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ハイパーピーナッツバターサンドはバナナの香り の履歴(No.1)


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「いっただっきま~す!!」
 励声一番、嘴でバゲットを裂く。
 香ばしくも硬い表皮を破ると、ふんわりと柔らかな生地が口内で躍り、染み込んだ味が舌を蕩けさす。
 まずは料理名の由来である、ねっとりと濃厚なピーナッツバター。
 重ね塗られたモーモーミルクバターによって、深みが更に増している。
 プチリと弾けて酸味のアクセントを加えるのはベリーのジャム。
 そして何と言っても、バゲットの奥に挟まれていたバナナスライスの爽やかな甘味が、口内から脳裏まで白く浸透していく。
 ハイパーピーナッツバターサンド。我がトレーナーの手料理の中でも一番人気と聞いちゃあいたが、噂に違わぬ素晴らしい美味さだ。一口貪る度に、身体の奥底から活力が熱く沸き上がってくる。
 ……なるほど。
 そっちの効果が謳われるわけだ。
 頬張ったバゲットを噛みしめながら、隣に羽を並べて同様に皿を啄む相手に目をやる。
 初見の印象ではクールで凛々しい雰囲気をまとっていた奴だったが、今やその表情はすっかり陶酔に融けちまってる。
 熱を帯びた切れ長の眼差しが、ふとこちらに向けられて、意味深に微笑む。
 十万ボルトを浴びせられたような衝撃が、俺の鋼の羽に走った。向こうさんもヤる気満々だねぇ。へへ、堪んねぇ。
 荒ぶって弾む胸の前で、首から吊した葉っぱが揺れる。ハーブの香りとやらなんぞさっぱり感じねぇが、気を落ち着かせる効果を感じた気がした。
 あぁ、お楽しみはこの後だ。
 サンドイッチを食い終わったら、俺はこいつに……

