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Rainy Fire の変更点


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wrriten by  [[T&P]]

八月も下旬を迎えたある月曜日。残暑厳しい時期のはずなのだが、ほんの3日前にやってきた大雨と寒気によって半袖でいるのはすこし厳しい。
(いつ、雨が降り始めるのかなぁ)と思いつつマイタは目の前を過ぎてゆくトラック達を見ながらバスを待っていた。

マイタが友人から試合観戦の誘いを受けたのは塾の夏期講習の最終日。
歩けば汗がだらだらと出る、走ればもっと出るようなうだるような暑さの中、マイタは帰りのバスで携帯ゲーム機のスイッチを入れた。
バスターミナルを出て、5分ほど走ると市営の球場が見えてくる。プロの試合ができるほどの大きさだ。
「よお!久しぶりだな、マイ」
マイタが振り向くと野球部の友人が乗り込んできていた。
「おっ。7月のバトルイベントを観戦して以来だね」
「そういえばずいぶんとご無沙汰してたな。練習試合の方は絶好調でなぁ。…」
どうやら今日は練習試合だったらしい。(中の更衣室で着替えたのか)私服に野球部のバックといういでたちだ。
ホントに好調だったのかはマイタも知らないが、得意げに試合の話をし始めた。
3つほどバス停を進んだところで次の試合を見に来ないか、という話になった。
「8月の分はこの試合で最後なんだ。相手は隣町の強豪だ。いい試合になると思うし、見に来いよ!」
「うん。いいね。ただ、ちょっと用事があるから4回くらいまでしか見れないと思うけど」
「そうか…ま、いいだろう。これチケットね。なくても入れるけど」
じゃ、とその友人はバスを降りていた。
数分後。
大型ショッピングモールが目の前に姿を現していた。
ノートが切れていたことを思い出したマイタはボタンを押す。
休日なので人が多いが、ここからバスに乗った客は3,4人ほど。駐車場が第3駐車場まで満車で埋まっているのからわかるように、大半の人は車で来ているようだ。
メタモンのミニサーカスは親子連れでにぎわい、バトルエリアはボーマンダとバシャーモの死闘が繰り広げられ、盛り上がっていた。

バシャーモのトレーナーの右手が上がる。行くのか、と観客がざわつく。
「シャモ!二度蹴り!!」
「マンダくん!破壊光線!!」
この勝負もらった、といわんばかりの破壊光線。
バシャーモは空中で1蹴りし、ワザとバランスを崩してよける。
2発目でうまいこと地面を蹴り、「スカイアッパーぁああああ!」
…決まった。ボーマンダは崩れ落ち、観客の惜しみない拍手が送られる。
マイタは(かっこいい…)と心奪われていた。
マイタにはまだパートナーがいない。
まだ迷っていて、決められていなかった。
だが、この戦いを見ていて決まったようだ。
リスクを恐れぬ豪快な戦い、それを象徴する業火。
パートナーは炎タイプにしよう、とマイタは心に決めた。

(おかしい…)
12時台の最後のバスはとっくのとうに来ているはずなのだが。
しかもポツポツと再び雨も降り始めてきた。
今から行っても試合開始には間に合わないだろう。
友達づきあいとして試合観戦をとらえていたマイタはめんどくさいと思い始める。
昼食もとれなかったし、半袖で来たから寒いしで帰ることにしたようだ。
(夏休みが終わってから謝ればいいよね…)
家の近所のコンビニへマイタは足を進めた。

バス停まで走ったので服がぬれている。(帰ったらシャワーを浴びよう)とマイタは思った。
身体を温めるため、インスタントのお茶漬けをカゴに入れ、ついでに野菜ジュース。
(そういえば、天通の発売日だっけ…)
ゲーム雑誌を手に取り、立ち読みを始める。
ふと腕時計に目をやる。もう13時台の初めのバスが出発してから3分たったころだが、いまだにコンビニの目の前をバスが通った気配はなかった。
(…ダイヤ乱れすぎでしょ)
買い物かごに雑誌を入れ、レジで会計を済ませる。
「はい、千円ですねー。そういえば、今雨はどうですか?」
「ええと、降り始めてきましたね。ポツポツと」
今日もレジ脇の年齢ボタンはいつも通りに『27』を押された。
僕は15だ、と突っ込みたい気持ちを抑え、外に出る。
雨脚はそれなりだ。傘の音が鳴りやまないくらい。
「はぁ…宿題でもやるかぁ」
マイタはいまだに終わらない作文のコトにユウウツになりながら団地へ足を進めた。

