僕だって君たちのその…いろんな営み、邪魔しようなんて思ってないし。僕は気にしてないから、遠慮無く別の部屋に、ね。
 あ、ここからは生活する上でのお願いなんだけど…お風呂だけは毎日しっかり入れて欲しいな。
 僕の身体、一人では洗えないからさぁ。…ルーフなら洗ってくれるでしょ?さすがにスフュールには頼めないし。
 ほら、僕のこの綺麗な身体、汚れたままにしておいたら傷付くじゃん?…それは嫌だから。
 後は別にないかなぁ。気が向いたら、君たちにバトルの指導もしてあげるから。きちんと知識も持ってるし、僕。
 普段の対戦では僕、見てるだけでお願いね。…だって、この辺り、僕に敵うポケモンほとんどいないでしょ?
 さすがに僕が出るのは卑怯かなって思うし。第一、僕の身体、傷物にはしたくないもんね~。
 もちろん、スフュールじゃ都合悪いときとか、敵わない奴なら代わってあげても良いよ。…本気は出さないと思うけど。
 だってさぁ、本気出したら相手のポケモンやばいじゃん。…それはまずいでしょ、さすがに。
 だけど、たまには本気で戦いたいなぁ…。そうだ、どっか連れてってよ、たとえば大会に出るとかさ。
 『一匹のみ』の大会なら出られるし。何より、きっとみんな強いでしょ?傷付かないように戦うのは大変だけど…楽しそうだし。
 やっぱりずっと戦わないと腕も鈍るし、何よりストレス溜まっちゃうからね。…ま、これはまた今度で良いからさ、一回優勝目指そうよ!
 きっと僕とルーフなら勝てるって!そうそう強い奴もいないでしょ。…う~ん、今から楽しみだなぁ。
 後、スフュールがもっと強くなったら、タッグバトルもできるね。…ああもう、わくわくして来ちゃった。
 …というわけで、強くなろうよ、スフュールも。大丈夫、君、素質はかなりあるみたいだから。
 何しろさっきの"ふぶき"、あれだけダメージ受けるとは思わなかったもん。びっくりしたよあのときは。
 さて、バトルの話はこれくらいにしておくとして…あともう一つお願いがあるんだよね、さっき思い出したんだけど。
 …これは後でルーフに頼もうかな。…お風呂入ったときにでも話すから。
 あれ、そういえばさぁ、ここのお風呂、僕が入ったらきついかな?…でも仕方ないかぁ。本当はゆったり入りたいけど…。
 いやいや、そこまで贅沢言うのも迷惑だよね、ごめんごめん。何しろ君たち、お金無いんだもんね。
 ま、いざとなったら賞金賭けてバトルも良いかもね。…この街の条例、確か…5000円までだっけ?
 みんなきっと、せいぜい賭けて500円だろうけど…それでも、馬鹿な奴は僕を見ても『勝てる!』とか言うよきっと。
 金欠の時は僕に頼ってくれていいからね?…ああ、ぼく、ほんと良い奴だよね。…将来死んだら絶対天国いけるよこれは。
 神様仏様ボレス様、みたいな?いやいや、言いすぎだね、これは。…言わないでよ、こんな事。恥ずかしいからさ~。
 まあ、本当のことではあると思うけど…。でも、それ言い出したら僕、きりがないからねぇ。
 良いとこあげたらもうほんと。…僕ってやっぱ、妬まれてるんだろうなぁ…。何か申し訳ないよね。
 …あれ?………あの~。…………ルーフもスフュールも、どうしたのかな、一体……うわっ!」
俺は前。ルーフが後ろ。ルーフはしっかりと奴の頭を抑えている。もう逃げられない。
「「…………………………………本日三度目の制裁…ありがたく受け取れこのやろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」
俺とルーフが一斉に叫ぶ。…放たれた"れいとうビーム"が、奴の顔に直撃する。
「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
今回の出費は、こおりなおしといいきずぐすり二個。…まったく、金がかかる奴だ、ほんとに。
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「じゃ、スフュール、先風呂入ってくれ。…こいつ洗うのは骨だろうし…」
はいはい、と呆れ気味にうなずいてから、俺は一人風呂場へと向かった。
風呂場のドアを思いっきり押し開けて、思いっきり閉める。…毎度の事ながら、これがなかなか大変だ。
次は蛇口の温度を確認して、栓を前脚で挟み、ゆっくりと回す。…と同時に、冷ややかな水がノズルから零れてくる。
短い毛はしっとりと濡れ、身体に張り付く。濡れた箇所から、どんどんと熱が奪われていく。
…ああ、気持ちいいなぁ…。そんな余韻に浸りながら、ゆっくりとお風呂を楽しみたかった…のに。
 「で、頼みって何だよ、今聞いてやるから」
 「はぁ…まったく、もう少し落ち着いて優雅に構えるとか、そういう姿勢はないものかなぁ?
  どんなときでも落ち着いて行動できないと、いざというときになんにも出来ないんだからさぁ……ったぁ!」
どうやら、落ち着く暇もないようだ。…こりゃ、湯船には浸からず、さっさと出た方が良さそうだな。
俺は自らの足で軽く身体を&ruby(すす){濯};ぎ終え、身体を振って水を払う。もちろん、尻尾も忘れずに。
ほとんどの水を吹き飛ばした後、今度は手近にあるタオルを床に敷き、その上で転がる。
…正直、誰かが見たら変な奴に見えるだろう。でも、タオルを上手く使えない俺には、こうするほかに水気を拭き取る手段もない。
全て自分の力で終えた俺は、ようやくこれでルーフの元へと戻れるわけだ。…疲れた…。

