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鳥の島の章 の変更点


*鳥の島の章 [#y053cd94]

#contents

**鳥の島1 [#a00effce]
                                                                作:[[COM]]

サントウ村を出てしばらくした頃、シルバとアカラは西へ向かって進んでいた。
「えーっと…この道をまっすぐだから…もうすぐ着くはずなんだけどなぁ…」
シルバの少し前を歩くアカラはリュックから取り出した地図を開いてブツブツとつぶやきながら進んでいた。
「アカラ、今俺達は何処に向かって進んでるんだ?それだけ教えてくれないか?」
道といえば道なのだが、違うと言えば違う、そんなあぜ道ばかりをひたすら進んでいるためシルバは不安になりアカラに訪ねてみた。
「今はこの島とほかの島をつなぐ定期船が出てるこの島のもうひとつの村のサンテイ村に向かってるんだ。」
サンテイ村はサントウ村とは真反対の島の最西端に位置しているためアカラも村に訪れたことがなかった。
そのためこの島に住んでいるアカラも地図を見ながらサンテイ村に進んでいるのであった。
それからもしばらくの間黙々と歩き続け、数時間が経った頃、
「あった!あの村だ!」
そう言いアカラが指差す方向には村というにはあまりにも立派な港、そしてその港に大きな船が何隻も停泊していた。
「すごいな…初めて見た。」
巨大な船を見てシルバはそう呟いた。
「シルバも初めて見るの?嬉しいな!」
そう言いニコニコとシルバに笑みを見せていた。
「なんでだ?俺が船を見たことがないのはそんなに嬉しいことなのか?」
不思議に思いアカラにそう聞き直すと
「だってシルバも船に乗るのは初めてってことなんだよね?なんだかそれこそ旅に出るって感じがするからね!」
そう言い、焦る気持ちが現れているかのように船着場へと走っていった。
船着場は見た目以上に広く、多種多様なポケモン達の姿がそこにはあった。
「とりあえず次はどこの島に行く?」
世界地図を広げアカラは地図を指さしながらシルバに聞いた。
「別にどこの島でもいいさ。」
特に順番の指定があったわけでもないので、シルバはそう答えた。
「う~~ん…それじゃあ近い島で考えると、鳥の島か虫の島だね。」
そんな相談をしていると
「ハーイ♪あなたたちも旅行者なの?」
そう言いながら一匹のポケモンがこちらに歩み寄ってきた。
そのポケモンはジャローダ、美しいロイヤルポケモンだった。
「あ、はい。あなたたちもってことはあなたも…」
急に声をかけられたためアカラは少し戸惑っていたが、
「そうよ。私はチャミ、虫の島出身よ。」
と特に気にせずに話を進め、ぺこりと一礼してきた。
「えっと…僕はアカラでこっちがシルバです。」
流れに飲まれるようにアカラも挨拶をし、
「虫の島出身の方…なら虫の島に戻るんですよね?ご一緒させてもらってもいいですか?」
そうアカラは切り出した。
虫の島出身のポケモンがいれば虫の島を案内してもらえると思ったのだが、
「いいえ、今は虫の島には近寄らない方がいいと思うわ。」
と残念そうに言ってきた。
「どうしてですか?」
疑問に思ったアカラはチャミにそう聞いた。
すると深いため息をつき
「実は今、虫の島には龍の軍が攻め込んできているの。恐らく島の付近もドラゴンタイプのポケモンが飛び回ってるから近寄れないわ。」
そう言った。
「えっと…ごめんなさい。悪気があって聞いたわけじゃ…」
アカラはすぐにチャミに謝っていた。
「分かってるわよ、島のみんなが無事だといいんだけど…とりあえず、今は諦めたほうがいいわ。それに私は今旅をしてるからね。」
少し遠くの方を見ながらチャミはそう言い、
「私はとりあえず鳥の島に行くつもりだけど、あなたたちはどうするの?」
チャミはそう二人に聞いた。
それを聞き、アカラは嬉しそうに
「僕達も鳥の島に行くんだ!」
そう元気いっぱいに答えた。
「あら!奇遇ね。てことは乗船券はもう買ったのね?」
そう言われ首をかしげながら
「乗船券?それがないと乗れないんですか?」
アカラはそう言った。
心配そうなアカラを見て
「大丈夫よ。あそこにある券売所で券は売ってるから誰でも乗れるわよ。それじゃ先に船に乗ってるからまたあとでね。」
そう言いチャミは尻尾を振ってシルバ達に別れを告げ、船の方へ歩いて行った。
「チャミさんか…明るくていい人だね!」
シルバの方を振り返り、満面の笑みでそう言った。
「そうだな。さぁ、さっさと券を買って俺達も船に乗るぞ。」
同意の意味もこもっているが、一刻も早く船に乗りたい気持ちも強かったので軽くあしらうように返答し、シルバ達は券売所の方へ歩いて行った。
チャミの言った通り、特に苦もなく券を買うことができ、後は船に乗るだけだったのだが
「お客さん船は初めてみたいだな。船酔いに気をつけな。」
とシルバに券売所のポケモンが注意を促していた。
「船酔い?なんだそれ?」
シルバはある程度の記憶が戻っていはいたが、船酔いに関しては元々知らない情報だったため詳しく教えてもらっていた。
「あれは…シルバ…?なのかな…?でもここにいるし…」
アカラはふと周りを見回している時にこちらを見る不思議なポケモンのようなものを見つけていた。
その姿は遠目のためしっかりとは分からなかったが、アカラにはシルバのような容姿をしているように見えた。
「ねえねえシルバ、あの人知ってる?」
そう言い、熱心に聞き入っているシルバをちょんちょんとつつき、その方向を見させた。
「あの人…って誰もいないが…?どうかしたのか?」
シルバにそう言われ、急いでその方向を見るが、既にそこにさっきまでの姿はなくただの裏路地に戻っていた。
「おかしいなぁ…確かにさっきまでいたと思ったのに…」
アカラが首をかしげその方向を眺めていると、シルバもあらかた聞きたいことを聞いたようで
「さあアカラ、船に乗ろう。」
そう言い、ぼんやりと眺めているアカラの手を引いた。
「次は鳥の島に行くつもりね…これも報告しておきましょう…」
そんな声が、シルバ達から離れた場所から誰にも聞こえないように呟いた…
大きな大きな船を前にして自然とシルバとアカラの足取りは早くなっていた。
見たこともないそれは期待に胸が踊り、二人ともただの子供のように目を輝かせていた。
券を見せ素早く船に乗り、動き出す時を今か今かと二人は待っていた。
―――――
「わぁ!見て見てシルバ!海だよ!すごいよ!」
船は既に大海原の真ん中、出航してだいぶ時間が経っていた。
初めて見る景色にアカラは心を弾ませ甲板から海を眺めていた。
「む…無理…気分が悪い…」
そんなアカラの後ろのほうで壁に寄りかかり、ぐったりとしているシルバの姿があった。
「だ、大丈夫!?シルバしっかりして!」
顔も青ざめ、ぐったりしているシルバを見てアカラはシルバの元に駆け寄った。
「アハハハ!シルバさんは船が苦手みたいね。」
そんなことを言いながらチャミは笑いながらシルバ達の元に寄ってきた。
「チャミさん!シルバの様子が変だよ!」
おろおろと慌ててチャミに助けを求めるアカラを落ち着かせるように。
「大丈夫、シルバさんはただ船酔いしてるだけ。船が苦手な人はこの揺れで酔っちゃうのよ。」
と言いながら揺れを確認していた。
「船酔い?へぇー…そんなのがあるんだ。」
「無理…気持ち悪い…」
感心するアカラとダウンしているシルバを見て、
「我慢しなさい、もうすぐ鳥の島につくはずだから。」
と笑顔で言った。
チャミの予想通り、それからしばらくもしないうちに鳥の島に到着した。
だが、シルバには十分過ぎる時間だったようで恐ろしくゲッソリとしていた。
「わぁ~…本当に獣の島とそれほど変わんないや。」
「俺は…この苦痛をあと何回受けなきゃならんのだ?…ウップ…」
各々様々な感想を言っていると、チャミが後ろから
「それじゃ、私は用事があるから先に村に行ってるわね。バーイ♪」
そう言い、尻尾を振りながら先に森の中へと消えていった。
「僕達も行こうか…って言いたかったけどそんな様子じゃないね。」
チャミを見送り、シルバにそう話を振ったが、完全にグロッキーになっているシルバを見てここで少し休憩することにした。
しばらく時間が経ち、船から降りていろいろと喋っていた旅の客もいつの間にか散っていた。
いくらか静かになった船着場でようやく回復したシルバは改めてこの島にある村を目指して歩き出した。
島の大部分を占める森林は意外と獣の島と酷似しており、妙な安らぎがあったため知らない土地である不安を和らげていてくれた。
「なんだか僕達がいた島とそこまで雰囲気が変わらないね。」
歩いているうちにだんだんと慣れてきたのかアカラはいつもの調子に戻り、シルバに話しかけていた。
「確かにな、そのうちジオ達が出てくるかもな。」
ジョークも絡めたそんな会話をし、茂る樹木の間をゆっくりと歩いていた。
「アハハ!でもよかった。僕が思ってたよりもシルバが優しい人で。」
笑いながらもアカラは嬉しそうに話しだした。
