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Reach For The Sky 1 ‐失われた青‐ の変更点


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Written by [[SKYLINE]]

目次は[[こちら>Reach For The Sky]]
キャラ紹介は[[こちら>Reach For The Sky  世界観とキャラ紹介]]
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''Episode 1 失われた青''

 一面に広がるのは荒涼とした大地。木々は生えているものの、その中で生きていると言える木はほんの一握りで、殆どの木は何かが衝突したかのように幹が抉れ、無残な焦げ後が残る屍と化している。幹や枝を強引に抉られ、焼け落ち朽ち果てた木々が&ruby(ひしめ){犇};き合うそこはまるで森の墓場のような場所であった。
 背丈の低い草が僅かに生えている大地も、強大な力で砕かれたかのように穴や皹だらけで、そこには細かな砂が風を避けるように身を寄せ合い、所々には息絶えたポケモンの骨が点在している。幹が抉られた木々の屍と合わさったそれは見た者が恐怖を覚えるかのような異常な光景となっていた。しかし、その中で最も異常と言える光景は森の墓場でもなければ、穴だらけの大地でも転がる骨でもなかった……この世界で最も異常なのは広大な大地や&ruby(びょうぼう){渺茫};な大海原さえもちっぽけな存在にしか思えなくなってしまう程に、この世界の隅々まで広がる無辺の空であった。
 空の色は何色? そう尋ねられれば、誰もが青色と答えるだろう。しかし、この世界でそんな回答をすれば間違いなくお前の目はおかしいと言われ、笑われてしまう。