どうやら、この一人と一匹、延々と喋っていたようだ。…心なしか、ボレスの叩かれ跡が増えた気がする。
「さてと、…もうこんな時間か…俺たちは風呂入ってくるから、寝てても良いぞ?」
「ああ、分かった。…じゃあ、遠慮無く寝るよ、俺…ふぁぁぁぁ…」
色々あったもんなぁ…今日一日だけで、あいつと会って、喋って、仲良くなって…。
ほんと、すごい一日だったな。…そりゃ疲れるわけだ。…正直、もう尻尾を動かすのですらしんどい。
ルーフの布団の横に置いてある、毛布で作られた俺のベッド。その上でうずくまって、寝る体勢に入る。…だけど…。

…五月蠅い。…風呂場に入ってまで、何を喋ってるんだか…。
聞こえてくる会話から判断すると、どうやらまたあいつがいらないことを言ったみたいだ。
すぱっと妙に心地良い音が響く。…確実に叩かれたな、ボレス。
…そんなことはどうでもいい、とにかく疲れたからもう寝よう。そうだ、目をつぶってたらそのうち…。
そう言い聞かせて、俺は無理矢理目をつぶる。全てが黒に包まれる。
 「…ったたた……まあいいや。でさぁ、さっき言ってたことなんだけどね」
…駄目か。…そもそも、このアパートに防音を求めるのが間違ってるか。
お隣も下も、というか他に誰もいないから良いものの…。聞こえたらまずい声も、正直あったような…。
 「ああ、言ってたな。なんだよ、俺にだけの頼みって」
とりあえず…静かにして欲しい。…はぁ、明日は寝不足かぁ…。
目はつぶっていても、耳はさすがに人間のそれよりも敏感で。無駄なところで力を発揮してくれる。
 「あのさ、こんな事はさすがに…ルーフにしか頼めないんだけど……その…」
ああ、そう言えば食事中に何か言ってたな。ルーフに頼みがあるとかなんとか。…俺にも丸聞こえだけど。
 「……さすがに自分の口でするのも気が引けるし…だからね……」
…?何の話だ、一体…?……あいつ、何を頼む気だったんだろう…。
やはり、こういう時には好奇心を持つべきじゃない。…次の台詞で、俺はそれを感じずにはいられなかった。
……まあ、俺も元「雄」としては…その気持ちは分かるけど、さ。
ただ…やっぱり、こういう事を聞くと興奮するわけで。気にせずにはいられないわけで。

