作者[[ダフネン]] ---- 「新月――」 光を映さぬ影のみの月を見て不意に呟く。ここはトレジャータウン――大陸の中央部の海沿いに位置し、多くの探検隊の拠点になっている町――の外れの岬、サメハダ岩――形がサメハダーに似ていることから名付けられた――に隠された空間。そこは居住空間になっていて、昔は私も色々お世話になった探検隊の二人が住んでいた。今は彼らは拠点を町の周辺に建てた平屋に移し、この場所を私に譲ってくれた。 あの時は、&ruby(ふたり){二匹};とも自分たちの活動の域を広めるにはこの場所は狭すぎる。と言っていたけれど。確かにその理由もあったかもしれない。 でも、本当はきっと、彼を匿う場所に困っていた私を見かねてのことだったのかもしれない。 けれど――。もうこの場所に彼は居ない。彼は、もう戻ってはこない。永久に。 無意識に落としていた視線をまた新月のほうに戻す。そういえば……、彼と出会った時も新月だった。今夜のように、淡い輝きの星たちが、黒い影を彩っていて――。 ---- 当時探検隊のチームに入っていた私は、毎日救助やお尋ね者の依頼の消化や、未開の地を探索する日々に明け暮れていた。時には協力して謎を解き、時には仲間と背中を預け共に戦う。いつ天然のトラップに掛かったり、ダンジョンその地にモンスターハウス潜むものたちの巣、いわゆるモンスターハウスに入り込んでしまうか分からないというスリル、新たな場所へと進むときに感じるわくわくした気持ち、そして宝を見つけたり、新たな仲間が増えた時の嬉しい気持ち、そんな感情たちが混ざり合った日々は、とても充実していた。そう、あの事を忘れてしまう程に。 ――あれは、私が探検隊に入ってちょうど半年が経った頃だろうか。いつものように依頼をこなし、トレジャータウンへ帰って来た時だった。 「た、たいへんだ~~~!」 聞き覚えのある大きな声が私たちの耳に届いた。酷く怯えたようにも思えるその声は、どうやら近くにある海岸の方から聞こえてきたようだ。だが、少し経っても誰も走ってこない。何かあったのだろうか。 「何があったんだろう……行ってみよう、シド、シルク!」 それを察したのか、共に探検から帰ってきたイーブイの少女はそう言うと、私たちの先を行くように走り出した。 ――彼女はメイラ。幼さの残る可愛らしい顔立ちをしているが、実力は相当で、これまでにも何人もの強敵を倒してきた。そんな彼女だが、性格は意外と臆病。でも、それすらも超える彼女の勇気と決断力、そして行動力は、今まで幾つものピンチから私たちを救った。 その彼女の後を追い、私たちも急いで向かう。 私の隣を走るチコリータ――先ほどメイラにシドと呼ばれていた彼は、メイラとは対照的で、とても大人びて整った、凛々しい顔立ちをしている。ほとんど喋ろうとしない彼は元々は人間であり、しかも未来から来たという。ちなみに、彼の実力もかなり高く、そこらのポケモンたちは、とても彼らには敵わないだろう。 「お、おお、メイラじゃないか! それにシド達も! 帰ってたのか」 たどり着いた私達を、大声が迎えた。紫の四角い体に、丸くて特徴的な耳。どうやら、さっきの声の主はこのドゴームだったようだ。その後ろには、誰かが倒れているのが微かに見える。 「ええ、ついさっきね。ところで何があったの?」 「ああ、こいつだよこいつ。こいつを見てくれよ!」 メイラの質問に、ドゴームは言うが早いか体を退けた。 「……!!」 私達は衝撃を受けた。まさか、どうして。 黒を基調とした体色。 棒のように細く、長い脚。 そして、特徴的な首の赤。 見間違うはずが無い。ここに倒れているのは……他でもない、あの、ダークライだ。 ---- とりあえず、ポケダンの時闇空をやってない方のための補足は次回の更新で。 ちなみに、イーブイとチコの名前は実際ポケダンで使ってる名前です。 ---- 誤字脱字などありましたらご報告ください。 #pcomment(黒き月のコメログたち); IP:61.22.93.158 TIME:"2013-01-14 (月) 18:25:46" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E9%BB%92%E3%81%8D%E6%9C%88%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%81%AB" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"