長編十四章、嫌いな人はすぐに戻ろう!! [[春風]] [[Memory Lost existence]]に戻る ---- 「……おい、ミナモ…」 先ほどからずっと、魂の抜けたように石像を見つめているミナモ。俺はそんな彼女の後ろに歩み寄ると、彼女の肩を軽く叩いてみた。 すると、ミナモの瞳から一粒の涙が流れ、彼女の頬を一直線に伝って、地面にこぼれおちた。 &size(30){&color(Red){Lost existence 第十四章 遺跡の町で};}; 「……わわっ!! いっ、痛かった!?」 驚いて半歩飛びのくと、ミナモはその場に座り込み、前足で涙を拭うと、こちらに振り返った。 「…ううん、大丈夫。ただ、家族のことを、思い出して悲しくなっちゃっただけだから」 「そうか……」 てっきり力を入れ過ぎて、肩を叩いてしまったと思っていたので、俺は少しほっとした。家族のことを思って泣いているミナモには悪いが、幼少期に家族から虐待を受けていた事実のせいで、彼女に対する同情よりも、ほっとした思いの方が先に出てしまった。 「……何だか、あんな話していたせいでもあると思うけれど、この石像見てたら何だか懐かしいような、不思議な感じがしてきて……、おかしいよね」 そう言いながら、ミナモは涙を拭きながら笑顔を作った。 「…おかしくないよ、それより、ラナと、シオンに会ったんだ。これからあいつらの集落に行くことにしたんだ」 とりあえず、暗くなった話を変えるため、俺はこれからの予定を話すことにした。 「今は近くで、セレナが面倒を見てやってると思うけれど、お前も行ってやれよ」 そう言ってミナモの顔を見ると、彼女は驚いた表情をしている。あんなに近くにいたのに、全く気が付いていないみたいだ。 「え? あの子達、新しく住む場所が見つかったの?」 「そうみたい、もう追われる心配とかはなさそうだよ」 挿返答したが、ミナモは俺の言葉が終わらないうちに、俺のわきをすり抜けて、走って行ってしまった。 そう返答したが、ミナモは俺の言葉が終わらないうちに、俺のわきをすり抜けて、走って行ってしまった。 「……あいつ、大丈夫だよな」 あの二人の集落でミナモが何かしでかさないか少し心配だが、あの二人の集落に短期間行った方がミナモの為にもなるだろうし、子供達も喜ぶ。セレナの言うとおりにした方がいいと、今は思う。 「俺も行った方がいいかな……」 その場で大きく深呼吸して、俺はミナモが走って行った所に全速力で走って行った。 すぐ後ろで巨大な影が、身を隠すようにしてこちらを見ていたことに、気がつかないままで……。 ---- 「…ねぇ、あの石像、一体何なの?」 ラナの案内の元、森の中を進んでいるときに、ミナモは唐突にこう切り出した。 「巨神様だよ」 シオンが、ミナモの周りをぴょんぴょんはねながら返答する。 「あのねぇ、巨神様は、とっても大きくて、強くって、えーとねぇ……」 ミナモは特別子供が喜ぶようなことを行ってはいないが、シオンは何故だか言葉が詰まるほどにも興奮して説明する。子供って正直、何考えているのか分からない、そこが可愛いんだけどな。 「この近くで信仰されている神様のこと」 跳ねまわるシオンとは反対に、ラナは落ち着いた様子で答える。 「全部で三人いて、それぞれ鉱石の体を持っているって伝わっているの。さっきあったのは岩の巨神様で、私達の背丈に合わせて作られたから小さく見えるけれど、本当はもっと大きいらしいの」 「……へぇ〜」 ラナもシオンと同じく、もう少し子供らしい回答をすると思ったが、以外にもわかりやすく説明してくれて、逆に言葉が出なかった。 「他にもね、集落には大きな遺跡があって、巨神様を祭っているの。人間もたまに調べにくるけれど、その人たちはたいてい遺跡に行くだけだから、集落には一度も来てないらしいんだ」 「……ふーん、巨神様ね。誰かさんはもう誰も信仰していないとか言っていたけれど、別にそんなことはないんだ」 ミナモはそれを聞くと、セレナの方を向いて、いたずらっぽく笑う、しかし、等のセレナは何も反応せず、周囲を警戒するように見回していた。 