このお話は、TIME!の第25話までを読んだ方にしかわからないストーリーです。 ミカンが現代の形に至るまでを描きます。 -------------------------------------------------------------------------------- 第1話 ミカンはしばらくユンゲラーに着いていった。 当然カイリューと合流するのだろうと思われたが、ユンゲラーが群れに向かう様子は無い。 「あの、群れには戻らないんですか?」 たまりかねて彼女は聞いた。 「あ、やっぱり気づいてなかったのね・・・」 ユンゲラーは意味ありげな言葉を述べた。 「実はね、あの侵略者の群れは偽者なの。本物は、あんな手荒なマネはしない。私達は、あの偽集団を消滅する為に派遣されただけ」 ますます意味が分からなくなった。 偽者・・・?派遣・・・? 「私の他にもう1匹侵略者の群れのフリをしてた奴がいるわ。私達の目的は、野生ポケモンの群れの解散なの」 「あなたは・・・一体何者・・・?」 「私は、人間が設立したポケモン特殊部隊の隊員よ。名前はリプテル。よろしくね」 そのリプテルというユンゲラーは、ミカンに握手を求めた。だがミカンはそれを無視した。 「あら、冷たいのね・・・さて、これから今度はあなた達の群れを消さなくちゃならない。あなた達野生ポケモンは、人間達に恐怖を与える存在だから」 「どういう事・・・?」 この女性は味方なのか、それとも敵なのか、ミカンは判断できなかった。 さっきは確かに兄をどこかへ飛ばしたし、ケーシィも殺してしまった。 彼女は、その事実を思い出すと、激しい罪悪感に襲われた。 自分だって共犯なのだ。自分が助ければ、兄も、ケーシィも助かったかもしれないのだ。 「う・・・おぇ・・・」 彼女は強い吐き気に襲われ、その場にうずくまった。 「ちょっと、どうしたの?」 リプテルは彼女の背中をそっとひと撫でした。 すると、ミカンの吐き気はすっと無くなった。 「・・・今のは・・・?」 「ああ、今のは自己再生の応用で・・・ん、ちょっと待って・・・!」 リプテルは、何かに意識を集中しだした。 「・・・はい・・・はい、了解しました」 彼女は誰かと交信をしているようだ。 「困った事になったわ・・・さっきのケーシィ、殺すんじゃなかった」 「何があったんですか?」 「話は後。さっきの場所に戻るわよ!」 リプトルはミカンを置き去りにし、さっきケーシィとダイと闘った場所にテレポートした。 「ビーズ!」 ビーズとゴローニャ、そして敵であるベイリーフとストライクがオレンジの群れに運ばれた。 ストライクは全身にやけどを負っている。 「おいおい、なんで敵を連れて来んだよ!」 「まずは、彼の手当てをしてくれ」 当然群れの仲間は納得しない。なぜ自分達を襲った奴を手当てしなくてはいけないのだ。 だが、ミカンは彼の手当てを指示した。 「姐さん、いくらなんでもそれは親切が過ぎますぜ」 「たとえ敵であろうと、傷ついたポケモンを見捨てる事はできないわ。そうだ、ケーシィの傷も見てあげて」 ミカンはケーシィの姿を探したが、いつの間にか彼は姿を消していた。 「姐さん、何言ってんですか?ケーシィは今回の作戦には参加してませんぜ」 「でも、さっき敵のユンゲラーと闘って、傷を負っていたのに・・・」 「ケーシィなら、昨日からずっと木の根元辺りで眠ってますよ」 おかしい、とオレンジは思った。 「オレンジ、その話は本当か・・・!?」 急にビーズの顔つきが険しくなった。 「え・・ええ。さっきまで一緒にいたんだから」 その話を聞くやいなや、ビーズは森の中へ一直線に駆けていった。 それを群れの仲間はただ呆然と見ていることしか出来なかった。 そして、皆思った事は同じだった。 「あいつは一体何なんだ・・・?」と。 -------------------------------------------------------------------------------- ―第2話― ユンゲラーのリプテルがテレポートしてきた場所は、先ほど闘いが行われたばかりの荒々しい場所だった。 地面には、彼女自身が放ったサイコキネシスの残痕が深く刻まれていた。 