 「僕に手はないし…手伝ってくれるポケモンもいないからさ……ルーフ………その、手伝ってくれない?
  ………………………………………………………………僕の『ここ』……扱いてくれないかな?…ルーフの手で……さ」
ほのかにほてりだした自分の身体の正直さが、今はとてつもなく悲しくて。…発情…か。
…そりゃ、ボレスの気持ちは分かるけどさ…。この言葉だけは、今の…「雌」の俺には聞かせないで欲しかったかなぁ。
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 「手伝えばいいんだろ?…お前の気持ち、よく分かるからさ」
ルーフは何かと優しすぎる。そんな気もするけど…。…でも、あいつの辛さは分かる気がする。

というのも、ここ最近、俺自身もずっと「御無沙汰」だったからだ。何せ冬は寒すぎる。
ルーフと一緒に寝るなんて…そうそう出来ない。ましてや、身体を重ねるなんて…当然――。
…もう限界だ。かれこれ二ヶ月以上、ずっとずっと我慢してきた。この火照りを、この想いを。
でも、ルーフには頼めない。残された道はたった一つだけ。そう、たった一つだけ…。

声が聞こえなくなった。恐らく、喋るのをやめて「行為」に専念しているのだろう。
無意識のうちに、俺はその現場へと向かっていた。おそらくはあいつの嬌声を…「おかず」を求めて。

 「ん……はぁっ…………っく……………くあぅっ………」
風呂場の横。聞こえる声はもちろんあいつのものだ。…甘い、とろけるような声。まるで…そう。
脳を溶かしていくような。理性を消し去るような、危険で心地良い声が。

ふと気付くと、俺の後ろ脚の間がほんのりと湿っている。後ろ脚を擦り合わせると、微かな水音が響く。
仰向けになり、壁にもたれかかる。これだけでも、四足歩行のポケモンには意外と辛い。でも、今はそんなこと気にならなかった。
そのまま前足を自らのある部分へと密着させる。ねっとりとした蜜が既にそこからにじみ出てきていた。

「………………っ…!」
触るだけでもかなりの刺激が体中を駆け巡る。恐ろしく敏感になったそこは、さらなる刺激を欲していた。
頭が快感と欲望とに支配されていく。前足はゆっくりと、しっかりと動き出す。…身体が熱い。
断続的に現れるその衝撃に、身体は正直だった。荒い息が幾度となく漏れる。そこから溢れる蜜も、その量を増していく。

「………くぅ………あっ…………」
自分の意志とはあくまでも無関係に紡ぎ出される声。徐々に何も考えられなくなっていく。
前足の動きは勝手に早まり、自分の脚、尻尾、そして胴体までもが時折ぴくりと震える。
…そろそろか。そう感じ取った俺の身体は、収束へと向かうためにその勢いを荒げる。
…あとちょっと………………くぁ、もう…!

ドアが勢いよく引かれて開いた音。その直ぐ後に見えたのは、紛れもないルーフの顔。
ドアからひょっこりと見えたその顔に、俺は暫く呆然としていた。
さらに間もなく出てきたのはボレスの顔。…もう遅かった。この状況を見れば、誰にだって分かる。俺が何をしていたのか。
今思えば、確かに途中から声が聞こえていなかった。…単に俺が夢中になっていたせいじゃ無かったんだ。
俺の気配を感じ取られて、俺の声を聞かれて…見に来られた、ってわけか。

ルーフはともかくとして、ボレスにまで見られたとなると、さすがに気まずい空気が流れる。
今更隠すことも出来ない。時を戻すことも出来ない。かといって、もっともらしい理由なんて付けられない。
…時間だけが過ぎていった。いや、ひょっとしたら時間さえも止まっていたのかも。

不意にルーフが動いた。俺の方へと歩いてきたかと思うと、たった一言だけ告げて、風呂場へと戻っていった。
 「きちんと身体洗って、拭いてくるからさ。…ボレスもいるから、2対1だけど…この前の仕返しだ、悪く思うなよ?」
この台詞が意味する物はただ一つ。…せっかくの快感をお預けにされた俺とボレス。全部まとめて、ということだろう。
…不思議と嫌じゃない。ボレスになら、そう…最後までされてもいい気がする。もちろんルーフにも。
…こんな事を考えて、楽しみだ、と感じてしまった俺。理性は、もはや何の役目も果たしてはいなかった。
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何分経っただろう。それほど経っていないことだけは確かだ。でも、時計を凝視していると、どうしても時の進みが無性に遅く感じられる。
…ルーフ、遅すぎる。正直もう我慢できそうにない。俺自身の本能が暴れ狂うのを、理性が何とか押しとどめている状態だ。
ふと隣を見れば、ボレスが部屋の隅っこでふよふよと浮いている。その辺りからは雄独特の匂いが漂ってくる。
…まあ、当然か。俺もボレスもさっきお預けを食らっている。となれば、我慢した分だけ何らかの反応を身体が返しているわけで。
妙に鼻に残る、何とも言えないこのねっとりとした匂いで、俺の、そして多分、ボレスの想いも。既に爆発寸前だった。

