ポケモン小説wiki
魅惑なあたしの初めての恋 の変更点


高校充実生活記☆1つ目
**&color(#e06bad){魅惑なあたしの初めての恋}; [#xa11d201]


作者:[[トランス]]

まとめページ:[[高校充実生活記☆]]


※この作品は所々微弱だったはずが、結構な量の&color(red){ギャグの要素が入っています};。苦手な方は↓よりお戻り下さい。

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あたしはツタージャのグレサ。高校一年生。もう大分高校生活にも慣れてきたんだけど、毎日毎日同級生の男共に付きまとわれてて。もう疲れた〜ってカンジ。ま、あたしを見て振り向かなかった男は今までいなかったけどね!

凍り付きそうな寒空の下、今日も学校に登校するあたし。まったく草タイプのあたしにこんな仕打ちをするだなんて、学校ってひどいトコよねっ!冷たい風が吹く度にそんなことを思いながら、あたしは隙間から風が入らないようにマフラーを引き寄せる。このマフラーカワイイでしょ、あたしの身体の緑色に合わせてお兄ちゃんが買ってくれたんだ♪あっ、お兄ちゃんはあたしと同じ高校の3年生。すごく優しくて、頼りがいのあるお兄ちゃんなの♪
そうこうしてる内に学校にとうちゃーく!お兄ちゃんのマフラーのお蔭で、何だか何時もより寒さ感じなかったかもっ!後で会ったらお礼言わなくっちゃ!

「あ!グレサちゃんが来たぞ!」「うおぉぉ!グレサたんだーッ!!」「グレサLOV(ry」
うわっ…でた。校門を通った途端この有り様。この寒い中わざわざ外であたしを待ってる輩がいるのよねぇ。気持ちはウレシーんだけど…あたしを取り囲んでぎゃーぎゃー騒ぐのと、そのイヤらしい顔をあたしに近付けないでほしいのよね…。それに、毎日いるから流石に鬱陶しい。帰れ。それか教室もどれ。
まぁコイツらの対処はもう慣れたもの。手を振る代わりに葉っぱのついた尻尾を振ってやってかるーくあしらってから、足早に校舎に入る。私立校だから冷暖房あって、冬場は取り敢えず快適なのよねー。ふー、暖かーい。

「うほぉぉ、その暖かそうな表情!サイコーだぁー!」
目を細めて一息吐いてる処に後ろから粘着質な声。…コイツらまだいたのか。前は通り過ぎた後は何もしてこなかったのに、最近は校舎に入っても着いてくるのよね…あたしがオタク丸出しのアンタらにいつか振り向くとでも思ってんのかコラァ!?おっと失礼♪取り敢えず無視して、四階の教室に向かう為に階段をのぼる。足が短いあたしには優しくない、一段一段がヤケに高い階段。一階分上がるだけでも汗だくに成る程疲れる。冬はまだマシだけど夏は汗と一緒に身体が溶けて床に染み込んじゃいそうになる。
バリアフリーじゃない訳じゃなくて、エレベーターはあるんだけど…なるべくのるのは控えてる。なんでかって?ロリコン教師がいやがるからよ。アイツあたしに目をつけてるみたいで、わざわざあたしの毎日の登校時間と下校時間調べて、エレベーターに乗ってくるのよ!四階に用なんて無いくせに二階の職員室からっ!エレベーターは遅いし、乗ってる間ずーっと話し掛けてくるし、時間ズラしても何故かいるからもう気味悪くって…とてもじゃないケドエレベーターには乗れないの。
アイツはもう結構な年だから、流石に階段をのぼってまであたしを付け回そうとはしない。その代わり階段だとこうしてオタク軍団が後を着けてくるようになっちゃったから、朝っぱらからもう憂鬱になるの…はぁ、誰か助けて…

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「はぁ…はぁ…つ、ついたぁ゛〜」
最後の一段をのぼりきって、あたしはその場にへたりこむ。一週間に5日間登校してるとはいえ、この試練には慣れることがない。後ろでオタク陣が「おめでとぉー!これでグレサたんは248回階段をのぼりきったどー!」とか言って騒いでたけど、アンタらに言われても達成感の欠片もないわ!というか248回って何よ、区切り良くもないのに喜ぶな。

「おーほっほっほ、グレサったら相変わらず無様ですこと。」
げっ、まーた面倒なのが出てきた。オタク共が騒ぐから、階段の正面にある教室にはあたしが来たのが丸聞こえ。そのせいで、最近コイツが出てくるんだよねぇ。やんなっちゃうわ。あたしはうつぶせーの状態から身体を起こす。何とか両手をつけたまま膝立ちになって、ソイツを見上げる。
口元に手を当ててあたしを見下ろすのは、腕に空を飛ぶための膜を持ち、黒と白の体毛に黄色の毛が見え隠れするエモンガの女、エリカ。あたしとは幼稚園からの付き合い。一人っ子な上に昔周りからちょーっとちやほやされ続けたせいか、お嬢様気取りの自己中娘に育った哀れな女。可愛げを持たせたいのか何なのか知らないけど、右耳に赤いリボン巻いてるわ。

「なさけないですわねぇ、床に這いつくばっちゃって。それでもアタクシのライバルなのかしら?」
「…」
そう、なんか知らないけどコイツ、あたしを勝手に敵視してライバル扱いしてくるのよね。あたしとアンタじゃ格が違いすぎるっていうのに…。この学校にも、推薦で楽勝だったあたしと違って、試験でギリギリ合格してきたのよ?体力も毎日階段のぼりおりしてるあたしに対して絶対エレベーターだから、飛べること以外あたしより優れてる面はないのよ。
なるべく目を合わさないようにしながら無言で立ち上がる。そしたらとたんに異臭が鼻を突いた。ぬわっ、なにこの臭い!こんな香水付けてどうするつもりだ!?オタク共でさえ引いてるよっ?こりゃスゴいことだよ、エリカ賞賛もの!良かったね、ほらさっさと自分の巣に帰れ。
…と、兎に角コイツにまで一々付き合ってたら身体がもたない。あたしは何も見てない何も見てない何も見てない何も…とか言い聞かせながら横を素通りしようとするけど…

「待ちなさいですわ!何か言ったらどうなのですか!?このまま逃げるようじゃアタクシのライバルから外しますわよっ!」
そう簡単にいかないのがエリカなわけで。九割がた予想してたけどね。こんなヤツでも幼馴染みなんだし。というか、外してもらえるならこのまま教室に直行したいわよ。直行は出来ないけど。あたしの腕を掴んだ手を見てみると、趣味の悪いネイルまでしてる。派手さばっかりに目がいくとモテないわよ?心の中でそんなことを呟きながら、あたしはエリカに目を移す。悪いヤツじゃないんだけど、この性格と口調とセンスは何とかしてもらいたいわ。

「エリカ」
「?」
あたしはエリカの顔を呆れ混じりの表情で見据える。確かにエリカは嫌みなヤツだけど、こんだけ長い付き合いしてんのはコイツだけ。オタク共にまで引かれてるのは流石にカワイソウだから、手助けくらいしてやるか。それで話を終わらせて、教室に突っ込む。(皮肉なことに教室は隣同士)そう計画して、1つ溜め息を吐いて気持ちを楽にすると、怪訝な顔してるエリカにさっきから気になってたことを告げてやった。

