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【22】愛と復讐のサーフゴー の履歴(No.1)


【22】愛と復讐のサーフゴー

たつおか




 この作品には以下の要素が含まれます。


【登場ポケモン】  
サーフゴー(♀)
【ジャンル】    
デカ尻・尻コキ・顔面騎乗・尻ぶっかけ
【カップリング】  
人間(♂) × サーフゴー(♀)
【話のノリ】    
重い(輪姦・殺害の描写有り)







目次




第1話・妹の足跡



 殺人事件の容疑者として妹が指名手配されてから3年が経つ──

 殺されたのは当時妹と付き合いのあった『男友達』で、奴のことは俺も良く知っていた。
 控えめに言ってもクズだった。
 殺されても当然のような奴で、いずれ妹ではなくとも誰かしらの手に掛かっていただろうと思えるような男だ。

 それでもしかしこの一報がニュースで流された時には、被害者たる奴は卒業アルバムから抜粋された純朴そうな写真が使われ、そして加害者たる妹はおそらく生涯の写真の中で最も印象が悪い物が使われては報道された。

 斯様な印象操作はマスコミの思惑通りの効果を生み出し、瞬く間に妹は『犯罪者』として世間に認知されるに至る。
 
 かねてより二人がつるんでいることを知っていた俺は、事あるごとにそのことを妹へ注意しては奴と距離を置くように忠告もしたが、その頃は俺達の関係もまた最悪で彼女はこちらの言うことには耳も傾けようとはしなかった。

 やがて最悪の事件は起き、彼女はその前後においても一切俺へ相談することなく消えた──代わりに失踪の直前、逃走資金を調達すべくに俺の家から現金や換金性の高い物品が盗まれていたことから、妹が自ずからこの事件に関与したことは疑いようもなかった。

 以降は今日にいたるまでの3年間、彼女に会うことはおろか声を聴くことすらもままならずに今へと至っている。

 警察にも彼女の逃亡先について心当たりがないか尋ねられたりもしたが知り様も無いそんな情報を俺が話せるはずも無く、捜査開始の1年後には俺は警察からも見向きされなくなった。

 確かに俺は妹の居場所や現状などは知らなかった……しかし、彼女と明確な繋がりがあることだけは隠していた。

 それというのも彼女が逃走した際に持ち出した物品の中には俺のキャッシュカードも含まれていた。
 そして妹の逃亡後は、そのカードが使われた銀行あるいはキャッシュディスペンサーの履歴を辿ることで、おおよその彼女の足取りを俺は窺い知ることが出来ていたのだ。

 しかしながらそのことを俺は警察には黙っていた。
 身内たる俺の手から妹を突き出すような真似はしたくなかったし、これだけが俺達に残された最後の家族の絆だと思うと、それを自らの手で絶ってしまうのが忍びなく思えたからだ。

 そして、そこから彼女の逃亡を影ながらに支える俺の日々が始まる。

 数十万ほどあった預金は見る間に目減りし、数か月後には少額をこまめに下し始める残高の推移から、いかに彼女が逃亡先で困窮しているのかが手に取るように分かった。

 それを見かねて俺もいくらかの預金を預け直すと、それはすぐさま彼女によって下ろされる。
 その際に引き落とし額が『39000』(サンキュー)などにされて、向こうからもそうした返事が為されるやり取りに、俺も自分が犯している事の重大さを忘れては苦笑いを禁じ得なかったものだ。

 そんな彼女の逃亡と援助を繰り返す日々が2年ほど続いたある時──口座からの引き落としが一切されなくなった。
  
 当然のごとく彼女の身に何が起きたのか俺には分からない。
 定期的に収入の得られる身分と仕事を手に入れたか、あるいは援助をしてくれるような人物に巡りあったのかは知りようもなかった。

 ともあれ無事で居てくれれば問題はないが、この状況においておおよそ思い付く最悪のパターンとして……逃亡先において彼女が死亡してしまった、ということも考えられた。

 それからというもの妹の現状が気掛かりになり、俺は日に何度もこの口座を調べてはどうにか妹の様子が探れないものかと躍起になる。
 そうしていよいよ以て埒があかなくなり、個人的な捜索も考え出した矢先──口座の数字に動きがあった。
 
 久方ぶりに動いたその金額は……増加されていた。
 むしろ妹側からの入金が為されたのである。 

 しかもその金額は、数千・数万という区切りの良い額ではなく、689や28といった小銭と思しき少額での入金なのである。

 これには頭を捻った。
 当初は、これは助けを求めるメッセージであり、金額の数字には語呂合わせや暗号といった特別な意味合いが含まれているではないかと規則性も探したが……時間帯も不規則に入金され続けるそれに何らかの統合性を求めることは叶わなかった。

 そしてついに、事態は決定的な一線を越えた。

 ある時、30万を越える金額が突如として振り込まれた。
 そしてその日を境に、俺の口座には数十万、数百万を越える金額の入金がされ始めたのである。

 もはや、妹が新たなトラブルに巻き込まれたことは間違いなかった。
 そしてこの段に至り、いよいよ以て俺も覚悟を決める。

「アイツに……会いに行こう!」

 3年前より幾度となく考えてはそして思い止まっていたそれを、遂に俺は決意するに至ったのであった。

 差し当たり多少の現金とペンダントを一つ身に付けると、俺はほぼ着の身着のままに妹探しの旅へと出立する。

 場所の大体の検討はついていた。
 今日の入金に至るまで妹が行っていたキャッシュカードの操作は、2年前より全て同じ場所で行われていたからだ。
 
 マバセ郡ゲンザ市のコンビニエンスストア……妹はそこにいる。


 北の果てとも言うべきそこには彼女が──そして全ての事件の答えが俺を待ち受けているのだった。 
 



第2話・そのサーフゴー



 マバセ郡は、遠く北の果てという偏見が付いて回る辺鄙な土地だ。
 事実、『辺鄙な』というイメージが定着するほどに過酷なその場所は古くから北の流刑地として認知されており、実際にそこを題材とした刑務所関係のルポや創作物も数多い。

 そんな場所へ流れに流れて辿り着いてしまった妹の──テセィのことに思いを馳せる時、いつも俺の胸は罪悪感で締め付けられた。
 件の殺人事件前より、なぜに彼女をフォローしてやれなかったのかを悔やむ思いは今も俺の胸に燻り続けている。

 兄妹仲がけっして悪かったわけではない。むしろのその関係性は異常なほどに親密ですらあった。……こともあろう当時の俺達は、近親相姦の関係へと陥っていたのだ。

 最初は単なる兄妹愛の延長だった。
 突如として両親を失ったことから、文字通りに支え合って生きて往かざるを得なかった俺達は、その環境の中で極端な共依存の関係性を構築させいった。

