最果ての島
目次
この島を説明する時、皆は口をそろえて『どこかの』という前置きをする。
そんな島の、町から森林エリアへと進む境界線上の『どこか』にその小屋はあった。
合掌造りの平屋であり、焼杉の外壁は雨風によって多少苔むし始めてはいるものの、まだ建てられてから数年と経っていない印象を覚えさせる。
そんな小屋の屋根を、遥か上空から一匹のオオスバメが目下に捉えた。
そして身を水平にさせて飛んできた翼を一打ちすると、見定めた小屋目掛け急転直下に下降をする。
そうして小屋の出入り口となる引き戸の前まで降り、二度三度と忙しなく両翼を羽ばたかせては宙空に留まると、依然そこにおいてホバリングをしながらノック然に戸面を嘴で突き穿った。
忙しなく二度ノックし、そうして三度目のそれを敢行しようとした時──戸の向こうに何者かの気配が立ち上がるのと共にそれは静かに開かれる。
開かれた戸の先──小屋の中において佇んでいた者は、一匹のヒスイダイケンキであった。
半ばまで瞼の下りたしかめ面には何の感情も湛えられてはいない。
早朝という時間帯ゆえに眠っていたかとも思われるだろうが、このヒスイダイケンキに至ってはこの表情こそが常態なのである。
そしてそれを良く知るからこそオオスバメもまた、無作法な訪問に悪びれる様子も見せない。
むしろオオスバメに至っては目の前のヒスイダイケンキを確認できたことに安堵してか微笑んですらいたほどだった。
「おはよう、ムラクモ。まだ眠っていたかしら? 今日もいい天気ね」
そうして朝の挨拶をしてくるオオスバメに対し、件のヒスイダイケンキ──ムラクモは緩慢と空を見上げた。
雨雲を含んで水平線の裾が黒くにじみ出した雲の様子からはいつ雨が降り出してもおかしくはない天気である。
それを確認してから再びその視線をオオスバメへと戻すと、
「……おはようリュヌ。いい天気だ」
ムラクモもまた相手であるオオスバメのリュヌに応えては、ため息然と鼻を鳴らした。
そうして彼女を額の兜の上へ留まらせると、ムラクモは元通りに戸を閉じては四つん這いに部屋の中へと戻っていく。
十畳一間の空間は部屋の中央に囲炉裏が備え付けられた簡素な空間であった。
三方の壁面にはそれぞれに窓が設けられ、北面の隅には調理場も兼ねた手水場が一ヶ所と、そして西の隅には巨大な作業台と思しきものが一基備えられてはその周辺に木くずを散乱させている。
そしてムラクモはまっすぐに作業台へと向かうと再びそこへ向き合う形となり、リュヌもまた台上の手頃な一角へと降り立つ。
そうして二人が見下ろす作業台上には、長さにして180cmはくだらない長手の杉板が一枚置かれていた。
表面にはピジョットとオオスバメの意匠が複数匹彫り込まれており、写実的に切り出されたその彫刻は今にも飛び立ちそうな躍動感に満ちている。
「すごいものを彫っているわね。これってむらまさのところのお仕事?」
「あぁ、欄間だ」
言葉短く応えながら再びムラクモは彫り掛けていたピジョットに彫刻刀を入れる。
そこからは客人であるはずのリュヌには目もくれずに作業に没頭するムラクモ……一方のリュヌもまた、そんな彼に腹を立てたりもしない。
斯様にして不愛想のムラクモがこの島へと移り住んでから既に3年が経とうとしていた。
ここへ辿り着いたばかりのムラクモは当時、自身の命に対してでさえ不愛想であると言えた。
ある時突然に、今いるこの小屋に近い雑木林にムラクモは現れた。
しかしながら以降も彼はその場所を動き出そうとはせず、やがては衰弱著しい状態になって初めて島の町人に保護されたのである。
その第一発見者こそは誰でもないこのリュヌであり、発見当時の彼は助けを求めることも無く人知れずに朽ちようとしていた。
その様はまるで刑に服する囚人のような印象をリュヌに抱かせ、以降彼女は彼の保護とこの島での生活が営めるよう世話焼きをする。
当初こそはそんなリュヌからの声掛けにも反応せず、ただ終日眠り続けては起きて飯を食うばかりを繰り返していたムラクモも、やがては繰り返し掛けられ続ける彼女からの声掛けに二言三言と応じるようになった。
会話を交わすことでようやくに人間性を取り戻しつつあったムラクモは、この頃より手慰みに様々な彫刻を彫り始めるようになる。
それらは着流しの老人やトレーナー然とした和装の少女を象ったものであり、その出来栄えは素人目から見ても息をのむほどに見事なものであった。
思わぬムラクモの才能に「物は試し」とその作品のひとつを拝借すると、リュヌはそれを知り合いの大工へと渡してみせる。
制作者であるムラクモの素性は一切明かさずにその出来栄えだけを尋ねたところ、件の大工はそれの感想言うよりも先に、『これを彫った奴を紹介してくれ』とリュヌへ強く訊ねて来たのだった。
以降ムラクモはその大工からの仕事を受けるようになり、二年前には作業場兼住居としてこの小屋を建ててもらっては木工芸を手掛けることで生計を立てている。
「時が経つのなんて早いものね……」
飽くことなく、流れるようなムラクモの手元を眺めていたリュヌではあったが、ふいにムラクモは作業を止めると俯いていた顔を上げる。
その視線が出入り口の引き戸に注がれるや、その先からは傍からも分かるほどに重く荒々しい足音が振動してくるのが感じられた。
その足音は徐々にこちらへと近づきながら存在感を増していき、やがてそれがピタリと止まった次の瞬間には──
「おう、ムラクモ! 起きてるかー!?」
勢いよく引き戸を開くと同時、山の如くに巨躯のダイケンキが一匹──挨拶ながらに身を屈めては小屋の中へと入室してくるのだった。
物事の本質が入れ替わってしまうことなどよくあることだ──むらまさなどは自身の人生を振り返ってはそれを実感する。
そもそもがこの島に辿り着いたこと自体、彼にとっては偶然に近いものであった。
予てよりむらまさには『終生の仇』として追い続けているポケモンがいる。
ここへ辿り着くまでのむらまさにとってそのポケモンは人生の一部であり、彼を打ち倒すことこそが人生の目標といっても過言ではない存在だった。
そしてそんな仇の足跡を辿るうちにむらまさはこの島へと辿り着く。
しかし数か月前には既にその人物がそこ立っていたことを知り、むらまさもその後を追うべくに島を出ようとしたが……折しもこの時、島と周辺の海域は近年に例を見ない大嵐に見舞われては数日間の足止めを余儀なくされた。
やきもきしつつも嵐が過ぎ去るのを待ち、一過後にいざここからの旅立ちを図ろうとするも……ふとした事から、彼の人生は大きく変わってしまうこととなる。
きっかけは嵐の翌日に、荒れ果ててしまった町の片づけを手伝ったことに始まる。
同種族にしても体格に恵まれて怪力自慢であったことからも重宝され、そこでの片付けに深くかかわることで町の惨状を把握したむらまさはそこの復興にも関わることとなった。
最初は腰掛のつもりで大工の棟梁に師事しては木工事の手伝いなどを始めたむらまさではあったが……──これが存外に彼の型にはまった。
今までに戦うことしか知らなかった彼にとっては新しい世界であり、そんな仕事への興味とむらまさの持つ才能とが結実しては、彼は瞬く間に大工としての技術を修めていくこととなる。