 羽休めのやり方を、教えて貰うんだ。

 ☆

 少しだけ前の話。
 俺たちがいるのは、小高い丘の上に開かれた広場。
 見下ろす草原の先に、蒼天を高々と貫く長大な光の柱が立っていた。
 その源となっているのは、青草を割って聳え立つ結晶体だ。色は黒。しかし何故だか暗さは感じず、むしろ限りなく目映い夜空色の燐光を真上へと向けて放っている。
 俺の羽色も艶やかに光るガンメタリックが自慢だが、さすがにあの結晶には敵わねぇや、と素直に黒星を受け入れざるを得なかった。
 そんな神秘的な輝きを眺めながら、縞模様のマットを敷いた簡易テーブルを囲んで、俺はトレーナーから今回のミッションについて説明を受けていた。
「……つまり、あのレイドクリスタルに触れると、テラスレイドボスと呼ばれるテラスタルポケモンが居る結晶洞窟に転移するの。黒いクリスタルのレイドボスは特に強力で、『最強』のふたつ名で呼ばれているわ」
「えっと、レイドっていうのは攻め込むって意味だよな? そのボスっつったら攻める側のトップのことになるんじゃね?」
「それは『レイドリーダー』ね。用語でそういうことになってるんだからあまり気にしないでちょうだい」
 人間の言葉とはかくもややこしいものである。細かい経緯や理屈についてあまり理解できていなくても勘弁して欲しい。まぁ必要なことさえ分かってりゃ問題はあるまい。
 テラスタルってのは、個々のポケモンが潜在的に持つ『もうひとつのタイプ属性』を抽出して結晶化し身に纏う能力の事だ。かく言うこの俺も、種族としては飛行・鋼タイプのアーマーガアでありながら、格闘タイプというまったく違うテラスタル能力に目覚めている。
 野生でも希に、妖しいオーラを放つポケモンが、いきなり全身をキラキラに輝かせ、ド派手な宝冠を掲げて襲いかかってくることがあるが、テラスレイドボスの強さは格別で、トレーナー数名分の戦力で挑まないとまず敵わない。その代わり、打倒達成の暁には大量のお宝がゲットできるってんで、多くのトレーナーが手を組んで挑みにかかっている。それが『テラスレイド』ってわけだ。
「既に先行している人たちから提供された情報によると、レイドボスはゴリランダー。テラスタイプはノーマルだそうよ」
 ゴリランダー……ガラル地方原産の、太鼓の音色で植物を操る草猿ポケモンだったな。
「なるほど、草技使いが相手だから耐性で有利なアーマーガアが、テラスタイプのノーマルに合わせて、鉄壁テラスタルボディプレスで容易くノせる俺が選ばれたってわけか」
「選出した理由はその通りだけど、そう容易くは行かないわ。テラスレイドポケモンは鉄壁の効果を打ち消す波動を放ってくるし、今回のゴリランダーは自分の能力をビルドアップしてくる上に、飛行技のアクロバットまで使ってくるらしいの。格闘テラスの状態だと逆に弱点を突かれちゃうのよ」
「『最強』のふたつ名は伊達じゃないってわけか。羽が鳴るぜ」
「だからこっちとしては、テラスタルをしないままで波動の合間に鉄壁を築き上げ、テラスタルしたらアクロバットを放たれる前にボディプレスで一気に制圧する必要があるの。作戦の鍵を握るのは体力の確保よ。そのためにも、あなたにはレイドに入る前にこれからもうひとつ技を覚えて貰うわ。『羽休め』の技をね」
「羽休め? 地面に身を委ねて一時的に飛行タイプを打ち消す間、体力を一気に回復するってあれか。親から教わった覚えはないが、また技マシンでピピッと習得させてくれるのか?」
 俺の問いに、トレーナーは首を横に振った。
「羽休めの技マシンは、この地方では開発されていないの。大丈夫、うちの旅用ポケモンに羽休めの使い手がいるから、その仔から教えて貰えるわ」
 とトレーナーは、俺の首に紐で吊した葉っぱを括り付ける。
「物まねハーブよ。これを身につけていると、側にいる相手が使った技を覚えやすくなるの」
「ハーブねぇ。俺って種族柄、匂いとかいうのは全然判んねぇんだけど」
「嗅覚が無いポケモンでも、ハーブの効果は身体に染みるから問題ないわよ。それじゃ、出ておいで、フレガータ」
 手入れの行き届いた紅白のモンスターボールが開かれると、黒と黄色の羽色を纏うすらりとした鳥ポケモンが姿を現した。黄色い部分は両の翼と喉から胸にかけてで、特に胸元は電気の火花を散らして輝いている。
「偵察とポケモン捕獲を担ってくれてる、タイカイデンのフレガータよ。フレガータ、この仔は今回のレイドバトルに参加してくれる、アーマーガアのアルマドゥラ。羽休めを教えてあげてね」
「よろしく」
「こちらこそな」
 先端が鉤状に曲がった鋭い嘴の根本で、切れ長につり上がった眼を碧い眼を光らせるフレガータ。なかなかの美丈夫だ。
「さて、バトルの前に腹拵えにしましょう。せっかくだからフレガータも一緒にね」
 とトレーナーは、テーブルに皿を並べだした。
 用意された材料を見て、フレガータが眼を細める。
「ハイパーピーナッツバターサンド、ですか」
 ……ほう。
「そうよ。ノーマルテラスレイドバトルで見つかる宝物は、これを食べてると見つけやすくなるの。私の数ある得意レシピの中でも一番人気あるんだから、期待しておいてちょうだい」
「あぁ。先輩たちから噂には聞いてるよ……楽しみだな」
 ……なるほど、ね。
 本当に、楽しみだ。

