*ポケモン大好きクラブの秘密を暴け! [#mMlYQgg] &color(red){※R-18作品、人♂×ポケ♀描写があります。}; 作者:[[COM]] ---- 俺はフリーカメラマンのユウキだ。 今日も日夜東奔西走し、シャッターチャンスを探し回っている。 撮っているのは何か? 愚問、超ド級の大スクープさ。 これまでにも沢山の特ダネを撮ってきた。 有名なトレーナーの訓練風景だとか、某ジムリーダーの説教だとか、有名な博士の会合だとかをね……。 何? そんなものの何が特ダネかだって? これだから何も分かってない素人は困る……。 俺が撮るのは御高説を垂れるような有名人の本性が剥き出しになる瞬間だ。 伝説のポケモンなんてのには興味ない。 そんな霞のような存在を追いかけて何年も無駄にするぐらいなら、俺はもっと賢く決定的な瞬間を撮る。 先程挙げた写真ってのも全部決定的瞬間だ。 有名トレーナーは表向きじゃどんなポケモンも手懐ける凄腕トレーナーとして名を馳せていたが、俺の撮った実際は手持ちのポケモンで扱きに扱き、反発しようという気を与えなくした所でアメを与えて服従させる非人道的なやり方だったし、ジムリーダーの説教ってのも似たようなもんで、ジムトレーナーにセクハラまがいの問い詰めをしている瞬間だ。 博士の会合なんてのは言わなくても分かるだろ? 要は大人の密会だ。 俺の撮ってきた写真のお蔭で影を持つ有名人はとことん潰してきた、謂わば正義のカメラマンってところだ。 パパラッチだなんて呼ばれることもあるが、そんなマラカッチみたいな名前で呼ばないで欲しい。 今日も俺は相棒のリザードンと共にあちこちの街を駆け回り、キナ臭い有名人共の本性を暴いて回っていた。 ……が、問題はチャンピオンだ。 残念なほどにスクープがない。 何処のチャンピオンも清廉潔白。 いいことなんだがそれじゃあ面白味に欠ける。 ならばと何処の地方にも一定数ある『ポケモンだいすきクラブ』に手を出すことにした。 この業界ではタブー視されており、関わるなというのが大原則だが、それはつまり何かしらの知られたくない真実があるということだ。 例えば、ポケ姦なんかをしているとかな。 かなりの著名人も関わっている巨大組織とも言えるポケモンだいすきクラブに正義のメスを入れるのは、謂わば悪の組織を追いかけるのと同じだけ危険な行為だ。 そういったこともあって誰も関わっていないのだろうが、ならば俄然興味が沸く。 これまで誰も暴くことのできなかったポケモンだいすきクラブの闇を暴いてやろう。 「さあて行こうかフォイア!」 「バギャー」 相棒のフォイアの背に乗り、そういった噂を聞く街のポケモンだいすきクラブへとすっ飛んだ。 噂というのは、その街に住む大半のポケモントレーナーがポケモンだいすきクラブの会員であり、同じだいすきクラブの会員以外がクラブ貸し切りの店舗に入るのを嫌がるということだ。 当然カメラマンは門前払い。 撮影に必要な道具も事前のボディチェックで全て没収される徹底のしかたは寧ろ、『私達はポケモンを無理矢理犯すのが大好きな変態です』と言っているようなものだ。 そこで事前に俺は別の街でポケモンだいすきクラブの会員となり、表立った活動に参加して前評判を上げておいた。 名目上、俺は相棒のフォイアを様々な背景と共に収めるポケモンフォトグラファーということにしており、実際に何枚もフォイアと美しい風景の背景を撮った別のカメラを用意している。 とりあえずの作戦は、そのポケモンの写真を撮るのが好きなだいすきクラブ会員としてその集会に潜入し、実情をシャッターに収めることだ。 「ユウキ様ですね。お待ちしておりました」 「こちらこそ今日はよろしくお願いします」 受付で招待状を渡し、噂の集会に潜入する。 事前評判のお蔭がカメラの没収もなく、内部へと潜入できた。 大きなビアガーデンを貸し切っての集会ということもあり、小型のポケモンから大型のポケモンまで人間と一緒に楽しそうに歩き回っている。 トレーナー同士で楽しく話し合っているものもいれば、他のトレーナーのポケモンを満面の笑みで撫でる者まで沢山だ。 「ユウキさん! ユウキさん! 僕と相棒の写真を一枚お願いしてもいいですか?」 「勿論です! 背景はどうされますか?」 フォトグラファーと名乗って入った以上、他の会員からはポケモンの撮影をお願いされることが多く、撮った写真をそのまま相手のロトムフォンへと転送する。 こういった写真は趣味で撮る分には嫌いじゃないが、あまり金にはならないから好んでは撮らない。 とはいえ今の俺はポケモンフォトグラファーユウキ。 満面の笑みのトレーナーとポケモンをフィルターに収めるのはまあまあ悪い気はしない。 この場だけを見ていれば、皆純粋にポケモンが好きなのだろうというのがよく分かる。 だが俺は見逃していない。 時折周囲の目を気にしながら歩くトレーナーが居り、彼等彼女等がその広場から姿を消すことを。 そして姿を消したトレーナーは大抵の場合、数時間姿を現さないが、これまたいつの間にか戻ってきているのだ。 つまりこの表向きはポケモン好きの社交界となっている場所の何処かに、裏の顔があるということだ。 軽くシャンパンやクラッカーを貰ってポケモン好き達と話しつつ、広場の隅々まで見渡すと、一箇所だけボディガードが立っている場所がある。 直接行く前に近くでそこの様子を立ち聞きしていると、やはり更に特別な会員だけが入れる空間があるようだ。 その特別な会員証はどうやらこの街のポケモンだいすきクラブしか発行しておらず、入手するにはこの街で再度会員として特殊な会員証を手に入れる必要がある。 その日は怪しまれるわけにもいかず、一時普通にポケモン同好会を楽しんで撤収。 次の手としてこの街を拠点にポケモンフォトグラファーとして活動し、自身への信頼を磐石なものにしてゆく。 ……これならば正直、チャンピオンの後をつけて回っていた方がまだ実りがありそうだが、彼等のネタといえば何故か育て屋の前でチャリをひたすら漕いでいる事以外特にない。 