ポケモン小説wiki
She and I の変更点


Present by [[Geopelia]]

この作品には官能表現が含まれています。ご注意願います

まだ夜が明けきらない頃1人のトレーナーと1匹ポケモンの目が覚めようとしていた

「んんんぅ……むぅ」
先に起きたのはトレーナーの方だった
眠そうに目を擦り同じ部屋に寝る1匹のポケモンを見る。

「まだ寝てるか…」
トレーナーの目線の先には綺麗な水色と白の肌、人魚のような尻尾と尾鰭、そして特徴的な首と頭に付いた鰭
あわはきポケモン、シャワーズである。
トレーナーは大きく体を伸ばし、未だ眠るシャワーズを起こさない用に寝室から洗面所へ足を運んだ。

「この歯ブラシ…もう取り替えないと」
思わず口にしてしまったが今、俺には歯ブラシ1本を買う金にさえ困っている。
その主な原因は安月給の仕事+ゲームの為に生活費を削ってまでソフトを買う俺の趣味
後者は自分でも分かってはいるが止められない…なぜ?面白いから!
「はぁ……」
またため息だ、コレも止めようと思っていても止められない。
気分の問題か……それにしてもあいつまだ起きないのか?

洗面所から寝室へ戻るとあいつは既に起きていた。
こちらに気付き可愛らしく微笑み、「キュン」と鳴き挨拶をしてきた。
「おはよマーチ」
さっきの荒んだ気持ちはこの何気ない挨拶によって吹き飛んでいる。
いつもと変わらない笑顔で、いつもと変わらない挨拶、いつもと変わらない朝だ。

そんなことを思っていると腰の辺りに違和感を感じた…いつも道理マーチが後ろ足で立ち上がりご飯の催促をしている。
わかった、わかったとキッチンに行き朝食の準備を整える。
「出来るまで居間で待ってて」
マーチは頷き「キュン」と言って居間に向かって行った。
さてと意気込みポフィンを作り始める、正直料理は苦手だがポフィンを作るのは何故か得意だった。
何故?と聞かれると困ってしまうのだが…多分あいつを、マーチを幸せにしてやりたい。それが全てだと思う。
だがそれだけで全国ポフィン大会で4位に入れるだろうか?周りからは努力家とか言われたりするが…ポフィンについて特別なことをした覚えは全く無い。
作っているうちに上手くなった…多分それだけ…だと思う。
そうこう思っている内にポフィンは出来上がり、甘い匂いがキッチンに立ち込める。
出来たポフィンを皿に移し、オボンの実を添えて居間に運ぶ。
「マーチ出来たぞ!」
ソファで首を長くして待っていたマーチはその声をきいて勢い良くソファか飛び降りテーブルの定位置に着いた
自分用のモーニングコーヒーと食パン2切を並べ、マーチの前にポフィンを並べる。
「じゃあいただきま~す!」
「キュン!」
とその時だった

ピンポ~ン
無情にも響く呼び出しベル……タイミングが良すぎる。
今まさに朝食を食べようとしている所なのに…
「こんな朝早くいったい誰だよ…」
思わず愚痴を溢してしまった。
時間は7時半を過ぎた辺り、常識のある人間なら来るのが早過ぎる。
マーチもこれには不満の顔を隠せずに"もうっ!"とでもでも言いたげに玄関の方を睨み付けている
いったい何事かとインターカムのディスプレイで玄関を見てみると作業着を着た男が立っていた。
「おはようございます!キャモメ通運です!お荷物お届けにあがりました!」
聞こえてくる声にインターカムで、はいはいと適当に返事をして玄関に荷物を取りに行く
マーチは不満そうな顔でこちらを見ていたが軽く頭を撫でて
「先に食べてていいよ」
と言葉を残し玄関に出向く。
指紋センサーに人差指を滑らせると"ピコン"という電子音の後に、いかにも鍵が開いた時の"ガチャン"というお決まりの音が聞こえてくる。
昔はキーを差し込んで鍵を開けていたが今は網膜スキャンや指紋認証などが一般的だ。
勢い良く玄関を開けると目を丸くして驚く配達員が目に入る。
「あ、おはようございます、マサキ様より冷蔵パックのお届け物です!」
「朝からご苦労様ですね」
「いや~」
それ程でもという返事と愛想の良い笑顔。どうやら皮肉も通じていないらしい…
朝から元気な奴だな…これが営業スマイルとか言う奴か。
「こちらを1秒ほど…」
と言われた通りに網膜スキャンのレンズを見る。
"ピロリィ"と言う電子音
「はい、結構です。ありがとうございました~」
足早に配達車に戻る男…後ろ姿を見て何故か仕事をしている時の自分を思い出してしまった…
俺はあんな熱心に仕事をしているだろうか……
ハッ!と我に返り居間に足を運ばせる。
そういえば宅配便も変わった、昔は印鑑を押して領収書を受け取っていたが、今は網膜スキャンで本人確認と料金支払い、詳細は端末にeメールで自動送信。
郵便は物好きの道楽と化してしまい、年賀状などしか来なくなってしまった…ポストいったい何処に有るんだろうか?

