ポケモン小説wiki
Thankyou for the music 第6話~第10話 の変更点


&size(22){―第6話―};

ぺラップが連れてこられたのは、人間が作った小さなホールだった。 
このホールを作った人間は、ポケモン達に充実した生活を送って欲しいと願っていたそうだ。 
それ故、この合唱団のポケモンはほとんどがトレーナーの元で生活をしている。 
ぺラップは合唱の練習風景を見せてもらった。 
(さすがに、上手い・・・!) 
中でも一番目立っているのは、長身で声の高いオニドリルだ。 
「やっぱり鳥ポケモンは声がきれいでうらやましいわ」 
プリンもそんなふうに洩らした。 
プリンは練習を止め、団員を集めた。 
「えーと、この方が先日お話したぺラップさんよ」 
団員はすでにぺラップの事は知らされていたようだ。 
その証拠に、皆が拍手した。 
「彼の歌声は、この合唱団にはなくてはならないものだと思うの。まずは実際に聞いてみて」 
そういうと、プリンはぺラップに視線を移した。歌え、ということらしい。 
彼は得意の歌を一曲、歌いだした。 
ホールで歌うのと外で歌うのとでは全く感覚が違った。 
なんというか、自分だけの世界に浸れる。自分の声がよく響く。 
いい感じで1曲歌い終わった。 
団員は「おぉ~!」っと歓喜の声を上げた。 
その中でオニドリルが満足げに話しかけてきた。 
「うん、いいよ君!君みたいな鳥ポケモンを探していたんだ!」 
ぺラップは、生まれて初めて自分の才能を認められ、涙が出そうになった。 
彼はほぼ、この合唱団に入団することを決めていた。 
「これであのフリーザーを見返せるわね」 
プリンの言葉に、ぺラップは一瞬何だか分からない気持ちになった。 
オニドリルが続ける。 
「でもあのフリーザー、全くでたらめだぜ。俺たちの音楽が全然ダメだとよ。 
実際俺たちはポケモンたちの支持を多く得ている。あいつはそれが悔しいだけさ」 
「そうだね。あんなポケモンに僕達の何がわかるってんだ。僕達はポケモン界一の合唱団になるんだからね!」 
口々に団員達がフリーザーの悪口を言い出した。 
ぺラップはなぜか腹が立ってきた。 
「あなた達は、人間界一の合唱団にはなるつもりはないんですか?」 
ぺラップは半分怒った声で聞いた。 
それに対し、団員は不思議そうな顔をした。 
「人間界一?無理に決まってるだろ。俺たちはそんなバカな夢は見てないよ。そういえば、あのフリーザーもそんなこと言ってたっけ?」 
一斉に団員達が笑い出した。 
それにぺラップはキレてしまった。 
「彼女の悪口は言わないでもらえるかな?悪いけど、もうこの合唱団に魅力を感じなくなったよ」 
ぺラップは最後にさよならを言うと、大股でホールを去った。 

ぺラップはさっきの公園にいた。 
ようやく冷静さを取り戻してきて、だんだんさっきのことを後悔し始めた。 
(せっかくチャンスを掴んだのに・・・) 
一時の感情で行動してしまうのが、彼の悪い癖だ。 
彼は一瞬にして花道から転げ落ちてしまった。 
そんな彼の前に、再び姿を現したのは・・・。 
――――彼女だった。 
「どうしたの?悩み事?」 
「フ・・・フリーザーさん・・・」 
彼女は相変わらず美しい羽を、涼しげに風に揺らしていた。 
彼は昨夜の行為を思い出し、恥ずかしくて彼女をまともに見れなかった。 
「どうしたのよ・・・?顔が赤いわ。熱でもあるの?」 
彼女がぺラップの顔を覗き込んだ。 
ぺラップは頭に血が上り、倒れてしまった・・・。 


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&size(22){―第7話―};

目が覚めると、僕は何か冷たい床の上にいた。 
(ここは・・・・?) 
だんだんと記憶がはっきりしてきた。僕は確か合唱団の誘いを断って、それで彼女に会って・・・ 
(そうだ!彼女は・・・) 
僕は慌てて辺りを見回した。 
意外にも、彼女はすぐそばにいた。 
なんと、冷たい床だと思っていたのは、彼女だった。 
僕はフリーザーさんの羽の中で眠っていたようだ・・・。 
それを考えただけでまた体が熱くなってきた。 
僕は彼女の羽から逃げるように這い出した。 
「何で逃げるのよ・・・?」 
「ひっ!・・・お、起きてたんですか?」 
「君が熱があると思って冷やしてあげてたんじゃないの、もう」 
彼女はいたずらっぽく笑うと、僕の額に羽を当てた。 
彼女の羽はひんやりとしていて気持ちがいい。 
「もう熱は無いみたいね」 
「はい、おかげさまで」 
(本当は原因は貴方なんですけど・・・) 