それならまだこちらの方が実りがあるだろう……と言い聞かせるしかない。 「バギャ?」 「ああ、気にすんな。すんげー地道だなーって思って溜息が漏れただけだ。明日もよろしくな」 「バギャー!」 溜息を聞いてフォイアが心配そうに俺の顔を覗き込む。 俺がまだ子供の頃にタマゴでもらったヒトカゲから育てたこともあって、言葉は通じなくても何を考えているかは大体なんとなく分かる。 俺よりもでかくなったってのに、愛嬌はヒトカゲの頃から変わっていない。 だからこそポケモンフォトグラファーと言ったのはあながち嘘でもないからだ。 パパラッチをしていれば金は確かに稼げるが、人の嫌な面ばかり見すぎて少々食傷気味になることもある。 そうなった時は気分転換にフォイアをよく撮っていた。 あまり帰らない自宅にも初めて撮った記念のフォイアの写真が額に飾ってあるぐらいには、俺だって普通の写真も好きだ。 だが人間一人とポケモン一匹、ただ生きて好きなものだけ撮っても心は満たされても腹は満たされない。 生きるために必要なのは金だ。 残念ながら俺とフォイアにはバトルの才能はなかったが、代わりにこの人の動向を嗅ぎ分ける鼻とカメラのセンスはある。 俺だって一時期はフォトグラファーとして生きていこうかとも考えたが、あの美しい写真たちを見ているととても同じ土俵に立てるとは思えない。 所詮そうやって言い訳して、自分に出来ることを探して回ったダメカメラマンってことだが、後悔はしていない。 認めたくはないが、事実ここは転職だったらしく、今後贅沢さえしなけりゃ働かずに生きていけるぐらいの蓄えはできた。 なら何故今もそんな写真を撮っているのか? と問われると痛い質問だが、何もしてないのは生きていない気がするからだ。 かと言って逃げたポケモンフォトグラファーの道に今更どの頭を下げて戻れるのかとも考えてしまう。 誰も俺を後ろ指で指したりしていない。 まあ……つまりは逃げたいのに逃げられないんだ。 そうして気が付けばこうやって特ダネを求めてスリルを感じられる日々に身を置いている。 何をやるにしても中途半端な人間になっちまったというわけさ。 「ギャー……」 「なんだよー! お前がそんな顔すること無いだろー?」 フォイアは本当によく俺の感情の変化に気が付く。 その度にこうやって誤魔化しているが、本当はもっと相棒の事も考えてやるべきだろう。 そうだな。 今回のスクープを最後に、こんな汚い仕事とはおさらばしよう。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「いやぁ嬉しいよ! ポケモンフォトグラファーの方がわざわざこの街までやってきてくれて、更には特別会員になりたいだなんて言い出してくれるなんてね!」 「こちらこそ光栄に思う限りです」 潜入調査を進める事四ヶ月、遂に俺はその街のポケモンだいすきクラブの会員として認められた。 カメラを持っていることもあって最初はかなり警戒されていたが、色んな会員達とポケモン達の写真や集合写真を撮影し、交流を深めていく内に信頼を得ることに成功したようだ。 遂に特別会員として登録され、数週間後に迫るあの集会の日が迫っていた。 『大丈夫。これが最後だ』 今一度自分の胸に言い聞かせながら、潜入用のカメラの写真を見返していたが、そこにはあの薄汚い写真は一枚もない。 どの写真も弾ける笑顔が輝いており、ポケモンも人間もとても嬉しそうだ。 そんな写真の中に今から俺は汚泥を流し込もうとしている。 思わず忘れていた夢さえも思い出させてくれるほどその写真達は眩しかったが、全ては金のためだ。 この仕事が終われば必ず大金が舞い込む。 この街でしか開かれない、この街のポケモンだいすきクラブの特別会員でなければ参加できない集会のその正体。 そんな激アツネタを欲しがらないテレビ局の方が少ないはずだ。 そう言い聞かせてレンズを磨き上げ、今一度集会へと足を運んだ。 初めて潜入した日と全く同じ光景。 宝石のように弾ける笑顔が眩しい世界で、俺の心はどうにも沈んでしまう。 「バギャ!」 ドンと押すように背中に力が加わる。 どうも俺の様子を見て怒った様子のフォイアが頭で軽く背中を押していたようだ。 『嫌なら辞めればいい』 そう言われているような気がしたが、今更退けるわけがない。 ここの特別会員になるためにかなりの金を浪費した。 このネタをカメラに収めないと生活が厳しくなる。 背に腹は変えられない。 そうして覚悟を決め、いつものように何人かの写真を撮り、例の場所へとゆく。 「お待ちください。特別会員証はお持ちですか?」 「はい」 ボディガードに特別会員証を見せ、自分の職業がフォトグラファーである事、撮影した写真を私用以外で公にしないことを条件にカメラの持ち込みを許可された。 全てはこの瞬間のために積み重ねてきたことだ。 今更後悔はない。 屋内は明かりが殆ど灯されておらず、非常に視認性が悪い。 そして何処かから何かの鳴き声が響いてくる。 フォイアの尻尾の火のお蔭で多少は見やすくなっているが、渡されたランプがなければまともに歩けないほどだろう。 この先には何があるのか心臓を高鳴らせながら進んでゆくと、多少開けた場所に出る。 そこまで来ると先程の鳴き声の正体はここから聞こえてきているのだと理解できた。 鳴き声の正体はただのポケモンの鳴き声ではなく、所謂ポケモンの嬌声だろう。 何故ならばそのポケモン達の鳴き声に紛れて男女の嬌声が僅かに聞こえてくるからだ。 やはりというかなんというか、ポケモンが好きだと公言する中でもわざわざ会員制にすることはそういうことだろうという予想を裏切らなかった。 暗闇に目が慣れてくると分かったが、この広くなっている場所の周囲に個室のような部屋が複数あるようだ。 羞恥心を消すためか、単に互いの顔を見えにくくするためか、どちらにしろそういった口外しにくい事をするのにはうってつけだ。 