&color(Blue){ミナモ「今回は、紅黒とコラボよ!! 双方の原作破壊を気にする人および18歳未満は見ないほうがいいわよ!!」}; &color(Red){ルーク「18歳未満!? まさかコラボで卑猥なことする気じゃ…?」}; &color(Blue){ミナモ『するわけないじゃん。』}; &color(Red){ルーク「しないのかよ!! …よかった(期待していた方ごめんなさい。)」 }; &color(Blue){ミナモ「しかも、スペードさんから絵まで頂いたのよ、ありがとうございました!!」}; &color(Red){「…始めてミナモがまともにお礼を言った!!」 }; &ref(SSCN2608.JPG); スペードさんの都合のため、こちらに投稿。 七章のラストです。 無理やりこちらに移したので、少し見難くなっています…。 ちなみに、原画は前章のコメントページにあります。 …それでは、コラボの始まりです!! 上記の通り、世界観破壊を気にする方は、観覧の際注意してください。 BY[[春風]] [[Memory Lost existence]]に戻る ---- ラナ、そしてシオンと別れて数週間が経った。 …そして、当の俺たちは、山脈地帯のどこかで道に迷っていた。 &size(20){&color(Red){Lost existence 記憶と紅黒};}; &size(20){&color(Red){Lost existence 八章 記憶と紅黒};}; 「…う~ん、こっちで曲がったほうがいいのかなぁ。」 「本当に道、わかるのか?」 山の中の分かれ道で、朽ち果てて全く読むこともできない看板を見つめながら、ミナモは頭を抱える。 「…方角すら、わかんない!!」 「そう苛々するなよ、別に急ぐ旅じゃないだろう? それに進んでいけば、どこかにたどり着くんだろ?」 「それもそうね、でも道がわからないんじゃあ、不安になるよね。」 …お前に不安なんてものがあるのか? と、言いかけたが、どつかれる結末を予想し、やめた。 とりあえず、俺は追われているミナモの事を考え、人気のない道を選び、進む。 辺りは本当に静かで、自分が落ち葉を踏む音と、後ろからとことこ付いてくるミナモの軽快な足音、そして時折木々を揺らす風の音しか聞えない。 「…んぅ…んん?」 暫く歩いていると、不意にミナモが足を止める。 「どうしたんだ、ミナモ。」 「…なんだか、誰かに見られているような気がするような…。」 警戒して、俺とミナモは辺りをこわごわと見回す。 しかし、どの角度にも怪しい気配はない、野生として生きているミナモより俺のほうが感覚が鈍いのはわかるが、絶対と断言していいほどの静けさが、辺りを包んでいた。 「勘違いじゃないのか?」 「…違うよ、確かに感じた、でも…。」 ミナモは振り返って、じっと一点を見つめた後、顔をこちら側に戻す。 「やっぱり、気のせいかもね。」 彼女は何事もなかったように進もうとするが、表情は曇っていた。 「…気にするなって、行こうぜ。」 俺たちは再び足を動かし、暗い山道を進んでいった。 しかし、それほど歩いていない所で、再びミナモは足を止める。 「…ねぇ、やっぱり誰か付いてきているよ。」 俺はもう一度辺りを見回す、やはり怪しい者はいなかったが、ミナモはかなり警戒している。 「だから、気のせいだったんだじゃないのか?」 「違う!! 絶対誰かいるって。」 必死で警戒するミナモを無視し、俺は先に進もうとする。 「待ってよ、絶対誰かいるっ、それにあの楽器屋とかいうのだったら、油断したらすぐ捕まっちゃうよ!!」 ミナモは必死で引きとめようと俺にしがみつく、その剣幕さに俺はたじろき、歩くのを止める。 「…わかったよ、もう少しその気配を探そう、それと、楽器屋じゃなくて楽団な。」 …とは言ったものの、辺りには何の気配もない、多分気のせいだろう。 「前にも後ろにも、そして横にも斜めにも何も見当たらない、でも気配だけは感じるのよ。」 ミナモは必死で説明する、すこし可愛げがあるような慌て方だった。 …さっき思った『こいつには不安なんてない』というのは取り消しだ、彼女もノクターンの生命力、それにあの時のロンドの強さを肌で感じたからか、かなり楽団への警戒心が強まっているのだろう。 「ねぇ、聞いてる!? だからその気配の主が、どこにもいないんだって、ねぇ!!」 ミナモは半ば取りみだしそうに、俺にしがみつく、確かに得体のしれないものの恐怖は、どんなものよりも恐ろしいだろう。 「大丈夫だよ、お前の言った通りどの角度にも何もないって…。」 俺は彼女をなだめようとしたが、ある可能性に気がついて、口をつぐんだ。 「地上」には365度。どこにも怪しい者は見つからない、だが、それがいる場所が「地上」ではないとしたら…。 「…もしかして、上?」 はっとして、上を向く、すると鋭い眼光が二つ、木々の間をすり抜けていった。 「ミナモ、上だ、上に何かいる!!」 俺が叫んだ次の瞬間、木々の上から「何か」が下りてきて、俺に切りかかる。 「くあっ!!」 一瞬の出来事だったので、俺は爪で振りおろされた刃物のよう物を受け止めるしかできなかった。 襲いかかってきた「何か」の後ろめがけて、ミナモが氷の刃を投げつける。 「何か」は俺から離れ、身をひるがえして氷をかわす、しかし「何か」が俺から離れてくれたおかげで、その姿を凝視することが出来た。 …「何か」の正体は、鋭い鉤爪と、ミナモと同じ氷の力を持つポケモン「マニューラ」の雌だった。 「ちょっ、ちょっと待て、お前、もしかして血染めの楽団とかいう集団の一員かっ?」 俺はいきなりの展開に驚きながら、その女性に疑問を叫ぶ。 「…何のことよ、それよりあんたたち、『暗黒の翳』の一員ねっ!!」 彼女はそう叫ぶと、身をひるがえし、こちらにもう一度向かってくる。 「待てっ、何かわけありみたいだけど、俺もそんなこと知らないぞ!!」 弁解したが、彼女は聞く耳を持たず、こちらに切りかかってくる。 「…ちくしょう、やるしかないようだな。」 俺は覚悟を決め、迎え撃とうと口に火炎をためた時だった。 「二人とも、やめなさいっっ!!!!」 ミナモが大声を上げ、俺たちの間に割って出た。 「お互い何も知らないようなら、それでやめ、無暗に戦う義理はないわよ、ただでさえ追われているのに、これ以上敵を増やしたくないわよ!!」 「…でも、ミナモ…。」 「あんたは余計なことを言わなくていいから、行くよ!!」 ミナモは俺の後ろ首を掴み、引きずりながらマニューラから遠ざかる。 「…あのさ、ちょっといい?」 マニューラが、奇妙な格好で山道を進む俺たちに話しかけてきた、その口調は先ほどとは違い、柔らかいものだった。 「…その様子だと、今は敵意を持っていないようね…、いいわ、何の用か聞こう。」 ミナモは足を止め、俺を地面に突き放す。 マニューラは、急に投げ出され、バランスを失って転倒する俺を横目で見た後、少し顔を傾けた。 「…私はレナ、少し話をしたいけれど、いいかな。」 彼女は少し、ミナモの顔色をうかがいながら、こちらに近づく。 「唐突に聞くけど、あなた、狂ってない?」 「…ほえぇ!?」 いきなり異常者宣告を受けたミナモは、体制を崩してよろけそうになる。 「…なんて言うか、何人も殺していそうな目つきをしてたから、違う?」 彼女はミナモを問い詰める、目を見れば本当にそんなことがわかるのかの真贋は不明だが、六感がかなり鋭いようだ。 「…うぅ…、何でわかるんだよ…。」 「やっぱりね、目の色が今まで見てきた殺人鬼と同じだからさ。」 