団地の前は小さな公園やオープンカフェなどがある。
ただ、今日は平日。雨も降っているので人影はない。しいて言うなら、ガス工事のおじさん達がいるのだろう。
『だろう』なのはそこも機材以外見えないからである。今は休憩時間なのか。
傘に雨の当たるパラパラという音以外、静けさがあった。
マイタの部屋は団地を突っ切ったところの棟の5階にある。
(ん?あれは…)
棟の近くまで来たとき、マイタは小さな生き物がうずくまっているのを見つけた。
うずくまる、よりは『弱って倒れている』と言った方がいいだろう。
丸っこい身体に小さくとがった口先。背中に赤い楕円模様がある。
「ヒノアラシ…?」
マイタは駆け寄ってヒノアラシを抱きかかえた。
マイタに驚いてしまったのか、ヒノアラシはよわよわしくバタバタした。
「…大丈夫だよ。ほら!」
マイタはヒノアラシと視線を合わせた。
一瞬驚いたみたいだが、ヒノアラシの細長い目が丸くなる。
「野生みたいだが…どうしてこんな住宅地に…?」
とにもかくにもヒノアラシがほおっておけなくなったマイタは家に向かって走り出した。
「あ、ありがと…」
「心配するな。すぐに家に着くさ」
ヒノアラシの力のないお礼を聞き、マイタは速度を上げた。

エントランスから階段を駆け上がる。
こういう時に限ってエレベーターのランプが『R』と『12』にあるのだ。
5階の角部屋、[501]号室のドアに鍵を突っ込む。
幸い、両親は今仕事でいない。
とりあえず、背負っていたバックを自室、コンビニのビニール袋をリビングのテーブルに置いた。
「シャワーで身体を温めるべきか…」
シャワールームに急ぐ。自分もシャワーを浴びてしまう気なのか、全裸になったマイタは風呂のドアを開けた。

「じゃ、お湯で身体を洗うよ」
「…うん!」
嫌がる様子はない。マイタはてっきり炎タイプだから嫌がるかと思っていたが。
ボディーソープを泡立て、身体はすっかりきれいになった。
直後、身体をふるわせたヒノアラシから水しぶきが飛んだ。
「おっと」
「あっ、ゴメン」
「いいよ。大ジョブ」
バスタオルで身体を拭いてやり、外で待っているようマイタは指示した。
「さて、僕も身体洗うかぁ」
再びシャワーをだし、手をボディーソープで洗う。
ヒノアラシは中々かわいいポケモンだ、とマイタは思った。

身体を拭いて洗面所を出ると、ヒノアラシはテーブルの上に座っていた。
(かわいい…)と思いつつ、ヒノアラシに
「おなかすいてるのか?」とマイタは声をかけた。
「…うん」グゥーというおなかの音とともにヒノアラシは答えた。
お茶漬けを作るべくナベに水を入れ、コンロのボタンを押した。
「つかないんだけど…」
そういえばガス工事してたっけ…とマイタは思い出す。
(まいったなぁ…冷凍ごはんをチンするだけでもいいか)と思ったそのとき、
「火が必要なら、ボクのこれを使って!」と人間が人差し指で指差すようにヒノアラシが背中を指さしていた。
「ヒノアラシは背中から火が出せるんだっけ。それじゃごめんね!こっち来て」
流石にリビングでやると家ごと加熱してしまうのでキッチンのコンロの上で。

