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アドバンズ物語第五十七話 の変更点


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作者 [[火車風]]
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第五十七話 名探偵ゴロスケ! 食料泥棒を捕まえろ!


ライナの誕生日の翌日、みんなは朝礼を終えこれからどうするか話し合っていた。

「今日はせっかくだから、みんなで一緒の依頼に行かねえか?」
ソウイチはみんなに提案した。

「そうですね~。最近は別々での行動が多かったですし、それもいいかもしれませんね。」
コンも賛成のようだ。

「でも、さっき掲示板を見たけど、依頼がほとんどばらばらだったよ。」
ソウヤが言った。

「同じ依頼場所も2~3個しかないしな~・・・。どうする?」
シリウスが聞いた。
みんなが首をひねって悩んでいると、ぺラップが部屋に入ってきた。

「お~いお前達、お客さんが見えてるぞ。」

「お客さん?」
みんながぺラップに聞き返すと、そのお客が部屋にはいってきた。
それをみて一番驚いたのはモリゾーとゴロスケだった。

「やあ。しばらく見ないうちに二人とも立派になったね。」
そう、たずねてきたのはゴロスケの父、バーニーだった。
その後ろにはフレイムもいた。

「お、お父さん!!」

「おじさん!どうしたの!?」
二人ともびっくりしたと同時にすごくうれしかった。
もう6年も会っていないのだから。

「いや、ちょっと二人の顔を見によってみたんだ。それと、頼みごともね。」

「頼みごと?」
二人はバーニーに聞いた。

「それはオレが説明するよ。実は、村の近くに地下へと続く不思議な洞窟が見つかったんだ。そこをぜひ調査してほしいんだと。」
フレイムは二人に説明した。

「でも、それならお父さんが行けばよかったんじゃないの?」
ゴロスケが言うのも最もだ。

「確かにそれはそうだね。だけど、二人がどこまで探検隊らしくなったか、この目で見ておきたいと思ってさ。」
どうやら、バーニーは二人の探検隊の修行が身を結んでいるか確かめに来たようだ。

「オイラたちは別にいいけど、行くんならソウイチ達に聞かないと・・・。」
モリゾーはソウイチのほうを見た。

「ソウイチ君、引き受けてくれないかな?」
バーニーはソウイチに向き直った。

「オレからも頼むぜ。引き受けてくれねえか?」
バーニーもソウイチを見る。
ソウイチはしばらく考えていたが、やがて首を縦に振った。

「よし!そうと決まったら早速出発だ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!全員を連れて行く気かい!?ひとつの依頼にそんなに大勢は回せないよ!」
ペラップが口を挟んだ。

「大勢のほうがいいんだよ。あの洞窟は分岐点が多いらしいからな。ほら、早く行こうぜ。」
フレイムはペラップの意見をあっさり却下し、みんなをせきたててバーニーとともに部屋を出て行ってしまった。
ペラップは一人ぽつんと部屋に取り残されていた。
階段を下りて交差点まで来たところで、ゴロスケはバーニーに尋ねた。

「お父さん、さっきの依頼の話ってうそでしょ。」

「え・・・?」
バーニーは一瞬虚をつかれたような顔になったが、すぐに笑い出した。

「ハハハハ!お前の目はやっぱりごまかせないな。」

「そりゃそうだよ。うそついてるかどうかなんて顔を見ればわかるよ。」
ゴロスケはちょっとあきれていたが、目は笑っていた。
みんなは何のことかさっぱりわからないようだった。

「悪いなみんな。さっきの依頼の話はでたらめだ。お前達を外へ連れ出すためのな。」
フレイムはにやっと笑った。

「連れ出すためってどういうことだよ?」
シリウスはバーニーに聞いた。

「ああでも言わないとぺラップが引き下がらなかっただろうからね。本当の目的は依頼じゃなくてこれさ。」
バーニーは一枚の紙をシリウスに手渡した。
モリゾー達三人以外はその紙をのぞきこんで同じことを言った。

「天の川祭り?」

「ああ。オレ達の住んでた地域では、昔から天の川祭りをやるんだ。この時期になると星がすごくきれいに見えるからみんなで集まって願い事をするんだ。」
人間世界で言うところの七夕祭りみたいなものであろう。
ただし、この世界に笹や短冊などはなく、流れ星みたいに天の川を見てお願いをするのだ。