 それはやがて兄妹という関係を超越し、そして家族という枠組みもまた取り去ってしまうと……いつしか俺達へ禁断の愛を育むのに最適最悪の環境を作り出すに至らしめてしまった。

 そこに至る事の発端がどちらにあったのかはもう思い出せないが、その関係を終わらせたのはしかし俺であった。
 ある時期から互いの在り方の歪さに疑問を持った俺は、やがては成長と共にそれが確信へ変わると──半ば一方的にテセィとの関係を断ち切ったのだ。

 これには彼女にしても困惑したことだろう。
 永らく続いた俺達の関係はもはや、チョウチンアンコウの番(つが)いの如く『俺とテセィ』という一個の生物的特性と言って良いほどに互いが依存しきった関係であったからだ。

 それでもまだ自身の中にそれなりの納得と覚悟を以て断ち切れた俺はまだしも、半ば一方的にそれを告げられたテセィのショックはそれは計り知れなかったと思う。
 幾度も彼女は関係の修復を求め、そしてその努力にも努めてくれたが……俺はその繰り返しを良しとはしなかった。

 やがて彼女の信頼はその強さゆえの反動から激しい憎悪へと変わり、ようやくにテセィがこの仕打ちを受け入れた頃には──俺達の関係は他人以上に冷たく遠いものとなってしまっていた。

 その矢先に出会ったのが件の被害者となるアイツであり、そしてその延長線上に起きてしまったのがあの殺人事件という訳である。
 
 手持無沙汰にペンダントのメダルを胸の前で弄びながら流れる車窓を見遣っていると、いつしか景色からは緑が消え、目下には乾いた地表や剥きだされた岩肌という寒々とした景色が流れ始めるようになっていた。

 徐々に近づきつつあるテセィの居る場所へ思いを馳せつつもしかし、はたして俺は彼女に会った時にどう対処してやるべきなのかを未だに悩んでいた。

 今こうして救い手を差し伸べるのならば、あの日彼女を拒絶したことこそが全ての間違えであったということになってしまう──あれが無ければ、彼女がこんな過ちを犯すこともなかったのだから。
 ……結局その答えは出せないまま、俺は目的地へと到着してしまった。


 駅のホームから外へ出ると──町は、予てから抱いていたイメージそのままに閑散としていた。
 駅前ロータリーのあちこちには、路肩や歩道の隅に老若を問わぬ人間やポケモン達が座り込み、その場で戻りも進ませもしない時の砂をただ漫然と消費し続けていた。

 その表情や気配が無表情でくすんでいるのは衣類が着古されているからでもポケモンウォッシュを為されていないからでもない……ここにいる住民には後も先も無いのだ。
 過去を捨て未来も望めなくなった、あの日の妹のような者達がここに集まり、そし淀む場所こそがここだ。

 こんな場所へと流れつき、そして今の俺と同じ光景を見てはおそらく同じことを考えたであろうテセィの気持ちを思うと、なおさらに俺の心は沈んだ。
 しかしながら、此処へと足を運んだのはそんな感傷に浸る為ではない。
 はやく彼女を見つけて保護してやらねばと思い、例の振り込みが行われていたコンビニを探そうと踏み出したその時である。

 ロータリーの彼方から爆音が遠く鳴り響いた。
 その衝撃と、遠いながらもけたたましい音階に場はにわかにざわめき立つ。しかし……純粋にその爆音に驚いたのは俺だけであった。
 周囲に蹲る町の住民は皆一様にその方向を向いてはいるが、それこそはこの事態に驚いているのではなく、その原因へと注視しているといった様子であった。

 そして爆音の方向に目を凝らせば……そこへと伸びる道路の彼方から徐々に黒煙が立ち上がる様子が見て取れた。
 そしてそれを背に地平からせり上がってきたのは──こちらへと向かって歩いてくる一個の人影であった。

 背へと流れるドレッドヘア然とした頭髪とタンクトップ型のベスト──素肌の上に羽織っているだろうその下には僅かに胸のふくらみも確認出来ることから、それが女であるのだと遠目にも分かった。
 しかし何よりも俺の目を引いたのは──その下半身にこそあった。
 カートゥーンキャラよろしくに誇張された巨大な腰から下には、極端にデフォルメされた腰のくびれと巨大な尻が備わっていた。

 その臀部の両房を見せつけるようくねらせては柔らかげに弾ませて歩いてくるそれ……。
 一見したならばヒトのフォルムを要しているもしかし、それが人間などではないことは遠目にも判断することが出来た。
 頭髪から爪先に至るまで、身に着けているもの以外は全てが純金の輝きを放つそれは、間違いなくポケモン──サーフゴーそれに見間違えようも無かった。

 腰元にバックパック然としたベルトを巻き付けて悠々とこちらへと……正確には駅前のコンビニへと歩み進んでくるサーフゴー。
 そのバックパックには、無造作に詰め込まれた何枚何十枚もの紙幣がその裾を風にひらめかせていた。

 そしてその接近に合わせて住人達もどよめきたち、いよいよ以て彼女がコミュニティの中へと歩んでくると──彼らは皆一斉にサーフゴーへと群がった。
 その中心でサーフゴーは、皆がそれぞれに発する潮騒のような物乞いの声の中、落ち着いた様子でバックパックから取り出した紙幣を渡しては進んでいた。
 そしてそんなサーフゴーを見た瞬間に俺もまた直感する──
 それこそは、

──このサーフゴーこそ、テセィだ……!

 この時、俺がそう確信したのはこのサーフゴーの全体を確認した時の直感に他ならなかった。
 なぜなら彼女はあのテセィに酷似を──否、その姿は生き写しと言っても過言ではなかった。

 思わぬその発見にただ茫然自失と立ち尽くすばかりの俺の前にも、やがては彼女は歩み進んでくる。
 そして他の住人達へするよう無造作に数枚の紙幣を取り出してはそれを俺へ渡そうとしたその時、俺達の目が合った。

 片側の口角を吊り上げ、笑顔に形を繕っていたサーフゴーの口元が弛緩しては表情を消す。
 それは俺もまた同じであったろう。しばし俺達は見つめあったまま固まってしまった。

 そうして無表情に互いを見つめ合ったまま、ふいにサーフゴーは首から下げていた自身のネックレスへと手を伸ばし、それを見せつけるよう弄ぶ。
 それを目の前に、いよいよ以てこのポケモンの正体を確信した俺の心は激しくざわめき立ち……そして表面上は平静を装いながらも激しく動揺した。

 その首から下げられていたペンダントは、観光地で見られるチープなメタルコインをリングに嵌め込んだ金色のそれであった。
 そして同様のものとなる銀色のそれが俺の首から下にも吊らされている。


