&size(22){―第11話―}; 彼女が「小さな大会」と呼んだそれは、僕にとっては決して小さなものではなかった。 なにしろ、参加者は約100匹。会場も人間の人気ミュージシャンがライブをするような有名なホールだ。 僕は開始数時間前からあがってしまった。 「ちょっと・・・平気?顔色が悪いわよ」 「あ、大丈夫・・・たと思います」 彼女が呆れ顔をするのがチラリ、と見えた。 (情けないな~・・・こんな事じゃ立派な歌い手になれないぞ!しっかりしろ、僕!) 心の中でそう唱えたが、震えは一向に収まらなかった。 「そうだ、ぺラップ君。招待者はもう来たのかしら?」 「は、いや、まだだと思いますけど・・・」 そうだ、今日は「あいつ」が見に来るんだ・・・。 それを思い出し、僕は逆に燃えてきた。震えは自然と収まっていった。 ふと、観客席にその姿が見えた。向こうも僕に気がついたようだ。 「久しぶり・・・!」 「・・・よう。まさかお前が俺を招待してくれるなんて思ってもみなかったぜ・・・」 と、彼はニヤリと笑った。その笑いは相変わらず嫌味たが、これも懐かしい。 僕が招待したのは、ライバルであるヤミカラスだった。 真っ先に僕の成長を見てもらいたかったのだ。 「それにしても、お前も随分でかくなったもんだな。こんな大会に出るなんて、大丈夫かよ・・・」 「心配ないって。僕は優秀なコーチの元で練習を積んだんだから」 「その優秀なコーチってのは、まさかあの女か・・・?」 彼が指を指す方向から、フリーザーが優雅に歩いてきた。 「あら、あなたがぺラップ君のお友達?こんにちは」 ヤミカラスは明らかに狼狽している。 「あ、ども。こちらこそ」 彼女は一度だけニコリと笑うと、ステージの奥へと消えていった。 「おい、あのフリーザーって、まさか歌姫!?」 「・・・歌姫・・・って何?」 「知らねぇでコーチしてもらってたのか?・・・呆れたぜ。彼女は俺たちポケモンの間でも有名だぞ」 知らなかった・・・やはり彼女はとんでもない女性だったようだ。 僕はそれが逆に誇らしかった。さらに、自信にもなった。 「さてと。僕は準備しなくちゃ。しっかり見ててくれよ!」 僕は彼を残し、ステージへ向かおうとした。 それを、彼が呼び止めた。 「待てよ!・・・・お前、まさかあの女と付き合ってんのか?」 ドキリ、と心臓がはねるのを感じた。 付き合っている・・・と言えるのだろうか? 僕は確かに彼女と親密な関係になりつつあるが、正式に交際の約束を交わした事は、無い。 「え・・・と。付き合ってはいないよ」 僕は苦し紛れにそう答えた。 彼は明らかに納得してなさそうな顔をしていた。 「ま、ならいいけどよ。ポッポと二股かけてたんだったら、俺怒るぜ」 ハハハ、と僕は曖昧に笑った。 僕はステージの裏の控え室に入った。 控え室には出番を待つポケモンと人間のコーチがそわそわとしていた。 その中でも、やはり彼女は目立っていた。 ポケモンだからとか、そういうのではなく、彼女には華があった。 「おかえり。ど?緊張は取れたかな?」 「あ、はい。友達に会ったらすっかり」 彼女が満足そうに笑ったとき、大会の主催者による始まりの合図が知らされた。 僕の出番は22番。 僕はそれまでどうして過ごそうか迷った。 参加者は発声練習をする者もいれば、ただじっと目をつむる者もいる。 僕はじっと座っていたが、その隣にフリーザーさんが座った。 「ぺラップ君。さっきの話、本当?」 「え?さっきの話って・・・?」 僕は嫌な予感がした。自然と汗がにじんできた。 「二股がどうとかって話よ」 聞かれていた・・・。 僕はどうしてこう運が無いのだろう・・・。 「う・・・あの・・・。ごめんなさい。僕、実は付き合ってる彼女がいるんです・・・」 僕はついに告白した。 だが、彼女は特に表情を変えることは無かった。 その時だ。 「22番のぺラップさん。出番です」 僕の出番が来てしまった。 