「うう、まだ?」
「泡が出始めたからもうちょっと!頑張れる?」
「うん!」
体調が悪いからなのか少し火力が頼りない。
何とか、いい温度になった。
「ありがとう!さ、テーブルに座って!」
ヒノアラシの沸かしてくれた湯を茶碗に注ぎ、御飯を入れてお茶漬けの袋を開ける。スプーンで混ぜたら、お茶漬けの出来上がりだ。
「ほら、できたぞ!」
小さめのスープ皿に盛り分けると、ヒノアラシは「ありがとう!いただきま~す」と言って食べ始めた。
「おいしい!」
「よかった。じゃ、僕もいただきますか」

スプーンで食べながらマイタは気になっていたことを聞いた。
「どうしてこんなところに?見たところ野生みたいだけど」
ヒノアラシの手が止まる。マイタは聞くべきではなかったのか、と思った。
「グラエナの群れに襲われてね…せめてマグマラシに進化してたらまだマシな戦いができたんだろうけど」
「逃げてきたのか」
「うん。右も左もわからないまま来たらいつも住んでる&ruby(くさむら){叢};から離れちゃって。ボク、物心ってやつがついたときから一人だから誰も一緒に逃げてきた人もいないし」
「親もいないのか。それは災難だな…で、この団地でお腹がすきすぎて倒れたと」
ヒノアラシはうなずいた。
「でも、助けてくれてありがとう。ホントに死んでたよ、誰かに助けてもらえなかったら」
「…危ない状況だったな。外傷は少なかったけど結構身体冷えてたし」
「危うく夢も叶えられなくなるところだったよ」
「夢?」
「一人前のバクフーンになること!」
マイタはこのヒノアラシのそばにいてあげたいと感じ始めた。
一人ぼっちで寂しい思いはもうさせたくない。友達でいてあげたい。
守ってあげたい…
マイタの思いというものがマイタを突き動かす原動力となった。
いや、もう一つある。ヒノアラシは最終的にバクフーンになる。
この子を爆炎を操る素敵なバクフーンにしてやりたい…
「ねぇ、ヒノアラシ!僕の家にいなよ!」
「えっ!?」
「君が&ruby(くさむら){叢};に戻っても一人ぼっちで寂しい思いをして、グラエナやヘルガーに狙われてしまう。だから、僕が守ってあげる!」
「…」
「一緒にいよう!友達になろうよ!」
ヒノアラシの瞳からシズクが…涙が流れる。今まで一人ぼっちで寂しかったのか…マイタに感謝しているのか…
「うあぁああん!ありがとう!!ありがとう!!!」
マイタはヒノアラシを抱きかかえた。
(この子の涙はすべて僕が拭き取ってあげよう…守ってあげよう!)
いつの間にか日の光が差し込んできていることに気が付いた。
雨は上がったみたいだ。
(何だか、僕のバスのダイヤへの怒りもどこかへ吹っ飛んじゃったみたいだ…)
再び、テッカニンなのかは知らないけど、夏を&ruby(ほうふつ){彷彿};させるウットオシイけど心地よい鳴き声が聞こえてきた。
「さっ、冷めないうちにたべちゃお」
「うん!」
涙も止んだ。

あの後、マイタはヒノアラシにファイナと名をつけ、親にボールを買ってもらった。
ちなみに、ゲットしたときに気が付いたことだが、ファイナは♀のヒノアラシだった。
ファイナとマイタの生活はすべての日々が色あせない写真のようなもの。
遊び、喧嘩、勉強。
なんでもいい思い出のようだ。


(以下、エピローグ。弱官能有り)


そして、3年後。
マイタは18歳となり、ポケモン自然科学を専攻する大学への進学が決まった。
で。
合格発表の日の夜。いつ降り出すかもわからない雨に警戒し、マイタは外食するのをあきらめ、簡単に食事を済ませ、リビングのソファーに座っていた。

