ポケモン小説wiki
まよいのどうくつ の変更点


#include(第十回帰ってきた変態選手権情報窓,notitle)
#br
&color(red){&size(30){Warning!! がっつりR18Gです!!};};
----
&size(30){まよいのどうくつ};

#contents

* 1 [#GsPj1Nv]

 こっそりこの洞窟に遊びに来るニンゲンの事を、俺はいつだって待ち侘びていた。
 生まれて大して時間の経っていなかった俺が出来る事と言えば、父母であろうと何かに噛み付く位しかなくて、けれど俺の有り余る元気を俺の父母も持て余していたんだろうな、と今となって振り返れば良く分かる。
 時々俺のところに遊びに来るそのニンゲンは、この洞窟に住むポケモンとは全く違うポケモンを何匹か連れてきていたりして、親代わりでもありそうなそのポケモン達は、俺の父母よりも強そうだったし、事実そうだった。それに何より、子供やそのポケモン達と遊ぶ時間は何よりも楽しかった。
 特に、子供の連れていたポケモンにはどれだけ噛み付いても傷の一つも付かなかったし。
 だから、俺がこの子供に付いていくと決めるのはそう時間の要する事ではなかった。
 父母もその子供と生き物達の事を見て、許してくれた。まあ……子供の親代わりの生き物の方が父母より強かったし、俺を奪おうとすれば奪う事も出来たのだろうが、それをしなかった時点で子供は信頼されていたのだろう。
 初めて外に出て、思わず目を閉じてしまう程の明るさ。
「じゃあ、えーっと、お借りしていきます」
 そう言って、子供はポケモン達と共に、父母にぺこりと頭を下げていた。
 そんな俺の父母は、俺が見えなくなるまでずっと俺の事を見ていた。



 暗闇の中、足音が聞こえている。
 足元も何も見えない程の真っ暗な中、しかし迷う事も躓く事もないその冷静な足音に比べれば、息遣いはどうしてかとても荒い。
 それは複数の人間のものだった。
 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
 はぁっ、はぁっ、ふぅっ、はぁっ。
 なるほど、人間ならば、暗闇の中でも見通せるような何かを持っていても怪しくない。
 どっ、どっ、どっ、どっ!!
 その人間達を追いかける、地響きすら感じさせる激しい足音がした。
 それだけでも、その音の主は激しい怒りを抱いている事を感じさせる。どうやら、人間達はそれから逃げているようだった。
 しかし、追いかけている主はすぐにでも追いつきそうな勢いを見せている。人間達は焦りからか呼吸を乱し始める。
 とうとう後少しで追い付きそうだと言う時、一人の人間がボールを取り出し、振り向き様に叫んだ。
「グレイシアッ、前に向かって吹雪だッ!」
 ビュオオオオオッ!!
 飛び出したグレイシアは、命令の通りに強烈な冷気を洞窟内に充満させる。
「や、やったか?」
 タイミングは完璧で、その足音の主に直撃すればただでは済まなかっただろう。
 だが、吹雪が過ぎ去った後に明瞭になったその視界には、何も居なかった。
 ずず、ずずずずっ!
「しっ、下だっ、グ、グレぃ」
 地中に潜って吹雪から逃れたその主。それは人間の真下から顔を出してその足に噛み付いた。
 そしてそのまま、ずりゅっと地中へ連れ去られる。
「いぎゃああああああああ」
 他の人間達は助ける事もきっぱり諦め、また逃げ始めた。
 取り残されたグレイシアは、暗闇の中で何も出来ないままに、続いて地中から響いてきたそれに耳を傾けてしまう。
 ぐちゅっ、どちゅっ、べぎぃっ。
 骨が砕かれる、爪を突き立てられる、穿り返される。
「あ゛がぁっ!! ぎっ、い゛あ゛っ?!」
 べちゅぅ、べりっ、ぐちゅ、くちゅ……。
 砕けた骨と肉を更に引き裂かれる。肉を食い千切られ、それを食む湿り気のある音。
 それらが続くに連れて、とうとう悲鳴は消えていった。
 ボールに戻る事も出来ず、主人を助ける事も能わず。
 グレイシアが出来る事は、ただ暗闇の中で耳を塞いで現実逃避をするしかなかった。
 そして濃厚な血の臭いを漂わせて地中からゆっくりと這い出してきたその主の正体は、ガブリアス。この暗闇の中でも、はっきりと地形が分かっているようで、グレイシアを見止めた。
 それに対し、グレイシアは真っ暗闇の中でただ体を丸め、震えながら耳を塞ぐだけ。
 ガブリアスはグレイシアの前まで行くと足を持ち上げ、その後ろ足を容赦なく踏み砕いた。
 ぱきっ。
「ブッ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
 のたうち回るグレイシアの腹を踏みつければ、ぽたり、ぽたりとそのガブリアスの口からグレイシアにまで、主人だったものの生暖かい血が垂れてくる。
「フーッ、フーッ……」
 また、そのガブリアスの足は漏らし始めたグレイシアの尿によってじっとりと濡れ始めていた。
 ガブリアスは、そんなグレイシアを壁へと押し付けた。
「グルルル……」
 濃い、雌の臭いがする。
「ア、ア……」
 暗闇の中。グレイシアは、小便を漏らし続けている。それは砕け、だらりとしたままの後ろ足を伝って地面へぴちゃぴちゃと音を立てていた。
 その音が収まれば、ガブリアスはグレイシアを抱き抱えて、既にそそり勃っていた自らの雄へと差し込んだ。
 ガブリアスとは体格差も体重差も倍以上。
 一気に子宮まで到達した雄は、しかしそれすらも貫こうとぎゅう、ぎゅうとその膂力で更に押し込まれる。
「ガァ……!! ……!!」
 ぐりゅ、めりゅぅ。ぐりゅ、ごりゅ。
 砕けた後ろ足は、どれだけの痛みを与えられようとも、もうぶらりと垂れ下がるだけ。ガブリアスの攻めは、自らの快楽の為ですらなく、ただただその肉体を虐め抜くだけの行為だった。
 再び壁に押し付けられれば、更に強く、その全身が軋む程に攻め立てていく。
「アッ、ガッ……ギィッ……ヒュゥッ!?」
 首を締めてはいるが、僅かに呼吸は許されている。だが、悲鳴すら自由に上げられない。
 暗闇の中、きっとその顔は今まで生きてきた中で最も苦痛に満ちた顔をしているだろう。
「ッ…………!!」
 ぽと、ぽと……。
 先程よりも粘性の高い液体が細切れに落ちる音がし始めた頃、グレイシアは唐突に解放された。
 どさりと、その折れた後ろ足から落とされて、開いた口からは絶叫。
「ギィアアアアアッッッ??!!」
 そしてそれを放置したまま、ガブリアスは再び人間達を追いかけて行った。
「アッ、ギィッ……グッ、ガッ……」
 その後、私はのたうち回り続けるグレイシアの元へと歩いていく。
「ヒュウ……キュゥ……」
 暗闇の中でも、誰かが居るのに気付いたのだろう。助けを求めているようだった。
 だが、残念ながら私も興奮しているのである。
 ガブリアス程立派なものではないが、私の棘の生えた雄はきっと、グレイシアにとって新鮮な悲鳴をまだまだ上げさせるものだろう。
 他の皆が集まって来る前に、私は薄らと雷を帯びた牙でその首筋に噛み付いた。
「カ……」
 絶望に染まったグレイシアの顔は、酷く私を唆らさせ、もう我慢出来そうになかった。