「頬っぺたにごはんつぶついてるわよ」
「!!!!」
ずっと気になってたのよねぇ。おじょさま気取りするんならそのくらいちゃんとしてなきゃ。

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エリカが顔をマトマの実みたいに真っ赤にして手を口に当てたのを横目に見ながら、あたしは一気に隣の教室に駆け込む。教室と廊下の境目で、あたしの俊敏な動きに着いてこれなかったオタク共が悔しそうに騒いでた。他の教室なら出入りは授業中でさえも楽々だけど、ウチの担任は所謂鬼教師らしいからオタク共も入ってはこれないみたい。別のクラスのヤツが入って見付かったら最期、先生の秘密授業を受けさせられるらしい…。何されるのか分からないけど、経験者はガクブルで還ってきたとか…あたしはどうってことないけどね♪
ってなわけで漸くむさ苦しい男の壁から解放された。あたしはほっと一息ついて自分の席に腰掛け…られない。なんだアイツらあたしの席に座ろうたぁいい度胸してんな。あたしはズカズカとあたしの席に座ってる男子勢に歩み寄ると、強めの口調で注意する。

「ちょっと退きなさいよ。そこ、あたしの席。」
あのオタク共だったらズキューンだの萌え死にーだの言いながら退くようなセリフ(らしい)。けどソイツらはあたしを見たかと思うとゲラゲラ笑って全く退こうとしない。
あたしと同じクラスの男子は何でかあたしに萌え萌えになってるヤツがいないのよね。何故か中々のイケメン揃いだし。まぁ引っ付かれないのは嬉しいけどさ、こんな風にあたしに&ruby(言いなりにならない){興味を示さない};のは気に入らないわねぇ…。でも朝からあんだけ付きまとわれたしなぁ…でも疲れたから座りたいし…仕方ないか。
あたしはとりあえず座りたかったから、コイツらを意地でもどかさなきゃならない。でもこういうガキは怒れば怒るほど逆効果になるだけ。あたしがそんなバカなことをするなんてもってのほか。そもそもやるべきことが根本的に違っちゃうわ。


あたしは“止めさせよう”としてるんじゃない。

“従わせよう”としてるのよ。


あたしは座ってるあまちゃん…全部で3人のガキ共に一度目を向けると、ソイツらに向けてウインクする。あたしの可愛らしさが瞼を閉じた途端に弾けて、男共を魅了する光の粒になってヤツらに飛んでいく。光に包まれたかと思えば、3人は既にあたしの足下で土下座の体勢になって、声を揃えて『すみませんでした、グレサ様ッ!!』と叫んでた。

これが“あたしを見て振り向かなかった男はいない”真相。あたしの『メロメロ』にかかればどれだけ頑固な男だってちょちょいのちょいってワケっ。その気になれば『メロメロ』を使ってこの学校の男共全員虜にすることだって出来ちゃう。しかも、虜になった男はあたしの言いなりになるの。あたしが何かを頼めば何も言わずこなしてくれる。つまりは、この学校の男共は既にあたしの配下に落ちてると言っても過言じゃないのよ。

「ふふんっ、解ればよろしい。もう自分達の席についていいわよ」
あたしがそう言えば、3人は『かしこまりましたぁッ!』って叫んで素直に自分の席に戻ってくれる。さっきまで生意気にしてた3人を一瞬で従わせてる。その事実にあたしは幸福を感じた。あたしの色仕掛けに掛かれば、男なんてチョロいもんよ!
っと、丁度チャイムが鳴る。オタク共を出来るだけ回避する為に投稿時間ギリギリに来てるのよ。全く迷惑ったらありゃしないわよねぇ。早起きしたらいいかって?…この寒い中今より早起きしたらそれこそ凍り付くわよ。
とりあえずすぐに自分の席につく。一番後ろの窓際の席だから目立たながちだけど、あたしの魅力はそんな程度じゃ曇らないわっ!…あれ?隣に机、無かったはずだけど…。あたしの席は人数の都合で隣の列より1つ後ろになってる。だから隣は誰もいない筈なんだけど…昨日までなかったそこに、机が置いてあった。何で?

「よーっすグレサ!また随分と遅かったなぁ!」
あたしが隣に目をやっていたら、前の席にいるあたしの親友、水色と黒の身体に、尻尾の先に四芒星形の飾りがついたポケモン、コリンクのアリルが話し掛けてきた。

「仕方ないじゃん。あたしは色々と大変なのよ。…っていうかさ、なんでここに机あんの?」
ケラケラ笑って呑気そうにしてるアリルを見て、あたしは溜め息を吐いて頬杖をつく。逆の手で隣に置かれてる机を指差して、アリルには期待できないけどとりあえずダメ元で聞いてみた。そしたら今回はアタリだったらしい、アリルは椅子に掛けてた前肢を頭の後ろに回して机に寄り掛かって、後ろ足を投げ出すようにして座りなおすと答えた。

「なんだお前知らなかったのか?今日転校生が来るんだとさ。何でも、田舎出の男だとか…」
「ふーん…男ならまぁ別にどうでもいいわね。問題起こすようならあたしの虜にしてやればいいし」
アリルの話のお蔭で机の謎は解けたケド、特に一大イベントとかじゃなかった。転校生が来るのに相手がどんなヤツか気にならないのかって?ふんっ、女なら兎も角、男って分かってる時点であたしの興味は無くなるの。どんなヤツだろうと、あたしには『メロメロ』がある。何時でもあたしの思い通りに出来る雄が一匹増える程度で、あたしは興味なんて持たないのよ。

「おまえはなぁ…ま、いっか」
「?」

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あたしの言葉を聞いたアリルは呆れ顔をして何か言おうとしたけど、途中で思い立ったのか止めた。あたし何かおかしなコト言ったかな?あたしが首を傾げていたら、鬼教師のご登場。アリルは「やべっ」と慌てて前を向いた。鬼教師はバクオングの…えと、デッパだっけ?いやちがうちがう、デッファ先生だわ。通称『顔面爆音機』。身体の半分以上が顔になってて、物凄い声で怒鳴るから。
先生は教卓の前まで行くと両腕を思いっきり叩き付けて、見て分かるほど大袈裟に息を吸い込む。その途端、あたしを含めて防音の特性を持ってないヤツらは一斉に耳を塞いだ。

「&size(20){ごうれーーいッ!!!};」
「&size(13){きっ、きりつれい};…」
…今日の日直、上手く耳を塞げなかったみたいね…。ワンテンポ遅れて、小さい声で号令を掛けたと思ったら、立ち上がってふらふらしてた。早く終わらせたかったみたいで、起立と礼一緒になってたわね。規律令って何よ。と、あたしが心の中で突っ込みを入れると、顔面出っ歯爆音機が声を張り上げた。え?何だかちょっと違う?別にいいのよ。

「では!今日1日の予定を言うぞ!と言いたい処だが!その前に今日からお前達に仲間になるヤツを紹介するぞ!!」
早速本題に入ってきたわね…。アリルが言ってた通り、転校生がいるみたい。顔面(長いから省略)が廊下を向いて「はいっていいぞぉぉお」って怒鳴ったら、その2、3秒後にドアがちょっと開いて、転校生らしきブイゼルが顔を出した。…何か、ぱっとしない顔ねぇ。普通なら『`・ω・´』ってカンジになってる眉毛も『´・ω・`』ってなってるし。問題は起こさないだろうけど、つまらなそうなヤツね。
そのブイゼルは鬼教師のデカイ声にビビってるのかドアの隙間から顔を覗かせたまま入ってこない。まったく…情けないヤツね。