「どうかしたのか? セレナ」 気になって聞いてみると、セレナはちらっと後ろを振り向き、ふぅっとため息をついた。 「いや、何だか妙な感じがしたからな」 「…妙な感じって、災いポケモンのお前が言うなよ、怖くなるじゃん」 アブソルが災いを呼ぶというのは迷信だとはわかっているが、昔からよく聞く逸話なだけあって、彼に「妙な感じがする」なんていわれるとかなり怖くなってしまう。 「まぁ大丈夫だろう、こんな大人数、だれも襲わないさ」 少し不安になる俺を尻眼に、さっぱりとセレナはそう言いきった。さっきからずっと警戒していたくせに。 「それより、集落とやらはまだなのか?」 セレナは俺から顔をそらすと、前を歩くラナに尋ねる。 「うん、もう見えているよ。……ほら、あそこ!!」 そう言ってラナは進んでいく方向を指差した。そこには一見、うっそうと茂っている森にしか見えないが、こちらから見て右斜め奥の方に、小さく石造りの門のようなものが見えた。それは最近作ったものではなく、古ぼけていて、ずっと昔から経っているような風囲気を醸し出していた。おそらく、巨神を祭る遺跡の一部を、そのまま利用しているに違いない。 「あの門は、中がトンネルみたいになっていて、そこをくぐって集落に行くの。あそこを潜るまでは森だけど、潜った後は草原で、そこに家とかが建っているの」 ラナはこちらに少し振り返った恰好で集落の説明をしてくれる、対するシオンは、いつの間にか俺の背中によじ登って背中の毛を引っ張って遊んでいる。 「おにーちゃん、早くいこーよぅ。」 「おにーちゃん、早くいこーよぅ」 はしゃぎながら毛を引っ張るシオン、その姿を見ていると、何だか心が和む。子供時代にこのような記憶が一切ない俺が見ても、それは明るくて、暖かいものだった。 ---- トンネルをくぐりぬけると、そこには森を切り開いたような、草原が広がっていて、そこ一面に住居が建っていた。 いや、建っているのは住居だけではない。あちこちに石板のようなものや、小さな石柱のような石造りの物体が地中から顔をのぞかせている。それには何か文字が書いてあるようにも見えたが、人間の文字しか知らない俺には、読むことが出来なかった。 「ふぅん。結構綺麗なところじゃん。いいとこに住めてよかったね」 ミナモはそこらへんの石板をいじりながら、住居が並んでいる通りを見つめる。 「もっと森って感じの場所だと思っていたけれど、結構開けているのね。遺跡があるっていうから、もっと複雑な地形だと思った」 確かに、ここは森に囲まれているとは思えないほど開けた土地だ、このような、森の一部だけ平地といった土地は人間が無理やり木を切り倒して作ったような場所しか見たことはない、とても珍しい土地だと言えるだろう。 「結構面白そうな集落だね、何かいい場所とかはないの?」 石板の先っぽに寄りかかりながら、ミナモは石の表面を触りまくる。 「ここには遺跡しか名物はないけれど、この辺りを少し一周してみる?」 「えっ? 行く行く!!」 ラナの誘いに、すぐにミナモは乗り気になった。 「ルークと、セレナも行くよね」 ミナモは石板から手を放し、こちらに振り向いた。 「ああ、俺は行くよ」 俺は迷わず、彼女たちと一緒に行くことにした、しかし…。 「悪いが、俺は遠慮しておく」 間髪いれずに、セレナはいかないと言い放った。 「何でだよ、初めにお前がここに来るように言ったんじゃないか?」 彼の態度に少し引っかかって、俺はセレナに文句を言う。 「行ってやってもいいだろ」 しかし、セレナはいつものように、無表情のまま答える。 「俺は災いポケモンだ、そんなものが村の中に現れてみろ、どうなるかはわかるな?」 「なっ…、どうなるかって、そんなの迷信だし……」 「とにかく、俺は行かない。別に俺はそこまで子供達と交流のあるわけではないし、いなくても特に問題ないだろう」 そう言うと、セレナは後ろを向くと、すたすたと歩き出してしまった。 