&size(22){―第26話― 決着}; ガラガラ・・・!!! ようやく岩は崩れるのをやめた。 2匹の生存は、砂埃に隠れて分からない。 いや、1匹生きている・・・!!! 「大丈夫ですか?」 ピジョンがその生存者を抱え、砂埃から脱出した。 「なぜ・・・お前が俺を・・・?」 ピジョンが助けたのは彼の主ではなく、スカーだった。 「ひとまず手当てを・・・」 ピジョンはリザードンの部下達の下へスカーを運んだ。 「おう、スカー・・・!よくやったな!」 「・・・意味がわからんが・・・?」 「俺たち、実はリザードンを倒す作戦をひそかに考えていたんだ。あの大岩はもともと崩れやすくして置いたんだ。 時間がたったら壊れるようにもしてあった」 「リザードンを・・・裏切ったのか?」 「俺たち、もうあいつに脅されて暮らす毎日が嫌だったんだ。 部下のほとんどはあいつに弱みを握られて仕方なく部下についている者ばかりだ」 グラエナが言った。 「おい!てめえら・・!あのお方を裏切るってのか?」 ザングースが怒鳴った。 「そんなことして、ただで済むと思ってるのか・・・?」 マグマラシも叫ぶ。 「状況を見て言え。今のお前らに仲間などいない」 ザングースとマグマラシは、団結したポケモンたちに取り囲まれていた。 「この森を出て行け。この森はもうお前達のものじゃない。ここにいるスカーのものだ」 「・・・・・え・・?」 スカーはその言葉に驚いた。俺が・・・この森のボス? 「く・・・くそぉぉ!」 2匹は悔しそうに走り去った。 「今まで、すまなかったな。お前ら2匹にはひどい事をしたと思っている」 「俺ら・・・2匹?」 彼はゆっくりと後ろを振り返った。そこには、彼の一番の理解者、彼の一番の宝物があった。 「イーブイ・・・」 「スカー・・・ごめんなさい。あなたを・・・信じてあげられなくて」 ピジョンが「おい」と仲間に一声かけ、ポケモン達は2匹が気になりながらも森に帰っていった。 「せっかく、昔の仲間に会えたんじゃないのか・・・?」 「昔の仲間も大事だよ。でも、スカーの代わりなんか・・・誰にもつとまらない」 「本当にいいのか・・・?」 「しつこいなぁ。私が聞きたいのはそんな言葉じゃない・・・」 「・・・・」 「私にどうしてほしいの?」 「俺は・・・」 スカーはうつむいた。 「イーブイに、ずっとそばにいて欲しい。もう俺のそばを・・・離れないでくれ・・・」 オレンジはその言葉を聞くと、スカーの顔を上げた。 「ずっと、一緒にいよう」 スカーの目から、涙がこぼれていた・・・。 「・・・ありがとう・・・イーブイ」 ―――――ドン・・・・! -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―第27話― 発砲}; 「オレンジが飛び降りた!!早くトラックを止めるんだ!!」 ルイスが命令した。唯一人間の言葉を操れるフーディンのマジックが、飼育員に言った。 「トラックを・・・止めてくれ。オレンジが・・・飛び降りた」 それを聞き、運転していた飼育員は急ブレーキを踏んだ。 「うわぁぁぁっ」 荷台に乗っていたポケモン達は、ぐちゃぐちゃに積み重なった。 「オレンジの奴、いったいどうしたんだ?」 「何かあの中に知り合いがいるみたいだったけど」 「とにかく、連れ戻そう!マジック、飼育員さんに説明してくれる?」 「了解した・・・」 フーディンが飼育員に状況を説明している間、ルイス他、数匹のポケモンがオレンジを追いかけていった。 「全く、世話が焼ける子ね!」 キレイハナのリリーは、走りが苦手なため、サイドンの後ろに乗っている。 「きっと、彼女のボーイフレンドがいたんだ!彼女の大切な存在が・・・」 ルイスは言った。 「しかし、オレンジはいつの間にあんなに俊足になったんだ?」 サイドンのムーは不思議そうだった。 「ストップ!!」 ルイスが仲間を制止した。 「ここから先は慎重に進んだ方がいい。あいつらに気づかれると厄介だ」 パークの仲間はゆっくりと進んでいった。 「あの2匹、どっちが勝つと思う?」 リリーは決闘が気になっているようだ。 「今はそれどころじゃないだろう?」 ドガガガガ・・・! すごい騒音とともに、大岩が崩れるのが見えた。 「ひゃぁ・・・すごい・・・」 砂煙で何も見えないが・・・。 「あ、どうやらウィンディの方が勝ったみたいよ」 リリーが言った。 ルイスはウィンディという名前を聞いてはっとした。 「あのウインディ・・・ビーズを殺した奴だ・・・」 「何だって・・!?」 「森のポケモンが言ってたんだ。人間界から森にやってきたポケモンを容赦なく殺すポケモンがいるって・・・」 「ひど・・・それがあのウィンディだっていうの・・・?」 「あ、オレンジがあのウィンディに近づいていく・・・!ダメだ!」 その時、飼育員とマジックが到着した。 「どんな・・・様子だ?」 マジックが問う。 「大変なんだ!ポケモン殺しのウィンディにオレンジが狙われてる・・・!」 「それは・・・まずい。飼育員さん・・・」 マジックはそのことを飼育員に伝えた。 飼育員は持っていた銃を構え、傷だらけのウィンディに狙いを定めた。 ―――――ドン・・・! -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―最終話― 太陽}; 俺の体を一瞬で突き抜けていった小さな塊・・・ (何だ・・・?今のは・・・) 血が飛び散っている。 (これは・・・誰の血だ・・・?) 彼女が呆然と俺を見つめている。彼女の体に血がかかっている。 (あぁ・・・俺の血・・・か・・・) 俺は彼女の胸に倒れこんだ。 「スカー・・・・!いやだ・・・!何で・・・!?」 私は何が何だかわからなかった。どうしてスカーの体から血が吹き出ているの・・・? 「しっかりしてよ!ねぇ・・・」 「イー・・・ブイ・・」 彼が話しかけてきた。 「スカー!?良かった・・・!ねぇ、しっかりして」 「俺ぁ・・・どうなってる・・?力が・・・入らないんだ」 「大丈夫・・・!絶対に死んだりしないんだから・・・!」 私はもうほとんど泣き喚いた状態で叫び続けた。 「おかしいな・・・?お前が・・・どこにいるか・・・わからない」 「ここだよ!・・・スカー!ここにいるわ!」 うそだ・・!スカーが・・・死ぬわけが無い。 「あぁ・・・きれいだな」 「・・・え?」 「オレンジが・・・何て・・・きれいだ・・・」 「スカー・・・?」 私の事を言っているの・・・・? 「夕日って・・・あんなにきれいな・・・オレンジ色をしているのか・・・」 「なに・・・言ってるの?まだ、夕日なんて・・・出て・・・ない・・・よぅ」 「きれいなんだ・・・オレンジが・・・」 彼はもう・・・助からない。 彼にはもう、私しか見えていない・・・。 「ふ・・・温かい・・・」 彼の目が閉じようとしている。 「だめ・・・いかないで・・・!まだ・・・お話したいよ・・・」 「・・・ま・・で」 「え・・?何?聞こえない・・・!」 「ありが・・・とう・・・」 さようなら、オレンジ。 君は俺に温もりを与えてくれた。 俺の一生は君の光を浴びて、キラキラと輝くものになった。 さようなら、俺の太陽。 君は、俺を照らし続ける、沈むことの無い太陽だった。 スカーは、彼女の胸の中で静かに眠りについた。 オレンジ色の光を浴びながら・・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){―エピローグ―}; 川のせせらぎ、鳥のさえずり。 天気も申し分ない。こんな日にはピクニックにでも出かけたい気分だ。 「いい天気ねぇ、スカー」 そう語るのは、オレンジ色の毛をなびかせる1匹のブースター。 「やっぱり晴れに限るわね。雨なんか絶対イヤ。ブースターになってようやくわかったわ」 彼女は小高い山の上、昔、スカーというウィンディが暮らしていた場所だ。 「あなた、いつもここから森を眺められていいわねぇ」 彼女が話しかけている所に、彼が眠っている。 「私は相変わらずよ。この森も相変わらず。人間達がポケモンを狩りにやってくるわ」 「そうだ!今日はとっておきの話をもってきたの」 彼女は急にうれしそうに顔を輝かせた。 「実はね・・・私・・・」 「姐さん!B地点に人間のハンターが現れました!!」 「・・・わかったわ、ピジョット。すぐに行く」 それを聞いたピジョットは、彼の体の倍はある翼を広げた。 「いいよ。走っていくから」 彼女はそれに対しこう答えた。 「そうですか。では・・・」 ピジョットは大空高く飛んでいった。 「ふぅ・・・聞いたでしょ?私、行かなくちゃ。あ、話の途中だったね・・・。また今度話すわ」 そういうと彼女は風のようにかけていった。 彼女がいた場所には、温かい風だけが吹いていた。 -------------------------------------------------------------------------------- &size(22){作者あとがき}; 今までお付き合いいただき、ありがとうございました! これで、このお話はおしまいです。 このラストに不満のある方もいるかもしれませんが、私はもともとこのラストのために、この物語を作ったといってもいいでしょう。 知っていますか?アフリカでは、野生動物をゲームとして殺すということが行われています。 参加者は、動物にそれぞれ付けられた値段を払うことで、動物を銃でハントすることが認められています。 (後で殺した動物の分のお金をはらう。例えば、ライオン一匹につき数千ドルなど・・・) でも、その制度のおかげで、娯楽として動物を狩る人は減りました。 そんな現実が起きている中で、私はこの物語を思いついたのです。 さて、次回作ですが、もっと明るい内容にしようと思っています。 新作ももちろんですが、Nameless loveの続編も一応頭にはあります。 投稿はもうしばらく後になると思いますが、その時はまたこのnoviをよろしくお願いします。 IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:38:11" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=Nameless%20love%2026%20%E6%9C%80%E7%B5%82%E8%A9%B1" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"