* 2 [#fMq9Jjb]

 子供と、その付き添いの強いポケモンと、外の広い世界を見て回った。バッジ集めだとかは程々にしながら、海を渡って、カントー、ジョウト、ホウエン、ナナシマまでの寒い所から暑い所まで、色んな所を見て回った。
 山を登ったし、そこから川を海まで下った事もあった。辛いもの、甘いもの、渋いもの、酸っぱいもの、苦いもの、色んなものを食べた。
 その道中に、様々な、とても様々なポケモンに会った。
 襲われたり、返り討ちにしたり、食べたり。時に気紛れに助けたり、認めあって仲良くなって。
 そうして仲間が増える事もあれば、逆にその仲間が番を見つけて、別の場所に残る事を決めたり。
 色々な、とても色々な出来事があった。毎日が楽しかった。
 朝起きれば今日はどんな事が起きるのだろうとワクワクしていたし、実際新しい経験は毎日のように訪れていた。夜になれば、野外でテントを張って寝る事もあれば、ボロい民宿になんか泊まる事もあったり、時にちょっと洒落たコテージでいい景色を眺めながら優雅に夜の一時を過ごす事もあった。
 一日一日はとても濃厚で、そんな旅をしている内に俺もフカマルからガバイドになり、子供の身長と同じくらいになったと思えば、その子供もぐんぐんと背が伸びてどんどん大人らしくなっていった。
 俺の実力もめきめきと伸びていった。
 俺がガブリアスになったのはフカマルからガバイドに進化するまでに比べれば二、三倍くらいの時間が必要だったが、そうなった頃には、保護者として付き添っていたそのサーナイトとボスゴドラの実力をも抜き去っていた。
 ただ……野生ポケモンとの戦いは得意でも、同じ人間と連れ添っているポケモンとのバトルは得意にはなれなかった。
 相手がどれだけ強かろうが、ジムリーダー戦であろうが、俺はそういうバトルには途中から参加しなくなった。
 子供も、サーナイトやボスゴドラから、他のポケモンもそれには納得していた。
 俺は、野生のポケモンと戦うのと、人とのポケモンバトルに区別を付けられなかった。
 命のやりとりと、戦った後に健闘を称え合うような戦いを分別出来なかった。
 どこからどこまでも整えられた舞台で、魅せるように戦い、敵意も殺意も抱かず、健全な勝利を望む戦いなど俺には出来なかった。
 俺に出来たのは、反撃も許さず、的確に相手の命を奪う事。ただそれだけだった。