ボレスはさっきから、こっちに身体の正面を向けようとしない。もちろん、お預けを食らったボレスの身体が今、どうなっているかは…分かっている。
ただ、このままじっとルーフが来るのを待っているのもつまらない。ちょうど良いことに楽しめそうな雄が一匹。
…駄目だ、もう限界だ。そう悟った俺は、ボレスの元へと音を立てないように近づき、そっとボレスの身体の奥を覗いてみた。
「んなっ……ちょ、スフュール!……みないでよぉ………」
そこにあったのは、青と白の身体には少々不釣り合いな濃いピンク色。まさしくこの溶かされそうな匂いの元凶。
既に溢れていた雄の蜜、とでも言うべきそれが、モノの周りでてらてらと輝いている。なんとまあその艶めかしいことか。それに暫し目を奪われる俺。
ここまで来たらもう止まらない。俺はいつも以上に素早い動きでボレスのそれへと近づき、ぺろり、と一回舐めあげる。
「くぁっ!……な、何を……」
何とも不思議な味。ねっとりとした感触が、また俺の本能を駆り立てる。俺のそこは既に滴を垂らすほどに濡れている。
目の前にそびえるのはやや小振りのボレスのモノ。これぐらいなら、あるいは悠々と受け入れられる気がする。
本当なら今すぐにでも欲しい。でも、それでも。ルーフが来てくれるんだったら、やっぱりそっちを最初にいただくほうがいい気がする。
…それに、たまにはボレスを焦らしてみるのも、案外悪くないかもしれないし。
…けど、そのたった一つの安易な決断のせいで、後で痛い目を見ることになるなんて、さすがに考えもしなかったけど。

そうこうしているうちに、早くもボレスが限界を訴え始める。まず舐めていて感じるのは、モノの動きがおかしい。
ぴくぴくと小刻みに震え始めたそれは、ボレス自身の決壊を指し示している。それに何より、ボレスの顔を見れば一目瞭然だ。
はぁはぁと切なそうに息を漏らすボレス。口を半開きにして、ただ俺の舌の動きに身を任せるボレスが。無性に可愛くって。
だからなんだろうか。俺はふっと舌を離し、先ほどまでの動きを止める。ボレスはやや不満げにしながらも、ただ俺を見つめてくるだけ。
ボレスのその、何かを訴える眼差しをあえて無視しながら、俺はボレスの体を撫でる。つるつるとしていて、弾力性があって、結構気持ちいい。
少し強く足で押さえると、何とも言えないぷにっ、という心地良い感触。とにかくぷにぷにで、それ以上言うことはないくらいに。
その妙な感覚を何度も何度も確かめて、何度も何度も足で押さえては離す。ぷにゅっ、という音が聞こえてきそうなくらいまでに。

