&size(20){''ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語''}; 作者 [[火車風]] まとめページは[[こちら>ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語]] 第二話 人間からポケモンに!?探検隊アドバンズ誕生! 後編 ソウイチ達は目の前の建物を見上げていた。 ずっしりと構えられた探検隊の本拠地、プクリンのギルドである。 いよいよこれから足を踏み入れようというのだが、入り口はすでに門が降りていた。 「なあ、閉まってるけどどうやって入るんだ?」 「この上に乗って、あしがたをみてもらうんだ。実は、僕達さっきも弟子入りしようとしてここに来たんだけど、入る勇気がなくて引き返しちゃったんだ・・・」 ソウイチが聞くと、ゴロスケは恥ずかしそうに頭をかいた。 確かに、どことなく入るのには雰囲気が荘厳だ。 「でも、ソウイチ達が一緒にいてくれるから勇気が出てきたよ。まずはオイラから行くね」 何とか勇気を搾り出し鉄格子の上に乗るモリゾー。 それでも若干怖いのか、足が小刻みに震えている。 それを見てソウイチは、格子が抜け落ちたりしないのだろうかと考えた。 明らかに愚問ではあるが、少し見ただけではどうも強度に不安を覚える。 「ポケモン発見!! ポケモン発見!! だれのあしがた? だれのあしがた? あしがたはキモリ!! あしがたはキモリ!!」 「うう、ここは我慢だ・・・」 誰かが確認している間、モリゾーはしかめっ面で必死に逃げ出したくなるのをこらえていた。 傍から見ればたいしたことないようにしか見えないのだが。 「よし、OKだ。次」 子供のような声から一変し、低くしわがれた声が聞こえてきた。 今度はゴロスケが乗ることに。 モリゾーより震えの度合いは小さいものの、やはり怖がっていることは確かだった。 ソウイチ達にはどうもその様子が滑稽に思えて仕方がない。 「よし、まだそばに二人いるな。お前達も乗れ」 ゴロスケの確認が終わると、しわがれ声が言った。 どうやらソウイチとソウヤのことらしい。 「じゃあまず僕から・・・」 「ちょっと待て。いちいち一人ずつやってたらいつまでたっても終わらねえよ。同時に乗ろうぜ」 ソウイチはソウヤを引き止め、自分も一緒に鉄格子の上に乗った。 面倒くさがりなんだからとソウヤは思ったものの、口に出すと怒ることは目に見えていたので我慢することに。 ところが、いざ乗ってみたはいいものの、急に戸惑いを見せる子供声。 やはり二人同時は難しかったのだろうか。 「おい! どうした? ディグダ、応答しろ!!」 待ちかねてしわがれ声が怒鳴る。 どうやらのぞいているのはディグダらしい。 「え~と・・・、え~と・・・。たぶんヒノアラシとピカチュウ!」 「こらあ!! たぶんとは何だたぶんとは!! あしがたを鑑定してどのポケモンか見極めるのが、ディグダ! おまえの仕事だろう!」 あいまいな返事のディグダに対し、しわがれ声はとうとう怒りを爆発させた。 やはり同時には無理があったようだ。 「そんなこと言っても、分からないものは分からないよ~・・・」 ディグダは泣きそうな声で訴えた。 その声を聞いてじろりとソウイチをにらむソウヤ。どう責任を取るんだとでも言いたげな表情だ。 だが、当の本人はすっとぼけた顔をして一向に気にする様子がない。 そして、それから数分経ったが、全く門が開く気配はない。 「なんか、もめてるのかな・・・」 「えらく時間がかかってるけど・・・」 モリゾーとゴロスケは不安そうにしている。 まさか入れてもらえないのではという思いが頭をよぎったのだ。 「待たせたな・・・」 突然しわがれ声がすると、門がギギギと音を立てて開いた。 急だったので、彼らは思わず後ずさり。 「ったく・・・。時間かかりすぎなんだよな・・・」 ソウイチはぶつぶつ文句を言うと、一人でさっさと中へ入ってしまった。 