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Beforeナシュル1 Earl の変更点


 プロローグより前のSSを書きますpert1
 「前日談」ってやつかな
[[まとめページ>ナシュル]]                作者:[[カナヘビ]]
#hr
 砂漠というものは誰もが暑いイメージをもっている。実際それは事実ではあるが、それは砂漠の一面に過ぎない。
 夜はどうか?砂漠の夜ともなると涼しいのではないか?否、昼間の暑さと相殺してほどよい温度となるのか?否、そうではない。
 基本的に恒温動物は夜の砂漠を出歩いてはいけない。夜の砂漠は真冬の雪原も同然であり、下手すれば凍死してしまうほど低温度である。
 しかし、そんな砂漠といえどやはりポケモンはいるわけで。
「………」
 満月の下、突っ立っていた彼はゆっくりと活動を始め、歩き出す。
 黄緑の体に無数についた緑のトゲ。黄色の目に、笠のようなものが被さった頭。
 首にはヒモで結われた巾着袋が提げられている。
「覚えていない、か?」
 彼は辺りを見回して何かを探しているようだった。
 冷え切った砂を踏みしめ、円い足跡が形成される。
「砂漠が広がっているな…。以前はこれだけ歩いたらもう森が見えていたはず。まるで、ヒトがいたときのようだな。話にしか聞いたことがないが」
 夜空には無数の星座が輝き、砂漠の砂と対を成してシンメトリーを形成している。

 種族上、彼はそれほど活発に動く必要はない。彼自身は動こうと思えばいつでも俊敏に動けるが、夜中の砂漠でそれを発揮する必要はない。

「ギルバートとオーガストは元気にしているだろうか…」
 彼は独り呟く。


「おや?もしやユースタスさんではないですか?」上空から声が聞こえた。
 彼が上を見ると、1体のフライゴンが浮遊していた。フライゴンはゆっくりと下降してきた。
「きみは…いつぞやのビブラーバだな。アテニと言ったかな?」彼は聞いた。
「うわあ、覚えていてくださったんですね!うれしいなあ!」
 フライゴンははしゃいでいる。
「ところで、こんなところでどうされたんですか?」アテニが聞いた。
「いや、わしもそろそろ故郷へ帰ろうと思ってな。ナシュルの森を探していたところだ」彼は答える。
「ナシュルの森ですか?最近あの森は年単位で徐々に小さくなっていってます。探すのに苦労されたのでは?」アテニが聞いた。
「そうとも。わしの記憶が薄れているとさえ思ったほどだ。やはり、移動していたのだな」
彼は納得したように言った。
「ナシュルの森はここから西南西の方向にあります。月を目印にしてゆけば大丈夫だと思いますよ」アテニは言った。
「そうか。助かった」彼は安堵した。
「よければ、途中までぼくがご同行しましょうか?」アテニが乗り出す。
「いいのかね?助かるよ」彼は答えた。


 世界最大規模の森林地帯、ナシュル。彼の故郷であり、世界の行政の中心でもあった。
 そしてまた彼も、行政の一角を担う役割を持っていた。
 アテニは嬉しそうに彼に同行している。
「ねえ、ユースタスさん」アテニが言う。「できれば、ぼくと戦闘をしてもらえませんか?」
「戦闘?」彼は聞き返した。
「はい。ビブラーバのときはボロ負けしてしまいましたけど、今度こそ勝てる気がするんです」
 彼の横にいたアテニは前進を止め、彼と目を合わせた。
「お願いできますか?ユースタス・ローグル・スケアクル伯爵」

 彼―ユースタスはアテニを見つめた。その目はアテニが昔見たその目と変わらず、衰えを知らない。
「昔はビブラーバだったから、わしは勝てたのだろう。しかし、今の君はフライゴンだ。フライゴンが、ノクタスに負けることはないだろう。」ユースタスは言った。
「そのお答え、了承と解釈してよろしいですね?」アテニは聞いた。
「ああ、いいとも」

 砂漠とはフライゴンにとってもノクタスにとっても戦闘には好条件の場所だ。
 彼らは夜の砂漠で静かに対峙している。
「いつでもかかってきなさい」ユースタスは言った。
 アテニは全身が逆立つような錯覚を覚えた。ユースタスの雰囲気が変わったのだ。彼の体から放たれる、気というべきものが。
(本気出さないと勝てない…!いや、本気でも勝てないかも…)
 見れば、ユースタスは隙だらけだ。何をするわけでもなく、ゆっくりと体を揺らしている。
 月光の下、その揺らぎはまるで舞っているかのようだった。

 周囲に砂が舞い始める。

「あ…!」アテニが気が付いた時には完全に遅かった。
「どうしたのかね?早く来なさい」ユースタスが言う。
 アテニに先攻が譲られていることは事実だった。しかし、アテニがもたもたしているうちにユースタスは剣の舞と悪巧みをフルに積み、ついでにフラフラダンスまで発動していたのだ。
 さらにユースタスは砂嵐を発動していて、しっぺ返しとカウンターと光合成の体勢にも入っている。
 アテニがちょっと考えた一瞬のうちに、これほどまでのことをしていた。
(ならここは…!)
 アテニは体中の熱を高めて口に集結させ、だいもんじを放つ。
 それと同時に体中の気を高めて流星群も発動させ、ユースタスのリーチに入らないよう特殊攻撃に努めた。
「やはり、か」ユースタスの声が聞こえた。
 特性が「砂隠れ」のうえ、彼は「光の粉」が入った巾着を提げている。さらにフラフラダンスでアテニの頭がくらくらしていることが相乗して、当たることはなかった。
 そして、ユースタスは…
「アテニ、技の発動が遅いぞ」