その考えは居間のテーブルを見て消え失せてしまった…俺のパンが無い…玄関に出てから僅か4分余り…
テーブルに並んでいるのは未だに冷めていないモーニングコーヒー…と皿に残るパンの耳…の切れ端。
更に良く見ると、綺麗に食べられたポフィンの皿。そしてソファでこちらを見まいと俯くマーチ…
「なあマーチ俺のパン何処に行ったか分かるか?」
マーチはこちらをチラッと見て首を横に振る。
「何処に行ったんだろな?足が生えて逃げちまったかな?」
こんな嘘を言いつつも内心もう分かっている。
チラッとこちらを見たときにマーチの口元にはリンゴジャムが付いているのを見逃しはしなかった。
「リンゴジャム美味しかった?」
その言葉にこちらを向いて"うん!"と勢い良く頷く。
次の瞬間マーチの顔は"しまった!"とでも言いたげな顔つきに変わっていた。
怒ってないよ?怒らないよ?なぜかって?……怒らない理由が無いな…お腹も空いてイライラしてるし…

……
「まーあーちぃぃぃ!!!」
仏のザウバーと呼ばれた俺だが、食い物の恨みは仏に通用しない…それが聖マリアや主キリストであっても
一方のマーチはショボーンとした顔で少し涙目になっていた…

……
一瞬だが思考が停止する。
やってしまった…泣かせてしまった…こいつが悲しむ姿なんて見たくない…そんな…止めてくれ…悲しむ顔なんて…
「ぅぅ…そんな顔するな」
今にも泣き出しそうなマーチの顔を見ていると…凄まじい罪悪感が湧き上がる…
「ま、マーチ…その…悪かった…パンなんてどうでも良い…だ、だから泣かないで、なっ?」
コクっと弱々しく頷く…だが未だに涙目で在るのには変わらない
ああクソ!何でパン如きであんなに大声を…
「こ、今度好きなポフィン幾らでも作ってやるから…なっ?なっ?」
そう言った瞬間であった
「キュン!!」
先程の涙目から一転、天使の様な笑顔に逆戻りしている…

……!!
一杯食わされた…"うそ泣き"だ!
「あ…えっ?うそ泣き?」
思わず間の抜けた声が出てしまった…"引っ掛かったー"とでも言いたげな満面の笑みを浮かべ"ペー"と舌を出している。
フッと思わず笑みがこぼれてしまう…
「全く…敵わないよ、お前には」
優しく頭を撫でて仲直りをするが、どうやら俺のお腹はご機嫌斜めのようだ。

"グウゥゥ"
とお腹が飯を催促してくる。仕方無いもう一度パンを取りに…

……
しまった!今週分の食料は今日の朝で無くなる…つまり
家には食べ物が全く無い…
何か有るだろうと思いキッチンを漁るが出てくるのは賞味期限の切れた缶詰めやレトルト類…木の実…は流石に食べれないか。
仕方ない町に買いに行こう…
しかし町のスーパーは10時開店…またグゥゥと腹が鳴る…時計は8時丁度を挿している
「お腹と背中がくっつぞ…か」
良く言ったものである。
無意識に腹を擦り何か無いかと家を漁るが有るのはオボンの実やブリーの実と言ったポケモン用の木の実だけで…と、半ば諦めて居た所に先程の荷物が目に止まる。
「これ冷蔵パックだったよな」
…いつの間にやら超理論が頭の中で出来上がっていた。

冷蔵パック=生もの=食べ物=満腹!!!