ただこうなると困るのがその決定的証拠の撮影だ。 個室の入口はカーテンのような布によって遮られている以上、盗撮のように撮影するのは難しい。 ならばいっそのこと取材形式で? 馬鹿を言っちゃいけない。 性事情を撮影させてくれと言って許可する奴がいるはずがない。 とりあえずこのままこの場にいて次に入ってきた人間と鉢合わせになって怪しまれる自体だけは避けなければならないため、空いている個室に入る。 個室内はラブホテルの部屋ほど豪華ではないが、キングサイズのベッドが中央に鎮座しており、うっすらと室内を明るくしているルームランプが雰囲気を醸し出している。 シャワーのような設備はなく、本当にそういった行為をするためだけに誂えたような場所だ。 「悪いなフォイア。もう暫くの辛抱だ」 「バ、バギュゥ……」 先程からフォイアの挙動がおかしい。 それもそうだろう。 人間の方は声を控えめにしているが、ポケモンの方は特に鳴き声を抑える気がない方が多い。 ポケモンからすれば他人の喘ぎ声を直接聞いているようなものだ。 そわそわとしている様子を見るに、周囲の声を聞いて赤面していることだろう。 とりあえず部屋の構造を確認してみるが、部屋の音が漏れているのは何も入口が開いているからだけではないようだ。 部屋の壁はどうやら間仕切りのように板で仕切られているだけなので、天井に付いているわけではないようだ。 ということは上手く天井から覗き込めば他所の情事を撮影できるだろう。 「よし……! フォイア、俺を持ち上げてくれ……!」 流石に人間一人で越えられるほど壁は低くないためフォイアに肩車のように持ち上げてもらって壁越しに撮影する方法を思いついたが、フォイアの方がどうにも応答しない。 周囲の様子をしきりに確認し、首をすぼめて困ったような表情でこちらを見ている。 このままではフォイアに協力を求めるのも難しい。 というよりまずは相棒の不安を取り除いてやらないとトレーナーとして失格だ。 カメラをライトの置かれているテーブルに置き、フォイアの顔を両手でそっと掴む。 「ごめんな。こんな所に連れてきて。すぐに終わらせるからな?」 目を合わせてそう呟くとフォイアは同じようにこちらの目を見つけた。 そして不意に唇を舐めてきた。 「……っ!? お前……何考えて!?」 余りにも唐突なフォイアの行動に飛び退いたが、後ろは壁。 相棒は両腕を頭の横に伸ばされて逃げ場を失くし、そのまま続けるように顔を舐めてくる。 しかもこれはただのスキンシップのような舐めではなく、明らかに舌をこちらの口の中に入れようとする。 しゃがめば逃げられる? いきなり信じていた相棒にこんな風に迫られると案外パニックになるもんだ。 次第に鼻息を荒くしながら必死の抵抗で閉じた口に舌を滑り込ませてくる。 あり得るはずがない。 俺とフォイアは此処にいるような連中とは違う。 少なくともポケモンを性欲の捌け口として見るような人間じゃないし、相棒も真っ当に育ててきた自信はある。 そんな相棒が急にこんな事をしてくるのは何も状況や雰囲気だけではないはずだ。 何かしらの香が焚いてあるのは分かるが、もう考えられる原因はただ一つ。 この香が催淫性のものだということだ。 正常な思考を奪い、俺をただの雄として認識させている。 「フォイア……! 止めるんだ!」 必死にそう言って静止しようとするが、下手に暴れれば薄い壁の向こう側に騒ぎが伝わってしまう。 なんとかフォイアの理性を取り戻させようと小声で話しかけるが、聞こえていないのかそれともただ無視しているのか、ただ必死に俺のペニスを咥え、舌の上で転がしている。 必死に逃げようとしているのがばれ、両腕を掴んで押さえ付けられたまま、どこで覚えたのかも分からない舌技を味わわされる。 牙で傷付けないよう慎重に、それでいて肉厚な舌をしっかりと絡めつかせるような執拗な舌使い。 いつもは業火と強靭な顎で俺の集めたネタを奪い取ろうとする暴漢共を返り討ちにしてくれているフォイアからは想像もできない姿だ。 だからこそショックが大きかった。 俺とフォイアは昔からの相棒、謂わば幼馴染のようなものだ。 そんなフォイアが香のせいで発情したとはいえ、俺を性の対象として見ていることがどうしても信じられないのだ。 勿論それだけではない。 いくら相棒が暴走したからとはいえ、自らのペニスを咥えられて確かに興奮しているその事実が信じられなかった。 熱い口内で舐られ、みるみる内に固くなってゆく自らのペニスに嫌気が指す。 俺のペニスが反応し、押し殺した嬌声が聞こえるようになるとフォイアは嬉しそうに鼻を鳴らして舌をうねらせる。 あまりの快感に腰が砕け、その場に倒れこむ俺の体をフォイアの腕が捕まえ、ゆっくりと下ろしてゆく。 尚も口は俺のペニスを弄んでおり、決して離す素振りすら見せない。 まるでおしゃぶりでも吸うようにジュルジュルと吸い上げられる度に来る快感が、余りにも背徳的だった。 結局は自分も卑下していた彼等と同じ、ポケモンに欲情するような人種だったのかと辟易する。 そんな俺の心境を知らないフォイアは尚も口淫を続ける。 「お願いだフォイア……! もう、止めてくれ!」 まるで野生のポケモンに襲われた被食者が許しを乞うような、そんな気分だ。 だからこそその願いが叶わないのも分かる。 今の俺はフォイアにとっての獲物でしかない。 高まる興奮を抑えようとしても、地面と大きな体でしっかりと押さえつけられた体は抵抗すら許さない。 熱を持った吐息を必死にペニスを舐るフォイアの頭に吐きかけるのが精一杯だ。 そしてそのまま、抵抗することも敵わず、ペニスをドクンと大きく跳ねさせた。 背徳感が快感を何倍にも増幅させ、フォイアの口の中を白濁が穢してゆく。 しかしそれを待っていたとでも言うように、フォイアの舌が受け入れ、喉を鳴らして飲み込んでゆく。 瞳を閉じ、しっかりと味わうように最後の一滴まで舐め上げ、すっかり柔らかくなったペニスから漸くフォイアは口を離した。 