さっきの彼女の言葉のせいで、僕は再び緊張してしまった。心の整理が全く出来ていない。 僕は彼女とステージに立つと、観客席を見下ろした。 観客席には、一杯に客が入っている。 僕は一層震え上がってしまった。 (もうダメだ・・・緊張して・・・) とても歌えるコンディションではなかった。 僕は棄権を宣言しようと司会者のもとに近づこうとした、その時。 彼女に身体を引き寄せられ、僕の嘴と彼女の嘴が重なった・・・。 (・・・・!?) 会場が静まり返った。 「・・・フリーザーさん、何を・・・」 僕は小声で彼女に囁いた。 彼女は嘴を離すと、僕の耳元でつぶやいた。 「緊張は取れた?」 どうやら彼女は僕の緊張を解こうとしてくれたらしい。でも、なにも公衆の面前で・・・。 さらに彼女は言葉を続けた。 「私、あなたの事好きよ。だから、きっとあなたを手に入れる」 僕の頭の中は真っ白になった・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―第12話―}; 役目を終えたステージは、先ほどまでの熱気がウソのように静まり返っていた。 ステージの裾には、今日の優勝者の写真が額に飾られている。 当然、その額に入っているのは僕ではない。 僕は、あの後・・・つまり、彼女に衝撃の告白を受けた後の記憶が無い。 どのようにして歌い、どのようにしてステージを降りたのか全く覚えていないのだ。 ただ、友人のヤミカラスの顔を見た限り、散々な内容だったに違いない。 そうして、僕は既に誰もいなくなった観客席に呆然と座り込んでいるという訳だ。 「・・・隣、いいかな?」 僕はその声に一瞬体が火照るのを感じた。 彼女は僕の隣に座ると、深いため息をついた。 「残念だったわね・・・あんなにいい歌声だったのに・・・」 「・・・気休めはいいですよ。所詮僕なんて、小心者ですから」 僕は彼女にこんな事を言うつもりではなかった。 だが、たまった苦しみを誰でもいいから吐き出したくもあった。 「何言ってるのよ。あの時の観客の顔、見なかったわけ?」 僕は彼女の言っている事が理解できずにいた。 「観客席なんて・・・見る余裕無かったですよ」 「君のお友達も言ってたわよ。あんなに上手くなってるとは思わなかったって、悔しがってたわ」 どういうことだろう・・・? 彼女の言う事を整理してみると、僕は良いパフォーマンスをして、観客を魅了した。それでも、優勝者には選ばれなかった・・・? 「やっぱりあの時のキスがいけなかったのかしら・・・」 彼女はまたため息をついた。 キス・・・その言葉で僕の心臓は高鳴った。 あの時、彼女は確かに僕に口付けをした。しかも大観衆の目の前で。 あれじゃ、僕達がそういう関係だと公に発表したようなものではないか。 「フリーザーさん!!どうしてあんな事を・・・!いたずらにしても限度がありますよ!」 僕は恥ずかしさを隠すように、彼女に激しく意見した。 「どうしてって・・・言わなかったっけ?あなたが好きだからよ」 「う・・・」 そうだ、彼女は僕を好きだといった・・・・。 じゃあ僕は・・・・? 「あの・・・フリーザーさん・・・」 「なぁに?」 僕は彼女の目を見つめた。 初めて出会ったころと同じ、透き通った、美しい瞳・・・。 僕は思わず、絶対に許されぬ言葉を口走りそうになる・・・。 ・・・・「帰りましょうか・・・」 翌朝、僕はいつものように彼女の胸の中で目覚めた。 彼女の胸は、呼吸に合わせ、規則正しくリズムを刻んでいる。 僕は一体どうすればいいのだろう・・・? 一度に2匹の女性を愛する事など、実に非道徳的だ。 そう分かっていながら、この現状から抜け出す事ができない。 まるで、底の見えない蟻地獄にでもはまり込んでしまったような・・・。 そんな僕の気持ちを晴らしてくれるのは、やはり音楽だった。 昨日、本当に最高のパフォーマンスが出来たというのなら、これからもそれに磨きをかけたい。 