六章目、by[[春風]] [[Memory Lost existence]]に戻る ---- 「あいつ、仲間を見る目か? 普通村の子供が戻ってくる目じゃないだろう。」 「…ああ、最悪の事態だ、どうする?」 &size(20){&color(Red){Lost existence 第六章、連鎖する陰謀};}; &size(20){&color(Red){Lost existence 第六章 連鎖する陰謀};}; ミナモと俺は集落の人々を睨みつけながら、徐々に後ずさる。 ラナも不穏な空気を読み、怯えながら俺たちの後ろに隠れた。 …しかし、まだ幼いシオンは、故郷に帰ってこれた喜びのほうが大きかったのか、集落の方に走り出してしまった。 すると、一匹のサンダースが、鍬を前足で持って、二足歩行でこちらに向かってきた。 「…逃げろ、シオン!!」 突然ミナモが叫びながら、シオンに駆け寄り、首根っこを咥えて地面に転がる、次の瞬間二人の頭上を鍬がかすめ、すぐ後ろに突き刺さった。 「あいつら、やっぱり!!」 俺は鍬を拾い上げ、サンダースに当たらないように投げ返す。 予想どおり、鍬はサンダースの横をかすめ飛び、彼をはじめとした住人たちがひるむ、その隙をついて、ミナモがシオンを俺のほうに放り投げる。 俺はシオンとラナを抱き上げ、森のほうに逃げ出す。 ふと後ろを振り返ると、ミナモが何人かの住人たちと交戦しているのが見えた。 (予想外だ、村人が子供を売るだけじゃなくて、襲ってくるなんてよ。) ミナモはとあるブラッキーの片手を凍らせたあと、踵を返して俺のほうに向かってきていた。 「ラナ、シオン、悪いけどもうここにはいられないぞ!!」 俺は今にも泣きそうな二人に語りかけ、山道を登って行こうとした、が…。 「…くそっ!!」 俺の前の山道に、何人かの集落の者らしいポケモンが、こちらに走ってくるのが見えた。 「…前も後ろも封鎖されている、こうなったら強行突破よ、集落のほうに戻って!!」 ミナモが俺の数メートル後ろで叫んでいる。 「わかった、でもこいつらは…?」 「連れていくしかないでしょ、いいから早く!!」 ミナモは二本脚で立ちあがると、自分の腕に冷気を放ち、かなり長めの氷の剣を作った。 「行くよ、あんたは子供を守ることだけを頭に入れて、ついてきて!!」 そういうとミナモは、片手で持った氷を振り回しながら、集落に向かって突っ走って行った。 俺は言われたとおりに、ミナモの後を追いかける。 「まずはどこか隠れる場所を探すよ!!」 ミナモは振り向いて叫ぶと、集落の前の住人たちを切りつけ、中に入って行った。 俺もそのあとを追い、うめき声を上げて倒れる住人たちの間をすり抜け、集落の中に入る。 ミナモは遅いかかってくる住人を氷で殴りつけ、隠れ場所を探すようにあたりを見回す。 「なぁ、この場所に頑丈で、隠れられそうな場所があるか?」 俺は村のことがわかっているラナに、逃げ込める場所を尋ねた。 「…あの道を左に行った先に、…倉庫に使っている場所があるの…鉄の扉も付いているし。」 ラナが震える声で答えた。 「ミナモ、左に行くぞ、その先に鉄の扉の付いた建物があるらしい!!」 俺は大声で叫び、がむしゃらに氷を振り回していたミナモを呼び止める。 「わかった、行ってみよう。」 ミナモは氷を投げ捨てると、四足歩行に戻って一目散に走り出した、俺もそのあとを追いかける。 「あそこかっ!!」 俺たちは走って、やっとその倉庫に使われているという建物についた。 木や干し草などで建てられているが、何か大切な物をしまっているのか、鉄の大きな扉が付いていた。 「鉤は掛かってないみたいだよ。」 ミナモが力いっぱい扉を開き、中に子供を先に入れる。 「おい、早く入れ、追ってがくるぞ!!」 扉は相当重いらしく、取っ手を持つミナモの前足は震えていた。 俺は急かされるように中に入る、続いてミナモが手をはなし、転がるように中に入いった、俺は全員がいることを確かめると、内側から錠を下した。 すぐに扉を外側からたたく音が聞えたが、しばらくするとその音が消え、辺りは静寂に包まれた。 「とりあえず逃げ切れたみたいね、それと、ここは何をしまっておく倉庫なの?」 ミナモは鉤を外側から開けられないように錠を凍らせると、目をこすって辺りを見回した。 