「へえ~、なんだかロマンチックですね~。」

「天の川に願い事か~・・・。」
コンとライナは天の川に願い事をする自分の姿を想像していた。

「ってことは、モリゾーやゴロスケもこの祭りのことは知ってたのか?」
ソウイチは二人に聞いた。

「うん。帰りたいとは思ってたけど、時間がなかなか取れなかったんだ。」

「それに、探検隊になるためには、そういうのも我慢しなくちゃいけないって思ったから。」
時間がないというのは、探検隊になるためにいろいろな経験をつんでいたからだろう。
それほど二人の思いは強かったのだ。

「そういえば先輩、オレ達の住んでたって言ってましたけど、先輩もバーニーさんと同じところに住んでたんですか?」
ソウマはフレイムに聞いた。

「じゃなかったら三人で探検隊を作ったりなんかしねえさ。」
フレイムは笑いながら言った。

「でも、それならどうしてゴロスケとモリゾーとドンペイはお互いのことを知らなかったの?」
ソウヤは一番気になる質問をした。

「ああ。実はフレイムはもともと、僕達と同じ村に住んでいたんだけど、ドンペイ君が生まれてからは別の地域にいて、二人がトレジャータウンに出発してまた戻ってきたんだ。」
バーニーの説明を聞いてみんな納得した。
それならお互いに知らないのも当然といえるだろう。
しかし、子供同士は知らなくても、親同士が知っているのだからこれも何かも巡り合わせなのだろう。
そしてみんなは、バーニーとフレイム先導のもと、ゴロスケたちの故郷、もりのこはんに向かって出発した。

半日ほど歩いて、みんなはもりのこはんに到着した。
村の入り口に来るころには、すでに太陽はオレンジ色の光を放っていた。
村ではみんなが祭りの準備をしている真っ最中だった。

「あ、バーニーさんだ!」

「お帰りなさい~!」
準備をしていた子供達がいっせいに駆け寄ってくる。
サンド、ナゾノクサ、ポポッコ、カラカラ、ゴンベ、ジグザグマ、ムクバードと種族はさまざまだ。

「ただいま~。今日はみんなにプレゼントがあるぞ。」
バーニーは笑顔で言った。

「え?プレゼント?」
みんながバーニーの後ろを見ると・・・。

「うわあ!フレイムさんだ!」

「それにモリゾーやゴロスケもいる!」
みんなは思わぬサプライズに大喜びだ。
しかし、フレイムはともかく、なぜモリゾーやゴロスケのことまで知っているのか。
何を隠そう、モリゾー、ゴロスケ、ドンペイはこの7匹と友達なのだ。

「みんなも元気そうでよかった!」

「しばらく会わないうちにみんなも大きくなりましたね~。」
モリゾーたちもみんなに久しぶりにあえて嬉しそうだ。

「それと、モリゾーたちがチームを作ってる探検隊のメンバーも来てるよ。」
バーニーが言うと、みんなはソウイチ達の周りを取り囲んだ。
この辺で探検隊といえばフレイムとバーニーぐらいのものなので、他の探検隊を見るのは初めてなのだ。
ソウマとカメキチは特に人気で、みんなから憧れのまなざしで見られていた。
もちろん、ソウイチとシリウスがその様子にものすごくやきもちをやいたのは言うまでもない。

「こらこら。この人たちはギルドから来て疲れてるんだから、みんなはお祭りの準備をしておいで。」
バーニーはソウイチ達に気をつかって子供達に言った。
子供たちはちょっと不満そうだったが、すぐに準備をしに戻った。

「わりいな。何しろオレ達以外の探検隊が来るなんてめったにないからな。」
フレイムはすまなそうに謝った。

「気にしなくていいぜ。別に悪い気分じゃねえからよ。」
ソウイチはにっと笑ってみせた。

「ちょっと恥ずかしいですけど、皆さんとお友達になれそうですし。」
コンも笑顔で言った。

「とりあえず、祭りの間は僕のうちに泊まりなよ。みんなが泊まれるぐらいの広さはあるからさ。」
バーニーはうちのほうへ向かって歩き出した。
みんなもその後をついていく。