ここは彼女の住居らしく、人間が使わなくなった小屋をきれいにして使っているらしい。 
部屋の中には、人間が作ったと見られるイカつい機械やら、変な円盤やらが置いてある。 
「で、調子はどうなの?」 
彼女が唐突に聞いてきた。 
僕は合唱団に誘われたが、腹が立って断ってしまった(フリーザーをバカにされて、なんて口が裂けても言えない!)事などを話した。 
彼女はその話に感心したようだ。 
「ふぅーん・・・やっぱり君は見込みがありそうね」 
彼女にそういわれると、他の誰に言われるよりうれしかった。 
もちろん、ポッポに歌が上手いといわれるのもうれしいが、それとはまた別種の恍惚感を得られるのだ・・・。 
「そうだ!せっかくだから、人間の音楽、聴いてみる?」 
そう言うと彼女はさっきの円盤を取り出し、機械にセットした。 
するとどうだ!機械が歌いだしたではないか!! 
しかも僕よりも正確で、大きく、部屋中に響き渡る声だった。 
「うわぁぁ・・・僕、機械に負けるなんて・・・」 
「あたりまえでしょ。この機械はね、人間が作ったCDプレーヤーといって、音楽を録音したCDというディスクを再生するものなの。 
つまり、歌っているのはこの機械じゃなくて、CDに音を吹き込んだ人物よ」 
僕には、とても衝撃的な事実だった。 
これではポケモンなんかが人間に太刀打ちなど出来るわけが無いと身に染みてわかった。 
音楽が終わると、彼女は余韻を楽しむように目をつむっている。 
僕は彼女とは対照的に、心臓がバクバクと高鳴っていた。 
「どう?人間の音楽を聴くのは初めてでしょう?」 
「うん・・・でも、今のって歌なの?なんか音が何層にも重なっているように聞こえたけど・・・。それに、人間の言葉じゃなかった」 
「今のはクラシックというジャンルの音楽よ。人間が作った楽器を超一流の演奏家達が演奏するの」 
「クラシック・・・そんなの初めて知ったよ。音楽は歌しかないと思ってた」 
僕は激しいカルチャーショックを受けた。 

ぺラップは小刻みに震えていた。 
彼女はそれを見つめ、小さくため息をついた。 
「無理も無いわ。世界がこんなにも違うことを思い知らされて・・・」 
「・・・すごい」 
「え?」 
ぺラップは目を輝かせて彼女を見つめた。 
「すごいですよ!人間って。僕も負けてられないぞぉ!」 
フリーザーは唖然としてしまった。 
それを見て、彼は顔を赤くした。 
「すみません、勝手に盛り上がっちゃって・・・」 
「あなたって・・・大物かもしれないわね」 

彼女の音楽の話はとてもためになる話ばかりだ。 
彼女もなんだか楽しそうだ。来客なんて、めったに来ないのだろう。 
話に熱中している間に、外は真っ暗になっていた。 
「あ、どうしよう・・・もうこんな時間だ・・・」 
だがぺラップはまだ彼女と話がしたかった。 
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、彼女はこんなことを言い出した。 
「じゃあ今夜はうちに泊まっていきなさい」 
「え・・・!?」 
「なぁに?女の子の家に泊まったことが無いの?」 
どう見ても彼女は「女の子」という年齢じゃなかったが、そう話すときの顔はまるで少女だった。 
「いや、迷惑じゃないかな・・・と」 
「私がいいって言ってるんだからいいじゃない。それとも・・・君、彼女とかがいて心配なわけ?」 
彼は黙り込んでしまった。 
(彼女・・・そうだ、僕にはポッポがいるじゃないか。それなのに他の女性の家に泊まるなんて・・・) 
彼女が問い詰めてくる。 
「どうなのよ?」 
「う・・・あの・・・」 