ソウヤ達は門が開くのに見とれていたため、ソウイチが中に入るのに気付かなかったのだ。 ようやく気付いたころには、ソウイチははしごのようなものを下りている最中だった。 彼らは急いで中に入り、ソウイチの後に続いてはしごを降りていく。 一つ下の階に到着すると、そこには大勢のポケモンがいるではないか。 「うわあ~・・・!」 モリゾーとゴロスケは目を輝かせてそのポケモン達を見ていた。 ここにいるということは、このポケモン達も探検隊を生業としているのだろうか。 「おい、お前達!」 突然背後から声がしてみんなが振り向くと、そこに立っていたのは頭が八分音符のような形をしたとりポケモンだった。 彼の名はペラップ、ギルドの情報通だ。 軽く自己紹介すると、ペラップはソウイチ達をアンケートや勧誘の輩と勘違いしたのか、邪険に追い払おうとした。 「ち、違うよ! 僕達探検隊になりたくてここへ来たんだ」 ゴロスケは慌ててペラップを引き止める。 すると、それを聞いてペラップはかなり驚いた表情をした。 探検隊になりたくてここへ弟子入りにくるはずなのに、どうしてここまで驚く必要があるのだろう。 「珍しいな・・・。最近、修行が厳しくて夜逃げする者も多いというのに・・・」 ペラップは思わずつぶやいた。 それがみんなに聞こえているとも知らずに。 「ねえ、修行ってそんなに厳しいの?」 モリゾーはペラップに尋ねた。 「へ? そ、そんなことないよ! 修行はとってもら~くちん! いやあ、それならそうと言ってくれればいいのに。ふふふふ・・・」 ペラップはあわてて否定し、その直後にはあふれんばかりの笑顔を見せた。 どことなく違和感があるのは彼らにも分かる。 「なんか、急に雰囲気変わったな・・・」 ソウイチは小声でソウヤにささやいた。 ソウヤもうんうんとうなずく。 「さあ、こっちだよ。ついてきな」 ペラップはみんなを手招きし、はしごを降り始めた。 遅れをとってはいけないと思い、彼らもその後に続いてはしごを降りる。 「ここがギルドの地下だ」 構造からして、ここが最下層のようだ。 すると、突然モリゾーとゴロスケは窓際に駆け寄る。 ソウイチとソウヤは何か珍しいものでも見えたのかと思ったが、二人の反応は全く異なるものだった。 「うわあ、すごい! ここから外が見えるよ!」 二人はとてもはしゃいでいた。 もちろん、ソウイチとソウヤが呆れているのは言うまでもない。 窓があれば外ぐらい見える、これが二人の言い分だった。 「いちいちはしゃぐんじゃないよ! 静かにしな!」 ペラップが叱りつけると、二人はしゅんとなってすごすごと戻ってきた。 弟子入りをしようというのに、あんな身勝手な行動をとれば怒られるのは当たり前。 そしてペラップは、奥のほうにある大きな扉の前に四人を連れてきた。 「これからお前たちを親方様に紹介する。くれぐれも、くれぐれも粗相のないようにな」 ペラップは念を押すと、一足先に部屋の中へ入っていった。 ソウイチ達も後から続く。 「親方様、新しい弟子を連れてきました」 ペラップは奥のほうにいる、ピンク色のポケモンに話しかける。 モリゾー達もそのポケモンを見たが、イメージしていたものとは大分かけ離れていた。 親方というからには、もう少しいかつい感じの人物を想像していたのだが、このポケモンはどこからどう見てもそうは見えない。 本当にここで一番上の立場なのか? そう思わずにはいられないほどだ。 「・・・? 親方様? 親方様・・・?」 ペラップが話しかけても、その人物は一向に返事をしない。 話が聞こえないはずもなく、ソウイチたが思案に暮れていると・・・。 「やあ! ボクはプクリン。ここのギルドの親方だよ? 君たち探検隊になりたいんだって?」 唐突に話しかけてきたので、四人は面食らって言葉が出てこなかった。 「あ・・・。は、はい! オイラ達探検隊になりたいんです!」 ようやく言葉を出すことができたモリゾー。 