 ☆

 かくして、俺ことアーマーガアのアルマドゥラは、タイカイデンのフレガータと二羽仲良く並んでハイパーピーナッツバターサンドを啄むことになったのである。あぁ、最高に美味かった。
「それじゃ、クリスタル前で待機中のトレーナーさんたちに連絡してくるから、その間に羽休めの伝授を済ませておいてね」
 と言い残して、トレーナーは席を立つ。
 疼く身体に急かされて、俺はすかさずフレガータの耳に嘴を寄せた。
「おい……まさか肩透かしってオチはつかねぇよな?」
「……私はつがい持ちだが」
 あちゃ、断られちまうか!?
 と戸惑う俺に、徒な笑みが向けられる。
「連れ合いとは何度もハイパーピーナッツバターサンドを一緒に食べたものだよ。丁度その連れ合いが出張中で、寂しい想いをしていたところでな……どうか内密に、な?」
「へへへ、心得た!!」
 マジキタコレ!
 ノーマルテラスレイドの収穫率アップなどただの口実。
 羽休めの伝授に至っては疑いの余地なく隠語。
 ハイパーピーナッツバターサンドの真の効能は、豊富な栄養と蕩ける食感が沸き立てる強烈な催淫力。タマゴを欲しがる恋ポケ同士なら事前に必食推奨の媚薬なのだ。
 カップルでいる時にこれをトレーナーから出されるということは『ヤっちゃっていいから、タマゴを産んだらバスケットに入れといてね』と言外に要求されたも同然だと、先輩たちから聞かされていた。そりゃ一番人気にもなろうってもんだ。
 しかし引き合わされた相手がまさかのつがい持ちとはね。アバンチュールってのはこのことかねぇ。
「お、俺、実はまるっきり初めてでよぉ……」
「ほほう、それはそれは」
「なるべく、お手柔らかに頼むぜ」
「ハハ、何も心配はいらないよ。優しく教えてあげよう。羽休めのやり方を、ね」
 囁きと共に、黄色い翼が広げられて、俺の身体を優しく包む。
 やべぇ。効果抜群の電気を放つ羽に抱かれているのに、全然痛くも苦しくもない。ただただ、暖かくて心地いい。
 何だか、俺自身がハイパーピーナッツバターサンドになって、フレガータの身体全部に咀嚼されてるみたいだ。
 身体の一番奥が、噛み潰したバナナのように、白く、白く蕩けていく。
「あぁ……っ」
「ウブな反応だ。可愛いものだね。フフフ……」
 はわぁ、こんな美形に可愛いなんて言われちまった……!
 心音が貝殻の鈴みたいにけたたましく打ち鳴らされ、鋼の羽に共鳴して戦慄の旋律を奏でる。
 尾羽の付け根が猛烈に燃え盛る。早く、フレガータのそこと触れ合わせたい……!!
「俺……もう我慢できねぇよぉ…………」
「頃合いだね……いい日和だ」
 見上げれば雲ひとつない蒼空。
 吹き抜ける風が、荒々しくも涼やかに羽を撫でる。
 あぁ。
 この空の下で、俺、これから初めてを散らすんだ……。
 迫り来る官能に陶然と蕩けた俺の前で、フレガータは、
「さぁ、ここで存分に羽を休めるがいい!!」