 砂を蹴り、アテニとの距離を一瞬で縮めた。


 超至近距離からアテニはしっぺ返しを見舞われ、空中に体を投げ出される。
 そのすぐ後ユースタスは凄まじい勢いで跳躍し、爆裂パンチとニードルアームを両手で見舞う。
 技の衝撃で地面に落下したアテニの体に、草結びがまとわりついた。
 ユースタスは落下中に悪の波動と気合い玉を放ち、アテニに命中させる。
 「うわあ!」アテニは叫んだ。
 ユースタスは技を放った後、さらにソーラービームの体勢に入った。
 両腕の間に集まったエネルギーはたちまち大きくなり、着地と同時にアテニに放った。
「ちょ…ユースタスさ…うわああ!!」


#hr


「大丈夫か?」
 アテニが気が付くと、ユースタスが体を屈めてアテニを見ていた。
「すまない。加減を間違えたようだ。まさかこれほどまで早く勝敗を決するとは思わなかったのでな」ユースタスが言った。
「加減って…もしかして本気じゃなかったんですか!?」アテニが叫んだ。
「当然だろう。本気などだしてはまたギルバートの叱責を喰らう羽目になる。奴は本気の『気』が分かるからな」ユースタスは変わらぬ口調で答える。
「そんなあ…」
 アテニはがっくりとうなだれる。
「わしとて、本気で相手したいと思っている。だが、ギルバートがうるさいうえに、お前とわしとでは力量が違いすぎる。その他理由はいくらでもあるが、この2つが主だな」ユースタスは語った。
「でも、まだまだお強いんですね。ぼく、こてんぱんじゃないですか。やっぱり、伯爵の名はすごいものですね」アテニは感心して言った。
「何、わしなどギルバートに比べればまだまだだな。オーガストとならばぎりぎり互角だが、ギルバートともなると手も足も出ん」ユースタスは言う。
「うそ…。やっぱりすごいなあ」
 アテニは顔をひきつらせている。
「まあ、技を複数同時に発動できたことは称賛に値するだろう。そんなこと並大抵のポケモンではできないからな」
「え…でも、ユースタスさんもやっていたじゃないですか」
「む?わしが?わしは技を同時に発動することなどできないぞ?順番に一つずつ発動することくらいしかできないな」
「…だとしたら、発動が早すぎですよ…」

 戦闘の後の砂漠は急に静かになった。秒殺とはいえ、そこにはたしかに熱い心の跡が残った。
「さあ、休憩したら出発しようぞ。わしはいつでも出発できるぞ」
「うう…もうちょっと待ってくださいよ。体力が…」
「それに、ナシュルの森に行く前にグランドフィールドにも寄らなければならない。時間は限られてはいないが、早いにこしたことはない」
「分かりました…。なんとか早く回復します…」

 月は、動いていった。

 END
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 あとがき
 ナシュルの森の物語のシリーズを始めるにあたって、前日談SSを複数書かせていただきました。普通なら第1期のプロローグから始めますが、登場キャラクターをあらかじめ出しておきたかったのでこうしました。
 なにせ、侯爵・伯爵・子爵・男爵はあまり出番がないもので。出番はシリーズの後半以降に加速度的に増えていきます。

 さて、この物語を始めるにあたっての最重要ワードである「五等爵」について語っておきます。
 五等爵とは、この世界を取り仕切る5体のポケモンのことです。上位より公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となります。当然、上位にいくほど実力が大きくなり、公爵にいたっては強さが未知数です。
 五等爵のうち、侯爵以下の4体は公爵が任命し、公爵は前公爵が任命します。 
 また、そのときの公爵が立場を降りたとき、五等爵はすべて降板となります。
 また、この世界には「貴族」も存在します。
 貴族は裕福度ではなく、そのポケモンの先祖の活動により決められます。貴族のポケモンは名字を持ち、ポケモンの種族名を名前にもちません。

 ちなみに、貴族でなくとも五等爵に任命されることも珍しくありません。

 今回のノクタスも貴族ですね。ノクタスには結構な愛着があります。砂パキラー、対砂パキラーとして対抗できますからね。プラス、認知度低いですが特性が砂隠れです。剣舞や悪巧みを使えますが、遅いし低耐久なのでマイナーになってます。
 そんな彼がなぜこんなに俊敏に動くか?ただ強い強いではなく、合理的に説明したいと思ってます。
 
#hr
批判などがあればどうぞ
#pcomment(前日談コメントログ,10)

IP:114.51.90.252 TIME:"2012-04-09 (月) 21:33:20" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=Before%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AB%EF%BC%91%E3%80%80Earl" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0; YTB730)"

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