「ただいま~。今帰ったよ~。」
バーニーは玄関の戸をあけて家の中にむかって言った。

「お帰りなさい~。あ、ゴロスケ!」
ミズヨはゴロスケを見つけるとすぐに抱きしめた。
どうやらゴロスケが帰ってくると知らせを受けていたようだ。

「お帰り~!ずいぶん立派になったわね~!」
ミズヨは本当に嬉しそうだ。

「ちょ、ちょっとお母さん!みんなが見てる前でやめてよ!」
ゴロスケはすごく恥ずかしそうだった。
みんなはゴロスケの様子がおかしくて笑った。

「モリゾーもお帰りなさい!大きくなったわね。」
奥からはナズナが顔を出した。
ナズナもモリゾーが帰ってくるという連絡を受けてきていたのだ。
やっぱり久しぶりにモリゾーにあえて嬉しそうだ。

「うん!ただいま!」
さすがにモリゾーを抱きしめるようなことはなかったが、久しぶりに会話するせいか、モリゾーはちょっと照れくさそうだ。
言葉には出さなかったが、小さいころのグラスに大分似てきたと思うナズナであった。
そして、みんなはしばらくバーニーたちの昔話に耳を傾けていた。
小さいころのモリゾー、ゴロスケ、ドンペイの話、探検隊だったころのバーニーたちの話、モリゾー達の友達の話などなかなか話題は途切れなかった。
気がついてみれば、とっくに日が暮れており、そろそろ晩御飯の時間だった。
せっかくなので、みんなで協力して晩御飯を作ることになった。
ライナやソウマはナズナたちに劣らず手際がよかったが、ソウヤやコンはなかなか苦労していた。
ソウイチとシリウスも料理の経験はなく、ライナ達に手取り足取り教えてもらってなんとかこなしていた。
苦労はしたものの、みんなで食べる晩御飯はやっぱりおいしかった。
ソウイチやシリウスの取り合い競争はもちろんだったが、さすがに今回ばかりは、ソウマもお酒を飲まされる羽目にはならなかった。

真夜中、みんなが寝静まったころに、ドンペイはふと目を覚ました。
なにやら下で妙な物音がするのだ。

「ゴロスケさん・・・、ゴロスケさん・・・、起きてください・・・。」
ドンペイは隣で寝ていたゴロスケに呼びかけた。
一人で降りるのはさすがに心細いのだ。

「ふあああ・・・。どうしたの・・・?」
ゴロスケは眠そうな目でドンペイを見た。

「下のほうで変な音がするんですよ・・・。僕一人じゃちょっと怖くて・・・。」
ゴロスケは耳を澄ましてみた。
確かに、何かをあさるようなごそごそという音が聞こえる。

「わかった。行ってみよう。」
本当はゴロスケもちょっと怖かったが、ドンペイがいる手前、臆病な部分は見られたくなかったので勇気を奮い立たせた。
そろりそろりと階段を降りリビングのあたりまで来ると、さっきよりもはっきりとごそごそという音が聞こえてきた。
どうやら音は台所にある食料庫のほうから聞こえてくるようだ。
二人は抜き足差し足で近寄り、そっとドアを開けた。
中は暗くて見えなかったが、何かがいることだけは確認できた。

「ど、どうしましょう・・・。誰かいますよ・・・。」
ドンペイは少し震えていた。

「しっ。声を出しちゃだめ。とりあえず、今は様子を見よう。」
ゴロスケはドンペイにささやいた。
二人はしばらくその場にとどまっていたが、やがて奥のほうでドアの閉じる音がした。
中にいた何者かが出て行ったようだ。
二人は早速異常がないかどうか調べた。

「いったいさっきのはなんだったんでしょう・・・。」

「さあ・・・。あ!」
ゴロスケは急に声を上げた。
ドンペイがその視線の先を見ると、かじりかけのリンゴが落ちていた。
どうやらさっきいたのは食料泥棒らしい。

「これって・・・。」

「犯人が食べてたやつだと思うよ。きっと、リンゴを盗むための下調べにでも来たんだよ。」
ゴロスケはリンゴを見てつぶやいた。

「大変ですよ!早くみんなに報告しないと・・・。」

「待って!今なら犯人を追いかけても間に合うよ。そのほうが未然に防げるし。」
ゴロスケはドンペイに提案した。

「で、でも・・・、凶暴な犯人だったら・・・。」

「そのときは手を出さずに戻ってくればいいよ。なんにせよ、悪者を放っておくわけにはいかないよ。」
ゴロスケの言うことにドンペイはしばらく悩んでいたが、やがて心を決めた。
二人はそ~っと勝手口から外に出た。
あたりは真っ暗で、目を凝らさないと先も見えないほどだった。