数刻前の相棒と違い、今の相棒はまるで夢でも見ているかのように蕩けた表情をしている。 そこにいたのは間違いなく、頼れる相棒ではなく雌の獣だった。 そこからは早かった。 相棒との一時の間違いから逃げるように、その場を後にした。 そのままその場に留まると、もう引き返せない場所まで進んでしまいそうな気がしたのだ。 久し振りに相棒をモンスターボールに戻したかもしれない。 それほどまでに自分は現実を直視しようとしていなかった。 街を抜け、近くの森まで逃げ出し、小一時間ほど川を眺めていた気がする。 放心とも言えるが、実際のところは考えすぎなほどに色々な事に思考を巡らせていた。 あの時の相棒は決して自らの意思で行為に及ぼうとしていたわけではない。 『あの香のせいだ……。アレのせいでフォイアは正気を保てなくなったんだ……!』 そう信じたい一心だったのだろう。 俺も冷静さを欠いていたはずなのに、フォイアの正気を確かめようとしてしまった。 すぐさまボールから繰り出し、なんでもなおしをバッグから取り出した。 きっとおかしくなってしまったのだと。 だからなんでもなおしを使えばきっとフォイアも元に戻る。 普通に考えればそんなことはありえない。 香の効果ならばそれは状態異常なんかではない。 だがきっと治ると信じていたのだ。 念入りに使い、治ったことを確認するために周囲に人がいないことを確認してからズボンを下ろす。 「ほらフォイア、今ならなんとも思わないだろう?」 分かっていたはずなのに今一度獣の前に獲物を見せる。 結果は火を見るよりも明らかだろう。 いつもと違う様子の俺に怯えていたフォイアが、俺が自らズボンを下ろしたことで目を大きく見開いた。 先程とは違う同意とも取れる行動に、フォイアは興奮気味に抱きつき、舌を口の中へと滑り込ませてくる。 傍から見れば襲われているようにも見えるが、フォイアは心底嬉しそうに舌をうねらせ、唾液を混ぜ合わせてくる。 頭の中は混乱そのものだ。 これで何もかもが今まで通りになる。 そう信じていたのに、崩れ去ったのはこれまでの日常の方だ。 かぶりつくように交わした深いキスから解放されると、フォイアはグルグルと嬉しそうに喉を鳴らしながら放心する俺の頬に自らの頬を擦り合わせる。 そして体をそっと地面に下ろし、露出したままだったペニスに舌が這う。 ぬちゃりと生暖かい感覚がペニスを包み込み、優しく撫で回すように絡みつく。 今まで信じていたものが崩れ去る絶望感。 異常者だと断じた者達と同じ行為を行い、快感を得ている事そのものが絶望だった。 自分も相棒も、真っ当な関係だと信じていたのにその全てが一瞬にして狂っていくような……。 「グルルゥ……」 俺は一体どんな表情をしていたのだろう。 心配するようにフォイアが俺の顔を覗き込んできた。 いつの間にか頬を濡らしていた涙をフォイアが舐め取る。 「そうか……。よかった。正気に戻ってくれたんだな……」 嬉しかった。 フォイアが元に戻ってくれたことがただ嬉しくて、しっかりと首を優しく抱く。 それと同時に忘れていた怒りが蘇ってきた。 必ずあの集会場の真実を暴くと決意を新たにし、来る日に備える。 一ヶ月後の同じ日、また同じように特別な集会へと参加し、参加者の写真を撮った。 煮え滾る怒りを静かに抑え込み、いつもと変わらぬ調子で写真を撮り続ける。 彼等は全員が異常者だ。 必ず公にする。 怒りは最早あの裏のサービスを利用しているユーザーに留まらなかった。 特別会員証を握り締め、奥へと進む。 「ダイチさん。少々お話よろしいですか?」 俺が進もうとした時、この街のポケモンだいすきクラブの会長が直接俺に話しかけてきた。 当然ユウキという俺の名は広く知れているため、ポケモンクラブの会員には偽名を使って入会していた。 そうでなければ特別会員になどなれなかっただろう。 「こちらなら二人きりで話せますのでダイチさん……いえ、ユウキさん」 そう思っていた矢先、彼は俺の本当の名を口にした。 「……知っていたんですね。だったら単刀直入に言いましょう。あの香の正体はなんですか?」 表情を隠せていないのは自分でもよく分かっている。 俺の正体を知っていて尚、招き入れた度胸は認めるが、俺と相棒の関係を壊した事だけは決して許さない。 だからこそ追い詰めるために真っ先にそれを聞いた。 「あの空間に焚いてある香のことですね。あれはなんの変哲もない気持ちを安らげるためのお香です」 「嘘を吐くな!! 気持ちを安らげるためのお香だと!? だったら何故あそこのポケモンは皆おかしくなっているんだ!!」 苛立ちを隠せなくなった俺は思わず大声を出してしまったが、会長は決して慌てる様子を見せなかった。 「何処から話すべきか難しいところではありますが……まず前提として、私も貴方もポケモンを大切にする気持ちは変わりないと信じております」 白々しいことこの上ない。 だがこれ以上問い詰めても何も進展しない事は分かりきっていたため、大人しく首を縦に振った。 「ここにいる人々は皆、ただポケモンの事を大切にし、純粋に大事にしているんです。これはあくまで私達人間からの考え方なのです」 俺の不信感を感じてか、こちらの様子を伺うように言葉を選び、会長は言葉を紡ぐ。 「しかしポケモン達からすれば、私達は信頼できるパートナーであると同時に最愛の存在ともなることが多いのです」 「なぜそう言い切れる? ポケモンの言葉でも聞いたのか?」 俺の問いに対し、会長は首を横に振った。 当然だ。 そんなことができるとでも言おうものならその証拠を問い質すまでだ。 「ポケモン達は人間と違い、種と種の違いの認識が薄いのです。同じタマゴグループのポケモン同士であれば子を成せるためかは分かりませんが、そのせいで屡々人間にもその好意を越えた愛情を抱くようですね」 「だからその証拠は?」 「確証たるものを掲示することはできません。