何か確認せずにパックを開けると中にはリンゴが二つ入っていた…これは丁度良い!
しかしマサキって誰だ?まあ良い今は朝飯だ!!
マーチが目を輝かせてこちらを見ているが…これはやらない!!
"シャクシャク"良い音と共に食べる食べる…
あっと言う間に2つのリンゴはGo to Hell胃袋と言う奈落の底に吸い込まれた…だが異変に気が付いたのは食べ終えて直ぐだった。
「このリンゴ甘くない…こんなに真っ赤なのに」
まるで熟れていない青リンゴを食べたかのような味、酸味が強く酷く不味い。確かポケモンの木の実もこんな味だったな…
こんなリンゴを送ってくるには余程理由が有るんだろうと思いパソコンを起動させる…なぜか急に眠気が…
パソコンの起動音の後に綺麗な女性の声がする。
「おはようございますザウバー様、今日は11月28日木曜日です。今日最高気温は18.24℃、降水確率は2.25%、12時24分~曇りの予報です。流行のジャケットが…」
「うぅ~ん…メール」
音声認識を使いメーラーを呼び出す…体を伸ばして眠気を抑えようとするが、無駄な努力に終わりそうだ。
「メールを開きます」
「ふぁ~あ」
欠伸が出るが音声認識がこの欠伸を該当するメールを探すためのキーワードと認識して検索を開始した。
「ふぁ~あの検索キーワードに該当するメールが…」
だめだ…シャットダウンとパソコンに告げ寝室へ向かう「&color(gray){シャットダウンシマスゴキゲンヨウ};」
「俺もう1度寝るから…おやしゅみ」
マーチにそう言い残し重い足取りで向かう…呂律が回らない…しかし何故だろう?さっきコーヒーも飲んだのに…気を抜くと倒れてしまいそうだ…
睡魔の勝てず布団へ倒れこむ…きっと満腹だから…そういうことにしよう…
思考は停止し意識が無くなって行く…いつも道理に…


……
気が付くと目が覚めていた……何日も寝てしまった様な…今は何時だ?ここは?布団の中?
だがまだ夢の中に居るような…何だろう?自分の体が…違う何かの様な…
ああ、そうか俺は寝たんだった…って事はこれは夢か…夢の中で夢だと思うなんて珍しいな…しかし何だろこの違和感…体が軽い様な…
夢で何が何だか分からない風景が頭から離れず、ある時ふと見た何気ない風景が夢と一緒でこの風景見たことが…と思うことをデジャブとか言うが…どうやら今回の夢は違うらしい
布団の隙間から見える見覚えの有る天井、ホワイトの壁紙、寝室の天井にそっくりだ
周りを見渡そうと少しぼやけた目を擦る…黄色い手で…
…?えっ?黄色?しかも毛でフサフサ…それにこの手…これは肉球?…何が…ど、どうしてこうなった?い、いや落ち着け…これは夢だ…
夢にしては随分とリアルな夢だなと思いつつ布団を少し持ち上げる、お腹の辺りに目をやると黄色の体毛に覆われている…
いつだったか人しか居ない世界で突然人がポケモンに変身する、なんてドラマ見たな…確か主人公は大学生で…
そう考えていると悪い予感がして来る…もしかしたらこれは夢なんかじゃ無く現実なのでは…
「まさかな…」
どうする…ありえない事だがもしポケモンに成っていたら、確かめたい、だけど…ん?今、俺が声を出したのが聞こえたよな…
「き、気のせいだよな……っ!?」
思わず手を…前足を口に当てて口をギュッと閉じる、しかしそうすることで口の中で無理な力が加わり歯茎に痛みとなって伝わる
「ッ!」
……
………
「痛い……ってことは…」

これは夢じゃない…!?

「ぇぇえええええええええええええぇぇぇ!?」
「な、な、なんで、どうしてこんな!?」
分けが分からず悲鳴にも近い声で絶句する…なんでポケモンに成ってしまったのか…それよりもこれは現実か?
夢に決まってる!何を馬鹿なことを…だがその僅かな期待も幻聴によって裏切られてしまう

「ん……うるさいなー……?」
声がする…この家には俺しか……また嫌な予感がする…声の主はどうやら俺の背中の方に居るらしい、だが布団に包まっている俺は向こうからは見えない筈だ
モゾモゾと布団の中で寝返りをうつ…布団と布団の隙間から声の主を探すが見当たらない…やはり夢か…夢だよな
さっきの声は…きっと聞き間違いだろう…
だが…誰か居る…ベッドに何かが乗ったように少しだけ足元の辺りに重さを感じる…そして今度はハッキリと聞こえた
「ザウ?起きてるの?」
その声に言い様の無い不安が押し寄せてくる、この声は幻聴だ!夢だ!そう思いたい…本来ならこの声は聞こえては成らないはずだから…
「もう、起きてよザウお昼になっちゃうよ!」
分かっている、だが…この布団からは出られない、夢か現実か…布団から出たら分かるのかも知れない…夢だと思いたい…
布団から出れば2度寝したあの何とも言えない疲労感があるに違いない、違いない筈…
いきなり視界が明るくなる…あまりの明るさに目が眩む、いつも道理の寝室だ…これは…現実だ…間違無い…だとしたら俺は俺は…

ポケモンに?