 ――この世界の空には一切の青色も存在しないのだから。


 青色に変わって空を染め上げているのは不気味な茶色で、凝視すればその茶色は雲よりも上で砂嵐のように荒れている。それは無残だった。種族、地域、階級、そんな全ての事を関係無しに誰もが平等に見る事ができ、夢を描ける天のキャンパスは絶望の色に塗り固められていて何も描けない。そんな空と荒れた地表が奏でる景観はさながら地獄のように感じられ、何処の誰が見てもこの風景を美しいと表現する者は居ないのが確かな事だった。
 太古の昔から神の如く天に鎮座し、地表を照らしていた太陽も茶色に支配された空の前には霞み、ぼんやりとしかその姿を視認する事は出来ず、&ruby(そうごん){荘厳};な存在感は欠片も無い。嘗て一面を新緑に覆い、風を遮っていた木々が枯れ果ててしまっているせいか、つむじ風が皹や穴に身を隠す砂を巻上げ、大地の所々では砂塵が宙を舞っている。
 砂漠と違い量こそ少ないものの、砂を巻き上げ荒れ狂う風に不毛の大地――正にそれは終末を迎えた世界に等しく、生命の息吹は何一つとして感じられない絶望の世界と化していた。こんな荒れ果てた世界では生命の存在すら怪しく、砕けた大地の破片に潰されたポケモンの骨が生命の存在を否定するかの如く静かに横たわっている。
 けれど、そんな生物の存在する気配すら感じられない荒れ果てた大地に一匹のポケモンの姿があった。
 遮る物が無いだけに、自由奔放に吹き荒れる風に乗る砂塵を翼で切り裂き、滑るように低空を飛行していたそのポケモンは速度を緩める。減速した所で背中から生えた大きく立派な真紅の翼を忙しく羽ばたかせ、自身の巻き起こす風圧で砂埃を巻き上げながら鋭い爪が並んだ四本の足を地に付けた。大きな翼を力強く、そして忙しく羽ばたかせたのでそこには強烈な下降気流が発生し、それに伴って舞い上がった砂埃がまるで生きているかのようにそのポケモンの周りを覆う。だが舞い上がった砂埃は荒れた大地を駆け抜ける風に次第に吹き払われ、視界が開けたそこには一人のポケモンが荒れた大地に逞しく立っていた。
 口腔内からその姿を覗かせる鋭利な牙、頭から生える左右合計六本の角、青い体とは対象に真紅に染まった大翼。そして長く強靭な尻尾。そのポケモンの種族は数多きポケモンの中でも強力な種族として知られるドラゴンポケモンのボーマンダ。
 穴や皹だらけで草木の少ない荒涼とした大地に四本の足でしっかりと立つそのボーマンダは、目の前に自分と同じようにしっかりと大地に立つ一本の木を見詰め、足元に転がっていた種族も分からぬ小さなポケモンの骨に短く黙祷してから木に向かって歩みを進める。
 目指す木には枚数は少ないながらも緑の葉が付いており、ボーマンダの視線の先には昔からポケモン達に食料として重宝されてきた木の実が枝に静かにぶら下がっていた。太く強靭な四本の足を順序良く前に出し、木の根元に辿り着いたボーマンダは後ろ足に力を入れて二本足で立ち上がると、空いた前足でその木の実を摘み始める。並んだ爪の間に木の実を挟み、少し力を入れて木の実を摘む。
 右前足で木の実を摘み、胸の辺りに着けているポーチ((チャックでの開閉式で、様々な種族に対応出来るよう、つまみには爪を引っ掛けたりする事が可能な穴が空いている物))の口を空いた左前足の爪を引っ掛けて開き、摘んだ木の実をそこに仕舞う。そんな単純な作業をボーマンダは表情一つ変えずに無言でせっせと繰り返す。
 周辺に響く音と言えば風の唸るような音ぐらいで、鮮やかなさの無い大地ではボーマンダのその青い体色は一際目立っていた。両の耳に絶えず入ってくる喧しくも恐怖を煽るような風の音に動じる事もなく、ボーマンダはまるで何かに取り憑かれたかのようにただ木の実を摘んでいく。一見すればそんなに必死にならなくても……と、言える姿であるが、この荒廃した世界ではそれが生きていくのに必要不可欠な食料調達と言う事なのだった。
 木の実を摘む最中、何か気になる事でもあるのかボーマンダは幾度となく不気味に染まった空を鋭い目付きで睨むように見ては、視線を木の実に戻して採集を続ける。時間に比例して一つ、また一つとポーチの中に木の実は溜まっていき、ポーチが膨れ上がる程に木の実を摘んだボーマンダは一杯になったポーチの口をしっかりと閉じると、木から離れ、真紅の大翼を羽ばたかせ始めた。
 途端にボーマンダを中心にして所々にうっすらと積もる細かな砂が円形に舞踏し、ボーマンダのその青い体は重力に逆らって上昇していく。体が浮き上がる独特の浮遊感をボーマンダが感じていたその時だ。
 そのボーマンダは何かの気配でも感じたかのように素早く顔を上げると、ボーマンダの表情はものの一瞬で険しい物へと豹変する。ボーマンダが睨む空は相変わらずうねる茶色が支配していたが、一つだけ先程までの空とは異なる点があった。
 それは汚れた天海から降り注ぐ無数の光り。輝きは遠く離れていても目に焼きつくように眩く、この美しさの感じられない荒廃した世界の中で一際美しく見えた。木の実を摘み終えてホバリングしていたボーマンダも、その美しい輝きに見とれているのかと思いきや、血相を変えて慌てて飛び出す。
 背中に授かる大翼をこれでもかと言わんばかりに羽ばたかせ、荒涼とした大地を目にも留まらぬ速さで低空飛行していく。視界に映る景色は後方に流れ、赤き大翼は砂塵を裂き、青い体は岩や木々の間を抜け、風を追い越し荒涼とした大地の上を突き進む。そんなボーマンダの姿は恰も何かから逃げるような姿だった。
 飛行するボーマンダの上空には無数の輝きがまるで雨のように降り注いできており、それはボーマンダの居るこの場所にも近付いて来る。ボーマンダは岩や枯れた木々の間を巧みな飛行で縫うように飛び続け、目の前に見えてきた一際大きな岩を華麗に回避して低空飛行を続けていく。
 ボーマンダがその大岩を通り過ぎた直後だ。突如として貫くような轟音が鳴り響くと、そこにあった一際大きな岩がものの一瞬で砕け散った。あまりの音と衝撃波に、低空飛行を続けていたボーマンダは思わず振り返る。振り返ったボーマンダの視界に広がったのは、先程までの美しい輝きとは打って変わり、煙の尾を引きながら硬い大地をも貫く勢いで落下した灼熱色に燃え&ruby(たぎ){滾};る物体。
 そう、それは俗に隕石と呼ばれる物であり、大地を荒れ果てたものへと変貌させた犯人。それも一個では無い。群れて次々と地面に衝突していく。降り注ぐ隕石は大きくても直径が数十センチ程度の物が殆どだが、それでも破壊力は凄まじく次々と大地を砕いてそこに皹を入れ、穴を開け、生えている木々に衝突すれば枝を折って幹を抉っていった。
 ボーマンダの視界一杯に広がる恐怖を覚えるようなその光景や、耳に入ってくる隕石が落下する轟音と大地への衝突時に走る爆音、さらに隕石の持つ熱で烈火に呑まれる木々の鼻を突く焦げ臭さと全身の肌から伝わる衝撃の波。ボーマンダは味覚以外の五感全てから恐怖を感じていた。恐怖に駆られるボーマンダは振り向いていた顔を戻し、前方を鋭く睨みながら真紅の翼を羽ばたかせる。
 つい先程まではボーマンダの後方にしか隕石は落下していなかったが、ボーマンダが振り向いていた顔を戻した時には、既に前方にも隕石と言う名の破壊者が降り注ぎ、大地や木々……そしてボーマンダにもその破壊者は牙を剥いていた。ポケモンの中でも強力な種族であるボーマンダとは言え、凄まじい速度で落下する隕石の直撃を受けては一溜まりもない。当たり所が悪ければ痛みを感じるまでもなく、一瞬で絶命してしまうであろう。さらにボーマンダは知っていた。この大量の隕石が降り注ぐ中では、頑丈な洞窟などに隠れない限り生き残れない事を……
 目にも留まらぬ速さで連続的に降り注ぐ隕石の全てを回避するのは、例えどんなに素早いポケモンでも不可能に近い……いや、そもそも始めから回避など不可能で当るか当たらないは運任せなのかもしれない。そんな死の恐怖に駆られながらも、ボーマンダは自分に当らない事を願いながら棲家としている頑丈な洞窟を険しい表情でひたすらに目指す。
 死に物狂いで飛行するボーマンダに対し、感情など持たぬ破壊者の群は依然として見境無く全ての万物に敵意を露にしながら何度もボーマンダの側に落下していくが、不幸中の幸なのか、未だボーマンダにその隕石の一つも当っていなかった。そしてボーマンダの視界には既に自分の棲家としている洞窟が見えていたのだ。
 瞳に映る口を開ける洞窟の姿をしっかりと捉えたボーマンダは息を上げながらもラストスパートを掛け、全速力で低空を一直線に突き進んでいく。大地に滲む黒い影もみるみる加速していき、荒れた大地の起伏によって影は小刻みに波打つ。
 あと少し……そう自分に言い聞かせ、疲労に負けじとボーマンダが強く翼を羽ばたかせたその時だ。