「僕、シルバはもっと怖い人っていうか、気難しい人だと思ってた。」
「心外だな。これでもアカラのことは信頼してるし、もっと仲良くしていきたいと思ってるんだからな?」
アカラのそんな一言に、シルバはすぐに答えた。
その言葉には裏のない純粋な想いが込められているのが聞くだけでわかるほどだった。
「違う違う!そういう意味じゃなくて、シルバが明るい人で僕も嬉しいってだけ!」
ブンブンと手を振り、必死に誤解を解きながら、それでも嬉しそうな表情でアカラはそう言った。
そんな風に笑いながら森の中を歩いていると、バッタリと一人のポケモンに出会った。
「あ、初めまして。もしかして…この島の人?」
そのポケモンはサザンドラ。三ツ首と黒や青の体表で有名な凶暴なドラゴンタイプのポケモンだった。
なのだがサザンドラにしてはとても大人しく、おどおどとシルバ達に話しかけてきた。
「いや…俺達も今ここに着いたばかりの旅人だ。」
そうシルバが答えると、少し驚いた表情をし、
「そうなんですか、ごめんなさい。」
すぐに頭を下げて謝ってきた。
「謝る必要なんてないよ。僕はアカラ。で、こっちがシルバ。」
謝ってきたそのポケモンにアカラはそのまま軽く自己紹介をした。
「あ、僕は竜の島戦闘部隊、最高戦力部隊、『竜の腕』十四番隊部隊長のアギトです。よろしくお願いします。」
と深々と礼をしながらアギトはそう自己紹介をしてきた。
その名前を聞くなりシルバは姿勢を低く構え、いつでも戦える状態にした。
相手はこんな喋り方でも竜の軍、いつ襲ってくるか分からないからである。
「あ!えっと…ごめんなさい!驚かせてしまったみたいですね。僕は戦う気はないんでどうかいつも通りにしてもらえませんか?」
しかし、そんなシルバ達とは対照的に戦う気が一切ないアギト。
「僕はあんまり戦うのが好きじゃないんです。それにいろんな人とお喋りするのが大好きなんで。」
そんな様子で喋るアギトを見てシルバも流石に臨戦態勢を解いた。
「不思議なもんだな。俺はてっきり龍の軍にいる奴はみんな戦闘狂だとばかり思ってた。」
シルバがそう聞くと、アギトはちょっと寂しそうに
「確かに戦うのが大好きで、ただ殺して回る人もいますけど、ほとんどの人が戦いが全てではないと思ってるんですよ?」
そう言いながらシルバを見なおし、
「僕みたいに戦闘能力が長けているから選抜される人も多いんです。でも、真に平和な世界を作るためだと思って僕は頑張ってるんです。」
アギトは曇りない表情でそうシルバに微笑みながら言った。
「そういうことか、悪かった。」
シルバは素直に謝り、頭を下げようとしたが
「いえ、僕も分かってもらえて嬉しいです。」
そう言い、シルバを止めた。
「でも…パッと見た感じアギトさんってあんまり強そうじゃないよ?」
その横からアカラが口を挟んできた。
それを見てシルバは呆れ、アカラに
「アカラ、いくらなんでもそれは失礼だろ。」
そう説教をしたが、アギトは笑っており、むしろ嬉しそうにしていた。
「アハハハ!うん、その通りだよ。僕自身は戦うのも嫌いだし、強くもないんだ。」
不思議に思い、シルバはその理由を聞こうとしたが、遠くから聞こえてくる声に遮られた。
「隊長ー!アギト隊長ー!勝手に何処かに行かないでくださいよー!ってあれ?この人達は…?」
恐らく、アギトの部隊の隊員と思われるポケモンがそう言いながらアギトの元に駆け寄ってきた。
「この人達は今出会ったばかりなんだ。こっちの大きい人がシルバで、横の子がアカラだって。」
特に悪びれる様子もなく、アギトはシルバ達の説明をした。
「本当にあなたって人は…ん?シルバ…シルバ……どこかで聞いたこたがある気が…」
悪気が一切感じられないアギトに呆れ、シルバの名前を聞き、何かを思い出せそうで思い出せないでいると、シルバが不意に
「狂神シルバ…とかか?」
考え込んでいる隊員にそう話しかけた。
引っかかっていたモヤモヤを取り除いてくれたようにひらめいた表情をし、
「そうだ!それそれ!狂神シルバ…って…!!」
一気にその表情が恐怖に引きつった。
「へぇ~、あなたがシルバだったんだ。」
特に気にもせずアギトはそう言った。
そんな様子の彼らを見てシルバはフッと笑い
「俺があんた達を勘違いしてたように、あんたらも俺を見込み違いしてたようだな。」
その言葉には決して戦いという言葉は使われていなかったが、それに込められた思いは十分に伝わったようだった。
「ねえアギトさん。どうせなら一緒に島を見て回らない?」
「本当!それならご一緒させてもらうよ!」
表情こそ緩んだが、固まったままの隊員たちを尻目にアカラはアギトの右手?を優しくつかみ、一緒に村があると思われる方向へ走って行ってしまった。
「あ!ちょっと!隊長!」
声をかけようにも既に木々に隠れてしまったアギトの姿に半分諦めの顔を見せていたが
「敵状視察ってことで!夕方までには帰ってくるよ~!」
そんな声が林の向こうから聞こえてきた。
「お前らも苦労してるな。」
同情の言葉をシルバは苦笑いしながら隊員たちに言うと
「いつものことだから慣れてますよ。それじゃ隊長のことよろしくお願いします。」
そう言い、同じように苦笑いで返した。
「了解。ひとつだけ教えて欲しいんだが…いいか?」
そのまま去ろうとした隊員たちに声をかけると、承諾の頷きをした。
それを確認し、シルバは一つ気になっていた質問を投げかけた。
「お前たちは戦闘部隊なんだろ?ここに来た目的は一体なんなんだ?」
一瞬、彼らはためらったが、それでも話してくれた。
「今回は戦闘が目的ではありません。あくまで敵状視察ですよ。」
「そうか…悪いな、こんな質問して。それじゃ。」
そう言い、今度こそ隊員たちと別れた。
シルバもアカラたちの後を急いで追いかけたが、追いつくのは大分先になりそうなほど距離が開いていたのが目に見えて分かった。

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**鳥の島2 [#ge220b1a]


映える緑の中を颯爽と駆け抜けていく黒い影。
とはいえ、別にここは慣れた土地ではないのでちょこちょこ止まっては道があっているかどうか確かめていた。
「予想以上に離れてるな…面倒なこった。」
再度開いた距離を確認し、ため息を一度ついて走り出そうとしたが、何かの気配を感じ動くのをやめた。
「誰だ…いるのは分かってるんださっさと出てきな。」
「流石は狂神シルバと言ったところか…褒めてやるよ。」
その声の主は木の上、枝に座りながらシルバに話しかけていた。
パッと見ただけだとシルバとなんら変わりない姿だったが、ゆらゆらと蜃気楼のように揺らめく不思議なガスのような炎のような何かを纏っており、全体的に生物的な印象が感じられない。
そんな不気味な存在だった。
「お前は何者だ?なぜ俺のような姿を…」
シルバがそう問いかけるとその気の上のポケモンはフッと薄く笑い、
「俺に名はない。強いて呼ぶなら俺はお前の『影』。俺は誰でもあり誰でもない。何処にでもあり何処にも存在しない。そして…お前の敵であり味方…かもしれない…」
そう淡々と答えた。
「ふざけてるのか?悪いがそんなものに付き合えるほど暇じゃない。名乗る気がないのなら俺はさっさと行かせてもらう。」
そう言い、走り出そうとしたシルバにその影と名乗ったものは。
「まあそう急くな。そうだな…名前…カゲでいいだろう。俺はカゲ、旅の門出にひとつ警告しておこう。」
自らをカゲと名乗り、そのまま助言を始めた。
「お前の旅は終わりの物語だ。最後の旅、思う存分知恵を絞り、勇気を奮い立たせ、慈愛の心を忘れぬように心がけな…」
そう告げるとカゲはシルバが聞き直すよりも早く木の上から煙のように消え去っていた。
「最後の…旅…?」
シルバはそう呟き、晴れないモヤモヤを抱いたまま走り出した。
考えても仕方がない、そう言い聞かせながら…
一方、アカラ達は既に村の前まで来ており、シルバの到着が遅いことに少々苛立っていた。
「遅いなぁ…もう…」
「でも…僕たちが勝手に走り出したんですし、シルバさんここまでの道のりちゃんと分かるかなぁ…」
村の入口の前で二人はちょこんと座りそんな雑談をしていた。
「そういえばなんでアギトはそんなに優しいのに部隊長なんて任されてるの?」
ふと疑問に思い、アカラはアギトにそう聞いてみた。
「一応、褒め言葉としてもらっておくよ。僕が部隊長になっている理由は…これなんだ。」
そう言うとアギトは首にかけてあるポーチから何かのビンを取り出した。
「なにこれ?デストロイド…?」
アカラがビンのラベルを読むと
「デストロイドM-H錠。それが戦闘能力を最大限に引き出す薬なんだって。僕はその薬との相性が良いらしくてね。」
アギトがその薬を詳しく説明した。
「へぇ~、てことは戦ってる時は格好いいんだ!」
何かを期待した目でアカラはアギトを見ると、
「残念ながら戦ってる時の記憶はないんだ。気が付くといつも本部に戻ってるから。」
アギトがそう言うとアカラは若干残念そうに声を漏らし、
「ちょっとアギトのこと見直せそうだったのにな~。」
そう呟いていた。