どうもいきなりというのは反応しがたい。 「じゃあ、探検隊として登録するから、チーム名を教えてくれない?」 プクリンは戸棚から、なにやら名簿のようなものを取り出す。 これに書き込んで初めて登録完了となるようだ。 しかしチーム名と言われて、モリゾーとゴロスケははっとなった。 そう、どんなものにするか全く考えてなかったのだ。 早速二人はソウイチに救いを求める。 「どうするって急に言われてもなあ・・・。ちょっと待て、今考えるから・・・」 ソウイチは戸惑いの表情を浮かべたが、その場に座り込んで名前を考え始めた。 ポケダンズ、Tフォース、アルタリア、適当に思い浮かべてみるものの、しっくりとくるものが全くない。 (くそお・・・。全然思いつかねえ・・・。名前の頭文字もダメ、タイプ関係もダメ・・・。もっといいのはないのか・・・、なにかいいものは・・・。ん・・・?) 突然ソウイチは、ある単語が思い浮かんだ。 その単語は、いかにもチーム名にふさわしいものになる、そう思った。 「ひらめいた!!!」 「ど、どうしたのソウイチ?」 突然大声を出したのでみんなびっくり。 何事かと思って様子をうかがう。 「いい名前を思いついたんだ! アドバンズってのはどうだ?」 ソウイチは三人に提案した。 思いついた理由は、自分が持っていたゲーム機の名前が思い浮かんだからだ。 「アドバンズか・・・。うん! いい名前! それにしようよ!」 モリゾーとゴロスケは嬉しそうだ。 どうやらすっかり気に入った様子。 「アドバンズ・・・。英語では確か、前進って意味があったよね」 「そうそう! 常に上を目指して前に進み続ける! 途中で絶対あきらめたりしねえって意味が込められてんのさ!」 自信満々にうなずくソウイチだが、込められた意味は、明らかにソウヤの説明を聞いてから思いついたものだ。 しかし、今大事なのはチーム名としてふさわしいかどうか。 ソウイチの言葉を聞いてソウヤも納得し、全員一致でアドバンズにすることにした。 「じゃあ、アドバンズで登録するね。登録、登録、みんな登録・・・」 プクリンはぶつぶつと何かをつぶやいている。 その言葉が聞こえ始めたとたん、ペラップは自分の両耳をふさぎ始めた。 何が始まるのかと思ったその瞬間・・・。 「たあああああああああああああ!!」 突然大音響が響き渡り、彼らは卒倒しそうになった。 まるで大爆発でも起こったような音量だ。 「おめでとう! これで君達も探検隊の仲間入りだよ」 「ほ、ほんと!? やった~!!」 モリゾーとゴロスケはとても喜んだ。 さっきの大声で若干足元がふらついてはいるが。 「記念に探検隊キットをあげるよ」 プクリンは、さっきとは別の棚から箱を取り出しゴロスケ達の前に差し出した。 彼らは差し出された箱をしげしげと眺める。 「探検隊に必要な物がいろいろ入ってるんだ。例えば・・・」 プクリンは一つ一つ道具の使い方を丁寧に解説した。 おかげで使い方を間違えなくてすみそうだ。 「そしてこれは、僕から君達へのお祝い」 そう言って差し出したのは、青バンダナ、黄色と緑のハチマキ、モモンスカーフ。 特別変わったものではないが、四人の目にはとてもかっこいいものとして映っていた。 「うはあ! すっげえ! オレは青いの!」 ソウイチは迷わず青バンダナを選択。 ソウヤは緑、モリゾーは黄色のハチマキを取り、ゴロスケはモモンスカーフを取った。 好みがかぶらなかったのはかなりの偶然といえよう。 するとソウヤは、ソウイチがバンダナを首ではなく、頭に巻いていることに気付いた。 「ソウイチ、バンダナって首に巻くんじゃない? 何で頭に巻いてるの?」 「なんか海賊でこういうスタイルがあったんだ。それが気に入っててさ」 ソウイチの説明でソウヤは納得したようだが、やはりスカーフやバンダナは首に巻くものだと思っていた。 物の価値観は人それぞれなのだが。 「いよいよ明日からは修行だね。がんばって! 僕も応援してるよ」 「は、はい! 