ですが一つだけ言えることがあるとすれば、我々は決して嫌がるポケモンを無理矢理犯すような行為だけはしていないと胸を張って言えます」 そもそもの行為が胸を張れる行為ではない。 そう言いたかったが、言葉を飲み込んだ。 ボイスレコーダーを回している以上、こいつらに失言させる方が手っ取り早い。 「貴方は確かにフリーのカメラマンで、パパラッチとして有名なのは承知の上です。ですがそれと同時に貴方がポケモンに対して向ける誠実さには嘘はないと信じたからこそ、私は貴方がこのポケモンだいすきクラブに入会することを許可し、このクラブの真意を理解して欲しいと理解して欲しいと考えたのです」 「何を根拠に……」 煽てればどうにかなると思っている輩はこれまでにもよくあった。 そういう時は話に乗った振りをしていたが、今回はどちらかといえば頭に血が昇っていただろう。 「貴方がここで"ダイチ"さんとして撮影した写真です。そこに写るトレーナーとポケモン、誰もが嘘偽りのない笑顔をレンズに向けていて、貴方自身も彼等の笑顔が最も映えるように撮っていた。……もしも貴方がただのパパラッチだったのだとすれば、見た者全てを笑顔にできるような、こんな写真は決して撮れないでしょう。だから真実をお話しようと考えたのです」 「……」 その言葉にまさか自分が揺らぐとは思わなかった。 確かに金のためにカメラを向け続けたカメラマンだ。 決して人に説けるような人間ではない。 だが確かに自分の中で捨てきれない思いがあったのは間違いない。 ポケモンを撮る時だけは、自分のその小さな意地が曲げたくないと叫ぶのだ。 確かにこの集会で撮った写真はどれも眩しかった。 誰もがポケモンの事を真から愛し、ポケモン達もそれを理解し、信頼しているのが分かる、曇り一つない笑顔だった。 だからこそその裏にあんなものが隠れている事が許せなかった。 「……その真実とは?」 「ここは、そういった真っ当にポケモンを愛し、愛される人々のための隠れ蓑なんです。自分達の関係性が普通ではないと分かっているからこそ、私達は決して公言せず、このような限られた場所でだけ、愛し合っているのだと理解して欲しいのです」 「ならあの香は? 本当に安らぎの香なのか? だとしたら何のために?」 「ユウキさんの相棒のリザードンのように、大きなポケモンも沢山います。本来は別の施設であるこの場所を一応了解は得ていても迷惑を掛けるわけにはいきません。そのためポケモン達が興奮しすぎないようにするために香を焚いています」 確かに初めてフォイアがフェラをしてきた日、森の中での方が少々荒かった。 だがそれが確証にはならない。 せめて俺自身が納得できる理由がなければ、信じようがない。 ……いや、分かっている。 今もまた俺は信用したくないのだ。 相棒が俺の事を異性として好いているという事実を。 「戸惑う気持ちは分かります。私自身初めは同じでした」 そう言って会長は恥ずかしそうに笑った。 「初め?」 「初めて私の相棒に求められた時ですよ。それまでずっと大切にしてきた相棒から向けられた愛情は私の理解を超えていました。きっとこれから先もずっと続くだろうと思っていた友情を一方的に裏切られたような……。まあ……要は似たような境遇だったんですよ」 その言葉は余りにも意外だった。 きっとポケモンを性の対象として見ているような人種にはそういった倫理観はないものだと考えていたからだ。 そんな彼等にも自分と同じような戸惑いを感じた時期があり、どういう経緯があったかは分からないが、それを超えていったのだという事実に、ただただ驚いた。 普通ならそんな言葉信じないだろう。 だが会長のその言葉は自分が一度も話したことのない自分の心境を的確に言い当てていたからこそ、信じられた。 「……もし、差し支えなければ聞かせて欲しいです」 「勿論。何からお話しましょうか?」 自分でも根掘り葉掘り人の話を聞いたのは初めてかも知れない。 でもその話はとても新鮮で、衝撃的で……同時に自分の中の価値観を変えてくれた。 会長の相棒はワニノコだったそうだ。 俺と同じように子供の頃からの付き合いで、一緒にアリゲイツ、オーダイルと成長し、一緒にポケモンリーグにも挑戦したそうだった。 一つ違う点があるとすれば、俺とは違ってバトルの才能があったことだろう。 戦いを幾度となく重ねてゆき、ゆくゆくはチャンピオンにも挑戦できるかもしれない。 そうなったある日、山篭りをしていた際に相棒が偶々野生のポケモン同士の交尾を目撃してしまい、自分の感情を隠しきれなくなって襲われたのだという。 その時に感じた絶望や恐怖は俺の比ではないだろう。 俺が感じた絶望感や、異常者になってしまったような感覚、相棒との心に亀裂が入ったような思いでいっぱいだったそうだ。 結局その一件が原因でトレーナーは引退してしまった。 相棒の顔を見ることすら苦痛に感じるようになり、最後に相棒を逃がすという選択を選んだという。 「あの時、彼女は泣いていた。でも何処かそれを恨むでもなく、ただ私の顔を見つめ、諦めたように微笑んだのだ。そこで漸く私は悟った」 「悟った?」 「彼女もまた後悔していたのだと。誰よりも悩み、誰よりも後悔したからこそ、私の傍にいることが、最愛の者を苦しめると理解したからこそ、彼女は私の幸せを願って微笑んだのだと」 言葉を失った。 あの時、確かにフォイアは自らの意思で一線を超えぬよう踏みとどまってくれた。 同じなのだ。 会長のオーダイルが微笑んだのとあの時フォイアが踏みとどまってくれたのは。 そこで漸く俺は傍らで俺と会長の話を聞いていたフォイアと、会長のオーダイルの顔を見た。 悲しそうな表情でその話を聞いていた。 「引き止めてあげたんですね」 「それ以外の選択肢はなかった。如何に今までの自分の考え方が人間本意なものかを思い知らされたよ」 『きっとフォイアも俺と同じ考えだろう』 そう信じてやまなかった。 だからこそ考えもしなかった。 俺がフォイアを恋愛対象としてみていないからこそ、決してその一線を超えないように感情を殺してきていたことなど、微塵も考えなかった。 