レナはクスクスと笑う、一件可愛らしく見える行動だったが、その中にはミナモが時折見せる狂気と似ている何かが隠れていた…様な気がした。 「…ていうか、あんた何者? いきなり上から襲っておいて。」 ミナモはレナの顔を睨みつける。 「あんたと同じような者よ、ただの殺人鬼。」 彼女はさらりと自分の正体を話す、殺人鬼と聞いて、俺は身構えた。 「…警戒しなくていいよ、ルーク。」 ミナモは俺に声をかけると、再びレナと向き合った。 「申し遅れたけど、さっき言った通り、あたしは正真正銘の犯罪者、ミナモ、そしてこっちは無理矢理連れてきたルーク、…で、用件はそれだけ?」 先ほどまで完全に警戒していたくせに、ミナモはもう気軽に話している。 「…ミナモ、相手は殺人鬼だぞ、もっと注意を持って接しないと。」 「じゃああんたは、警察と、同じ境遇におかれた者、どっちを信用するの?」 ミナモは俺の胸を尻尾ではたいた後、レナのほうを振り返る。 「…もうひとつ聞きたいことがある、『暗黒の翳』という集団を知らないか?」 レナは聞きなれない言葉を口にする。 「知ってはいるけど、どこかで聞いただけだから詳しいことは知らないわ、何か訳在りなのか?」 ミナモが質問を返すと、一瞬レナの表情が曇る。 「…私の両親を殺した奴らよ。」 「すると、あなたは復讐をするために犯罪者になったわけ?」 ミナモの口元が、一瞬緩む。 「…そうでしょう、あたしも同じような物だから、気持ちは痛いほどわかるよ。」 レナは無言のまま後ろを向いて、暫くの沈黙の後、少しだけこちらに振り向く。 「ここで立ち話もなんだから、少し友人の所に寄っていかないか?」 ---- 俺たちはレナに連れられて、山道の一角にある小屋にたどり着いた。 「なぁ、本当に行くのか?」 「大丈夫よ。」 まだ少し警戒している俺を、ミナモは後ろから強く押す。 レナが扉に手をかけて、勢いよく開け離す。 こわごわと中の様子を確認すると、中には一匹のグラエナと角に十字の傷があるアブソルが座り込んでいた。 「…レナ、そいつら誰だ?」 グラエナのほうが、こちらに睨みを利かせる。 「大丈夫、敵じゃないわ、こっちの雌のほうがミナモ、で、こっちがルーク、私達と同じ様な者さ。」 「ということは、君たちも殺人鬼ってこと?」 傷のあるアブソルが、レナの言葉に反応する。 「僕はシクル、よろしくね。」 人懐っこい笑顔を浮かべて、彼は自己紹介をする。 「俺はハウンドだ、よろしく。」 グラエナのほうも、緊張を解いている。 「…あ、あぁ、こちらこそよろしく。」 俺はとりあえず、中に入って頭を下げる。 …彼らと初めて会った感想は、まぁ、何というか、そんなに残酷な人物には見えなかった。 「まぁ座りなよ、久しぶりのお客だ。」 シクルに勧められ、俺はその場にしゃがみこんだ。 「見慣れない顔だけど、君達、旅をしながら殺しまくっているのかい?」 「…そんなわけじゃないけど…。」 「殺すときは切る派? それとも刺す派?」 「…えっと、そういうのは、特にない…。」 平然と残酷な事を言うシクルに、俺は完全に戸惑いを隠せなかった。 「悪い悪い、こいつはそういうのあまり興味ないから、あたしは刺す派だけど。」 …相変わらずミナモは、ラナ達との一件の時もそうだが、色々な環境に適応しすぎだろう。 「…それで、レナ、あいつらの所在はわかったのか?」 ハウンドというグラエナが、レナに誰かのことを尋ねる。 「さっぱり、ここら辺に来ていることは知っているんだけどね。」 「…それって、さっき言っていた暗黒の翳のこと?」 ミナモが話に割り込む、あいつは関係ないことによく首を突っ込む、あいつ、その癖のせいでいつか痛い目を見る様な気がする。 「あぁ、そうだ。」 「んで、今近くにいるってこと?」 「…そうだけど。」 「じゃあ、そいつらを今から探しに行こう!!」 