一生懸命がんばります!!」 プクリンは彼らを励まし、モリゾーとゴロスケは姿勢を正してはっきりと答えた。 「ソウイチ、ソウヤ! 一緒にがんばろうね!」 モリゾーとゴロスケは再び手を差し出してきた。 「ああ、がんばろうぜ!」 「こちらこそよろしく!」 こうして四人は、またお互いに固い握手を交わした。 探検隊アドバンズ、今ここに生誕。 晩御飯がすむと、ペラップはソウイチ達を奥のほうの部屋へ案内した。 そこには、わらを敷いたものが四つほど並んでいる。 「ここがお前達の部屋だ」 ペラップはそう言うが、部屋という割にはわらと窓以外何もない。 長い間いるような場所ではなさそうだ。 「わ~い! ベッドだ~!」 無邪気にわらの上へ寝転がるもりぞーとゴロスケ。 だが、布団の上で寝慣れているソウイチとソウヤにとっては、この上で寝るのは信じがたかった。 できれば寝たくないところだが、他に選択肢はない。 「明日から仕事だから、今日は早く寝るんだよ?」 「は~い」 彼らはペラップに快く返事をし、ペラップは満足げにうなずくと部屋を出て行った。 「二人ともどうしたの? 結構気持ちいいよ」 ゴロスケは突っ立っている二人を怪訝な面持ちで見つめた。 それでもやはり、横になることに抵抗を覚えるソウイチとソウヤだったが、しぶしぶとわらの上に寝そべってみる。 すると、想像していたちくちくとした感じもなく、かなり寝心地は良さそうだ。 布団よりは劣るが、全然眠れないということもなさそうである。 それから四人はお休みの挨拶を交わし、横になって眠った。 「ソウイチ、まだ起きてる?」 「ああ、まだ寝ちゃいねえよ」 数十分経ったが、ソウイチとモリゾーはまだ寝付けないようだ。 「僕もまだ起きてるよ」 「なんだか興奮しちゃって・・・」 お休みの挨拶をしたはいいものの、どうやら全員寝ていなかったらしい。 「ソウイチ、今日はオイラに付き合ってくれてありがとう。プクリンってもう少し怖いのかと思ってたけど、案外優しそうだったね」 「確かにな。オレも、もう少しひげはやしたじいさんみたいな人を想像してたからな」 どうにも固定観念というのは恐ろしいものだ。 「それって大工さんの親方じゃないの?」 ソウイチのイメージにソウヤが水を差す。 イメージにまじめな突っ込みをされて、ソウイチはため息をついた。 「でも、ソウヤ達がいたからこそ入門できたんだ。本当にありがとう」 ゴロスケは心から感謝していた。 ようやく、夢の実現に向けて踏み出せたのだから。 「ふぁぁぁぁ・・・。なんだか眠くなってきちゃった・・・。ソウイチ、また明日がんばろうね。お休み・・・」 モリゾーはあくびをすると、すやすやと寝息を立て始めた。 ゴロスケもいつの間にか寝ていたみたいだ。 「なんか、あっという間に入門しちまったよな・・・」 「そうだね。今日はびっくりすることばかりだったよ。これからどうなるのかな、僕達・・・」 二人は自分の手足をもう一度見つめた。 大分冷静に考えられるようになってきたが、ポケモンになったことは今でもまだ信じられない。 「まあ、なるようになるんじゃねえか? 今はぐだぐだ考えてもしかたねえよ・・・。ふぁぁぁぁ・・・、もう寝ようぜ・・・」 「そうだね・・・。きっと大丈夫だよね・・・。お休み、ソウイチ」 一足先にソウヤは眠りにつく。 それでも、ソウイチはまだ意識があった。 (本当に、これからどうなるんだろうな・・・) 考え込んでいるうちに、ソウイチの意識ももうろうとなり、いつの間にかいびきをかいている。 こうして、ソウイチ達がポケモンになってからの一日は終わりを告げた。 明日からは、探検隊アドバンズとしての、新しい一日が始まる。 ---- [[アドバンズ物語第三話」]] [[アドバンズ物語第三話]] ---- ここまで読んでくださってありがとうございました。 誤字脱字の報告、感想、アドバイスなどもお待ちしてます。 #pcomment(above)