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【16】寝取りゾロアーク の変更点


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RIGHT:[[たつおか>たつおか]]





LEFT: この作品には以下の要素が含まれます。



LEFT:''【登場ポケモン】''  
CENTER:ゾロアーク(♀)・エースバーン(♂)
LEFT:''【ジャンル】''    
CENTER:百合・レズ・クレイジーサイコレズ
LEFT:''【カップリング】''  
CENTER:ゾロアーク(♀) × トレーナー(♀)
LEFT:''【話のノリ】''    
CENTER:重め





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#contents




*第1話・哂うケモノ [#mfef1f12]
 

 どのトレーナーの元にも、『問題児』と呼ばれるポケモンが一匹はいるものだろう。
 私の手元においては、まさにゾロアークがそれと言えた。

 彼女は私のパートナーとも言うべきチーム最古参のポケモンだ。
 遡れば、それこそ進化前であったゾロアの頃からの付き合いで、その頃は何とも私に懐いてくれていたから私も猫かわいがりに可愛がったものだった。

 種族は違えども同性であったことからも私達の付き合いは密で、就寝はもとよりお風呂だって共にした仲だった。
 ……それなのに、ゾロアークに進化した頃から彼女は変わってしまった。

 プロポーション良く立派な胸元の毛並みと豊かな髪、目元と口元の隈取もアイシャドウや口紅を思わせるように艶やかで、彼女はポケモンでなくともその立ち居に皆が見惚れてしまうほどに綺麗だった。

 比べてそのトレーナーである私はと言えば、対照的にチビで眼鏡の寸胴で、周囲が彼女を綺麗だと囃し立てるたびに、私は比較の対象とされては惨めな思いをしたものだった。
 そしてそれと時を同じくして……ゾロアークによる私への嫌がらせが始まったのだ。

 シンプルかつ最も堪えられないものとしては、単純に彼女が私の命令を聞かないことだ。

 ゾロアークはモンスターボールに入ることを頑なに拒否し、無理矢理に収めてもいつの間にやら出てきてしまう。
 そうして脱出してくると、わざわざ私を探し出してはいつまでも隣に着けてはニヤニヤと私を見下した。

 バトルにおいてもトレーナーの私などは置いてけぼりにゾロアークはチームの指揮を取った。
 というか常に彼女は先鋒を望み、そして登場すると決して負けなかった。
 彼女一人ですべて勝ち抜いては、私が他のポケモンに指示を与える機会を与えてもくれない……。

 さらには日常生活にまでその干渉は及び、食事においてもゾロアークはすぐに私の邪魔をした。
 食事中、飲み物や調味料を取りに少しの間でも席を立つと、ゾロアークはそんな私の食べかけの食事をすべて平らげてしまう。
 飲み物に至っては、何度カバンを漁られては呑みかけのペットボトルを奪われたか知れない。

 就寝においても、ゾロアークは横になる私をいつまでも、そして穴が開くほどに観察する。
 目を閉じていても分かるその視線と気配に耐えかねてうっすらと目を開けると……想像通りにこちらを見ていたゾロアークと目が合い、彼女はニヤリと笑ってはこんな私を嘲るのであった。

 正直もう……限界が近かった。
 先日などは用を足している最中のトイレにまで侵入してきては私を驚かせた。
 自宅であったこととそしてオシッコ程度の用であったから鍵など掛けずに済ませていたが、その隙をつかれてドアを開け放たれたのだ。

 その時も、わざわざ鼻を引くつかせては私の匂いを嗅ぎ取って舌なめずりをしたゾロアークの嘲笑が今も脳裏に焼き付いている。
 それでも彼女を捨てるわけにもいかず共に暮らしてはいるのだが、ついにそんな私の忍耐を越える出来事が起きた。

 ある時、伝手を頼りにエースバーンを貸してもらえることになった。
 名目はバトルの練習相手として借り受けたポケモンだったが、かねてよりエースバーンのファンだった私はバトルなどそっちのけで彼にぞっこんになった。

 借りている間中は常に隣に置いて世話をしたり、おしゃべりなどして過ごした……夢のような時間だった。
 しかしながらそんな私の大切な物を台無しにしたのも──やはりゾロアークだった。

 ある夜、エースバーンの姿が見当たらずに私は彼を探した。
 そうして家中を探しても見つけられなかった私は、ふとリビングに併設されているクローゼットの中から何やら気配がするのを感じてはそこに近寄る。

 両開きの扉に耳を澄ませれば、その向こうには確かに誰かが居るのが分かった。分かったがしかし……その様子はポケモンとは思えない気配だった。

 クローゼットの中は衣装部屋としての役割もあることから、人間の大人であっても2~3人が収容できる広さの造りとなっている。そこから漏れ聞こえてくるもの荒い吐息と、粘着質に空気を含んでは鳴らされる下品な水音……その中にいったい誰が居て、そして何をしているというのだろう?