―――「彼女は・・・いません、僕」 
「そ。なら遠慮しなくていいじゃない」 
そういって彼女はうれしそうに夕飯の支度を始めた。 
僕はこみあげてくる罪悪感を必死で押し殺した。 


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&size(22){―第8話―};

僕はとてもじゃないが落ち着ける状態ではなかった。 
女性の家に・・・しかも彼女に黙って・・・。 
でも、心のどこかでは期待してしまってるんだ。 
何をって・・・?それは・・・。 

「何ボーっとしてるのかな?」 
「はっ!いや・・・べべ別に・・・」 
彼女は僕が一応男の子だとわかってこんなことしているのだろうか? 
彼女は話し相手が欲しかっただけなんだろう。僕じゃなくても別に良かったんだ・・・。 
「音楽には不思議な力があるのよ。例えば・・・疲れを癒すのとか、カップルの雰囲気を盛り上げるのとか・・・ね」 
「へぇ・・・って、え?」 
彼女の言葉の真意を確かめる間もなく、彼女は1枚のCDをセットし、流し始めた。 
無機質な機械(CDプレーヤー・・・だっけ?)から、音楽が流れ始めた。 
その音楽は、今まで聴いたことがなく、僕は聞き入ってしまったが、聞いているうちに頭がトロンとしてきた。 
「なんだかこの曲・・・妙に気持ちいい・・・」 
僕は頭がぼーっとしていたので、いつの間にか彼女がいないことに気がつかなかった。 
(あれ・・・フリーザーさんは、どこに・・・) 
僅かにシャワーの音が聞こえる。彼女はお風呂場にいるみたいだ。 
僕はなぜか高まる興奮を抑えられなかった。 
彼女が体を洗っている姿を、いやでも想像してしまう。 
さらにこの音楽・・・これが彼女の言っていた音楽のことなのだろうか・・・。 
僕は無意識に自分の一物を握っていた。 
(だめだって・・・こんなところで・・・) 
だが、僕の理性は半分失われていた。僕の頭の中は、早く性欲を処理したいという一心で埋め尽くされていた。 
(彼女が来る前に済ませないと・・・) 
僕は激しく扱いた。 
「ふっ・・・はぁ、はぁ」 
自分自身でも体が熱くなっていることが分かる。 
中でも握っているモノが、一番熱を帯びている。 
シュッ・・・シュッ・・・。 
(う・・・イキそうだ・・・) 
僕は最後の山を登りきりそうになったとき、ふと、目の端に何かが映った・・・。 

なんと、彼女が部屋の入り口で僕を見ていた。 
僕の性欲は一瞬にして消え去り、今度は理性と、羞恥心だけが頭を占めた。 
「あ・・・」 
なんてことをしてしまったんだろう・・・。 
彼女は何も言わない。軽蔑されてしまったんだろうか。 
「ご、ごめんなさい」 
僕は何を謝っているのか分からなかったが、口からは謝罪の言葉が出てきた。 
「どうしてあやまるの?別にいいじゃない」 
彼女の言葉は、全く予想外だった。 
「いつも、自分でやってるの?」 
「え・・・?」 
「だから、自分で処理しているのかって聞いているの」 
彼女は言いながら近づいてくる。僕は何て答えればいいのか分からない。 
「そっか・・・そういえば彼女いないのよね。だったら仕方ないか」 
「うわっ」 
そう言うと彼女は僕を抱えてベッドまで運んだ。 
「じゃあ女の子のアソコ、見たこと無いんじゃない?」 
失われたはずの欲望が、再燃した。 
僕はポッポとは付き合い始めたばかりで、まだ彼女の秘部をじっくりと見たことはなかった。 
というか、恥ずかしくてそんなことできなかった。 
「あの・・・無いです、見たこと」 
「・・・見たい?」 
僕は体中がカッカと火を噴出したかと思う程熱くなっていた。 
一物は、すでに反り立っている。 
「えぇ・・・と」 
だが、いくらなんでもそんな質問に答えられるわけが無い。見たいなんて、口が裂けても言えなかった。 
彼女はゆっくりと股を開き始めた。彼女のこんな姿は、妄想でしか見られないと思っていた。 
「どうなの?見たくないの?」 
彼女は聞いてくる。僕はもう我慢できなかった。 
「見たい・・・です」 
「そ。なら、ぺラップも私に見せて頂戴」 
「え・・・何を、ですか?」 
「さっきの続きよ」 
まさか、彼女の前で自慰をしろというのか・・・。 
そんなことしたら、恥ずかしさでどこか知らない土地へ飛んでいってしまいそうだ。 
「それは・・・」 
「出来ないの?残念ね」 
彼女は開きかけた股を閉じてしまった。 
もう僕に考える余地など無かった。 
「あの!・・・やります・・・」 
「そう・・・いい子ね」 
僕は再び屹立した自分自身を握った・・・。 