と、俺が油断していた&ruby(さなか){最中};。先ほどまでじっとしていたはずの、つるつるぷにぷにの細長くて青い胴体が。
俺の身体を這い回り、ぐるぐると巻き付いていく。いつの間にか俺はボレスに絡め取られていた。
俺の身体を這い回り、縛り上げる様にぐるぐると巻き付いていく。いつの間にか俺はボレスに絡め取られていた。
「…………………………………ボレス?」
とぐろの中で状況が全く読めていない俺はとりあえずとばかりにボレスに呼びかける。だが、その虚ろな眼と顔は全く反応してくれそうにない。
徐々に締め付けられる俺の身体。……正直、胸の辺りはだいぶきつい。敏感に反応している俺の胸、その突起がさっきから擦れて無駄に快感を増幅させている。
「……ちょ、ボ……ボレス…………きついって……!」
だが、もはや俺の声を聞く気はないらしい。俺の苦しそうな顔を見て不敵に微笑んだボレスに少し恐怖を覚える。
「………さぁ、お楽しみの始まりだ。せめて少しは可愛い声で鳴いてくれよ?」
――耳を疑う、というのはこのことを言うのだろうか。普段のボレスの言葉とは思えない。
どうやら、俺は少々やり過ぎたみたいだ。ボレスの何かが外れた気がする。むしろ俺が外した気がする。
――ただ一つ、言えることと言えば。もう、後戻りは出来なかった、ってことだけだな。
そんなことを考える余裕はここまで。次の瞬間、するっとボレスが動いた瞬間。
俺の胸の突起が擦れると同時に、とてつもない衝撃が身体を駆け巡って。小さな叫び声にも聞こえる声を出して。
何とか絶頂こそ免れたものの、これ以上の攻めに耐えられるかと聞かれれば……正直、絶望的だった。
だが、その点もわきまえてなのだろうか、それ以上攻めようとしないボレスに、ちょっとばかり不満を覚えて。
いっそのこと頼んでしまおうか、でも…。といった葛藤が心の中で繰り広げられる。
そして、いよいよ本能が理性に負けようとしたその瞬間。
待ち侘びていたメインディッシュが、楽しみにしていた本命が、俺の大好きな、ルーフその人が。
「さてと、……お楽しみの時間、だな、スフュール」
----
ボレスに巻き付かれ、完全に拘束されたこの状態を見ても、もうルーフは何も言わない。
黙って俺に近づくと、即座に唇を重ねる。ひんやりとした俺の唇に、温かい、そして柔らかな感触が。
それを開き、ぬるりと入ってくるルーフの舌に、俺もまたそれを求めて自身の舌を絡ませていく。
柔らかな音が幾度となく生まれ、唾液と共に流れて消える。その繰り返しが暫く続く。
「ルーフ、スフュール。一つ聞かせろ。もちろんタマゴは産まれない。…なら、俺も入れてもいいんだよな?」
突然のボレスの声に、俺も、そしてルーフも顔を離す。ボレスは一つも表情を変えず、俺を、そしてルーフを睨んでくる。
突然のボレスの声に俺も、そしてルーフも顔を離す。ボレスは一つも表情を変えず、俺を、そしてルーフを睨んでくる。
「俺には答えられないし……スフュール次第だな」
俺は……。……まあ、最初って訳でもないし……。
「……その顔で分かった。…じゃあ、そうさせてもらうとしようか」
直後に響いたのは打撃音。的確にポイントを突いたボレスの尾――というよりもそれに付いている珠――によって、ルーフはあっけなく気を失う。
「お、おい、ボレス、何やって――」
反論しようとした俺の声も、口を塞がれれば当然出せないわけで。……無理矢理中に押し進んでくるボレスの舌が、俺の口を満遍なく味わってくる。
声にならない声を上げつつ、俺は必死にボレスを引きはがそうとしてみる。が、そうしようと試みる度に胸の突起が擦れ、快感で身体が動かなくなる。
やがては力もほとんど抜け、抵抗すら出来ず、あとはただうねうねと蠢くしか出来ない。
息すらも許されず、いよいよ苦しくなってきたところで、ボレスはすっと口を離す……そう思っていた。
一向に話す気配もなく、苦しさは募るばかり。もう駄目だ――。
一瞬意識が飛びかけた瞬間、口から冷たい空気が入り込んでくる。と同時に顔に飛ぶ一筋の水。
「どうだ?……次はこれだな。……さっさと舐めろ」
今度は首が下半身に巻き付いてきた。と言うことは目の前には当然……それが来るわけであって。
