#include(第十八回短編小説大会情報窓,notitle) 注意:この話には官能表現とBL描写があります(クッション入れ忘れ) 作者:[[葉月綿飴]] 『目を開くとそこは、自分の知らない景色でした』 (…って、ご主人の小説の始まりに書いてあったな…) 眠りから覚めた緑色の狙撃手、もといジュナイパーの僕は目の前を見渡しつつそう思った。 良く磨かれているのがわかるフローリング、何の変哲もない家具、インテリア…要するに自分がいる場所はおそらく平凡な家のリビングの中。 (まあ…特に違和感はない、かな) 確かに違和感はない。ただ、 「…じゃなくて!なんで僕が縛られ…てかここ、どこなんだ!?」 そう。僕にとって知らない家の中であったし、なんなら胸までの高さの柱に向かい合うようにして縛られている。つまりは誘拐されているのだ。落ち着き払っているように見えてその実 ジュナイパーは こんらん している! のである。 「とりあえず落ち着いて…さっきまで何があったか思い出さないと…」 そう思って目を閉じて思い出そうとしてみるが、なかなか浮かんでこない。目を覚ましたばっかりでその上混乱していれば猶更記憶を想起しづらいものだ。 そうこうしている内に、 「あれ、先輩目が覚めたんですね、良かった~…」 彼がやってきた。 燃えるような焔色の翼、首から背中に掛かっているいるセーター、トレードマークの緑色の帽子を身に着けたそれは、たきびスタイルのファイアローだった。 「…なんで君がいるんだ、というかここはどこなんだ」 「やだなぁ先輩、そんな『すごく面倒くさいものに会っちゃったなあ』みたいな顔をわかりやすくしないでくださいよ。せっかくのスターマントスタイルでばっちりキメててかっこいいのに台無しになっちゃいますよ」 「うるさいっての。いいから早くこんなのから解放しろ」 「ええ~、どうしよっかなぁ」 僕がこの目の前でわざとらしく首をひねるしぐさをする鳥を快く思わないのには理由がある。 元々僕にはあまり友人と言えるものがいない。ポケモン付き合いというものが自分にはあまり得手ではなかった。僕はそれでもよかったのだ。ただユナイトバトルで僕の影縫いでチームを勝利に導ければそれで満足だったのだ。実際、勝率はそれほど悪くない。僕の主人は誰かと関係を作ることを薦めてくるが、そんなの正直面倒くさくてやってられない。だからバトルが終わった後はできるだけ関わらないようにそそくさと帰っていた。 「…それなのに…」 「んー?なんですかー?」 何も聞いてないふりをして、いつの間にか袋をごそごそしている自称「後輩」が、飛来、招来…いや、襲来してきた。 もちろん、僕だって何もファイアローの対処法を知らないわけではない。正直あの長射程のブレイブバードは今でもきついことはある。それでも来そうなタイミングを予測して動いたり、さらにはこの間ファイアローの能力に制限がかかったりして最近は返り討ちに出来ることも度々増えてきた。 しかしこの眼前にいる赤いのに限ってはいつもそれを超えてくるのだ。まるでお前がどう考えて動くかは予想通りだと言わんばかりに。一週間前の試合なんて、さっきフレアスイーパーを放ったはずなのに、どこでどう技を準備したのか僕の後ろにブレイブバードで着地した後、即フレアスイーパーでゴールから押し出されてしまった。 その後どうなったかは言うまでもないだろう。自分の見通しの甘さにその晩は枕を濡らした。 おまけに僕に向かって攻撃するときに毎回 『先輩みーつけた!』だの『先輩にとっつげきー!』 だの叫びながら向かってくるから余計に頭が痛い。誰かに誤解されたらどうしてくれるんだマジで。そもそもそんな出会いを体験した覚えはない。 ──とまあ、これについて語ったら意外と多くなってしまったが、そんな事より。 「…さっきから何をゴソゴソしているんだ、こっちが今どういう状況かわかってそれやってるのか?」 「そりゃわかってやっているに決まってるじゃないですか先輩、ボクはただ先輩との約束を果たしに来ただけですって」 「…約束?そんなのした覚えはないんだけど」 その途端、心外だとでも言うように目を見開いた後、 「え、マジで覚えてないんですか?うっそでしょ…先輩この前ボク達ファイアロー族の能力が制限されて内心喜んでましたよね?」 「…なんでお前が知ってるかは知らないけどその通りだよ、これであの憎きファイアローにも勝てるって」 思ったんだ──と、外に出そうになった言葉は霧散して思考がフリーズした。 