頭が真っ白になる、とはこの事か…何がなんだか…だがもっと訳が分からないのは、布団をひっぺがした本人かもしれない
「えっ!?」
やはりそうか…その声の主は酷く動揺していた…当たり前だろう、主人が寝ているベッドに知らないポケモン、サンダースが寝ているのだから…
「あの…その…あなた…誰!」
ポケモンバトルのにしか見せない戦闘態勢で、今だに布団から起きていない俺の顔を上から覗き込むように睨み付ける…
「ま、マーチ?」
普段見せない威嚇した顔に戸惑う…しかしその顔には恐れも混じっている様に見える…そうだよな見知らぬポケモンが寝ているんだから当然のことだよな…
しかし俺がポケモンになったと言って信じるだろうか?
否マトモな奴なら信じるわけが無い…何か良い方法は…
「あ、あのさ…マーチ聞いてくれる?」
マーチは以前威嚇の体制を崩しては居ない…正直ポケモンバトルなんて出来る分けが無い…だが何とかしないと本当にバトルになってしまいそうだ
「信じられないと思うけど俺がザウバーなんだ…」
「はぁ?」
「信じられないのは分かる、けど俺は君の主人だったザウバーなんだよ」
「信じろって…」
マーチは呆れ顔でこちらを見ている…当然だろう、俺があいつなら不法侵入者として即バトルになるだろう…しかし困ったどう説明すれば良いのか…
「じゃあ、あなたが本当にザウなら私が何歳で、私がいつ進化したのか言える?」
「えっ?あの、その…」
突然の質問に動揺してしまう、しかしそれだけでは無い様な気もする…何故だろう妙に緊張する
「答えられる分けないでしょ?」
顔を更に近づけ覗き込むように見てくる…さっきから不安と緊張で上がった心拍数が更に上がる…なんでこんなに緊張するんだろうか…
「えっと、君は今17歳、8年前に君が選んだ水の石で進化したよ」
「はず……ウソ…?」
「信じてもらえるかな?」
当たっている自信は有った…だがマーチが本当に信じてくれるだろうか…もし駄目ならこれから如何すれば…野生のポケモンとして生きていくのか…
「ほんとにザウなの?」
不安そうな顔で首を傾げている…何だろうこの感じ…
「うん…」
小さく頷くとマーチは驚きの表情に変わった
「ええええぇぇぇぇ!!!???」
まるでデジャブを見ているかのような…しかし信じて貰えて良かった。
だがまだ問題がある
「あの、さ…」
これは言うべきなのか?
何だかさっきからマウントポジションの様な体勢を取られて居る為、嫌でも…その…ドキドキすると言うか…とにかく退いてもらわなければ…
「あのさ…あの…そろそろ起きても良いかな?」
これ位のこと何故直に言えなかったのか…何だか顔が熱い…
「あ!ごめんね…てっきり泥棒かと思って…」
そう言うといそいそとベッドから降り、今度は自分のベッドに座る。
「でもさ、何で急にサンダースになっちゃたの?」
「…」
分からない、何故急にポケモンになったのか…首を横に振る俺に少し困惑の表情を見せたが、その顔は直に笑顔へと戻っていた。
「でもこれでザウといっぱいお喋り出来るね!」
何とも楽観的というか、能天気というか…まあマーチはこんな性格だと分かっては居たが…
「あのなぁ」
呆れ顔で返す。
「そうだ!もうお昼だよ、ご飯にしよ!」
ご飯といっても在るのは賞味期限切れの缶詰め位しか無いはずだが…
「でもご飯何も無いよ?買いに行かないと…」
マーチが首を傾げる
「え?でもまだ木の実とか一杯あったよ?」
そうなんだけど…
「木の実は前に食べたけど…美味しく無くてさ…懲りたよ」
「でも今はサンダースでしょ?」
……ああ、そうか、納得、納得
俺はポケモンになったんだから何もパンや米を無理に食わなくても木の実を食えば良いのか。
そう考えると食費が大分浮くな…木の実だけ在れば生きていけるんだから事実上食費は0か…となると今月の新作があと…
木の実の味?あの酸っぱくて青臭い…熟れていないリンゴの様な…あれ?
何か思い出せそとした時マーチの少し困惑気味の顔が視界に現れる
「お昼食べないの?」
ハッっと我に返り首を傾げるマーチに笑顔で返す。
何を思い出そうとしたのか…忘れた…まあいいや!今は楽観的に行こう!何とかなるさ!