 絶望は訪れた。


 タツベイの頃から飛びたいと願い続けた結果、手に入れた自慢の大翼を不気味な茶色に染まる空から降ってきた隕石が貫いたのだ。隕石の大きさも十センチにも満たない物で、さらに体に直撃はしなかったとは言え、ボーマンダの全身を耐え難い激痛が駆け抜け、ボーマンダは無残にもその場に墜落してしまった。
 爆音轟く中では落下の鈍い音など小さい物だが、派手に墜落したボーマンダの体は地面を擦り、肌を傷つけながら滑走する。墜落時の衝撃や痛みなどが感じられぬ程、翼から全身に伝わる痛みは酷く、ボーマンダは歯を食い縛って激痛を堪える。無論、激痛に苦しむボーマンダに感情を持たぬ隕石が情けなど掛ける筈もなく、ボーマンダの周辺に隕石は落下を繰り返す。飛び散った大地の破片がボーマンダに降り注ぎ、鼓膜が破れてしまいそうな程の爆音が容赦なく鳴り響く。鼻を突くのは自らの翼が焼ける焦げ臭さだが、それも激痛の前には薄れてしまう。
 洞窟までの距離はあと僅かで飛行さえ出来れば数秒で辿り着けるが、今のボーマンダには激痛で飛行は愚か、歩くことすら出来なかった。そんな絶望的状況に置かれたボーマンダは痛みを必死に耐え、地に横たわる首を震えながらもゆっくりと動かして顔を洞窟に向ける。ボーマンダの目には痛みからかそれとも恐怖からか、ましてや悲しみからか透明な涙が溜まっていた。溜めきれなくなった涙は頬を伝い雫となって荒れ果て乾いた地面に滴り、宝石の如く輝くそれはゆっくりと喉を嗄らした地面に染み込む。
 大粒の涙を流しながらボーマンダは震える前足を洞窟に向けて伸ばし、開けば激痛から呻き声が出てしまいそうな口を小さく開くと、微かな声で自分の最後の言葉になるであろう一言をその僅かに開いた口から発した。

「二人共……ごめん……ね……」

 当然の事ながら、周囲に次々と落下する隕石の重い音にボーマンダの声は掻き消され、もし誰かが近くに居ても聞える事は無いだろう。微かな声で誰かに謝罪し、死を悟ってゆっくりと瞼を下ろしたその瞬間、身動きの取れないボーマンダの真上から一つの隕石が凄まじい速度で落下してくる。
 そして……連続的に鳴り響く爆音の中に一際大きな爆音が轟いた。