習い始め1年で組み立て作業の主幹となる墨付けとほぞの加工を覚えるや、2年目には独立して一棟丸々の建築を請け負い、3年目には人足を手配しては施工建築の全般を取り仕切れるようになった。
もちろんながらその間も仇への報復を忘れた訳ではない。
しかしながら足取りも知れないそれを闇雲に探し続けるよりは、ここに留まり続けいつか再びその仇がここを訪れた時に迎え撃った方が無駄も無いのではないかと考えたのだ。
そしてここでの生活が五年を越えた今日この頃は、なおさらに自分の本質が『仇討ち』と『大工』のどちらにあるのかを悩むようになった。
実質的には既にむらまさは『最果ての島の大工』である。それでもしかし一剣士としての矜持も捨てきれないむらまさはそれを忘れない為、今も朝夕の鍛錬は欠かさず行っている。
それこそはいつか決着を付けるであろう仇との一騎打ちを夢想して……そしていつの間にか入れ替わってしまった己の本質の軌道を立て直すためにも、むらまさは剣士と大工という二足の草鞋を履き続けるのであった。
しかしながら斯様にして木工の才能に溢れたむらまさであっても如何ともしがたい問題があった。
それこそは室内造作である。
要は障子や建具の組子や、欄間・仏壇といった彫刻を必要とする内装作業ではあるのだが、どうにもこればかりはむらまさの才能とはその向きが違った。
素人考えに『同じ木工なのだからやれないことは無いだろう』や『家具建具職人ならば大工仕事も行える』などと思われがちだが、その両者は根本からしてもう違う。
道具からしても違えば、もはや概念からして異なる業種であるのだ。
それでも最初の頃は慣れないながらにもそれを行ってきたむらまさではあったが、やはり限界は来た。
完璧な職人であるからこそむらまさは、この作業には自身ではなく別の専門家を当てるべきという結論に至ったのである。
そんな折り正にその難況を見透かしたかのよう、運命は一匹のポケモンをむらまさへと引き合わせる。
それこそが誰でもないヒスイダイケンキのムラクモであった。
彼が手掛けたという彫刻を見た瞬間、心が震えた。
もはやコイツしかいないと天啓に近い確信を得たむらまさはその日のうちにムラクモの元を訪れては仕事の依頼をする。
ムラクモの複雑な事情については仲介者であるリュヌから聞いてはいた。その意思疎通の難しさから仕事の依頼など受けてもらえないかとも危惧したが……案外にもあっさりと事は進んだ。
それは当のムラクモにしてみても、世話を焼いてくれたリュヌに対する義理があったのだろう。そして今後も彼女に迷惑をかけることなく自立していかなければならないことを考えた時、このむらまさからの仕事の依頼は彼にとっても渡しに舟であったと言えた。
とはいえ最初の一年は会話らしい会話などは望めなかった。
単純にムラクモは言葉を発しなかった。
それどころかむらまさからの依頼の説明に対しても無反応で、目蓋こそは開いているもののはたして起きているのだろうかと疑問に感じるほどにその時期のムラクモは人形然としていた。
しかしながらそれらは全て杞憂で、いざ彼が果たす仕事は圧巻の一語に尽きた。
組子を組ませれば寸分の狂いもなく幾何学模様を美しく組み上げ、彫刻を彫らせればもはや木面に生命を生み出さんばかりの造詣をそこに彫り出した。
以降二人は数多くの仕事を手掛けることになる。
言葉数こそ少ないながらもやがては会話も交わすようにもなり、かつ同族であり同じくに戦士としてのシンパシーもまた感じとっては、ムラクモもまた自分同様に『自身の本質を入れ違えた』ままこの島に居るのだとむらまさは理解するようになった。
そして今日、むらまさはムラクモの住む小屋へと向かっている。
この住居兼作業場もむらまさが建てたものだ。
辿り着き出入り口の引き戸をノックするとむらまさは中からの返事も待たず豪快に開け放つ。
「おう、ムラクモ! 起きてるかー!?」
室内のムラクモはうんともすんとも言わなければ、眉ひとつとして表情を変えることなくむらまさを見つめ返した。
その様にむらまさもまた小さな安堵を憶えては苦笑い気に鼻を鳴らしてみせると、後は身内の家へ訪れたかの様、無遠慮にかつ親密に彼の家へと上がり込んでいくのだった。
「お? なんだ、リュヌもいたのか。てっきりムラクモの掘ってた彫刻かと思ったぜ」
「朝から挨拶ね、あなたも」
こうした減らず口の叩き合いはむしろ、気の置けぬ互いに対する信頼の証でもあった。
その一方でそんなむらまさとリュヌのやりとりを見守るムラクモの眠たげな視線も、無言ながらこの空気に和んでいるような気配がある。
不思議な縁で結ばれたこの三人は、もはや家族に近い感覚を共有しつつあった。
一頻りリュヌと雑談を交わし、むらまさは改めて作業台の上の欄間彫刻へと目を落とす。
「いい出来だ、今にも飛び出しそうだな。あとどれくらいで出来る?」
「……枠の仕上げを考えれば二日というところだが、塗装はどうするんだ?」
「ペンキは要らんってよ。だったら取り付けまでやってくれねぇか? 室内はもう仕上がってて後は畳を入れるだけだが、その前の方がいいだろ」
しばし仕事の段取り交わす二人の様子を今度はリュヌが見守った。
普段は無口なムラクモも、こと仕事の内容となると実に能動的に発言をする。
出会った頃に比べれば、今のムラクモの変わり様には本当に胸撫でおろす気分だった。
願わくばいつまでもこの瞬間が続いてくれればとリュヌも願わずにはいられない……そんなことをぼんやり考えていると、
「──おい、リュヌ」
ふいに会話の矛先が自分へと向けられたことに驚いてリュヌは両肩を跳ね上がらせる。
「な、なによ急に?」
「何よはないだろ、さっきから声掛けてるのに。──それよりも朝飯は食ったか? これからムラクモと現場見に行くけど、ついでに一緒に食わねぇか?」
思わぬ誘いにリュヌも改めてため息をつく。
そして当然と応えて頷くと、三人はムラクモの小屋を出て町への道を辿るのだった。
その道中ふと見上げた空は、未明から立ち込めていた雨雲がすっかりその色を黒く変えては見渡す周囲一帯を夕暮れの如くに薄暗くしていた。
「こりゃ、一雨くるか?」
見上げながらにむらまさが呟いた次の瞬間、まるでそれに呼応するかのよう轟音が低くうねりを帯びては空を打ち鳴らしたかと思うと──一拍子遅れて雷鳴が刹那周囲を照らすと同時、滝のような雨が三人へと降り注いだ。
「チクショウ、来やがった‼」
「ちょっとぉ! これじゃ飛べないじゃい!」
種族柄、濡れることは厭わないむらまさであっても散弾銃さながらに打ち付けてくる豪雨には眉を顰めざるを得ない。
同時にムラクモもまた後ろ足で立ち上がると、額の上に降り立ては避難してきたリュヌを前足で包み込むよう抱き包んでは、さらに上体を屈めて雨から守ろうとする。
そうして駆け足に町中へ入るものの、前方は足元に打ち付ける雨粒の飛沫で視界を霞ませ、町の様子はおろか人影すらも確認できない状態であった。
煙るが如き視界に眉元をしかめていると、傍らからむらまさの声が掛かる。
叫ぶように案内をしてくるむらまさの人影を辛うじて見止めると、後はただやみくもにその跡を追って駆けた。