代わりにパズルのピースが瞬く間に組みあがるかのように忘れていた映像が脳裏に鮮明に再生されていく。 …ファイアローのナーフがされてからというもの、ユナイトバトルで見かける頻度がかなり減った。 勿論それで僕、ジュナイパーが最強になったわけでもない。ゲッコウガやエースバーンのような存在もいるし。 それでも対面にファイアロー族がいないってだけでもとても嬉しかった。事実、10回以上KOを決めて勝った試合も何度かあった。 その何度目かの大差勝ちの試合の後、緑帽子のこいつが寄ってきて、 「先輩流石じゃないですか!400点以上差をつけて勝つなんて」 「…別に。味方が上手かっただけ」 「またまた謙遜しちゃってぇ。実力もですけどボクのようなファイアローが対面にいなかったのもあるんじゃないです?露骨に弱体化食らっちゃいましたしねぇボク達」 「…まあ、そうだな。今の僕なら君にも勝てるかもね?」 「むーっ?そんな事を言われるとは…」 しばらく顔を膨らせるしぐさをした後、 「じゃあこうしましょう?次にボクと先輩が勝負したとき、勝った方が負けた方のいう事をなんでも聞くという事で」 …思えばこの時、めんどくさいだのそうする義理がないだのと一蹴しておけばよかったのだ。にもかかわらず久しぶりに上機嫌で後若干慢心も混ざっていた。 「…わかった。決まった以上は、文句はなしで」 「んーそれでこそ先輩です!お互いにいい勝負にしましょうね!」 「お互いに、ね。…負けないから」 「ボクもデース!」 そして残り二分のラストスパート、サンダーピットの中央から矢をバラまき始めた所で草むらから強襲を受けて─── 「───あ」 何という事だろう。種は全て自分から蒔いたも同然だったのだ。 「ふふっ、思い出してもらえました先輩?というわけで罰ゲーム受けてもらいますね!」 「っく…まあいいよ、それで?さっさとすませて返してほしいんだけど」 「まあまあそう焦らずに、罰ゲームの内容はこれですよ、せ、ん、ぱ、い☆」 「──っな」 袋から取り出されたのは、隆起したヒトの男性器を模したピンク色のグッズ。 即ち、ディルド、なんだけど… 「これを先輩のイケナイ所、というかまあ菊門にでもに入れてあげようと思って」 「ふっざ…けんな、いくら何でも限度があるだろ限度がこの変態鳥!」 「でも先輩だって溜まるときはありますよね?その手だとふわふわしてまともにオナニーも出来なさそうだからと思ったんだけどなぁ」 「オナッ…」 息をするようにシモい言動をする赤い鳥に呆然とするしかない。 というかなんで知ってるんだこちらの雄事情を。なんか怖くなってきたんだけど。 「というわけで観念して下を掘られる喜びを知ってください先輩、これは約束なんですから」 「…もし強行したら僕のご主人が黙ってないと思うんだが?」 「それもクリアしてます、寧ろポケモンの性事情には疎いからとボクのパートナーが頼まれて困ってすらいたんですから」 「ちっっくしょうめ…っ!!」 いつも優しく支えてくれるご主人ですら敵だったとは。こうなったら強引に抜け出すしかない…! いや、まてよ…? 「お前、それどうやって僕に使う気だよ」 「んー?まあ無理ですね、ボクのこの身体じゃ」 (と、いう事は…!) 「まあそんなこと把握せずにボクが決行するわけがないので、というわけで助っ人さんドウゾー。」 「はっ…!?」 「うーす。お願いするっす。」 そう言って隣の部屋から現れてきたのは腕が四本の筋肉モリモリマッチョマン。 カイリキー。 「………………………………」 「そんな無言でガタガタと必死に抵抗しなくても…別に取って食うわけじゃないのに」 「嫌だ、別の意味で食われるんだ、犯られるんだ…ッ!!」 そんな抵抗も空しく。 「じゃあ、予定通りにでいいんすね?」 「はい。よろしくお願いしマース!」 ぬちゃり。 「ひぁあ…!?」 今まで排泄にしか使われなかった部分に、極厚の舌が滑り込んできた。 「何をッ…やめ、うぁ…!?」 「うーんこの生娘感。よほどオナに関して素人みたいですね先輩。羽の手じゃムスコ触ってももどかしいだけでしょうに」 「うる…さっ、ふぁあ…!」 必死に暴れてもがっちりと掴まれてしまい離すことができない。というか縛られてるせいでまともに抵抗もできない。 その内変な感覚がお尻の部分からじわじわと這い上がってきた。 まずい。自分が自分じゃなくなってるような気がする。 「…まあ、こんな感じすね。かなり清潔にしてあってやりやすかったす。