 と頭を下げて背を晒し、V字に切れ上がった尾羽を高々と掲げた。

 ……燦々と降り注ぐ日差しが、妙に暑苦しく感じる。
 硬直して固まった鋼の嘴をどうにかこじ開け、重苦しい息と共に、俺は……絶望を吐き出した。
「フレガータ……まさかてめぇ、雌……だったのか……っ!?」
「はぁ!?」
 碧い瞳をくわっと見開いて、フレガータは俺にくってかかる。
「何を失礼な!? 私に恥をかかせる気か!? いくら童貞だからと、て…………」
 吹きつける風が、やたらと鋭く冷たい。
 そんな風を浴びたフレガータの喉袋が膨れ上がり、激昂の雷鳴を轟かせた。
「貴っ様ぁぁっ!? 雌ならもう少しはそれらしい振る舞いをせんかぁっ!?」
「そっくりそのままミラーアーマーだよこのナベ鳥がぁっ!!」
 酌を求めて杯を差し出したら、どちらも徳利を持っていなかったと。酷ぇオチだ。
 いやもちろん雌だよ俺。乙女だよ。分かってなかったのフレガータだけだろなっなっなっ!?
「あんのドジっ娘トレーナァァァッ!? 性別ミスってカップリングしてどうすんだよ!?」
「文句を言っても無駄だぞアルマドゥラ。トレーナーが表向き言っていたことが、単純に丸々事実だったと言い訳されて終わりだ。我々が何と言おうと、色ボケの勘違いという濡れ衣を着せてくるに違いあるまい」
「何て理不尽な話だ! あんな媚薬を食わされたら、そっちの用件だと普通は思うだろうがよ!?」
「まったくだな!?」
「なぁ!?」
「…………」
「…………」
「……頼む、誰かツッコんでくれぇぇ~っ!? できれば物理的に!」
「ボケ倒しばっかじゃ漫才にもなんねぇぇぇぇ~っ!?」
 言い訳も濡れ衣も何もなく、正真正銘色ボケの勘違いだ。タマゴの用件などなかったから、作りようのない同性同士で組ませただけの話だろう。その気になって行為寸前まで至ってしまうなんて想像すらしとらんかもしれん。あぁ恥ずかしい。
「ったく、ここまで昂っちまったもんをどう解消すりゃいいってんだ!? そっちは旦那さんに慰めてもらえばいいんだろうけどよ」
「だから連れ合いは出張中だと言っておろう。帰ってくるのはまだ当分先だ……」
 がっくりと羽を落としていたフレガータの声に、
「……しかしまぁ、そうだな。どうせお互い、同族はモノの無いもの同士か。連れ合いは2本持ちなのだがな」
 不意に、暗雲が射す。
「は? ……っ!?」
 不穏さに振り返る暇もなく、鋼の羽に衝撃が走った。足腰から力が抜けて、芝の上に俺は突っ伏す。
「麻痺……電、磁波? そういやてめぇ、捕獲担当って……!?」
「背に腹は代えられんよ。この際貝合わせも悪くはあるまい」
 まともに身体を動かせない俺の尾羽をフレガータの曲がった嘴が咥え、強引に尻を引き立たせる。火照った恥部が烈風にまともに曝された。
「ひぃぃ!? 待て待て待て、何でそ~なるの!?」
「処女のお前が攻めでは、モノ持ちのつがいをもつ私を満足などさせられまい。貴様が雄だったら、モノがなくてもそれはそれで楽しめたのだがな。雌同士ということであれば、私が攻めを務める他あるまいよ」
「だからってこんな強引な!? 優しくしてくれるんじゃなかったのかよ!?」
「生憎同性相手にかける情けの持ち合わせなどない」
「旦那さんが帰ってきたら言いつけっぞ!?」
「言えるものなら言えばよかろう。雌に犯されて処女を奪われたなどと、恥じらいもなく言えるもなならばな」
「うぐぅ……っ」
 なんて卑怯な、セカンドレイプじゃねぇかと抗議したかったが、有効だから行使されるのだ、と痛感して嘴を噛み締めるしかなかった。
「観念したようだな。さぁ、潔く私を受け入れるがいい!!」
 水掻きが短めに張られた脚で俺の背中を捕らえると、フレガータは腰を落としてV字の尾羽を俺の尻へと突き入れる。
「ぐぎゃあぁぁぁぁ~~っ!?」
 俺の処女を、電撃が貫いた。
「あぐっ! ぁぐあっ! はぐがぁぁっ!!」
 親にも触れられたことのない秘奥が、効果抜群の脈動に荒々しく踏み荒らされる。麻痺した翼ではもがき足掻くことしか出来ず、突かれる度に押し出された喘ぎが嘴から漏れた。
「こんなロストバージン嫌だぁぁっ!? やめてくれぇっ、壊れちまう、おかしくなっちまうよぉっ!?」
「ウブな反応だ。可愛いものだな。フフフ……」
「はわぁ、さっきと違って全っ然嬉しくねぇぇ~っ!?」
 悍ましい感触が尾羽から背筋を遡って脳天まで揺さぶり、涙と涎が止めどなく溢れ出しては土に混ざって泥になる。這い蹲らされた屈辱と共に顔にまみれて、惨めさに引きずり込んでいく。
「もう許して、堪忍してくれよぉぉっ!? 酷、過ぎる、こんなの……」
「電撃を効果抜群に感じるのは」
 踏みつけている脚に力を込めて、フレガータが囁いてくる。
「貴様がそれだけ地に伏せられて尚、羽ばたいて逃げようとしているからだ。抗いたいなら寧ろ逃げるな。受け入れて受け流せ」
 …………ん?
「地に堕ちたことを屈辱と思うな。そこはお前を沈める沼ではない。支える足場だと見定めろ」
 え、あれ? これって、
「……あの~、もしかして、犯すついでに羽休めの指導とかしてやがります?」
「初めからそういう約束だったろう?」
「つか特訓じゃねえかこれじゃ!? 鬼しごきにも程があんだろ!? しごいてるだけにあっあっあっ!?」
「付け焼き刃で教えさせるのだ。身体の奥底まで叩き込んだ方が身に付くだろう。発情も発散できるのだから都合がいい」
「そっちにだけ都合が良過ぎね!?」
「やれやれ、嘴を開けば泣き言ばかり。アルマドゥラ、貴様は最強のポケモンに挑みにいく身であろう。試練を乗り越えんで役目が成し得るとでも思っているのか?」
「ぐ……っ」
 クソッタレ……癪には障るがフレガータの言う通りだ。弄ばれるだけの玩具のままでいてたまるか。いいだろう。羽休めの練習だってんなら、何としてもエロくしてやる!!
 ……いや会得だ会得。もうとっくにエロくはなってるだろ。麻痺のせいで思考まで呂律が回らなくなってやがる。こんな様で、一体どうすりゃいいってんだ……?
 ……む?
 何だ? 胸が妙に、熱く……?
 こいつか。首から下げてた、物まねハーブ。
 葉っぱから、何かの信号が、鼓動が伝わって来やがる。
 ……フレガータの鼓動か! 立ち向かう覚悟を決めたことで、物まねハーブを介して感覚が繋がったのか。
 感じる。フレガータから注がれる電気の流れが、俺の胎内で滅茶苦茶に乱れて暴れ回っているのを。だからこんなに苦しいんだ。
 無駄に抗うから、電気が乱れるんだ。
 素通しして、地面へと導けば…………っ!?
「あぁ……っ!?」
 き、気持ちいいい~~っ!?
 電気が素直に流れる体勢を取って脱力し、地面に身を任せた、ただそれだけで、苦痛が滑り落ちるように抜けて、甘い官能が身体中に溢れてくる。
 これが、羽休めか。
 解ってみれば、フレガータの奴、ずっと俺の上で羽休めしていやがったんだ。いいなぁ、自分だけこんないい想いを味わいやがって。
 交差しあった尾羽の付け根で、粘膜同士がくちゅり、くちゅりと淫猥な音を立てて掻き混ぜられ、熱い雫を滴らせる。水浸しになる程に電気が効果抜群の勢いを増すけれど、流れを整えられた今は電撃もこの身体で暴れることはない。羽を伝って滑らかに通り抜けていく電流は、さながら全身を揉みしだかれているかのように心地よかった。
 やがて思考が、白く染まっていく。
 噛み潰したバナナのように、トロトロに蕩けて。
 そういや、フレガータを雄だと勘違いしていた時も、奴の翼に抱かれてこんな悦楽に浸りかけていたっけ。
 その先に、ようやくイける。
 相手が雌だったこととか、麻痺させられて無理矢理されてることとか、この後のテラレイドバトルの予定さえもうどうでもいいや。今はただひたすら、恍惚に浸っていたい……。
「あっ……ぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ~~っ!?」
 俺が雄なら、尽きるまで放っていただろう。
 だが雌の絶頂は、尽きることはない。
「ああっ! あああっ! ぁああああぁぁ~~っ!?」
 翼を地に休めたまま、フレガータの羽の中という空を、俺は果てしなく飛ばされてイった。

