ポケモン小説wiki
Day of Vengeance‐5‐『興味』 の変更点


[[目次>Day of Vengeance]]

&color(red){※この話は官能表現が含まれます。};

**Day of Vengeance‐5‐『興味』 [#oad4877c]

 一部屋しかないとはどういうことなんだろうか。いやいやそれ以前に、だ。そうなると俺が野宿になるか、ヒースの家に泊まることになる。アセシアと同じ部屋に泊まるなんて無理だ。
 ルフも一応雄。頭の中でそんな討論を繰り広げる傍ら、アセシアは勝手に店主と話を進めていく。そして話を終えるとルフの方へと向き、なにくわぬ顔でこうさらりと言った。

「さ、部屋にいきましょ」

 ルフはその場で数秒止まる。普通に考えてみればおかしい。どこの馬の骨か知れない雄を、同じ部屋にするということが。だが知ってか知らずか、アセシアはその足を止めることなく部屋へと向かっていく。そんな彼女を見てルフは渋々とそれに続いた。
 ドアを閉めると、パタンと小気味の良い音が部屋の中に木霊した。しかし次に流れるのは気まずい沈黙。どちらも視線を合わせたままで止まっている。
 瞬きの音すら聞こえてきそうな沈黙を破ったのはルフの方だった。彼は扉から少し離れた床にゆっくりと座り込み、口を開いた。

「何で一緒の部屋なんだ?」
「ここしかなかったから。それとも寒さの中、野宿でもしたいの?」
「いやそうじゃなくて」

 そうじゃなくてなに、とでも言いたげな鋭い視線をルフにぶつけるアセシア。反論は許さないと言わんばかりの気迫に、彼は根負けせざるを得なかったのは言うまでもない。
 
 
 ――宿からサービスで出る夕食を済ませ、部屋に二人はまた戻ってきた。食事中もやはり無言ではあったものの、周りの席の話し声が聞こえるのでそこまで気まずくはならなかった。しかし問題は部屋の中だ。

「……」
「……」

 ロビーから遠い部屋のためか、外の話し声が全く聞こえない。その上、性格的に話し辛い雌が目の前に一匹。どう考えても気まずい。さっきからこの言葉が頭の中を泳いでいる。本当に気まずい。

「ねぇ」
「ん?」

 そう考え込んでいるのがバレたのか、アセシアはベッドの上に座ったままで話しかけてくる。だがその考えは杞憂だったらしく、彼女は窓の外を見ながらつぶやくように言った。

「どうしてあの時、私を助けようとしたの?」

 いきなりの質問にルフは眉を少しだけ潜めた。港町へに来る道中に話しかけようとしたのはこれを聞くためだったのか。
 だけど問題はこの質問の内容だった。別に身の上話には直結してはいないが、彼女に『殺された幼なじみに似てたから』なんて言えない。
 アセシアはいつまで経っても返ってこないのを感じたのか、ため息をついてからベッドの上で丸まった。もう寝るということなんだろう。

 仕方なくルフも床に伏せて瞼を閉じる。しかしなかなか寝れないのはやはり彼女が近くにいるからなのか。いままでルフは雌と同居なんてしたことがない。幼なじみのフィアスとでさえ同じ部屋で寝ることはなかった。
 だんだんと思考する『方向性』が怪しくなっていきはするものの、寝られない以上無駄なことを考えてしまうのはルフの癖だった。
 というか、そもそもだ。なんでアセシアはあのキュウコンに追われていたのかが腑に落ちない。突然変異で体の色が変わっているわけでもないし、特に目立った点もない。彼女は一体……。

(……!)

 ルフがアセシアの方をふと見た途端、思わず目を反らしてしまう。いままで暗闇に目が慣れていなかったから先ほどは見えていなかったのだが、今はくっきりと見える。だがそれが仇になり、見えてしまった。
 彼女の後ろ足の太股の間に見えるうっすら赤い秘部が、そこにはあった。

 心臓の速い鼓動を抑えようとするが、さっきの光景が頭の中に浮かんでしまって抑えることができない。幸いアレは立ってはいないものの、体が少し火照っているのが感じられる。
 軽く深呼吸をして息を整え、やっと落ち着いたところで瞼をゆっくりと閉じる。今なら眠気があるからそのうち気づいたら朝になっているだろう。
 
 
 
 ――赤く照らされた窓の光を目に受け、アセシアは目をゆっくりと開ける。朝焼けに目を細めると、そのままベッドの上で背を大きく伸ばした。
 朝の軽い日課を終えた彼女はふとルフの方に視線を移す。彼はまだ寝ているようで、床に伏せられた体はゆっくりと上下していた。

(起こす必要性はないわよね……)

 どうせ起こしてリュミエスの飛行練習に行ったところで何もしていないのだから、無理に起こして機嫌を損ねられても困る。
 またキュウコンが襲ってくる可能性はあるにしろ、ルフがどうにか出来るとは彼女には思えなかった。それにルフがいてもいなくても追い払えたのだから、特に気にする必要はないはず。

 彼女は部屋を出て、受付のジュカインにルフへの伝言を伝えた。後で彼が起き出した時に不都合を起こさないから。伝言を残さなくても多分分かるとは思うけど、念のために。
 宿を去って、出入口の白い煉瓦のアーチを潜り街の外へと出る。海岸線に沿って歩いていけばすぐにヒースが経営している『竜の運び屋』につく。その途中にキュウコンに襲われた場所があるが、そこは軽く通り過ぎればいい。

「そういえば……」

 丁度キュウコンに襲われた場所に来て、彼女はふと呟いた。そして頭の中に浮かんだルフの言葉を思い出す。

『エネコロロ! 俺も加勢する!』

 いや違う。もっと前の彼の言葉。

『……フィアス!』

 そう、この言葉。いや名前。

 確かにあの時、ルフは私を見てそう叫んだ。あの名前は一体誰のものなんだろうか。私を見て言うくらいだから、同じエネコロロであることは何となく分かる。でも同種族でも容姿に若干の違いはあるはず……。

(気にしても仕方ないか……)

 元々彼と一緒にいるのはミーディア大陸に行くまでで、お互いのことについては干渉しない約束。気にしたところで彼に直接の確認は出来ない。彼もこちらのことについてはいっさい詮索していないのだから、私も彼のことを詮索するのは釣り合っていなかった。
 そう首を横に振り考えを中断させた彼女は、再び小屋に向かって歩き始めた。
 
 
----
CENTER:[[前の話へ>Day of Vengeance‐4‐『竜の翼』]]     [[次の話へ>Day of Vengeance‐6‐『襲撃』]]
----
#pcomment(コメント/DOV-Story5,10,below)


トップページ   編集 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.