僕はいつものように彼女とレッスンを開始した。 歌うのはいつもの曲。 ビゼーの「ミカエラのアリア」だ。 歌い始めて、すぐに異変に気づいた。・・・なんだかとても気持ちが悪い。 なんだろう、この感じ?すごくもどかしい。 そしてその気持ち悪さが何であるかを理解するのに、それほど時間はいらなかった。 「・・・声が・・・出ない?」 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―第13話―}; 「どうして・・・!?声が・・・」 ぺラップは一瞬にしてパニックに陥った。 彼の喉からは、あのいつもの美声は発せられない。 彼の喉は、まるで昔からそんな機能を持っていなかったかのように、動かし方を忘れていた。 彼の元へフリーザーが駆け寄ってくる。 「どうしたの!?ぺラップ君・・・!」 彼には彼女の姿が全く目に入っていなかった。彼の眼球は行き場を失ったかのようにグルグルとせわしなく動いていた。 フリーザーがぺラップの肩を強く抱いた。 「しっかり・・・!」 ようやく、ぺラップは彼女を見た。 「あ・・・フリーザー・・・さん」 「良かった。話はちゃんと出来るみたいね」 ぺラップは絶望した。 彼が今まで自分を愛してこられたのは、その自慢の声があってこそだった。 もう一度歌ってみる・・・。が、やはり声は出なかった。 なぜしゃべる事はできるのに、歌う事ができないのか? 彼は魂の抜けた抜け殻のように、彼女に抱かれていた。 結局その日は何度も歌う事を挑戦したが、一度も歌う事は出来なかった。 ぺラップの脳内では、すでに自分自身の歌声がどんなものであったか、思い出せないでいた。 フリーザーが彼のベッドにそっともぐりこんだ。 彼の体に、ヒンヤリとした感覚が伝う。 「明日、お医者さんに見てもらったほうがいいかもね。もちろん、歌の専門家よ」 「お医者さん・・・それって人間ですか?」 「ううん。彼女はポケモンよ。ポケモン専用のお医者さん・・・って所かな。私も何度も彼女には助けられたし」 ポケモン・・・それを聞いてぺラップは幾らか安心した。 それに、彼女が絶対の信頼を置いている程の医者だ。きっとこの病気もすぐに治してしまうに違いない。 「彼女はここから南に少し行った所の森にいるんだけどね・・・」 「南の森・・・って言ったら僕の故郷じゃないですか」 ぺラップは、しばらく実家に帰っていなかった。 久しぶりに森の皆に会いたいし、あの森のおいしい木の実も食べたい。それに・・・ 「そうなの。だったらなおの事いいわ。病気を治すには心の休まる場所がいいって言うし」 「・・・迷惑かけてごめんなさい。すぐに治して帰って来ますから」 ぺラップは謝った。 「いいの、いいの。そんなに慌てなくたって。ゆっくりしてくればいいわ」 それに対し、フリーザーは優しく笑った。彼女はまるで風邪をひいて寝込んでいるわが子にでも話しかけているようだ。 突然、フリーザーがぺラップの上に乗りかかった。 「わ・・・何するんですか・・・!?」 「だってこれから暫く会えなくなるでしょ。だから、その分今日はたくさんしましょ・・・」 そう言うと、彼女はゆっくりと体をぺラップに押し付けていった。 ぺラップの体中を彼女の冷たい体が覆う。 ぺラップはすぐに勃起してしまった。 「ふふ・・・こっちまでつかえなくなってたらどうしようかと思ったわ」 2匹はいつもどおりのオーラルセックスをした。 だが、今日はいつもと違う展開が待っていた。 「そろそろいいかしらね」 彼女はいたずらっぽく笑うと、そっと彼のモノを秘部へと導いた。 「え!あの・・・入れ・・・入れるんですか?」 彼女とは今まで一度も本番まで行った事が無かった。彼女とは常にオーラルなセックスしかしてこなかった。 「早く良くなるように、私からの処方箋よ」 彼のモノは完全に彼女の中に納まった。 ぺラップは初めて味わうその感触に、すぐさま果てそうになった。 