お昼ご飯を食べるためキッチンに向かう、寝室からは一番遠くに在るのがキッチンだ。
キッチンに行くには居間を通って行くしかないのだが、今目の前には寝室の出入り口のドアが立ちはだかっている。
人間の時には感じなかったがこのドアノブを回すのが今の俺にとって、どれだけ大変なことか…
しかしマーチがその難問を意図も簡単に解決してしまった。
長い尻尾で体を支えながら後ろ足で立ち上がり、器用に前足でドアノブを回しドアを開けた…
そうか、あいつは毎日このドアを開けているだよな…
「どうかしたの?」
マーチが後ろ足で立ったまま、こちらを見ている。
「いや、器用にドアを開けるなと思ってさ…」
俺には無理だろう、まず後ろ足で立てるのか?俺は…
「そぉう?別にいつものことだし…」
そう言うとゆっくり寝室から出て行く、遅れまいと続いて部屋を出る。
「ザウもその内慣れるよ」
だと良いが…
正直この体になってから変に緊張している…まだ体に慣れていないからだろうか?
それにしても全ての物が今までと違う、テーブル、窓、ドア、テレビ…家具の全てが大きく見える…今の俺にとってこれ等を満足に使えない。
考え事をしていると居間を抜けてキッチンに着いたが、入るなり絶望感が一気に増した…冷蔵庫ってこんなに大きかった?と言うより開けられるのか…これ
「木の実は確か、一番上の冷蔵室だよね…私あそこは空けたこと無い…」
そうマーチが木の実を摘み食いしない様に俺が1番上にした…
なんて事をしたんだ俺は…
マーチが、手が届かないかと後ろ足で立ってはいるが無理だろう…無理な高さにしたんだから…
「ウーン…ザウなら届くかもよ」
マーチでは無理か…となると俺がヤルしかない。
冷蔵庫を押す様な格好で、後ろ足で立ち上がっていく…以外とバランスがぁ
「あわわぁ!うあぁっ!」
"ゴンッ"と鈍い音と共に衝撃が…
「いっっ…ぅぅ」
もろに頭を打ってしまった…
後頭部が割れそうに…何やってんだ俺は…
「ザウ!大丈夫?」
目を開けると心配そうな顔をしたマーチと目が合った…ぶつけた衝撃よりもこっちの方が衝撃が大きい…ドキッっと全身にその衝撃が伝わる。
「あ…だ、だいじょうぶ…」
辛うじて声が出た。
「もう、大丈夫な分けないでしょ、顔が赤くなってるよ…ほら見せて」
顔が赤くなったのは至近距離で目を合わせたからと言いたかったが…誰だって雌と至近距離で目を合わせたら緊張するだろ…?
その考えは後頭部から伝わってくる何とも言えない感覚で消え去った…思わず変な声が出てしまう
「ひぃっ」
「あ…ごめん痛かった?」
ぞわぞわっとした感覚…全身の毛が逆立つのが分かる。
だが次第に痛みは薄れていく、まだ少し痛いが…それよりもこの変な感覚の方が問題だ…
「大丈夫?少し腫れてるけど…」
大丈夫、大丈夫だけど…
「ま、マーチ今な、何して…?」
勢い良く振り返りマーチに問う。
「何って…痛そうだから舐めただけだけど…」
舐めた…なめた…なめ、た?
「んな、な、な、何でそんなrwん、?」
それを聞いた瞬間全身の毛が抜けるような感覚に襲われる…鳥肌を通り越して、全身が痙攣しそうで…
「ごめん、そんなに痛かった?」
「ち、ちがぅwqfev!2qawdf!」
何でこんなに…心臓が破裂しそうに…汗が、脂汗が…何が如何なって…