アギトはそんな様子をただただ苦笑いしながら見ることしかできなかった。
「もうこんなところまで来てたのか…どおりで追いつけないわけだ。」
気が付くとシルバが二人の前に立っていた。
「あー!シルバ遅い!待ちくたびれたよ!」
「思ってたよりも早かったですね。さぁ!一緒に回りましょうよ。」
互いに自分の思いを勝手にぶつけ、謝っていいのか賛同すればいいのかシルバは二人に惑わされていた。
なんだかんだあったものの、結局三人でゆっくり村を回ることにした。
パッと見た光景は目を疑うほど獣の島と差がなかったが、そこに住まうポケモン、そして家の作りが若干違うことでなんとか気付けた。
住んでいる主なポケモンは勿論鳥タイプのポケモン。しかし、サントウ村とは違いそれ以外のポケモンもチラホラと見受けられた。
そして家の方は見た目の材質に差はないが家の作りが鳥ポケモンが使いやすいように止まり木がチラホラと生えているのが印象的だった。
「なんだか…僕が住んでた村よりも賑やかだなぁ…」
ちょっと羨ましそうにアカラがそうつぶやいていた。
「サントウ村は港からかなり離れていたからな…仕方がないだろう。それももうすぐ解決することだしな。」
シルバはそう言いアカラの頭を撫でてやるといつものように元気を取り戻していた。
「あら!もうこっちに来てたの?さっき振りね。」
「チャミさん!」
村に既に着いていた二人を見て少し驚いていたが、それでも嬉しそうに歓迎していた。
「あら…?あなたは…サザンドラね。この島はそんなに偏見がないからいいけどほかの島は気を付けた方がいいわよ。」
二人の後ろでもじもじしているアギトを見つけチャミは軽く警告した。
勿論全てのドラゴンタイプのポケモンが戦闘を好んで行なっているわけではないので旅をするポケモンもいるが、現状竜の軍によって死に別れた人も少なくはないため島によってはピリピリとした雰囲気の村もあるということだった。
「あ、はい!えっと…あなたは…?」
「チャミよ。よろしくサザンドラらしくないサザンドラさん♪」
「チャミさんですね。僕はアギトです。」
若干チャミのペースに飲まれおずおずと話していたアギトもにこやかになっていた。
「ねえチャミさん!この島を案内してよ!」
アカラが急にそんな話しをチャミに切り出した。
「いいけど…あんまり詳しくはないから一緒に回るような形になるわよ?」
一応チャミが確認をとると、アカラは嬉しそうに頷いた。
「そうか…それじゃアカラとアギトは任せた。」
そう言いシルバはその輪から離れようとした。
「あら?シルバくんは一緒に回らないの?」
「シルバも一緒に回ろうよ~。」
チャミとアカラが必死にシルバも混ぜようとしていたが、
「悪いな、俺は用事を思い出した。みんなで楽しんでくれ。」
そう言いすっとその場を離れた。
「どうしたんですかね、シルバさん。」
アギトが心配そうにアカラ達に聞いた。
「多分、神の社に関して聞きたいんじゃないかな?だから別行動したんだよ。」
アカラがそう説明すると、アギト達は不思議そうな顔をし
「神の社?」
と二人同時にアカラに聞き直していた。
「実はシルバには今記憶がないんだ。でその記憶を取り戻す方法が記憶の欠片を集めることなんだけど…」
そう言いアカラはリュックから以前手に入れた石版の欠片を取り出して二人に見せていた。
「これがシルバの記憶の欠片なんだって。これを全て手に入れれば世界を安定させることができるんだって。」
アカラの説明を聞き、アギトが
「ということはシルバさんって今、記憶喪失なんですか?」
そう心配そうにアカラに聞いた。
「うん。だけど記憶を取り戻す方法は欠片を集めきるしかないんだって。だから別行動したんじゃないかな?折角の楽しい気分を邪魔したくなかったんじゃないの?」
「結構シルバくんもああ見えて苦労してるのね…それじゃ、そんな心意気を無碍にしちゃダメね。私達も思う存分楽しませてもらわないと!」
妙な一体感をだし、シルバの考えを知ってか知らずか楽しそうに村の中心部へと歩いて行った。
一方、一度村を出たシルバは木々の切れ間に向かって叫んでいた。
「カゲー!!出てこーい!お前に聞きたいことがある!」
何度か呼んだが返事がないため諦めていた。
「やっぱり駄目か…」
「そんな面倒な方法で俺を呼ぶな。」
気が付くとカゲはいつかと同じように木の枝に寄りかかって現れていた。
「それで…聞きたいこととは?」
見た目以上に親切なカゲに少し驚きながらも
「お前は俺のことについてどれほど知っている。」
「全てだ。言ったはずだ俺はお前であり、誰でもない。」
シルバのその質問に対し考える時間もないほどすぐに返事をした。
「いや…そうは言ってなかったと思うが…」
「そうだったか?まあいい、問題はそこじゃない。聞きたいんだろ?お前の…」
「俺に関して知り得る情報を全て。」
言葉を遮るようにシルバは焦りの見える表情でカゲにそう言った。
するとカゲはフッっと笑い
「知ってはいる。そして俺がお前に告げることもできる。だが…全て無駄なことだ。」
そう言い切った。
「なぜ!!」
あまり期待していなかった言葉を聞き、シルバはさらに焦りの色を見せた。
そんなシルバを宥めるようにカゲは少し時間を置き、
「記憶の欠片を持たないお前に欠片をもたない部分の話しをしてもお前には理解できない。嫌でもお前は自分の力でしか記憶を取り戻すことは出来ない。」
「そうか…ありがとう…」
落胆し、そのままカゲの元から去ろうとしたシルバに
「そうだな…代わりといっちゃなんだが、この島の神の有る場所を教えてやろう。」
そう話してきた。
「本当か!助かる!」
すぐさま振り返り、感謝の言葉を送ると
「『日の出頂』(ひのいずるいただき)。それがこの島の神のおわす場所の名だ。言っておくがこれも最初で最後だ、二度は助けん。」
そう言うと先程と同じように何か声をかけるよりも早くカゲはその場所から消え去っていた。
「日の出頂…悩んでても仕方がないな…知ってる人物を探すか。」
シルバはそう呟き、すぐに村の方に戻っていった。

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**鳥の島3 [#g7e6c603]

村に戻ったシルバはすぐに聞き込みを始めた。
手当り次第に質問し日の出頂の情報を得ようとしたがやはり知っているものは少ないようでほとんどの者が知らないと答えていた。
「場所の名前が分かっても場所が分からないんじゃどうしようもないな…アカラ達は調べていてくれてるだろうか…」
半分諦めていたためアカラ達に期待しているシルバだったが、既にその期待も裏切られていることはまだ知らない。
『一度休憩したらもう一回聞いて回るか…』
シルバはそう思い、一度木陰で休むことにした。
その頃、絶賛旅先満喫中の三人は様々な観光名所を周り、鳥の島をぐるぐる回っていた。
既に意気投合しており、互いに楽しそうに笑い合っていた。
「鍾乳洞楽しかったね!チャミ、アギト!次どこに行く?」
海辺沿いにある鳥の島の観光名所、鍾乳洞を巡りとてもはしゃいでいるアカラ。
アカラにとって鍾乳洞というものは初めての体験だったため、興奮が抑えきれないでいるようだった。
「アカラちゃんが鍾乳洞を気に入ってくれたみたいでよかったわ♪そうね…次は…」
鳥の島観光ガイドとにらめっこをしているチャミにばれないように、アギトはこっそりと後ろに回り込み、
「チャミさん、これプレゼント!」
そう言い、チャミの首に鍾乳石のネックレスをかけてあげた。
「わぁ…綺麗な石ね…ありがとうアギトくん!」
急なことで少々驚いたものの、丹念に磨き上げられたそのネックレスを見て正直に喜んでいた。
「はい、アカラちゃんも!これでみんなお揃い!」
そう言って同じ鍾乳石のネックレスをアカラの首にもかけてあげた。
「わぁ~!ありがとうアギト!僕ずっと大事にするよ!」
三人の首には美しい色の鍾乳石のネックレスがお揃いでかかっていた。
それはまさしく三人が親密な仲であることをそのまま意味するかのような、混じりけのない綺麗な色だった。
「そうね…次は折角だからおいしい昼食でも食べましょう!」
チャミの提案に二人は賛同し、昼食をとるために島のはずれから村へと戻り出した。
―――――
「汝の名は…」
どこか見覚えのある巨大な姿…ぼんやりとしか見えないため正確には思い出せない…
「私の名前はシルバです。」
素直にそう答えると、その大きな影は続けて
「シルバよ…汝に頼みたいことがある…引き受けてもらえるか…」
何故か頼む内容をすでにシルバは理解しており、爽やかな笑顔で
「もちろんです。私でよければいくらでも…」
シルバはそう告げた。
するとその巨大な影はひとつ頷き…
「すまない、汝のような者に本来は頼むべきでないことは十二分に承知している。だが、我々は恐れているのだ……」
その辺でその景色はだんだん薄れ、気が付けば先ほどの木陰を木の根元から見上げていた。
「夢……か…」
夢にしては何故か生々しく、恐ろしいほどに鮮明に覚えていた。
まるで今体験したかのような感覚に陥るほどに、正確に今の夢を語れる自信があるほどだった。
「もう十分に休憩したな…気合を入れ直して探すかな…」