 そんなクローゼットの扉は通気の目的から木製のガラリが組み込まれた造作になっているわけだが、私はその隙間に眼をこらし狭い視界ながらも中の様子が窺った。
 そしてその中において繰り広げられている光景を目の当たりにして──私は言葉を失う。

 まず最初に眼についたのはエースバーンの姿であった。
 背筋を伸ばし、前方に体を反らせては息苦しそうに天を仰いでいる。
 一体なぜにそんな表情をしてものなのだろうか? 狭い視界からではそんなエースバーンしか望むことが出来ない。
 そうして視点をさらに下げてその足元へと降ろした瞬間──私の目には衝撃的な光景が飛び込んできた。
 
 そこにあったものは──エースバーンの足元に屈みこんだゾロアークの姿。
 しかもそこにて彼女が何をしていたかといえば、こともあろうかゾロアークはエースバーンのペニスをしゃぶっていた。
 
 かかと同士を付け、つま先立ちでしゃがむその姿勢は、正面から覗き込む私に対して股間を晒すように体を開いた体位だった。
 そしてこともあろうか……そんな彼女と私の視線は合ってしまう。

 その気まずさ──というかもはや衝撃から硬直しては身動きのとれない私を確認し、依然としてペニスの口取りを続けるゾロアークの貌には、またあの笑みが浮かんだ。
 私が夢中になっている物を取り上げる時の、あの哂い顔だ。

 そんな私の視線に気付いてもなお、ゾロアークは行為をやめるどころがむしろ吸い付かせる行為をさらに激化させる。
 頬を窄めて鼻の舌を伸ばすその表情には、元の端整な美しさなど微塵もない浅ましさに満ちていた。
 それでも視線は私に留めたまま、やがてはゾロアークもまた己の股間をまさぐり出しては、膣の陰唇をかき混ぜる動きを展開させる。

 そうして見守り続けていると、やがてはエースバーンが射精をした。
 短く呻きを漏らしてゾロアークの頭を抱えるとより一層に腰を突き出しては快感に打ち震える。
 窄められていたゾロアークの頬が見る間に膨張してくるに、よほどの量が彼女の口中に吐き出されているだろうことは傍から見ても明らかだった。

 それでもなお、ゾロアークは私から視線を外さなかった。
 暫ししてその目元がさらに浅ましく上ずったかと思うと、ゾロアークもまた激しく失禁しては果てる。
 その飛沫はガラリの隙間から噴き出しては私の顔もまた汚したが……それでも私はそこから眼を離すことが出来なかった。

 やがてはエースバーンのペニスを解放すると、膨らんでいた頬が急激に窄まった。同時に喉仏が大きく上下するその様子に、私もゾロアークが口中の精液を全て飲み下したことを悟る。


 事が終わり満足げに舌なめずりをしながら、なおもゾロアークは私を見て哂っていた。


 この貌なのだ……
 この貌でいつもゾロアークは、私の大切なものを奪って行くのだった。




*第2話・掠奪と愉悦 [#ye1ddf7c]


 翌日──私はどんな顔をしてゾロアークとエースバーンに会えばいいのか分からなかった。
 
 結局あの後……逃げるようにその場を立ち去った私は、ベッドに飛び込むなり頭からシーツを被ってはそのまま眠ろうとした。眠ろうと躍起になったが、脳裏に先の光景が焼き付いているうちは目が冴えてとてもじゃないが眠れなかった。

 それからどのくらい経った頃か、傍らに誰かの気配を感じた。
 シーツの中に籠っていたから確かめようもないが、その気配が間違いなくゾロアークであることは確信できた。

 まるで殺人鬼から逃げ隠れるホラー映画のように、そんなゾロアークを傍にした私はただ何もされないことを祈るばかりだ。
 しばしして、ゾロアークがベッドへと上がってきた。
 一体何をするつもり!? ──私の不整脈はゾロアークに伝わるんじゃないかと言うほどに昂る。

 しかし……彼女がそれ以上なにかしてくることはなかった。
 私の傍らで身を丸くしたかと思うと、しばししてゾロアークの寝息が聞こえてきた。どうやらここで寝ているようだった。

 その様子に安堵もするが、そもそもどうして私の隣で寝ているのだろう? というか、もしかして普段からこうなのだろうか?
 そんなことを取り留めも無く考えていると、いつしか私も眠りに落ちていた。

 そして翌日……私は就寝した時と同じようにシーツの中で覚醒したが、それでもその中から外へと出ていく勇気がなかなか持てなかった。
 どんな顔をしてあの二人に会えばいいんだろう?

 それでもやがては窮屈になり、仕方なしに起床してはシーツから頭を出す。
 そうして息を吸い込んでは大きく溜め息をつくその傍らに──

「はぁー………ん? ッ──ひぃッ!?」

 そのすぐ傍ら──ベッドサイドに屈みこみこんでは私を凝視していたゾロアークと目が合い、私も悲鳴を上げてしまう。
 しばし見つめ合ったまま固まってしまった。
 お互いを目の前に、おそらく私は幾重にも引きつらせた表情を万変させただろうが、ゾロアークだけは上目遣いの射るような鋭い視線で私一点を凝視し続ける。

「おッ………おは、よう……」

 やがて辛うじて挨拶のひとつもすると──途端にゾロアークは顎を上げ、下瞼を上ずらせたあの嘲笑を浮かべながら私を見下ろすと、満足げに鼻を鳴らした。
 立ち上がり、何事も無かったかのようベッドを後にするゾロアーク。
 彼女が立ち去りしばしして、私は潜水から浮上した時さながらに大きく息をついた。事実、この瞬間まで私は息を止めていた。

「な、なんなのよぉ……もぉ~………!」

 もはや昨晩から私の情緒はぐちゃぐちゃだ。このままでは何らかの精神病すらも発症しかねない。

 それから朝食を摂るためにキッチンへ向かうすがらにエースバーンとも会った。
 ゆいいつ何も知らない彼は、昨日と変わらない笑顔で微笑んでくれた。あんなことがあった翌日ではあるが、そんなエースバーンの仕草にはなんとも癒される。

 手持ちのポケモン達も出して朝食を摂ったその後は恙無く過ぎて行った。
 午後になり、私はトレーニングの一環として擬似バトルをさせようとゾロアークとエースバーンを連れて外に出た。本来はこの目的のために借りた彼だ。