「&size(20){どうした!?早く入ってこい!!};」
「はっ、はいっ…」
鬼教師も中々入ってこないブイゼルに苛立ちを感じたみたいね。眉寄せてちょっと怒った顔して怒鳴った。流石にそれで、ブイゼルも慌てて教室に入ってきた。…内股でちょこちょこした歩き方、二又に分かれた尻尾も怖さからか知らないけど背中にぴったり引っ付いてる。手も前で重ね合わせるようにしてて、見るからにオドオドした、自分に自信がないタイプ。周りで見てたヤツらも隣同士でクスクス笑ってた。あたしはそんな子供っぽい事はしないから、心の中でだけどね。
ブイゼルは顔面爆音機に押されて、教卓の前に立たされる。普通ならここで先生が「今日からこのクラスの仲間になる、__だ。仲良くしてやってくれ。」とか言うのが定番だけど。爆音機は普通じゃないから、紹介から挨拶まで本人にやらせるのよねぇ。アイツみたいなオドオドしたヤツには相当堪えそうね、どうするか楽しみ♪あたしは両手で頬杖をついて、ウキウキしながらブイゼルを見た。案の定ブイゼルは黙っているデッファに戸惑って、横目でチラチラ教師を見てる。ふふふ、困ってる困ってる♪
前の席にちょいと目を移してみると、笑いを堪えてるのか肩を震わせて前肢で口を抑えてるアリルがいた。いや、まだそんなにおかしくないよアリル…。ってなカンジであたしが呆れて溜め息を吐いた処で、漸くブイゼルが決心したらしい。一歩前に出て…教卓ギリギリの距離で口を開いた。いやいや、少し下がったら?
「て、転校してきたっ、フラウといいます。みなさんっ…よろしくお願いします」
かなり恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、勢いよく頭を下げる。結果は思った通り、教卓に頭をぶつけたわ。ゴンッってにぶーい音が教室に響いた途端、暫しの沈黙。流石のあたしもあまりにも予想した台本通りに事をこなしたから、吹き出しそうになるのを必死で堪えてた。吹き出したら絶対鬼教師に何か言われるからね…。

「…ああ、フラウ。お前の席はあそこだ。グレサの隣に行ってくれ。」
「&size(13){は、はい…};」
この沈黙を破るのは鬼教師も気まずかったのかしらね。ヤケに小さな声で言うと、あたしの横の席を指さした。ブイゼルは顔を上げると顔をさっきより真っ赤にして頭にたんこぶを作ってた。どんだけ思いっきり頭下げてんのよ…。沈黙が途切れたから笑おうとしてたのに、その姿のせいで呆れて笑えなくなったわ。というか、何だかさっきから呆れてばっかりな気がする。
他のヤツらがまたクスクスしてる間をはずかしそーに進んで、ブイゼル…えと、フラウだっけ?はあたしの横の席についた。他のヤツらの視線がイタイのか、真下を見て机をめっちゃ凝視してる。何やってんだか、ちょっと注意してやろうかしら。思い立ったあたしはフラウの方に顔を少し向ける。

「&size(13){ちょっとアンタ。};」
「へ!?」
あたしは小声でソイツに話し掛けた。フラウはビクッとしてあたしの方をみた。いきなり話し掛けられたにしても反応大袈裟すぎよ…。声も大きかったから、鬼教師に気付かれないように慌てて口に指を一本立てた。フラウははっとして口を抑える。気付かれたらどうしてくれんのよ…とか思ったけど、大丈夫みたいね。さて、じゃ、ちょいと注意してやりますか。

「&size(13){あたしはグレサ。…よろしく。};」
え?何言ってるのあたし?注意しようとしたのに、何でか口は自己紹介してた。何で?フラウもキョトンとしてるじゃん。いきなり何言われるかビクビクしてたのに拍子抜けしてるじゃん。いったいなんなの?ってカンジであたしが戸惑っていたら、フラウはいきなり、控え目だけど笑顔を作ってあたしを見た。

「&size(13){ありがとう…よろしくね。};」
え?え?ありがとうって何?あたし別にお礼を言われるようなことなにも言ってないわよ?あたしは余計に頭が混乱した。
それきりフラウは前を向いちゃったから会話は終わったけど、あたしは疑問で一杯だった。注意しようとしたのに、何で…?

その時、あたしはまだ気付いていなかった。

フラウに、気が引かれていた事に。




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なんなのよ…今のあたし。まるで慣れないトコにきて緊張してるフラウに、気を利かせてあげたみたいじゃない。何であたしがあんなヤツに…ワケわかんない。男なんてその気になれば何時でもどうにでも出来んのよ?あの鬼教師だってあたしの『メロメロ』にかかればどうってコトない。あたしにとって男なんて、いつでも遊べるタダの人形みたいなモノ。そんな人形の1つでしかない、それもこんな情けなくてどうしようもないようなヤツにあたしが気を利かせた?…ありえない。今日は色々朝から騒がしかったし疲れてただけよ。そうよ、きっとそうだわ。注意すんのもダルくなって反射的にあんなこと言っちゃっただけ。机の木目を凝視しながらあたしはそう自分に言い聞かせた。
お蔭で混乱は収まったけど…何だかまだもやもやした感じがする…ダメよグレサ、グレサは何事にも動じない気高さのある強い女なんだからっ。
とにかく気をまぎらわそう。耳痛くなるけどとりあえず顔面の話でも聞…

「よし!今日の予定は以上だ!!くれぐれも問題を起こすんじゃないぞ!!」
けないじゃない!何よ!主人公が困ってんのよ!?こういう時は空気読んで、か弱いあたしに対して冷風を撒き散らす“北風爺の寒太郎((トルネロスの喩え。北風小僧はきっと関係無い。きっと。))捕獲計画”について熱く語るとかしなさいよ、この出っ歯教師!なに、デッファ!?しつこいわねッ、もうどうでもいいわよッ!!
はぁはぁ…もういいわ、KYオヤジはほっといて、アリルに予定聞いて授業に集中しよう。そうすればこんなのすぐに収まるわよ…。机すれすれに顔を近付けて穴が開くほど木目を凝視しながら、あたしは気持ちを落ち着かせる。…よし。もう大丈夫、あたしは何時もの可愛いグレサよ。この学校のアイドル…いや、お姫様よっ☆そうやって気合いを入れなおして、早速あたしはガバッと顔を上げた。目の前にはアリルの顔。アリルはどこかしら…って、アリルの顔?

「ぅっひぇ!?」
「おぉ、何だよ、脅かすなよなー」
脅かされたのはドッチよ!アリル顔近すぎ!やっと落ち着いてきたっていうのにやめて欲しいんだけど!いい歳してバンザイしてビックリしちゃったじゃないのよ…あたしともあろう者になんてことすんだか。何時もならここで一発渇を入れてやるトコなんだけど…今はさっさと予定聞いてさっさと予定で頭を一杯にしちゃいたいしここは見逃すことにするわ。

「脅かしてないわよ、そんなコトよりさぁ、今日の予定…」
「( ̄ー ̄)ニヤニヤ」
「…何よ」
「( ̄ー ̄)ニヤニヤ」
「だから」
「( ̄ー ̄)ニヤニヤ」
「ちゃんと喋りなさいよ!」
何?何なの?アリルまであたしをおちょくってんの!?幾ら親友だからって、勝手に無言でやらし?目で見ていいなんてコトないわよっ!それと小説で顔文字だけで喋らない!伝わり難くて迷惑よソレ!全く、あたしが見逃してあげたのいいコトに調子に乗ってんじゃないわよ!