そう呟きシルバはゆっくりと起き上がり、手当り次第に聞き込むことを再開した。
二度目の聞き込みも苦戦することを覚悟していたが、意外にも早く情報を持った人が現れた。
「誰か日の出頂に関して知ってる奴は居ないか?」
「あの…私知ってますよ…?」
初めは誰に声をかけられたのか分からなかったが、足をチョンチョンとつついてきたのでようやく分かった。
「本当か?その場所まで案内してもらえると助かるが…」
そこにいたのは可愛らしいポッポだった。
シルバは片膝を付き、できるだけ目線を同じにしてそうお願いした。
「私もお婆ちゃんから聞いただけなので詳しくは知りませんが…お婆ちゃんなら詳しく知ってるかもしれないです。」
そのポッポは物怖じせずシルバにそう話した。
「そうか…できればそのオバアチャンという人に会わせて欲しい。」
何か勘違いをしているがギリギリ話は通じているためそのポッポは快く承諾した。
「私はツチカといいます。家まで案内するのでよろしくお願いします。」
「シルバだ。よろしく頼む。」
軽く自己紹介をし、ツチカの家に行くことになった。
あまりその場所から離れていない小さな家にたどり着き、ツチカは小さな羽でドアを開け、シルバを招き入れた。
「ただいま、お婆ちゃん。」
「お帰りツチカ。今日は何か楽しいことがあったかい?」
部屋の奥の椅子に腰をかけたかなりご高齢のピジョットが帰ってきたツチカに優しく喋りかけていた。
「邪魔させてもらう。あなたが日の出頂を知ってる人か?」
部屋のほぼ入口からそのピジョットに単刀直入にシルバは質問を投げかけた。
「あ、この人はシルバさんって言ってお婆ちゃんが前言ってたお話を聞きたい人なんだって。」
「おや、昔話に興味があるなんて勉強熱心な人だねえ。」
穏やかな口調で柔らかく微笑み、緩やかにシルバにそう話しかけた。
「私はチャカナ。よろしくね、シルバさん。」
「あぁ。できれば早急に聞かせてもらいたい。」
急かすようにシルバはそう言い、近づいたがチャカナさんはなおもニッコリと微笑み
「それじゃあ話そうかね。古い古い世界の始まりのお話しを…」
そう言い、昔話を始めた。
―――――
昔々、この世界というものも存在しなかった程の大昔、この世を創りたもうたといわれる創造の神がこの世界の礎となるものを生み出した。
その後、その神は己の体から二体の分身を生み出した。一方を時空の神、もう一方を次元の神と呼ぶ。
次元の神はその礎に世界を創り、時空の神はその世界に時を創りたもうた。
創造の神はその後、さらに細かな神を生み出した。
烈空の神、大海の神、大地の神の三神はまず、空気を生み出し稲光を轟かせ、雷雲から永く続く雨で世界を沈め、永い日照りで大地を創り出した。
その後創造の神は守り神を生み出し、それぞれに様々な使命を与えた。
まず時を渡る者が長き時を駆け巡り、すべての命を生み出した母体樹を、その後すべての命の還る世界樹を生み、命を生み出した。
最初の生命は意志も感情も持たぬ者だった。そのため精神を司る者が人々に知恵を、勇気を、心を与えたもうた。
その後、すべての命を護るために空と海に守り神を生み出した。
海竜が海を護り、鳳凰が日の昇りを告げ昼を護り、月光が夜の帳を告げ夜を護った。
その後、神はさらに島々を護る神を生み、それぞれの島を護るように命じた。
母体樹は彼自身が見守り、世界樹には陽の光が堕ち、湖に月は沈み、水底に海竜は眠り、狭間に時渡りは帰り、探求者は荒野に黙し、輪廻の回廊に番人は就き、神々は社より世界を見渡すために帰っていった。
そして最後に世界の中心に幻の地を置き、世界を安定させた。
世界に散りえども神は常に我らを見守る。
善き行いをし、善い人生を送り、神に感謝し生きてゆく。
それが私達が出来る神への恩返しである。
―――――
「これでおしまい。ちゃんと最後まで聞いていたかい?」
話し終わったチャカナはシルバの方を見てそう聞いた。
「あぁ。最初から最後まで全部聞いていた。」
かなり長かった話だがシルバは最後まで聞いていた。
しかし、嫌々聞いていたというよりもむしろ懐かしい話を聞いている感覚になっていた。
聞いていて苦ではなく、むしろまだ聞いていたいそんな感覚に陥っていた。
「だが、俺が聞きたいのはこの島のその守り神が居る所だ。」
だが今一番欲しいのはその場所に関する情報。
シルバはチャカナに場所を聞き直していた。
「何処にどの神がいるのかまでは私は知らないけれど、とりあえず場所の名前とその地の守り神なら教えられるよ。」
そう言いシルバにそれぞれの神のいる場所の名とそこにいる神の通り名だけを教えていった。
「神の依代に創造の神、日の出頂に鳳凰、時のたゆとう狭間に渡り人、水底の清海に海竜、心理の大間に探求者、月落つる水面に月光、空を衝く回廊に番人、神の社に全ての神がいると言われておる。」
チャカナのその言葉を頼りに先ほどの記憶と照らし合わせる。
鳳凰が太陽の守り神であり、それが世界樹に堕ちたのであれば恐らくそこが日の出頂。
「ツチカ、この島に世界樹はあるか?」
自分の予想を確かめるためにシルバはツチカにそう聞いた。
「はい、この島の観光名所の一つにもなってますよ。」
ツチカがそう答えてくれたおかげで向かうべき目的地が分かった。
が、勿論シルバはこの島に住んでいるわけではないため場所を知らない。
それどころか記憶も持っていないのだから。
「すまないがそこまで案内してもらってもいいか?」
シルバがツチカにお願いするとツチカは少し戸惑っていた。
「連れて行っておやり。シルバさんも困ってるみたいだからね。」
シルバとチャカナを交互に見て、あからさまにどうすればいいか聞きたそうな顔をしていたツチカに、チャカナはニッコリと微笑みそう言った。
「は、はい!シルバさんよろしくお願いします。」
そう言い行儀良くお辞儀をしたツチカにシルバは
「ああ、こちらこそな。」
そう素っ気ない返事をした。
その後、ツチカはすぐに身支度をし二人はすぐにツチカの家を出た。
「二人共、気を付けるんだよ。」
そう言いながらチャカナは玄関までお見送りに顔を出していた。
村を出て数十分、そう遠くない距離にその世界樹は延びていた。
そんな樹を見るのは二度目なのであまり驚きはしなかったが、その木の根元に集まる人の多さに驚かされていた。
「かなり人がいるな…本当にここは神聖な場所なのか?」
「はい。太陽の守り神であるホウオウ様がこの樹の頂より飛び立ち、日の昇りを告げ、この樹に帰り、日の暮れを告げるそうです。」
ツチカは流石に地元に住んでおり、祖母から昔話を聞かされていたため詳しくこの樹の伝説を覚えていた。
「頂ってことはこの樹を登るってことか?空を飛べるポケモンは構わないが…俺は流石に登りきる自信が無いぞ?」
今回も天を衝くようにそびえる樹を見上げてツチカにそうぼやくと。
「大丈夫ですよ。世界樹には絡みつくように育った大きな蔦があるのでそれが自然の階段の役割を果たしてくれているんです。」
そう言われよく見ると世界樹と共に育ったと思われるあまりにも太い蔦の上を登っていくポケモンの姿が多く見てとられた。
「要するにあれを登れば会いに行けるわけだな…」
気合を入れ直し、シルバは駆け足でその蔦を登っていった。
ツチカは少し置いていかれたが、もちろん飛べるのですぐにあとを追いかけていった。
太く長く樹に巻き付くその蔦は皆が歩いたせいか上側は平たくなっておりかなり歩きやすくなっていた。
縁の方は若干盛り上がっており、手すりのようになっていた。
そのためシルバもあまり周りを気にせずに駆け上がっていくことができた。
が流石に規模は世界樹。一筋縄でいくような樹ではないため途中からは休憩を取りながらできるだけ早く登っていった。
一般の観光客も所々にある休憩所で足を休めたりする姿が多く、案外整備されているため登山家レベルでないようなポケモンもゆっくりと登っていっているようだった。
が、シルバでもかなり時間のかかる距離、恐らく普通のポケモンなら数日をかけて登る高さなのであろう。
ようやく頂上に着く頃には既に日は沈みかけていた。
「思ったよりも疲れたな…」
「大丈夫ですかシルバさん。」
座り込んで息を荒くしているシルバの横でツチカはパタパタと飛んでいた。
『結構羨ましいな…飛べるって…』
特に疲れた様子のないツチカを見てそう思ったシルバだったが、
「あ!シルバだ!もしかしてシルバも観光名所巡り?」
追い打ちをかけるようにアカラ達も到着した。
「お前らどうやってあの距離を登ってきたんだ?」
驚きを隠せずにシルバがそう聞くと
「ほとんどアギトの背中に乗ってた。」
そういうアカラの後ろにはニコニコと笑いながら手を振るチャミとアギトの姿があった。
「やっぱり羽が欲しいもんだ…」
「…?どうしたのシルバ?」
がっくりと気を落とし、小さくそう呟くシルバとそれを不思議そうに見つめるアカラの姿がそこにはあった。

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**鳥の島4 [#m88fe929]

結局アカラ達はそのまま沈みゆく夕日をアギト達やほかの観光客と同じように眺めていた。