「日没に、この門の前で落ち合おう」 そう言い残したと思うと、セレナは走り出し、瞬く間にトンネルをくぐり抜けてしまった。 「…あらら、行っちゃった」 寂しそうに、ミナモはセレナの葉知って行った先を見つめている。 寂しそうに、ミナモはセレナの走って行った先を見つめている。 「……なんだよ、あいつ…」 何だか、俺は納得がいかなかった。俺達に迷惑をかけまいとしたのはわかるが、彼の態度のようなものが、納得いかなかった。 「でも、私達だけでも行こうか。あいつも何かありそうな感じだったし」 珍しくミナモは、そう割り切ると、俺の腕を無理やり掴み、ラナとシオンの前まで引っ張った。 「じゃあ、行こうか」 ぐいっと引っ張られ、足がもつれて転びそうになるも、何とか体勢を立て直す。 「い、いきなり引っ張るなよ!!」 少し怒ったような声をだすと、ミナモはやれやれと言うように、俺の腕を放した。すると、その拍子で俺は足がもつれ、そのまま地面に叩きつけられてしまう。 「痛ってぇ……何も途中で放さなくても…」 尻もちをついた姿勢のまま、俺はミナモに文句を言う。するとミナモは少し下を向くと、小声で一言つぶやいた。 「だって、早くあんたと行きたかったから……」 それだけポツリと言うと、ミナモは俺に背を向け、少し先で待っている二人に近づいて行ってしまう。 「おまたせ。セレナは来ないみたい」 そう言って二人の頭をなでるミナモを遠巻きで見ながら、俺はゆっくりと起き上がった。 「……何だ?」 何故か、俺の胸の中によくわからない感情が浮かび上がってきた。それはミナモのせいで転んでしまって悔しい、などといった否定的な物ではなく、肯定的で、しかも込み上げてくるようなものだった。おそらく、ミナモが漏らした一言を聞いた時から、この感情は湧きあがってきた。 「遅いよ、ルーク!!」 遠くでミナモの声がする、そう言えば、一緒にこの集落を回るんだったっけ。 「ああ、今行く」 湧きあがってきた感情を抑え込み、俺は足を前へと進める。 一体なんだろう、この感情は? ---- そのころ、セレナは集落と森とを結ぶトンネルをくぐりぬけ、うっそうと茂る森の中を、一人で進んでいった。 周りでは一面の木や草が茂っているだけで、聞えるものは風の音や、虫系のポケモン達が求愛の為にたてる鳴き声ぐらいであり、誰が見てもとくに変わったようなことは起きていないように思うだろう。 ……しかし、セレナはそうは思っていなかった。彼はこの森に自分以外の部外者が立ち入っていることを感じており、また、その部外者がずっと自分の後をつけていることにも気づいていたのだ。 そして、セレナは先ほど、二人の子供と出会った、石像が一体ぽつんと置いてある森の一角に着くと、歩く足をぱたりと止めた。 「そろそろ、出てきてもいいんじゃないか?」 セレナは自分の背後にある空間に向かって、そう問いかける。すると木々の間から、二メートルはあるかと思われる、巨大な頭を持つ恐竜の姿をしたポケモン、ラムパルドが姿を現した。 「ふうん、よくわかったな。俺とお前には直接面識はないはずだが」 感心したように頷くと、ラムパルドはセレナに数歩歩み寄る。 「お前がつけて来ていることはわかっていたさ、お前には忘れもしない、あいつの匂いが少しだけするからさ」 セレナも、ラムパルドの方に一歩近づく。 「お前、ミューズの組織の者だろう? 神官を連れ去りに来たな」 鋭い目つきでセレナはラムパルドを睨みつける。すると、ラムパルドはにやりと笑みを浮かべる。 「御名答、俺は楽団の一員、メッツォだ。初期の奴らとは入団の経緯が違うからな、気づかれないかと思ったが、さすがボスの認める男とは言うだけある、こんなにすぐばれるとは思わなかったな」 そう言うと、彼はセレナの方にさらに近づく、そして、いきなり彼に自らの頭を打ち付けたのだった。 「うおっ!!」 思わずセレナは身をひるがえし、後ろへ飛びのいた。 「こいつ……闘る気か!?」 驚きの叫びを上げるセレナ、そんな彼に向って、メッツォは容赦なく追い打ちをかける。 「このっ!!」 