 俺の首にはテセィの名が打刻されたメダルが、そして目の前のサーフゴーの首元で鈍い輝きを放つそこには──……見間違えようもない、俺の名が刻印されているのだった。
 



第3話・金の服



 今となってはすっかり様変わりしたその風貌……否、これ此処に至っては成れ果てたとでもいうべきか。

 楕円の溝を穿っただけの瞳と緩い口角の面相は人の造詣を模してはいても、そこに個人の面影を窺い知ることは出来ない……それでもしかし、おおよそ目の前にいるサーフゴーに俺は限りなくテセィの面影を感じ取っていた。
 
 しばし凍り付いたよう、見つめ合う俺達の周囲だけ時が止まってしまったかのようなその沈黙はしかし、外部の騒音によって打ち破られた。

『サーフゴーォぉッッ! 待たんかいぃッ、貴様ぁぁぁぁぁッッ‼』

 突如として響き渡ったその怒号に、俺達は針で刺されたかのよう我に返る。
 そして同時に声の方向へ振り返る視線の先には──男が一人と、その傍らに控える重厚なポケモンの姿が窺えた。

 スキンヘッドの肥満体を着崩したスーツに包み、よれて汚れたワイシャツの襟から立ち上がったタトゥーが顔面の半分まで覆っている容貌からは、この男が堅気の人間でないことは見るからに明らかだった。
 そしてその傍らには、通常のサイズよりも遥かに巨大なカジリガメが控えている。
 
 こちらもまた男のタトゥーと同じであろう意匠のエンブレムを、顔面や甲羅といった肉体のあちこちに施していた訳だが……何よりも眼を引いたのはその大きさにこそあった。
 本来ならばせいぜいが1メートル程度であろうはずが、そのカジリガメに関しては優に2メートルを超えている。
 加えて素人目にも分かる不自然な筋肉の盛り上がり方を見るに、おそらくは違法な手段によって改造や成長を促されたポケモンと見て間違いはなさそうだ。

 後に聞いた話ではあるが、かのスキンヘッドはこのシマ一帯を仕切っていたマフィアの幹部であるらしかった。
 そしてサーフゴーはこの男の表裏に渡る店やアジトといったシノギを片端から襲撃しては潰し、そこに貯められていた現金を巻き上げていたようである。
 先の町の住民へ行っていた施しや、そして遡れば俺へと入金していた金はそこで得た物であったのだ。
 
 この時すでに組織は完全に解体させられた状態にあり、いわばこの幹部はせめて一矢報いようと、サーフゴーへ挑んできたという状況であった。

 斯様な男とポケモンを依然として視軸の先に見据えながら、サーフゴーは首元から慎重にネックレスを潜り抜くと、それを押し付けるようにして俺に渡した。
 おそらくは預かっていろという意図なのだろうが、

「お、おい!? お前、まさか……」

 未だに状況が飲み込めない俺はただ焦るばかりだ。
 一連のサーフゴーの行動から彼女があのカジリガメと戦うことは間違いないが、せいぜいが170センチ程度の俺とそう伸長の変わらないサーフゴーに、あの2メートル越えは堅い恐竜然としたカジリガメが手に負えるとは到底思えなかったからだ。

 それでも彼女は一向に臆することなく、むしろ散歩でもするかのような気負いの無さで足取り軽やかにそれへと歩み進んだ。
 そして二匹の間合いが2メートルを切った瞬間──発火するかのよう、俊敏に踏み込んだカジリガメの顎(あぎと)が、無惨にもサーフゴーの上半身を噛み断った。

 落石を思わせる轟音で上下の顎が嚙み合わされ、左肩から袈裟に食いちぎられたサーフゴーの上半身がバネ仕掛けの玩具よろしくに宙に舞っては後方へと落ちる。
 その肉体を構築している無数の金貨とその破片が四散しそして降り注ぐ光景に、

『ハハッ……ハハハハッッ! 見さらせぇ! クソボケがァァァ!』

 カジリガメの傍らで、あの幹部もまた狂ったように笑った。……しかし、それも長くは続かない。
 異変は同時にカジリガメにもまた現れていたからだ。

 突如として苦し気に咳き込む出すや、カジリガメは前足を折って地に頽れる。
 全身から大量の汗を拭きだし、呼吸を止めては全身を硬直させるその様子に幹部が声を掛けようとした次の瞬間──カジリガメは金色に輝く吐瀉物を、蹲る眼前にぶちまけた。
 光り輝くそれが吐き出されたのもその一時で、後にはどす黒い血糊と共に、コマ切れとされた肉塊を何片も吐き出す。
 さらには肛門からもまた始めは同じよう金色の輝きが射出され、後には排泄物に続いて、喉から吐き出されたものと同じ物体がこれまた下血と共に放り出されるのだった。

 その光景を前に俺は彼女が何をしたのかを──そして初手にカジリガメの攻撃を受けたことからがもう、全てはこの戦略の布石であったことに気付いた。
 サーフゴーは大量の金貨(コイン)の集合体で肉体を構築している──謂わばコントロール圏内から離れてしまうか、あるいはよほどの体積を消失しない限り、その分離分散した肉体(コイン)はそれぞれコントロールが自在であるのだ。

 最初の噛みつきの際に、サーフゴーはそれをあえて受け、カジリガメの体内へと大量の自分自身を送り込んだ。
 頑強な甲羅と筋肉の鎧をまとったカジリガメとはいえ、内臓までは鍛えられない──後はその内部から存分にカジリガメの内臓を切り刻み、口中と肛門から脱することで、文字通りの致命傷を負わせて外部へと出たのである。

 カジリガメが完全に倒れ込むと同時、宙に螺旋状となって舞うサーフゴーの金渦は竜の如くにくねらせていたその身を一打ちして再び宙へ舞い上がるや──飛翔の頂点で滞留後、その身を直線とさせながら再び地上への降下を始めた。

 その目指すべき着地点に居た者は、あの幹部だ。
 それを前に一瞬幹部も息を飲むよう小さな悲鳴を上げたものの、結局はそれに反応出来ることもなく、滝つぼに飲み込まれる行者の如くに降りかかる黄金の奔流に飲み込まれてはその姿を消す。

 かくして着地点の幹部を中心に金貨は集まり続け、そこにサーフゴーを再び組み上げていった。
 やがては男の体型を反映させたかのような肥満体のサーフゴーがそこに現れる。そしてサーフゴーの視線は、その光景を見守り続けていた俺と再び結ばれた。
 
 無表情の中に伺えるアルカイックスマイルの口元が、俺を捉えては明確な笑みのそれに代わる。
 そして次の瞬間、サーフゴーの体系が元の痩躯に引き絞られた瞬間──スプリンクラーよろしくに、鮮血は彼女を中心として放射状に周囲へ撒き散らされた。