ミナモは前足を高く上げ、高らかに叫ぶ。 「ちょ、ちょっとあんた、危険だよ、そんなこと…。」 レナが驚いて叫ぶ、さすがに無関係のミナモがこのようなことを言い出すなんて思ってもいなかっただろう。 「大丈夫、なんか最近暇だし、面白いことなんかないかなぁ~って思っていたんだ、それに、復讐のためってレナは言っていたよね。」 彼女の言動に、レナたち三人は驚きを隠せない顔をしている。 「…あたしにも、似たような経験があるから、何か力になりたいんだ。」 そう言うとミナモは、小屋から外へ飛び出していってしまった、俺は慌ててその後をレナと一緒に追いかける。 「…あの娘、なんだか少しレナに似ているな。」 外に出る瞬間、残された二人がそんなことを言っているのが耳に留まった。 …それから少し時間がたったあと、俺たちは山の中腹付近で暗黒の翳や、彼らの行先につながる物を探し始めていた。 「…手伝ってもらって、なんだか悪いね。」 「いいって、あたしだって家族を失う苦しみは経験済みよ、同じ境遇同士、助けあっていこうよ。」 ミナモとレナはすでに意気投合して、暗黒の翳の一味を探す、レナは足跡が地面についていないか、爪跡などがないかなど、専門家のような眼差しで探している、一方のミナモは、山中に不法投棄された木箱のようなものの蓋をあけて中を覗いたり、木の洞の中を覗いたりしている、…そんなところにいるはずもないのに、全く。あいつは何をやっているんだ…? 「…そうだ、まだ暗黒の翳について全く聞いていなかったわね、それってどういう組織なのかいまいちわからないから、今さらだけど教えてくれない?」 「………。」 ミナモがレナに組織のことを尋ねた瞬間、彼女は思いつめたように頭を下げ、握り締めた爪で拳を作った。 「…悪タイプだけで構成された殺し屋集団で、見境なく人を殺している、メンバーはチェス形式になっていて、メンバーの人数は大体…。」 …彼女がそこまで説明した後、いきなり山頂のほうから爆発音が響き渡り、頭上の木々から鳥ポケモンが一斉に飛び立った。 「…まさか、暗黒の翳が何か活動しているのか?」 レナは一声叫ぶと、山頂に向かって走り出した。 「…あそこまで大きな音だと、相当大きな爆発のようね…、探している奴かどうかわかんないけど、行ってみるよ!!」 俺とミナモも、すぐに身をひるがえし、山頂へ向かうレナの後を追いかけた。 その音を立てた主が、俺たちにとって危険な者だとは知らずに…。 ---- 「はぁ…、はぁ…。」 息を荒げながら、俺達はようやく山頂へ向かって走るレナに追いついた。 「…レナ、山頂までどのくらいなのか?」 「後ちょっとだと思う、この辺は単調な道だからわかりにくいけど、これだけ走っているんだから、多分もう少しでつくと思うよ。」 「…そうか…。」 先ほどの会話を最後に、俺たちは暫く無言で走り続けた。 (暗黒の翳って、どんな奴ら何だろう…。) 俺は下を向きながら、ふとそんなことを考えた。 今、俺の中に不安と、彼らへの興味が折り重なった感情が芽生えていた、この場合の興味というのは、おそらく彼らがどういった「悪人」なのか確かめたい事からきているのだろう、彼らの行動がミナモやレナのような憎しみからくるものなのか、血染めの楽団のような陰謀や計画のためなのか、それともただ殺すことに快楽を覚えているためなのか、なんとなく知りたくなったのだ。 それと同時に襲いかかる、得体のしれない物への恐怖や不安、俺はそれを無理やり心の奥にしまいこむと、大きく息を吸って前を見る。 さっきまでずっと下を向いていたため気づかなかったが、すでに山頂と思わしき場所が、少し手前にぼんやりと見えた。 「もう少しだ!!」 俺達は走る速度を上げ、勢いよく山頂に踏み込んだ。 「……!?」 山頂には人気が全くなく、先ほどの爆発が嘘のような静けさに包まれていた。 