シルバはその間、日の出頂への入口を探していた。
恐らく前回と同じで何処かに厳重に封印されたような場所があるはずという考えからだった。
それとそんな神聖な場所に一般客がズラズラと入っては来ないだろうという考えもあった。
そんな考えで探しているとふと目の前に
[コレヨリ先神域ニツキ一般人ノ立チ入リヲ禁ズ]
そんな立札のかかった鎖で囲われた空間があった。
「見つけた。それじゃ会いにいくかな…」
そう言い、鎖を跨いでその先に行こうとしたシルバをツチカが必死に止めた。
「だ、駄目ですよ!その先は神聖な場所なんで神官様以外は入っちゃいけないんです!」
そんなツチカを見てシルバはフッと笑い
「悪いが俺はここから先に用がある。その守り神に会わなきゃならないからな。」
そう言い進んでいった。
が、ツチカの方を振り返り
「ついてくるか?」
シルバはそうツチカに切り出した。
急にそんなことを聞かれ、最初こそ戸惑ったツチカだったがどうしても行ってみたいという衝動を抑えられなくなり、小さく頷いた。
シルバはただ来いとジェスチャーでしているだけだったが、迷わずツチカはついていった。
先へ進むと上へ続く階段のように樹がまだ伸びていた。
その樹をさらに登り、たどり着いた場所は先ほどの場所よりも少し高い本当の頂だった。
「うわぁ…綺麗な景色です…」
日は今まさに沈もうとしている限界の状態。
薄く陽の光が地平線をなぞるように、まるで翼を広げた鳥のように伸びていた。
その美しい光景は数分と持たずに崩れてしまい、日が落ちたことを告げた。
しかし、落ちて見えなくなったはずの陽の光がもう一度燃え上がりこちらへ向かって飛んできた。
その光はそのまま今シルバ達がいる樹に止まり、だんだんと形を成していった。
「ホ、ホウオウ様!」
ツチカはその姿を見た途端、思わず大きな声を上げてしまった。
その姿はまさにホウオウ。太陽が目の前で具現化したような赤く煌めく姿だった。
「よくここまできましたねシルバ。私の名はサナス、永き時を光と共に見守り続けた者。」
サナスの声は暖かく、優しく心に語りかけてくるような声だった。
凍てつく心までも溶かし、心を開かせるようなそんな柔らかな声でサナスは続けてシルバに喋りかけた。
「あなたの旅はまだ始まりに過ぎない。だけれどあなたの心にはその旅を楽しむような余裕は無いようですね。」
サナスのその言葉を聞いてもシルバは表情一つ変えずにサナスを見つめていた。
「あまり悠長にしている時間はない、ただそれだけだ。さあ、試練の内容を教えてくれ。」
淡々と喋るシルバに対し、サナスは緩やかに喋りかけた。
「私の持つ記憶の欠片を渡す条件はありません。ただし、あなたには今から起きうる事をあなた自身で選択してもらいたいのです。」
「選択?」
意外な事を切り出され、少し疑問に思ったがそのままサナスの話を聞いた。
「この時よりも少し先、恐らく明日にあなたはとある者の生死を決断しなければなりません。」
サナスのその言葉を聞き、シルバが少し反応したがそのまま聞いていた。
「たとえその者を生かすとしても死なすとしても構いません。ただ、私はその決断を下したあなたの心を見させてもらいたいのです。」
サナスは最後にそう言い、シルバを見つめた。
「いわばそれが俺に与えられた試練ということか。いいだろう。」
そんな受け答えをしたシルバを何処か悲しげな表情でサナスは見つめたが
「ええ、あなたの心に答えが導き出された時、私は今一度あなたの前に姿を現しましょう。」
サナスはそう言うと再び激しく燃え上がり煌めく炎へと姿を変え空の中へと消えていった。
それを見届けるとシルバはツチカに
「戻ろう。もうここに用はない。」
そう言い、その場をすぐに去った。
「シルバさんは一体どんな人なんですか?ホウオウ様と対等に話したり、何かの試練を受けたり…」
少し心配そうにツチカがシルバに聞くと
「俺も自分がどんな存在なのか分からない。だからこそそれを知るために旅をしている。」
そうとだけ言い、すぐにその神域から出て行った。
その時のシルバは何かに迷っているような、しかしなんとも言えない、無表情のようなよく分からない顔をしていた。
ツチカにはその時のシルバの表情が印象的で、何故か悲しげに見えていた。
「あ!シルバシルバ!あの夕日見た?すっごく綺麗だったね!」
神域を出るとシルバを見つけたアカラが駆け寄り、かなり興奮気味にシルバに話しかけてきた。
「全く…人が必死に探して回ってた間お前らは何をしていたんだ…」
呆れながらシルバが聞くとアカラはニッコリと笑い
「観光!」
そう元気に答えた。
呆れよりも既に諦めにも似た感情になっていたが、シルバはアカラの頭を撫でてやりながら
「楽しんだみたいなら良かったよ。それじゃ降りるからまた後でな。」
そう言い来た道を下ろうと蔦の方に歩いて行ったが
「シルバさんも降りるんですよね?降りるだけなら三人とも背中に乗せれると思いますよ?」
とアギトが提案してきた。
「だったら乗せてもらおうかな。わざわざ歩きたくもない。」
断る道理もないので素直にアギトの申し出を受けた。
三人とも背中に乗せてもらい、ツチカはそれを追いかける形で降りることになった。
「それじゃ行きますよ。」
アギトがそう言い樹を飛び降りた。
降りると言っていたためシルバは完全に油断しており、思いもがけないスピードに驚いてしまった。
ふわりふわりと木の葉が落ちるように降りるどころか木の実が落ちるような速度で一気に下降していった。
いつの間にか地面が近づいており、周りに生えている普通の木々が一本一本目視できるほどの距離になったところでアギトは全力で羽ばたき減速していた。
「うわわっ!やばい!止まれないかも!」
目測を誤ったらしくかなり減速してきてはいるがこのまま着地すればアギトにかなりの負担がかかるだろう。
「この距離なら大丈夫だな。ま、三人乗ってたんだ次からは気をつけな。」
シルバはそう言うと他のみんなの返事を聞く前にアギトの背中から滑り落ちるように飛び降りた。
「え!?ちょっと!まだ木よりも高い位置なんだよ!死んじゃうって!!」
アカラの制止の声も虚しく、既にシルバは加速しながら落下していた。
木々の合間に落ちていく時に枝を何本かへし折りながら枝から枝へ飛び移り無理やり減速しながら地面に着地した。
それを追うようにアギトも少し遅れて着陸しさらに遅れてツチカが追いついた。
「人間離れしてるとは思ってましたけど、まさかこんな無茶苦茶をするとは思わなかったですよ。」
まるで何事も無かったかのように立っているシルバを見てアギトは心底関心していた。
「シルバくんのせいで寿命が縮んだわ。意外とあなた無茶をするのね。」
「バカー!シルバのバカー!!」
チャミもアカラも関心するを通り越して呆れていた。
が、当の本人はあまり気にしておらず結局笑い話になって収まった。
「ところでこの後みんなはどうするの?」
アカラがみんなに質問すると
「私はもう宿を予約してるからチェックインしにいかないと危ないわね。それじゃお先に~♪」
そう言いチャミは一足早くいつものように嬉しそうに尻尾を振りながらその輪から離れた。
「あはは…チャミさんらしいですね。では僕もそろそろ集合場所に戻らないと。」
そう言い離れようとしたアギトをアカラが止めた。
「アギトももう何処か行っちゃうの?」
少ししょんぼりとした声でアカラがそう訴えかけたためアギトが足を止めようとしていたが
「アギトは本来抜け出してきてるんだ。部隊のみんなもアカラと同じように心配してるんだよ。」
そう言い耳の垂れたアカラの頭をシルバは撫でてやった。
「また明日も会えるよね?」
声に元気はないものの、アギトを見送る準備は出来たようだった。
「ありがとうアカラちゃん、そしてシルバさん。楽しい一日でした。できればシルバさんとはずっと友達でいたいです。」
「俺もそう願ってる。できれば戦いたくはない。お前が悪い奴ではないことぐらい俺にも分かるからな。」
二人は互いの友情や信頼を確認しながらも互いの立場を理解し合っていた。
どんなに願っても戦わねばならなくなればお互いに守るもののために戦うしかなくなるから。
「シルバさん。シルバさんにもこれを…友達の証として受け取って欲しいです。」
そう言いながらアギトはみんながつけているネックレスと同じ物をシルバにも渡した。
「綺麗だ。大事にさせてもらう。」
その言葉を最後にアギトは二人に別れを告げ森の徐々に濃くなる暗がりへと消えていった。
「ツチカ、ここまでの案内助かった。また会えるといいな。」
そう言いシルバ達もその場を去ろうとしていたが
「お二人とも今晩泊まる場所は決まってるんですか?」
ツチカがシルバにそう切り出した。
もちろん泊まる場所など決めていなかったため適当な所で野宿するつもりだったため
「いや、特に決まってないが…」
そう答えると、ツチカが少し嬉しそうに
「でしたら今晩は家に泊まっていきませんか?」
そうシルバに提案した。
「そっちが構わないならそうさせてもらうよ。」
シルバはその言葉をすんなり受け止め、好意に甘えさせてもらうことにした。
「でも…邪魔じゃない?急に二人も泊まったらお父さん達に迷惑とか…」