しばし進んだところで忽然とむらまさの姿が消える。しかしすぐにそれが傍らの建物に入ったのだとも理解すると、ムラクモもまた飛び込むようにしてそこへとなだれ込んだ。
胸元ほどの高さのウェスタンドアを押し開いてその中へと入ると途端に雨音が遠くなり、代わりに頭の上からは、米粒でもまぶしているか如き軽快な連続音が降り注いでいた。
ようやく落ち着けたことにため息をついていると、
「あの……もう、大丈夫よ」
胸の中で声がした。
それに気付いて見下ろせば、自分と胸同士を押しつけあうように抱きしめていたリュヌが、いつになくはにかんだ様子で視線をずらしながらにそれを訴えていた。
「あ……ご、ごめん」
それを前にしながら改めてリュヌの体温もまた感じると、ムラクモはらしくもなくどぎまぎしながら抱きしめていた前足を解いてリュヌを下ろす。
久しく忘れていたことではあるが、リュヌは歴としたメスであったことと、そして久方ぶりに覚えた胸の高鳴りをムラクモは我が事ながら信じられない思いで受け止めていた。
まだ自分にこんな感情が残っていたのかと思う反面、あるいはこれはリュヌによって蘇らせてもらったものなのかとも思うと、柄にもなく感謝の念が胸の内に湧いた。
そうして彼女と二人店内を見渡すと、視線の先では丸テーブルの一角に既に腰かけてはこちらへと片腕を上げるむらまさの姿が見えた。
そこへ向かうすがらに店内を見渡すムラクモは同時、いつになくそこが閑散としている様子に気付く。というか客の姿は自分達だけである。
「なぁに? 今日はずいぶんと空いてるのね」
傍らでは同じことを考えていたリュヌがそれを言葉に出す。
ここ『カミナリのしっぽ亭』はこの町唯一の食堂兼酒場である。
いつもは時間に関係なく漁師や行商人、あるいは食事を楽しみに来た一般客達で賑わっているというのに、この日に関してはリュヌ達以外の客はコラッタ一匹として見当たらないのだった。
「お前が閑古鳥になっちまったんじゃないのか?」
リュヌの呟きが聞こえていたのか、席に辿り着くなりむらまさがそう声など掛けてきてはからかった。
そんないつもの軽口をリュヌも負けじとあしらっていると、
「いらっしゃいませー♪ おはようございます!」
場には新たな声が響いては3人の視線をそこへと集める。
その声に引かれて振り向けば、足元にはトレイに乗せたお冷のグラスを三つ運んできたビクティニがそれを頭の上に掲げていた。
「お、来たなティニ。今日はどんなパンツ履いてんだ?」
「酔ってもないうちからセクハラはやめてください」
互いの体格差とあってはもはやぬいぐるみ然としたティニを抱き上げてテーブルの上に乗せると、むらまさは挨拶がてらにエプロンの裾をめくる。
一方のティニもまた、それがむらまさによるいつも挨拶であることに馴れていては、微塵も照れる様子も見せない。
「……今日はなぜこんなに空いている?」
斯様なティニが各々へお冷を配り終えると、注文を伝えるよりも先にムラクモがそのことを尋ねた。
このティニはムラクモがこの町で会話をする数少ない一人だ。
もっとも毎回ここで食事をしているうちに知り合いとなっては、いつしか挨拶くらいは交わすようになった程度の仲ではあるが、一方のティニはそんなムラクモと交流を持てていることを密かに喜んでもいる。
「なんだか予定していた船がまだ着かないみたいで、みんな港から離れられないみたいですよ」
テーブル上においてムラクモに向き直って応えるティニは同時に、背後から尻の両房を摘まみ上げては揉みだしているむらまさの右手を激しくつねり上げる。
ここ最果ての島には数日に一度、生活物資や食料等を運んでくる連絡船をはじめ、観光船や調査船といった船とが外から寄港する。
その際には港に集まる町の住人やそこに乗って来た乗組員達でこの店も大いに賑わうものだが、今日に至ってはこの悪天候が災いしてそれが遅れているとのことだった。
「人手が必要だから船が着くまではみんなも港を離れられないし、だから朝ご飯も食べられずに向こうに付きっ切りなんです。──っていうか、いい加減怒りますよむらまささん!」
「俺も構ってくれよぉ店員さん」
健気にムラクモに事情を説明するティニの傍らでは、そんな彼を抱き上げてはテーブル上に突っ伏した自分の鼻頭の上に乗せたりと、もはやセクハラとも人形遊びともつかないちょっかいを出してくるむらまさにさすがのティニも気色ばむ。
そんないつも通りに平和なやり取りが行われている食堂もしかし、次の瞬間には一同を戦慄させる事態へと陥る。
始まりは店へとなだれ込んできた人間の住人であった。
この雨の中をよほど慌てて走ってきたのだろう、ずぶ濡れの体をさらには大きく荒らげながら息も絶え絶えにその男は声を上げる。
もはや誰に語り掛けるでもなく、その声はサイレンさながらにこの島へと向かっていた船の窮状を一同に知らせるものであった。
『ふ、船が難破した! 調査船が転覆して、中の乗組員達がその船の中に閉じ込められてる‼』
その事実を目の当たりにし──場には強い緊張が張り詰めた。
『しかしながら最果ての島の調査に同行したいだなんて、君もよほどの物好きと見えるな』
「えぇ……よく言われます」
最果ての島へと向かう調査船の中、ミネユキはそう教授に呆れられては恐縮した。
180センチ以上の身長に加え、シャツの一枚下に凝縮された肩幅や胸周りの筋肉は、ともすれば肉体系のポケモントレーナーとも取れない印象であったからだ。
事実この船以外においてもミネユキは初見でそう取られることが多かった。しかしながら当人はバトル経験はおろか、パートナーであるポケモンですら持ち合わせていない薬学部の学生であるのだ。
今現在、国立大学の薬学部に在籍しているミネユキは、主に自然界の薬草や生物毒に関する研究を専門に修める研究院生であった。
そのためサンプリングの一環としてフィールドワークの多いミネユキは、時間を見つけては海や山の種別を問わず自然界を散策する機会が多かった。
そんな折り、在籍するゼミの教授より実に興味深い土地についての教示があった。
それこそは『最果て』と呼ばれる島の存在である。
そこは森林やサバンナを始め、火山や氷山の山岳地帯は元より、砂漠や海洋エリアまでもが一個の島の中に存在するという多様性に富んだ立地であり、その環境ゆえに独自の生態系を確立したその島には、本土には見られないような多種多様の動植物が存在しているのだという。
加えて真偽のほどは定かではないが、そこに存在するポケモン達は人語を理解するだけに留まらず、自身達もまたその言語を駆使しては人同士が行うものと変わらないコミュニケーションを取れるのだとも聞かされた。
人語を話すポケモンのくだりは眉唾にしても、それでもミネユキの興味は大いにそそられた。そしていつしかその島へと向かう事を具体的に考え始めては、そこへの渡航を計画するようになる。
しかしながら……この島に関しては不明瞭な点が多く、調べるほどにミネユキの不信感は増した。
まず第一に、どうやらこの島は正式な登記が為されていないようであった。
故にどこの国の所領であるのかも不明ならば、島の位置を示す正式な経度も定まってはおらず、島の存在を知る者は口をそろえてその場所を、『どこかの』と称する有り様であった。