「…おかしいな、山頂じゃなかったんじゃないのか?」 「でも、爆発の後はちゃんと残っているよ。」 確かに、遠くのほうにぽっかりと空いたクレーターのような爆発の跡が痛々しく残っている。 「…となると、逃げられたようね、…ちくしょうっ!!」 悔しそうな表情で、レナは地面を殴りつける。 「でも、まだそんなに遠くまで行っていないはずだ、探しだそう。」 そう言って俺が顔を上げた瞬間、晴れているにもかかわらず、凄い音を立てて俺の真横に落雷が落ちたのだった。 「…今のは?」 驚いて身を引くと、さらに雷が数発すぐ近くに降り注ぐ。 「…これはどう考えても人為的な物…まさか暗黒の翳?」 …気配すら感じながら、どうやら奴らはすぐ近くに潜んでいたようだ。 「気をつけて、奴らは誰であろうと、皆殺しにしてくるよ!!」 レナが大声で忠告を叫んだ、俺とミナモは無言でうなずくと、お互いの間合いを出来るだけ縮めようと、後ろ歩きで近づきあった。 「さぁ、暗黒の翳め、出てこいっ!!」 一斉に叫んだ瞬間、俺はすぐ後ろで何かの気配を感じた。 「…おいおい、爆発を起こしたのはお前らが探している奴らじゃないぜ。」 聞き覚えのある、軽い口調の声がする、驚いて後ろを振り向くと、見覚えのある青年の姿が目に飛び込んだ。 「ノクターン!?」 俺たちの後ろに立って、落雷を落としていたのは、暗黒の翳ではなく、弦楽器を持ち歩いているライチュウの…。 …血染めの楽団メンバー、ノクターンだった。 「…またあんたなの、しつこいわね!!」 ミナモが怒りをあらわにする、かなりの剣幕だったが、確かに気持ちはわかる。 「おいおい、俺は別にあんたらをとっ捕まえに来たわけじゃないぜ、この前のへまで捕縛係を下ろされて、また新規メンバーの勧誘係に下ろされちまったんだ、で、仕方なく活動していた時に、お前らが偶然に居たってわけだ。」 「あんたの内部事情なんて知りたくもないわ、それよりこの爆発ってあんたのせい!?」 地面にぽっかり空いた穴を指差し名がら、ミナモはノクターンに問い詰める。 「そうだ、何しろ探すのに時間をかけたくないからな、少し細工をさせてもらったぜ。」 …探す? 俺達のことなのか? だが、信用はできないが彼は俺たちに合ったのは偶然だと言っていた、それに彼は自分から勧誘係に下ろされたとも話していた、ということは、彼はこの山に新規メンバーの勧誘に来たと言うことで間違いはないだろう。 「…悪いけど、あんたには用はない、私たちはこの山で暗黒の翳という集団を探している、話ならそのあとにしてもらえる?」 先ほどから黙っていたレナが、再び口を開いて、ノクターンに帰るよう求めた。 しかし、ノクターンは引くどころか、突然高らかに笑いだした。 「…ふははははは、何を探すって? そんなもんここにはいないぞ、なにせ俺が撒いた「デマ」だからな。」 「何!?」 「そうさ、今回のターゲットはあまり外に出歩かないそうだが、暗黒の翳とかに恨みがあるそうで、そいつらに復讐するなら何でもするらしいんだ、だからそこを利用して上手くおびき出す作戦を思いついたわけ、彼らは結構ナのある集団だからな、面白い具合に広まってくれたんだぜ、凄いだろ?」 そこまで言うと、ノクターンは俺を押しのけ、レナの前に歩み出た。 「…そのターゲットが、あんたってわけだ、後の二人はいないみたいだが、まぁ後で探せばいいか、 …どうだ、俺たち血染めの楽団に入団しないか? 色々と面白いことをやるんだぜ。」 ノクターンはレナの肩を軽く叩き、うすら笑いを浮かべる。 …彼の探していた者は、レナのことだったのか。 「レナ、止めとけ、そいつら何考えてるかわかんないし、信用できない!!」 俺は呆然と立ち尽くすレナに大声をかける、こいつらの目的に彼女を巻き込ませるわけにはいかない。 