 鈍の荒天へ輝くように広げられる赤きその眺めを……俺はただ呼吸も忘れては見上げたていた。
 やがて、彼女はゆっくりとこちらへと歩み進んでくる。
 右足を一歩踏み出すと、その表面の硬貨がさざ波を打って流動するのに合わせ、芯となっていた幹部の右足がその場に取り残される。
 その要領で前方に進んでいく彼女の背後には、さながらに分身やセミの脱皮を思わせるよう、サーフゴーの緊縛から解放された幹部の形を模した等身大の肉塊だけが──……後にはそこへ立ち尽くすばかりだった。



第4話・黄金宮の竜



 瞬く間に男とカジリガメを屠り去り、サーフゴーは何事も無かったかのよう俺の元へと戻って来た。

 そうして再び俺達は対峙する。
 とはいえあんな出来事の後じゃなおさらに掛ける言葉を考えあぐねてしまう俺を唐突に肩へ担ぐや──

「え? お、おい……──うおあッ!?」

 一躍、サーフゴーは騒動の中心から飛び立った。
 5メートル以上はくだらない高さの跳躍を繰り返しては内陸へと彼女は進んでいく。
 道路を辿り、山へと入り、そして木立をかき分けてサーフゴーは──山中にある荒廃した建物の前と降り立った。

 そこにて解放されるも、一連の衝撃からすぐに立ち上がることも叶わず、俺は四つん這いのままにそれを見上げる。
 モルタル製の苔むした建物は、既に本来の目的を全うして打ち捨てられたという雰囲気の佇まいであった。
 窓であったらしい壁面の開口にガラスは無く、おそらくは出入り口と思しき縦長の空間にはドアすらも付いていなかった。

 見ればこの建物を含んだ敷地内もこれまた所々が崩壊した金網のフェンスに囲まれていて、おそらくは何らかの管理棟として使われていた物であろうことが窺えた。

「ど……どこに連れてこられたんだ?」

 ようやくに立ち上がり小さくため息をつく俺を見届けると、サーフゴーは先頭を切って建物の中へと歩んでいく。
 
 言うまでも無くそれは「ついてこい」という意思表示なのだろう。
 もっともこの時の俺にはもうそれに従うより他は無い。
 こんな人里離れた土地勘のない場所とあっては自力で引き返すことなど不可能だからだ。

 入室してすぐの部屋は外部の見た目と違わぬ朽ち果てた様子だった。
 足元には割れたガラス片と窓から舞い込んできたであろう小枝や枯れ葉といったごみが散乱し、部屋の四隅にそれらが風でかき集められては小山となっている光景など、まさに山間の廃墟そのものの印象だった。

 ただし次の間へ続いているであろう開口には今度はドアが嵌められており、サーフゴーは手慣れた様子でそこを開けるとその中へと消えていった。
 おそらくはこの奥こそが従来の生活スペースであるのだろう。
 そう思いながらそれに続いた俺は──その奥に待ち受けていた光景に度肝を抜かれることとなる。

 最初、暗い室内に眼の慣れていない俺は瞼を引き絞っては暗闇にサーフゴーを探した。
 窓の類が一切ないこの部屋は、照明が無ければ昼ですらなお闇一色だ。
 それでも入り口から僅かに差し込む光を便りに部屋の中で蠢くサーフゴーの気配へ目を凝らしていると、その視界に小さな火の粉が瞬いた。

 おそらくはランプか何かにライターで火を灯そうとしているのだろう。
 そして何度目かのそれで暗がりに小さな火が灯り、それがランプへと移されて照明が灯された瞬間──目下に広がる部屋の全容を見渡して俺は息を飲んだ。

 そこは、黄金の一室だった。
 足元のいたる所に金貨や宝石の類がちりばめられ、さらに部屋の四隅には輝かしいばかりの装飾食器等の類が山となって積まれている。
 さながらに外国の昔話に見られる悪いドラゴンの隠れ家然としたその一室は、心許ないランプの照明すらも財宝が煌びやかに光源を反射しては、室内を眩い光量で満たしていた。

 そんな眺めに圧倒される反面、この様子がいかにもテセィらしくも感じて俺は苦笑いを禁じ得ない。 
 どうにも彼女には成金主義というか、金色の色彩や調度を好む傾向があった。

 貴金属の類も例に漏れずに大好きで、初めてこのサーフゴーを見た時にテセィを連想したのも、そうした彼女のイメージが黄金色のサーフゴーに直結したに他ならなかったからだ。

 6畳程度のそんな一室の中央にはおそらくは普段彼女が身を休めているであろう、床にシーツを敷いただけの簡素な寝床あり、その上には既に膝を揃えて腰を下ろしたサーフゴーが俺を見上げていた。

 それからどうするということもなく、俺もまたその隣へと腰を下ろす。
 彼女の視線はそんな俺の一挙手一投足を余すことなく観察していた。
 そしてそんな俺が隣に着けて、改めて互いの視線を絡めると──サーフゴーはさも嬉し気に、満面の笑顔をそこに咲かせた。
 
 陽気でも皮肉なものでもない、愛しい家族と目が会った時に思わず漏れてしまうような朗らかなそれに俺はこれ以上になく胸が締め付けられた。
 目の前には、あの別れを果たす前のテセィが居るような気がした。
 そしてまるであの日の続きのように──サーフゴーは俺の唇を奪う。

 金属片の集合体とは思えぬほどに柔らかく瑞々しい感触が唇を覆っていた。
 その中からさらに這い出した舌先が、焼けるような熱を持っては俺の口中に侵入してくる。

 その感触に酔いしれているのか、いつしかサーフゴーは鼻息も荒くなり、より密着を求めては体を押し付けてくる。
 互いの前面が合わさり、彼女の乳房の弾力が強く俺の胸元に伝わると──俺は乗り上げられるようにして、サーフゴーに押し倒されてしまうのだった。

 激しく吸い付いては咀嚼するように愛撫を続ける彼女の口唇は俺の唇を離れ、頬に吸い付きながら顎の下へと這いずると、そこから徐々に俺の体を下降していった。
 もはや服の存在にももどかし気にシャツをめくり上げると、その下から露になった胸板や腹筋に唇を吸いつかせてはさらに下降する。

 その巨大な吸着力を持つナメクジにでもはい回られているような感覚に声を上ずらせる俺は、久方ぶりとなるその感覚に胸を高鳴らされていた。
 浅ましくもそれの行きつく先を俺は期待するあまり、自ずからベルトを緩めると、ジーンズのホックもまた外す。
 そうしてジッパーも下げ、すっかり勃起した茎の背にボクサーパンツのゴムを引っ掛けては煩わしくもそれを完全に下ろすと──その反動で大きくしなりをつけて跳ね上がった俺のペニスがサーフゴーの眼前にそそり立った。