追撃を避け、セレナは鎌のような角を使って反撃するも、その角はメッツォの頭にあたったと思うと、ガキンと音を立てて弾かれてしまった。 「くそっ、堅い!!」 弾かれた反動で、セレナは体勢を崩し、よろめいた。その隙を狙って、メッツォは頭を勢いよく彼に打ち付けた。 後頭部に強力な一撃を受けたセレナは、少しよろめいたかと思うと、その場に倒れこんでしまう。 「……くっ……うぅ…」 まだ意識があるのか、セレナは呻きながら、必死で起き上がろうとする。彼の頭からは真っ赤な鮮血が、土へと流れていく。 「まさか、お前が娘と一緒にいたとはなぁ。ボスもがっかりしてるぜ」 メッツォは、動けないセレナにさらに頭突きを食らわせる。彼の頭突きを何発も後頭部に食らったセレナは、少しばかり痙攣したのち、全く動かなくなった。 「……さてと、いい土産が出来たな」 セレナが気を失ったことを確認すると、メッツォは彼を持ち上げて、鞄でも掛けるかのように、肩に彼の体を掛ける。 「…後は娘だけか……」 メッツォは片腕で、先ほどセレナに打ち付けた頭をかくと、今まで潜んでいた茂みの中に突き進んでいく。 その後姿を、動くことのない石像が見つめていた。 ---- 「見て、あそこが遺跡だよ!!」 集落の中を一回りした後、俺たちは遺跡を見に行っていた。しかし、そこにあったのは小さな穴で、その近くに何本か石柱が建っているだけの物だった。 「遺跡って……これのことか?」 確かに昔の柱が建っている点では遺跡だが、大きくて立派な物を想像していたため、がっかりした気分になる。 「見てよ、穴の中に何か書いてある!!」 ミナモの声がして、ふと彼女の方を見ると、彼女は穴の前に座り込んで、中を覗いていた。 「絵……?」 気になって、俺も穴の中を覗いて見る。 「…壁画だ」 穴の中はちょっとした石室になっていて、おそらく四方を壁でふさがれている。その床の部分に、色あせてしまった壁画が描かれていた。 「あれって、森の中で見た石像じゃないか?」 壁画はマンダラのような模様の上に、三体の生物が描かれていた。いや、生物と言うよりも、人間を摸した鉱物といったほうが正しいだろう。 壁画の内、真上に描かれている一体は森の中で見た石像に似た姿をしている。その下には残り二体が書かれていて、右斜め下に描かれているのは頭がとがっているような姿をしていて、左斜め下のは、それとは対象的に、丸っこい頭をしていた。 「あれは、巨神様の絵だよ」 いつの間にか、ラナとシオンの二人も穴の中を覗いていた。 「右下のは、氷の巨神様、そして、左下のは鉄の巨神様。どちらも森の中に石像が建てられていて、集落を守ってくれているって、伝えられているの」 「集落を、守るか……」 目を細めながら、ミナモは小さな声で呟いた。 「確かに、守ってもらっているような気がするよね、こんなに平和なんだし、ここはいいよ」 「……平和、か」 彼女の言うとおり、ここは平和だ。それが、一番この村の長所かもしれない。 「じゃあ、そろそろ私達は帰るね。もう夕方だし、セレナも遅いと心配するだろうし」 そう言って、ミナモは顔をあげる。彼女の言う通り、いつの間にかもう日が暮れようとしていた。 「何日か、泊っていくんじゃないの?」 悲しそうな顔をするシオン、そんな彼の頭を、ミナモは優しく撫でる。 「大丈夫、また会えるから、ね」 そう言ってシオンをなだめると、ミナモはラナのほうに向きなおった。 「今日は本当にありがとうね、楽しかったよ」 「うん、こちらこそ恩返しができてよかったよ」 ラナも満足そうな顔をして、ミナモに返事をする。 「じゃあ、村の入り口まで一緒に行くからね」 そう言うと、ラナはミナモに、体を近づけた ---- 俺達が村の入り口に着いた時には、太陽は地平線に姿を完全に隠しており、あたりはうす暗くなっていた。 しかし、そこにセレナの姿は見えなかった。自分から時間を決めておいて、どこに行ったのだろう? 「誰にだって遅れることはあるよ」 ミナモは大丈夫だと言い、草の上に体を横にする。 