少し元気を取り戻したアカラが、ツチカに心配そうにそう聞くと
「大丈夫です。お父さんもお母さんも居ないんで。今はお婆ちゃんと二人暮らしなんでむしろ喜んでくれると思いますよ。」
ちょっと寂しそうな顔をしたものの、すぐに笑顔を取り繕っていた。
「あ、えっと…ごめんなさい。そんなつもりじゃ…」
アカラがすぐに謝ると
「いえ、気にしないでください。お父さんもお母さんも亡くなったのはもう大分昔の事なので。」
そう言いアカラに笑顔を見せていた。
「でも、本当に泊まってもいいの?」
アカラの不安げな質問にツチカはにっこり微笑み
「お構いなく!私はツチカと言います。折角だからお友達になりたいです。」
元気一杯に返事をした。
かなり元気を失くしていたアカラもようやく元気を取り戻し
「ホント!僕はアカラ!よろしくね!ツチカ!」
そう言いながら元気にツチカに駆け寄っていった。
「僕?」
ツチカはきょとんとし、不思議そうに首を傾げていた。
次第に辺りは暗くなり空にはチラホラと星が見え始めていた。
日もかなり落ち赤から青へのグラデーションがなんとも言えない美しい空が広がっていた。
日が落ちきる前に無事ツチカの家に着き、二人はそこで一泊させてもらうことになった。
家に着くとすぐに食事を始め、楽しい団欒の時間を過ごしていた。
「フフフ…賑やかねぇ…こんなに賑やかなのは何年振りぐらいだろうかねぇ…」
食事も終わり楽しそうに喋るツチカとアカラの二人を見てチャカナは嬉しそうにそう漏らしていた。
「そんなもんなのか?俺はアカラがいるせいで毎日騒がしいよ。」
そんな愚痴を漏らすシルバを見てチャカナは微笑んでいた。
「あの子の親、私の娘とその旦那は昔旅をしていたの。」
チャカナがふとそんな話しを始め、シルバは黙ってその話に耳を傾けていた。
「島々を巡ってはその地の守り神様にお祈りし、世界の平和を願っていたそうよ。」
「そう?…本人達からは聞いてないのか?」
言葉の言い回しが気になりシルバが質問すると
「でも…その旅の途中、竜の軍の侵攻に巻き込まれて旅を果たせぬまま、二人はこの島に喋らぬ身体となって帰ってきたの。」
そうチャカナは寂しげに語った。
「その時あの子は…ツチカはまだ6、辛い現実を見るにはまだ早過ぎる年だったのに…それでもあの子は挫けずに直向きながらも明るく成長してくれた。」
そこまで話しきるとチャカナは不意にシルバに問いかけてきた。
「シルバさん、あなた達の旅の目的はなんですか?よろしければ教えて欲しいわ。」
シルバは近くにあったアカラがいつも背負っているリュックから、欠けた石版を取り出してチャカナに見せた。
「俺は記憶の欠片と呼ばれているこの石版を探して旅をしている。」
チャカナはシルバからその石版を受け取り、少しの間眼鏡越しに石版の文字のようなものをまじまじと見つめていた。
「今の俺には記憶が無い。その石版には俺の記憶が刻み込まれているらしく、それを集めることで次第に俺の記憶は元に戻る。」
そう言うとチャカナは少し驚いた顔をしてシルバを見つめていた。
「ということは…あなたは記憶を取り戻すために旅をしているの?」
その問いに対し、シルバは首を振り続けて
「記憶を取り戻すのも目的だが、その石版は世界の平和に関わる大事なものでもあるらしい。俺の使命はそれを集めきり、神の社まで辿り着く事…」
そう答えた。
「そう…平和のために…まるでうちの娘達みたい…あの子は…アカラちゃんはどうしてあなたと一緒に旅をしているの?」
寂しげに、しかしどこか懐かしむような表情でそう呟き、続けてアカラに関して質問した。
「あいつは俺が気が付いた時から何かと俺の世話をしてくれたんだ。感謝してたが…何故か成り行きであいつも一緒に旅をするようになってたな…」
そんな不思議な経緯を話すとチャカナは嬉しそうに笑い
「あなたが優しい人だからじゃないかしら。こんな老人とも楽しくお喋りしてくれる人ですからね…」
そんな冗談を絡めながらシルバの事を褒めていた。
「そんなにあんたと俺が喋ることが不思議なことなのか?別に俺は聞かれたから答えただけだ。」
シルバはそんな言葉を間に受け不思議そうに喋っていた。
「フフフ…アカラちゃんをちゃんと守ってあげなきゃ駄目よ?相当あなたのことを慕っているようだからね。」
そう言うとチャカナはいつも自分が腰掛けている椅子に戻っていった。
シルバも立ち上がり、ふと窓から顔を出した。
『守る……か…考えたこともなかった…』
自分の使命は記憶を取り戻し、石版を全て集め、世界の平和を保つことだと思っていた。
それを遮るものがあるならば命を懸けてでも押し通すと、そう決めつけていた。
だが…
『アカラちゃんを守ってあげなきゃ駄目よ?』
自分の周りに在る存在を自分が守る。
言われるまで思ったこともなかった。
アカラはアカラでどうにかしていた。きっとこの先も自分で自分の身を守る。と…
その覚悟まで含めて、アカラは自分の旅についてくると言った。そう思っていた。
シルバが寄せていた信頼、それはそんな事全てを引っ括めての信頼だった。
「俺が…守っていく…全てを……か。」
決意にも似た言葉をシルバは一人、夜闇に映える月明かりの下、呟いていた。

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**鳥の島5 [#q223943f]

薄く伸びる柔らかい木漏れ日が差し込み、優しい暖かさがシルバを緩やかな目覚めへと誘った。
木々の囁きにも似たサワサワトいう静かな音しか聞こえない、とても静かな朝だった。
「おはよーシルバ!今日なんでしょ?上手くいくといいね!」
そんな爽やかな朝だったがアカラの存在でいつも通りの朝になっていった。
「朝から無駄にテンションが高いな…お前は…」
そんな事をぼやきながらシルバは朝食の席に着いた。
とても賑わいのある団欒の食事、それは周りから見ればとても微笑ましいものだろう。
だが、そこでシルバが異変に気付いた。
「いくら朝とはいえ…静か過ぎやしないか?」
かなりの旅行客も来ている土地ゆえに、一切の声が窓を開けているのに聞こえないことに不自然さを感じ、シルバはすぐに食事をやめ家の外へと出ていった。
「僕も着いて行くよ。」
アカラがそう言いシルバについていこうとしたが、チャカナがそれを止めた。
「出ていかないほうがいいよ。なんだか嫌な予感がする。」
家から出たシルバが見た光景は、昨日まで賑わっていた人々が一人もいない静かな広場だった。
最初こそそれは静かなだけだった。
だが今となってはそれは不気味な静けさに思えた。
人のいた痕跡はあるため消えたわけではなく、みなどこかへ行ったのだろう。
ただし、逃げるように急いで…
その時シルバは昨日のサナスの言葉を思い出していた。
『選択をしなければならない…とあるものの生か死か…』
そんな事を思い出している時に、遠くから何者かの雄叫びが聞こえてきた。
低く深く抉るような雄叫び…それは恐らくこちらへ向かってきているだろう。
そう思い姿勢を低く構えて待っていると、しばらくもしないうちにそれは現れた。
「行けぇ!!焼き払え!目に付く者は全て殺せ!」
現れたのは竜の軍。予想通りではあったが…
「お前は…アギト…?」
その中心にあった姿は…間違いなくアギトだった。
しかしその顔にアギト独特の優しげな表情はなく、一般的に凶暴竜と呼ばれる凶悪さを放つサザンドラの表情があった。
アギトの豹変ぶりに驚きを隠せずにいたシルバだったが、そんな彼に周囲のポケモンが容赦なく襲いかかってきた。
左右から同時に飛びかかってきたオノンドとガバイトが爪で切り裂こうとしてきた。
が、その攻撃は両方ともシルバに届く前にシルバの手によって二人を返り討ちにしていた。
正確無比な一撃が二人の心の蔵を的確に捉え、両の手が、爪が正確に二人の息の根を止めていた。
「チッ!役立たずが!三人以上で一気に攻めろ!奴は手練だ!」
目の前で二人の命が失われてもなおアギトは気にも留めず他の隊員を差し向けてきた。
「アギト…お前は本当にアギトなのか!」
目の前にいるそのサザンドラはただニヤニヤと笑い、敵味方問わずに血を見れればいい、そんな狂気に満ちた笑顔だった。
いや、それはアギトだけではない。
今飛び込んできた二人も、そして次に飛び込んでこようとしている三人も恐怖の色は見えず、ただその戦いを笑いながら楽しんでいた。
「死にな!雑魚に勝ったぐらいでいい気になるなよ!」
一人が遠距離で、残り二人がそれを避けさせないように左右から攻撃してきた。
素早く左から来たオノノクスの喉を掻き切り、そのまま振り返りながら回し蹴りをもう一人のオノノクスの首元に抉るように叩き込み、飛んできたりゅうのいぶきにそのオノノクスをぶつけた。
「ほー…やるな…俺が出ないと面白くならなそうだな…ヒッヒ…」
その笑みは酷く歪み、あのアギトから出ていた柔らかい笑顔とは似ても似つかなかった。
「アギト…お前は何が楽しいんだ?これはお前が望まなかったことじゃないのか…?」
そんな力ない声はアギトには届かず、アギトはそのまま