 それを前に、吸いつけていた口唇を離しては驚いたような視線で見入るサーフゴー……やがては表情もそのままに再び細く口唇を開くや彼女は一息に──そんな俺のペニスを根元まで飲み込んでしまうのだった。



第5話・サーフゴーという海



 しばし口中に俺のペニスを収めたまま、サーフゴーは身を震わせては鼻息を荒くさせた。
 舌上に広がるその味わいに脳の機能がショートしている様子から、いかに彼女がこの行為に感じ入っているのかが窺える。

 やがてはその喉元が大きく上下し、口中に溜まっていたペニスの味わいを溶かした唾液が飲み下されると、次の瞬間には狂ったように吸い出す行為を始める。
 より深くそれを味わおうと唾液を分泌するあまり、口唇の往復のたびに周囲には卑猥なバキューム音が響き渡る。
 
 その執拗な吸い付けに彼女の口中は真空状態となり、口内の甲に亀頭の背が張り付いてはさながらに甲羅の隆起をなぞるような凹凸の感触をそこに感じては、その快感に俺も頭を仰け反らせた。

 存分に吸い尽くしてやがてはペニスの味わいが薄まってしまうと、サーフゴーは口中からそれを解放し、目の前でそそり立たせた裏筋の収束点を舌先で鋭く穿いては俺のペニスの隅々までを味わおうと躍起になる。

 さらにはストローの要領で筋口に唇を吸い付けるや、細く長く吸い出しては尿道の中に満ちていた腺液をすすり上げる。
 その行為に俺もへその奥底がむず痒くなるような感覚を覚えては、幾度となく咳き込むような声を上げた。

 尿・唾液・腺液……尿道内に滞留していたそれら全てを吸い上げ、口中に満たしたそれをゆすぐように撹拌しては味わい、やがてはそれらも全て飲み干すと──サーフゴーは見せつけるよう開いた口中から舌を吐き出しては大きくため息をついた。

「はぁはぁ……美味かったか? それじゃ、今度は俺にも味あわせてくれよ」

 仰向けにしていた上体を起こしながら言う俺にサーフゴーも背を向け、膝を畳んでは爪先立ちになって跨ぎ直すや、その尻と俺の鼻先に触れあわん距離にまで突き出した。
  まさに巨大としか言いようのないその眺めは圧巻の一語に尽きる。
 中央の割れ目を境に左右に実った臀部の両房とその下に連なる裏腿の太ましい眺望は在りし日のテセィを彷彿とさせる肉感だ。
 ならばこれの喜ぶかと思い、その右尻へと力の限りに張り手を打ち付けると、サーフゴーはその鋭い痛みに半うしては身を仰け反らせた。
 鋭く頭を振り上げるとドレッドヘア然とした頭髪が宙に舞い、後は身を硬直させては痛みと、そしてそれからもたらされる快感に打ち震える。
 
 尻も尻で、そんな衝撃の余韻で臀部や裏腿の脂肪を小刻みに震わせては膣や肛門の収縮を繰り返して痙攣もする。
 その一発を皮切りに、俺は次々と掌を繰り出しては彼女の尻や腿を問わぬそこを打ち据えていった。

 脂肪質の尻は衝撃を受けるたびにその肉を片側へと寄せ、戻る反動で液体さながらにその表面を波絶立たせる。
 サーフゴーもまた踊るよう小刻みに腰を左右へ振ると存分にそこに実った脂肪を揺らしては俺を挑発した。

 それに中てられて強い興奮もまた覚えた俺はいよいよ以て彼女の両尻をワシ掴むや、力の限りに握りしめたそれを左右へと押し開いた。
 存分に開かれた臀部ではあっても、その奥底に幾重にも皺と色素を収束させる肛門が窺えるばかりで、両内腿の肉に圧迫された膣口は依然として閉じ合わさったままだ。

 無理矢理にでもそれを開かせてやろうとさらに俺は力を込めてその尻を割り開くや、限界まで広がり切ったその割れ目の中へ深々と顔を埋めた。
 途端、臀部の肉が閉じ合わさっては俺の両方を……否、もはや顔面の全体を丸々に挟んでは飲みこんでしまう。
 鼻先はなかば肛門へ挿入されるように突き立ち、その零距離から匂い立つ芳しい程のサーフゴーの雌臭は、そのフェロモンゆえかそれとも酸欠からか、俺の意識を朦朧とさせては名さらに刺激してくるのだった。

 そこから舌先を伸ばしては場所のおかまいも無しにサーフゴーの局部を舐め尽くしては愛撫していく。
 内腿の肉厚を舌先で侵入して突き進めば舌上には魚貝を思わせる発酵臭と共に強い塩気が広がり、はたまた舌先で肛門を穿てば苦み走った味わいに舌の根が収縮した。

 斯様に強い興奮を含んだサーフゴーの味をなおさらに味わおうと俺は精一杯に舌先を伸ばしては、その先端を膣へと触れさせようとする。
 しかしながら女の胴ほどもあろう豊満な両腿の肉圧に阻まれては、どんなに舌の根をつらせようともそこに届くことは難しい。
 なおも躍起になって彼女の尻にしがみ付いていると……ふいに顔面への圧が増した。
 左右からの両腿によるそれではなくそれは、サーフゴーが顔面騎乗よろしくに俺の鼻先へと腰を落としているに他ならない。
 
 僅かに圧の隙間から保っていた呼吸は完全に断たれ、さらには肛門が鼻頭の上を滑っては俺の眉間へと宛がわれては、その肉蕾で幾度もキスをするようについばむ。
 そうまでして圧を掛け続けるとやがて──俺の上唇に今まで触れていたどんな肉の物とも違う触感が着地をする。

 ふんだんに潤いを含んだ粘度の高い液体を滴らせるそれこそは、念願のサーフゴーの膣口に他ならなかった。

 その達成感と、さらには砂漠の中で辿り着くオアシスのような心境で俺はそこに貪りつく。
 陰唇を口先で摘まみ上げては咀嚼し、尿道を激しく突き穿つ舌先の執拗さに反応しては、実際に尿すらも混じらせて愛液も滴らせると、たちどころに俺の呼吸器は彼女の体液によって塞がれる。

 其れでも俺は、両腕の内肘を彼女の両足に絡めてはホールドをすると、後は死に物狂いにサーフゴーの膣を貪った。
 やがてはその愛撫に肉体の昂りを促され、遂にはサーフゴーは絶頂を迎える。

