&color(black,red){黒物語}; 第〇話
[[Glacier]]
今から一億年ほど前、それはそれは大昔。
生命が地上でちらほらと活動を始め、集落などが出来るほど発展し始めた時代。
とある、空間の間に7体の神と呼ばれる存在がいた。
その、神達は特に生き物達に干渉することもなく、地上を見守っていた。
ある日、突如として空間の間に幼き獣の生命が迷い込んでしまった。
普通であれば、この空間の間に他の生命が紛れ込むなんてことは絶対にないのだが。
…その、幼き獣は神々を見ても、特に怯える様子もなく、
神々も特に気にすることもなく少しの時が流れた。
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幼い獣はやがて成長し、神々にとってかけがえのない家族のような存在となっていた。
神々は獣を友と呼び、獣も神々を友と呼んだ。
ある日、神々の間で小さな争いが起きた。
しかし、最初は小さかった争いも、やがて世界を滅ぼしかねない大きな争いにまで発展した。
獣は中立の立場に立ち、仲直りさせようと努力した。
だが、神々は話は聞いたが、仲直りは拒否した。
そして、7体の神々はそれぞれ全力の攻撃を繰り出し、その中央で力がぶつかり合…
わなかった。
獣が中央に入り、全力の攻撃をその自らの体で全ての攻撃を受けたのだ。
獣は見るに絶えない屍の体を横たわらせた。
その時、神々の争いは終わった。
神々は自分たちの愚かさに怒りを覚えた。
それよりも、友を失った悲しみの方が大きかった。
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神々は家族を生き返らそうと努力した
神々はそれぞれ生命の力を振り絞り、獣を生き返らせた。
生き返った獣は、神々に向かって静かに微笑んだ。
神々は、とても大きく消耗してしまったので、長い、長い眠りにつくことにした。
その際、獣にそれぞれ贈り物を送った。
一体の神は朽ちることも無く、死ぬこともない命を
一体の神は強くしなやかな精神力を
一体の神は弱きものを守れる事の出来る力を
一体の神はその力に見合った肉体を
一体の神はいつまでも褪せることの無い記憶力を
一体の神はこの世のすべての知識を
一体の神は無限の可能性を
神々は贈り物を送った後に
使い切った体力を癒すための永い眠りに就いた。
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獣は1人になった。
1匹の神は眠る前に
「友よ、お前は幼い頃から此処にいて外の事をあまり知らないと思う。
だから、旅に出なさい。扉は開けておく、一方通行だがね。
外で、いろんなものを見てほしいんだ。
私たちが目覚めたら、また会おう…」
それから獣は、扉をくぐり外に出て、旅に出た。
〜とある民族に伝わる神話より〜