目の前でピンとそびえ立つ、濃いピンクの棒が、口の中へとねじ込まれる。先ほど舐めたときよりも、さらに大きくなっているような、そんな感覚さえ覚える。
それでも必死に、先走りが溢れるその雄を舐め続ける。時折ぴくりと跳ねると言うことはやはり、それなりに効いてはいるのだろう。
それでも、まだまだ余裕そうな表情のボレスを見ると、やはり不安になってしまう。一体どうされてしまうのだろう、と。
と、一瞬走った新たな衝撃。小さく勃ち上がっている、非常に敏感なそこを撫でる、ざらっとした感触は。
確実だった。見えないが、見なくても分かる。ぴちゃ、という何ともな音を立てながら、ボレスはそこを舐めている。
雌の、雌である象徴とも言うべき部分を。そこにある、豆のような小さな突起を。
必死に耐えては見るものの、やはりさっきまでのお預けも、そして胸への刺激もあって、酷く敏感になっていたそこはあっという間に欲情し始める。
ぴくぴくと身体を震わせながらも必死に耐える俺の姿をよそに、ひたすらにそこを刺激し、さらには胸へも攻撃してくるボレス。
「ボレ……ス…っ」
ボレスのそれへの奉仕すら中断して、絞り出した声で必死に伝える。
そうしたとたん、ふっと快感が終わる。もちろん止めてくれたんだろうけど、それにしても歯切れが悪すぎる。
まただ、また後一歩のところで…。そう思うと、やはり微かな後悔、そしてまた新たな欲が頭をよぎる。
負けるのはいささか悔しい。それでも、やはり最後まで…。プライドと欲が、互いに牽制し合っていた。でも。
「ん?どうしたよ?……そりゃあもちろん、イかせる気なんてさらさらないぞ?」
この言葉のせいで。この言葉のせいで、何かが外れた気がした。欲へのストッパーが途切れたのか、あるいはプライドという壁が壊れたのか。
「…イかせてくれよ、頼むからっ…」
そう呟くのに時間はかからなかった。それなのにまだだった。
「は?……馬鹿か、淫乱な雌犬が。この俺に頼むときはどういえばいい?分かってんだろ?」
あくまでまだ楽しむ気らしい。完全に俺の心を折る気だ。……ボレス……くそっ…。……でも…。
「……お願いします、ボレス様。……この淫乱な私(わたくし)めを、どうか…どうかっ…イかせてくださいっ…!」
……もうどうでもよかった。……ただイきたかった。……最後の、最後の快感を味わいたかった。
「ふ~ん。……でも、俺はそう優しくはないぞ?……最後にはそりゃ、イかせてやらないこともないが……覚悟しろよ?」
顔をこちらに向け、にやりと不敵に微笑むボレスに、俺は完全に虜にされていた。
――ボレス……イかせてくれよっ…はやくっ……。
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「よし、……ま、良いだろ。次だな……」
そう言いながら、再び頭から首に巻き付いてくるボレス。ということはつまり、これからすることは一つだけ。
その割れ目に宛がわれたボレスの雄。スリムな身体に似合わず、中々に太くて立派なそれの先端が、つぷり、と入ってくる。
大した抵抗もなく、そして大した抵抗もせず。抵抗など出来なかったし、する気もなかった。むしろその逆で――。
身体を走る快感が、徐々に内側へと移ってくる。ボレスが中へと入ってくる度に、内側が擦れて熱くなる。
それだけでも辛いというのに、胸に巻き付いた身体がずりずりと突起を刺激してくれば、自然と嬌声は漏れるもの。
自分の声じゃないような、高い、どこか艶やかな声を発しながら、ただ求めて、ボレスに善がる。
「どうした……?……っ…………ほら、もっと素直に……なったらどうだ……っく……!」
ますます激しさを増すボレスの動き。ただ早いだけではなく、その動きも緩急を付けた、実に巧みなものに。
いつの間にか声を我慢することも忘れて、本当に「雌」の、そんな声をあげながら動かせない身体をうぞうぞと動かして、さらなる快感を得ようと必死に。
溢れるくらいに漏れている自身の愛液にまみれたボレスの雄。入れたり出したりする度に、猥らな音が次々に。
そんな状況が暫く続き、いよいよ自分の限界を感じて、ボレスに必死に訴える。口を塞がれたまま、声にならない声をあげて。