「あぁぁ・・・気持ち、いいです」 彼女の中は他の部位と異なり、暖かかった。 彼女はゆっくりと腰を動かし始めた。 「ん・・・あ・・」 彼女も快感に顔を歪めた。彼女のこんなに気持ちよさそうな顔は初めてだった。 「うぁ・・はぁ・・・ぺラップ君の・・・すごくいいわ」 「そう・・ですか。でも、僕・・・もうダメです」 「ダメよ、まだイッちゃあ。イク時はいっしょ・・・」 彼女は彼の気をそらすために、嘴を重ねてきた。 2匹の舌が絡み合う。 「あぁん・・・ダメ・・・私も、イッちゃいそう!」 「はぁ、はぁ・・・もう、出そうです・・・!!」 フリーザーはぺラップの体から離れ、彼のモノを咥えた。 「あぁぁぁぁあっ!!!」 白い液体が、彼女の口内に放たれた。 さすがに、中には出させてもらえなかったのでぺラップは少しがっかりしたが、それでも満足だった。 「はぁ・・・一緒にイクって・・・言ったじゃないですか・・・」 彼女は口から彼の液体を吐き出した。 「うふふ・・・やっぱり、お楽しみは残しておきたいじゃない?」 これが、彼女との最後の夜になるとは、ぺラップは思いもしなかった・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―第14話―}; 約1ヶ月ぶりにふるさとへ戻った僕。 森は以前と何ら変わらずに、豊かな緑で溢れていた。 フリーザーさんによると、その先生は森の奥深くに住んでいるらしい。 先生はかつてフリーザーさんとも歌仲間だったようだが、彼女いわく、「下手の横好き」だと。 先生の所へ行く前に、僕は寄りたいところがあった。 それは僕の家だ。もう1ヶ月も開け放っていた自宅は、さぞボロボロになっているだろうと思われた。 だが、驚いた事に、家の外観は以前と変わらず、枝も切り落とされ、美しい状態に保たれていた。 (?どうしてだろう・・・) 僕はなんだか不安になった。 僕が不在の間に、誰か知らない鳥ポケモンが住み着いてしまったのかもしれないからだ。 そんな訳で、僕は暫く家の前をウロウロするハメになった。 「・・・ぺラップ?」 ふと、誰かが僕を呼んだ。声は、僕の家の中からの外を覗く者から発せられたものだった。 その声には聞き覚えがあったが、声の主には見覚えが無かった。 「え・・・と・・・」 僕は見知らぬ客に声をかけられ、どうすればよいのか困ってしまった。 だがすぐに、そのポケモンが誰であるかを悟った。 「まさか・・・ポッポ?ピジョンに進化したの・・・?」 見違えるほどに大人らしくなったピジョンが、優しく微笑みながら頷いた。 「おかえり!あなたがいない間、ずっとあなたの家を守ってたのよ」 彼女はそういって、僕の元へ飛び降りてきた。 羽はしなやかに伸び、ふっくらとした胸元は、もう少女であった彼女の面影を微塵も感じさせない。 「きれいに・・・なったね」 僕は思わずそうつぶやいた。彼女の品の良い顔は、うれしそうにほころんだ。 「あなたが頑張ってたんだもの。私だって、少しくらい綺麗にならなくちゃ、ぺラップに申し訳ないじゃない?」 ピジョンが僕に抱きつく。彼女の羽からは、女性特有のいい香りが漂っていた。 「歌・・・上手くなったの?」 僕から離れると、彼女は期待のこもった目で僕を見た。 僕はとても申し訳なく答えた。 「それが・・・少しスランプ気味でさ・・・治療の一環で気分転換に帰ってきたんだ」 「そうなの・・・でも、あなたにまた会えて、私、とってもうれしい。ずっと、あの夜の事が忘れられなかったんだから・・・」 彼女は少し恥ずかしそうに話した。 あの夜・・・つまり、彼女と初めて行為をした夜の事だ。 僕は、美しくなった彼女を抱きたいという衝動に駆られたが、必死でその煩悩を消すと、本来の目的を話した。 「この森の奥にお医者さんがいるらしくて、そのポケモンに診察してもらってくるよ」 彼女と軽いキスを交わし、僕は性欲から逃れるようにその場を去った。 日も暮れかけてきた。 