 ☆

 一体どれほど、熱い奔流に流されただろうか。
 ふと嘴がこじ開けられ、口内に刺激的な辛みが広がると共に、身体を縛っていた麻痺が解けていった。
「トレーナーが戻ってくるぞ。身支度を整えろ」
 クラボの実を嘴移しで飲ませたフレガータが、俺を覗きこんでいた。
「まってくれ……もっと、もうちょっとだけつづけて……」
「その様をトレーナーに見られたら、後で羞恥のあまり死にたくなるぞ? 急いで正気に戻れ」
 その警告とクラボの実の効果でようやく我に返り、大慌てで起きあがって羽を繕う。百合でよかった。雄が快楽の証をぶちまけていたら後始末が間に合っていまい。
「お待たせ~。どう? 羽休めは修得できた?」
「……おう、バッチリよ」
 あんなとんでもない特訓だったが、技はしっかりと身に付いている。物まねハーブってのは大したもんだ。
「準備完了ね。それじゃ、行きましょう。レイドクリスタルへ!」
 とトレーナーが俺のモンスターボールを開く。
 ……さて、フレガータに何か言っておこうか?
 終わってから振り返って見りゃ、雌として俺がされたことって、犯された末の快楽堕ちなんだよなぁ。変にデレたら沽券にも股間にも甚だしく関わるわ。
 でもレイドポケモンとしては、羽休めの修得がそもそもの目的であって、それは立派に完遂したのであって。
 だったら、甘い言葉も苦い言葉もいらねぇだろ。……これで充分だ。
「じゃ、勝ってくる」
「うむ」
 巣立つ雛鳥を見送る親鳥のように、フレガータは暖かな微笑みで頷いた。