 残り三人となった人間達が逃げながら何やら話している。追ってくるガブリアスをどうするべきか。
 有利相性であるはずのグレイシアの使い手も、決して弱くはなかったはずだ。だが、正に寸分違わないタイミングで放たれた渾身の吹雪はあっさり躱され、使い手は地面に引きずり込まれてしまった。グレイシアももう無事ではないだろう。
 それぞれがリュックに背負っているのはそのガブリアスのタマゴ。強い個体のそれは高く売れるのだ。
 そんなものに手を出す時点でポケモントレーナーとしては終わっているようなものだが、それでも強い個体を求めて大金を積む人間は後を絶たない。
 手に入れてしまえばテレポートで逃げるつもりが、待ち構えていたかのような最悪のタイミングで戻ってきたガブリアスは、その使い手のフーディンの首を刎ね飛ばした。
 フラッシュとハイパーボイスでガブリアスの感覚を狂わせ、時間を稼いだのもほんの僅かな時間でしかない。
 また追いつかれてしまうのは、分かりきった事だった。
 しかし、議論は全く建設的に進まなかった。何故テレポート持ちを二体以上持ってこなかったのか? ここまで危険なら付き合わなかったなどと、罵倒の言葉がリーダーにけしかけられる。
 そんな中、リーダーがボールを取り出した。出てきたのはゲンガー。そしてリーダーは冷たく言った。
「そこらの岩と、アキヤマのタマゴをトリック」
 リーダーの手にタマゴが、アキヤマと呼ばれた人間のリュックに岩が詰め込まれる。
 その重量に思わず尻餅を着いた。
「え、何を」
「タチバナは身を賭して時間を稼いでくれた。ノモトはフラッシュでガブリアスから逃げる時間を稼いでくれた。
 だがアキヤマ。お前は何だ? ただ着いてきただけじゃねえか。少しは役に立ってみせろ」
「ご、ごめんごめん! 謝るからっ」
「ノモト、行くぞ」
「あ、ああ……」
「やだっ、置いていかないで、やだっ、謝るからっ! なんでもするからっ!!」
 それに二人が答える事は無かった。
「やだっ、やだっ、しにたくないっ」
 パニックになる余りアキヤマはリュックを捨てる事すら能わず、そうしている内に後ろからガブリアスの駆ける音が聞こえてくる。
 やっとの事でリュックを捨て、そしてボールを投げる。
「ミ、ミミちゃんっ、助けてっ」
 ただ、出てきたミミロップは暗闇の中では、ただ狼狽えるだけだった。
 そして背後で。
 ずんっ!
 とガブリアスが足を止めた。
「ミミちゃんっ、何してるのっ、早く私を助けるのお゛っ!!」
 かぷっ。
 ガブリアスがそんな泣き叫ぶばかりのアキヤマの背後から噛み付いた。ただ、殺す程ではない。
「ひっ、いやっ、やだっ」
 つ、つーと生暖かい血が流れていく。それを確認して口を離すと、暗闇の中、何も出来ないミミロップにも同じように少しばかりの血を流させた。
 そして、後を追う為に去っていった。
「……キュ?」
「……え、私達、助かった……の?」
 そう呟いた時。数多の羽音が聞こえてきていた。
「あ……」
 それが血の臭いに釣られてやって来たズバット達だと分かった時、ガブリアスの意図を理解した。
「ミ、ミィ」
 腰が抜けていた。
「やだ、やだ……」
 這ってでも逃げようとした。けれど、それは余りにも遅すぎた。
 ばささっ、ばさばさっ!!
 かぷ。かぷ。かぷ。ぷちゅ。かぷ。がぁぷ。ぶつ。ぷちゅっ。
 首を、腕を、頬を、脇腹を、太腿を、ふくらはぎに小さくとも鋭い牙を突き立てられる。
「ミ゛ィイイイイイ」
 かぷ、かぷ。ちゅぅう、ぢゅう。こきゅ、こきゅ。
「い゛だイ゛っ、お゛があ゛ざん゛っ、お゛どう゛さん゛っ゛、い゛い゛ごに゛ずる゛がら゛っ、だがら゛ぁ゛っ゛」
 振り回した腕の裏側に噛みつかれる。指の一本一本にまで、長く伸びる耳の根本から先端までにぷつ、ぷつと。
「ミ゛ィヤアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
 ばさばさっ。
 一際大きい羽音、ゴルバットとクロバットが遅れてやってくる。
 それぞれはズバット達を払って、美味しい部分に太く長い牙を突き立てる。
 ゴルバットはアキヤマの肉肉しい太腿にがぶりと。
 クロバットはミミロップの首筋にぶづ、と。
 ごきゅ、ごきゅ。
 流れ出るその血は少しくどい味をしていた。ただ、それはいつもの事でもあった。
「あ、やめ、は、ひ、ひゃぁ、あぁ……」
 ちゅぅぅぅ。
「ミ゛、ミ゛ィ……」
 こきゅ、こきゅ……こきゅ……。
 ちゅぅぅぅ……。ごきゅ。
 ぢゅ、ぢゅぅぅ……。ずずっ……ずぅ………………。
 ばささっ。ばさばさっ。