しかし、辺りは真っ暗で、何も見えない、なにか火をつけて明るくしようと、俺は手探りで燃えそうなものを探しだした。 「ん…、何だこれは?」 俺は手に何か紙のようなものを感じ、それに火をつけてみた。 辺りが少しだけだが明るくなり、ここが何の場所なのか特定することが出来た。 「なんだよ、ここ…。」 倉庫中に、大量の紙がおかれていた、いや、ただの紙じゃない。 何やら文字や絵などが描かれていて、規則正しく印が描かれている、さまざまな紙の束だった。 「これは書物よ、人間のように製本技術がないポケモンたちは、紙にそのまま物語を書くのよ。」 …ここは、倉庫というよりか、図書館みたいな場所だったのか。 俺はその中のひと組の束を手に取る、その紙には文字のようなものがたくさん書かれており、人間とブイズ族とみられるポケモンが、手をつないでいる挿絵が描かれていた。 しかし俺は文字が読めない、正確には幼い時から人間の世界で育ったため、人間の使用する文字は読める、だがポケモンの使う文字は、今まで少ししか目にしていない。 「なあミナモ、これ何て読むのかわかるか、俺は元人間のポケモンだから文字は読めないんだ。」 ミナモは恐怖でただ震えるばかりの姉弟の肩を優しくたたきながら、俺の持っている紙をめんどくさそうにひったくる。 「…えっと、これは絵本ね、内容は… ひとと、けっこんした、ぽけもんがいた、 ぽけもんと、けっこんした、にんげんがいた、 むかしは、ひとも、ぽけもんも、 おなじだったから、ふつうのことだった、 …いかにも昔話って感じ、人間とポケモンの結婚だぁ? そんな気持ち悪いことしたい奴なんていないだろうね。」 ミナモはどうでもいいようなそぶりで、その紙の束を、火にくべた。 「それよりもここから逃げることが先だ、なんかいい作戦はないの? このままここにいたらいずれ殺されるよ。」 「わかってるって、でもどうやれば全員にげられるのか…?」 俺はいら立ってきて、乱暴に近くの紙を引き抜いた。 その紙にはたくさんのイーブイたちが描かれていて、まるで図鑑のようだった。 「何やってんのよ、紙なんて使い物になんないだろ、ザックもどこかに吹っ飛んじゃってるし、今は絶望的な状態なのよ!!」 ミナモが怒ったように叫ぶ、そのとき俺は初めて、今まで背負っていたザックがどこかに行ってしまったことに気がついた。 「作戦って言っても、特に何も思いつかないんだよね…。」 俺は先ほどの図鑑をもう一度よく見てみた。 「…読める…。」 何故かわからないが、その図鑑にはなぜか俺の読める人間の文字で描かれていた。 「何で人間の文字が書いてあるんだろう、普通集落は人間の文字など使いそうもないのに。」 やはり、この集落は人間と裏で通じている節がある、でも、なぜ人間はここと繋がりを持ったのだろう? なにか欲しいものでもあるのか? いや、それだったら皆殺しにしてでも奪うはず。 …人間は、何を考えているのか全く分からない。 とりあえず、心を落ち着けるため、俺は紙を読んでみた。 「…なんだ、これ?」 読み進めていくうちに、俺は内容の意外さに驚いた、初めは普通の図鑑のようだったが、徐々にぞの内容が宗教的な物に代わって行ったからだ。 まず、何もないところに世界が出来た。 世界は、 であり、その後に時空が回り始めた。 「…何これ、思いっきり破かれているじゃん、しかも、つい最近破いたようね。」 くだらないとさっきまで言っていたミナモが、いつの間にか横からのぞき見ていた。 「確かにこの破き方は人為的だ、何か隠したんじゃないか?」 俺はなおも読み進める。 時間と空間が動き出した後、創造主はこの世界の中心で、眠りに就いた。 種が眠った後、時間は長い間我々に安息を与えると約束し、空間は我々の居場所を作ると誓った。 それから時空は約束どおり、我々に平和をもたらした、我々は主と時空と自然に、調和して生きていた。 しかし、その平和は崩れた。 彼らがやってきたからだ、 彼らの名は人 今度は紙の三分の二にわたる部分が破かれていた。 「ここに破り残しの『人』の文字があるね、多分これは『人間』、人間が自分たちに都合の悪いところを破いたんじゃない?」 「というか、お前人間の文字も読めるのか…。」 俺は二枚目の紙に手を伸ばす、二枚目といっても、おそらく間に何枚かあっただろうが、なくなってしまっているようだった、しかもその紙も上のほうがだいぶ破られていた。 