 それから数年、相変わらず周囲は荒れ果てたままで大地には穴や皹だらけ。そして木の実を摘んでいたボーマンダの命を奪った隕石群は今も何の前触れもなく時折この世界に降り注いでいた。
 ここは命を落としたあのボーマンダが逃げ込もうとしていた洞窟。中は当然の如く薄暗く、光の届かない奥に至っては真っ暗で何も見えない。しかしその洞窟の入って直ぐの場所には、明らかに人工的に盛られた土とその上に垂直に立つ石があった。とても簡素なものであったが、それは誰かの墓のようにも、そして死者を弔う慰霊碑にも見える。
 ふと、そんな洞窟の奥を染める漆黒から物音が響いてきた。最初は風に掻き消されてしまいそうな程の小さな音であったが、断続的に洞窟内で木霊する物音は徐々に大きくなっていく。鳴り響くその音が洞窟の外にまで僅かながら聞えてきた頃、暗闇の中に一つの赤い光りが浮かんできた。
 それは左右に揺れ動き、太陽の光りが届かぬ洞窟の中に唯一の光源として存在感を主張している。さらに闇夜を連想させる漆黒の中で揺れ動く赤い光りに照らされて、徐々に姿が見えてくるものもあった。時折、物音の中に小石を蹴るような軽い音が響き、それが反響する中心にそれはあった……いや、この場合には、“居た”と表現するのが正しいだろう。
 白に近い薄い灰色の殻に体を覆われ、そこから突き出るように生える四本の足は起伏のある洞窟の地面を踏み締めていく。口には火の点いた枝が咥えられ、それは淡い赤の光りで闇を追いやり、その者の体を優しく照らしていた。
 しばらくすると、灯火の淡い光りと洞窟内に差し込む太陽の光りが交わったその場所に一匹のポケモン――コモルーが現われた。燃える枝の根元を咥えるコモルーの額には、正面から見て左から右へと斜めに三本の傷が入っており、丸い体を横にベルトが一周し、体の下部――前足の届く範囲にはそのベルトに固定された黒のポーチが装着されている。さらにその体はコモルーの中では少し小柄な方であった。
 コモルーは口に咥えていた枝を地面に突きたて、盛られた土の上に立つ石の手前まで歩くとそこで立ち止まった。両の目の焦点を立てられた石に合わせ、じっとそれを見詰めるコモルー。その姿は何かを惜しむようにも、また何かを悲しむようにも見える。古傷の入った額の下に並ぶ両の瞳には揺れる炎が映っていて、その紅は死者を弔う火葬の色にどこか似ていた。
 盛られた土とそこに立つ石をじっと見詰めていたコモルーは一度瞼を下ろし、直ぐにそれを上げると徐に口を開く。

「おはよう。母さん」

 小さく開いたコモルーの口から静かに出てきたその言葉は、目の前にあるそれが彼の母親……そう、棲家の目の前で息絶えたあのボーマンダの墓である事を示していた。我が子に愛を注ぎ、命を賭けて育ててくれた母親の墓がこんな簡素な物なのは親不孝に当るかもしれない。けれど、絶望の蔓延る荒廃したこの世界に立派な墓石など存在する筈もなく、このお手製の簡素な墓でも、それはコモルーにとって最大限の親孝行なのかもしれない。
 柔らかな眼差しでじっとその墓を見詰めていたコモルーの耳に、前触れ無く洞窟の奥から響いてくる足音が潜り込んできた。彼がここに来る時のように足音は徐々に大きくなっていき、コモルーのそれとは一味違った金属音にも近い足音が四方を岩に囲まれた洞窟内に木霊する。
 その独特の足音に気が付いたコモルーはゆっくりと視線を暗い洞窟の奥に向け、足音に耳を澄ませた。規則的なその音と共に、コモルーが現われた時と同じように枝の燃える明かりで闇を消し去り、洞窟の奥からゆっくりと姿を現わしたのは一人のエアームド。
 歯が並んでいる下嘴と先鋭な上嘴の間に枝を咥え、銀色の体と刀にも似た鋭利な翼に炎の赤を反射させながら、そのエアームドは細い二本の足を動かしてコモルーの隣まで歩いてくる。そして、彼はコモルーと同じように咥えていた木の枝を地面の砂の部分に突き立てた。
 四本の足を地に付けて母親の墓を見詰めるコモルーを、鋭くもどこか優しさの宿るその目で見下ろしたエアームドはゆっくりと口を開き、第一声を発した。

「母さんへの挨拶が済んだか?……&ruby(きりゅう){希龍};」

 大人びた紳士的な声でコモルーに話し掛けたエアームドを“希龍”と呼ばれたコモルーはゆっくりと見上げ、炎に包まれる枝の明かりと外からの明かりを銀の体に反射する彼の体に瞳を合わせた。身長の関係上、コモルーは見上げなければエアームドに目を合わせられないが、そこに上下関係は無く、対等な目でエアームドを見ながら彼と同様に希龍と呼ばれたコモルーはゆっくりと、そして静かに口を開いた。