* 3 [#l0JbOzn]

 負けた後も健闘を称え合うような平和なバトルに、俺は絶望的に向いていない。
 だからと言って、俺は別にそう悲観してはいなかった。
 俺にはそういう事が向いていないだけだったし、そういうバトルに参加したいとも余り思わなかった。
 それに、そういう事を抜きにしても子供との旅は楽しかったから。
 それでも俺とバトルをしたいとせがんでくる人間達も居たりするのを、バトルは苦手なんだとか時に嘘を吐きながら、その夜に感じた殺気に応えて、返り討ちにする。
 首筋に噛み付いた時の、口の中に溢れる血の味は正しく勝利の味だった。ヒレを叩きつけて骨を砕き、内臓を破裂させた時の感触は、全身を強く回転させて叩きつけた尾に血肉がこびりつくその生暖かさは、そんなバトルでは得られないものだろう。
 俺が殺気を返しただけで尻尾を巻いて逃げていくポケモン達を見届けるのは、生温いバトルばかりしていては出来ない芸当だろう。
 俺は子供が仲間にしたポケモン達の誰よりも強かったし、それは仲間達からも認められていた。
 それで十分だった。

 各地でバッジを集めたり、時折コンテストやらに出たり。はたまたバトルとは全く関係ない、俺でも楽しめるような遊びに熱中したり。
 春のゆったりとした暖かさに昼寝を満喫して、夏の辟易とした暑さの中、海でサメハダーの群れを一網打尽にし、涼しくなった秋の実りに腹を膨らませ、苦手な冬に子供からマフラーと帽子を貰ったり。
 そうして子供も背が伸びただけではなく、様々な経験を通して、子供と呼ぶには相応しくない程にたくましくなった。
 その頃には俺もその青年も実家が恋しいと思うようになり始めていて、一度帰る事を決めたのだった。



「あいつ、時間稼ぎにもならなかったか」
「ど、どうするんです? ササジマさん」
 ノモトは怯えた声で、ササジマと呼ばれた纏め役らしき男に聞いた。
「これだけ強いガブリアスのタマゴだ。一つで五十万は下らねえだろうな」
「……」
「俺とノモトで、二つずつ。二百万。一回だと破格の稼ぎだ」
「……」
「だがな、命には替えられねえ」
 そう言った瞬間にノモト飛び退き、ボールを投げた。
「デンリュウッ、守るッ!」
 それを見てから、ササジマはボールをゆっくりと取り出した。
「あんた、本当に受けばっかだな。ドサイドン、地震」
 出されたドサイドンは、忠実に地震を起こした。
「こ、こんな場所で自殺行為だっ!」
 必死に堪えるデンリュウと、それにしがみつくノモト。
「いーや、そうじゃないんだなこれが。
 ドサイドン、岩石砲。狙いは、分かるな?」
 無言のまま、ドサイドンはズドン! と手の内から岩石を撃ち出した。それは未だに守りを固めているデンリュウ、ではなく洞窟の天井へと飛んでいく。
 そして、ササジマとノモトの間の岩盤は瞬く間に崩落した。
「あっ、あっ、ああっ?!」
 そんな絶望的な叫び声も、もう聞こえない。
「じゃあ、行くとするか。外は近い。開けた場所であれば、俺達は負けるはずもない。弔い合戦と行こうじゃないか」
 ドサイドンは小さく頷き、そしてボールへと戻った。