落ち着け…おちつけ?落ち着いてなんか居られるか!!何でこんなにドキドキするんだ…

「そうだ!ザウ、どっちかが踏み台に成れば届くかもよ?」
いきなりの声にビクッと体が飛び上がる。
まったく、どれだけ俺の寿命を縮めれば気が済むんだ…
確かに踏み台が有れば木の実を取れそうだが…ここは俺が踏み台に成るしかないよな…常識的に…
「あ、俺が踏み台になるから、上手く取ってくれ」
そう言うと、冷蔵庫の下で足に力を入れて動かないように踏ん張る。
「じゃあ、よいしょっと」
背中にマーチが乗る…お、重い、そりゃそうか、サンダースは20kgちょい、シャワーズは25kg近い。
冷蔵室のドアが開けられずにかなり苦戦しているようだ…
「ま、マーチ…は、早く…」

まだ1分と経っていないに、足が痺れてきた…
足の感覚が段々と無くなっていく…上では冷蔵室を開けるのに苦戦しているようだが…

足がもう…
「もう…無理…」
「取れた!!」
その声と同時に立っていられなくなりその場にへたり込む。
「え?きゃっ!」
いきなり足場が崩壊したため、マーチはバランスを崩し、木の実の籠を持ったまま、すっ転ぶ。


……

「うぐ…」
まさか、木の実を取るためにこんなに苦労するとは…しかしマーチは如何したんだろう…転んでから数秒と経っていないが、そろそろ退いてくれても…
俺がへたり込み、マーチが転ぶ、そして俺の背中にマーチ落ちてきた訳だ…正直軽くは無い…。
「マーチ、そろそろ退いてくれない…?」
「……」
返事が無い…まるで失神しているようだ…

マーチの顔は首の辺りに…後ろから抱き付いている様な体制に…って事はこの柔らかい感触は…
ふにふにとしたマシュマロの様な感触、体の位置的に考えてこれは…おっぱ、胸か…
こいつ、こんなにも…おっぱ…胸が…あるんだな…凄く柔らかくて…いやいやいや、何考えてんだ!…いやでもこの感触は…

落ち着こう、そうだ深呼吸だ…
深呼吸で鼻から吸い込んだ空気には何とも言えない、そう、色で表すならピンク色の臭いが含まれている…甘い臭い…だめだ…この臭い…おかしくなる…
また…感じた事の無い感覚が湧き上がって…胸が締め付けられて…苦しくて…変に緊張する。
…俺は…どうしてしまったんだ…
その時、背中でもぞもぞとマーチが動いているの感じる…気がついたのか…
「ん…あ、あれ?…わぁっ!」
背中に掛かっていた重さが一気に無くなる。
どうやら飛びのいたらしい…そんなに驚かなくても…
「ご、ごめんねザウ、バランス崩しちゃって…」
顔が少し赤くなっているような…どっちにしろ悪いのは俺の方だ。
「ごめん、俺が先に潰れた」
「道理で…もう、無理なら無理って言ってよ。」
「すまん…」
「それより木の実は?籠ごと取ったと思ったんだけど」
木の実は確かに取れた、だが、転んだ時に籠は宙を舞い、キッチンに木の実をぶちまけていた。
そこらじゅうに木の実が散乱していて、足の踏み場も無いような状態だ。
「木の実も取れた事だし、お昼にしよ!」
いつもの笑顔、変わらない、だが俺はいつも道理にはいかない…

顔を直視出来ない…

適当に木の実を咥えて、居間に向かう…目にはマーチの後姿が…今まで、これほど異性のお尻を気にしたことは無い…ましてや相手はポケモンだしパートナーでもある。
だが不規則に揺られる長い尻尾から、ちらちらと見える…あれ…に目がいってしまう…
あいつは雌で俺は雄…しかも家に二人っきり…スタイルも良いし…