「見て、ドンペイ!犯人の足跡だよ!これをたどっていこう。」
ゴロスケはちょうど犯人の足跡を見つけたようだ。
二人は慎重に足跡をたどり始めた。
足跡は家の外に続き、湖のそばを通って森の中へと続いていた。

「(まさか犯人は、遺跡にむかおうとしてるんじゃ・・・。)」
遺跡というのは、前の地震で崩壊した遺跡のことだ。
ゴロスケの足は自然に速まり、ドンペイもその後についていく。
しかし、入り口のあたりで足跡はぱったり途絶えた。

「あれ・・・?変ですね~・・・。」

「おかしいな~・・・。いったいどこに・・・。」
ゴロスケがあたりを見回していると、急にくぐもった声が聞こえた。
そのほうを見ると、ドンペイがじめんに突っ伏していた。

「ど、ドンペイ!どうしたの!?だいじょ・・・。」
すると、今度はゴロスケが頭に衝撃を感じ倒れてしまった。
薄れ行く意識の中、最後に見えたのは木の上をかけていく何かだった。


「・・・おい・・・。おい、ゴロスケ!しっかりして!」
ゴロスケは誰かが呼びかける声で目を覚ました。
声の主は、心配そうにゴロスケを覗き込んでいるバーニーだった。
隣ではフレイムが同じようにドンペイをゆすっている。

「お、お父さん・・・。どうしてここに・・・。」

「朝起きたら、お前たち二人がいないから探しに来たんだよ。ゴロスケ、いったい何があったんだい?」

「それが・・・。」
ゴロスケとドンペイは二人に昨日の出来事を話した。
二人は真剣に話を聞いていたが、やがて顔を見合わせてうなずいた。

「そうか・・・。またそんなことが・・・。」
ゴロスケはバーニーのまたという言葉に引っかかった。

「またってどういうこと?」

「実は、二~三日前からそういうことが起きてるんだ。なくなってるのは食料ばかりで、それもリンゴが一個か二個だけ。最初は子供たちのいたずらかと思ったんだけど、落ちてたリンゴの歯形とは誰も一致しなかったんだ。」
バーニーは二人にことのあらましを話した。

「二人の話を聞く限りじゃ、犯人が襲ってきたのはおそらく今回が初めてだ。二人にあとをつけられていることがわかってのことだろうね。」
おそらく、向こうもゴロスケたちの様子をうかがいながら逃げていたのだろう。
でなければわざわざ相手を待ち伏せするような危険なことはしない。

「とにかく、この件はオレ達に任せろ。またいつお前らが襲われるかもわからないしな。いいか?」
フレイムは二人の目を見て言った。
二人は多少不服そうだったが、しぶしぶ言うことに従った。
家に帰ると、ほかのみんなはすでに祭りの準備に出かけており、ゴロスケとドンペイもそれに加わることにした。

「あ、ゴロスケだ!ドンペイもいるよ!」
早速子供達が二人のところに駆け寄ってきた。

「二人とも今までどこに行ってたの?」
ジグザグマが聞いた。
二人はみんなに、自分達に起こった出来事を話して聞かせた。

「そうだったんだ~・・・。でも、本当に迷惑だよ。僕なんかお父さんとお父さんに疑われたんだよ?」
ゴンベが口を尖らせた。

「寝る前に食料庫から変な音がするからのぞいて見たら、そこに誰かいたんだ。出て行った後で追いかけようとしたけど、足跡がどこにもなくて・・・。」

「足跡がどこにもない?」
ゴロスケは聞き返した。

「うん・・・。ひとつもなかったんだ。だから、お父さんとお母さんは僕が食べたんだって・・・。」
ゴンベは悲しそうな顔になった。

「私のときもそうです・・・。足跡が全然なくて・・・。お父さん達は、ふゆうの特性を持っているか、ひこうタイプのポケモンだろうって言ってるんですけど・・・。」
ポポッコも言った。