「デ、デンリュウ、フラッシュ」
 震えの収まらない声で、ノモトはそれでも命令を下した。
 デンリュウは額から眩い光を生み出し、そして明るくなった目の前には、追いついたガブリアスが立っていた。
 目を閉じているが、しっかりと自分達がここに居る事を分かっている。その側頭部の器官は振動を感知出来る、だから暗闇の中でも不自由なく動ける、そう聞いた事があった。
 ……じゃあ、何で最初にフラッシュが効いたんだ?
 そんな事を考える暇もなく、ガブリアスは歩いてくる。迷いなく、殺意を向けて。
「や、やるしかない」
 ノモトがもう二つのボールを取り出した時、ガブリアスは弾かれるように地面を蹴った。
 その間合いは10メートル以上はあっただろう。だがその距離はもう、ガブリアスにとってノモトが何をするよりも先に、攻撃を仕掛けられる距離だった。
 ぱきゃっ。
 投げたボールが目の前で、両方の爪で串刺しにされていた。
「……え」
 そして壊れたボールから出てきたポケモン達は腹に、首に深い穴を開けて倒れ伏した。
 戦い慣れている。それも……人間を屠る術までをも身に着けている。
「デンリュ、ウ……」
 咄嗟に指示を出そうとした時、デンリュウも既にガブリアスの尾に叩きつけられて戦闘不能となっていた。
 額の光が失せていく。暗闇へと戻っていく。
「あ、あ……」
 目を開けたガブリアス。冷たい、ただただ殺意だけに満たされた目。
 そこに、背負っているタマゴへの懸念などは微塵もなかった。
 ……ノモトは理解した。
 最初から最後まで、罠だったのだ。背負っているタマゴも、きっとこれはガブリアスのものではない。
 尻もちをついた。股間が湿っていく。
 完全な暗闇になる前に、ガブリアスの口が首へと近付いて行くのが見えた。
 がぁぶ。
「あ、は……」
 ぶち、ぶちぶちぃっ! くちゅ、くちゅ……ぺっ。

 目が覚めたデンリュウは、周りが血の臭いで満たされているのに気付いた。
「ぱ、ぱる……? ぱるるっ……?」
 声を掛けても誰も反応しない。明かりをつけたくなかった。
 痛む腹を抑えて立ち上がろうとすると、何かにぶつかった。
「ぎゅっ……」
 尻もちをついた瞬間、額から光が一瞬弾けた。その瞬間に見えた光景にはイワーク、ハガネールが自分を見ているのが見えた。
 ぎゅるぎゅるっ!
「っ〜〜〜〜!!」
 その岩と鋼の体がデンリュウを締め上げる。ざらざらとした、熱いものが口と尻に押し当てられる。
 脈打つそれは、明かりをつけなくても分かる。しかし、何メートルもある巨体のそれは、一体どれだけの太さを誇るのか?
 想像してしまって、何故自分だけ生かされたのか、ただそれだけで深い絶望に落とし込まれる。
 つるるっ、つるっ。
 尻を生暖かい金属が撫でている。絶妙に気持ち悪い感覚で、それだけで吐き気が催された。
 じゃり、じゃり。じゃりり……。
 せめてもの抵抗に口を必死に閉じていれば、口の周りをその巨大な雄がまさぐっているのが分かる。
 全く湿り気などない。無機質な、けれど濃厚な臭いが鼻を貫いてくる。
 ぎゅぅう……。
「ぱっ、ひゅぅっ!」
 そんな口を閉じたままのデンリュウに苛立ったのか、締付けが強くなる。そして思わず開いた口、悲鳴の上がったその声を聞いて、好機とぶっといそれが押し入ってきた。
 そして同時に、尻にも入ってくる。
 肉を、骨をも押し分けていくような強引さに、デンリュウは痛みで気を失い、痛みで覚醒する。
 じゃり、じゃり。じゃりりっ、べぎっ、じゃりっ!
 口の中が砂利によって切れていく。歯をも削られ、折られ、けれどそんな事をイワークは微塵も意に介さない。
 細い喉にその陰茎の形がくっきりと象られている。
 ぎゅっ、ぎゅっ、べきっ、ばきっ。
 尻の、奥へ、奥へと、力づくで入れられていく。イワークと違って滑らかな陰茎は摩擦で力が損なわれる事なく、その圧倒的体躯からひたすらに捻じ込まれていく。どこかの骨が折れようとも、肉が潰れようとも。
 更に、勢いはダメ押しにと加速していく。その二匹の岩蛇の全身にも思わず力が入り、デンリュウの全身は派手に音を立てながら捻れて砕けた。
「グオオオオッ!!」
「キアアアアッ!!」
 びゅっ、どぴゅぅっ!
 そしてほんの僅かな、何よりも濃厚な子種がそれぞれからデンリュウの中へと流された時、もうデンリュウは事切れて久しかった。
 見るも無惨なその肉体は誰の目にも見られる事なく、イワークとハガネールはそれに向かって口を開けた。
 ばきばきっ、べきゃっ、ぶぢぃ。ぐちゅっ、べきゅっ、ぼぎぇっ。ごりゅっ、じゃりりっ、ごくっ、ごくっ。