「ザウ!?」
「はいッ!?」
びっくりして咥えていた木の実をその場に落とす…今日だけで寿命が何年減ったことやら
「食べないの?」
色々と考えている間にいつの間にか居間に着いていた。考えている内容がとんでもなかったが…
ソファの上で木の実を頬張るマーチは不思議そうに首を傾げている。
「やっぱり、木の実は駄目そう?」
「い、いや、そんな事無い…食べるよ。」
少しだけ、木の実をかじる…あの嫌な味がよみがえって来る…
「う、旨い!」
甘酸っぱくて、かなり旨い!これなら何個でもいけそうだ。
ガツガツと口に頬張る。だがそこまで量を食べた訳でも無いのにお腹はもう満腹になってしまった。
いつもマーチが食べている量の3分の1位か…
「美味しかった?」
「かなりね」
先程まで5個位木の実があった筈のソファにはもう1つも残っていない…マーチ食べすぎなんじゃ…
人間の時には他のポケモンの食事なんて見たことも無かったのでマーチが食べる量を疑った事は無かったがこれは明らかに食べすぎだ…
「食べすぎなんじゃ無い?」
「そぉう?ザウが少食なだけだと思うよ?」
「そうなのかな?」
「だって、前にバトルしたガルーラなんて凄い量食べてたよ?」
「大きさが違うだろ!」
まったく、思わず突っ込みが入ってしまう。
「えー、そうかなぁ?」
「いや…」
如何思う?ガルーラとシャワーズを大食い大会に出したらどっちが勝つか、きっと8割はガルーラが勝つと思うよな。

「でもさ、こうしてザウがポケモンになってお喋り出来るのって不思議だよね…」
「う、うん」
そうだよな、ずっと一緒だったのに今日始めて会話するんだ…向こうに伝わっても、こっちには言葉の意味が伝わら無かったんだもんな。

食事の後、今まで話せなかった分を取り返すように、いつまでもお喋りは続いた…
   

この体になって、まだ半日

俺は…マーチの事が…好き…なのかもしれない…
話をしている間、ずっと考えていた…この言い様の無い息苦しさ…このモヤモヤした気持ちは、時間が経つに連れて強くなっていく…
昔、体験した一方的な初恋、それに似ている…

だが、その結末はすでに分かっていた。彼女はポケモンだ。そして最高のパートナーでもある。
そんな彼女にこんな思いを言えるはずも無い。言った所で…相手にされる筈も無い…分かりきっていることだ。

人間とポケモンの間には幾つかのタブーがある。誰が決めたわけでもない…だが人として、それはしてはいけない…
人を殺めるのが人間にとって最大のタブーであるように、ポケモンと関係を持つことはタブーなのである。

元人間の俺にとって、こんな愛などという感情をポケモンに抱くこと自体が異常であり、馬鹿げている。
人間の時も彼女は好きだった、だがそれは愛しているでは無く、単純に可愛い、素敵、綺麗などの表面的なものに過ぎなかった。
今の気持ちは違う…そう…このまま一緒に居れば…彼女を…
頭をぶんぶんと振り、馬鹿げた考えを頭から振り払う。なぜ、俺はこんな事を考えているのか…
考えるな!
そう脳に命令した所で、彼女を思う気持ちが無くなる事は無い…むしろ強くなる一方だった…
「街…れすと…ぃしいお店なんだよー、今度また行きたいな~」
話は全く頭に入らない…こんなことを思っていると知ったら…嫌われるだろうな…
嫌われる…俺は、如何思われているんだろう…好かれているのだろうか…それともまだ信用されていない?

分からない…

如何思われているか、物凄く気になる…気になる?…聞いてみようかな…
でも…嫌われていたら?…でも…好かれていたら…?

聞いてみるか、当たって砕けても…文字道理、砕けるな…心が…
「あのさ…俺は…このままで…良いと思う?」
「ザウが?…私は、今の方が良いよ!言葉も通じるし、それに…」
「それに?」

「それに…ずっと側に居てくれるから…」

え?それは…それは…意味が…分からない。
マーチそれって…それって…ひょっとして。
だぁぁぁああ、なんでこう俺の頭は…ピンクなんだ…終わってるだろ、人として…でも…

"側に居て欲しい"か…

その言葉に、更に息苦しさが増す様な気がした。

マーチの問題?発言により、居間の時間は止まっている。
顔が妙に熱い…息苦しい…多分顔は紅いだろう…向こうは俯いてはいるが…分からない、長く直視出来ない…見ていられない…

「ざ、ザウ!もう夕方だし、ご、ご飯にしよっか!」
先に沈黙を破ったの向こうだった。
フゥと胸を撫で下ろし、キッチンへ木の実を取りに行こうと立ち上がる。
「あ、ザウの分も取って来るから、待ってて」
左様ですか…何時もなら逆なんだけどな…まあ、良いか…
「ありがと」
一言礼を言って、地面に寝そべって待つ。
既に日は落ち、真っ暗な空に綺麗な三日月が出ていた。周りに何も無いことが幸いし、家の周りは静まり返っていた。

木の実は昼と同じ物を食べたが、飽きない味だ、この木の実だけ有れば生きていける…流石にそれは無いか。
食事は何時もより長く感じられた…何時もならガツガツと勢い良く食べるマーチは、何故か普通に食べている…食べる量は変わっていないみたいだが…