「こうやって、景色でも眺めながら待っていようよ」 彼女がそう言うと、シオンはすぐにまねをするかのように横になると、楽しそうにはしゃぎだした。 「なぁ、お前達はもう帰った方がいいと思うけど、大丈夫なのか?」 幼い二人が帰らないと、家族が心配すると思い、ラナに帰るように諭してみるが、彼女は別に問題なさそうな顔をする。 「平気、お父さんもお母さんも、実は今日出かけているから、夜にならないと帰らないよ。それに、皆を見送りたいし、門限ぐらい破るよ」 「でもさ、また危険な目に会うかもしれないし……」 「平気平気、皆平和ボケしちゃってるし」 ラナは大丈夫だとしきりに言うが、こんな子供を遅くまで外出させるなんて気が進まない、早くセレナにここに来てもらわないと困る。 ……しかし、俺の思いとは反対に、いくら待ってもセレナは現れなかった。 「……おかしい、あいつって、こんなに時間にルーズだったのか?」 どんどんと辺りは暗くなっている、それなのに、彼は一向に姿を見せない。 「何かあったんじゃないの? 来れなくなる事情とか。どちらにしろこれ以上この子たちを外に出しておくべきじゃないわね」 さすがにミナモも異変に気が付き、辺りを見回し始める。 「確かに、子供と一緒にこれ以上は待てないな…、ここで俺は待っているから、お前はこの子たち送っていってくれないか?」 俺がミナモにそういうと、彼女はあくびをして、立ち上がった。 「そうだね、そうしようか。 …それにしてもあいつ、どこに行ったんだろう? かばん置いたままにして……」 「は? かばん?」 彼女は突然かばんと言いだした。それが何を意味するのか、俺には訳がわからなかった。 「かばんって……何だ?」 「ほら、かばんだよ、後ろ後ろ」 ミナモはきょとんとしたような顔をして、俺の後ろを指差す。 「どういうことだよ?」 不思議に思って、振り向いてみると、俺がいる場所から少し離れたところに生えている木の枝に、いつもセレナが肩から掛けている救急箱が、乱暴に掛けてあった。 「かばんって、あれのことか」 近づいて、救急箱を木の枝から外すと、箱の上からひらりと、一枚の神が落ちた。 近づいて、救急箱を木の枝から外すと、箱の上からひらりと、一枚の紙が落ちた。 「なんだ、これ?」 紙を拾い上げてみると、何か文字が書いてあった。読めないところを見ると執筆者はポケモンだろう、もしかしたら、セレナからの書き置きかもしれない。 「ミナモ、紙があるけれど、読めないから代わりに読んでくれ」 そう言って、俺はミナモに紙を渡す。 「文字ぐらい自分で読めるようになりなさいよ……、えーっと、妙にきれいな文字ね、なになに……」 面倒くさそうに、ミナモは紙を読み始める。 暫くの間ミナモは静かに紙を読んでいたが、急に彼女は顔を上げた。 「……大変よ、ルーク。セレナが…誘拐された!!」 「えぇ!?」 「こいつ、難しい表現ばっか使うから要約するけど、セレナは預かった、返してほしければ娘をつれて遺跡までこい、って書いてある。多分、あの変態達の仕業だよ!!」 「……あいつらか…」 最近見てないと思ったら、まだ後をつけていやがったのか。あまりにもしつこすぎる。 「ラナ!! シオン!!」 俺は何が起こったのかわからない様子の二人の方を向き、彼女たちの目線に合うようにしゃがみこんだ。 「すぐにミナモを連れて、家まで帰るんだ、遺跡には近づくなよ。あと、少しの間ミナモをかくまってくれ。すぐに戻ってくるから……」 「待って、それってルークが一人でセレナを助けに行くってことだよね? そんなの危険すぎるよ!!」 ミナモが驚きの声を上げて、俺を止めるように腕にしがみつく。 「ミナモ……」 俺は少しの間ミナモを見つめるが、意を決して彼女の腕を優しく外す。 「大丈夫、きっとうまくやれるよ」 そう言った後、俺は三人に背を向けて、遺跡に向かって走り出した。 ―― 十四章終わり、十五章に続く ---- スランプ気味でしたが、最近脱出しました。タブンネ 頑張っていかないといけませんね。てか頑張ります。 #pcomment(遺跡の町で、コメント,10,);