「オレんちだってそうさ。木の上にあるのに、朝見たらリンゴが食い荒らされててさ・・・。どう考えても地面を歩くやつの仕業じゃねえよ。」
ムクホークも悔しそうに言った。
三人とも、食べた形跡はあるものの、足跡がひとつも残っていないということだった。

「でもおかしいですね・・・。僕達が昨日見た犯人は、ちゃんと足跡が残っていたのに・・・。」
ドンペイは首をかしげた。

「そうだよね~・・・。だけど、木の近くで足跡はなくなってたし、ふゆうの特性かひこうタイプしか・・・。ん?木の近く・・・?」
ゴロスケは何かを思いついたようだ。

「そういえば、みんなの家って木の近くにあるよね?」
ゴロスケはみんなに聞いた。

「うん。確かに周りには木がいっぱい生えてるよ。」
ゴンベが言った。

「私のうちの近くも木がたくさん生えてますよ。」
ポポッコも言う。

「オレんちの周りも木がいっぱいあるぜ。」
ムクホークも言った。
どうやら泥棒が入ったところに共通しているのは、足跡がなく、その周辺には木がたくさんあるということだった。

「(まてよ・・・。もしかしたら犯人は、そうやって足跡をつけずにリンゴを盗んだんじゃ・・・。)」
ゴロスケは頭の中で自分の推理を組み立てていた。

「お~いお前ら!!そこで何話し込んでんだよ!忙しいんだからこっち来て手伝えよ!」
飾りを運んでいたソウイチが怒鳴った。

「あ、今行くよ~!」
ゴロスケはあわてて返事をした。
そしてドンペイに、準備が終わったら付き合ってくれるよう頼んだ。
何か考えがあるようだ。
バーニーとフレイムにかかわるなと釘を刺されたものの、やはり気になってしょうがないのだ。
ソウイチ達に話すとまたバーニーに注意されかねないので、二人だけで実行することにした。

まず、ゴロスケとドンペイは、泥棒に入られた三人の家を訪ねてみた。
ムクホークの家は例外として高い木の上にあるが、ほかの二人の家はゴロスケの家と同じような風に建っていた。
ゴロスケの家と違うところといえば、周りを森林が取り囲み、木の数が圧倒的に多いということだ。

「木がたくさん生えてますね~・・・。」
ドンペイは高い木を見上げてつぶやいた。
ゴロスケはしばらく木を見つめていたが、やがて突き出した幹を使って上へ登ってみた。

「ご、ゴロスケさん!?危ないですよ~!」
ドンペイは突然のゴロスケの行動にびっくりして叫んだ。
ゴロスケはさらに木から木へ飛び移ってみたりとかなり危ない芸当をやってのけた。
そして、五本目の木に移ろうとしたときに足を滑らせて落ちてしまった。

「いたたたた・・・。」

「大丈夫ですか・・・?」
ドンペイは心配そうにゴロスケを見つめた。

「だ、大丈夫だよ・・・。でも、これで犯人がどうやって逃げて行ったかわかったよ。」
ゴロスケは自信に満ちた目をしていた。

「ほ、ほんとですか!?」

「うん。だから、今晩こそ泥棒を捕まえるよ!」

「だ、だけど、犯人が次に来る家がわからないと・・・。」

「それの目星もついてるよ。」
ゴロスケはそう言うと、地面に友達の家と自分の家の地図を書き始めた。

「泥棒が入った順に見ていくと、ゴンベ、ポポッコ、ムクホーク、僕の家。ほら、円を描くような形になってるでしょ?」

「ほ、ほんとだ・・・。」
ドンペイはゴロスケの描いた図を見て驚いた。

「そして中心にあるのは崩れた遺跡。もし犯人の気が変わらないなら、次に狙われるのはたぶんジグザグマの家だ。」
ゴロスケはその位置を指差していった。

「すごいですよゴロスケさん!それで、どうするんですか?」

「とりあえず、このことはみんなに黙っていよう。もし犯人に何らかの形で耳に入ったら大変だもの。まずはジグザグマに事情を話して、夜でも家に入れてもらえるように頼んでおこう。」
ゴロスケの言うことにドンペイはうなずいた。