「いやなー、なんか1人で机叩いたり木目凝視したりしてっからさっきからグレサ観察計画を実行してたんだが…」
「そんなの実行すんな!っていうかあたし机叩いたりしてないし!木目凝視してたケド!」
ちょっと何勝手に見てんのよ…あたしを観察するなら5分で495円よ。クーリングオフ?勿論、させないわ☆…にしてもホントなんなのよ…いい加減ニタニタしながら言うのやめないと無意識の内にしばいちゃいそう。そんなにあたしの美貌に魅せられたっていうのかしらねぇ。生憎あたしはソッチ系に走るつもりないのよね。男を好き勝手出来るからって女に色目使ったりしないわよ。あたしの美しさは誰のためとかじゃない、憧れの的になる為のドレスみたいなモノ。ま、強いて言うなら…お兄ちゃんのため?なんてね☆
ってワケで残念だけど、親友でもアリルを好きになるのは無理。第一あたしが恋なんてするわけな「お前、恋しただろ( ̄ー ̄)ニヤニヤ」



…は?( ・。・)キョトン

「 …え?何?アリル今なんてった?ちょっと考え事してたからさ、変な風に聞こえたんだけど。ワンモアプリーズ。なんなら“モウイッカイ”持ってくるし。大トロ((戦国無双での毛利元就の愛称の1つ、らしい。ポケナガにて初期のモトナリのパートナーがツタージャだった絡みによるネタ。))萌え殺してぼったくってくればいいだけだし。ジャノビーじゃなくたってあたしの美貌なら100%オチるわよ。とにかく聞き間違いである事確認できればそれでいいから。ほらほら、ねえねえネエ」


「あ、アタシが悪かったから、ムチで完全拘束すんのやめてくんねぇか…?」
…あ。気付いたらあたしはアリルをぐるぐる巻きにしてた。や、やだ、何焦ってんのよあたし。ただの聞き間違いに決まってんのにさー、別に聞きなおすほどのコトじゃないのにねぇ。ッフフ、まぁあれよ。聞き直さなくても分かりきってるケド?あたしはバカ共と違って繊細だからぁ、あえて聞き直してやるのよ。そうそう。もう一度あたしに聞いて貰えるだけ光栄と思えってコトよ。アリルは幸せ者ねぇ。周りから嫉妬されるわよ。よかったわn…

「だ、だからぁ…恋したんだろって聞いただけだろ?」


……( ゚ω゚)。

ぴろーんo< ゚ω゚)

ぱちーんo))^ω゚)

……(# ゚д゚)……。

「お前も思いっきり顔文字だけじゃねぇか…ってか何でほっぺひっぱるんだよ」
「いやアリルがそんなコト言うワケないし。夢か幻じゃなきゃ絶対ありえないし…って」
あたしは勢いよく立ち上がる。いきなりのあたしの俊敏過ぎる動きにビビったアリルはひっくり返って後頭部机で強打してたわ。というかそんなのどうだっていい!何で…どうして頬っぺたヒリヒリしてんの!?夢のハズなのに!まさか夢じゃないの!?アリルとうとう正真正銘のバカになっちゃったの!?いや…落ち着け、グレサ。問題はソコじゃない。アリルがバカになろうがあたしには関係無いもん。問題なのは…

「何で!?なんでそう思ったのよ!?あたしが恋しただなんて!!」
「いてて…あんま大声ださねぇ方がいいと思うぜ…野次馬どもが来んぞ…?」
あたしのでかすぎる疑惑に対して、頭を摩りながら顔を上げたアリルはどうでもいいコトを言った。いーから早く言えってのに…。確かに今アリルが立ててくれちゃった音のせいでクラスのヤツラがこっち見てるケド、あたしは恋なんてしてないし?べつに聞かれたってなんの問題もないわよ。聞かれてメンドーなオタク共は幸い全員他クラスだし…

「ぐ、グレサたんが恋しただってぇええ!?」
「グレサたん元祖追っかけ隊の吾輩達を差し置いて、グレサたんのハートを奪うなんてゆるせんっ、ゆるせんぞぉーッ!!」
「相手はいったい誰なんやーッ!?ちょいとカオ貸してもらわなあきまへんでーッ!?」
早!!ってかどんだけ耳いいのよキモいわねぇ!どっかに盗聴機でも仕掛けてんじゃないでしょうねぇ…。うわ、考えただけで吐き気がするわ。それに勘違いすんなっつーの!恋なんてするワケないって言ってんでしょ!

「いや、言ってるのはお前の中だけでだろ」
あーもううっさいわねアリル!勝手にあたしの心情につっこむんじゃないわよ!あんたはさっさと答えやがりなさいよおぉぉぉ!

「だ、だから完全拘束はやめ」
「いいから言えぇー!」
…というあたしの声でタイミングを見計らったみたいにチャイムが鳴った。オイコラチャイム。あんたまであたしをおちょくってんのか!?二度とビックベンのメロディ奏でられない様にしてやろうかぁ!?アリルは「ほらほらカネなったぜ」という視線を向けてきて『はなせはなせアピール』を始めたケド、ここまで来ちゃったらあたしも収まりつかない。流石に調子に乗りすぎた罰もあるし、こうなったら言うまで離さないわ。出っ歯がオタク共を一喝して追っ払ってくれたし、今が絶好のチャンスなんだから。アリルは目で訴えてきてるから、あたしもアリルをそのまま持ち上げて逆さにして左右にぶらぶらさせながら「言ったら下ろしてアゲル」って視線を向けて『言え言えアピール』をしてやった。これなら流石のアリルも答えるでしょ。わーわー叫んで喧しかったケド。

「は、はなせよぉっ!」
「だからそれに見合った行動取りなさいって言ってんのよ。でないと窓から落とすわよ」
ま、ホンキで落とす気は無いケドね♪あたしだってそこまでイカレたコトしないわよ。でも、今のは効果抜群だったようね。涙目になりながらやっと言の葉を話し始めたわ。

「だっ、だぁって、よぉ!机、見てる、とき、カオ赤く、してたり、ため息、ついてたり、してた、からさぁっ!あぁっ、あぁっ」
揺らしてたから途切れ途切れだったけど、デカイ声だったからハッキリ聞こえた。というか卑猥な声あげないでよね。今何時だと思ってんのよ。
ま、これでアリルはもう用済みだから…&ruby(・・){コレ};でも一応女だし流石にゴミ箱は可哀想ね、とりあえず後ろのロッカーに詰めとくとして…あたしは目一杯息を吸い込んだ。

&size(18){「だからそんなコトしてないって言ってんだろうがあぁぁああッ!!」};

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──一抹の沈黙の後、教科担任がドアを開けてそろりと入ってきた。多分あたしの声聞こえてたのね。別に気にする内容でもないのにホントなんなの一体。目を丸くしてあたしを見てた連中もそろそろと授業の支度を始める。アリルはというと、ロッカーに顔を突っ込んだまま力無くぶら下がってたわ。
そして、アイツはというと…


「すぅ…すぅ…」
寝てるし!いや寝てんのは別にいいケド、普通起きるでしょ!最終的にクラスのヤツラみんな見てたのに、あたしの隣でどんだけ耳悪いのよ!まず登校一日目にして超☆熟☆睡っ☆てなにっ!?緊張解れすぎよ!!それになんなのよその寝方は!?顔面机につけて腕はほうりっぱなし。トドグラーの真似!?せめて腕を添えなさいよねっ。っていうかさっきのたんこぶでバランス取れなくてぐらぐらしてるわよ!重心探せ!
も、もういいわ。周りなんて気にする必要ない。授業に集中しよう。あたしが恋なんてしてるワケない、ましてこんなへっぽこなんかに…!

一時限目は英語。担当のペラップは気まずいからか尾羽でリズムを刻むタイミングメチャクチャだケド、とりあたま((記憶力の弱いこと。三歩歩くと忘れるくらい物忘れの激しいこと。))だからそろそろ忘れんでしょ。

「…ン?オウ!エブリワン!きょーも楽しくスピークネー♪」
ほらほら。あ、言っておくケド基本サブの中のサブの名前は憶えてないから。あのペラップも先生ってコト以外は特に立ち位置用意されてないっぽいし。あたしにはカンケーないケド♪
「きょーはせんしゅーノ続きからネー。コンドはにせんしゅーかネー、ナーンテ♪HAHAHA!」

……(¬_¬)ノーコメント

「HAHA…ジ、ジャア、&ruby(無視){64};ページオープンヨ…」
なーんか耳障りな声がしたと思って黙ったらまた静寂が訪れたケド…まいっか。ってかさむっ!教室の温度が3度くらい下がった気がするわ。どっか窓開いてんじゃないでしょーねぇ…。ふと見ると、ペラペラ鳥は切なそうな表情をしながら教科書を開いてたわ。なんかあったのかしらね。あ、ペラペラって言っても薄いワケじゃないわよ?