それでも容赦なく突き上げを繰り返してくるボレス。そうして、ひときわ大きく動いたその瞬間。
「んんむぅっっっっっっ!!!!!!!!」
ぴちゃり、といかにもな液体をまき散らす音。ぎゅうっ、と膣が締まる感覚、そこにボレスの雄があって、それが少し膨らんだかと思うと。
「っあああっっっ!!!」
びゅるっ、とこれまたそれらしい、粘った液体が放出される音。熱いそれが中に満たされていく感覚を、ただぼーっと感じて。
ずりゅっ、とボレスの雄が抜かれた瞬間、その辺りの肌を液体がなぞる。細かな毛が濡れていくのが分かる。
拘束がゆるみ、少し楽な体勢になりながら、荒い息を漏らして辺りを眺めていると。
「……ぅぅ…………ったた…………あれ……?」
起き上がってきたのはルーフ。こっちの状況を見て、一瞬で分かったのか、気まずそうに目を逸らしている。
「おい、ルーフ。……次はお前の番だ。さっさとしろ。……こいつでとことん遊ぶんだろ?」
「ボ、ボレス……でも、スフュールは……」
と、反論しようとしたルーフ。それでも、ただならぬボレスの視線に折れて、小さくこくりとうなずいて。
絶頂を迎えたばかりの割れ目は、何故かまだ物欲しそうにぴくぴくと震えていて。それを見たボレスはにやり、と笑って俺の顔をのぞき込んでくる。
「……やっぱり欲しいんだろ?……安心しろ、さっきよりもすごいこと、してやるからさ……」
そういって、今度はまたボレスの雄が顔の前に。拘束を逆にして、顔を俺の割れ目に近づけて。
近づいてきていたルーフの雄。何の前触れもなく口にくわえて吸い上げている。
ルーフもさすがに予想外だったのか、小さく叫んで、息を荒げて耐えている。そうこうしているうちに、ルーフのそれも限界まで張り詰めていた。
「さて、これで良いだろう。……スフュール、俺への奉仕、頼んだぞ……?じゃ、ルーフ。……入れろ」
ボレスの声を合図に、俺はボレスの雄を咥えて、ルーフは俺の中に入ってきて。――でも、それだけじゃなかった。
ボレスの次の行動で、俺は完全にとあるスイッチが入って。――もう、止められなかったんだ。
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抜き差しを繰り返すルーフとボレス。先ほどの絶頂から間もないこともあって、ルーフの雄が中をかき乱す度に、身体が震えるような衝撃が。
声を出さずにはいられない……が、それすらもボレスに妨げられて、ただくぐもった音を漏らすのが精一杯。
「さぁ……ここからが本番だ……楽しんでくれよ?」
その声と共に、ボレスの顔が再び秘部へ。……でも、そこにはもうルーフが……?!
「っぁぁっ!!!!!!!」
しっかりと固くなった豆の部分。そこを舌で少し舐められた。……だけなのに。それだけで、軽く液体を放ってしまう自分が情けない。
ただ、意識だけは――自我だけは、しっかりと保っておこうと、必死に快感に耐えながら喘ぐ。
――そうだ、これさえ耐えればもうきっと……?
「な、なにを……どうして……?」
全てが止まった。……しーんとした部屋。秘部の方を見れば、にやついたボレスの顔が。意地悪そうに笑いながら、悪魔のささやきを。
「……終わりでいいんだよな?……それとも……」
――終わり?……これで……?
終わりたいと望んでいたはずなのに、依然として身体の方はぴくぴくと。……もっと欲しい。……もっとしたい。
そんな心の葛藤が数十秒。……そんなとき、ボレスはとどめとばかりに秘部を一舐め。じわっと伝わる快感。脳まで揺さぶられて、まるで催眠術にでも掛けられたかのように。
何かが変わった。迷い無く、ただもう堕ちてしまおうと諦めた結果。……何か、スイッチが入ってしまった。
「……もっと……して欲しい。……何度でも……頼むっ!」
軽い笑い声。そして再び全身に走る快感。ああ、これが欲しかったんだと妙に納得して、今度は心行くままに喘いで求める。……恥じらいを捨てて、ただ善がる。
ルーフはルーフで遠慮無く突き上げてくる。俺にとっては二回目の射精。入りきらない白濁は、隙間からごぽりと溢れ出す。しかし、まだ衰えを知らないその棒は再び動いて。
ボレスは口の中に大量の精を。吐き出すこともほとんど許されず、そのほとんどを胃の中に納める。少しの休止の後に、またもやボレスは動き出して。