「あぁ、ちゃんとしたよ……&ruby(ざんくう){斬空};さん」

 もう大人の声だが、まだどこかあどけなさも感じる声で威勢良くとまでは行かぬものの、明るく答えたコモルー――希龍に、“斬空”と呼ばれたエアームドは特に表情も変えることなく、希龍に当てていた目線を洞窟の外に向ける。
 暗い洞窟に目が慣れてしまっていたせいか、斬空は洞窟の入り口から差し込む光に目を細めた。相変わらずの空は見るに値しないようなもので、太陽の姿はぼんやりとしているが、それでも暗闇に慣れていた目にその輝きは眩しかった。斬空に続き、視線の先を外に移した希龍も彼と同じく両目を細くする。
 その場に立ちながら荒れ果てた大地の広がる外を眺めていた斬空を置いて、希龍は四本の忙しく足を動かして早足で外に歩いて行く。それを見た斬空は一瞬だが目付きを変え、希龍を止めるように彼に向かって鋭利な翼を伸ばす。

「お、おい、いきなり出て大丈夫なのか?」

 外に出て行く希龍を心配するような口調でそう言った斬空は少し呆れたような顔をした。彼が希龍を心配するのも当然。この世界において、何時あの隕石群が何の前触れもなく降り注いでくるのか彼には分からないのだから。けれど、その割に斬空はそこまで心配そうな表情ではなかった。それは斬空が希龍の事を嫌っているとかそう言う事情ではなく、彼は希龍の持つ才能とも言える特殊な能力を知っており、それを信じているからであった……
 外に出て行く希龍に続くように早足で歩き出し、高い足音を洞窟内に反響させながら荒廃した外の世界に斬空は銀色の体を曝け出す。得体の知れない汚れた物に覆われ、大地を照らす日差しが弱いだけに外は若干気温が低そうにも見えるが、この場が温暖な気候なのか以外にも過ごしやすい陽気であった。洞窟から出た斬空は今一度空を見上げるが、相変わらずと言える光景で、昨日、一昨日、一週間前、一ヶ月前のそれとなんら変わらぬ光景だった。
 そんな彼を横目で見ながら、洞窟の前に生えている……正確には言うならば植えられている数本の木から、積み重ねて階段のようにした岩を土台にして前足で丁寧に木の実を積む希龍は、斬空に向かって呟くように言った。

「そんなに心配しなくても大丈夫だって。“メテオスコール”の気配はまだ感じないから」

「そうか、なら良いんだが……お前を疑う訳じゃないがどうも心配でな」

 希龍の口から出たメテオスコールと言う固有名詞。それは彼の母親を殺したあの隕石群以外の何物でも無く、希龍と斬空の二人は過去に熱帯地方で良く降っていたとされる突然の豪雨、スコールに似て前触れも無く突如として降り注ぐ隕石群をそう呼んでいたのであった。
 そして、斬空が信頼を寄せていた先の希龍の才能とも言える能力……それは何処の誰もが予知のしようが無いメテオスコールの気配を遅くとも数時間前には感じ取り、それを予知出来ると言う天性の才能のような、そして夢のような能力なのだ。二人はこれまで幾度と無くメテオスコールには遭遇してきたが、希龍がその能力で全てのメテオスコールを予知した為に、逸早く安全な洞窟などに希龍と斬空の二人は避難が出来ていた。
 その能力があるからこそ、今も二人は常に危険とも言える洞窟の外にこのように足を踏み出せている。ただ、それでも斬空はメテオスコールの恐ろしさたる物を熟知している為に、安全と分かっていても纏わり着く心配を掃い切れていなかった。鋭い嘴の先を天に突き立てる斬空を他所に、希龍は生前の母親のようにせっせと前足で木の実を摘み、それを母親の使っていた物と形状の似たポーチの中に仕舞っていく。
 過去に斬空が、遠くまで木の実を取りに行くのは危険だから棲家の近くに木の実のなる木を植えようと提案し、それからと言うもの二人は洞窟の目と鼻の先に木を植え、近場での食料調達を可能としていた。
 彼等の一日はこのように食料調達から始まり、定期的に近くの川まで水の補給に出掛け、その他の空いた時間には生きていく上で必要な体力の強化を図ったり、比較的安全な洞窟の奥でのんびり寛いだり。嘗ては文明と呼ばれる物があったらしいが、荒廃してしまい法も秩序も無い弱肉強食の厳しい世界でそんな毎日を二人は過ごしている
 木の実を摘み終えた希龍は土台にしていた岩から軽やかに飛び降りると、早足で空を見る斬空の元まで駆け寄っていく。濃い灰色をした四本の足を交互に動かして斬空の元まで歩み寄った希龍は、彼の視線を辿りながら空を仰ぎ、真剣な眼差しでそこを見詰めた。二人の見上げる空は、まるでこの世界には希望など無いとでも言い張るかの如く彼方までを絶望の色に染め上げ、天空でうねっている。
 常日頃からメテオスコールと呼ばれる隕石群の脅威に晒され、楽しい事など何も無い、豊かな生活も送れない、家族や友人の命を死の空から注ぐ隕石が奪っていく。そんな絶望以外の存在を否定するかのようなこの世界に生きる者達も、例外なくそれに呑まれながらに生きていた。
 しかし希龍と斬空の二人は違った。希望無きこの世にも二人に大きな希望を持っていたのだ。それは、今は亡き希龍の母親が我が子である希龍に何度も何度も語っていたとある言い伝え。まだタツベイで幼かった希龍に彼女が何度も語り聞かせていたその言い伝えとは、この世界の空は見ての通り汚い茶色に染まっているが、本当の空はこんな色では無く、澄んだ青色をしたとても綺麗な空だと言う物。
 希龍は母親が聞かせてくれたその言い伝えを信じて、何時か自分の目で澄んだ青が広がる空を見たいと言う希望を強く持ち、彼は絶望の世界で今日も逞しく生きている。勿論、彼と共に生活する斬空もその言い伝えを信じていた。数年前のある日希龍と出会い、彼からその言い伝えを聞かされたその時は半信半疑だったものの、何度も聞かされ、さらにそれを信じて自分より年下ながら逞しく生きる希龍の姿を見ている内に自然と彼もその希望に共感を覚えていたのだった。
 しばし無言で空を眺めていた二人であったが、先に希龍がそっと目を逸らす。上を向いていた目を下げ、それから体ごと動かして棲家とする洞窟に目を向けた希龍は、まるで偽りの空に隠された真の青を見透かすかのように空をじっと見上げている斬空に一声掛ける。