「試合形式でやってもらうからそのつもりでね。エースバーンの指揮は私が執るから、ゾロアークはそれに対応して」

 ゾロアークと対立すると、私はしばしエースバーンとバトルの打ち合わせをする。
 もとよりバトル巧者の先輩から借り受けたポケモンだけに、エースバーンは私の伝える戦略を実に要領良く理解してくれる。
 ゾロアークが単独で戦い始めて以降、こうしたポケモンとのやりとりに飢えていた私には本当に楽しい時間となった。事実エースバーンと話していて、私は何度も笑顔がこぼれてしまう。

 そんな私達の様子を……少し離れた場所から無言で観察していたのはゾロアークだ。
 片膝を曲げながら立ち尽くしては、腕組みにそんな私達を凝視していた。……というか眉間に険をこめては上目づかいに放たれるその眼光たるや、憎悪の念すら感じられるほどだ。

 さては待たされてイラ立っているのだろう。
 私もようやくにエースバーンとの打ち合わせを切り上げると、改めてゾロアークと対峙した。

「先行はアナタからでいいわ! 練習だけど、本気で来て!」

 改めて彼女とのバトルに胸を躍らせる私。
 手前みそではあるが、ゾロアークの実力は知っているだけにそんな彼女が私に対してどう対応をしてくるのかは非常に興味深かった。

 ……が、異変はその時すでに起きていた。
 依然として腕組みのまま戦闘態勢に入ろうとしないゾロアークに私は気付く。
 そうして真面目にやるように檄を飛ばす私にもしかし、一方でこちらのエースバーンもまた何の構えも取っていないことに気付いた。

 明らかに戦闘する意思のないゾロアークとは違い、エースバーンは茫然自失としては心ここにあらずといった様子だった。
 何かがおかしい……そう思い始めた時、ゾロアークが動いた。
 右手を腰に当てたまま、裾のまとめられた頭髪の毛先を振りながらモデル顔負けの優雅な足取りでエースバーンへと近づいていくや──辿り着くなりに屈みこんでは、彼のペニスを口に咥えてしまった。

「ちょ……ちょっと! 何してるのよッ!?」

 まるで昨晩の再現だ。それを目の当たりにし、私の声も大きくなる。
 昨晩と違うところは、悪びれもせずに堂々とその行為を私に見せつけていること──そして、彼エースバーンのペニスを完全に勃起させるやゾロアークは立ち上がり、背を彼に向けては大きく尻を突き出した。

 カーテンのように垂れていた毛髪の裾が小刻みに振られながら上昇していき、やがては完全に天へと跳ね上がってその下の濡れた膣を晒すや──エースバーンは我を忘れてそこへと食らいついていった。

 背後から抱き着き、前戯も無しにゾロアークの膣へと己のペニスを挿入してしまう。
 その怒張した一物を一息に根元までぶち込まれてはゾロアークも天を仰ぎ、愉悦の表情を浮かべた。

 しかしながら私には分かっていた……ゾロアークが今みせた貌は、けっして快感に根差したものではないことを。
 それこそは、私からこのエースバーンを奪い取ったが故の満足からくる哂い顔なのだと。

「や……やめて……やめてよぉ……ッ」

 その後も我を忘れてはゾロアークへと腰をぶつけ続けるエースバーンの、そんな二人の姿を目の当たりにし、私は腰砕けてはその場にへたり込んでしまう。

「やめて……そんなマネしないでよぉ……ひどいよ……こんなのッ」

 もはや誰に訴えているのかも分からずに、ただ私は懇願してはそして泣き崩れてしまった。
 依然として犯されながら、そんな私を背の峰越に見遣るゾロアークの貌は一見苦し気に眉元を歪めながらもしかし、その口元は裂けた口角が耳へ届くのではないかと思うほどに吊り上がっては満面の笑みをそこへ湛えていた。

 やがて低いうめき声と共にエースバーンが絶頂を迎える。
 押し付けて静止した尻はまるで別個の生物のように痙攣を繰り返しては、この小さな体躯に詰め込まれた精液の全てをゾロアークの膣(なか)へと吐き出していく。

 しばしそうして打ち込んでいた射精が終わると怒張の解けたペニスはゾロアークから抜け落ちて、さんざんに掘り穿たれた膣口からは粘性に富んだ大量の白濁液が溢れ出してくるのだった。

 その眺めにもはや見ていることすら耐えられなくなっては頭を垂れてすすり泣く私。
 そんな私へと追い打ちをかけるように、目の前には影がひとつ立ちはだかった。

 いうまでもなくそれはゾロアークだ。
 やがてゾロアークは私の前に屈みこむと、今しがた精液の注がれた膣をこれ見よがしに指で掻き回しては、精液特有の青臭い香りを私の鼻先へと撒き散らす。

 そうまでして私に嫌がらせをしたいのか……この段に至り、私の絶望は静かな怒りへと変わり始めていた。
 そしてその情を宿した視線で見上げると、

「私は……あなたを許さないからね……!」

 私はきつくゾロアークを睨めつけた。
 その視線に驚いたのかその一瞬、ゾロアークはこの混沌の場には似つかわしくないほどのあどけない表情を見せた。
 しかしそれも一瞬のこと、次の瞬きの直後には──彼女の顔には再びあの、吊り上げた口角の端で下瞼を上ずらせる強い悦びの貌が浮き上がっていた。


 掠奪と愉悦──その果てに得た私の感情と視線とを一身に受けるゾロアークは、心の底から嬉しそうだった。




*第3話・レイプ [#v6c1641b]