しかし、時空は約束を破らなかった。 我々に最後の頼みの綱、 を残してくれた。 って、 へ行け 神の眠る、約束の地 る。 そうすれば、 との決別、そして安らかな が、 を包むだろう。 それこそが、我らに残された道。 …今度は、上から墨で塗りつぶされていた。 「これって、どこかで見たような内容だな。」 俺はミナモの顔を見た、ミナモは少し考え込む表情をしていたが、すぐに俺のほうを向いて、笑顔のなった。 「あたり前じゃん。これってエデンの神話よ。」 ミナモが歓喜の声を漏らす。 「…そんなに喜ぶことなのか、それに、神話って?」 「何言ってんのよ、こうすれば通じるでしょ。」 ミナモは紙の上から、先ほど焼いた紙の灰を指に付け、文字を書き始めた。 我々に最後の頼みの綱、「エデン」を残してくれた。 って、「エデン」に行け 神の眠る、約束の地、「エデン」に行ける。 そうすれば「人間」との決別、そして安らかな「幸せが」、「我々」を包むだろう。 それこそが、我らに残された道。 「ね、こうすれば通じるでしょ、わからないところもあったけど、多分これであっているはず。」 ミナモは嬉しそうに、灰の付いた指を舐めた。 しかもミナモは、最近知ったばかりの本心を覆すようなことを言った。 「これでエデンの存在が証明されたね♪」 「証明されたって、この紙でか?」 俺の頭に疑問が浮かぶ、エデンの神話がここで伝わっているからなのか?。だけど神話ならほかのところでも伝わってもおかしくない、ここで伝わっていても証明にはならないはずだ…。 「なあ、喜んでいるところ悪いが、似たような話が伝わっていても証明にはならないぞ。」 俺はミナモに異論を唱えた、その異論がすぐに覆されるとも知らずに。 「内容じゃないよ、破られているってことだよ。」 「破られていること?」 「うん、さっきあんた言ったじゃん、『何か隠したんじゃないか』って、それは多分間違っていないよ、でも、人間は悪く言われているところだけじゃなくて、エデンのことも隠した、…普通問題なければ隠さないよね。」 「そうか!!」 俺は思わず大声を上げた、そのためか、倉庫の入り口でシオンとかたまっていたラナが、びっくりしたように飛び上がった。 「人間は、エデンの存在を認めていて、その存在がポケモン全体に伝わらないように、書物を破ったんだな!!」 「…それって、つまりどういうことだと思う?」 「ああ、わかるよ、その意味が。」 俺はエデンなんて信じていなかった、だけど、今その存在を確信した。 「エデンは、本当にあるってことだな。」 ---- 「…と言いたいところだけど、人間が破ったって証拠もないし、まだ信じられないよ。」 確信はしたが、冷静に考えると疑問が残る、人間の文字なんて読めるポケモンなんて少ないのに、わざわざ破ったりするのだろうか? 「…でも、その紙の下に、同じ個所が破られている、あたしたちの文字で書かれた紙があるよ。」 「本当か!!」 …本当だった、ミナモの持っている紙は、文字は違うが同じ個所が破られていた。 となると、人間はエデンのことを「事実」と認めているということか。 それだと残る疑問は一つ、なぜ人間はエデンの存在を隠そうと、紙を破いたのか? たぶん、労働力の減少か、地質調査のためだろう。 「なあ、人間が紙を破った理由は労働力のためか、地質調査のどちらかじゃ…。」 「違うよ。」 俺の推理は、すぐにミナモに一蹴された。 「労働力は人間の使う球体があれば問題ないし、地質調査にしても伝説とはいえ、数少ない資料を破るなんてすると思う?」 「…しないと思う。」 またしても、ミナモに丸めこまれてしまった、少し落胆する俺をよそにミナモは話を続ける。 「あたしが思うには、人間はこの中の主を狙っているんだと思うよ。」 「主?」 「そう、その書物を見て。」 ミナモは持っていた、ポケモンの言葉で書かれたほうの紙をみる、俺も自分の紙を改めて凝視する。 「まずは一枚目、一枚目の紙に書いてある一文だけど。 創造神は、世界の中心で眠りに就いた。 って書いてあるじゃん、そして二枚目には、 神の眠る、約束の地 って書いてある、この文の約束の地がエデンとすると、主はそこで眠りこけているってことになる、人間は多分それを狙っている、政府じゃない、半分オカルトチックな非政府の組織かなんかだろう、いるはずのないのにね…。」 