「斬空さん、飯にしよう」

「ん?……あぁ、そうだな」

 希龍に背中を向け、嘴の先を天に突き立てて空を見上げていた斬空は、彼のその声に反応して上げていた顔を下ろした。細長くも硬い鋼の皮膚に覆われた首を曲げて振り返った斬空は視界に希龍の後姿を置きながら、膨らんだポーチを下げて洞窟の中に歩みを進める彼の後をゆっくりと追い掛ける。希龍の能力がまだメテオスコールを察知していない為に二人は特に慌てる様子も無く、ゆっくりと洞窟の中に入っていく。先程地面に突き立てておいた火の点いた枝を再び咥え、希龍は先陣を切って暗い洞窟の奥に向かう。
 整備された訳でも無く、手付かずの自然が生み出した足場はお世辞にも良いとは言えないが、この洞窟で数年間暮らしている彼等にとってそれはもう慣れた物で、凹凸に躓き転ぶなんて事はなかった。揺らぐ紅は闇を立ち退かせ、褐色のゴツゴツとした壁や天井を照らす。枝の燃焼によって生じる淡い光の前に、闇は成す統べなく消えていくのだが、希龍と斬空の二人が通り過ぎれば、そこはまた闇の拠り所となり、二人の足音が聞えなくなれば、淀んだ空気の流れる低音が静かに響く空間へと移り変わる。
 しばし狭く入り組んだ洞窟の中を進んだ二人の先に、一つの輝きが見えてきた。それは炎の紅蓮とはまた違い、まるで人工的に作られたかのような白光。そしてその光りは暗い洞窟の中で火の色を差し置いて眩い程に輝く。慣れなければ少々目に沁みる光りに照らされたそこは、洞窟の最深部にある少し開けた空間。
 中心には白い輝きを放ち、この空間を照らす球体――“光りの珠”((本家には存在しないが、ポケモン不思議のダンジョン 赤の救助隊に登場していた道具))と呼ばれる道具が置かれていた。それは嘗て存在した文明の遺産とも言えるもので、使用する事で光りを発する優れ物。その他にもボロボロの布団やピーピーマックス……の空き瓶、少し錆びた鉄の棘((これもダンジョンに登場していた道具))などが乱雑に置かれ、一見すればガラクタの山にしか見えないが、それらは光りの珠と同じ文明の遺産と言える物で希龍や斬空を始め、この世界に生き残るポケモン達にそれらは重宝されていた。
 最深部の空間に辿り着いた二人は燃える枝の火を消してからそこに腰を降ろす。下が岩なだけに座り心地は悪いが、やはりこれも慣れたもので、座るどころか二人は睡眠すらもボロボロの布団を使用してはいるがこの地面で取っているのだ。乾燥した岩の地面に腰を下ろした希龍は接する肌に乾いた岩の感触を覚えながら、前足を器用に使って体を横に一周するベルトに着けられたポーチを開く。地面に近い腹部に着けられているだけに、土埃で汚れた黒いポーチの中に前足を入れ、中でその前足を泳がせた希龍は直ぐに前足をそこから引き抜いた。再度白光を浴びた彼の前足には先程摘んできた数個の木の実が掴まれていて、彼は丁寧にそれらを地面に並べた。
 食する事で疲労回復の効用があるオボンの実や火傷に効くチーゴの実などとは違い、並べられた木の実は単純に飢えた腹を満たすだけの木の実であったが、それらを見下ろしていた斬空の腹が不意に低く鳴いた。その音は閉鎖的で狭い洞窟の中では反響して大きく聞え、ポーチの口を閉めていた希龍もはっきりとそれを聞き取っていた。
 忍耐ポケモンである希龍の肌を凌ぐ硬さを誇る鋼の腹部から鳴るその音を聞き、並べられた木の実から斬空に目を向けた希龍の瞳には、目の前に置かれた食物を前にして本能に破れた自分の理性を恥じるかのような表情をする斬空の姿。普段から冷静な彼のイメージと、木の実を前に思わず腹が鳴ってしまい、それを恥じる彼の顔とのギャップが少し可笑しかったのか、希龍は斬空を見ながら軽く笑うとそのまま口を開いた。

