ポケモン小説wiki
鰐を拾ってみた の変更点


書いた人:[[RED]]

警告
・BLです
・ポケx人です


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 目が覚めると、鋭い牙と長い舌が真っ先に見えた。



『起きろ、起きろっての』

 布団の中に包まっている男を力強く揺すりながら、人間には鳴き声しか聞こえない声を発する。
 暫くしてようやく目を開け、揺するのをやめたと思ったら。

「んー……あと10分」

 ベタな台詞を吐きながら、もう一眠りしようと毛布を顔まで近づけ、温もりを逃さないように毛布の中で丸くなった。
 毛布の動作に気付いて振り返って見れば、夢の世界へとまた落ちようとしている者が約一名。
 こうなったら奥の手だ、と少し唸ると、今度は毛布をわし掴んで、思いっきり引っ張り上げる。

「むぅ……もう食べられなー……」
『……』

 またもやベタな台詞を吐く。
 流石にネタが切れ始めたのか、もしくはポケモン自身がキレたのやらか。
 口の周りを舌で舐め、わざとらしく息を荒げながら人間の顔へと向け――



「ごめんなさい、もう寝坊なんかしませんから」
『その台詞、一体何回目だと思ってるんだ?』

 ようやく目を覚めた人間のまず第一声が、ポケモンに向かって対する抗議。
 勿論、人間はポケモンの言葉を理解することは出来ない。これは一応重要である。
 何故起きて早々抗議をし出すのか、それはポケモンが人間の顔へ今直ぐ噛みつける体勢を取っているから。
 しかし本気でやろうとはしない、ポケモン自身は単に起こす手段として使っているだけ。
 だが人間にとってはある意味死活問題……かもしれない。

「わ、顔に向かって声出すのやめろ! すんげぇ獣臭……あ」

 一瞬、人間の耳元に違和感。
 それと同時に、目の前が真っ暗になっていたのが更に真っ暗になり、頭が自然と真っ白に収められていく。
 これはヤバイ、食べられる。
 それしか思考が働かず、冷や汗を掻いているのが自分でもわかる気がした。

『その顔、すぐにでも噛み切ってくれる』
「や、やめろぉ! ごめんなさい! ごめんなさい! 獣臭いなんてもう言わないから! お願いだからそろそろ口離して、お願いだからああぁぁッ!!」
『……ふむ』

 突然ポケモンは何かを思いついたのか、顔がニヤける。
 人間の言う通りに、まずは口を離す、そう、離した……そこまでは良かった。
 安堵している人間に追い討ちをかけようと、長い舌を人間の顔へと向け、思いきり舐め上げた。

「ひゃっ!?」

 流石人間、感応だけは効果は抜群だ。
 最初の攻撃の反応に思わず顔がニヤける。
 このままやってしまおうか、と思うが今は朝、流石にポケモン自身も起きて早々とやるのは気が滅入るのか諦めた様子。
 代わりに最後の一撃をかました。勿論攻撃はしたでなめる。

「うひゃあぁ!? や、やめにゅわっ!!」

 こうかは ばつぐんだ! 人間は 倒れた!
 ポケモン自身は結果は重畳、しかし気を失ってまた起こすのに時間が掛かったのは別の話……。



「いい加減にあの起こし方やめないと、朝だけじゃなくて1日中メシ抜きにするぞ?」
『げぇ、それだけは勘弁してくれ……と言うとでも思ったか?』
「なんだ? 怖気づいてるのか? オーダイルの癖して小心者だなぁ」
『……いざって時は非常食扱いにしてやる』

 太陽が真上に昇りかけている中、朝食、ではなく昼食を口にしながら、意思疎通の出来ない会話を繰り広げている。会話と呼べるかわからないが。
 ちゃぶ台で食事を取っているので、人間とポケモンの食べる場所は同じである。
 とはいえポケモン――オーダイルとちゃぶ台との差はそれなりにあるせいか、猫背にならないと食事を取り辛いというデメリットがあるだけだが。