「俺の名はアギト!竜の島戦闘集団『竜の軍』の最高戦力部隊『竜の腕』の十四番隊隊長にして殺人狂の通り名を持つ男だ!」
そうシルバに名乗った。
「どうした?さっきまでの威勢は?さあ…遊ぼうぜ?」
「お前は…アギトではない…」
必死にシルバはアギトにそう訴えかけるが
「はぁ?お前は馬鹿か?この世界にアギトの名を持つ男は俺だけだ。他にいるのなら…俺が消してやるよ。」
そう言い放ち、アギトは高らかに笑い声をあげた。
「やるしか…ないのか…」
「シルバ!待って!アギトは戦ってる時の記憶がないって言ってたんだ!だから殺し合ったりしないでよ!」
その声に驚き、後ろを振り返るとそこには家から飛び出したアカラの姿があった。
「記憶が無い?どういうことだ!」
「デストロイドっていう薬を飲んで戦ってるんだ!だから…」
アカラがそこまで言いかけた時、
「折角の楽しいショーが始まるってのに…目障りだ。ブレン、フィーノン、あのゴミを消せ。」
アギトが近くにいた隊員にそう命じた。
凄まじいスピードでアカラの元まで二体のポケモンが飛んで行き、襲いかかった。
が、同じく間に割って入ったシルバによって二人は血の海に倒れた。
「大丈夫かアカラ。」
「シル…!」
アカラがシルバに話しかけようとしたが、そこまでで止め、とても怯えた表情を見せていた。
「おいおいおい…狂神と恐れられる天下のシルバ様がたった一人の女の子を守るか?普通。」
「悪いがお前とは違う。俺には守らなきゃならないものがある。」
そう言いアギトの方に振り返ると、アギトはそれを鼻で笑い
「そんなもんはゴミだ。戦うことに、命懸けて殺り合うこと以外に意味なんてねぇ!」
それはアギトから吐き捨てられた言葉とは到底思えなかった。いや信じれなかった。
シルバの中には何か分からない思いで満ち溢れ、そうなればなるほどシルバの顔から表情が消え失せていた。
「そこまで言うならやってやるよ。俺には守らなければならないものがあるんだ。」
そう言いアギトをしっかりと視界に捉え、戦おうと構えたが、アカラが必死にそれを止めた。
「お願いだよ!やめてよ!アギトだって仲間でしょ!二人が殺し合うなんて絶対に嫌だよ!!」
いつもは元気で明るいアカラの顔…しかし、その顔は今にも泣き出しそうになり、手も震えていた。
「ごっこは終わったか?さっさとかかってこないなら俺が皆殺しにしてやるよ!」
そう言いアギトはシルバ達の元まで素早く飛んできたが
「させるか!竜の島の蛮族共め!」
それを遮るように三人のポケモンが颯爽と舞い降りてきた。
そのポケモンはファイヤー、サンダー、フリーザー。この村を治めているポケモンだった。
「今のうちだ!逃げ遅れた者は急いで港へ避難するんだ!」
三人のリーダーであるファイヤーのエンがまだその村にいたポケモン達に逃げるよう促していた。
その間にフリーザーのヒョウ、サンダーのライはアギト達に応戦し、時間を作っていた。
「あんたらは何者だ?なぜアギト達と戦っているんだ?」
シルバは目の前にいたエンにそう尋ねた。
「私の名はエン。この村を治めている者だ。君たちもここは私達に任せて早く避難するんだ。」
手短に自己紹介をし、エンはシルバ達にも避難するように促してきた。
「悪いがあいつの…アギトの相手は俺だ。あいつとだけは決着を付けさせてもらう。」
そう言いシルバは申し出を断わり、アギトの方を向き直していた。
「駄目だ。もしものことがあってからでは遅い。我々にはこの村に訪れたものを守る義務がある、早く避難するんだ。」
村人であるか旅人であるか問わず、エンは助けたかったようでそれでもシルバに避難するように言ってきた。
「悪いがこればかりは譲れない。あいつとの決着をつけないといけないんだ。頼む。」
それでもなお引き下がらないシルバ。
そんな姿を見て何かを感じ取ったのかエンは
「分かった。だが無理はするな。敵の大将には手出しをしないが少しでも危険だと感じたらすぐに応戦させてもらう。」
そう言いエンはヒョウとライの二人に指示を出し、部隊の隊員の相手にまわり、エンはすぐに他の逃げ遅れた人達の避難に回った。
それを確認するとシルバはすぐに歪んだにやけ面でシルバの方を見ているアギトへと進み出そうとしたが、アカラがシルバの手をつかみそれを止めた。
「お願い…お願いシルバ…一つだけ約束して…僕も、シルバも、アギトももう友達なんだ…だからお願い…アギトを救ってあげて!絶対に二人とも死んじゃやだよ!」
シルバの手をつかみ、必死に想いを伝えるアカラの手は震え、怯えていた。
それはこの状況に対してではなく、大事な親友を守りたい思いでもなく……ただ、何かに怯えていた。
「分かった。やれるだけのことはやる。友達…だもんな…」
そう言い、シルバはおもむろに自分の首にかけていたネックレスを掴んだ。
『できればシルバさんとはずっと友達でいたいです。』
『あの言葉に…嘘はなかった…守る戦い…か…』
シルバは心の中で小さくその言葉を呟き、目の前にいる虚飾のアギトと初めて向き合った。
「かかってきな!お前と俺、最高のキャスティングだ!血の一滴まで絞りあおうじゃねえか!」
「残念だがその気は失せた。俺はお前を…アギトを取り戻す!」
信念を込めたその言葉はアギトの目を見ては言わず、アギトが身に付けていた鍾乳石のネックレスに向かって言い放った。
互いに走り出し、ぶつかるかどうかという距離で互いに攻撃を繰り出した。
シルバの爪はアギトの右頬をかすめ、同じようにアギトの右の頭の噛みつきはシルバの右頬をかすめた。
そのまま激しい攻防戦へと発展していった。
8ギリギリのところでお互いが躱し、致命傷には至らないものの、ダメージは飛び散るわずかな血飛沫から見て取れた。
互いに紙一重、互角の勝負。シルバが殴りかかれば同じようにアギトも頭突きを食らわせている。そんな極限の死合をしていた。
あまりにも凄惨な光景に耐えられず、アカラは目を閉じ、必死にお互いの無事を祈っていた。
小さな切り傷が増え、互いに血みどろになりながらもアギトはさも愉快そうに笑っていた。
しかし、それとは対照的にシルバは静かにアギトの攻撃を避けつつ何かを見つめ続けていた。
その次の瞬間、アギトは両の頭を振り下ろし、シルバのちょうど両肩の辺りに噛み付こうとした。
が、シルバはそれを難なく止め、逃げられないようにしっかりと掴んだ。
「アギト、目を覚ませ!お前は戦いを望むような奴ではないはずだ!」
五分と五分、否。実力は完全にシルバが上回っていたもののアカラとの約束、そしてアギトの言葉、自分自身の覚悟…全てを果たすためにシルバはギリギリの戦いをし、一瞬の隙を伺っていた。
「物好きだねぇ…こんな状況でまだそんな夢物語が言えるか…シルバ、俺をよーく見ろ。俺はお前を殺したくてたまらないんだよ。お前もなぁ…そうだろ?シルバ…」
アギトは自分が予想していたよりも強い力で押さえられ、身動きができないことに少々驚いていたが、それでもその歪んだ笑顔でシルバを捕らえてきた。
「確かにそうだ。俺には戦う理由も無かった。ましてや他の奴らの生き死になんざ考えたこともなかった。アカラや…お前と出会うまではな…」
静かに語るものの、一瞬でも気を抜けば振り払われるほどの力で抵抗するアギトを押さえつけながら自分自身の確信を見出した言葉をそのままアギトへとぶつけた。
「お前は確かに言った。戦いたくない、と…お前のその言葉に嘘偽りは一切なかった。それは今のお前が偽りである何よりの証拠だ。」
痛みや疲労とは違う、何かの苦痛からアギトの顔は苦虫を噛み潰したように、その歪みは笑顔から辛さへと姿を変えた。
「偽善…だよ…お前のその薄っぺらい約束なんかもお前が本気を出せば消え失せる…お前が偽りだ…そして俺が本性。お前の中にもある血を求める化物だ…」
「嘘だな。お前のその言葉はあのアギトが言っていたような重みがない。薄っぺらな舌先三寸の言葉だ。」
間髪いれずに反論するシルバの顔を見て、さらに顔を歪めるアギト。
「なぜそう言い切れる?所詮は同じ!誰かを殺してなきゃ生きられない脆い存在なんだよ!俺もお前もな!!」
「なら…」
シルバはそう言い、視線を少し下に落として静かに、しかし確かな確信と絶対の信念の篭った強い言葉で
「お前がそのネックレスをつけてこの戦場に来るはずがない。俺が話しかけいるのはこんな偽物じゃなく…本物の…お前の中にいるアギトだ!」
シルバがそう言った途端、今まで大人しく抵抗していたアギトが急に激しく抵抗した。
「畜生!畜生畜生畜生ー!!離しやがれ!!」
流石にシルバでも喋れるほどの余裕がなくなり、必死に暴れ狂うアギトを押さえていた。
が、そんなシルバに何かがぽたりと一雫落ちてきた。
それは一つではすまず、ぼたぼたとシルバに雨のように降り注いだ。
「離しやがれ!!……でなきゃ……俺はお前を殺さなきゃならなくなるんだよ!!」
その雫は間違いなくアギトの涙だった。
止めど無く溢れ続ける涙、涙…それはまさにアギトの意識が呼び戻された証拠であったが…それは同時にアギト自身に最悪の真実を告げたサインでもあった。
「気がついたんだな?だったらもう何もしなければいいだけだ!もう終わりだ!」
暴れる力は次第に弱まり、代わりにアギトのすすり泣く音が聞こえ始めた。