「斬空さんって、意外と食べ物に目が無かったり?」

「あ、いや……食い物を前にすりゃ誰だって腹が鳴るもんだろ?」

「まぁ、確かにね……さて、じゃあ飯としますか!」

 元気良くそう言った希龍のその声は、まるで競争を始める時の掛け声のようにも聞え、彼は並べられた木の実の中で最も大きく、そして熟した綺麗な色をした木の実に素早く前足を伸ばす。彼の目はまるで狩人のように鋭く、狙った獲物は逃さない! と主張する目付き。疾風の如く前足を伸ばした希龍のその動きを斬空も見逃してはおらず、先を越されまいと鋭い目付きで最大の木の実を睨みながら彼も素早く首を伸ばす。
 たかが木の実一個、益しては複数木の実があるにも関わらず、それを巡る競いは刹那の間に決着が着いた。種族の違い、体格の違い、運動能力の違い、それら全ての要因が影響する競いの中で、細長い首を持った斬空の速さに短い足を持つ希龍は僅かに及ばず、目の前で大きな木の実は斬空の嘴に咥えられ、希龍の前足は空を切る。それと同時に些細な競いの軍配は斬空に上がった。

「頂き」

 まるで最初から勝てると分かっていたかのように、誇らしげな表情で木の実を加えた嘴を上げた斬空は悔しそうな表情をする希龍にそう言った。惜しくも大きな木の実を逃し、それを目の前で食べる斬空に希龍はさらに悔しそうな表情を返すと、半ば怒鳴るように言葉を吐いた。

「くそ、また負けかよ。大体斬空さんのリーチは反則だ!」

 今の希龍は木の実を逃した事よりも、些細な競いだがそれに敗北した事の方が悔しくて額に走る三本の古傷の下に並ぶ両の目を吊り上げている。一見すれば互いの関係を悪化させる喧嘩のようにも見えるが、長い付き合いの中で強い信頼を抱く二人にとって、先のやり取りは喧嘩とは程遠い物。寧ろ軽い賭け事のような遊び感覚だった。
 負けた当初は恰も悔しそうにしながら声を上げていたものの、直ぐに希龍は平然を取り戻していた。彼は何事も無かったかのように短い前足を体ごと動かし、岩の地面に置かれた他の木の実を取るとそれを口へと運ぶ。この木の実が美味しいかと聞かれればおそらく二人共首を傾げるだろうが、腹を満たす満足感の前には味なんてどうでも良い事。この厳しい世界を生き抜くに置いて、味なんて気にしていたら直ぐに餓死してしまうのは確実。
 希龍と斬空は当たり前のように朝食の木の実を食べているが、それがこの世界では珍しく、食料に困らないだけでもそれはとても恵まれている事だった。勿論、二人は食物を食べられるこの幸せを噛み締めながら、摘んできた木の実を口へと誘っていく。
 地面に置かれていた十個程の木の実は直にその全てが二人の腹の中に収まり、満腹とまではいかないが二人共飢えは解消出来ていた。先程まで鳴いていた斬空の腹もどうやら気が済んだらしく、今は静寂を保っている。光りの珠の献身的な働きによって空間に放たれる白光に照らされた中で、ふと希龍が座り込んだままの状態で口を開いた。

「ねぇ斬空さん。俺、何時になったら進化出来るのかな」

 希龍には不安があった。毎日体は鍛えているし、年齢ももう進化出来ても良い所まで来ているが、それでも未だコモルーのまま。母親の語ってくれた本当の空は青いと言う伝説を信じてはいるものの、空も飛べないし足だってそこまで早い訳ではない。心の中で黒く渦巻く何かにまるで捕らわれてしまったかのようで、日を追う事に、体を鍛える事に、進化出来ない自分への不安は重なっていく。そんな自分に彼は最近自信を持てなくなっていて、今日になって希龍は進化出来ない不安を斬空に打ち明かしたのであった。
 希龍の口から不意に出てきたその言葉に、凝った首を解すようにそれを動かしていた斬空はその動きをピタリと止めて、今度は翼も解すように少し動かす。そして少し間を置いてから彼は徐に嘴を二つに割った。