* 4 [#poRTYcW]

 青年の家に帰って来るのも久々で、俺も親の顔を見たくて堪らなかった。
 そんな様子に気付いたのか、青年は行っておいでと俺を自由にしてくれた。
 逸る気持ちを抑える事もなく、俺は走って、飛んだ。伝えたい事があっただとか、また一緒に過ごしたいだとか、立派に成長した俺を見て欲しいだとか、そんな明確なものはなかった。けれどそれでも、とにかくひたすらに会いたかった。
 サイクリングロードと呼ばれる道の高架下。そこにある岩山の洞穴。
 そこに入れば、一気に暗闇になる。懐かしい臭い。俺はここで生まれ育ったのだという実感。
 けれど。
「グルルルッ……?」
 父母の、ガブリアスという種族の臭いが全くしなかった。縄張りを示す痕跡も見当たらない。あっても、それはとても古いもの。
 どうして? 何かあったのか?
 不安が募る。何度も吼えた。でも、父母がやってくる事はなかった。どこかに去ってしまったんだろうか? それとも、いや、いや。
 何の痕跡も見つけられないままに、すぐに最奥まで来てしまった。俺と父母の寝床がある場所。最奥でありながら、薄らと外からの光も漏れ出してきている、俺が生まれ育った場所。
 そこにも父母は居らず、その代わりに。
 ……激しい戦闘の痕跡が今も残されていた。
 ガブリアスの骨が一部残っていた。
「ア、ア……? アア……?」
 分からない。分からない。何があったんだ? 一体何が。

 三日後、一向に戻ってこない俺を気にしてか青年がやって来た。
 とにかく痕跡を探していた俺を見て、すぐに何かを察したようだった。
 洞窟の隅々まで巡ろうとも外の草木を幾ら掻き分けようとも全く手掛かりを見つからず、絶望していた俺に青年は言った。
「サーナイト、……協力してくれる?」
 そう言えば、サーナイトは心を読み取る力を持っていた。何故忘れていたのだろう。
 サーナイトは頷いて、洞窟の中に入っていった。
 この近辺で気ままに過ごしているレントラー。数多のズバット達を従えるクロバット。この岩山を今も掘り続けているイワーク達とハガネール。
 それらを掴まえて分かったのは、一、二年前からポケモンハンターがこの場所に時折やってきていた事だった。
 そしてそれが過ぎ去った後、俺の新しく出来ていた弟、妹達は連れ去られ、俺の父母は死んでいた。
「……」
 こんなにも殺意を抱いたのは初めてだった。
 口から血が出る程に牙を噛み締めていた。行き場のない腕と尾は、いつの間にかそこらの岩を粉々にしていた。
 そんな俺に、青年は言った。
「手伝うよ」



「あー、クソ。やっとだよ畜生」
 とうとう外の景色が見えてきたところで、ササジマは悪態を吐いた。
「……絶対に殺してやる。いや、捕らえて、徹底的に調教して、売りさばいてやる」
 そう言った時、抱えていたタマゴがびくびくと動き始めた。
「こんな場所で孵化かよ。面倒くせえな」
 だが、そのタマゴは殻がいつまで経っても割れる事はなく、その代わりに何故か紫色に変色し始めた。
「……っ!?」
 ササジマがそれを手放す前に、その紫色の物体……メタモンは顔に張り付いた。
 それでもボールを取り出そうとした時、背中のリュックのタマゴも動き始め、それはササジマの両腕を縛った。
「ん、んん〜〜〜〜!!??」
 そうしてササジマは呆気なく意識を失った。