「終われないんだよ…俺が今の今までやって来たことを全部理解しちまったんだよ……そして…俺は今回、お前を殺すためにこの村にやってきたんだ…なのに……関係のない奴等まで…」
力なく語られるその言葉には今までの自分が行なっていたであろう過ちを悔いる思いがつまっていた。
「お前が気にすることじゃない。薬のせいだ。お前はもう戦わなければいいだけだ。」
「出来ない…それは出来ないんだ…終われば本部に戻る…戻ればまた…薬を飲み何処かの島へと侵攻する…今の俺には…到底耐えられない…」
「戻らなければいいだけだ!お前がくれたネックレス(これ)は友情の証なんだろ!」
シルバがそう訴えかけるとアギトは震える小さな声で
「出来ないんだ…逃げれば…守らなければいけない人を守れなくなる…」
「何?どういう…」
シルバが聴き直そうとした時、アギトはもう一度震える声で
「シルバ…お願いだ…僕を…殺してくれ…」
アギトは…はっきりとそう言った。
次の瞬間激しく暴れ、完全に気を抜いていたシルバを遠くへ放り投げた。
「うおぉぉぉ!!死ねぇ!!シルバぁぁ!!」
そのままシルバへ向かって真っ直ぐに突っ込んできた。
アギトがシルバに襲いかかる瞬間に……その左胸をシルバの赤く鋭い爪が貫いていた…
真紅の爪はアギトの血を浴び、より鮮烈に紅く染まった。
次第にその巨体は力を無くし、緩やかに崩れていった。
「ありが……とう……」
地に倒れ伏せるギリギリのところで、アギトは最後にそうシルバに伝えた。
鮮血の湖に横たわるその体から自然に抜けた己の爪を、その爪に伝わる赤い雫を見て…シルバは静かに立っていた。
「隊長がやられた!お前ら!全員退却だ!!」
その一部始終を見ていたアギトの隊の隊員がそう叫ぶと、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げ去ってしまった。
エンやその場から逃げようとしていた逃げ残りの人達はさった脅威とシルバの活躍に歓声を上げていた。
が、シルバは何処か遠くを見つめるような顔で立ち尽くしていた。
その表情には悲しさや虚しさ、ましてや怒りや憎しみ、そういった表情すら読み取れない、いやそういった表情が一切無い、無機質な顔だった。
だが、その歓声にも引けを取らぬ大きな鳴き声がその一体に響き渡った。
それはもちろんアカラ。
誰よりも二人の無事を祈り続け、そして…その願いは叶わなかった。その悲痛な思いが堰を切って溢れ出していた。
シルバはすぐにアカラの元に歩み寄ったが、アカラは一向に泣き止む気配がなかった。
「アカラ…すまない…これ以外に方法がなかった。」
「なんで!?そんなはずないよ………そんなはずないよ!!シルバは強いのに!!なんで…なんで………」
溢れ出る涙を拭いながらアカラは必死にシルバに訴えかけたが、それでも抑えきれない感情にそれ以上の言葉を遮られた。
―――――
村が襲撃を受けてから数時間後、村はずれの森の奥にシルバは島の人達と訪れていた。
今回の襲撃により命を落とした多くのポケモンをその場所に一人ずつ埋めていたのだった。
敵も村人も問わず、その場所に埋葬され、黙祷を行い、今は死者の遺族や思い人が各々の墓の前に集まっていた。
シルバはその始終、アギトの墓の前に立ち尽くし、誰も居なくなり空が夕日に染まるまでそこに立っていた。
「シルバ殿、まだここにいたのですか。ここは海辺だ、潮風に長く当たれば風邪を引いてしまいますよ?」
シルバに声をかけたのはエン。恐らく最後に見回りに来たのだろう。
「この墓は…確か敵の隊長のアギトというものでしたね。」
シルバの横からシルバが目の前に立つ墓を見てシルバにそう話しかけたが、シルバは一切喋らなかった。
「この世に生あるものは母体樹より生まれ出て、全ての命は世界樹へと還っていく…死者の魂に善人も悪人もないのでしょう。彼も生まれ変われば善人として生きていきますよ。あなたが悔いる事ではない。」
エンは最後にシルバにそう告げるとそのまま静かにその場を去っていった。
『ありがとう……アギト、お前は本当に最後に告げる言葉はそれでよかったのか…?』
シルバは最後にアギトが言った言葉を思い出し、もう一度自分自身に問いかけていた。
『いいはずがない…本当はこんな救いかた以外にも選択肢があったはずだ…なのに…俺はどうしようも出来なかった…』
シルバは改めて自分という存在の脆さを噛み締めながら、様々なことを考えていた。
「シルバ。勘違いするなよ?お前は間違いなくこの世に敵など存在しない。お前は文字通り最強だ。」
そんなシルバに何処からともなく声が聞こえてきた。
「カゲか…悪いが俺は最強などではない…人一人救えぬ脆い存在だ。」
シルバがそう言うとカゲは笑い
「脆い?それは違う。お前に怪我を負わせられるものは存在しない。そいつを救えなかったのは強すぎるからだ。力はな。」
そう言うとカゲはシルバの背後から正面の方にまわり、シルバの目を真っ直ぐに見て
「お前に足りないものがあるとすればそれは心だ。今のお前には感情というものが感じ取られない。笑わない、泣かない、怒らない。それは感じることができないからだ。」
そう告げた。そしてカゲはそのまま続けて
「もし、お前がこのまま旅を続けるのなら気をつけることだな。いずれはお前が災厄の種になり、お前を取り囲む守ろうとしているものを全て根絶やしにするだろう。今のままならな…」
そう言うとカゲはフッと姿を消し、落ちていく日の暗がりでできた木々の闇の中へと溶けていった。
「今のお前は間違いなく奴が言った通り血を求める化物だ。人として生きるのなら心を手に入れるしかない……お前にできるかな…?……」
最後にその言葉を残して…
『心を…手に入れる…それはどうすればいいかわからないが…一つだけ決めた…』
シルバは心の中でそう呟くとシルバはネックレスを外し、アギトの墓にかけた。
「アギト。そいつは俺の半身だ。半分はお前の所に置いていく。だから…この先どうなるか分からないがそこで見届けてくれ。俺は……俺の全てを守る。約束だ。」
シルバが最後にアギトの墓にそう語りかけるとちょうど日も沈み、海岸線に赤い帯を作っていた。
それが消えるその瞬間により紅く煌き、その光はそのままシルバの目の前で具現化した。
「あなたの思い、確かに受け取りました。彼は残念ですが、それでもその選択に間違いはありません。あなたのこれからの決意、空から見守らせてもらいます。」
サナスはそう言うと以前アイルからもらった石版に似た物をシルバに渡した。
シルバがそれを受け取ったのを確認するとサナスは燃え上がり、日の沈んだ場所へと消えていった。
石版を覆う薄い紫の光がシルバを包み、より一層輝くとシルバの中に何かの記憶が蘇ってきた。
―――――
「すまない……本当はこんなことを………べきでは……」
その悲しげな表情を見てシルバは出来る限りの笑顔を作り
「いいえ、気にすることではありません。私に出来ることをするだけです。」
そうその誰かに返していた。
「ありがとうシルバよ……その笑顔に……われた…ろう…」
―――――
以前よりも鮮明な記憶だったが、それでも未だ曖昧で、その相手は誰なのかすら思い出せない。
まだ記憶は断片的で、以前の物と繋がっているとも思えなかった。
だが、それでもシルバは決意した。
記憶を取り戻すことが平和に繋がるのなら…考えるまでもない。と…
アギトの墓に目をやり、心の中でもう一度固く決心した。
「やっぱりここにいた。シルバくん、アカラちゃん達が心配してたよ。早く帰りましょ。」
声の主はチャミ。墓の前に立つシルバに声をかけ、一緒に帰るように促した。
「ああ、戻ろう。」
シルバがそう言い、歩き出そうとすると
「その前に!一回ニッコリ笑って!そんな張り詰めた顔じゃアカラちゃんも落ち着かないよ?ほら!ニッコリ♪」
そう言いシルバに笑うように言ってきた。
「悪いが…どうやって笑えばいいのか分からない。いつかは笑える時が来るように努力する。」
作り笑いをしてシルバに笑いを誘おうとしていたチャミにシルバは自分の事をそのまま伝えた。
するとチャミはとても悲しそうな顔をして
「嫌なのよ…もう…」
そう言い、不意にシルバに巻き付いた。
「あんな顔をしたあなたを見るのは…もう……嫌なの…もう…見たくないの…」
その体は小刻みに震えていた。
「分かった。チャミ。君にここで約束しよう。いつか笑顔で君に話しかけると…」
だんだんと暗くなる森の中で、シルバはそう、チャミに約束した。

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IP:125.13.184.58 TIME:"2014-12-28 (日) 00:03:23" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%B3%B6%E3%81%AE%E7%AB%A0" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"

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