「さぁな、でも何時かは進化出来るさ。そうすれば身体能力も今より格段に向上するし、自由に飛べるようにもなるだろ。とにかく自分を信じろって。……でもって進化したら、お前の母さんが語ってた青い空を探す旅に出ようぜ」

「自分を信じるかぁ……なんかさ、最近本当にボーマンダに進化出来るのかって不安で」

 不安……語尾にそう言葉を添えた希龍に、斬空は一度視線を天井に移してから彼に向かって言った。

「お前が不安でどうする。希龍……お前は俺に生きる希望を与えてくれて、それに俺にとってもお前は希望なんだかさ」

「え?」

 率直なその一言に、希龍は重い何かが圧し掛かるように下を向いていた瞳を思わず上げた。彼の目に映る斬空は目を合わせてこないものの、今の言葉が真剣な一言だと十分に分かる表情で、眩い白光を発する光りの珠の方を眺めている。そんな彼の光りを反射して輝く横顔を見ながら、その場に座りながら動かずに居る希龍の中では心境の変化が起きていた。
 生きる希望……そう言えば母さんが言っていた。将来貴方は皆の希望になれると。尊敬する母親とのそんな些細なやりとりの記憶が、斬空の一言でふと呼び覚まされ、曇っていた彼の表情は徐々に晴れていく。

「そっか、確かにそうだよね。自分を信じて希望を持たなきゃだよね」

「そうそう。……まっ、そんなに思い詰めてたってしょうがないだろ? 食後の休憩が済んだら旅にも備えて体力強化の運動でもするぞ」

 何時か自分の目で伝説の青い空を見ると言う大きな夢を持ちつつも、未だ進化出来ない自分に希龍は若干の焦りや不安を感じていたが、今の彼の表情に不安の曇りはなかった。その顔には彼が元来から持っていた希望が宿っていて、付き合いの長い斬空からすれば見慣れた物だが、初対面の人からすれば希望の失われた世界なだけに珍しい表情だった。
 洞窟の内部では依然として光の珠が闇を退け、希龍の白に近い薄い灰色をした体は一層白に近付き、斬空の銀色の体は同じ光りを反射する。そして二人の瞳には輝くその白光が世界を照らす希望の光りの如く映り込んでいた。決して広いとは言えないこの自然が作り出した無明の空間を照らす光りに包まれながら、希龍と斬空は他愛も無い会話を始める。
 けれどこの時、他愛も無い会話を続ける二人に、感情を持たず無差別に命を奪うメテオスコールとはまた別の脅威が荒涼とした大地で荒ぶる砂塵の中から迫っていたのだった……










To be continued...
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[[Reach For The Sky 2 ‐突然の旅立ち‐]]
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あとがき
先ず、お読みくださり誠にありがとうございます。ようやくですが新作長編の執筆を開始致しました。
お読みになられました方々はもうお分かりかと思いますが、青色の失われた空が広がる荒廃してしまった世界で、空は青いと言う伝説を信じるコモルー――希龍が主人公のお話です。(え? 文章力不足で伝わらない?)
今はまだ主人公達は引き篭もり生活ですが、ジャンルとしては冒険物になります予定で、伝説の青空を求めて旅をしていく中で、仲間と出会い成長していく姿を描いていけたらな……なんて。
また、物語が進むに連れて何故青い空が失われ、世界が荒廃してしまったのかと言った謎なども解明して行く予定です。まぁ、長編なだけに色々と詰め込んでいくつもりですので、もし宜しければ暇な時にでもお読みくだされば作者としては幸いです。
余談ですが、タイトルでありますReach for the skyは、直訳ではおそらく空に向かって手を伸ばすで、他にも希望を持つ、夢を掴み取る、大志を抱くと言うようなプラス思考の意味を持っていたりする英熟語であります。
それと多分、今作の更新は完全に不定期になると思いますのでどうかご了承ください。

貴重なお時間を割いてまでお読みくださり誠にありがとうございました。
もし宜しければ誤字、脱字の指摘や感想などを頂きたいです。
尚、コメントページは全話共通です。
#pcomment(コメント/Reach For The Sky,5,below)

IP:220.109.28.39 TIME:"2012-01-02 (月) 14:12:38" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=Reach%20For%20The%20Sky%201%20%E2%80%90%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E9%9D%92%E2%80%90" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64) AppleWebKit/535.7 (KHTML, like Gecko) Chrome/16.0.912.63 Safari/535.7"

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