ミナモは顔を上げ、ささやくように言った。 「ごめん、エデンがあるって言ったこと訂正する、やっぱりない。」 半分悲しげな眼でミナモは俺を見つめる、そんな目をされると返答に困ってしまうよ…。 「…あのさ、そんなにしょげなくても…、ないという証拠もないし…。」 「別に、しょげてるわけじゃないもん!!」 いきなりミナモは怒ったように叫ぶ。 「言っておくけど、よく考えたら、主っていうのも神じゃん、神様が本当にいるのなら、世界がこんな不平等なわけないじゃん、でもこんなに世界が辛いんだから、神様なんていない、だからエデンもないっ!! …言っておくけれど、これ、ツンデレじゃないからね!!」 …十分ツンデレだよ、さっきまであんな眼をしていたのに、急に強がるなんて…。 だけど、突然納得のいく説明を、否定されてしまい、さらに俺はエデンの存在について考えにくくなってしまった。 「…あるかないかは置いといて、今は脱出方法を探すこと、いいね!!」 ミナモはそっぽを向くと、状況が把握できていないラナたちのところに行ってしまった。 「…たしかに、これで時間つぶししまったな…。」 考えてみれば、ここには食料も水もないし、長い間閉じこもっているわけにはならない。 俺は息を大きく吐くと、書類のほかに何か使える物を探し出した、…その時だった。 「ルーク、何か外が騒がしくなったっ!! 攻撃してくるかも、きて!!」 室内にミナモの甲高い声が響く、俺は驚いて扉の近くに走り寄った。 …確かにざわざわと声や、金属の擦れる音がする、絶対何かする気だ。 「…いい、相手が何かしてきたら、一気に突入、…集落の長を人質にとって、逃げ出すよ、…あと、二人はいいって言うまでここに隠れていてね。」 ミナモは子供たちを抱き寄せながら、俺に指示を出す。 俺はうなづきながら、扉に目をやる。 鉄製の扉には、凍った錠がしてあったが、よく見ると、小さな隙間があいている、あまり中を照らしてくれるのには期待できそうにない隙間だが、外の様子を見るのには十分だ。 俺は隙間に目を近づけ、外の様子をうかがった。 …外には金属製の武器のようなものを携帯したブイズ族たちが集まっている、完全にこちらを攻撃する気だ。 「ミナモっ、これはかなりやばいぞ、どうする…。」 俺たちの間に、緊迫した空気が張り詰める、それは外でも同じようなものだった。 「開けろ!!」 やがて、扉の前に集まった民衆の中から誰かが叫び、それは瞬く間に大きな合唱のような声になり、辺りに響き渡る。 …そして、民衆の中から、たくさんの装飾品のようなものをつけた、…おそらく長の、雄のブースターがこちらに向かってきた。 そして、扉のすぐ近くまでくると、彼はどすの利いた声で、威嚇じみた声を上げる。 「開けろ、犯人は特定できているぞ、無謀にも『人間』に牙をむいた、間抜けなグレイシアめ。」 「間抜けだと…!!」 いつの間にかミナモが俺顔のすぐ近くで、外をのぞいていた。 「…断るといったら?」 ミナモが、 敵意をむき出しにした口調で返す、この口調で凄まれたら、嫌でも命令を聞いてしまうだろう。 …でも、ブースターは全く動じず、後ろの側近に合図をする。 すると、ジャラッという音とともに、鎖で繋がれた組ひと組の男女が、前に引き出された。 雄のほうがミナモと同じグレイシアで、雌のほうがブラッキー、なんだか、誰かに似ているような…。 ブースターはうすら笑いながら、再びこちらに語りかける。 「…こいつらが苦しんだ挙句、死ぬことになるぞ、 …あの餓鬼どもの、両親がね。」 「両親?」 俺は自分の拳に汗が流れるのを感じた。 「はぁ? 両親、ってことは、ラナとシオンの家族ってことね、…ルーク、説得はまかせた、こいつらに外で起きていることを悟られないようにな。」 そう言うとミナモは後ろに下がり、子供たちを倉庫奥に連れて行った。 …ミナモの判断は正しい、もし彼女たちが両親を人質にされてしまっていると知ったら、無我夢中で扉を開けてしまうかもしれない、もっとも、凍りついている錠をはずすことなど子供には無理な話だが。 …とりあえず今はこの状況を何とかすることだ、説得は初めてだが、やってみるしかない。 俺はできる限りどすの利いた声を出し、相手を威嚇するように話し出す。 