 借り受けたエースバーンを返すそのすがら、私は一連のゾロアークの凶状を先輩へと相談した。
 もはや一人でこの問題を抱えるには、私の精神力が保たないと感じたからだ。

 先輩は私の3つ歳上となるトレーナーで、過去には大きいリーグでの優勝経験もある名の知れた存在だった。
 卒業校が同じだったという好(よしみ)からの知り合いで、まだ有名になる前から何かと私に気を掛けてくれていたし、その付き合いはリーグ制覇後に彼女が名声を得てからも変わらなかった。
 
 むしろ私としては、リーグ覇者という肩書よりもそんな先輩の人間性に惹かれている部分の方が大きい。
 先輩が私のことをどう思っているかは別としても、少なくとも私はこの人を実の姉のように慕っては、私生活における相談事も事あるごとにしていた。
 それでも今回は……

『それは……けっこう深刻かもね』

 私の話を聞き終えても、先輩は膝の上のエースバーンを撫でたまま顔を上げなかった。
 エースバーンはそれが心地良いのか、それとも昨日の疲れが抜けていないのか先輩の膝の上で微睡んでいる。

『過去にポケモンが自分のトレーナーを手にかける事件も無かったわけじゃないの。──そしてそういった事件の場合、大きな原因は二つに分けられたわ』
「二つ、ですか?」
『ええ。一つはポケモンが劣悪な環境に置かれていて、そこを脱するために反逆するパターン。そしてもう一つは、ポケモンそのものに問題があるパターン……』

 ポケモンにも様々な性格や嗜好というものが存在する。
 例えるに他者を傷つけることが好きなポケモンは、自身ではその行為をイレギュラーなものだとは分からずに繰り返してしまうのだという。
 そうなのだとしたら、私のゾロアークは間違いなく後者だった。

 人もポケモンも同じなのかもしれない──そう言って先輩は、ようやく顔を上げて私を見た。

『恵まれてる環境でちゃんとした教育を受けたポケモンだって犯罪に走る場合もある。でも全てのポケモンが『問題があるから罪を犯した』のかと言えば違うわ。良識は備わっていても、一時の気の迷いで突発的にやってしまった場合だってある……』

 そう言って先輩は僅かに微笑む。

『今回の件があったからって、ゾロアークを異常と決めつけるのは早いわよ? 必ず原因はあるはずだから、あの子のことは見捨てずに見てあげて』

 そう締めくくられては、私は何も言い返せなくなってしまった。
 正直、ゾロアークへの不信感は消えない……これこそは当事者だからこその感想だ。

 もっとも先輩はそんな私の心情もまた理解しているからこそ、早まったこと──この場合は警察やポケモンセンターへの通報等の行動は慎むようにと釘を刺してくれたのだろう。
 こうした問題を抱えたポケモンを有していたとあれば、それはトレーナーとしての私の名にも傷かつくこととなってしまうからだ。

 結局のところ納得のいく答えには行き着けなかったが、先輩に話すことでだいぶ私の気持ちは楽になっていた。
 私は先輩が好きだ──それは単なる好意や尊敬などではなく、きっと一人の女性として心惹かれているのだと思う。
 決して明かすことの出来ない想いではあるけど、それを胸に秘めるからこそ彼女を崇敬していられる今の状況もまた私には心地良かった。

 先輩の家を辞去し、私は帰宅を果たす。
 その時にはもう、気は進まないが一度ゾロアークと話しあってみようと決めていた。

 思えば私は彼女の凶状に慄くばかりで、その原因と向き合うことをしていなかったように思う。
 このままでは何も変わらない……真の解決を望むのであれば、何よりもその当事者であるゾロアークと語ることこそが今できる最善の方法だと私は結論づけていた。

 そう思い、家中を探すも……そのどこにもゾロアークの姿はなかった。
 手持ちのモンスターボールを確認してもその中に彼女が居る様子はない。
 普段は私につかず離れずで付きまとっているというのに、本当に必要な時には居ないというのだから皮肉なものである。
 
 ゾロアークが再び私の前に姿を現したのは、それから3時間も後のことだった。

 すでに夕食も終えてくつろいでいた私の前へ突如として現れたかと思うと──彼女は見下ろす私を凝視したまま、手にしていたスマホを差し出した。
 見ればそれはスマホに入り込んだロトムであり、ゾロアークはまるで何かを命じるかのようそんなスマホロトムの背をデコピンで弾いた。

 そんなゾロアークからの刺激に、ロトムは怯えた様子でタッチパネルのモニターを点灯させる。次いで行われたのは動画再生だ。
 そしてそこに映し出された映像に──私は衝撃と恐怖から硬直し、目を見開いてはそれに見入った。

 動画は、どこか一般住宅の居室内を映したものであった。
 見覚えの家具の配置と種類に私は不整脈を覚える──その部屋こそは、今日の昼間に尋ねていた先輩の部屋そのものだったからだ。

「うそ……うそだよね……うそだと言ってぇ……ッ!」

 口元を押さえながら映像に見入る中──祈る私をあざ笑うかのよう、目の前には最悪の光景が展開された。
 固定された映像の中で、ベッドの前に歩み出してきたのはゾロアークと……そして全裸の先輩であったからだ。

 表情の虚ろな先輩は、何処を見るでもなく虚空に視線を漂わせたまま、ただ茫然自失と立ち尽くしては僅かに体を右へ左へと揺らしている。
 そんな先輩を支えるよう傍らのゾロアークが抱き寄せ方かと思うと、彼女はそのまま先輩の唇を奪った。

 キスというよりはもう、自分の舌を相手の口中へと侵入させるといった体のそれは趣味の悪いホラーSFを思わせるグロテクスさだ。
 そうして存分に先輩の口唇を蹂躙するや、ついでゾロアークは彼女の右乳房へと吸い付く。
 