彼女はサイコキネシスで敵をしとめそこなった事は無い。大抵のターゲットは跡形も無く吹き飛ぶか、大きな傷を負って立てなくなる。 だがいつもそれを証明するはずの対象物・・・つまりケーシィの姿はそこに転がってはいなかった。 (おかしいわね・・・あいつ、確か直撃を受けてここに倒れたはず。木っ端微塵になった訳もないし・・・) その時、その場に一瞬の風が吹いた。 それは風ではなく、彼女の後をすぐに追いかけてきたミカンだった。 「驚いた・・・!足が速いとはあいつから聞いてたけど、ここまでとはね」 驚いて口をポカンと開いているリプテルとは対照的に、ミカンは実に穏やかに尋ねた。 「ケーシィ君は?」 「あぁ、いないわね、おかしなことに。あなたの群れの誰かに連れて行かれたのかしら・・・」 再び風が吹いた。 だが今度の風は先ほどのミカンのものよりさらに激しく、辺り一面に砂埃を巻き上げた。 「!!何なの?」 砂埃がおさまり始め、うっすらと見えたその影は、長い九つの尾のシルエットだった。 「ちぃ、遅かったか・・・」 その影は悔しそうに舌打ちした。どうやらその者も同じものを探しているらしい。 「ビーズ・・・さん?」 ミカンはその男に見覚えがあった。 「あんた、昨日の・・・」 リプトルもそれが昨日アジトをかぎ回っていたポケモンであることにようやく気づいた。 「あんたら2匹、ケーシィに見覚えは?身体に少々の傷を負っているようだが・・・」 その男の声は、低く、冷徹な響きがあった。 「少々の傷・・・?まさか。私のサイコキネシスを受けてかすり傷程度で済むはずがないわ」 「君がどれほどの達人かは知らんが、事実そうだったのだから仕方あるまい。オレンジがそういってたのだ」 ミカンはオレンジの名を聞いて、再び胸に苦しさがこみ上げてきた。 「あの、ビーズさん。群れの皆は、無事ですか?」 「あぁ・・・君の兄が行方不明になった意外は、な」 「私、どうかしてました・・・なぜあんなことをしたのか・・・」 しかしミカンは言いたい事を全て言う事ができなかった。 なぜなら、ビーズが彼女を制止したからだ。 ビーズは森の奥をじっとにらんでいる。 「・・・でてきなさい。そこにいるのは分かっている」 一瞬の沈黙の後、森の奥からケーシィが出てきた。なるほど、右胸にエスパー攻撃を受けた後に見られる独特の傷跡があった。 「信じられない・・・あんなにモロに受けたのに、それだけの傷なんて・・・」 ビーズはリプトルの言葉を無視し、ケーシィに近づいていった。 「ケーシィ君・・・無事みたいだな」 「はい。・・・ビーズさんは?」 「・・・・・・あぁ、この通りだ。それより、ダイ君が飛ばされた所にテレポートはできるかな?彼が私の大事な物を持っているんだ」 ミカンとユンゲラーは、ビーズの意図が全く読めなかった。 ケーシィにしてもそうだろうと思われたが、実は違った。 「・・・いいですよ。やってみます」 思わぬ返答だった。 「ビーズさん・・・一体・・・?」 「話は後だ。ミカン、そのユンゲラーをオレンジのところに案内してやってくれ」 ビーズはそれだけ言うと、ケーシィの肩につかまり、テレポートしてしまった。 -------------------------------------------------------------------------------- ―第3話― 「全く・・・一体何者なの?あのキュウコン・・・」 リプトルは彼の勝手な行動に不満そうだ。 そもそも、なぜ彼女といい、彼といい、ケーシィ君を追いかけるのだろう・・・? そういえば、あのケーシィ君、何だか様子がおかしかったような・・・。 「さて・・・じゃああなたの群れのところに案内してくれるかしら?」 「え・・・!?」 私は迷った。なにしろ、自分の群れ(私にそう呼ぶ資格があるか分からないが)をつぶすといった者をわざわざ案内などして良いものか・・・。 「安心しなよ。今の最優先はあのケーシィだから、あんたの群れの事はひとまずおあずけよ」 それを聞いた私は僅かながら安堵したが、相変わらず罪の意識は消えない。群れの仲間に合わせる顔が無い。 