「…おい、まずは状況を説明してもらわないと、こちらも出るに出られないぞ。」 まずはこの村の状況を把握しておこう。 「もう一度言う、この村の状況を説明しろ、人間との間に何があった。」 俺はフォッレトの森でミナモに脅された時のような声で、すごみ続けた。 「…グレイシアはどうした?」 少しの間黙っていたブースターが、再び声を上げた。 「あいつは今話せない、俺はあいつの代理だ、それより質問に答えろ、この村で何があった。」 辺りが少しざわめいた、が、それも少しの間だった。 ブースターが手を上げると、ざわめきは嘘のように静かになった、あいつはかなりの権力を持っているようだ。 「いいだろう、教えてやる。」 ---- 「本当に教えるのですか? トト様。」 沈黙を破って、彼の側近とみられるシャワーズが、口を開く。 「構わん、それにどうせ我々の後ろには人間がついている、さほど問題じゃない。」 …ブースター、いや、トトは、さらに俺たちが閉じこもっている書庫に近づいてくる。 それと同時にラナの両親も、鎖でこちらに引かれて行く、近場でよく見ると、前足を縛られ、猿轡をかませられている。 その様子を面白そうに眺めた後、トトは再び視線をこちらに向けた。 「…状況を教えてやろう、ここは昔から人間とのかかわりを断っていたという、間違った歴史を持っていてねぇ、そのせいで貧乏暮らしさ、ついこの間まではな。」 「ついこの間までだと?」 「ああ、ちょうど三週間前だったかな、ここに何人かの人間が来て、いい取引をつけてくれたんだ、 『神官の末裔と、何人かの子供を差し出せ』と言っていた、そうすれば、人間の使うい道具を毎週届けてくれるようで、俺は条件をのんだ。」 …神官の末裔を差し出せだと? 一体なぜ…? そう言えなミナモも神官の家系だったはずだ…。」 「選手交代だ、人間があたしの同系統の血筋の者に手を出したと言うのなら、あたしも興味がある。 いつの間にかミナモが俺の後ろに立っていて、背中をつつく。 「同じ血統って、お前の親戚か?」 俺は相手に聞えないように、ミナモに耳打ちする。 「…神官の末裔は世界中に分散しているのよ。」 そう言うと、ミナモは俺を押しのけ、扉の隙間の中で一番外の様子が見やすい位置をキープした。 「おい、トトとやら、あたしが出てきてやったぞ、お前が話したがっているのはあたしみたいだからな、…ところで、その後神官の末裔をどうしたんだ?」 …すごい、俺とは迫力が全くちがう、やっぱり、ミナモは犯罪者だからなのか、俺とは一味違う。 しあし、トトは全く動じず、自信気な表情を浮かべている。 「…やっと出てきたか、殺人鬼め、…まあ質問には答えてやる、人間にそいつらを差し出すと、その場で撃ち殺しちまった、中心がどうとか、危険だからとか、言っていたがな、…そしてそのあと人間は、少し村を探索した後、いくつか餓鬼どもを連れていっちまったんだ、お前らが連れてきた餓鬼もそうだ。」 …神官の末裔を殺した? ラナが聞いた銃声はこのことだったのか、でも、人間が彼らを意図的に殺したのなら、ミナモも…。 「おい、それってものすごくヤバいこと何じゃないか、意図的に神官の末裔を狙っているって言うと、ミナモも危険じゃないか…?」 俺はミナモに耳打ちをする、が、ミナモはそれを無視し、話を続けた。 「だいたい話はわかった、お前たちは人間に民衆を売り、代わりに農具を手に入れたというわけだな、…それで、もし仮にあたしたちがここから出たとする、そしたら子供たちをどうする気だ?」 ミナモの問いに、トトは即答した。 「人間の所に引き渡す、奴隷が逃げ帰ったとなると、この集落のイメージダウンになるからな。」 トトの言葉を聞いているうちに、俺は怒りが込み上げてきた。 …ミナモも、誰かを殺すときに、こんな気持ちになったのかな…? 六章終わり、[[Memory Lost existence 家族と神官 ]]に続く ---- 六章始めました。 前回のコメントで、「イーブイが二足歩行なのはおかしい!!」というコメントをいただいたので、二足歩行と四足歩行の両方を使っているという設定を深めようとしましたが、難しいですね。 ちなみに、集落や建物というのはポケダンみたいなものを想像してください。 …変なところで切ったな、今回。 #pcomment(連鎖する陰謀、コメント,10,);