どこかの海の、どこかの空の下にある、どこかの島──そんな要領を得ない雲をつかむような島の存在を人伝に突き詰めていくうちに、遂にミネユキは島へと渡る唯一の手段であるという『調査隊』の存在へと行き当たる。
今までずっと、空想上の存在と思われていたそれが突如として現実味を帯びた瞬間であった。
それを知るやまるで見えない手に導かれるかの様、調査隊を指揮する生物学部の教授へ同行を懇願すると、半ば押しかけ気味に今回の参加を決めてしまった。
学部違いの学生を迎えることに当初は教授もまたミネユキの参加を躊躇ったものの、結局は己の学部からの参加者が居なかったことからも助手の参加を切望していた教授は、半ば打算に押し切られる形でミネユキの同行を許可した。
そこからミネユキの行動は早かった。
ほぼ着の身着のままの状態で荷物をまとめると彼は件の調査船へと乗り込み、一路『最果ての島』への航路を取ったのである。
斯様にして希望に満ちた出立ではあったが……唯一の誤算は渡航日当日の天候を考慮しなかったことであろう。
島へと向かう航路は、折りからの悪天候によって荒れに荒れた。
時折り船窓から眺める外の海は朝方だというのに夕暮れさながらに暗く不明瞭で、そんな海が時折り轟く稲光に照らされると、まるで山脈を思わせるかのような高い波が船首に聳え立ってはミネユキを不安とさせた。
これに関しては船の操縦をする教授も例に見ない時化(しけ)であることを誰に言うでもなく呟いては、いつしかミネユキとの間に会話も無くなっていく。
後に聞いた話ではあるが件の島の周辺は潮流が激しく、ここへ船で辿り着ける者はそれなりの経験と技術を身につけた航海士や船乗りでないとこの海は越えられないのだという。
それに加えてこの悪天候である。それでもしかし──不安を感じつつもまだ、この時のミネユキはどこか楽観的であった。
今までに死に直面するという経験がなかった彼には、どんなに過酷な環境であっても最後に五体満足で島へ辿り着けると信じて疑わなかったのだ。
そしてそんな若者の人生観は、この日覆させられることとなる。
午前6時32分──連絡船は島まで残り数キロの地点で、転覆をした。
『ミネユキ君……救命胴衣をしっかりつけておいてくれ。もしかするとマズいかもしれん……』
舵に付きっ切りの教授がもはやミネユキを顧みることは無かった。
その視線は左右へ大きく揺れる船首を見据えつつ、同時に島への無線では救援隊の要請を打診していた。
この段に至るともはやミネユキには何も出来ることなど無い。ポケモンではない人間はこういう時、何と非力なものかと不条理に神など罵ってみせる。
そしてその10分後──下へと向いていたはずの重力が突如として右へと落ちた。
瞬間、船内の照明が激しく明滅した後に暗転すると船はそれまでの揺れが嘘の様、穏やかに静止した。
しかしながらこれはけっして安心できる状況などではない。この状況における静止とはすなわち──船そのものが海底へと沈み始めているに他ならないからだ。
「き、教授!」
『く……隣の部屋へ移れぇ! 貨物室ならば、いくらかでも浸水が防げる』
掛けられるミネユキの声に、教授もまた後方のドアを指差した。
見れば前方のフロントガラスは大きく大破して大量の海水が流入している。おそらくこのままでは数分と持たずにこの操舵室は海水に満たされてしまうことだろう。
ならば逆転の発想として、海水が流れ込んでいるそこから船外へ出られないかとミネユキも提案してみるも、船内に流入してくる海水の圧は強力で、到底それに逆らって出ることなど叶わない。
このままここに留まっていてはいずれ海水に飲まれジリ貧となる。
もはや二人は操舵室後方の貨物室へと逃げ込むより他はなかった。
まだ海水が船内に満ち切っていなかったことが幸いし、どうにか隣室への移動は出来た。
そこから浸水パッキンが施された鋼鉄製のドアを閉じ、さらには圧に負けないようバルブ式のラッチを締め上げて施錠すると──とりあえずミネユキ達は一時の安堵を得ては、深くため息をついた。
しかしながらこの行動はけっして賢いものとは言えない。
荷物置き場となっているこの個室には窓の類は一つとして見当たらない。
浸水が無くなったとはいえ、このまま沈み続ければ救助の見込みなど無くなってしまうし、それ以前にこの室内の酸素を消耗しきった時点でミネユキ達の窒息は確定するのだ。
「どうして……こんなことになったんだ」
どちらともなく思わず独り言ちては教授と二人、ミネユキ達は自身の運命を呪う。
最後の瞬間を冷たい海底の底で迎えなければならい状況に、思わず泣きだしてしまいたい衝動に駆られたその時──ミネユキは次なる常識の埒外となる状況に遭遇することとなる。
その瞬間、さながら花火のよう目の前に眩い閃光が閃いた。
突然のそれに理解が追い付かずただ見つめ続ける中、それは次第に何者かの生物の輪郭をそこに作りだす。
やがてそれが完全に一個のポケモンの形へと固定されるや、
「──大丈夫ですか!? 助けに来ましたよ!」
目の前のポケモンは聞き違えようもない人の言葉を以てミネユキに救助の胸を伝えた。
続けてそのポケモンは、
「ボク、ティニって言います。いま外には頼りになる救援隊が来てくれてますよ!」
そうミネユキに告げてみせると、ずぶ濡れに耳の先を湿(しと)らせたその顔に気丈な笑顔など見せてくれるのだった。
瞬時にして全身が強く硬直する感触に、瞬間ティニは意識を朦朧とさせた。
この時はもはや『寒さ』すら感じられない──テレポートの危険性はまさにそこにある。
脳や心臓を始め、そこに直結する主要な血管その全てが瞬時して冷却される衝撃は、もはや他に比較しようもない極寒地獄の中へとティニを飲みんでいた。
それでもしかし、ティニは意識を強く保つと辛うじて失神を踏み止まる。
この瞬間、彼の小さな体を滾らせていたものは人命救助への使命感であると同時、初めて心を通じ合わせたチームに対する責任感でもあった。
こんな過酷な環境の中において、場違いにもティニは自身の人生を振り返る。否、それはもはや凍える脳が見せる走馬灯であったかもしれない。
過去にティニは自身の中に秘められた過大なエネルギーを利用されては、災禍の中心として大勢を戦役に巻き込まざるを得なかった過去を持つ。
彼を利用したいずれの人種も、そしていずれの時代も皆口々にティニを『勝利の象徴』や『力をもたらす存在』として囃し立て崇め奉ったが、所詮ティニの役割は皆を不幸にするエネルギーの発生源でしかなかった。
誰一人としてティニを『ただのビクティニ』として扱ってくれる者はおらず、そうした装置として扱われ続けた過去は今も大いなトラウマとなってティニを苦しめている。
しかしそんな自分が今日初めて、一個のポケモンとして認められそしてその力を発揮できる機械に恵まれたのだ。
打算に満ちた身勝手な期待なのではなく、仲間として純粋な信頼を寄せてくれたむらまさ達のことを思う時、ティニは血肉が滾り無尽蔵のエネルギーが胸に満ちるのを感じた。
それは破壊の神として崇められていた頃にはけっして感じた事のないものであり、この冷たい深海においても彼を動かしてくれる原動力そのものだった。
──絶対に成し遂げる……今度こそ、ボクが誰かを助けるんだ……!