『なぁ主人よ、俺の体系からすればあのメシの量はいくらなんでも少ないと思うんだが?』

 昼食の量に不満を抱いているのか、食器を手洗いしている人間に対し食事の抗議を始めようと。
 しかし人間に聞こえてくるのは唸り声、後はポケモンの表情等でしか行動を知る術が無い。

「ん、なんだ? 暇なのか?」
『……もういいや』

 大抵のポケモントレーナーはポケモンとの意思疎通は出来るには出来る。
 だが今、食器を洗い終えタオルで手を拭いている人間はその辺りが鈍感過ぎるのか、はたまた1つの才能なのやらか、意思疎通は全く出来ていない。
 溜息をつきながら床を見つめていると、人間の足音がオーダイルに向かって近くなっていき、ふと顔を上げればお菓子片手に仁王立ちしている人間の姿。

「いやぁ、このポテチの賞味期限が今日まででさ。 デカイサイズ選んじまってて一人で食うのもなんだし、一緒に食おうぜ」

 唐突な展開に、思わず呆然としてしまう。
 対してポテチ片手にオーダイルの横にいつも通りのように座り、当たり前のようにオーダイルに体重を預けながらポテチを開いた。

『……ご、ご主人、それだけはよしてくれ……っ』

 人間が寄りかかってきた時、いつも反応してしまう癖が出てくる。
 勿論人間は気にしていない、しかしオーダイル自身は死活問題……なんだとか。

「ん? 食わないのか?」
『……く、食う』

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 ある日の事。
 運悪く雷雨に巻き込まれ、鞄だけでは凌ぎようもない中、目の前に土手が見えて来てすぐさま土手へと避難。

「うぇ~、買ったばかりの服と鞄がびしょ濡れ……これじゃあ明日の合コン無理じゃねぇか……?」

 平日の夕方、その上田舎に近い町、人通りは地元の住民が大半で車は隣町へ行くための移動手段しか滅多に見ない。
 相当雨にやられた服の部分を思いきり絞って、絞れるだけ絞り少しは落ち着いた頃にようやく溜息をついた。
 このまま雷雨がやむまで壁にでも寄って少し増水しかけている川でも見ながら落ち着くか、と思いながら前を向いたまま壁へ。
 ……壁独特の、ひんやりとした感触がいつまでたっても伝わってこない。
 それよりも前に、ゴツゴツとする感触にリズム良くなる変な音。

「……?」

 少なくとも感触からして人間ではない、となれば後はポケモンという選択肢が残るのみ。
 もしも狂暴なポケモンならば、一瞬背筋が凍りつきながらも、恐る恐る、ゆっくりと後ろを向いて。

「……オーダイル?」
『……なんだ? さっきから俺の前に立ち尽くしやがってよ』

 狂暴なポケモンといえるにはいえる。
 青い鱗にあちらこちらについている赤い鶏冠、長いとは言い過ぎだがそれなりの長さの尻尾。
 所謂初心者ポケモンの最終進化系で、種族名はオーダイル。
 ここまではなんとか頭が回った……途端。

(な、なんでこんな奴がこんな所に!? やばい、これはヤバ……ん?)

 頭が真っ白になりかけようとした途端、ふとオーダイルの胸元に何かが乗っている。

「……拾ってください?」

 木の板に、恐らく油性ペンで書いたものかもしれない、文字通りの言葉が書かれていた。
 しかもご丁寧にオーダイルの首元へと丁度ぶら下がるように紐が付いている。

『なんだよ? さっきからじろじろと俺のこと見やがってよ……』

 先程からずっとじろじろ見られていたのが癇に障ったのか、牙を人間に見せびらかすように、目付きも鋭く睨むように。
 オーダイル自身には威嚇の特性はない、しかし相手を鈍らせる程度の威嚇なら全部のポケモンは使える……単に威嚇と特性の威嚇は別物というものか。

「いっ……! お、怒るなってば! 俺何か悪いことでもしたか?」
『したよ。 思いっきりな』

 大方予想通りにびびった人間に対してなのかどうか、溜息をつきながらオーダイルは下へと顔を向ける。
 ある程度人間の緊張も解れてきたのか、何故オーダイルがこんなところにだの、捨てられたのかだの、小声で喋っているがオーダイルには聞こえてしまっていた。
 