文句の一つでも言っていい。 それどころか俺に怒っても良かったはずだ。 気が付けば自然と体はフォイアの方へと向いていた。 フォイアはただ静かに俺の顔を見つめ返し、ただ静かに立っていた。 「フォイア……すまなかった」 「ギュウ」 フォイアの手を取りそう伝えると、フォイアはただ同じように手を握り締め、嬉しそうに微笑んだ。 「やはり、君に話して良かった」 そう言うと会長は嬉しそうに微笑みながら立ち上がり、相棒のオーダイルと視線を合わせた。 「もし良ければ他の人達の話も聞いてやって欲しい。きっと君の役に立つ。ただし、あちらの部屋の中でだけだ。広場の方は理解のない人達も多いからね」 「待って下さい!」 そう言って去ろうとする会長を思わず呼び止めた。 どうしてもこれだけは聞いておきたかったからだ。 「何故、俺を選んだんですか? いや、選んだというよりは何故、俺なら大丈夫だと判断したんですか?」 会長からすれば俺をこの場に連れてきたのは一世一代の賭けとも言えるだろう。 何故そんなリスクを冒してまで俺を特別会員にしたのか、その真意を知りたかった。 「なんてことはない。ただの勘ですよ。私が彼女と共に過ごしてきた事で得た勘で、なんとなく同じような境遇の人を招き入れている。ただそれだけです」 それだけ言い残すと会長は楽しんで下さい。と付け加え、会釈をして去っていった。 長年の勘という奴は自分自身も長いパパラッチ生活で培っているつもりだったため、納得できた。 そしてふとフォイアの方を見る。 漸く相棒の目からも憂いの色が消えた。 それと同時にフォイアは先の話から俺の事を意識しているのか、少しだけ頬を赤らめて視線を逸らしている。 そんなフォイアの頭を撫で、奥へと向かった。 まさかこんな短時間の間に何度もこの場所の意味合いが変わるとは思ってもいなかったせいで、少しばかり意識がとっ散らかってしまう。 だが一応もう疚しい思いはない。 意を決し、近くの人の気配のする小部屋に声を掛けた。 「すみません急に……。もしよければお話をお聞かせ頂いてもよろしいですか?」 「ん? 構わんよ」 服を着直して出てきたのは中年ぐらいの男性とコジョフー。 いかにも会社員という感じで体はかなり引き締まっているが、腹だけは中年らしく少しふくよかだ。 「月一でしか開かれないからね。今日はミリィちゃんと愛を深め合ってたところだ」 「え? その……入るんですか?」 小柄なコジョフーにはとてもではないが人間のモノが入るとは到底思えない。 そんな考えが顔からも出ていたのだろう。 男性は大声で笑い、首を横に振った。 「無理だよ。だからコジョンドに進化したら、といって聞かせてる。普段はミリィちゃんは口で、私は指と舌で彼女を愉しませてあげてるよ」 寧ろ彼女が入れて欲しいと何度も懇願することがあるらしく、その度に物理的に不可能なのを確かめさせて諦めさせているのだとも語った。 口も当然大きくはない。 それでも必死に気持ちよくさせようとしているその様が愛おしいと彼は語った。 最後に礼を言うついでに写真を一枚撮影してあげた。 暗がりでも分かる、とても幸せな笑顔だ。 「それと分かりにくいけど、奥の正面にある部屋が談話室だから、そっちで色んな人に話を聞いた方がいいと思うよ」 「えっ!? 談話室なんてあったのか。本当にすみません!」 「いやいや。暗くて分かりにくいからね。割と慣れっこだよ」 そう言って男性はそのまま部屋へと戻っていったが、おおらかな方でよかった。 言われた通り談話室に入ると、思った以上に人が沢山いた。 男性も女性もおり、楽しそうに談笑している。 そこで会長の言った通り、多くの人達と話し、多くの知見を得られた。 皆、相棒のことを大切にしており、同時に相棒からも大切にされているようだ。 とある女性はガブリアスをパートナーにしている。 婚約までしていた男性から裏切られ、傷心だったところにガブリアスが慰めてくれたそうだ。 慰めるといっても最初は普通のもので、単に優しく抱きしめてくれただけだったが、そこで彼女の方がガブリアスを異性としての魅力を見出したらしい。 ガブリアスは最初は戸惑っていたようだが、意を決して行為を行ったが、種族特有の鮫肌や鋭い鉤爪のような腕が彼女の柔肌を傷付け、それ以降消極的になってしまったらしい。 今でこそ二人は互いに努力し、種の壁を超えて愛し合っているとも語った。 他の人達も経緯の差はあれども、皆互いのポケモンやトレーナーの意思を尊重しており、互いのポケモンを褒め合っていた。 なんのことはない。 ここにいる人達は異常者なんかではない。 もっと純粋に、種の枠組みすら超えて、相手を尊重し合える人間とポケモンしかいないのだ。 人が戸惑うように、ポケモン達も戸惑うことがあるのが新鮮だった。 そうして話を聞く内に休憩を終えてもう一戦交えると言いながら部屋を去ってゆく人や、逆にここでの会話を楽しんでいる人が新たに入ってくる。 そして皆、口々にフォイアを見てこう言った。 「とっても大切にしてもらってるんだな」 ……まだ正直に言えば、心は迷っている。 一線を超えてしまえば、きっともう俺とフォイアはただの相棒ではいられないだろう。 だとしても、ポケモンに対しては、特にフォイアに対してだけは嘘を吐きたくなかった。 例え俺がどんな道を歩んでも、フォイアだけはいつも俺を信じてついてきてくれた。 そう考えると自然と俺はその場の皆に挨拶をして一枚ずつ写真を撮り、個室へと向かっていた。 不思議だ。 一ヶ月前はこの空間を見てもなんの感情も沸かなかった。 しかし今はまるで初めて女性とホテルに入った時のような緊張感を覚える。 パパラッチなんて事をしていた以上、金によってくる女からネタを引き出すために寝たこともあった。 あの時でもこれほどまでに緊張したことはないだろう。 何度も深呼吸し、今度は自らの意思でゆっくりと服を脱いでゆく。 フォイア達ポケモンと同じように身一つとなり、顔を向き合わせる。 