「…ン?ハイ!エブリワーン、リピートアフターミー?」
また復活したわね。どーでもいいケド。英語なんて範囲と対策プリントさえあれば余裕だしねっ。あたし、ペラペラのコトその伝達役くらいにしかみてないし。ま、授業態度確保のためにちゃんと受けてはいるわよ。言われたとーり64を開いて頬杖をつく。頬杖は言われてない?うっさい。これがあたしの頭が一番回転する姿勢なの。あたしが準備を整えると同時に、ペラペラ鳥は片翼に持った教科書を見つつ、ペラペラ英会話を開始した。

「アイアムえーっと…ストューデント」
まず、リピートアフターペラペラする前に聞いていい?高一で習う英文じゃないわよねコレ…。それとあのカタコト何とかしてくんない?ほんっと、どうして教師になれたのかってくらいのカタコト英会話なのよ。普段バカやってる奴らでさえ呆れて口を閉じるくらいの。…あー、先公がハヤクイイナサーイって威圧してるからとりあえず言っとくわ。

「「「I am a student.」」」
うん。馬鹿でもあの先公より発音下手なヤツいないわよやっぱり。どう思うよ、ねぇ?

「…オ、オウ…エブリワンはゆーしゅーですネ…ティーチャ、ウレシイネ…&size(11){でもココはノッてほしかったネ…チョット悲しくもあるネ…};」
…なんかまた切ない表情になったんだケド…。嬉しいって言ってんのに、顔と発言が一致してない。ってかなんか最後にボソボソ聞こえたケド、此処じゃちゃんと聞こえないわ。
その時。先生の正面列一番前の、先生達の唾マシンガンの被害が一番高い席にいるヤツが手を上げた。

「先生、ネタ((とある英会話教室のCMのネタ。2002年くらいのものなので知らない方も多いかもしれませんがorz))が古すぎて笑えませーん、それにどのクラスも先生より発音いいですー。これ以上発音練習をしたところで先生が傷心するだけで、道徳的に教育に悪影響を及ぼす危険がありそうですのでやめて頂けませんかー?」
モロストレートなツッコミ入ったわね。ペラペラからグサグサ音が聞こえそうなくらい辛辣なツッコミが。ってかネタって何よ。そんなんあったかしらね…?
とりあえず。ツッこんでくれんのはあたしが色々言う手間が省けるからイイんだケド、アイツのツッコミは容赦なく相手の心を抉るからやられた方が気の毒になってくるのよね…。辛辣毒舌野郎のソイツは如何にもガリ勉って感じのマメパト。名前はマメ。真面と書いてマメなんじゃないかってくらい真面目。丸眼鏡まで掛けてるし。完全真面目キャラね。何で名前憶えてるか聞かれる前に言っとくケド、あたしの代わりに色々ツッこんででてくるから覚えちゃったのよ。

そんなこんなで、トドメを刺されたペラップは生気の無くなった目で一度教室を見渡した後、無言で持ってきたプリントを配り始めたわ。で、プリントが全員に渡ったのを確認すると、黒板にでかでかと『''printやリなちいこんさくしょー''』って書き殴って出てったわ。単語キレイなのに平仮名きったな。しかも間違ってるし。…もうどうやって教師になったかはツッこまないわ。


こんなワケで、今日の授業はスタートしたわ。いつもどーり、馬鹿馬鹿しくて呆れるケド、お蔭で朝の妙な感情も忘れられそうね…。そうよ。変わったのは転校生が来たってコトだけ。私にはなんの変化も無いわ。今日も何事もなく過ぎていくだけ…

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「はーい今日はバレーです!バレエじゃなくてバレーです。言われてる方はあんまり違いがわからない?なら字幕を見ましょう!」
「先生、これはテレビじゃありませーん」
二時限目、体育。甲高くて耳に障るタブンネ先生の声が校庭に響く…ケド。あたしはそれどころじゃない!何でこんな寒い中、外でバレーしなきゃいけないのよ!!朝からあれだけ寒さについて語ってきたのに、この仕打ちは流石に酷すぎない!?その思いを目に込めてそのタブンネ、たしか名前はメイビーネとかいうのに思いっきりガン飛ばしてやるケド、ド天然の先公は全く気付かないわ。あーあやめやめ。これじゃあたしが馬鹿みたい。メロメロも女には効かないし、まともに付き合っても疲れるだけだからね。もーコレは諦めてやるわよ。あーさむさむ…。名前知ってるコトについてはノーコメントよ。伏線?何それ?放物線なら知ってるケド?

「じゃあ早速スパイクのお手本を見せますねー。え?冬なのに外でバレーはおかしい?ビーチバレー感覚で出来るから楽しめるでしょ☆はいはいそこの男子文句言わなーい。黙りやがらないと“君達の”ボールをダブルでスパイクしちゃいますよー?」
あーもー、馬鹿な男子どもめ。メイビーネは見かけは扱いやすそうだけど、実際は『ラスボスだと思って倒したヤツの後に出てくる、真の黒幕』くらい厄介なヤツだってのに。いきなりローボイスになったからって情けないわねぇ。反発しときながら今もう顔真っ青じゃない。フツーの接し方で敵う相手じゃないわよ。ペコペコして軽く従ってるのがイチバン。寒いし、せめてさっさと動きたいのに時間無駄に使うなっての。今あたし達、冷風の吹き荒れる校庭のド真ん中の、冷たい土の上に並んで座らされてんだから。しかもあたし体育の四列縦隊、一番右側一番前なのよ?真ん中とかは他のヤツラが壁になるからまだマシだけど、端で前はメチャクチャ寒いんだから。前方と右方二箇所に壁がないんだもん。全く…男女合同体育なんて珍しいってのに、どーしてこうなんのよ。後ろを振り返ると、右から二列目前から三番目のアリルはさもあったかそーにウトウトしてやがる。また後でロッカーに詰めとこうかしら。マメはツッコミやすさ狙いかあたしの隣だけど、アイツはあったかそうな羽毛一杯だし…今度丸裸にしてやろうかしら。
で、アイツはというと…なんてゆーか、フツーだった。ただ体育座りでちっさくなって、&ruby(へたれ顔){´・ω・`};で自分のヒザ見てるだけ。…ま、水辺にすむ種族だし、寒さに慣れてんの当たり前よね。…でも、ギャグ作品なのにボケなしとか…アイツこの作品向いてないんじゃないの…?