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&size(22){―第9話―};

僕はもう一筋の理性も失って、ただ自分のモノを扱いた。 
いや、理性ならある。彼女になら従ってもいいという理性が、働いているのだ。 
彼女が僕の恥ずかしい姿を見ている。その事実が、よりいっそう僕を興奮させる。 
「はぁ・・・はぁ・・・」 
約束どおり、彼女の秘部が、僕の目の前に開かれている。 
彼女の美しい体の中でも、最も美しく、形が整った部分だった。 
僕は無意識のうちに、彼女の秘部に釘付けになっていた。 
「いつもは、どんなこと想像しているの?」 
「え・・・?」 
「だから、何かイメージしながらやるものでしょ、こういうのって」 
また彼女の恥ずかしい質問が飛び出した。 
いつも想像していること・・・。 
別に、いつも彼女の裸をイメージしている訳ではないのだが、ついこの間イメージしたそれを、拭い去る事はできない。 
「え・・・と、女性の裸・・・とかです」 
「ふ~ん・・・結構普通なのね。あ、手が止まってるわよ」 
そういうと、彼女は自分の羽を僕のモノにそっとあてがった。 
「ふぅわ!!・・・あ・・・」 
彼女の羽はヒンヤリとしていて、気持ちが良かった。 
だが、それよりも、彼女のテクニックが尋常ではなかった。 
彼女は僕のモノを優しく、撫で回すように刺激してくる。 
僕はあっというまに絶頂を迎えそうになった。 
「う・・あぁ・・・はぁ!!」 
すると、彼女は扱いていた羽を急に止めてしまった・・・。 
「はぁ・・・うぅ・・」 
僕はすんでのところで射精にはいたらなかった。 
「だめよ、まだイッちゃ・・・。ほら、音楽を聴きなさい」 
音楽はさっきとは違うものが流れていた。 
彼女はまるで音楽に合わせるように、再び僕のモノを扱き出した。 
「うぁ・・・・あ・・・はぅ!」 
僕はイッてしまわないように、音楽だけに集中した。だが、それも長くは続かない。 
再び絶頂に近づいたが、このままでは彼女の体にかかってしまう。 
僕は渾身の力を振り絞り、射精を我慢した。 
「はぁ・・く・・・フリーザーさん・・・イッちゃう・・・どい、て・・・」 
「もうイッちゃうの?早いわ・・・・」 
「う・・・あぁ・・イク・・・イッちゃうよぉ!」 

僕の液は、彼女の美しい羽にかかった。随分じらされたためか、今までに見たことが無い量が出た。 
「はぁ・・・はぁ・・・」 
僕はもう気絶してしまいそうなほどの快感を感じた。やはり、彼女はいい・・・。 
「んもう・・・羽がヌルヌル・・・」 
「あ・・・」 
彼女は、羽にかかった僕の精液を、丹念に舐め取った。 
(僕の・・・なめちゃった・・・) 
彼女は羽をきれいにし終わると、僕の方を見た。 
「どうだった?自分でするよりよかったでしょう?」 
「あ・・・はい。とても・・・」 
「こんな時になんだけど・・・相談があるの。聞いてくれる?」 

「実は、今年の秋に、人間が主催する音楽祭があるんだけど、その際にポケモンのミュージックコンテストがあるのよ。 
基本的に、人間がポケモンに音楽をコーチするんだけど・・・どう?私があなたをコーチするっていうのは・・・?」 
「つまり・・・フリーザーさんにコーチしてもらって、その大会に出る・・・と?」 
願っても無い話だ。人間の主催する大会なら、人間にアピールするいいチャンスだ。 
ましてや、彼女が僕にコーチを・・・。 
「そ。面白そうじゃない?それに、成績優秀者同志で、バンドを組めることになってるの」 
「す・・・すごいじゃないですか!」 
僕はベッドから起き上がった。 
「あら、まだ元気なのね」 
「わ・・・!」 
彼女は再び僕をベッドへ押し倒した。 
「じゃあ決まりね。これからもよろしく、ぺラップ君・・・」 
彼女が耳元でささやいた。 
この後の記憶は、もうなかった。だが、朝まで彼女に弄ばれたことは言うまでも無い・・・。 