そしてその日の夜、ゴロスケとドンペイは、みんなが寝静まったのを見計らって家を抜け出した。
みんな準備で疲れていたのか熟睡していたので、誰も起きることなく下に下りることができた。
二人は家を抜け出して、ジグザグマの家の食料庫の前に張り込んだ。
親には内緒でジグザグマに話をしておき入れてもらったのだ。
しばらく息を潜めていると、ゴロスケの推理どおり泥棒はやってきた。

「兄ちゃん、もうやめようぜ・・・。ばれたらまずいよ・・・。」

「しょうがないだろ?このまま飢え死にしたいのかよ?」

「だけどさあ、何もこっそり持っていかなくても、家の人に分けてもらえば・・・。」

「バーカ。それじゃあ何のために黙ってここまで来たのかわかんねえじゃねえか。ほら、運ぶぞ。」

「う、うん・・・。」
どうやら犯人は二人いるようだ。
ゴロスケとドンペイは互いに目配せすると、食料庫の中へ飛び込んだ。

「見つけたぞ泥棒め!今日こそは逃がさないぞ!!」
泥棒は一瞬固まったように見えたが、すぐに我に返ると勝手口を飛び出していった。

「あ、くそお!ドンペイは家に帰ってみんなを起こしてきて!僕はあの二人を追いかける!!」

「わかりました!くれぐれも気をつけてくださいね!」
ドンペイにそう言うと、ゴロスケも二人の後を追いかけ始めた。
今回はすぐに追いかけたためか、泥棒を見失うことはなかった。
なにしろ、泥棒は木の上をジャンプしながら逃げているのだ。
これなら足跡を残さずに逃げることができる。
ゴロスケの家に来たときに足跡が残っていたのは、近くに登ったり飛び移れる距離の木がなかったためなのだ。

「待て~!!」
ゴロスケは必死で泥棒を追いかけた。
肉眼ではほとんど見えないものの、枝がこすれる音で泥棒の逃げている方向はわかった。
どうやら遺跡のほうへ向かっているようだ。
ところが、ちょっと上を見上げた瞬間に、ゴロスケは木の根元につまづいて大きく転んでしまった。
あわてて起き上がったが、犯人とはかなり距離が開いており、かろうじて枝の音が聞こえてくるほどだった。
それでも、犯人の行く場所はわかっていたので、ゴロスケはあわてずに後を追った。
そして遺跡のところまで来ると、ちょうど犯人達が話しているのが聞こえた。
ゴロスケはそ~っと犯人の近くまで近づいた。

「どうしよう・・・、みつかっちゃったじゃねえか!」

「あせるなって!追いかけてきたやつは途中でこけてた。たぶんここにいることはしらねえよ。」

「だけど、もう一人が知らせに行ったみたいだからそのうちつかまっちまうよ!」

「し~っ!!大きな声を出すな!とにかく、ほかの追っ手が来ないうちに逃げないと・・・。」
二人はまた逃走をはかろうとしたが、そうは問屋がおろさなかった。

「もう逃がさないぞ!おとなしくしろ!!」
ゴロスケは二人の前に飛び出した。

「うわあ!」

「グマゾウ!お前は下がってろ!!」
ゴロスケの目の前にいたのは、幼いマグマラシとヒノアラシ。
マグマラシはヒノアラシをかばって戦闘態勢に入っていた。
しかし、ゴロスケはこの二人をどこかで見たことがあった。

「ま、マグトにグマゾウ!?」
ゴロスケは思わず叫んだ。
二人は一瞬何のことか分からなかったが、ゴロスケを見てようやく理解した。

「ご、ゴロスケ!?どうしてここにいるんだ!?」
マグトはゴロスケに聞いた。

「ここは僕の生まれ故郷なんだ。天の川祭りがあるから帰ってきてたんだよ。ところで、二人はどうしてこんなところに?」
今度はゴロスケが二人に聞いた。

「実は・・・、オレ達探検隊になるために、遠出していろいろ経験してみようと思ったんだ。」

「遠出するって言ったら絶対フータ兄ちゃんに反対されるから・・・。それで、遠出したはいいけど帰り道が分からなくなって・・・。」
二人は話すにつれてだんだんうつむいてきた。