 豊満な乳房を根元から握りしめ、乳首の先へ血流と脂肪とを偏らせるとそこへ肉にでも食らいつくよう雑に牙を立てた。
 しばしそうして口中に含んだそれを堪能して吐き出すと、先輩の乳房には痛々しくもゾロアークの牙の痕がリンク状に残される。

 以降はベッドへと移行し、そこにおいてもゾロアークは先輩の体を蹂躙していった。
 首を、二の腕を、腿を、そして尻を……両腕を掲げたまま、虚ろな視線をロトムへと投げかけたままの先輩の体には、瞬く間にゾロアークの歯跡が刻まれていく。中には鮮血すら滲ませる箇所すらあった。

 そしてゾロアークの牙はついに膣へと至る。
 両足を逆手に取って持ち上げるや、開かれた股の間へとゾロアークは口先を寄せる。
 そこから激しく音を立てては唾液と、そして先輩からの分泌液とを撹拌しては吸い上げる激音が、まるでテレビのノイズのよう部屋中に響き渡った。

 そんな暴力を一身に受ける先輩の虚ろな顔にも変化が現れる。
 無表情こそは変わらぬものの、膣への刺激に対し小刻みに息を押し殺す様子が見て取れた。……こんな状況に置かれつつも、肉体は外的刺激に対して反応をしてしまうのだろう。
 それが望まぬものであっても、先輩の中には罪悪感を伴った快感がその虚ろな表情の下に逆巻いているのが見てとれた。

 そしてゾロアークの舌先がいっそうに動きを増し、もはやペニス同然に先輩の膣の中を往復してはその最深部──子宮にまでそれを到達させた瞬間、

『あ……あぐぅぅ……ッ!』

 強制的に引き上げられるその激しい絶頂に先輩が呻きを上げた。
 同時に──その目尻から溢れた涙が一滴、頬を伝わって落ちた。

 ──……映像はそこまでだった。
 後は一切の興味を失くしたかのよう、ゾロアークは先輩を打ち捨ててはベッドから降りる。
 そして録画をしているスマホロトムへと歩み寄ってくると長身を屈ませ、それを止めるべくにカメラへと右手を伸ばした。
 
 その光景がまるで、悪魔が私の心臓を掴むために手を伸ばす妄想と重なり──私は激しい恐怖から嘔吐しては、胃の中身を部屋の中へとぶちまけてしまう。
 もはや座っている体位すらも維持できなくなり、私は前方へと倒れ込みながらに気絶をした。

 そうして意識が闇の中へと暗転する瞬間──何者かの腕が私の体を抱き支えてくれる。
 状況からにそれはゾロアークに違いない。
 
 全ての元凶であり、そして己の快楽を満たすためにはもはや手段を選ばぬ怪物のはずなのに──そんなモンスターの両腕は、誰よりも優しく私を包み込んでは抱き留めてくれるのだった……。




*第4話・幕引き [#n5439d69]


 緩やかに覚醒をすると……私は自分の服装が気絶前とは違うことに気付いた。

 ワンピースを基調に、体中にはリボンやらカーテンのレースやらといった端切れが幾重にも巻かれたりしている。
 でたらめなコーディネイトながらも、これを施した人物の「少しでも私を可愛くしよう」といった気持ちが不器用なほどに伝わってくるのを感じた。

 未だ朦朧とする意識の中で首だけを動かして周囲を望む。
 どうやらベッドに寝かしつけられているようだった。
 そしてベッド下の床には──空になったモンスターボールが幾つも散乱していた。
 おそらくはボールの中のポケモンを全て野に逃がしたのだろう……もはや私には一連の奇行の犯人は分かっていた。

 そしてその犯人は今、突如として私の視界の前に顔を出しては私を覗き込んだ。
 ゾロアークだ。

 その登場にも私はもう驚かなかった。
 度重なるゾロアークの蛮行により全てを失ってしまった私にはもう、彼女のことを恐怖する理由も気概も残されてはいなかった。
 私から全てを奪い去ったゾロアークの最後の目的はこの私自身への凌辱なのだろう……もう好きにすればいい。
 犯すなり切り刻むなり好きにして……私は、疲れてしまった。

 しばしそんな捨て鉢の私をゾロアークは見つめていた。
 しかしながらその表情にあの歪んだ笑顔は見られない。むしろその顔はどこまでもあどけなくて幼く見えた。

 そんな顔が野花のように素朴に微笑んだかと思うと、ゾロアークは私の唇をキスでふさいだ。
 小さくついばむを何度も繰り返すそれは、無垢な少女が初めてのキスを戸惑いながらも繰り返すぎこちなさを覚えさせるようだった。
 先輩をレイプした時の動画に見られたような、えげつないものを想像していた私には拍子抜けだ。

 やがてゾロアークの口先は私の唇から離れ、舌先を肌の上に這わせながら下降していった。
 顎の下を通り、首筋にて一度吸いつけさせ、さらに下りていく。
 それが胸元へと差し掛かるとゾロアークの両手は器用に前止めのボタンを外した。

 恥ずかしいくらいにボリュームの無い私の胸元を目の当たりにし、それでも大きく目を剥くゾロアーク。触れ合う体越しから打楽器さながらの鼓動を感じるに、いかに彼女が緊張と興奮とを抱いているのかが手に取るように分かった。