私が黙っていると、彼女が私の肩にそっと手を置いてきた。 「気にしなさんな。あの時のあんた、操られてたのよ。たぶん、あのベイリーフの仕業。あの時は忙しくて、あんたを助ける余裕までは無かったのよ・・・」 私は・・・操られていた? 確かに私は昨夜、ベイリーフに心を乱された。その時になにかまじないをかけられたのか・・・。 「そうだ!今度の事がひと段落着いたなら、部隊への入隊を勧めるわ!あんたの足の速さなら、きっといい隊員になれるわよ!」 彼女は興奮して私に入隊を勧めてきたが、私は困った。 まだ彼女が所属する特殊部隊というものがよく分かってもいないのに、いきなり入隊なんて・・・。 彼女は私の戸惑った表情から察したのか、慌てて言葉を追加した。 「あ・・・勝手に盛り上がっちゃってゴメンね。そんなのいきなり言われても困るわよね。ゆっくり考えればいいわ」 彼女は私の肩をポン、と叩いた。 「さ、まずあんたがすべきことは、群れに戻って仲間に事情を説明する事よ」 そうだ、皆に謝らなくちゃ・・・。 私は、意を決して群れに戻ることを決意した。 ビーズとケーシィの2匹がテレポートしてきた先は、不気味な雰囲気が漂う森の奥地であった。 周囲からは殺気だった野性のポケモンの叫び声が聞こえる。 ビーズは、ケーシィに真直ぐに向き直った。 「・・・さて、正体を現してもらおうか。偽者君」 「な・・・何のことを言っているんですか?ビーズさん・・・」 ケーシィは突然の事に慌てている。 「ビーズさん・・・か。まず疑念の一つ目がこれだ。ケーシィ君と直に会うのはこれで2度目のはずだが、私は彼に名を名乗った覚えは無い。だがら君が私の名を知っているのはいささかおかしい」 「それは・・・群れの仲間に聞いたんですよ」 「うむ。一つ目の疑念だけでは君が偽者である事は証明できんだろう。だが二つ目はどうかな? 二つ目の疑念は、君があのサイコキネシスを受けてほぼ無傷で生還した事だ。私が思うに、あの女のユンゲラー、相当の術者だ。それを正面から受けて無傷でいるなど、訓練を積んだものにしか出来ない芸当だ」 ビーズは静かに、一つ一つ彼の推理を聞かせた。 ケーシィも弁解する。 「あのユンゲラーは、ダイから傷を受けていたから、サイコキネシスの威力が弱まっていたんじゃないかな・・・?」 「なるほど。言い訳が上手いな、君は。まぁいい。 さて、3つ目の疑念は、君のテレポート技術だ。私が覚えている限りでは、君のテレポートはまだ不安定で、この間だって木の上に誤ってテレポートしていた。だが、先ほどのテレポートは、かなり正確なものだった。それも、まだ訪れた事も無いはずの場所に、だ。」 ビーズはさらに疑念を突きつけた。ケーシィはついに黙りこくってしまった。 「最後だ。君は私が(ダイ君に大事な物を渡した)といったときに、明らかに様子が変わった。つまり君は、私の持っている何かを探しているのではないのか?」 辺りは沈黙に包まれた。 そして、偽者といわれたケーシィは、静かに笑いだした。 ケーシィはぐにゃぐにゃと形を変え、そのもの本来の姿、つまりメタモンの形になった。 その姿を見たビーズの推測は、確信へと変わった。ビーズは、彼の正体を知っていたのだ。 「やはりお前だったか・・・フルオロ」 そのメタモンの名はフルオロ、といった。 フルオロは相変わらず不気味な笑みを浮かべている。 そして、開かれた口から発せられた声は、随分と高く、耳障りなものだった。 「まいったよ、降参だ。さすがはビーズ君だな・・・いや・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・「シャルフィーよ」 IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:36:21" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=TIMEOVER%E3%83%BB%E3%83%BB%E3%83%BBMIKAN%E2%80%90SIDE1%205" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"