 ……。
 …………ばちゅ……ばぢゅぅ。
「ギィッ、ギィッ!!」
 ぱぁんっ! ばぢぃっ!
「ギャッ?! ギャァ!!」
 ばぢぃっ、ばぢゅっ。ばぢゅぅ、べぢっ!
「アガァッ、イギッ、ギャアッ、ヒィッ」
 ……起きなければ。相棒が、苦しんでいる。
「ムグッ!?」
 ササジマの意識が覚醒した。けれどどうしてだろう、全身が全く動かなかった。
 金縛りに遭っているのかと思ったが、そうではなかった。顔を持ち上げれば、目の前ではガブリアスが自らに背を向けて、強く腰を振っていた。
 ササジマにとって一番の、最も古くからの相棒であるドグロッグを犯していた。
「ムグゥ?!?!」
 猿轡を噛まされている事に気付いた。更に手足も背後できつく縛られている。
 ガブリアスはもう何度も精を出したのだろう。そのガブリアスとドグロッグの足元は白く染め上げられている程だった。そしてそのドグロッグの足は、曲がってはいけない方向に曲がっていた。何人もの命を奪い去ってきたその毒指も千切られていた。
「ムググッ、ンンンン、ムガッ!!」
 誰か居ないのか? 誰か!
 そう辺りを見回せば。
 左を向けば二番目に古い相棒であるゴウカザルはレントラーに喉笛を噛まれ、そこから激しい電流を流されながら尻を犯されていた。
 ……口から舌をだらりと出して、もう死んでいた。けれど、そんな事実などどうでも良いかと言うようにレントラーは未だ腰を振っている。電流を流され、ゴウカザルは死んだ後もびくびくと動いている。
 右を向けばゲンガーは全身を乱雑に食い千切られてとうに息絶えていた。手足も目も舌も、そのどこにも無数の噛み傷が残されていて、半分千切れた腕の先が助けを求めるようにこちらに向いていた。
「ム、ウ……」
 そしてそのササジマに唐突に影が掛かった。
 恐る恐る上を向けば、ハガネールが。口を開いたかと思えば、どさどさと何かが落ちてきた。
 ……ドサイドンの角、それから尻尾。
 その口は赤く染まっている。
 それから全身を前に持ってきたかと思えば、その巨大な陰茎にギャラドスが突き刺されていた。腹にくっきりと形が出来ている程に深くまで埋め込まれたそれ。また口にもそれを無理矢理突っ込まれた痕跡が生々しく刻み込まれており、思わず目を背けてしまう。
 ギャラドスはびくん、びくんとただ震えるだけで、もう既に死にかけている。そして、全身を縛られ、目を背けたササジマに未だ、虚ろな目で助けを求めていた。
「ガ……ガァ……」
 けれど、ハガネールはそれを確と嘲笑いながら別の方向へと投げ飛ばした。ギャラドスはその尻から白濁を撒き散らしながら、洞窟の入り口へと落ちた。
「ギャ、グ、グォ……」
 必死に逃げようとする間もなく、中から地響きが鳴り始める。
 ボゴォッ!!
 地面からイワークが這い出してきた。洞窟の中からも二匹のイワークが。それはギャラドスに巻き付き、容赦なく噛み付いた。
「ガアア゛ア゛ア゛ッ゛!!」
 悲鳴を上げるギャラドスの目が、再び助けを求めるようにササジマを向く。
 はっと振り向いたササジマ。
 めり、めりめりっ。みち、みちっ。びりっ。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
 ぶちっ。べりっ。びぢぢっ。
 けれど何もササジマは出来ないまま、ギャラドスが生きたまま食い千切られ、引き千切られていくのを見ているしか出来なかった。
 そんなササジマを、ハガネールはいつまでもニタニタと眺め、そしてレントラーが飽きたかのようにゴウカザルを投げ捨てた。
「……! ……!!」
 罵倒する事も出来ない。舌を噛み千切って死ぬ事も、許しを乞う事も出来ない。ササジマは完璧に指の一本も動かせず、口も全く動かせなかった。この拘束は明らかに手慣れた人の仕業だった。
 ここに来たのは初めてだと言うのに。恨みを晴らす相手は別に居るだろう! なのに何故俺達がここまでの仕打ちを受けなければいけない? せめて、せめて警察に突き出してくれ!
 そしてそれをやった人間はここには居ない。処刑を全てこの愉悦に塗れた、殺意を滾らせたポケモン達に一任しているのだ。
 育ててきたポケモンを犯され、食われ、ボロ雑巾のように扱われ。それらを見せつけられている。
 ガブリアスが腰を強く持ち上げ、ドグロッグに叩きつける。正しく叩きつける技の威力をそのままドグロッグに、何度も何度も、何度も何度も何度も何度もぶつけられている。
 共に昼夜を、辛苦を過ごしてきた。窮地だって何度も切り抜けてきた。確かに殺してきたし奪ってきた。けれど、だからといって、何故ここまでの仕打ちを受けなければいけない??
 どこかからかやって来たズバット達がゴウカザルにも群がって血を吸っていく。ギャラドスはもう既にその長い胴体を幾多にも千切れさせて大半がイワーク達の腹の中へと収まっている。こぼれ落ちた血肉もズバット達が残さないように食べている。