 やがては震える口先で、そっと私の乳首の先端をゾロアークは咥え込んだ。
 その吸いつけられる感覚と、舌先が乳首を転がす感触に私も思わず呻きを漏らす。
 この時ばかりはゾロアークの愛撫が感情を優先させた荒いものとなった。それでもしかし、ガラス細工を扱うかのような繊細さと優しさは変わらない。

 今この場に満ちているゾロアークの感情には、私への愛以外は何物も無かった。
 思えばエースバーンや先輩に対して性的な接触をする時のゾロアークは、そのどの時も怒っていたように思えた。
 自身の性的欲求を満たすためというよりは、私怨を晴らすための仕置きを敢行しているといった気配が強かったのだと、今のこの愛撫から私には察せられた。

 やがて下降を続けていたゾロアークの舌先は、下半身におけるショーツの前で止まった。
 色気も無い木綿性の無地のショーツではあるが、ゾロアークの目に映る印象はまったく違うようだ。
 それを前にして興奮が極みに達するあまり、そこ一点を見つめたままもはや疾走後の犬のように舌を吐き出しては荒い呼吸を繰り返している。

 存分に自身でおあずけをして気持ちを昂らせ、そこからゾロアークはゆっくりと私のショーツに鼻先を着地させる。
 木綿の表面に鼻頭を埋めると、膣のクレバスの形に沿って濡れた鼻が沈んだ。そこから大きく息を吸い込んでは私の匂いを鼻腔に充満させるや──ついにゾロアークの一線は切られてしまった。

 うなり声を上げては荒々しくショーツの前マチをずらすと、その下で咲いた膣の陰唇に舌先を潜り込ませる。
 小陰唇と大陰唇の溝を舌先でこそぎながら丁寧に、味わうように私の膣を舐めるゾロアーク……同時に彼女もまた、自身の膣にも指を這わせては双方の愛撫を楽しんだ。

 陰唇のひだを口先でくわえ、前歯でそれを咀嚼しつつも膣口へ口づけをしては吸い上げるゾロアークの愛撫に……徐々に私の体も反応し始めていた。

 僅かに侵入してきたゾロアークの舌先が膣の浅い場所を何度も舐め擦る。
 私の反応を窺いながらけっして一度に深くは侵入せず、徐々に幼い膣をほぐしていくその愛撫に──いつしか私は浅い絶頂を繰り返しては、止めどなく愛液の滴りを漏らし始めていた。

「んッ……んうぅ………くぅッ!」

 そしてその日初めての深い絶頂に到達し、私は身を反らせてはその感覚に体を硬直させた。
 へそを天に向け、色気の欠片も無いのっぺりとした腹を震わせて身悶えるそんな私の痴態を、それでもゾロアークは恍惚の表情で見守っている。
 微笑みすら伺えるその表情には、真に私との今を堪能しているであろう様子が窺えた。

 やがては完全に脱力して私がベッドに沈むと、ゾロアークもまた身を乗り出してきては両膝を立てたままの私の腰元へとつける。
 右ひざを立て、畳んだ左足は胡坐をかくように投げ出すと、露になった自分の膣を指で愛撫し、陰唇のひだを存分に外部へと浮き上がらせる。

 薔薇の花弁のようにはみ出した大小の陰唇と、充血しては屹立したクリトリス……その膣を、対照的に起伏の少ない私の膣へと重ね合わせる。
 私達の陰唇同士が絡み合い、そしてクリトリス同士がその腹を合わせるや──

『きゃううぅんッ!』

 揃って私達は犬のような鳴き声を上げた。
 その瞬間、肉体には電流のような強い快感が走る。
 私とて一人寝の夜に自身を慰める行為は幾度となくしたが、これほどまでの快感を感じたことなどは無かった。
 むしろその刺激が強すぎるがゆえに、それを快感として取られないほどだった。

 それでもしかしゾロアークは止まらない。
 より一層に身を乗り出させると、私の体を右仰臥に寝そべらせては大きく開脚させた左足をゾロアークは担いだ。
 これによって私とゾロアークの股座が噛み合うと、膣口同士の接触はより深く濃密なものとなった。

 粘度の違う私とゾロアークの愛液が、彼女のストロークによって撹拌されては粘着質な水音を周囲に鳴り響かせる。
 もはや極度の快感から箍の外れた私の膣などは、幾度なく放尿とも潮ともつかない体液の噴出を繰り返してはゾロアークの内腿を濡らした。

 そうして私を責めつつも上背を倒すと、ゾロアークは私とのキスを望む、
 互いの舌同士を絡め合い唾液を交換するディープキスのからの酸欠に、私は意識を朦朧とさせた。
 上半身ではねっとりと絡ませるようなキスを交わしながらも、下半身ではゾロアークのスライドする腰元が更なる速度を得ては激しさを増す。

 その動きに絶頂が近いことと、そして浅ましいほどにまでそれを早く得たいというゾロアークの気持ちとが、まるで私自身が彼女になったかのように伝わってきた。
 そうして斯様な一心同体の感覚の中で一際強く疼いていた感情は──

「はぁはぁ……私のこと、好きなんだね………大好き、なんだね……」

 そんな痛いくらいに不器用なゾロアークの愛に他ならなかった。

 やがて最後の瞬間が訪れる──。
 一際強くゾロアークが腰元を押し付け、そして彼女からも愛液の飛沫が激しく吹き上がりその熱が私の膣にも注がれた瞬間──

『んおッ……おおぉぅ……ッッ』

 私達は同時に絶頂しては果てた。
 直後、まるでゼンマイが切れた玩具のよう突如に脱力しては私の上に覆いかぶさってくるゾロアーク。
 荒い呼吸のまま、もはや耳の先すら動かすことも出来ないといった体の彼女を私も抱きしめてやる。
 