「…はいっ、イイコですねっ♪じゃ、話を戻しまーす。スパイクは一二の三のリズムでアタックします。リオス君、ちょっとボール投げてもらっていい?」
馬鹿なガキどもが黙ったのを見たメイビーネは、また耳障りな声で説明を始めたわ。バレーなんて中学の時から何度もやってんだから説明なんていいのに…。そうして溜息を吐いたあたしの後ろから、呼ばれて飛び出してはいないケド「ああ、はい」と素っ気無く返事をしたリオルが前に出てきた。へー、アイツリオスっていうんだー。知らなかったわ。ま、他クラスだしね。…聞き覚えがあると思った人、それは気のせいってヤツよ。
あ、この学校での体育は男女合同って言っても、1クラスそれぞれ男子と女子を半分ずつに分けて、もう一クラスの半分と合同でやってるの。だからリオスとかみたいな他クラスのヤツラもいんのよ。そのリオスが、先生から受け取ったバレーボールを持ってネットの端に立つ。それでボールを上に投げて、打つ人がタイミング合わせて走りこみ、からのジャンプスパイクをするっていう簡単な練習法。そんなん見なくたって、ボール投げて落ちてきたの手で叩けばスパイクになるコトに変わりないじゃん…。

ん?ちょっと校舎の方に目をやったら、窓際の廊下を誰か歩いてたわ。あの目に悪い茶色と黄色のシマシマは…色違いのワルビアルね。アレはモロ特徴的だからよく覚えてるわ、現代社会担当のビアジョル先生。なーんか一昔前の熱血警部みたいな雰囲気で、何時も語る内に熱くなるのか何なのか知らないケドタバコ出して、校内禁煙思い出して「おめぇらも成人してタバコ吸うようになったら、ちゃんとした場所で吸うんだぞ」とか言ってくる変な先生。あの様子だと、授業もなくて暇だから外にタバコ吸いに行くんだと思うわ。タブンネ。…ってか、なんとなーくオチ読めるんだケド…。

「いきますよーっ、はい、いち、にのっ、''撒ッ!!''」
横からメイビーネのハイからローに変わってく掛け声が聞こえたと思ったら、銃声みたいな爆音が学校中に響いた。ちょっと地面も揺れたような気がするわ。すぐにソッチに目をやったケド、何か…破壊光線みたいなのが校舎の方に飛んでくのがチラッと見えただけ。でもそれだけであたしには十分。何時もの事だし、オチも読めちゃったから。なんか漢字表記されてたケド、ツッこむ気にもならないし。

「ぐぅおおおおぉぉおおお!?」
ドカーンって、漫画によくありそうな効果音と一緒に野太い悲鳴が聞こえた。それに遅れて、ガラガラ岩が落ちるような音もしてきた。

成る程、バレーって、ボール使って一二の三で校舎ブッ壊して人を吹き飛ばすスポーツだったのね…。





結局校舎の一部が壊れたから授業どころじゃなくなって、メイビーネが呼び出し喰らったからその後は教室待機になっちゃったわ。あたしとしては教室に戻れて嬉しい限りなんだケド。取り敢えず、有言実行してアリルをロッカーに詰めたところで二時限目は終了したわ。端から見るとメチャクチャよね。でも、これがこの学校じゃ当たり前なのよ。
…そういえば、次現社じゃないの。あの警告カラー、さっきの受けてタダで済んでるとは思えないし、別のが来るのかしら。ま、授業なんてちゃんとやってるフリすればどうにでもなるし別にいいケド。テストの時だって優等生男子を予めメロメロにしといて、答案の名前グレサって書けって言っとけば簡単に点稼げるしね。この学校の先公皆馬鹿だから、字が違っても気付かないし。

「ぬぬ…グレサ…いい加減にしろよお前ぇ…」
「あ、やっと出てきたのね」
「っるせー!二度もやるなんて聞いてねぇぞ!しかも二度目はお前の勝手な感情でやったろ!」
アリルがぎゃーぎゃー騒ぐのを無視して、あたしはついさっき保健室から戻ってきたアイツを見る。ま、メイビーネのアレを初めてみりゃ自分の席で顔真っ青にしてブルブル震えてるのも分かるケド…気絶までするフツー。ドジでへたれでその上肝っ玉までちっさいとは…もう救いようないわね。アソコの玉までちっさいんじゃないの?ってかアリルうっさい。お口蔓のムチしてなさい。
…でも、今朝のアリルの言葉はやっぱり頭から離れない。あたしが机凝視しながら顔赤らめてたって…アイツのコト考えてた時になってた可能性があるってコト?そういえば、アイツに注意しようとして変なコト言っちゃったのも妙だったのよね…まさかホントに…。…いやいや、ありえない。何を考えてんのよあたしったら。もし仮に、万が一、いや億が一に好きなヤツが出来たとしても。あんな救いようもないヘボイタチなんかを好きになるなんてコト、絶対にない。

…馬鹿馬鹿しい。考えても無駄なだけ、もうやめよ。

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そんなカンジで5分休みが過ぎて、三時限目になったんだケド…5分経っても、10分経っても先生が来ない。流石に三連で自習オチは手抜きすぎない?もー、またアリルロッカーにぶっこんで暇でも潰そうかしら…。そう思って、あたしが蔓をアリルの背中に伸ばそうとした時、教室のドアが開いた。やっと来たわね。代わりは誰なのかしら…って

「せ、先生ー、無理しないでくださーい」
何でビアジョル来たのよ!血塗れじゃない!やめてよねこの作品で血流すの!他作品が血塗れすぎるからこっちは極力健全にしたいっていうのに!そんな『インフルかかったケド頑張って登校しました』みたいなカンジで出てこられても困るわよ!インフルなら自分は余計悪化するし、他人も巻き込みやすいから迷惑にしかならないし!そういう時こそ無理スンナ!ってぇ、インフルじゃなかったんだった。
ビアジョルは足元に血溜りを作りながらふらふら教卓の前まで行くと、荒い息のままこっちを向いた。クラスのヤツラは殆どビビッて引いてるわ。あたしも正直引いてるし。あの真面目なマメもちょっと気まずそう。アイツに至っては追い討ちになってまた気絶したみたい。白目向いて椅子にだらーんとよっかかっちゃってるわ。口に消しカスでも入れとこうかしら。

「お、おまえたち…今の、世の中はな…思いの甘さが招く、事故が多い…」
掠れた低い声が、荒い呼吸に混じって聞こえてきた。いや、喋ると傷が開くとか、そういう風な状態なんだし喋んない方がいいと思うんだケド。それに、現社ってそういう話じゃなくない?

「い…“いきなり校舎の壁が壊れて砲丸と化したバレーボールが飛んでくるなんてありえない”と思っていても…今のご時世じゃそういう、思いもよらねぇ事故が…普通に起こる…おまえらも、気を…つけ…ろ…よ……」
あのさぁ…そんな事故があり得るのは、怪ポケメイビーネがいるこの学校だけだと思うわ。それにそれじゃまんま“現代の社会の状況”じゃないの!現社だけど、あたし達が学ぶ現社とは少し違うでしょ!あぁ力尽きんな!倒れんなら職員室でも何処でもいいから、此処でだけは勘弁してよね!血生臭くなるじゃない!!

「先生、とりあえず血は拭いてくださーい、エイズウイルスが移りますー」
「ぅおれはエイズじゃねーッ!!」
あ、復活したわ。でも今回はマメに同感ね。エイズの血を教室中に擦り付けられるのは流石に困るわ。別に触れられるだけじゃ害ないってコトは分かってるし、兎に角血は何とかしてもらいたい。こんな馬鹿だらけの学校でも、病気や障害持ちってだけで異質なもの見るような目で見るサイテーなひねくれ者はほとんどいないから心配ないしね。

「だから勝手にエイズにしてんじゃねぇえぇぇえ!!」




現社は殆どビアジョルの説教のターンで終わっちゃったわ。自習は免れたケド、オチがなくてつまんなかったわねぇ。強いていうなら、気絶したフラウの口からあぶくがどんどん湧き出してたコトくらいよ、面白そうだったコト。