 弓なりに背を仰け反らせ、鐘の音(ね)を思わせる澄んだ嬌声を上げる次の瞬間──彼女の膣口からは大量の潮が吹き上がっては、今度こそ完全に俺の呼吸腔を……その顔面の全ては体液の中に溺れさせてしまうのだった。

 依然として顔面を圧迫し続ける圧と、潮気を強く含んだ彼女の愛液に包まれては、さながらに深海へと落ちていく心地がした。
 それでもしかし、久方ぶりに味わうその感覚に在りし日もまた思い出しては──……俺は朦朧とする意識の中、テセィと別れて以来すっかり忘れていた射精の快感もまた思い出すのだった。



第6話・彼女の居る場所



 身を起こして俺の上から立ち退くと、サーフゴーはその傍らで四つん這いとなっては尻を俺へと向けた。
 背越しに振り返りながら半瞼の挑発的な視線と笑みで俺を見据えつつ、さらには腰をしならせては臀部の脂肪も大きく揺らす。

 その眺めたるや、もはや『肉』というよりは油の詰め込まれた『水風船』を弾ませているかのような質感に、今しがた達したばかりのはずのペニスには再びに、痛いほどの勃起が促されるのだった。

 そんなサーフゴーを前に俺もまた立ち膝に身を起こすと、その魅惑の尻の前ににじり寄る。
 サーフゴー自身も先のクンニで幾度となく絶頂を果たしていたこともあり、肉厚の割れ目は腰の付け根から膣に至るまで光沢が出るほどに濡れそぼっていた。

 その割れ目の中央へと、さながらに果実へナイフを宛がうかのよう俺もペニスの裏筋を乗せ上げてそこへはめ込む。
 後はこのまま直進方向に挿入がセオリーではあるのだろうが、俺達のやり方は違った。
 直接に膣口へと亀頭を突き立たせるような真似はせず、さながらにパンでソーセージを包み込むかのよう、割れ目の間に宛がったペニスをサーフゴーの尻肉で左右から挟み込んだ。

 肉厚な彼女の臀部とあっては瞬く間にペニスは肉の中に埋もれて消えてしまう。
 そうして挿入ではなく挟み込んだ状態のまま俺はピストンを始める──要はパイズリよろしくに臀部で挟み込む、『尻コキ』を敢行したのだった。

 彼女との……テセィとの情交において、俺が一番に好んでは求めたプレイこそがこれだった。 
 豊満な尻を持つ彼女の恵体を存分に活かした尻コキは、個人的な性癖も相成ってか膣や肛門へ挿入する以上の快感と興奮とがあった。

 そして今ペニスに感じている感触は、あの日の快感とテセィの思い出を思い出させる温か味に溢れていた。
 それを感じつつ我を忘れて腰を突き動かしてしまうのは、けっして快感だけではない。
 俺もまた、彼女を愛していたことと……そしてそれゆえに関係を断ったことの後悔と苦しみの全てを、この再開のセックスへとぶつけていた。

 それを受けるサーフゴーもまた臀部内部に感じる俺の熱と想いに加え、粘液を介し肉を擦り上げられる快感に身悶えてはシーツに横顔を押し付ける。
 挟み込まれた巨大な尻肉の中で縦横無尽に突き動かされる俺の亀頭は、時にアナルの入り口を小突き、時にはその先端を膣口へと潜らせてはくすぐりと、緩急に富んだ快感をサーフゴーへと与え続けた。

 その行為は擬似セックスの延長ではあっても、近親相姦という互いの禁忌感を慰める為の方便として繰り返してきた俺達にとっては、もはやこれは性交以上の親愛表現の一形態なのであった。
 
 彼女の愛液とそして俺からも漏れ出る腺液にまみれた臀部の狭所は、既に一個の粘膜と化しては俺のペニスを締め上げている。
 そこを灼けるほどの摩擦を以て往復する中で、俺にもこの日最大となる絶頂の予感が訪れていた。

「お、おぉ……もう、イキそうだ……ッ」

 依然として腰を揺り動かしつつ、来たるべき快感の瞬間を期待してはより一層に腰の動きを強く忙しなくさせる俺の言葉を受け取っては──サーフゴーもまた快感に溶けた視線をこちらへと向ける。
 喘ぐあまりに返事の出来ない彼女はその声に代わって尻のえくぼを収縮させるや、より一層に臀部の締め付けを強めた。
 
 そして互いの熱と絶頂とが同調した瞬間──俺は彼女の肉の狭間において射精を果たした。
 閉じ合わされた肉の隙間へと浸透していく精液の熱に反応してはサーフゴーも激しく絶頂し、シーツへ額を押し付けては余韻に身悶える。

 同時の俺もまた、まだ射精途中のぺニスを引き抜くとその残りを彼女の尻の上へとぶちまけた。
 左右の臀部へと満遍なく打ち放たれる精液は、その尻の上において歪な斑模様を幾個も作り出し、そして時に鋭角に筋を描いては二度目とは思えぬ大量をそこへと吐き出していた。

 そんな欲望の滾りを最後の一滴までこの尻へぶちまけてやらねば気が済まない俺は、ぺニスの根本を握りしめては先端まで絞り上げ──鈴口に丸く浮き出した純白の珠を、振り払うようにしてサーフゴーの尻へと打ち付けた。

 それでも興奮収まらぬまま、しばしドラムスティックよろしくにしならせた自身のぺニスで彼女の尻を左右の見境も無しに打ち付けて続ける。
 その一打ちごとに臀部を通して膣や肛門へと響いてくる鋭い振動に、まだ絶頂の余韻の中にあるサーフゴーもまた小刻みに呻きを上げてはそれに応えるようだった。

 そして最後に一際強くぺニスを打ち付けてやると、ようやくにオレは体を起こす。
 見下ろすそこには、うつぶせに突き上げた臀部の割れ目から精液を滴らせ、さらには背中に至るまで尻の全面にも万遍なく精液をぶちまけられたサーフゴーを確認し──

 俺は身勝手ながらにも充実しては、深くため息をつくのだった。

■     ■     ■

 
 その後も数年来の空白を埋め直すよう、俺達は時間も忘れてまぐわい続けた。
 いつしか疲労によってようやくに我へ返れた俺達は、時が既に深夜を割りこんでいたことに気付くという有り様だった。

 心地好い事後の余韻に身を委ねる俺は、胸元に寄り添って瞳を閉じているサーフゴーの頭を腕枕の下から撫でてみせる。
 そんな俺からのイタズラに反応してサーフゴーも片瞼を眠たげに開くと、苦笑いげに顔を寄せてきては再び唇を交わした。