その思いを漲らせることで、ティニはトラウマであった過去の残影もまた振り払う。
明瞭とさせた視線を周囲へ巡らせると、まず最初に目へ入ったのは円形の舵輪とその前方で砕け散ったフロントガラスの惨状であった。
どうやら最初にティニが辿り着いたのは操舵室であるらしい。
最初の一回で辿り着ければと期待したが、そうも事は上手くいかない。
ならば次の部屋へのテレポートを敢行すればよいとも思われるだろうがしかし……この時、ティニの呼吸は限界に近かった。
肺は破裂しそうなほどに横隔膜を膨張させては、無意識に息継ぎを求めている。
そこへ技による体力の消費を考えた時、テレポートはあと一回が限界と思われた。
──ここに居ないとなるとどこへ避難したんだろう? 外に出されていればむらまささん達が見つけてくれるはずだけどそれも無い……
肉体的限界に精神が影響を受けては混乱に陥りそうになる衝動を辛うじてティニは抑える。
そうして今一度冷静に船室を見渡したティニは──操舵室の出入り口とはまた違うもう一つの扉の存在に気付いた。
──あの破けたフロントガラスから外に出られなかったってことは、従来の出入り口からも外に出られたはずがないんだ。だとしたら、あの人達が逃げ込む場所はもう……ここしかない!
ティニは最後の賭けに出る覚悟を決める。
そうして目の前に見据えたドアの彼方へと転移するイメージを強く心に念じた次の瞬間──テレポートを果たしたティニは、今まで存在していた空間とは比べようもない暖かな空気を全身に纏った。
その感覚に困惑すると同時、非常灯が僅かに照らす薄暗がりの中においてこんな自分を驚愕の面持ちで見下ろしている二人の人間を確認する。
僅かだがそこには酸素があり、そして二人の生存を確認した瞬間ティニは自身の賭けに──今日まで続いてきた負の人生に対して、ようやくに区切りを付けられた心地がした。
しかしながら斯様に個人的な感傷に浸っている時間は無い。
ティニは図らずも自分を腕の中に抱く形となったボサボサ頭の紺髪の青年へと自分が助けに来たことを伝える。
そして最後の力を振り絞り声を張り上げると──
『むらまささん! ムラクモさん! ここです! お願いしますッッ‼』
ティニは最後の力を以て、自分達の現在位置を知らせるテレパシーを外部のむらまさとムラクモに送り……やがては完全に力尽きては気絶した。
その一方で──船外において、むらまさとムラクモは確かにティニの言葉を受け取った。
脳内には船を透過したイメージと共に、貨物室にティニを始めとする二人の人間が存在している映像がハッキリと刻み込まれる。
海中において直立不動の姿勢を取り、奇しくも腕組みに瞑想という同じ姿勢で待機していたむらまさとムラクモの眼が、この暗き海底において燃えるように瞠目される。
「ティニ……確かに、受け取ったぜ!」
次の瞬間、腕組みを解くや水中下の抵抗すら感じさせぬ機敏さで両の腕(かいな)を旋回させるや──むらまさはその両手にした巨大なアシガタナ二本を、眼前において打ち合わせては暗黒の深海に火花を散らせる。
さらに沈没船を隔てた反対において腕組みを解いたムラクモもまた、
「……ティニ、お前は誰よりも強い奴だ。ならば及ばずながら、ワタシも矜持を見せよう!」
右肩の高さにおいて両手に握りしめたアシガタナの一刀を振り被るや、己が邪神を振り払うかのようそこから振り下ろした剣先を宙空へ留めては、見せつける様にして切っ先に生じさせた閃光を漆黒に煌めかせるムラクモ。
そして次の瞬間──期せずして二匹の獣は咆哮を轟かせながらに海流を貫き、互いの位置を交換するかの如く沈没船を中心に交差した。
両のアシガタナを袈裟に振り抜き首を垂れるむらまさと、そして片膝を立てては打ち抜いたアシガタナの切っ先を足元に落とした姿勢のムラクモ。
そこからすくと立ち上がる二人はもはや、互いが背にした沈没船を振り返ることも無い。
ただそれぞれの獲物を天に掲げ、刃の穢れを払うかのよう一振り打ち落としては残心を解いた瞬間──沈没船は見事に貨物室のティニとミネユキを避けてはその身を細切れ分断させた。
予想外の出来事が起きた──
沈没船がむらまさとムラクモの挟撃によって分断された瞬間、船は爆発然として海中に船内の空気を四散させた。
さながら闇夜に咲いた百合の如くに白い気体の泡を八方へ飛び散らせた理由こそは、二人の斬撃が完璧すぎたことに由縁する。
船内に海水が満ちてからの分断であれば空気の漏洩も穏やかだったのだろうが、瞬時にして解体されたことにより急激な圧に晒された空気は爆発するかの如き上昇をそこに果たしたのであった。
それを目の当たりにしムラクモの脳裏をよぎった不安は、それによって中に封じ込められていたティニ達に生じるであろう負荷である。
即座に冷静さを取り戻すやムラクモは注意深く爆ぜ散った気体の挙動を観察する。
そしてその中において、
「………いた! むらまさ! 三時の方向に一人飛んでいった、確保してくれ!」
「ッ!? 応ッ、任せろッ!」
ムラクモからの言葉にむらまさもまた即座に指示のあった方角に人影を見定めるや、海流の中で流線型に保った両脚を一打ちしてはそれに追いつきそして抱き留める。
見ればそれは沈没船を運転していた教授であり、この時は既に気絶をしていた。
一気に気圧が変化してしまった事と、さらにはこの海流の冷たさに肉体が耐えられずに一時的な意識のシャットダウンが起きたのだ。
幸いなのは気絶に伴いあまり水を飲まずに済むことだが、それでも人間の身にこの環境は厳しい。一刻も早く海上へ上がらなければならないことは必須であった。
かくしてむらまさが教授を保護したのと同じくして、ムラクモまた正反対に弾き飛ばされた人影を見止めては即座にそれを確保する。
腕の中に見下ろした人物は20代と思しき青年であり、こちらも瞼を閉じた顔を無表情に弛緩させては完全に意識を失っている様子であった。
かくして当初の人命救助は果たした二人ではあるがしかし、この時のむらまさとムラクモは最大級の不安と戦慄に苛まれてもいた。
この二人を以てして平常心をかき乱す理由それこそは──
「ティニがいない……!」
どちらともなく呟いたそれ……ティニがこの場に居ないことにあった。
いかにティニがポケモンとはいえ、当然ながらこの過酷な環境下において生き延びられる術はない。
呼吸困難による窒息か、あるいは海流の冷気に晒されることで引き起こされる心臓麻痺で命を落とすだろう結末は人間もポケモンも変わりはないのだ。
そして運命はこの時、残酷な選択を再びムラクモへと迫るのである。
前方数メートル先に──ムラクモはティニを見つけた。
その小さな体を弓なりに仰向けとしながら揺蕩う姿からは、彼が完全に意識を失っていることが見て取れた。
当然ながらその覚醒を促すべくに声掛けなどもするが、眠るかのよう閉じられた瞼は微動だにする気配も無い。
それを目の前にし、ムラクモは激しい葛藤に駆られる。