これなら問題ないはずっす」 「おお、予想より結構早い…嬉しい誤算ですね、それじゃ早速」 「やめ、やめて…そんなの、無理、入らないって」 もうここまで来たらプライドも何もあったもんじゃない。そのグッズを突っ込まれたら今度こそ大切なものを失いそうな気がする。 何としても。なんとしてもそれだけは…っ! 「うーん、先輩の泣き顔もなかなかどうして乙…じゃなくて、これは罰ゲームなんです。ごめんなさい、でもわかってください」 「待って、待て…!」 そんな命乞い(?)も甲斐なく、容赦なくソレは侵入してきた。 「かっ………は…!」 「む、流石に刺激が強すぎましたかねコレ。慎重にお願いします」 「了解っす」 下穴の異物感でキャパオーバー。まともに言葉を紡ぐ余裕もない。 ただ耐えるしかない。何だこの地獄は… 「んあ、は、は、あ…」 「…あ、ここかもすね。見つけたかもっす」 「よし!じゃあさっさと先輩を地獄から抜け出させましょう!ドーン!」 ディルドが僕の最奥に一気に押し込まれた、と同時に。 「ぴぃぃぃぃぃいいぃっ!?」 全身を雷のような快感が駆け巡った。 と、体温が急上昇するのを感じた。まずい。おかしくなる…! 「いよっしビンゴ!そのままお願いします!」 「了解っす」 そこからはもう、ただひたすらに攻められ続けた。 やめてくれ、変になってしまう、なんて言葉など出てくるはずもなく。そこにあるのは秘奥を執拗にいじられてただ無様にさえずる緑の梟がいるだけだ。 当然、瓦解なんてあっという間だった。 「ひっあ、あ、あッーーーーー!!」 いつの間に自己主張していたかわからない前の尾羽が床を白く汚して、そうして終局を迎えた。 屈辱と快感と怒りがぐちゃぐちゃで思考もままならない。 「………。」 「いやあ、すっごい出しましたね先輩…これでしばらくは先輩が悩むこともない、はず」 「…す」 「えっ?」 「次に、絶対倒してやる…それでお前にも同じ目にあってもらうッ…!!」 「先輩そんな殺気立てなくても…でもわかりました、受けて立ちます」 そうして僕は決意した。絶対に倒して見せると。 …意外にも罰ゲームは本当にこれだけのようで、これを誰かにでもしゃべるのかと聞いたら 「そんなことは絶対にしません。そんなクソみたいにくだらないこと」 と、真剣な顔をして否定された。 帰り際、 「…まあ、覚えてるわけないよね、あの事…」 と言っていたのが妙に気になった。 後日。 結論から言うと惜敗した。 原因は僕だった。無様の一言に尽きる敗因だった。 最初からずっと好調で、残り二分までに敵のフロントどころか上のミドルゴールまで割れたときは勝ちを確信していた。その慢心がいけなかったのだ。 いつものようにサンダーピットから影縫いでとどめを刺そうとしたところで─ 真後ろから、フレアスイーパーでどつかれた。 その後は混戦に巻き込まれてあっけなく倒された。結果、サンダーのとどめを刺されそれまでの点数差をひっくり返され10点差の大逆転勝利をされてしまった。 その時の悔しさは多分きっと、これからも忘れることは無いと思う。 試合後、いつものようにあいつが寄ってきた。 「先輩、いつもよりすごく強かったです…あれが成功してなかったら危うく負けてました」 うるさい。 うるさいうるさい。 「今回自分もかなり倒されちゃいましたし、実質ボクの負けかな、なんて」 「しつっこいんだよお前!落ち込んでるの見てわかんないかなぁ!?前々から思ってたけどホンっトうざったいんだっての!さっさと失せろ!」 「……。」 あ。 やって、しまった。 「…そう、ですよね…ごめんなさい、先輩…」 そういって眼前から消えてしまった。 チクリ、と何かが刺さった気がした。 「……っ」 このままいると何か崩れてしまいそうで、首の紐を引っ張って逃げるようにスタジアムを後にした。 家に戻っても、主人は気を遣ったのか何も言わなかった。 それが余計に惨めにさせた。いや、寧ろ慰められた方が余計惨めだったかもしれない。 いずれにせよ、夕方になるころにはもう棘は心を針山にしていた。 自責と良心の呵責と罪悪感の海に溺れそうになった僕を、それでも主人は救い出してくれた。 「ポケモンだけでもお菓子を出してくれるカフェが最近できたんだって。行ってみたらどうかな?」 そういって送り出してくれた。 (…そうだ。これで何か買って、それで、謝らなきゃ…) そう思ったが、足取りは重い。 (嫌われたくない。もし、会いに行ったとして、拒絶でもされたら…) でも、負けたのは事実で、八つ当たりをしてしまったのも事実だ。