今度はずりずりと、巻き付いたボレス自身も動き出す。擦れる胸の突起。何度も突かれる自身の中。口までも犯されてなお。
――ああ……きもちいい……。
そうして自分からも、もぞもぞと動き出して、ひときわ大きな声をあげて果てる。勢いよく飛び出した潮が辺りを濡らす。
荒い息を吐き出して、またもぞもぞと快感を求めて――そんな繰り返しをしているうちに、俺の記憶は途切れてた。
----
朝。毎度のことでもう慣れた。果たしてそれで良かったのかどうかは分からないが。
ポッポやらムックルやらの鳴き声がやや五月蠅いくらいに響きわたる。窓硝子をほんの僅かに屈折しながら突っ込んでくる光の筋。
それでも、不思議と匂いは消えている。完全に、と言うわけではないにしろ……あらかたの滲みもぬぐい去られている。
それに、床に寝そべっているのはボレス只一匹……?
「おはよう、スフュール。疲れてないか?」
「あ、ああ……それよりも、ルーフは大丈夫か?」
行為を果てしなく続けた後に、ボレスと俺の身体を拭いて、床まで綺麗にして――相当の作業だったに違いない。それなのにルーフは……。
「ま、気にすんなって。それに、俺だけじゃないからさ」
――それってどういう?
そう聞こうかとも思ったが、途中で止めた。ルーフだけじゃないって事は、ボレスがやってくれたって事だ。
「ボレスもさ、元に戻って直ぐ、何度も謝ってたからなぁ……まあ、それでチャラにしてやってくれ。一番お前のこと心配してたの、ひょっとしたらボレスかもしれないぞ?」
――なんだ、こいつ……良いとこ在るじゃん。ただの五月蠅い奴、ってわけでもないんだな……。
日は結構上がったと思うが、未だに起きる気配を見せず、ぐっすりとくるまって寝ているボレス。相当疲れてるみたいだ。
よく考えたら無理もない。あれだけのバトルをして、その上あれだけ激しく動いて……おまけに片付けまで。
正直に言うと、ボレスのこと、見直したかも知れない。いや、見直した。こいつ、口はちょっとあれだけど、なんだかんだで良い奴なんだな……。
「さてと、まあ今日は休みだし、ゆっくりするか。ボレスがこれじゃ、外にも行けないしな」
上機嫌で朝食作りに取り組むルーフ。俺も邪魔にならないように隅っこでくつろごうとした……その時。
「ったく、ほんと、ルーフもスフュールもだらしないなぁ……やっぱり僕が一番だよねぇ……」
――……はぁ?
台所からのガチャガチャ音が消える。そしてルーフが居間へと集合。
「……どっちも馬鹿なんだからさぁ……少しは自覚してよね…………バカップルめ……」
ルーフと目線を合わせて、一呼吸。大きく一度うなずいて……。
「この……」
れいとうビームで床ごと氷付け。身動きは取れない。
「大馬鹿……」
左足を大きく蹴り出して、右の拳を目一杯引いて。腰を捻って、ボレスの頭めがけて飛びかかるルーフ。
一方の俺は、前足で大きく蹴り出して、そのままボレスの頭に"とっしん"する。
「やろぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!」
この日もまた、こおりなおしとすごいキズぐすり、合計1450円の出費が嵩んだのだが……それはもう、語る必要もない話。
もちろん、直後に五月蠅い悲鳴が響いたのも事実だが……言うまでもない話、だろ?
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-あとがき
長かったです。長かったです。ええ、長かったですとも。
それもこれもどれも全部纏めてボレスの所為です。一発殴ってきて良いですか(蹴
何はともあれ、ようやく完結することが出来ました。だらだらと続けた上に、終わりが悪すぎるという結果になってしまいましたが……ご了承を。
まあ、官能も戦闘もおまけで(何)、結局は最後も含め、このドタバタが楽しく書けたのでよしとします。
其処だけ楽しんでいただければ十分でございますので。
それでは此処までこの駄文を読んでいただいて、どうもありがとうございました。
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