一刻を争う事態に見舞われているのはあのティニだけに限らず、今この腕に抱いているミネユキも同様であった。
一刻も早く浮上しなければ今度は彼が死ぬこととなる。それでは意味が無いのだ。
そして同時、この時ムラクモの心にはある種の闇が湧き上がっていた。
今この身を包む深海の色よりも更に暗く淀んだその色……それこそは、
──この人間を見殺しにすれば、ティニは助かる………
見開かれたその目は射貫くほどに腕の中のミネユキを見つめた。
そして次の瞬間ムラクモは、
「…………許せよ」
ミネユキを抱き直すと、浮上を始めた。
いま腕の中にいるミネユキは、ティニが成し遂げた成果であった。
彼らを助ける為に体を張ったティニの想いを汲んだ時、これを無下にしてしまう行動こそが最もティニを悲しませ、そして侮辱する行為だとムラクモは理解する。
あの小さな勇者を認めればこその決断であるのだった。
しかしながら往々にして予測外の出来事は重なるものである。
ミネユキを抱くムラクモ胸から伝わるティニへの熱と想いはこの時、不思議な作用を以てミネユキにも伝播していた。
──あの子が……死ぬ………
仲間(ティニ)を助けられないことの葛藤と切望、それでも自分を救おうと動いてくれるムラクモのそんな思いが肉体越しにミネユキの体へと流れた瞬間──この冷たい海流の中においてミネユキは覚醒を果たす。
「そんなの……いけない!」
そして次の瞬間──人の膂力とは思えぬほどの力強さを以てムラクモの腕からすり抜けるや、ミネユキは目下のティニに向かい敢然と潜水を始めた。
その動きたるや完全に人間の運動能力を超越したものであり、身を流線型に保って進んでいく瞬間的な潜水速度は、もはやダイケンキのそれを越えたるかとも思われたほどだ。
とはいえいかに驚嘆の身体能力見せようとも、その肉体が環境に弱い人間のそれであることに変わりはない。
酷使される肉体に比例するよう心臓は、過度のパンプアップを繰り返してはミネユキの視界を幾度となく霞ませる。
「まだだ……あと少し………もうすこし、だけ……!」
そして数度目の目眩の後、眼前に捉えていたティニの姿がより鮮明に──そして求めてやまなかったその小さな体を視界に捉えたその瞬間、
伸ばされたミネユキの右手は今、ティニの手を取った。
同時に、ミネユキもまた意識を失う。
ここに至るまで肉体を酷使した代償はやはりミネユキの命を以て贖わなければならないようであった。
最果ての島で最後を迎える……そんな想いが瞬間脳裏をよぎったが、それでもミネユキに後悔は無い。
死の恐怖を上回る達成感と、そして引き寄せた腕の中に抱くティニに確かな命の灯火を感じ取っては大いに安堵もした。
あの瞬間ミネユキを動かしたものは単なる正義感や恩人への義務感だけではない。
ムラクモの胸の抱かれたミネユキはあの時、言いようもない彼の過去と無念とを共有したのだ。
それこそは大切な人を救うこと叶わなかった贖罪の念──それがミネユキに力を与え、そしてそれを成し遂げた事のより、見も知らずのはずのムラクモの心もまた救った確信がミネユキの胸には温かく満ちていた。
そうして意識を失う直前、いよいよ以て全てが終わろうとしたその瞬間、
「……人間というのは、恩に報いる事すら許してくれないほど傲慢な生き物なのか?」
その声と共に、再び力強い力に抱かれるのをミネユキは感じる。
そしてもはや瞼を開くことさえ叶わないその中においてもしかし、ミネユキはその人が自分へと掛けてくれる声を確かに聞いた。
あの嵐より三か月後──……
『センセイ、頭痛薬を煎じてほしいんだけど……』
『ミネユキ! カミさんが産気づいた! 早く来てくれ!』
「お、ミネユキ。この間の精力剤、また作ってくれよ」
島の町において、ミネユキは多忙の日々を送っていた。
あの事件後、予てからの希望によりミネユキは島への在留を決意する。
当初は目的通りにフィールドワークをしながら研究などして過ごそうと考えていたミネユキではあったが、その薬学に関する知識を買われては日々島民の『薬師』として奔走する日々を送っていた。
というのもこの島には明確な『医者』やそれに準ずる施設などといったものが存在せず、島民も体調不良の際には効果の期待できぬ民間療法によって煎じた薬(らしきもの)を服用して凌いでいたという有り様であった。
そんな場所においてこのミネユキの登場である──当てにされぬわけもない。
当初の役割通りの薬の調合は元より、外科や内科の診療、果てはお産の手伝いに至るまで、もはや彼はこの島には無くてはならない存在として迎え入れられつつあった。
「ごくろーさま、ミネユキ♡」
この日も深夜近くまでの診療を終えて帰路に就くすがら、ふとカミナリの尻尾亭から光が漏れているのにつられては無意識に中へと入ってしまった。
当初はすでに閉店していることも承知していたから、軽食でもテイクアウトできればと思いティニへ声掛けなどしたところ、存外に暖かく迎え入れられては腰を落ち着かせる運びとなった。
『外の戸は絞めちゃったけど、ミネユキさんはゆっくりしていっていいからね』
店のオーナー夫婦でもあり、看板娘ならぬ名物女将のピカチュウ・カリンはそう言ってキッチンへと下がると、それと入れ替わるように出てきたビクティニがトレイの上の飲み物をミネユキのテーブルへと置いた。
マグカップに満たされた深いブラウンの色合いのそこからは、その香りを吸い込むだけで心が解れるような甘い湯気が立ち上がっていた。
進めてくるティニに会釈などしてそれを一口すすると……口中に広がる濃厚な甘みと風味豊かな苦みの味わいにミネユキは大きくため息をつく。それはティニ特性のホットチョコレートであった。
しばし疲れた体に甘未を染み渡らせていると、深夜という事も配慮してかティニはサンドイッチにポトフといった軽食を運んできた。
空腹も手伝いミネユキもまた瞬く間にそれを食べ終えると……
「そういえば、もう体の方は大丈夫なのかい? ティニ」
食後のコーヒーを啜りながら食器の下げに訪れたティニへとミネユキは何気なく声を掛けた。
あの事件の直後、このティニとミネユキはしばらく目を覚まさなかった。
それでもミネユキが先に回復をし、意識が戻った彼は改めて自分達を助けてくれたむらまさやムラクモ、そしてリュヌを始めとする島民へ礼を述べると、その恩返しも兼ねてティの看病を申し出たのであった。
その際に様々な薬を調合したことからミネユキの評判は町中に広がり、今では欠かすことの出来ない『町の薬師さん』としての役割を得るに至っている。
「ボクはもう大丈夫だよ。それよりミネユキこそ平気なの? ずっと髪の毛、元に戻らないじゃん……」
「あぁ、これ? 何だろうね……体の方はまったく問題ない感じだけど」
テーブル上を経てミネユキの胸に飛び込んでくると、そこからティニは不安げにその顔を見上げてきては更に前髪にも触れた。
あの一件以降、深い紺色(しょく)であったミネユキの頭髪はその裾だけが銀髪に変わってしまっていた。