 しばしそうして互いの上唇を奪い合う他愛もないキスを交わした後──俺はこのサーフゴーに会ってから今まで心に秘めていた問いを彼女へと投げ掛ける。

「サーフゴー……お前は、テセィじゃないんだろ?」

 その質問に瞬間、サーフゴーの両眼が見開かれる。
 後は俺からの視線に顔を背けるように俯くと……彼女は再び俺の胸元へすがり付いた。

 予てより抱いていた疑問であった。
 早い段階から……それこそはこの廃屋で彼女と肌を合わせてた時から、確信ではなくそれとなく抱いていた疑念ではあった。

 そしてそれが確信に変わったのは、今に至るまでのサーフゴーとのセックスに他ならない。
 彼女が興じるそれらは、まるで図ったかのよう過去のテセィとのプレイを踏襲したものであったからだ。
 ……妹と肌を重ねた記憶の全てを覚えていたからこその気付きである。

「別に責めてはいないよ。ただ……真実が知りたいんだ」
 
 なおも変わらぬサーフゴーの背や肩を撫でながら愛撫を続けていると、やがては彼女も顔を上げ、最後にひとつ小さなキスをした。
 そうして身を起こして立ち上がるや、頭上のランプを取っては俺にも立ち上がることを促すように小さく声を掛ける。

 後に続く俺へとランプを預けてきたかと思うと、サーフゴーは部屋の一角にうず高く積まれた金貨と装飾食器の山へと右手をかざす。
 途端にその金貨の山が流動を始めるや、それらは吸い寄せられるよう渦巻きながら立ち上がってサーフゴーの右腕と同化していった。

 そうして金貨の山が消えたそこに現れたものは──隣室の存在を意味するもう一枚の新たなドア。
 そこを引き開くと、サーフゴーはその彼方の暗中へと消えていった。

「そこにいるのか………テセィ」

 思わぬその展開に逸る気持ちと動悸を押さえながら俺も跡へ続く。

 その部屋は縦長の一室だった。
 開口を潜ってすぐ目の前に壁が立ち塞がり、以降は左手の方向へと空間が広がっている。
 入室を果たし、部屋の彼方へランプの光源を向けると、その先の行き止まりにおいて屈み混んでいるサーフゴーの背が見えた。

 その様子は目の前にいる誰かと語らっているようにも見えて俺の不整脈が静かに高鳴り出す。
 闇の中においてサーフゴーの視線の先には確かに何者かの人影が伺えていた。
 そうして俺は手元の照明が室内全体へと行き届くよう一際高くランプを掲げる。

 隣室同様に……否、狭いながらもあの場所以上に数多くの貴金属や金貨宝石の類いに埋め尽くされたその部屋の中にそれを確認し──俺もまた込み上げる嗚咽を抑えきれずに頽れてはサーフゴーの隣に両ひざを着く。
 その瞬間を迎えてしまった事のありとあらゆる感情が俺の胸には去来していた。

 後悔や悲しみは元より、今日にいたるまで彼女を愛し続けていた日々への深き愛情に至るまで、俺は万感の想いの下、

「……ごめん……………ごめんよ、テセィ……!」

 遂には堪えきれずに両目から涙が溢れた。
 あの所を失ってから今日まで耐えに耐え続けた3年分の涙は留まるところを知らなかった。
 その熱い飛沫に霞むその先には──

 
 あの日のままの見目麗しいテセィの遺体が……眠るように鎮座していたのだった。




エピローグ



 テセィのスマホに残されていた彼女の日記により、俺は全ての真相を知るに至った。
 まずは事の始まりとなった殺人事件──それに関してテセィは潔白であったという告白からそれは始まる。

 彼女とつるんでいたあの男は、予てより関わりのあったマフィアの取引に乗じ、そこから様々な金品や現金の横領を働いていた。
 ある時そのマフィアが秘密裏に進めていた交渉を嗅ぎつけた奴は、それに莫大な価値があると思い込み、その取引材料である『あるもの』を盗み出す。

 木製に鉄鋲という古風な宝箱然としたそれを男は持ち帰るわけではあるのだが、その中に収められていたのは一匹のコレクレーであり……それこそが後のサーフゴーとなる。

 一方の組織とて、たかが一チンピラに出し抜かれるほどマヌケではない。
 すぐに男の犯行を突き止めるや落とし前として男を殺害し、さらにはその罪をテセィへと被せると……次なる制裁の対象を言わずもがな彼女へと定めた。

 この時、いかにテセィが恐怖し絶望したのかが日記にはありありと記されていた。
 それでもしかしあえて単独行を選んだのは……単(ひとえ)に俺を守る為であったのだった。

 自分と関わることで俺があの男と同じ末路を辿ってしまうことを危惧したテセィは、何も言わずに俺の素を去っていた。
 その際に腐れ縁というか、あの日男が盗み出してきたコレクレーと共に彼女の逃避行は始まる。

 しかしながらこのコレクレーの存在がいかに逃亡中のテセィを慰めてくれたのか知れないと日記には記されていた。
 同時にそこには秘密裏に逃亡資金の援助をした俺への感謝も綴られており、それを読みにつけてなおさらに彼女を助けられなかった後悔が俺の胸には募った。

 やがては流れに流れつき……彼女はこのマバセ郡へと辿り着く。
 しかしながら、此処にも安息の場所などは無かった。
 件のマフィアはいたる所にその拠点を持っており、警察の捜査網以上の細かさで彼女は逃亡を把握しては、ついにここまで追い込んだのである。

 そして彼女も遂には絶望の運命に捕らえられてしまうこととなった。

 ある時、食料の買い込みに町へ下りた際にテセィはマフィアの構成員達に発見されてしまう。
 相手は男数人に加え屈強なポケモンもまた従えており、その時にはまだ非力なコレクレーしかパートナーの居なかったテセィはついに進退窮まっては奴らの手に落ちた。

 幸か不幸かテセィを捉えた男達はすぐに組織へ差し出すことはせず、まずは己達による私刑を加えることとした。
 山間の打ち捨てられた建物……この場所へテセィを監禁するや、そこにて男達は欲望の限りを彼女へと尽くしたのだった。

 地元の構成員たる奴らにテセィに対する個人的な恨みはない。
 その行動は単なる性欲の発露から行われたわけではあるが、皮肉にもそれが彼女を生き永らえさせる結果となった。
 とはいえしかしそれも時間の問題だ……男達がテセィに飽きれば、その時こそ彼女は組織へと引き渡されてその人生を終える。
 少しでも時間を稼ごうと、彼女はあらゆる屈辱的な奉仕を男達へと施しながら命を繋ぐ。

 この時の彼女には唯一の頼みの綱があった。
 否、それは『綱』というには心許ない『糸』程度の希望ではあったが──男達に捕まる際に、テセィは自分のキャッシュカードと共にコレクレーを逃がしていた。