 ゲンガーにハガネールの口が近付いて、まるで見せつけるようにゆっくりと万力で締め付けるようにみち、みちと噛み潰していく。
 ぶぢゅぅ。べぢゅ、ぶぢゅ、ごぎゅん。
 ぼど、ぼどりとゲンガーだったその肉片が落ちて潰れた。
 ハガネールが飲み込めば、後はもうササジマを見ることもなく、ギャラドスを食い終えて満腹となったイワーク達、それからレントラーと共に洞穴へと戻っていった。
 そしてズバットも飛び去れば、ギャラドスは骨だけに、ゴウカザルも骨と皮だけになっていた。
 残ったのは、未だにドグロッグを犯しているガブリアス。
 べぢゅっ、べぢゅっ! ばぢゅっ、べぢぃっ。
「…………」
 ドグロッグの腕が、力なくササジマの方に助けを求めるように伸びる。
 ぶるぶると震える、欠けた指。ガブリアスの足が持ち上がった。
 ドギャッッ!!
「ゲアアッ?!」
 ガブリアスはその腕を容赦なく踏み潰した。
「ギィアアアアアアアアアッッ!!」
 そのまま念入りに踏みにじる。
 持ち上げれば、潰れた肉から骨が表に出ていた。
 ばぢゅっ。ばぢゅっ。どぢゅっ。べぢゃっ。
 そして、ガブリアスは犯しているその顔すらササジマに見せる事はしなかった。ひたすらに冷徹に、ドグロッグを犯し続けている。
 目を閉じても、耳からその音が離れる事はなかった。ササジマにはもう全ての自由がなかった。
 ばぢゅ……ばぢゅ……。
 腰振りの音が断続的になる。
「アギ……ィァ……」
 もう、ドグロッグには声を上げる気力どころか、命さえも失せかけている。もう溢れて久しい白濁は、ドグロッグの全身をまるで蝋で覆われたかのように固めている。
 せめて、せめて、ササジマはドグロッグの元まで向かいたかった。この身に自由が戻るのならば、何だってしただろう。だが、そんな都合の良い奇跡は起こりはしない。
 ずりゅ、と派手にガブリアスの雄が抜けた音がした。
 解放されたドグロッグが倒れた。しかし、その足は、腕はもうどこも役に立たない。それでも這ってでもササジマの元へと向かおうとするのに対して、ガブリアスは足を持ち上げた。
 ドグロッグはそれでもササジマの顔を最期にでも見ようとしたが。
「ム、ム゛ーーーーーーーーー!!」
 ぺきゃっ。
「ム゛ウ゛、ム゛ウ゛! ム゛ウ゛!」
 殺してやる、殺してやる!
 そうササジマは喉からあらん限りの唸りをひねり出す。だが、それに対してガブリアスはとうとう振り向くことはなかった。
 最初から最後まで、背中を向けて洞窟の中へと戻っていくだけ。
「ム゛ウ゛、ム゛ム゛!! ム゛ーー! ム゛ム゛ーー!!」
 行き場の無い怒り。しかし、叫びの何にも反応する事はなく、ガブリアスは姿を消す。
 そして声にならない叫びを終えた後。
 いつまで経っても、夜になっても朝になっても、ササジマの周りには誰も来なかった。
 助けられる事はおろか、ポケモン達が止めを刺しに来る事も、食いに来る事も、何もなかった。
 空腹になろうが、喉が乾こうが。手足の感覚が麻痺してなくなろうが。
 ドグロッグの死体が腐っていくのを見せつけられながら。殺してくれと幾ら懇願しても、その果てに意識が失せ始めても、いつまでも、いつまでも。
 その命がゆっくり、ゆっくりと失せ果てるまで、ササジマは放置され続けた。

* 5 [#ljb2Ua0]

 干からびたササジマの肉体を、ガブリアスは踏みつける。
「……」
 こんな事を何度しようが、気は晴れなかった。それどころか、心の中をどんよりとした雲がより強く覆っていくだけのようにも思えた。
 今となってはすっかり大人となった青年が、ブーバーンを連れてやって来た。
「久しぶり」
 ガブリアスはササジマから離れると、ササジマとドグロッグはブーバーンの炎に焼かれて瞬く間に灰と化した。
「まだ、続けるの?」
 そう、心配げに聞いてくる。
 敢行するに当たって心地いい事なんてどれも最初だけだった。痛めつけるのも、犯すのも、殺すのも。
 自分が良い思いをする為だけに、何度も何度も他者を蹴落として来た人間やポケモンにも心が、絆があるだなんて認めたくもなかった。
 けれどこんな事をする奴らなんて一人残らず苦しんだ末に惨たらしく死んで欲しいと思う。それは変わらない。
 だから。
 ガブリアスはしっかりと目を合わせて、頷いた。
「そう……。気をつけてね」
 返すその声は、少し寂しげだった。



















 ……ただ。
 下腹部は次の時を今か今かと待ち侘びている。



トップページ   編集 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.