こればかりは体質変化に伴う結果のようで、どんなに髪を切っても、また伸び始めるとその毛先だけが必ず透明感のある銀髪に色が抜けてしまうのだった。
「やっぱおかしいかな?」
「ううん、すごくキレイだよ」
ボサついた自身の前髪を引っ張ってきてはその毛先を確認するミネユキが何やら滑稽で、その仕草にティニもコロコロと笑った。
そんな矢先──突如として二人だけの場にけたたましい振動音が鳴り響いた。
何事かと思い音の発生源を探るや、それは既に施錠した入り口から響いてきているのが分かった。……どうやら何者かが外からドアを叩いているらしい。
思わぬそれに緊張が走る中ミネユキは立ち上がると、後ろ手にティニの前へ掌を広げては、そこに留まるようジェスチャーなどする。
そうして依然として激しく打ち鳴らすそれを、乱打の間隙を縫って開け放った瞬間──
「うおッス! 一杯飲ませてくれやー!」
ドアを叩いていた時の勢いそのままに店内へとなだれ込んできたのは誰でもないむらまさであった。
「……すまない。一杯だけ飲ませたらすぐにつまみ出す」
次いでムラクモが後に続き……
「こんな遅くまでこき使ってもう……鳥目じゃ帰るに帰れないじゃない」
さらにリュヌが入店してくると、期せずして店にはあの日のメンバーが一堂に介したのであった。……聞くにムラクモもリュヌも、むらまさの仕事に付き合わされてはこの時間になってしまったらしい。
そんな中、先客であったミネユキにも気付くとむらまさは楽しげに隣に座っては無遠慮にもビールなど注文する。
さらに挟み込むよう隣にはムラクモが座り、そして正面の席にはリュヌまた陣取ると、もはや問答無用に酒盛りが始まってしまうのだった。
もはやこうなってしまっては追い出すことも叶わず、しまいにはティニもまたそこへ参加して、宴は朝まで続くのだった。
気の置けぬ仲間達と吞んで、食い、そして歌えるこの瞬間を誰ともなく幸福に感じた。
誰もが様々な事情や苦悩の果てに集まったこの島──しかしいつしかそこは大切仲間のいる、何よりも掛け替えのない場所へと変わっていた。
最果てなどと呼ばれるここはけっしてピリオドの打たれるべき場所ではない。むしろ傷ついた者達を癒し、再生のさせる為の場所であるのだと皆が思う。
そしてこれより始まる人生があり、新たな冒険があるのだとするのならば──
願わくばまたこの仲間達と共に迎えたいと皆は願い──盛大に乾杯などをしては、掲げたジョッキを打ち鳴らすのであった。
【 最果ての島・完 】
(50音順)
ティニ
【 名前 】
・正式名 : ビクティニ
・名称 : ティニ(同種がいない場合種族名)
・一人称 : ボク
・二人称 : さん付け、親しい間柄には呼び捨てする事もあり
【 種族選択 】 : ポケモン・ビクティニ
【 性別 】 : オス
【 年齢 】 : 人間の精神年齢換算で14歳程度 ショタ
【 口調 】 :03 ですます口調 素でいる時は09 子供っぽい口調
【 身長と体格 】 : (300文字程度)
0.45m 図鑑に記載されている高さよりちょっぴり大きい。
【 身体的特徴と性格 】 :
毎日一回は誰かにモフられる程度には身体がモフモフしている。
食べることが大好きで、いつも何かしらを頬張っている事が多い。
基本的に礼儀正しく、また元気で明るい性格でニコニコとしていることが多い。しかし雰囲気に反して自己主張自体は少なく、また謙遜もするため場合によっては少し大人びていると言われることもある。
が、心を開いた相手に対しては精神年齢相応の口調になり、行動も甘え気味になりがち。
また、信頼している相手からの押しにめっぽう弱く、例え恥ずかしい事であろうとドキドキしつつ受け入れてしまう程度。
好奇心旺盛で、島の色々な所を見て回りたいと考えている。
【 職業 】 :接客を中心とした店番
【 過去と来訪の理由 】 :
自身と自身の中にあるエネルギーを巡って、大勢を巻き込んだ争いの中心になってしまったことがあり、それが大きなトラウマとなっている。
そのため自分自身を「勝利の象徴」や「力をもたらす存在」としてではなく『ただのビクティニ』として必要としてくれる存在を求めて島にやってきた。
上記の理由のため、自分から力を発揮しようとはしないし、余程の緊急事態でもなければ誰かから求められても断る。また、そういう頼み事をしてきた相手には距離を取る。
そして、自身がバトルに出ることを忌避する傾向にある(見るのは好き)。
【 島での役割と過ごし方 】 :
自身の容姿を活かして、いわゆる看板娘のような役割をこなすことが得意。
また、カフェのスタッフの経験から多少のお菓子作りにも慣れている。得意なお菓子はチョコレートを使った物。
客からは祖父母が孫にするような感じで可愛がられることが多いが、稀にショタコンから変な目で見られることがある。しかし、性にはまだ疎いためそれに気づくことはない。
休みの日は島巡りと食べ歩きを兼ねた散歩をよくしている。また、心が通じ合える存在を探している。
【 参戦作品 】
オリジナル
・作者
葉月綿飴
ミネユキ
【 名前 】
・正式名 : ミネユキ
・名称 : 特に指定なし
・一人称 : 僕
・二人称 : さん(男女問わず)
【 種族選択 】 :人間
【 性別 】 : 男
【 年齢 】 :20歳前後
【 口調 】 :03 ですます調
【 身長と体格 】 : 182cm 少し体格が良い
【 身体的特徴 】 :ボサボサの毛先が銀色になっている紺髪、フィールドワークが多いため全体的に筋肉質で体格が良い。
【 職業 】 :薬師
【 過去と来訪の理由 】 :
新たな土地への調査隊として学生ながら同伴させてもらったが、道中で船が難破し、一人漂着。
一時は知人の死や未知の土地への漂着で絶望しかけたものの、喋るポケモンや見た事のない動植物の数々に楽観的な性格と好奇心とが合わさって、島で生きていくことを決める。
【 島での役割と過ごし方 】 :
普段は島の動植物の採集と研究を行っており、持ち前の好奇心と高い記憶力で集めた植物から様々な薬を作って売買を行っている。
暇さえあれば探索に出掛けるので基本的に身だしなみが整っていない。
基本的に誰とでも友好的で会話していて楽しいが、少しでも相手が興味がある素振りを見せると興奮気味に早口で喋りだしてしまうため「気になる」は厳禁。
【 参戦作品 】
オリジナル
・作者
けもにゃん
ムラクモ
【 名前 】
・正式名 : ムラクモ
・名称 : ムラクモ
・一人称 : ワタシ
・二人称 : 名前を呼び捨て
【 種族選択 】 : ポケモン・ヒスイダイケンキ
【 性別 】 : オス
【 年齢 】 : 若い
【 口調 】 :01: 一般的な男性口調
【 身長と体格 】 : ヒスイダイケンキとしては平均的。精悍に鍛えられている。
【 身体的特徴 】 :
特徴的な見た目はなし。
ただ、ゴーストタイプなどの霊感が強いポケモンからは、血に塗れているような錯覚を時折覚えさせる。
【 職業 】 : 木の彫刻職人
【 過去と来訪の理由 】 :