謝罪しない道理などどこにもない。 (誰かとの関係なんてどうでもいい、いいと思っていたのに。) こんなにも足が震えるなんて、なんて滑稽だろう。 その実寂しがりだったのだ。多分、自分は。 (…着いた…。) 主人の言っていたことは本当だったようで、商品を指してコインを出したら一人で買えてしまった。 面白い店もあるものだな、なんて断片的な思考が流れた。 店を出ると。 「…あっ!」 なんという偶然か、店の前の公園のベンチによく見慣れたホロウェアのファイアローがいた。 遠くを見つめているようだった。 (…今なら…!) 意を決して行くことに決めた。向かううちにこちらに気づいたようで、 「…あ」 飛び立とうとした。 「待って…!」 「…。」 少し迷うしぐさをした後、僕の前に降りてきた。 「…なんでしょうか」 「………」 「………」 こんな時に限って上手く言葉が紡げない。壁のような沈黙が降り注ぐ。 (ええい何してんだこの陰キャ!謝れ!さっさと謝るんだよ!) そう発破をかけても嘴は上手く動いてくれない。 「「…………ごめんなさいっ」」 「あ」 「…あっ」 また沈黙が降り注いだ。でも、さっきよりかは幾分マシ、な気がした。 「…えっと。僕がミスして負けたのは事実なのに、八つ当たりなんかして、ごめん」 「いや、ボクの方だって…!あんなの煽りにしか聞こえないだろうし…!」 また二匹してもじもじするような、でも少し柔らかいような。 「…これ、買ってきた…お詫びのしるしに。」 「…一緒に食べません?」 「…うん」 買ってきたものを一緒に分け合いっこして食べるとか恋人みたいだな、両方♂なのに、という雑念はクイックショットで撃ち抜いた。 「…それで、約束、というか罰ゲームなんだけど…あまり激しくない方が良いかな、なんて…」 こんなときでも負い目とか関係なく保身に走る自分自身に若干自己嫌悪しそうになったが。 「いや、もう決まってます」 「…何?」 そういったとたん、後輩は体をこちらに向けてきて。 「ボクと、付き合ってください」 「………」 臆することなく、そういった。 「…付き合う」 「そうです。本気です。先輩は覚えていないと思うけど、ボクが初めて先輩と一緒にやったときから、先輩は憧れでした」 …いや、もしかしたら覚えているかもしれない。 あるスタンダードバトル。明らかに始めたばかりだと思われるファイアローがいた。敵に何度も倒され、それでもあきらめず、でもどうすればわからないような不安した顔。 なぜか見過ごせなくて、近くに行って 「…大丈夫。なんとか、するから」 その後辛くも勝利をおさめ、そのファイアローにはお礼を何度も何度も言われたのだが… 「…あの、先輩?やっぱり、迷惑でしたか…?」 はっ 「…ううん、全然、全然、そんなことないから…」 「っ、じゃあ…」 「…うん。恋とか、その…よく知らないけど、よろしく」 途端、懐に飛び込んできた。 「………っ有難う、ありがとうございます、先輩…!!」 瞬間、自分の心が、暖かくほどけていく…そんな気がした。 それから。 「先輩みーっけ☆とっつげきー!」 「…ふっ、読めてるよ!これでもくらえ!」 「っちょ、はっぱカッターとか聞いてないんですけどー!?」 …僕の唯一の関係にして恋人との関係は、良好である。 ***後書き [#uU8OTFX] ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。 そしてワンクッションの入れ忘れ本当にすみませんでした!!!%%投稿した直後に気づいて頭抱えました%% これを書こうとした動機ですが、最近ポケモンユナイトに嵌った結果 「あれもしかしてジュナ×アローのカップリングアリじゃね???」とトチ狂っ%%てさらに金土の二日間だけで突貫工事し%%た結果 こんなものが出来上がりました。すべてはユナイトのせいです多分きっとメイビー。 エントリーした以上はちゃんと出そうと決めていたので、正直見てもらえるか心配だったんですが、予想より多くのプレビュー数をいただいてちょっと驚いてます。 やり残したことと言えばジュナが開発されるシーンをもっと磨き上げたかったです!!!微妙に知識だけあって実態はほとんど無知なシチュって最高だと(自粛) 大会に携わった全ての方々、本当にお疲れ様でした!これからもゆるゆる更新頑張ります。 ケモホモは良いぞ! #pcomment(かくて後輩は翔来しませり…?,10,below)