「はぁ~い、みんなぁおはよーだよぉ~。きょうはぁ~~…。」
で、今は四時限目の現代文。5分休みはネタがなかったから省略したわ。何度もアリル突っ込んでも面白くないでしょ?ネタ無しなんて、こういうジャンルにあるまじき事態だケド、ここまで読んじゃったんだからまーいいでしょ。
現文の担当はヤドンのマムデェ。兎に角トロい。何もかもがトロい。全生徒の9割はコイツの授業を“睡眠時間加算時間”として利用してんじゃないかしら。優等生のあたしでさえ、気を抜くと意識が飛びそうなくらいの睡魔を誘うスローボイサーなのよ。まだ進化もしてない若手の新米教師…の割には田舎のおっちゃんみたいな口調だから尚更効果抜群。聞いてなくてもまったりした語り口調は無理矢理耳に入ってくるから。まー、色々インパクトありすぎだし、いっつも初めての授業みたいに自己紹介するから名前覚えちゃったのよ。にしても…いつも二度目以降の授業ってコト忘れるのに自己紹介の内容毎回同じってどういうアタマなのよ。もう説明もメンドーだから、一言で説明すると…新任にして、学校一クビが飛びそうな問題教師ってトコかしらね。何が問題って、そりゃあ…

「……やぁん?なにをするんだったかなぁ~~~」
「またド忘れですかセンセッ!他のセンセもボケばっかりだけど教える内容くらいは分かってたわヨッ!?そのくらいしっかりしてよねそんなんじゃクビになるわヨッ!」
こーいうコトなのよねぇ。授業内容、一週間で4回ある現文の内、3回は忘れてくる。酷い時は一週間全部忘れてるってコトもあるわ。職員室戻って他の現文の先生に聞きに行かせても、職員室についた時には何をしに来たのか大抵忘れてる。何よりトロいから、往復するだけで一時間経っちゃうのよねぇ。そーいうワケで授業が全く進まないから定期テストも塾通いとかのヤツら以外は皆全滅。(勿論、あたしは塾通いから点かっぱらってるから平気よ♪)評価つけるのも忘れるコトがあるらしくって、たまに他の現文の先生の評価で帰ってきたり。言わずもがな教師とはとても言えない教育してるから何時クビになってもおかしくないのよね。
で、最近は忘れる度、マメの右後ろに座ってるシェルダーのカプリって女がプリプリ怒って説教するようになったのよ。二枚の貝殻を忙しなくカプカプさせて、舌を揺らしながら。…ダジャレじゃないわよ?カプリって女は相当せっかちみたいで、毎回毎回たらたらして授業内容すら忘れるマムデェに耐えられなくなったんでしょうね。でも…勿論マムデェにはまったく通用してないケド。

「あぁ~、ごめんねぇ~~。今度ちゃんと紙に書いてくるよぉ~~」
こうやって答えても、この言葉実は今回でもう74回目。書いてきたのは5、6回。しかも、書いてあったとしても紙を忘れてきたり、持ってきても見るのを忘れたりするからほぼ意味なし。…マムデェには、逆らわれたとしても僕にしたいとは思わないわ…。第一、何か命令する機会なんてなさそうだし。
もう最近は、こんな感じでカプリとマムデェがコントみたいに言い合ってる内に授業が過ぎてくのよねぇ。もう生徒の大半は机に突っ伏して寝てるし。

「ふぁあ…」
大きく欠伸をすると、教室の景色が涙で歪んで見えた。あたしも何だか眠くなってきたわね…朝っぱらから色々ありすぎて何時も以上に疲れたから、今日の眠気は強烈だわ…。欠伸が止まんない。…今日くらい、あたしも寝ちゃおうかしら。ぶっちゃけ言うと、まだちょっともやもやしてるし。休んだら少しはスッキリするかもしんないしね。一回くらい…いいよね…。2、3回瞬きをして、もう一度閉じた時、あたしの意識はあっという間にどこかにいっちゃった…。

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&color(green){夢でも見ると思ったか?残念!そんなコトはなかった!};

…アンタ誰よ。ってかコレ、ただ単に手抜きなだけじゃないのよ。

&color(green){何を言う!恋の予感がした後寝ると夢を見てなんというかそういうシーンになるものでしょ!?そんな在り来たりな展開じゃ面白くないじゃないか!};

在り来たりじゃないから。偉そうに恋を語るんじゃないわよ。ロクに恋愛した事もないような顔して。

&color(green){まぁ本当は、長ったらしくくどくなってしまいそうだったから省いただけなんだけど。};

結局手抜きなだけじゃない!もっと真面目にやりなさいよ!
全く…とにかくスペース勿体無いからさっさと先いくわよ。

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「はぁ~い、じゃあ今日の現代文はこれで終りだよぉ~、今日の昼食はなんだろ~ね~」
「何言ってるんですかセンセッ!授業なんてこれっぽっちもしてないでしょもういい加減にしてくださいッ。これじゃ今度の期末テストも皆絶望的になってホントーにクビにされちゃうわヨッ!お昼の事気にしてる場合じゃないですッ!」
んー…カプカプカプカプ…うるさいわねェ…

「くぁーっ、よっく寝たなー。ありゃ?グレサも寝てたとは珍しいな。ほら終わったぜ、起きろー」
ちょっと…気安く揺するんじゃないわよ…あと3時間だけ…

「いやそれはないだろ。下校時間まで寝るつもりかお前。さっさと食堂いこーぜー」
「もー…分かったわよ…」
全く…アリルは食い気だけは一人前なんだから…。いや、三人前くらいいくかしら…。とりあえずあたしもお腹減ったから、さっさと行く事にするわ。目を擦りながら顔を上げてみると、前の方じゃカプリとマムデェがまだ漫才やってたわ。他のヤツラはそれぞれ仲良し組同士で集まって弁当広げたり食堂行ったり…全体的に見ると比較的静かなこのクラスも昼食の時間だけはちょっと騒がしくなるかしらね。

このくらいなら大したコトないケド…やっぱり静かな方があたしは好きかな。クラスで仲いいヤツもホントアリルくらいのもんだし。この学校の食堂は行くヤツも結構も少なくて、味も確かだからあたしには一息吐ける場所の1つなのよ。オタク共もいないし。え?何でかって?…行けば分かるわ。
偶にはこーいうのもいいわね。やっぱり一睡したらなんかスッキリしたわ。朝のコトも夢だったんじゃないかってくらい清々しい。ま、横にはフラウいるんだけど。…弁当持ってきてるみたいね、そんなら食堂でもゆっくり出来るわね。この調子なら、もう何事もなく一日終えられそう。あたしは一日過ぎればもう特に気にならなくなるからね。さっさとこの馬鹿馬鹿しい感情にトドメ刺してやるわ。

「お、おいグレサ、ヨダレ垂れてんぞ!」
「へっ!?」
まだ眠気が完全に抜け切ってなくて、ぼーっとそんなコトを考えてたあたしは、そのサイコーの目覚ましで叩き起こされた。すぐに下を向いて両手で口周りを隠す。あ、あたしとしたコトが…!やっぱりガキ共と同じようなコトするんじゃなかったわ。スッキリは出来たケドこれじゃ寝ないより最悪よ!少しでも気を抜いたバツね。恥じ晒しもいいトコじゃないの…。…って、あれ?