ヒスイ女主人公の最初のパートナー。
主人公が追放された後に、主人公の懇願に従ってやりのはしらでデンボクに勝利した後、デンボクを殺害し、そのまま主人公を連れ去る。
その後、追ってきたムベ、プレートを集めていたウォロも返り討ちにする。
しかしウォロ、ギラティナとの死闘の末、主人公が瀕死になり、自身以外のポケモンも全て死亡する。
主人公とは肉体関係にもあり、どうにか回復しつつあった主人公と久々に性行為をした翌日、主人公も冷たくなっていた。
その後ユクシーにヒスイに関する全ての記憶を消して貰った上で、自分の事を誰も知らない場所へと飛ばして貰った。
【 島での役割と過ごし方 】 :
他の人やポケモンと基本関わらずに、ひたすらに木を切って彫刻を作っている。
作るものは基本自身が目にしたものばかりだが、ヒスイに関わるものが目に留まる事が多く、必然とそういうものを多く作っている。
ぶっきらぼうで無愛想。危ない雰囲気はゴーストタイプでなくとも多少感じられているようで、近付く者も少ない。
記憶は完全に飛んでいるし、思い出す事もないが、思い出さない方が良いという事は理解しているし、思い出そうとも思っていない。
まだ若いが、年老いたような風貌を見せており、また将来どうなりたいなどという意志は何一つとしてないまま、日々を徒然と生きている。
そんな退廃的な生き方は、ヒスイ主人公の望みを叶えた結果から来る後悔の感情、教訓が体に染み付いている事が原因で、問題を暴力で解決しようとした者の前にふらりと現れると、得意の剣術と殺す事に何も思っていない、淀んだ目つきで脅してくる。
にらみつけるで防御3段階、攻撃6段階、素早さ2段階落としてくるような感じ。
【 参戦作品 】
『 Overwrite 』
・作者
ムラムリ
むらまさ
【 名前 】
・正式名 : むらまさ
・名称 : むらまさ
・一人称 : 俺
・二人称 : あなた(目上)、お前(目下)
【 種族選択 】 : ポケモン、ダイケンキ(原種)
【 性別 】 : オス
【 年齢 】 : 人間換算22歳
【 口調 】 :01 ・ 一般的な男性口調 : 『〜だ、〜だろうか、〜か?』
【 身長と体格 】 :
高さ180cm(四足歩行時の頭頂部まで。兜の角は含まない)、重さ153.3kg
筋骨隆々。後ろ足で立ち上がると見事な逆三角形。重いアシガタナを二刀流で捌くバトルスタイルを貫いたら必然的にマッチョになった。
【 身体的特徴・性格 】 :
立派な髭と日々の鍛錬の賜物たる逞しい肉体、少し堅い口調によって、実年齢に似つかわしくない貫禄と威圧感を放つ。故に壮年と勘違いされやすいが、自身はさほど気にしていない。
筋骨隆々ではあるが皮下脂肪もあるため水には浮き、ある程度寒さに強い。
性格は真面目で、日々の鍛錬は欠かさない。売られた喧嘩は買う主義。因みにバトルの実力はかなり高い。過去の経験から男色に目覚めてしまっている。
【 職業 】 : 大工
【 過去と来訪の理由 】 :
幼馴染のヒスイダイケンキ、こてつに様々な意味で敗北を喫したことがきっかけで故郷を離れ、リベンジすべくこてつを探して放浪するうちに最果ての島へと辿り着く。
元々すぐに離れるつもりではいたが、連日の荒天で動けず、その間に島の住民を手助けしたことを機に、島に残るよう説得されて今に至る。
島を訪れるまでは手に職を持たずバトルに身を捧げてきたが、生まれ持った身体能力とアシガタナ捌きが島の大工の棟梁の目に留まり、図らずも大工の道へ。案外性に合っていたからか一年経たずに見習いを卒業し、今は棟梁の弟子の一匹として建築、修繕に精を出す。
現在の生活を始めて1年程経つ。
【 島での役割と過ごし方 】 :
海洋エリアに在住し、大工仕事が生活の中心となっている。棟梁の指揮下ではあるが、木材の切断・加工と資材運搬を主に担い、特に前者は棟梁のお墨付きを得る程に。
毎朝の鍛錬はこの島でも欠かさず、仕事のない日は腕が鈍らないようバトルにも勤しむ。一方でその見た目から、夜は「ソッチ⚣」の意味でも名が知られているとか。
自身は島での生活をそれなりに楽しんでいるようだが、それでも一日たりともこてつを忘れる日はなく、機を見て島を出ようか、あるいはこてつがこの島にやって来ないか思いを巡らせている。
【 参戦作品 】
『 秘剣、菊花に散らされ 』
・作者
P-tan
リュヌ
【 名前 】
・正式名 : リュヌ
・名称 : リュヌ
・一人称 : 私
・二人称 : あなた
【 種族選択 】 : ポケモン・オオスバメ
【 性別 】 : メス
【 年齢 】 :
人間でいうと、肉体的には20代後半
精神的には30代後半くらいの風格がある
【 口調 】 :02 ・ 一般的な女性口調 : 『〜よ、〜でしょう、〜なの?』
【 身長と体格 】 : 70cm・オオスバメとしては標準
【 身体的特徴と性格 】 :
身体的には標準的なオオスバメ。若干、目元は柔和な印象がある。
別の世界でタマゴから生まれたケムッソを育てていたこともあり、母親気質がある。
基本的には面倒見がよく、社交性も高い。暴力的なことも基本的にしない。
だが、仲間や幼い仔を傷つけたりすると守るために、我を忘れるくらい必死になって攻撃を仕掛けてくる。
そこまで一般的な野生の生活をしてきていないため、世間知らずな一面もある。
自らの名前「リュヌ」については、仔であるケムッソに名付けてもらったため、非常に思い入れがある。
【 職業 】 : 森のパトロール
【 過去と島来訪の理由 】 :
何をすることもなく、1匹で淡々と暮らしていたが、
偶然見つけたポケモンのタマゴからケムッソが生まれた時、食欲の本能とは別の感情が生まれ、母親代わりとして育てることに。
仔育ての中で愛という感情を知ったリュヌは、最後は仔であるケムッソを鳥ポケモンから身を挺して守り抜き、そのまま息絶えた。
と思われたが、今回は転生によって『最果ての島』で目覚めた。
何故生きてこの島で目覚めたのかは、彼女自身も分かっていない。
息絶えるまでの記憶は明確に覚えているが、身体に関してはその時の傷などは一切残っていない状態。
【 島での役割と過ごし方 】 :
この島の森を見回り、困っているポケモンがいれば助けに向かうパトロール活動をしている。
以前の記憶も残っているため、仔ポケモンや虫ポケモンたちに対しては特に慈愛に満ちた行動を取る。
反対に襲われた同種の鳥ポケモンには若干の苦手意識を持っているが、この世界は別物であると考えて分け隔てなく接するようにしている。
人に対しても無意識の内に苦手意識を持っている。だが、打ち解ければ問題なく愛情を持って親しげに接する。
時々、元の世界で育てていた仔のケムッソのことを思い出して、寂しそうな表情を見せたりする。
【 参戦作品 】
『 タベラレル愛を知って 』
・作者
からとり
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