 そうして抱えるように彼女の巨体に腕を回し不器用に後ろ頭を撫でてやると──ゾロアークはゾロアの時に戻ったかのような甲高く甘えた声を上げた。
 時を忘れて、ただ私はそんなゾロアークを抱きしめ続けた……──



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 抱きしめ続けている間も、ゾロアークはいたずらに私の肌や乳房に口先を吸いつけてきてはコロコロと笑った。

 幸せだった……このまま永遠にこの時の中で生きられるならばどれだけ良かったことだろう。
 しかし私達は──少なくとも私は責任を取らなくてはならない。

 一頻り撫でていたゾロアークの額に深く口づけをして区切りをつけると私はベッドから降りた。
 一糸まとわぬ姿も意に介さずにキッチンへと進んでいくと……そこにて私はキッチンナイフの一本を手に取る。
 私は祈るように胸の前で握りしめたそのナイフの切っ先越しに、私はゾロアークを見た。

「私達はいろんな人たちを傷つけちゃった……その責任は取らなきゃいけない」

 ゾロアークに抱かれている時に幾度となく考えたその想いを私は言葉にしていく。

「私はあなた罰しなければならない……でも、強要はしない。逃げたければ逃げてもいいよ……」

 結局、私の出した結論の中では彼女を罰することなどできなかった。どんな結末を迎えてしまっても、私とって初めてパートナーだったゾロアークはやはり特別な存在だったのだ。

「私はここに残るから……あなたはもう行って」

 そう言葉を紡ぎ、別れのそれを継げようとしたその時──ゾロアークが一歩前に出た。
 包み込むように私の背を抱いてくれると、自らナイフの切っ先の上へと顎を乗せる。
 ゾロアークの心もまた決まっていたのだ。
 ここで私と共に在ること……それこそが望み……たとえそれが死に殉ずる運命であったとしても、ゾロアークは私と共に在ることを選んでくれたのだった。

 その瞬間、今まで無表情を守り通してきた私の顔は途端に崩れた。
 涙に泣き濡れては幾度となく嗚咽を上げた。

「ごめんね……ごめんねぇ……私が、ちゃんと愛して、あげられなかったから………ッ!」

 謝る私の背をさすってくれるとさらにゾロアークは深くナイフの上に体重を掛ける。
 このまま自害することは彼女にはできない。最後の瞬間は、私の手でその幕を引いてやらねばならないのだ。

「いっしょだよ……わたしも……わたしも、すぐにいくからね……ッ」

 もはや泣きじゃくるあまり、傍からは何を言っているのか判断できないほどに私の声は震えた。

 そうして私は強く──手の中のナイフに力を込めた。




*エピローグ [#d7b671f4]


『待ちなさい!』

 その声へ機敏に反応したゾロアークは、瞬時に身を起こし発生源を望む。
 私もまた遅れて声の方向を向くが──その時にはすべてが終わっていた。

 声の方向にいたのは先輩だった。
 しかしながらこのとき既に、ゾロアークの反応は一拍子遅れたものとなっていたのだ。
 
 前方を注視していたゾロアークの視線が突如足元へと飛ぶ。
 私もまた、さらに遅れて足元の異変に気付いた。
 そこにて感じたものは稲光を思わせるかのような白い閃光──さながらコマ送りでも見ているかのような緩慢さでその瞬間は私の目には焼き付いた。

 私達の足元で屈みこんでいたのは、先輩のエースバーンだった。
先輩の声掛けから始まった一連の動作は、その全てが完成されたものであったのだ。

 思わぬ声掛けに私達が顔を上げる……すなわちはゾロアークの喉笛に突き立てられていた凶器がその動作によって外される。
 その間隙を縫って、エースバーンは電光石火に私達へと接近をした。

 私達の足元で身を屈め、足腰のバネに力を充満させた状態のエースバーンは次の瞬間──突風の如くに跳ね上がるや、突き上げた右膝において私のナイフの柄尻を打ち上げた。
 その威力に弾き飛ばされたナイフはすさまじい勢いで宙を切り裂いては、天井に深く突き立っては振動をする。

 斯様にして身を起こしたエースバーンは同時、左ひじの一撃もまたゾロアークのみぞおちへと入れていた。
 拳にもう片手の掌を被せ、ヒットバックの反動でダメージが分散せぬようピンポイントで急所を打ち抜いた一撃に──ゾロアークは呻きもおろか、その驚愕の表情すら変えぬままに気絶した。
おそらくは攻撃を受けたこと自体も理解してはいまい。……リーグ覇者のポケモンとは、これほどまでの実力かと思い知らされるシーンでもあった。

 しかし──目に映るそれら一連の出来事も、私にはどこか遠い他人事のように思えていた。
 現実感の希薄な出来事にただ茫然自失と戸惑うばかりの私へと、

『アイネ! 大丈夫!? しっかりして!』

 声を掛けて駆け寄るや、先輩は私の両肩に手を掛けてはまっすぐに瞳を覗き込んできた。
 先輩の瞳の光彩いっぱいに反射する自分の顔を確認して、私は瞬時に自我を取り戻す。
 そうして脳にはここまでの出来事すべての情報が洪水のように流れ込み、そしてその中で再び目の前に先輩の顔を確認した瞬間──

 私は恥ずかしいぐらいに取り乱しては、そして泣きだしてしまうのだった。

 そんな私を先輩は落ち着くまで抱きしめてくれた……いつまでも抱きしめてくれたのだった。



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 私への愛がゾロアークを、そしてすべての事態を狂わせた──そう先輩は結論付けた。
 それを聞く私も小さく頷く。異論はなかった。
 問題であったのは、その中でゾロアークの『新たな能力』が発現してしまったことに他ならない。