「こいつらのことは気にするな、俺たちの計画に比べれば、お前さんの復讐なんて所詮ちっぽけなものだ、それくらいどでかいことをやるんだぜ、もちろん、入るよな?」 ノクターンは相変わらずにやけ面で、レナの耳元で囁き続ける。 「レナ、惑わされるないで、あなたにはそんなことより、やるべき事があるじゃない!!」 ミナモが悲痛な叫びを漏らす。 「お姫さんは黙っていろよ、こいつが仲間になったら、すぐにひっ捕らえてやるからな。」 ノクターンは腕に電気をためると、雷の弾丸をミナモに向かって飛ばす、ミナモはそれを間一髪でかわすと、今度はノクターンを睨みつけた。 「で、どうなんだ? 入ることにしたのか、しないのか。」 彼は面白いものでも見るように笑うと、硬直するレナの顔を覗き込む。 俺はノクターンの態度に怒りがこみ上げ、彼の不意を討とうとした、その時…。 「…そんなこと、聞かれるまでもないわ。」 レナが再び口を開く、それは少し思いつめた後、結論を出した時のような話し方だった。 「決めたみたいだな、それで、どうするんだ?」 ノクターンが勝ち誇ったような声を上げる、おそらくレナが絶対にこちら側につくと確信しているようなのだろう。 「…ああ、決めたよ、答えは…。」 レナの答えを聞く間もなく、ノクターンは高笑いをしだした。 …しかし、次の瞬間、彼の顔面は鉤爪でえぐられ、悲鳴を上げる間もなく二メートルぐらい後ろによろけた後、地面に仰向けで倒れこんだ。 攻撃を行った主、レナは、鉤爪に付着した肉片を振り落とすと、倒れているノクターンに大声で言い放つ。 「私の過去を侮辱する奴の言うことなど、聞く価値もないと、初めから決まっているわ!!」 怒りを込めて放った彼女の言葉の中には、とても大きな信念が入っていた。 「…どうやらその様子だと、返事はNOか、しかたねぇ。」 ノクターンが呻きながら立ち上がる、先ほどの一撃で右頬の一部が真っ赤に裂け、鮮血が滴り落ちている。 「俺に傷を負わせたことを後悔させてやる。」 彼は一声上げると、電撃を纏った腕でレナに殴りかかろうとする、俺は反射的に彼の前に立ち、傷ついている右頬を思い切り殴りつける。 「ぐわぁっ!!」 ノクターンは悲鳴を上げ、よろめく。 「俺たちもやるぞ、ミナモ。」 その声を合図に、ミナモが彼の後ろから巨大な氷柱をノクターンに投げつける。 ノクターンは背負っている弦楽器をかばおうとして身をひるがえすも、氷柱は彼の左肩を貫き、そのまま弾け飛ぶ。 「…ぐあぁぁぁ!!」 うめき声を上げ、片手で肩をかばいながら交代する、その隙を逃さずレナがノクターンに飛びかかる。 「その首、掻っ切ってやるっ!!」 レナは叫びながら、ノクターンの首筋に攻撃を加える、彼は間一髪のところで右腕でガードしたが、彼の腕には深い切り傷ができ、血しぶきを上げる。 「…くっ、てめぇら、調子に乗るんじゃねえ!!」 ノクターンは追撃をしようとするレナを弾き飛ばすと、身をすぼませ、体中に力を入れるそぶりを見せる。 そして次の瞬間、大気が少し振動したかのように震え、ノクターンの体中から電気がほとばしり、彼は放電する。 「てめえらっ、よく見ておけ、お姫さんは命令上殺せねえが、てめぇら二人はここでぶっ殺す!!」 ノクターンは狂気じみた声を上げ、起き上がろうとするレナに放電しながら体当たりをしようとする。 「いけないっ、あの電撃を食らったら、即死だわ!!」 ミナモが悲痛な声で叫び、レナをかばおうと彼女に向かって走り出す、しかし、すでにノクターンはレナのすぐ目の前に迫っていた。 「まずはてめぇだっ、死ねぇ!!」 俺は全速力で彼の攻撃を止めようと走り出した瞬間、なぜか逆方向でも大きな何かの音が響いた。 ---- …攻撃が命中した、しかしそれは電撃ではなく、俺の後ろからいきなり飛んできた「斬撃」と「火炎」だった。 