「おなかもすいてきたからどうしようかと思ったら、リンゴのにおいがしてきて、倉庫をのぞいたらたくさんのリンゴがあって・・・。」

「がまんできなくて食べちゃったってわけか・・・。」
ゴロスケは二人の事情を理解したようだ。

「本当はいけないと思ってたけど、空腹に勝てなくて他の家のリンゴまで盗んじゃったんだ・・・。同じ家でなんかいも盗んだら怪しまれるからさ・・・。」

「兄ちゃんにばれるのがこわくて、昨日は追いかけてきたやつまで気絶させちゃったし・・・。ほんとうにごめんなさい・・・。」
二人は心から謝った。
勝手に遠出して、人のうちの食べ物を食べてしまったことはやはり悪いと思っているのだろう。

「ほんとに二人ともやんちゃなんだから・・・。とりあえず、みんなが来るまでここで・・・。」

「お~い!!ゴロスケ~!!」
ゴロスケが二人に話していると、遠くからソウイチの声が聞こえてきた。
ドンペイがみんなを連れてきたようだ。

「ゴロスケ、泥棒は・・・。って、マグトにグマゾウ!?」

「なんで君達がここにいるの!?」
みんなびっくりだ。
ゴロスケは二人から聞いたことをみんなに話した。
それを聞いてみんなも納得したようだ。

「勝手にリンゴ盗んじゃって、本当にごめんなさい!」
二人はバーニーとフレイムに向って頭を下げた。

「しかし、悪質ないたずらじゃなくてよかったよ。今回のことは大目に見るから、次からは絶対にするんじゃないよ?」
バーニーはしっかり二人の目を見て言った。

「は~い・・・。」
二人はちょっと落ち込み気味の返事をした。

「もう気にすんなよ。とりあえず、フータには明日知らせるか。ここからいわやまかざんは結構近いみたいだし。」
いつの間に地図を取り出したのか、ソウマはそんなことをつぶやいていた。
フータという名前を聞いて、二人の顔が青ざめたのは言うまでもない。

「とりあえず、今日はうちに泊まっていくといいよ。夜も遅いしさ。」
バーニーは二人に言った。
二人はこくんとうなずき、ゴロスケのうちに泊まることになった。
こうして、事件は幕を閉じたのであった。

「だけどさあ、すげえよなゴロスケ!推理して犯人を突き止めるなんてよ!」

「ほんとほんと!まさに名探偵だよ!」
シリウスとソウヤはゴロスケをほめた。
どうやらみんな、ドンペイから話を聞いていたようだ。

「そんな・・・。たまたまだよ・・・。」
ゴロスケは赤くなって謙遜した。
犯人を突き止めたというよりも、足跡がない謎を解き明かしたというのが正解なのだが。
それでもみんなは、ゴロスケの探偵ぶりに感心していた。
バーニーはそんなゴロスケの様子をしばらく見てたが、不意にゴロスケを呼び止めた。

「ゴロスケ、父さんがどうして呼び止めたのかわかるかい?」
バーニーはゴロスケに聞いた。
その目にはどこかしら厳しさが感じられた。
ゴロスケは黙ったままだった。

「父さん達に任せておけといったのに、どうして事件に首を突っ込んだんだい?」
口調は穏やかだが、その穏やかさが逆にゴロスケには重く響いた。

「もしあれが、凶悪犯だったらどうするつもりだったんだ?自分だけで勝てる見込みでもあったのかい?」
バーニーはじっとゴロスケの目を見ていた。
犯人がグマゾウとマグトだったからよかったものの、おたずねものだったら大変なことになっていたかもしれないからだ。

「泥棒を捕まえたくなる気持ちはわかるが、ちゃんと状況を判断してから行動するんだ。取り返しのつかないことになってからじゃ遅いんだから。わかったかい?」

「はい・・・。ごめんなさい・・・。」
ゴロスケはうつむいて謝った。

「わかったんならもういいよ。探検隊なら多少無茶をする勇気だって、時には必要だからね。」
バーニーは優しく言った。

「友達のためを思って事件を解決しようと思ったんだろう?そういう優しさは、大事にしなきゃいけないよ。それに、お前の推理もなかなか見事なものだったよ。」
バーニーは笑った。
ゴロスケもそれを聞いて、ようやく笑顔になった。
二人はまたみんなに合流し、いろいろな話しをしながら家路についた。