薄暗い室内が少しばかり明るすぎるほどにフォイアの尾の炎が燃え上がり、感情の昂ぶりを隠せないのがよく分かる。 静かにフォイアの首に手を回し、しっかりと抱きしめる。 肌を通して伝わるフォイアの熱が、意外と触れ合う肌は冷たいのだと教えてくれた。 フォイアも同じように優しく抱きしめ、首を俺の背中まで回す。 早いフォイアの鼓動を感じながら、今一度少しだけ距離を空け、静かに彼女の唇に自分の唇を重ね合わせた。 時間にしてほんの数秒のことだろう。 だが、その一時、確かにフォイアと心が一つになったような気がした。 「フォイア。ごめんな。お前の想いに気付いてやれなくて……。これからは、その……よろしくな」 学生の時以来だろうか、こんなギクシャクした告白をしたのは。 だが初恋を思い出すほどに、自分の心はあの初々しい気持ちを、目の前の彼女に対して思い出していたのだ。 確かに俺もこちら側の人間だった。 俺を思う相棒の……いや、彼女の思いが嬉しいと思える人間だった。 返事の変わりとでも言うように彼女はそっと唇を重ねた。 そんな彼女の顎を優しく包み、自分から彼女を求めるように舌で彼女の唇に触れた。 人よりも何倍も大きく自在にうねる舌が優しく絡みつき、迎え入れる。 何度も舌を絡め合い、お互いの唾液を混ぜ合わせる度に鼓動が早まり、体温が上がってゆくのが分かる。 もう彼女との関係性は大きく変わっている。 そんなことを考えながら顔を離し、優しくその手を引いてベッドへとエスコートする。 俺よりも大きい彼女は見るからに頬を紅潮させ、ぎしりと音を立ててベッドに背を預けた。 尻尾の炎が燃え移らないように股の下から伸びた尾は横に避けており、煌々と足元を照らしている。 初めはあんなに求めていた彼女も俺から先導された途端、急にしおらしくなるのが逆に愛おしい。 初めてポケモンの大切な場所に手を触れる。 尾の付け根の辺りがよく見ると割れ目があり、そこをそっと指でなぞると恥ずかしそうに脚を震えさせた。 ここで間違いないようだ。 指に力を入れてぐにりとその割れ目を拡げると、美しいピンク色が現れる。 両腕を使ってそこを広げるが、思っていたよりも柔らかく、肉厚な場所に空いた穴が姿を現す。 人のそれとは形状が違うが、恥ずかしそうに顔を押さえている以上間違いない。 そっと舌を這わせると体をびくりと跳ねさせ、その柔らかな穴をきゅうと収縮させる。 大型種ならば唾液だけでは足りないと渡されたポケモン用のローションを手に取り、優しく塗り広げてゆく。 冷たさに驚いたのか一度声を出したが、特に抵抗はしなかった。 元々柔らかく掴みにくかった肉は最早掴めなくなり、内側はなぞるだけで中へと滑り込むほどに抵抗を失う。 自分の心音が高鳴っているのをよく感じる。 ぎしりと音を立てて更にベッドをたわませ、彼女の上に乗った。 僅かに勃起した自らのペニスをそのヌルヌルになった秘部へと押し付ける。 ペニスで触れると分かる、しっかりとした細やかな鱗の凹凸が不覚にも半勃ちだったモノを固くしてくれた。 今ならば挿入できるだろう。 「フォイア、挿れるぞ……」 そう言うとフォイアは早く欲しいとでも言うように切なく喉を鳴らす。 確認するまでもなかった。 だがこういうのは大事なんだ。 手で硬くなったペニスをその割れ目へと押し付けてゆく。 割れ目は一切抵抗することなく拡がり、ぬるりとその汚れを知らない彼女の中へと誘われていった。 リザードンからすれば小さすぎるはずの俺のペニスを受け入れた彼女は、キュウと一つ声を上げ、ぐにぐにと形を変えてゆく。 ただの割れ目だった場所はあっという間に底なし沼へと姿を変え、貪欲に俺のペニスを呑み込み、呑み込んだ先からぴったりと肉が纏わりついてゆく。 まるで一つの生命体のようにうねり、呑み込み、あっという間に根元までがっちりと咥え込まれた。 「な、なんだ……これ……!?」 漸く一つになったことに対する感動を感じる暇など与えられない。 まとわりついた肉がうねり、肉棒を的確にこねくり回す。 彼女が初めてだからと気遣って腰を動かしていないのにも拘らず、彼女の雌の部分は漸く迎え入れた雄を貪るように刺激を与え続ける。 こんなもの味わってしまってはとてもではないが人間なんかで満足できる気がしない。 『ヤバい……挿れてるだけなのに……気持ち良すぎる……!』 そう思った時には既に遅かった。 果てる前に引き抜こうと腰に力を入れたが、絡みつく肉が決して俺の雄を掴んで離そうとしない。 それどころか引き抜こうとした事によって彼女に刺激が伝わり、切ない声を上げながらより一層締めつけ呑み込んでゆく。 唯一安心したのは彼女もしっかりと快感を味わってくれていることだけだろう。 ただ挿れただけで果てた上、彼女を悦ばせられなかったとあれば自分の小さなプライドに傷が付く。 だがもう逃れられない。 一度刺激を与えると求めるように俺の背中を彼女の腕が包み込み、尻尾をぐいと持ち上げてより挿入しやすい角度で固定された。 ぐにゃりぐにゃりとうねり、快感を与え続ける魔性の穴から逃れようと腰を動かす度に、切ない声が響き、締め付けが強まってゆく。 「キュウ!」 そんな声と共に蠢いていた彼女の膣内がぎゅうと締めつけ、少しだけ動きを止めた。 かと思えば背中に回されていた腕の力が少しだけ緩んだのだ。 「ギュウ……」 「あ、逝った……のか」 少しだけ放心すると彼女は首を持ち上げて俺の顔を舐め回し、また肉棒を絡め取るようにうねりだす。 流石のポケモンの繁殖力の高さといったところか。 雌の内部は全て雄を絶頂へ向かわせるための武器であり、様々な種と交われるようにこれほどまでに柔軟なのだろう。 だが二度目は流石に耐えられない。 動きを止めていた中がうねり、また強制的に刺激を与え続ける。 耐える間もなく続く甘美な攻撃に耐え切れなくなり、射精感が強まってゆく。 「フォ、フォイア……! 出る! 中に……出すぞ!!」 「ギュウ!」 もう逃れられないと悟り、自ら腰を振って彼女を少しでも愉しませる。 