ぺラップは相変わらず森の奥を目指して飛んでいた。 さすがに半日以上飛び続けるのはしんどくなってきた。 森も、今まで踏み入った事がない地区までやってきていた。 辺りは不気味に静まり返り、好き勝手に伸びた草木がより一層怪しさを増していた。 しばらくすると、ぺラップは小さな洞穴にたどり着いた。洞穴からは淡い光が漏れている。 (きっとここだな・・・) ぺラップは恐る恐る、中を覗いた。 「すみません・・・!オオスバメ先生はいらっしゃいますか・・・!?」 彼の声が洞穴にこだまする。 洞穴は、木の実の殻やら、何かの本やらで散らかっており、とてもポケモンが住んでいる状態には思えなかった。 少しして、穴の奥から誰かが現れた。 「あらぁ?お客さんかしら?この前に来たお客さんは、とても大柄な男だったけれど、いびきがうるさかったからすぐに追い返したわ。あなたは・・・うるさくなさそうね」 洞穴の主人である、メスのオオスバメがこれだけのことを一息で言い終えた。 「ええと、フリーザーさんの紹介でやってきたぺラップです。今日は先生に診てもらいたくて来ました」 ぺラップは緊張した面持ちで話した。 「あぁ~、だめね。あたし、夜は診察したくないの。だって、夜って不思議な気持ちになるじゃない?それは、暗いからって言うのもあるけど」 彼女はあっさりと診察を拒否した。 ぺラップは、医者がここまで変わったポケモンだとは想像していなかった。彼女とは上手く会話がかみ合わない。 「でも、フリーザーのお友達なら話は別よ。さぁ、お入りなさい。そんなところに突っ立ってたら外の風が入ってこないでしょう?」 ぺラップは本当に彼女に任せて大丈夫かと不安になったが、彼女に言われるがまま、穴の奥へと入っていった。 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―第15話―}; 洞穴の奥のほうは、割と綺麗に片付けられていた。 ぺラップは空いている床を見つけ、そこに座った。 「あのう・・・さっそく診てもらいたいんですけど・・・」 「そんなことより、私の歌を聞いてくれない?あなたと出会えた記念に、今思いついた歌なの」 強引に押し切ると、彼女は歌いだした。 フリーザーさんの言ったとおり、彼女の歌声はとても聞けたものでは無かった。 だが、ぺラップは久しぶりに生の音楽に触れ、心地よい気持ちになった。 「始まりなのよ~♪・・・どうだった?」 彼女は大きな声で歌ったせいか、頬がピンク色に紅潮していた。 「あ、歌詞はとっても良かったですよ」 ぺラップは「歌詞は」というところを強調して言ったのだが、その言葉だけで彼女は随分うれしかったようだ。 「そうでしょう、そうでしょうとも。私は歌の事は何でも知ってるの」 彼女は、散らかったゴミなど気にもせず、ぺラップの目の前にどかっと座った。 ぺラップは急に目の前に座られ、ドキッとした。 このオオスバメは、性格こそ変だが、容姿はフリーザーさんにも勝るとも劣らない。 これ以上近づけないほど彼女は顔を近づけた。 「じゃあ、ご褒美をあげる」 そう言うと、いきなり彼女はぺラップを押し倒した。 「ちょっ・・・!!困りますよ」 ぺラップは抵抗したが、体格的にも遥かに勝る彼女にのしかかられ、彼は身動きがとれなかった。 「うへぁ?・・そこは・・・ダメです!!」 オオスバメは、ぺラップの肛門を羽でなじった。 「知ってる?男の子は、ここの穴をいじられるのが大好きなの」 さらに彼女はぺラップの穴を舐め始めた。 「あぁう!・・・ひゃぁ!」 初めて味わう感覚に、ぺラップは思わず声を出した。 「は・・・恥ずかしいですよ、そんな・・あっ!・・・所を、舐められ・・・」 「ふふふ、うれしいくせに。見て、こんなにヒクヒクさせて・・・」 彼女の舌が、彼の穴のさらに奥を攻めた。 「あぅぅ・・、そんな・・・うぅ!」 ぺラップはさらに身をよじった。 