&size(25){''Welsh Onion ~壱~''}; ---- 第一次世界大戦は当然に勃発した。 世界中のポケモンが兵として駆り出され、多くの命が失われた。 兵も、その家族も、無関係なポケモンも・・・。 生き残っている奴もいた。 そんな奴は疲労しても極限を超えて戦わされ、過労死していった。 なんで、戦争なんか起こったんだ? 政治のもつれか?どっかの独裁者の気まぐれか? 一時期はそう思ったさ。 望まなくったって、相手を傷つけなきゃならねえ。 一人殺しゃ殺人犯、大勢殺しゃ英雄ってか?冗談はよしてくれ。 なるべく殺さないようにしたさ。それでも、何人も殺したさ。 罪悪感ハンパねえな。 そのうえ、何の嫌がらせか、表彰されちまった。 &ruby(マーダラー){殺人者};だと?ふざけるな。 なにが殺人を国際認可するだ。笑わせるな。 もう、だれも、殺さねえ・・・。 #hr 「おい、止まれ。俺様は軍の者だ」 「・・・・・・」 「お前だ、お前、そこのカモネギ」 「ん?おれ?」 「そうだ、お前だ」 「何の用?」 「職務質問だ」 「いやいや、何か怪しいことしたかよ。朝の散歩してただけだぜ?」 「特にしてないが、お前がザンエイ=エルキュルスである可能性があるからな」 「何、その格好良くしようとして変な感じになったみてえな名前。お前、ネーミングセンスねえんじゃねえの?」 「俺様がつけたわけじゃないっ!なんであのにっくきカモネギにそんな格好いい名前付けなきゃならないんだ!もっと屈辱的な名前にしてやるよ!」 「”クズ”とか、いいんじゃないか?」 「クズ?なるほど、確かにお似合いだな・・・」 「クズ=ザングース」 「俺様のことか!?俺様がザングースだからなのか!?」 「気に入ったんじゃなかったのか?」 「違う!何で俺様の名前の話になってる!?あのカモネギの話だろう!?」 「まあまあ、落ち着け、ザングース氏」 「名字みたいに言うんじゃない!!俺様の名字はザングースじゃないぞ!」 「え、着ぐるみ?」 「姿はザングースだが、名字は違うといっている!」 「名前はクズなんだな」 「そういう意味で言ったんじゃない!俺様の名前はレンブロット=フォーテスキューだ!」 「レンブロット=フォーテスキュー=クズ=ザングース」 「なんでだよ!?というか、何か響きがいいのは一体どう言う訳なんだ!?」 「気に入ったみてえだな?」 「気に入るわけがないだろう!くそ、さんざん侮辱しやがって!」 「軍人にあるまじき言い回し」 「黙れ!もういい、侮辱罪で連行してやる!書類書くから、名前言え!」 「ザンエイ=エルキュルス」 「・・・・・・は?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「峰打ち!!」 「ぎゃあっ!!」 やれやれ、やっと切り抜けたぜ。 ここのところおれに挑戦してくる奴が多くなったな。たまーにさっきみたいな軍の犬・・・じゃなくて山猫がきたりするから、あしらいにも苦労する。 さっきのザングース?忘れていいぞ。たぶん、二度と出番ねえから。 改めて。おれはザンエイ・エルキュルス。まあ、カモネギだ。 最近は、気分を変えて地上を歩こうってときにやってくる。散歩してるだけだってのに、まるで磁石にひきつけられる砂鉄みたいにあつまってくるぜ。迷惑だ。 『無殺生』の誓いをたててからは、あんまり戦わなくなった。さっきみたいに適当にあしらうのことのほうが多い。基本的には。 問題なのはノリの悪い奴だ。さっきのザングースは若干ノリがよかったから適当に流せたが、他の奴、たとえばボケの通用しねえ奴が来たら、それは面倒なことになる。そんな奴ってのは大抵パターンが決まっていて、その相場をしめるのが・・・ 「ザンエイ・エルキュルスだな?」 ・・・こうやって、ハナっから名指してくる奴。おいおい、マニューラかよ。氷タイプじゃねえか。『氷のつぶて』とかできそうだな。無駄だとは思うが、あしらってみる。 「それは仮の姿でな・・・。そして、その真の姿は・・・!」 「&ruby(ごたく){御託};はいい。私と勝負しろ」 なぜに私?この雄、紳士かよ。どうせ正義とかなんとか言ってくるんだろうな。 さて、困った。こういう奴はしつこくって、逃げても地の果てまで追いかけてくる。 といっても、みたところ戦闘経験は多く見積もっても100回。体から放たれる気と、体の筋肉がそれを物語ってる。そうとう手加減しねえと殺してしまうような、アマだ。やれやれ。 「わかった、やろうぜ」おれは大儀さをにじみ出させて言った。 ---- #pcomment()