「新たな能力……ですか?」
『えぇ……『呪い』とでもいうのかしらね』

 これまた物騒なキーワードが出てきた。
 ベッドに腰かける私は、自分の膝の上に鼻先を横たわらせるゾロアークの額を撫でた。

『前々からゾロアークにその力があることは確認されていたの。そしてその子の場合は、あなたにまつわる激しい嫉妬が募った時に発動されるもののようね』

 先輩の言葉に私は過去の事件を思い出していた。
 エースバーンにイタズラをした時も、その前後で私は彼と親密な触れ合いをしていた。そして先輩がゾロアークに襲われた時も、その直前には私の相談相手として彼女は親身になってくれていたのだ。

 その『呪い』が発動すると、対象者は一切の精神的・肉体的な抵抗が出来なくなる。さらには発現者であるゾロアークの意のままに操られてしまうのだという。
 エースバーンが周囲の目など意に介さずにゾロアークと交尾を行ったことや、そしてレイプされた先輩が茫然自失としては為されるがままだったのもそれが理由だ。

『でも、結局はそれだけこの子の愛が深かったってことなのよね』

 深刻になる私を気遣ってか、あえて先輩は笑ってくれた。

『原因が分かったからこそ、今後はその付き合い方だって考えていかなきゃならないわ。それってけっこう大変なことよ?』
「……私に、出来るでしょうか? もしまた、この子が暴走して他の誰かを傷つけるようなことになったら……」

 不安と罪悪感からゾロアークを撫でた手を見つめたまま項垂れる私に、

『そのために私だっているんだから、もっと頼りなさいな』

 そんな私の不安を吹き飛ばしてしまうかのように先輩は笑った。
 場違いなほどのその明るさに、思わず私も顔を上げては見入ってしまう。
 つい数時間前にはこの人だってレイプの被害者であったのだ……それなのに、自分を悲観するのではなく他人を思い遣れるその強さに私は感銘を受けると同時に、ひどく居た堪れなくもなるのだった。

「私は……先輩に何もしてあげられません。それに私自身にもそうまでしてもらえる価値は無いと思います……それなのに、なんで先輩はこんなに優しくしてくれるんですか?」
『あなたのことが好きだからよ』

 あっけにとられるほど、先輩の答えは明朗快活だった。

『みんな同じよ。あなたを好きすぎて『呪い』なんかを発動しちゃったゾロアークと、そのゾロアークを好きだからこそ責任を取ろうとしたあなたと、そして今の私……誰も間違ってないのに、一人だけが不幸な思いしちゃうなんてばかばかしいと思わない?』

 あぁ……この人は、いつだって私の太陽だ。
 ついには今の心の重荷すら先輩に解放されて、私は強くゾロアークを抱きしめると子供のように泣き出してしまった。
 そんな私を先輩もまた立ち上がってきては再び抱きなおしてくれる。
 私達はいつまでも、大切な物を抱きしめ続けるのだった。



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 その後ゾロアークへの接し方を見直し、私達の生活もようやく穏やかさを取り戻した。

 私はなるべくゾロアークとの時間を大切にしながら、再び彼女に人の道徳や倫理について語って聞かせた。
 ゾロアークとて元は賢くていい子だ。私の意識がちゃんと自分に向けられていることと、そして自分がしてしまった過ちにもまた気付くと、彼女の中からあの『呪い』の力は失われて行った。

 そうして今──

「いい、ゾロアーク? 本番と一緒だからねー」

 私は先輩のエースバーンと一緒に再びゾロアークと対峙していた。
 あの日やろうとしていたバトルの練習の続きを、私達は再び行おうとしている。

 後日先輩は、ポケモンとそのトレーナー専門のカウンセラーになる旨を私に告げた。
 実際のところポケモンとの無理心中を図る事例は世に多く、その大半が片一方の感情を押し通したが故の結果と片付けられてしまっているが……今回当事者となった私には、それがけっしてそんな単純なものではないことが分かっていた。

 そしてそれは先輩もまた感じたらしく、そんな不幸な事故を繰り返さない為と、そして今回の私達のように救い出せることが出来ればとその道に歩むことを決めたようだった。
 自分のことで精いっぱいの私には、そんな先輩の行動力には頭が下がる思いだ。
 とはいえ、人には分というものもある。
 いかにちっぽけであろうと、私は私で頑張らねばと思うのだった。

「ゾロアーク。準備はいいー?」

 再び尋ねる私に対し、うつむき加減のゾロアークは上目遣いにこちらの様子を窺っている。
 それに気付いて、私はエースバーンに待ってくれるよう声掛けをするとゾロアークの元へと走り寄った。

「また不安になっちゃったの? 大丈夫だいじょうぶ。私はいつだってあなたを見てるから」

 そう言って口先にキスをしてやると、不安げだったゾロアークの表情がたちどころに明るくなった。
 その表情の中にはもう、あの暗く歪んだ哂い顔などは微塵として見られない。

「いつまでも一緒に居るから……あなたも私のそばを離れないでね」

 そう語り掛けて私達は再びキスをした。今度は互いが引き寄せ合うかのような抱擁だった。
 そうして元の位置に駆け戻ると、私はエースバーンに詫びて再び彼の指揮へと意識を集中させる。
 目の前でもゾロアークが上体を前傾姿勢に倒しすっかり臨戦態勢だ。

「思いっきり行くよ、ゾロアーク!」


 もはや私には何の迷いもない。
 そしてゾロアークも同じくに躍動しては──その想いの全てを、今度はまっすぐにぶつけてくれるのだった。









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