食事の後は風呂には入らない…入る必要が無い…お湯を張る事が出来ない、入っても体は一人で洗えない、マーチは基本的に風呂に入らなくて良い…これは違うけど。
人間の時は風呂は疲れを取るために入っていたが、今の体で入ったら疲れそうだ…色々な意味で。
この時間帯、何時もは、ゲームをしているため、暇で暇で…居間を見渡すとマーチは居なかった…食後の散歩か何かだろう。
ふぁーと欠伸が無意識に出る。意識出来る欠伸なんて有るのか知らないが…
時計を見ると9時を少しまわっていた。

マーチ…可愛いよな…ポケモンにも彼氏、彼女なんて関係が有るのかな…有ったとしたら、マーチには居るのかな…
居たら…いや…居るだろう、あんなに可愛くて、優しい…

何考えてんだろ…俺…

でも、そう考えると、悲しくなる…胸が張り裂けそうになる…
人間の時は、それを望んでいた。異性と幸せになってくれと…トレーナーとして、幼い時からのパートナーとして。
だが、今の俺はどうだ…彼女を…だめだ…こんなこと。
ハァと溜息が出る…気分は落ち込み、切ない…全てが悲しい。

「…ッ」
無意識に目から汗が出ている…
どうして頭から離れない…俺はこんな事、望んではいないのに。

その時、下半身から来る感覚にビクッと体が反応する。
何が起こったのか分からずに飛び起き、下半身を確認する。

「なんで…こんな…」
下半身の…1部分だけが、その存在を強くアピールしている。
壁にもつれる様に腰を下ろし、自分のそれをただ見つめる。
ピクピクとまるで別の生き物の様に反応するそれは、自分の意思に反し、先程よりも、その存在を強くアピールするようになっていた。

無意識に下半身に手が伸びる。

「俺は…こんな…うぅ…ん」
静まり返った、居間に自分のモノを擦る音が響く。
モノからは粘っとした液体が漏れ、ピチャピチャと水気を含んだ音が響く…

如何し様も無い…考えられない…切なくて…悲しくて…

「マーチ…んぐ…うぅあぅ」
涙腺から出た液体は瞼から溢れ、頬に落ちる。液体は毛に吸収され顔は液体で湿り気を帯び、毛は水分を含んで目茶苦茶になった。
うわ言のように彼女の名前が嗚咽と共に口から発せられる。
自分のモノを擦る速度はどんどん加速していく、両手にはモノから溢れた液体が付き潤滑油の役割を果たし、擦る速度を加速させていった。

「…ッ!」
一瞬、下半身が痙攣し、モノから液体が飛び出す…瞬間的な快感が全身を襲う。

まだ息が荒く、下半身のモノは未だに痙攣しているかの様にピクピクと反応している…モノから飛び散った液体は自分の体にベットリと付いていた。
「あぅ…俺は…なんて…」
快感は既に無く、後悔と罪悪感だけが残っている…なんでこんな事を…
「くっ…ぅぅ…」
口からは嗚咽しか出てこなかった…悔しくて、切なくて…こんな事をした自分が嫌になる。


体に付いた液体をティッシュで拭き取るが、毛に染み込んだ匂いまでは消してはくれない。

床に寝そべり、ぼやけた視界の中ひたすらに後悔することしか出来なかった。


……
「ザウ、起きて」
ハッ!と顔を上げると、ぼやけた視界に水色と白の模様が見えた。
瞼の辺りがヒリヒリする…何でだろう…?
「ザウ…泣いてるの?」
泣いてなんかいない、これは…これは、目から汗が…
「…なんでも…無…い」
震える声で何とか言葉を返せたが、先程よりも視界はぼやけ、切ない気持ちはより強くなった。
だめだ…ここに居ると…マーチに心配をかけてしまう…
立ち上がろうと足に力を入れるが、体は鉛の様に重く、足元がぐらつく。
「お…れ…ねる…ら、お…すみ」
出せる目一杯の声を出し、おぼつか無い足で寝室に向かう…後ろからは何か声が聞こえるが、振り向く余裕は無く寝室に入るなり布団に顔を埋め、声を出して泣いた…

ただ悲しくて…ただ切なくて…



今まで書いた文を若干変更しました。
誤字や不適切な表現などありましたらコメントでお知らせくださいすぐに直します
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