そしてしっかりと抱きしめられながら、彼女の初めてを貰った。 ドクドクと止めど無く精液が溢れてゆき、彼女の中を満たしてゆく。 彼女の胸に体を預けたまま、その心地よい射精感を味わい続けた。 「……気持ちよかったか?」 あまり自信はなかったが、そう彼女に訊ねると、嬉しそうに笑ってみせた。 だがまだ終わらない。 俺が一度出したというのに、彼女の内部は又してもうねり始めた。 「待……待って……! 今出したばっかりで……!」 「ギャウ……」 待てないとでも言うように一つ返事をし、口を塞ぐように舌を滑り込ませる。 腰が砕けたまま続く強制的な快楽。 そのあまりの心地よさに俺のペニスはあっという間に硬さを取り戻した。 もうこうなってしまったのなら満足させるしかない。 絡みつく彼女の肉をかき上げ、グッと奥へ押し込む。 突き込む度にキュッと締まり、引き抜く度にぎゅうぎゅうと締め付ける。 それからはもう、ただ一心不乱に腰を振り続けていた気がする。 最早獣と獣の交わりだ。 だが俺の方は人間だ、流石に限界がある。 心臓の音がはち切れそうなほど高鳴り、これ以上は無理だと警鐘を鳴らす。 そこで初めて後ろへ崩れ落ちるように抜け出し、呆然と目の前を眺めていた。 ブピュリと音を立てて先程までまぐわっていた場所を強調するように白い筋が噴き出し、尾と地面を汚す。 大きな彼女の中を満たすほど出していたことにも驚きだが、それでも彼女が未だ満足していない事にも驚く。 明らかに彼女の方が自分よりも速いペースで絶頂を迎えていたはずだが、ポケモンの体力は侮れない。 「ギャウ!」 鳴き声を聞いてそちらへ今一度顔を向けると、ベッドから転がり降りた彼女が今度は両手を地面に着いて尻尾を持ち上げ、白濁液を垂れ流しながら器用に穴だけを動かし、更に誘っている。 もうこうなればやけくそだ。 体力の続く限り彼女を満足させるほかあるまい。 誘われるままに立ち上がり、なんとか呼吸を整えて既に痛むペニスをそこへと当てる。 大きく穴がうねり、ペニスが呑み込まれてゆく。 それに合わせて尾が体を巻き取り、逃げられないように再度拘束された。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 次に意識を取り戻したのは二時間後だった。 脱水で倒れた俺の傍でフォイアが鳴き声を上げていたことで周囲が気が付いたようだ。 曰く、ポケモンは周囲に危険がなければ永遠に交尾をし続けられるらしく、人間がポケモンと交わるのならば必ず人間優位にし、人間が止めたいと感じた時点でポケモンの方も止めさせるようにしなければならないらしい。 とはいえ、こんな施設故、そういう事故は多いらしく、あっという間に処置を施され部屋の隅で寝かされていた。 まだまだ人とポケモンの差や、それを超えた愛情というのは知らないことの方が多い。 それを痛感しながら全身の倦怠感を感じつつ水を口に流し込み、ずっと心配そうに泣いているフォイアを只管宥め続けた。 結局その後、歩けるまで回復した俺はその場を後にし、翌日改めて会長や他の会員達に礼を言い、自分の正体を明かした上で、このクラブの真実は明かさないことを公言した。 あの一件以来、フォイアは前にもましてベタベタと張り付くようになった。 まあ漸く恋が実ったとなればそうもなるだろうが、正直な所、あの場でなければ生死に関わっていたことを考えると、とてもではないがあの集会以外で肉体関係を深めようとは思えない。 そういった意味でも優位性というのは大事なため、変わらず普段は相棒として接している。 なんだかんだ前後で関係性が変わらなかったのは不思議なものだ。 だが一つ問題が発生した。 ここ最近は危ない橋を渡りすぎたせいで身を潜めていたため、所持金も底を尽きかけていた。 本来はこのポケモンだいすきクラブのネタでひと稼ぎする予定だったが、事情が変わった今では一銭にもならない。 「どうするかねぇ……またどっかの黒い噂の付きまとう有名人でも追っかけ回すか?」 そんな独り言を呟きながらレンズを磨く。 そしてふと撮った写真の数々を見た。 元々仕事用に使っていたカメラには人の闇が見え隠れしている嫌な写真ばかりだったが、今回の潜入用に用意したカメラには自分が本来撮りたかった写真がいくつも並んでいた。 「ポケモンに対する情熱……か……」 ポツリと呟いた後、仕事用のカメラの中にあったデータを全て消去した。 そしてその足でまたポケモンだいすきクラブへと向かい、被写体になってもらった人々にその写真を使っていいかの許可を取りに行った。 恐らく、これが最後のチャンスだろう。 そう考えて俺は、その写真をコンテストへ応募した。 結果は……佳作。 俺もプロのカメラマンの端くれのつもりだったが、真に美しさを求め続けた彼等の写真には確かに遠く及ばなかった。 だが、俺にしか出せない持ち味もあった。 『写るポケモンとトレーナー達の笑顔が写真を通して伝わるような作品』 それが佳作に選ばれた理由だった。 喜ぶべきか微妙なところだったが、結果をポケモンだいすきクラブの面々に話した所、皆嬉しそうにしてくれていた。 結局、会長のご好意で俺はそのポケモンだいすきクラブの専属カメラマンとして契約を結ぶことになった。 契約金としてプロの相場の額を掲示してきたが、俺が選んだのは当然、普通のカメラマンよりも一回り下。 まだポケモンフォトグラファーとしては半人前の俺には多すぎる。 自分で選んだ選択肢とはいえ、生活は一気に苦しくなった。 だが、一つだけ確かな事がある。 今、俺は間違いなく、今までで一番幸せだ。 ---- *あとがき [#M6hm1RF] 文字数プロレスの副産物でござる。 ネタ抜きガチで作品を書いてしまったがため、普通の作品投稿となってしまいましたが、お楽しみいただけたなら幸いです。 ---- *コメント [#CS87V7s] #pcomment(コメント/大好きクラブ,10,below);