「んー、金の方は……まぁ、なんとか持つかね。 後はボールがあればいいんだけど……」
『……?』

 ふいに顔を上げてみれば、何故だか財布に相談をしながら独り言を呟く人間。
 何をやっているかは全くわからない、しかし何故か、オーダイルの、ポケモンとしての第六感が反応しかけていた。
 考えてばかりで周りを見損なっていたらしく、気付けば目の前にいた人間がいなくなっていた。
 だが気配はある……真横に。

「よっと。 あ、悪いな、雨が止むまで暫くここにいさせてもらうわ」

 返事を待たずに壁に寄りながら座り、一度オーダイルを一瞥した後雨の様子を窺う。
 土手に入ってからそこまで時間は経ってなく、まだ強い雨に時折雷が鳴る。
 上に意識を向けてみれば、車が通る音と水飛沫が、下まで響いていく。
 
「なぁ」

 オーダイルの方を向かずに呆然と上を見上げながら。

「なぁ、行く場所がないんだったら、俺ん家に来ないか?」

 その一言が、ぼうっとしていた頭を急激に覚醒させてくれる。
 無意識に人間の方へと顔を向け、それに気付いたのか人間も同じように顔を向いて。

『は、はぁ!?』
「いや、別に強制するつもりはねぇけどよ。 お前、その板ぶら下げたままずっとここにいてみろ? メシは追いといて、大の大人がお前を見つけちまったら、即刻施設送りだぞ?」
『……俺、ここに居座ってからもう1週間は経つけど、メシはたまに来る人間のばあちゃんから饅頭貰えるし、不便なことなんてないが』
「そうかそうか、やっぱ施設送りは嫌かぁ……まぁ、誰だってそうだよなぁ」
『おい』

 姿勢を戻し、腕を組んで何度も頷く。
 勝手に同情されているとしか見えないが、実際は二人とも考えている事は全く逆である。
 最早どこに突っ込めばいいのかわからなくなってきた、というようにオーダイルは呆れたような視線を人間に送っていた。

「なんだ? 捨てられた前のご主人様の事を思い返してるのか?」
『おい、なんでそうなる。 大体、アイツはもう知ったこっちゃねぇよ……あんな人間』
「お、おいおい、怒るなってば……ん?」

 ふと外へと視線を向ければ、既に雨は止み、夕日をバックに鳥ポケモンが大空を翔けていく。
 人間もオーダイルも、暫くの間黙り込み、夕日に見惚れていた。

「綺麗だな……そんでもって、グッドタイミング」
『……は?』

 片手を床につかせながら体重をかけて立ち上がり、ズボンについた汚れを落としながら呟く。
 唐突な事、そして何を言っているのかわからない、それが重なったからかオーダイルは素っ頓狂な声を上げた。

「オーダイル、少し待っててくれないか? まだフレンドリィショップが閉まる前だし、急いでお前の分のモンスターボールを買ってこないとな」
『なっ……!? おい! 誰がお前のポケモンになるって言ったん……もういねぇ』

 先程の人間の姿形などもう見えなく、恐らくはフレンドリィショップへと一直線に走って行ったんだと思ってしまう。
 そうなると、もうあの人間からは逃れられないと悟ってしまったオーダイルは、酷く溜息をつきながら、静かに揺らぐ川をじっと見つめていた。

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はしがき

遅筆で本当に申し訳ありません……くそっ、暖房さえあれば!!(
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なにかあればどうぞ
- 実際にありそうですね。期待。
―― &new{2010-02-07 (日) 04:03:21};
- >>名無し様
コメント有難うございます!
実際にありそうというか実際に怪獣ポケ相手なら一度はこうされたいと思った私はきっとえm(ry
――[[RED]] &new{2010-02-08 (月) 23:27:22};

#pcomment

IP:125.13.214.91 TIME:"2012-08-07 (火) 18:32:57" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E9%B0%90%E3%82%92%E6%8B%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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