 ☆

 勘違いしてんじゃねぇぞ。
 満足したわけじゃ、ないんだからな。
 イカされたとはいえ、百合は百合。初体験としちゃノーカンでいいだろ。いいんだよ!
 さっさといい雄を捕まえて、後ろの口直しといきたいもんだ。
 当てはある。ノーマルテラスレイドに備えてハイパーピーナッツバターサンドを食わすのが有効だというなら他のトレーナーもやってるだろうし、ゴリランダーへの対策にと同族が連れてこられている可能性も高い。その中に雄がいてくれれば、今度こそ『2羽の仲はとっても良いようじゃ』な出会いの大チャンスだ。
「お待たせ。準備できたよ」
 ボールに入れられて運ばれたレイドクリスタルの前には、3人のトレーナーが待っていた。
「それじゃ、手持ちの顔見せと行きましょうか」
 俺を含めた4つのモンスターボールが、一斉に解放される。
 現れたのは、いずれもガンメタルブラックに鈍く輝く鎧のような羽を纏った大烏。よっしゃ、狙い通り全員同族だ!
「なぁ、お前等の中に……げ!?」
 言い終える前に、期待は落胆へと墜ちた。
 俺だけじゃない。その場に降り立った4羽全員が、だ。さすがに同族、誰もフレガータほど鈍くはない。
「また雌かぁぁ~っ!?」
「なんでやね~ん!?」
「もうどうしたらいいんですの~~っ!?」
「どんだけ雄日照りな雌ばっか揃ってんだよ……」
 よりにもよって全員雌。その上尋ねるまでもなく、全員がハイパーピーナッツバターサンド服用済みで大至急彼氏絶賛募集中という、見事なまでの4カード成立である。……つまりノーペアってことだが。
「レイドリーダーはあたしの隊なんだけどぉ、もう気分的には何週間も待たされてる感じだわ! トレーナーさんにケアをおねだりしてもレイドの後でってお預け食らわされたしっ!」
「スマホロトム挑発したらトンズラこかれたわ……」
「私もモトトカゲを誘惑してみたのですが、見向きもしてくれなくて……」
「百合で曲がりなりにも解消してきた俺が一番マシじゃねぇか……どうする? いっそみんなで百合ってく?」
「ええけど、もうレイド行かんとあかんで」
「こんな体調じゃ、バトルどころじゃないって気もするんだけどぉ……?」
 言っている間にも、背後ではトレーナーたちが一斉にクリスタルに触れて、その瞬間、

 視界が、目映い閃光で埋め尽くされた。

 周囲を見ると、そこは一面不可思議な煌めきで覆われた結晶洞窟の中。滑らかな鏡面に俺たちの像が乱反射して、さながら万華鏡野中にいるようだ。
 強烈な光は洞窟内の最奥部から放たれており、やがて収束していくと、そこに一体のポケモンが現れた。
 筋骨隆々たる樹木色の双腕に2本の撥を携え、草葉のたてがみを茂らせた頭上に、ブリリアントカットされた巨大な宝石を冠として被った大猿。丸太を横倒しにしたような形状の大太鼓の向こう、そいつの両足の間には、

「「「「バナナキターーーーッッッッ!!!!」」」」

 雌の欲望にまみれた雄叫びが、四重奏の合唱を結晶洞窟に轟かせた。
「うっひょー! 気合い満タンやぁぁっ! 急所必中やでぇっ!!」
「もう私、アッチもコッチも鉄壁バッキバキに硬くなってしまいましたわぁ!! 」
「早くボディプレスして押し倒しちゃいたぁい!!」
「どうせ相手は逃げられやしねぇ。全員でヤりたい放題マワすぜぇぇぇぇっ!!」
 嘴と尾羽の付け根から涎を吐き散らしながら、俺たちは熟れた果実めがけて殺到する。
 ゴリランダーは恐怖に顔を引きつらせ、大慌てで鉄壁を打ち消すべく波動を放った。がしかし、そんな波動ではもちろん、昂った気合いとハイパーピーナッツバターサンドの効能までは、決して鎮めることは出来なかったのである。

 ~姦~


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