「まさか受かれるとは思わなかった。センターまずいと思っていたし…」
合格証書がある以上、夢か現か聞かれたら現の方なんだけどね。僕は水出しの麦茶を飲みほして一言つぶやいた。
「そお?マイタなら行きそうな気がしたんだけど」
彼女…ヒノアラシ、もう進化してバクフーンのファイナがつぶやいた。
彼女や親の励ましあっての快挙。発表で見つけた時に叫んだのは『やった!みんな、ありがとう!!』。
ファイナとハイタッチもした。
偶然仕事の都合で泊りがけで出かけている二人には電話で合格とお礼を伝えておいた。
今夜はファイナと二人きりだ。
「はぁ。まだ寝るには早いなぁ」

「…ねぇ…マイタ、おなかすいた」
何だか、何かを決心するのような間を開けて、意味深にファイナがつぶやいた。
気のせいだろう。バクフーンの彼女には少し物足りなかったかもしれない。…あの量のお茶漬けでは。
「はぁ。食べてもいいけど…何をたべるつ !!」
ファイナが『何』を言い終えるくらいのときに突っ込んできて来ていたのには、さすがに反応できなかった。
「へっ…」
「マイタを食べたい」
「あのお。ソレ、少なくとも18禁的な意味合いで?」
「当たり。…ねぇ、マイタ。マイタがあたしを助けてくれて、しかもバクフーンになるっていう夢まで一緒についてきて、一緒にかなえてくれたよね。ホントに感謝してる」
「…ファイナの夢は僕の『炎タイプのポケモンを育てる』という僕の夢でもあったからね。その過程で僕はほかのポケモンたちにもたくさんの夢をかなえてほしくなってポケモン自然科学の道へと進んだ。僕の今の姿は…ファイナが手助けしてくれたからこそあるんだよ」
「マイタに『夢を作ること』で恩返しできたかな…?」
「恩返しね…できたよ。大丈夫」
「じゃあ、もう一つだけ。もう一つだけお願いがあるの!」
「もしかして」
僕はファイナの顔が赤くなるのを見た。間違いないね。
「もしかしなくても…マイタのことが大好き!3年間一緒にいて、マイタみたいな明るくて、強くて、優しくて…!そんなところが大好き!だから!!これからもずぅっと一緒にいてほしいな!」
「こっちもそのつもり!!よろしくね、ファイナ!ずっと大好きだよ! …で、もうズボンに手がかかってるね」
「いいでしょ。マイタが受かったらやると決めてたんだから!今日で童貞卒業だね。離さないよォ…ふふ」
「いいよ可能な限りアツイ夜にしよう。一旦どいて、布団敷くよ」
畳敷きの和室へ。
ファイナとのアツイ夜がやってくる。
…そういえば、今雨が降ってるんだけど。これは偶然かな?
そんなことを考えていたら、再び、ファイナの口が迫ってくる。荒ぶる恋の業火に僕は包まれる。
今の僕は………幸せだ。
ファイナの体温が心地いいなぁ…………

(END)

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(あとがき)
最近、雨がひどいですよね。突然の雨が怖いので折りたたみカサは携帯しないと…。
はい、こんにちは。T&Pです。
5000字越えのSS(←というのか?)『Rainy fire』はいかがでしたか?
これはバスにおいていかれて寒い思いをしたときに(こんな時に炎タイプのポケモンでもいればなぁ…)と思い書き始めました。
(結局、マイタと同じようにあきらめて帰ってしまいましたが)
前半はこういう実話を元に書きました。
ファイナのモデルはHG・SS時代から一緒のバクフーンです。(♂ですが…)
(ヒノアラシだっこしてみたい)
中盤以降は完全にオリジナルです。
ちなみにお茶漬けの湯沸しのシーンは、ポケスペに出てくる、ゴールドがヒノアラシ(バクたろう)の背中の火を使って料理しているシーンがモデルになっています。
エピローグはぎりぎりアウトを狙っています。After Story(官能有り)を書くかも…
文章やセリフの力不足であっさり友達や恋人になってたりしますが…ご容赦ください。

では以下コメント欄です。お付き合いありがとうございました。
(あと、ファイナは愚痴喫茶シリーズにも出てくる予定です。覚えておいてあげてください)

#pcomment(Rainy Fireコメントログ,10,below);

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