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&size(22){―第10話―};
彼女のレッスンは見事なものだった。 
さすがに音楽に精通しているだけあって、今まで独学で音楽を勉強してきたスピードより遥かに速く上達していった。 
そして、夜になればあっちのレッスン・・・。 
僕は毎日いろんなことを吸収しなければならなくて大変だった。 

「ぺラップ君は飲み込みが早いわね。さすが私が見込んだだけはあるわ」 
「いやぁ・・・どうも」 
「まぁ、でもあっちのテクニックの方はまだまだだけどね」 
僕は彼女の家に住み込んで以来、実家には帰っていない。何よりも、ポッポの事が気掛かりだった。 
(プロポーズの約束しちゃったもんなぁ・・・これじゃあポッポが可愛そうだ・・・) 
僕はポッポのことをなるべく考えないようにしていた。 
前まではポッポ以外の女性など愛せないと思っていたが、今は違う。 
フリーザーさんは、ポッポよりも大人の魅力を持っているし、知性的だ。 
二股なんていけない・・・と思いつつも、僕はこの現状から抜け出せずにいた。 
(でも、やっぱりフリーザーさんとはちゃんと別れないと) 

「さてと・・・そろそろ実力を試してもいい頃ね~。小さな大会にでも出てみようかしら・・・」 
彼女は毎日こまめにつけているスケジュール帳(僕の閻魔帳でもある・・・)をパラパラとめくった。 
その姿は、まるで人間のように几帳面だ。 
「ん、これがいいわ。明日、近くの町でポケモンの喉自慢大会があるわ。これに参加しましょう」 
「えぇ!?明日・・・ですか?」 
それは余りにも急すぎじゃないか、と僕は思った。 
「何言ってるの。プロになったら、急にコンサートに出てくださいなんて事がザラにあるんだから」 
その口ぶりは、まるでかつてプロの歌い手だったかのようだった。 
「あの、フリーザーさんはどうしてそんなに音楽に詳しいんですか?いつかも聞いたんですけど、その・・・」 
「あぁ、つまり、ただ単に音楽が好きっていうだけじゃ無いんじゃないか・・・ってことね」 
僕は頷いた。 
「鋭いなぁ・・・あのね、私は昔プロの歌い手として人間のミュージシャンと組んでたことがあったの」 
「へぇ・・・」 
やはりそうか、と僕は別段驚かなかった。彼女のきれいな声と、知識からすればまぁ当然な事だった。 
「私はただ歌を歌えるだけでよかった。でもね、人間は私をただの客寄せにしか思っていなかったのよ」 
「そんな・・・」 
「話題性は十分だったわ。なにしろ歌うポケモンなんだから。でもやがてそれも冷めると、人間達は私を捨てたわ」 
僕は悲しい気持ちになった。彼女は、今じゃ音楽に関わっているだけでつらいはずだ。 
それなのに僕に音楽を教えてくれている。 
「そんなに悲しい顔をしなくてもいいわよ。あなたが私の夢をかなえてくれれば、私は満足なんだから」 
そんな彼女の表情を見ると、とても別れ話など切り出せなかった。 
「僕が・・・僕が、あなたも幸せにしますから」 
「ふふ、ありがとう」 
なんだか上手く茶化されたなぁ・・・僕としてはかなり真剣に言ったつもりなんだけど。 

「ところで、明日の大会には、観覧者を一匹だけ無料で招待できるみたいなの。誰か見に来て欲しい方はいらっしゃるかしら?」 
彼女は無料招待券をひらひらとなびかせた。 
僕は真っ先にポッポの顔が浮かんだ。 
成長した僕の姿を是非彼女に見てもらいたい・・・。 
でも、それは絶対にできない。彼女とポッポを会わせることになってしまうんだから。 
「あ、別にいないならいいのよ。私の知り合いを誘うから」 
彼女はチケットをしまおうとした。 
僕はとっさに彼女を引きとめた。 
「・・・・あ!あの、1匹だけ招待したいです・・・」

IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:37:18" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=Thankyou%20for%20the%20music%20%E7%AC%AC6%E8%A9%B1%EF%BD%9E%E7%AC%AC10%E8%A9%B1" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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