「ほうら、ここも元気になってきた」 見ると、彼のモノは大きく膨れ上がっていた。 彼女はそれを優しく握ると、上下にゆっくりと動かした。 「んぁ・・・ダメです・・・!それ以上は・・・」 彼女はなおも彼の穴を舐め続けている。 「あぅぅぅ・・・で・・・出ちゃう・・・!!」 彼は、オオスバメの2箇所攻めについに限界を迎えた。 彼の液が、散らかった部屋の中に飛び散った。 「いっぱい出たわね・・・それじゃ、綺麗にしてあげなくちゃ」 オオスバメは、液の付いた彼のモノを綺麗に舐めとった。 ぺラップは、ここまでの疲れが一気に出て、そのままその晩は眠りに着いた。 結局彼が目を覚ましたのは、次の日の正午あたりだった。 部屋の中は、まるで昨日とは別の場所であるかのように綺麗になっていた。 「あれ・・・ここは・・・?」 「あら、ようやくお目覚めね。昨日はごめんね~、びっくりしたでしょう?」 オオスバメが掃除をしていた。 昨日とはまるで別人のように、彼女は綺麗好きになっていた。 「ええと・・・あなたは昨日のオオスバメさんですよね?」 あまりの変わりように、ぺラップは思わず聞いてしまった。 「もちろんそうよ。実は私、夜になると人格が変わっちゃうの。だから、夜はあまり誰かに会いたく無いんだけど・・・ね」 「じゃあ昨日の晩の事は・・・」 「あ、やっぱりやっちゃったのか・・・。大丈夫。私は一線を越えないようにしてるから」 彼女は、夜の事は覚えていないみたいだ。 彼女は持っていた箒を壁に立てかけると、ぺラップの横に座った。 「さて、じゃあ本題に移ろうか」 「本題・・・?」 「やぁね、診察よぉ。まずは横になってもらえる?」 そういえば、ここへは診察をしてもらいに来たのだった。 ぺラップは横になると、そのまま仰向けになった。 彼女は彼の喉に耳を当てた。彼女の温かい毛が、彼を包んだ。 「う~ん、声帯に異常は無いみたいね。じゃあ、試しに歌ってみてくれる?」 ぺラップは体を起こすと、いつものように発声練習をした。だが、やはり彼の喉から出るのは、ヒュー、ヒューという空気の音だけだった。 医者はむむむ、と唸ると、目をつむった。 「きっと、ストレスが原因ね。何か、歌に関するトラウマが、あなたを縛り付けているみたい」 「ストレス・・・」 「まぁ、簡単に言えば心の病。これが病気の中で一番厄介なのよね。治すには時間がかかりそうね」 心の病・・・。 ぺラップはぐったりとうなだれた。 「きっと、もう一度歌を歌いたい、と強く思えるようになったら、また声が出ると思うわ」 「でも、僕今でも十分にそう思ってるんですけど・・・」 彼女は、ぺラップの肩にそっと手を置いた。 「今まであなたは、自分のために歌を歌い続けてきたのね。でも、それはものすごく自分に負担をかけるの。あなたが、他の誰かのためにこころから歌を歌えるようになったら、きっと今までのあなたとは違うあなたになれるわ」 「誰かの、ために・・・?」 ぺラップはその分からぬ「誰か」を思い浮かべた。 だが、浮かんできたのはモヤモヤとした像だった。 「暫くはこの森でゆっくりするといいわ。何よりもリフレッシュが大事」 「ありがとうございました」 ぺラップは診療所を出ると、トボトボと家に向かって歩き出した。 IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:37:14" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=Thankyou%20for%20the%20music%20%E7%AC%AC11%E8%A9%B1%EF%BD%9E%E7%AC%AC15%E8%A9%B1" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; 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