 非力なポケモンであることは承知の上でもあったから、あわよくば事態が好転すれば程度の期待ではあったが、それでも微かなその希望はこの地獄で生き延びる彼女の心の糧となった。

 それでもしかし……事態は最悪の結末を迎えることとなる。

 日記はここで終わっていた。
 すなわちそれは彼女がこの場所において殺害させられたことを意味している。
 遺体の胸元には鋭い刺創が見受けられたことから察するに、興奮した男達の一人にテセィが刺し殺されたことは明らかだった。

 そしてその後の展開は──サーフゴーの口から語られることとなる。
 たどたどしくテセィのスマホと俺のキャッシュカードを指し示しながら、身振り手振りでその時の状況を説明するサーフゴーの話は以下の通りである。

 テセィによって逃がされたコレクレーではあったが、然りとて彼女もまた途方に暮れた。
 幼さに加え、己の出自すらも知らないコレクレーには頼るべき相手も手段も持ち併せてはいなかったからだ。
 しかしそんなコレクレーにも、唯一テセィ以外と関わりのある人物がいた……それこそがテセィがキャッシュカードを通じてやり取りをしていた俺に他ならない。

 コレクレーは少額の金銭を拾い集め、時に盗み取ったりしてはそれを遠くいる俺へSOSを込めて入金をした。一時期に振り込まれていた少額のそれがこの行為に当たる訳だったのである。
 それでもしかし、事態が深刻な状態に陥っていることを察したコレクレーは単身で彼女の救出へと向かう。

 そしてこの建物においてコレクレーが遭遇したものは──……手遅れにも、テセィが男によって刺殺される瞬間だった。

 その際にコレクレーは彼女が肌身離さず身に着けていた銀のコインペンダントを受け取る。
 それはまだ両親が存命だった頃、俺とテセィがたまたま訪れた観光先で作った記念コインのペンダントだった。

 俺はテセィの名が冠された金のコインを、そしてテセィは俺の名の刻まれた銀のコインを記念として購入したのだ。

 他人にとっては何の価値もないオモチャのコインではあったがしかし、そこに込められていたテセィの想いは、この世のどんな金額にも替えられない価値となってそのコインを存在足らしめていた。……俺が自分のコインへ抱いていた気持ちと同じように。

 そしてそんなコインを取り込んだ瞬間──コレクレーに劇的な変化が訪れた。
 コレクレーはそこに込められたテセィの記憶と、そして想いの全てを受け継いではサーフゴーへと進化を果たす。

 力を手に入れたサーフゴーはたちどころに場に居た全員を惨殺してはテセィへ手当てを施すも……それが報われることはなく、彼女は既に事切れた後であった。

 それでもテセィを朽ち果てさせることを忍びなく思ったサーフゴーは自身の中で精製した液体金属をテセィに打ち込むや、それにて防腐処理を施す。
 もはや全てを失ったサーフゴーに残されていたものは、煮えたぎるようなその復讐心のみ……それに突き動かせらるままに、彼女はテセィを追い詰めた組織への報復を開始した。

 このマバセ郡にある組織の拠点や関係者を探しだしては片端から潰して回るサーフゴーの生活が始まる。
 その行き先で得た資金や貴金属の類いを戦利品として持ち帰っては自身の強化は元より宝飾品を以てはテセィの遺骸を飾り付け、それでも余る紙幣は町の人間にばら蒔いて与えた。

 同時にこの時、サーフゴーは俺への送金もまた始めていた。
 テセィの中に在る俺への贖罪と、そしてサーフゴーへと受け継がれてなおも消えぬ想いが、それを行うことで繋がれていたのであった。

 そして今日、ここまで続いてきた因縁に一通りの決着が成される。
 マバセ郡を仕切っていた組織幹部の抹殺を果たし、そしてその果てに──サーフゴーは求めてはやまなかった俺との邂逅もまた果たしたのであった。

■     ■     ■

 
 いつしか俺はサーフゴーと妹の遺骸を両腕へ抱き寄せながらに彼女の語る顛末を聞いていた。

 生前にもテセィは俺のことをサーフゴーへとよく語ってくれていたらしい。
 他愛もない昔話や俺のことを話す時、彼女は実に楽しそうに語っては優しい笑顔を向けてくれたそうな。

 いつかは二人で会いに行こう──そう約束を交わした二人の夢は、片方を欠く形で叶えられることとなってしまった。

 ふと左腕の中に抱いたテセィを見下ろせば、そこにはサーフゴーの処置により生前と変わらぬ姿の彼女が今にも起き出しそうな寝顔で俺にもたれていた。
 ついでサーフゴーを見やれば、彼女もまたテセィへと投じていた視線を上げては俺と視線を絡ませる。

「……これからどうするんだ? 何がしたい?」

 場違いなほど穏やかに尋ねる俺に、サーフゴーはその一時視線を伏せた後、身を起こしては俺とテセィを両腕に抱いた。
 そのまま額を俺の胸元へ押し付けてはただ固まるばかりの彼女を、俺もまたその背を抱いて撫ぜてやる。

 これからどうするのか──それこそは俺自身への問いでもあった。
 俺もまたそれを考えあぐねては再びテセィを見下ろした時、本当にくだらない思い付きをしてしまう。

「いっそのこと……全部、壊しちまうか」

 呟きのような俺の声に反応してサーフゴーが顔を上げる。

「俺もお前も大切なテセィを失った……こいつがマフィアの勝手な落とし前でやられたってんなら、そのマフィア共にも落とし前を着けさせるべきだ」

 最初サーフゴーは俺の言っていることを理解していない様子だった。
 復讐のことを言うのであればそれは今日、マバセの最後の幹部を殺したことにより果たされているからだ。

「こんな奴らなんて所詮は末端だ……上にはもっと、こいつらの大元になっている組織や連中がいる」

 言いながら俺は自身の血が滾る思いを感じていた。

「そいつら全員をぶっ潰した時こそ、テセィの敵討ちが完成する……それを俺達の手でやらないか? サーフゴー」

 その言葉と共に互いの視線が結びあった時、俺達の心は燃える信頼で結ばれるのを感じた。
 いつしか固く抱き合いながらに俺とサーフゴーは……否、俺達3人はそれを心に決める。

 どこまでやれるのか、どこまで行けるのかは分からない。
 それでもしかしこのサーフゴーと行けるところまで行こうと俺は固く心に誓う。
 あの日、テセィを手放してしまった後悔を繰り返さぬよう──


「死ぬときは一緒だ……3人で行こう」


 今度こそはしっかりと、俺はサーフゴーとテセィを抱き締めるのだった。











【 愛と幻影のサーフゴー・完 】


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