「ドンペイ、ごめんね。関係ないのに巻き込んじゃって・・・。」
ゴロスケは小声でドンペイに謝った。

「気にしなくていいですよ。そもそも、事件にかかわるきっかけを作ったのは僕なんですから。まあ、お父さんにはちょっと怒られちゃいましたけどね。」
ドンペイは恥ずかしそうに笑った。
ドンペイもゴロスケと同じように、フレイムにしかられていたようだ。
そして家に帰ってからは、ゴロスケもドンペイもぐっすりと眠った。

翌日、祭りの始まる数時間前にフータが到着した。
あわてて飛んできたのか、髪はぼさぼさでねぐせがついていた。

「また勝手なことをして!!いったいどれだけ心配をかけたら気が済むんだ!!!」

ゴン!!

フータはグマゾウとマグトを見るなりげんこつをお見舞いした。
二人はたんこぶを押さえてうずくまった。

「ほんとうにすみません・・・。うちの弟達が皆さんにご迷惑をおかけして・・・。」
フータは二人の頭を両手でつかんで強制的に何度も頭を下げさせた。

「まあまあ。もういいじゃないか。せっかくだから、君達も祭りに参加するといいよ。」
バーニーは苦笑いしながら言った。

「そんな・・・。それはいくらなんでもあつかましいんじゃ・・・。」

「そんなことねえさ。祭りに参加する人数は多けりゃ多いほどいいからな。」
フレイムも言った。
あまり厚意に甘えるのもどうかと思ったが、みんなが強く勧めるのでしばらく残ることにした。
そして日がくれ、いよいよ天の川祭りの始まりだ。
祭りといっても、そこまで華やかなものではなく、みんなでご馳走を食べながら話をしたり、星を眺めたりするものだ。
グマゾウとマグトはすっかり村の子供達と打ち解け、そのあたりを走り回っていた。
ソウイチやソウヤもその中に加わって一緒に遊んでいる。
フータやソウマは空を眺めながら近況についていろいろな話をしていた。
しばらくそんな風に過ごしていると、急に空が澄み、天の川がとてもはっきりと見えるようになった。

「うわ~・・・。」
みんなは動きを止め、思わずその美しさに見とれていた。

「さあ。今のうちに願い事をするんだよ。」
バーニーはみんなに言った。
みんなは目を閉じ、心の中で願いを唱えた。

「(リーダーらしく、もっと強くなれますように。)」

「(いろいろな発明品で、多くの人を幸せにできますように。)」

「(父さんが無事に生きていますように。)」

「(ずっとソウイチやソウヤ達といられますように。)」

「(いつかライナに思いを伝えられますように。)」

「(いつかソウマに告白できますように。)」

「(ソウマとライナが幸せになりますように。)」

「(先輩のように強くなれますように。)」

「(もっといろんな強いやつと戦えますように。)」

「(ずっとモリゾーさんといられますように。)」

「(いつか立派な探検隊になれますように。)」

「(いつか探検隊のリーダーになれますように。)」

「(弟達が立派に育ってくれますように。)」
そして、みんなは目を開けた。

「なあソウヤ、いったいどんな願い事したんだ?」

「内緒。願い事は人に言うもんじゃないの。」
ソウイチはソウヤに願い事の内容を聞いたが、ソウヤはいっこうに教えようとしない。
ソウイチはちょっとむくれたが、すぐにほかのメンバーの願い事を聞きに行った。
シリウスもみんなに聞きまわっているが、相変わらず教えてもらえない。

「ねえお父さん、お父さんはどんな願い事をしたの?」
ゴロスケはバーニーに尋ねた。

「もちろん、ゴロスケがみんなといつまでも一緒にいられますようにってお願いしたんだ。」
バーニーは空を見ながら言った。
ゴロスケはそれを聞いて驚いた。自分も同じ願い事をしたからだ。
それをバーニーに話すと、バーニーは笑顔になった。

「まさか同じ願い事だとは思わなかったよ。さすが親子だね。」

「そうだね。アハハハ。」
ゴロスケもつられて思わず笑顔になった。
きっと、その願いがかなうと信じて、二人は星の大河を眺めた。
その大河のそばで、数個の流れ星が尾を引いて流れていった。
 

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[[アドバンズ物語第五十八話]]
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