「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」 悲鳴を上げながら、ノクターンは地面に崩れ落ちる、彼の半身は焼けただれ、肩からは袈裟がけに切り傷が入っていた。 はっとして振り向くと、俺の後ろには二匹の獣形ポケモン、シクルとハウンドが立っていた。 「…爆発がしたから気になって来てみたが、まさかあのような奴と交戦しているとは思わなかったぞ。」 ハウンドが心配そうにレナのもとに走り寄る。 「折角衝動が起きたのに、相手は満身創痍みたいだね、つまらないの。」 シクルはあくびをしながら、ノクターンを方目で見る。 「…あいつ、殺しちゃっていいよね。」 彼は舌舐めずりをして、ノクターンに詰め寄って行った。 「…くそっ、五対一かよ、これはまずいな…。」 よろけながら、ノクターンは後ろに数歩下がると、弦楽器を庇いながら走り出した。 「逃がさないよ、皆。」 レナが一声上げ、俺達たちに合図をする。 「「「おうっ!!」」」 その場にいる全員が威勢よく返事をすると、思い思いの攻撃を敗走するノクターンに発射する、その勢いに押され、俺も火炎を口から吐き出す。 そして、五人分の火炎、斬撃、冷気が絡み合い、ノクターンの背後に迫り、激突する。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 全員の攻撃を受けたノクターンはこの世の物とは思えない叫び声を上げ、山頂付近の崖まで吹きとばされると、まっさかさまに転落して行った。 「…やった!!」 俺は思わず歓喜の声を上げる、そしてその声は集団全員に広がり、山頂は喜びの声に包まれた。 ---- 「…この先、山を二つぐらい越えれば、この山脈地帯から抜けることができるよ。」 「ありがとう、レナ。」 見送りにここまで来てくれたレナにお礼を言い、俺たちはこの山を後にしようとする。 結局暗黒の翳なるものは見つけられなかったが、ノクターンを倒すことが出来て、ミナモはかなり満足している様子だった。 「…あ、そうだ。」 少し歩きだした所で、レナに呼び止められ、振り向いた。 「…あのさ、短い間だったけど、楽しかったよ、…気が向いたら、いつでも来ていいからね。」 レナは少し、すがすがしい表情をして言った、それを聞いて、ミナモは彼女の前に出る。 「うん、こっちも楽しかったよ、ありがとう。」 そう言って、ミナモは前足をレナのほうに出す、レナも彼女の前足の意味を理解しているようで、ミナモの前足をそっと握る。 「また会おう!!」 二人は握手をしながら、お互いに見つめ合った。 今まさに沈もうとする夕陽が、俺達三人を照らしながら、ゆっくりと消えていこうとした。 八章終わり、[[Memory Lost existence 人間との違い]]に続く ---- …初のコラボ章、完結しました!! [[スペード]]さんの[[紅き夜の黒き闇の中で]]より、レナ、シクル、ハウンドをお借りしました、ありがとうございました。 初めての試みなので、吐くほど緊張していますが、ここは頑張って最後まで成し遂げます。 ちなみに、記憶は「Memorey」 紅黒は「紅き夜の黒き闇の中で」のことです。 …そして、リオスが諸事情につき、登場できませんでした。 実は、彼が警察官なので、こちらのキャラクターと絡めにくいところや、大きな矛盾点を生んでしまう恐れがあったため、登場を見送らせていただきました、すみません。 …そして、「レナのキャラがおかしい!!」などという苦情や、「なんでこんなのと紅黒をコラボしたんだ、身の程知らずめ!!」などという苦情は、お手数ですがコメントください。 あっ、誤字脱字も大歓迎です。 #pcomment(記憶と紅黒、コメント,10,);