「っはははは!その顔サイコーだぜグレサ!こんな簡単なウソに引っ掛かるなんて、今日はどうしたホントにぃ、っははははは!」
……。

「っはは…あ?グレサ?」
少し、頭冷やそうか…










食堂のドアを開けると、食欲を刺激するいいニオイがすぐに鼻に入り込んでくる。建物自体はちょっと薄汚れてるケド、逆にそこがムード引き立ててたりすんのよねぇ、ずるずる。あれ?今日貸切日じゃないの。月一回はこんな風に他の食堂利用してるヤツラが1人も来ないであたし達の貸切になる日があんのよね、ずるずる。うんうん、あたしの意図を汲み取って、今日を貸切にしたのねアイツら。少しは分かってるじゃないの、ずるずるずる。

「おー、今日は遅かったじゃん。何かあったのか?」
「何でもないわよ。いーからさっさといつものだしなさいよ」
食堂のカウンターの向こうには、頬杖つきながら雑誌読んで、額にはサングラスをかけたいかにも柄の悪そーなクチートがいる。他にも奥に何人かいるケド、とにかく存在感があるのはそのクチートだけ。ま、食堂の従業員のクセに仕事する気ゼロの雰囲気ビンビンだし当たり前だけどさ、ずるずる。
コイツは&ruby(みそぢ){弥逸壽};。ミソヂ、じゃなくてみそぢ。この食堂の主みたいなもんかしら。何で漢字表記かって?そりゃあねぇ…。言わなくても分かるわよ、よく考えれば、ずるずる。

「…アンタ、さっきから何引きずってんだ?その黒いの」
「え?何言ってんのよ、どう見てもアリルじゃん」
「…アタイにゃ、丸焦げのボロ雑巾みたいに見えるんだけどねぇ…ま、何時ものコトだから特に驚きゃしないけどねぇー」
みそぢは雑誌を閉じると、雑に着込んだYシャツの胸ポケットからキセルと刻みタバコを出して吸い始めた。台所に火があるからってとんでもないわよね。絶対学校に関わる仕事に就くべきじゃないわよねコイツ。校内禁煙無視していっつもプカプカふかしてんのよ。それについて言えば「此処“校内”じゃなくて“食堂”だろ?食堂内禁煙なんて規則はないんだからいーんだよこんくらい」とか、物凄い屁理屈を吐くし。でも本人から聞いた話じゃ、バレたのは一度だけらしいわ。そん時クビになる筈だったのも、校長とか上の連中を、嘘泣き、誘惑、擽るで骨抜きにした後、持ち前の演技力で甘え倒して取り消しにさせたらしいし。女教師どもは大顎で脅して黙らせといて。チャラチャラしてるケド腕は確かなのよね。
あたしは何時もの席に動かないアリルをひっかけると、あたしもその向かいに座る。流石に、昼時で日が入りまくってる窓辺でソーラービームはやり過ぎたかしら…。いや、調子に乗ってあたしの気分を害したバツには丁度いいわよね♪

「ふぅ…」
やっとリラックス出来る時間がきたわね…一度寝たとはいっても、今日は騒がしすぎよ…さっきのアリルのせいでまた疲れがぶり返したし…お腹も空いたから余計イライラするわ。あーもう、さっさとお昼食べてこんな気持ち忘れてやるわ。テーブルに脱力してぐでーっと伸びながら、あたしはそんな事を考えてた。

「…アンタさ」
「あー?何よ?」
「恋、しただろ」


……へ?何?今、何て言った?いきなりみそぢが話しかけてきたと思ったら、何だかさっき誰かから聞かれたような事を言われた気がした。

いや、気がしたんじゃない、今確かに、みそぢはそう言った。



私が、恋をしたっ…て…













あたしは今、音楽室にいた。何故って、五時限目が音楽だからよ。音楽は音楽室って決まってるの。別の学校はどうか知らないケド、あたしの学校はそう決まってんの。にしても、いつ見てもホント殺風景な音楽室。楽器の王様と言われるピアノはないし。壁に張ってあるのは何故か音楽家の写真じゃなくて歌手とか音楽グループのばっかり。音響よくするために天井とか床とかに段差がある以外は歌手好きなボンボンの部屋にしか見えないわ。にしては机だらけだけど。
…え?いきなり何で時間が跳んでるのかって?な、何言ってんのよ、跳んでなんかないわ。あんたの目がおかしくなっただけよ。あ、あたしは普通に…

──アンタさ、恋、しただろ──

…ああもう!なんなのよホントどいつもこいつも!!やっとあの変なもやもやが収まったと思ったのに、何でまた言われなきゃなんないのよ!結局またホームルームの時に舞い戻っちゃったじゃないのよ!怒りに任せて、あたしは机を思いっきり両手で叩いた。音の良く響く音楽室に聞き心地の悪い音が広がったのが分かった。でも、今度は誰一人反応を示さない。当たり前よ、誰もいないもん。みそぢのおしゃべりがうっさくてうっさくて、お昼速攻で食べて出てきたから。全く、折角のお昼も全然味わって食べれなかったわ…あーイライラする…。どーしてあたしが恋したように見えるってのよ…恋なんてする必要なんてないあたしが、そんな面倒な事するわけないってのに…。それにあたしは大分普段の調子取り戻してたのに、なんでみそぢはそう感じたのかしら…アリルはあたしが顔赤らめてたーとかいい加減なコト言ってたケド、あの時はフラウのコトなんて考えてないし、表情にだって出してない筈よ。絶対。なのにどうして…

「あぁ、もう!」
駄目グレサ。また混乱するだけなんだから、そんなくだらないコトは忘れるのよ。キレイさっぱり。水にでも流して。…そうだ、顔でも洗えばスッキリするわ。思い立ったあたしはすぐに席を立つと、さっさと廊下に繋がるドアを押す。ちょっと開いたところでゴンッって音がして、ちゃんと開かなかったケド。ああ、誰かきたみたいね、たぶん復活して追っかけて来たアリルか、せっかちなカプリかどっちかでしょ。あたしは溜息を吐いて、もう一度ゆっくりドアを開けてみた。

「いたた…」
「ひえぇっ!?あっ」
でもそこに居たのはアリルでもカプリでもなかった。正直今一番会いたくなかった相手。そうよ、考えてみれば外側に開くドアって分かっててそれでもぶつかるようなヤツなんて今まではいるはずなかったわ。そう、今までは。ドアにはすりガラスがついてて、人が出てくる時は分かるようになってる。だからカプリは兎も角ドジなアリルでも、それでぶつかるなんてへまはしない。それでもぶつかるってコトは…コイツしかいなかったってコトだ。
…両手で頭を抑えて尻尾を丸めるフラウを見て、あたしは思わず素っ頓狂な声を上げちゃった。しかも脚を後ろに引いた時、もう片方の足に引っ掛かって脚がもつれて…今まさにあたしは尻餅をつきそうになってるわ。…ああ、もうたくさん。今日だけでどんだけプライドが傷付いたコトか。それもこれも、結局コイツが、フラウが変なコトをあたしに言ったからだわ。コイツがあたしを狂わせてる。あたしを恋したように見せてるんだわ。こんなにあたしを侮辱するようなヤツに、恋なんてするワケ…

「あ、あぶないっ」
……え?なんで…なんで、あたしは尻餅をついてないの?どうして、フラウの顔がこんなに近くに見えるの?なんでフラウは、あたしの手を掴んで…

「だ、大丈夫?グレサちゃん」
「…あ、きゃああぁあっ!!」
「わっ」
あたしはビックリして、ツルのムチであたしの手を掴んだフラウの腕を叩いちゃった。ビクッと身体を震わせてフラウが手を引っ込める。あたしはすぐに三歩くらい後ろに下がった。
…ちょっと待って。何?なに今の?あたし、フラウに手を掴まれた?お兄ちゃん以外の雄に、初めて…触られた?フラウに、触られたの…?

「あ、あはは…転ばなくて、よかったよ」
…一瞬、状況がよく分からなくなってたあたしの耳にそんな言葉が聞こえた。真っ白になってた視界にフラウが映る。相変わらず眉毛は下がってたケド、フラウは確かに笑ってた。初めに見せた笑顔よりももっと嬉しそうに。心から安心したような、そんな風に。

「──!」
心臓が、耳の奥でやけに大きな鼓動を響かせた気がした。この広い音楽室にも残響しそうな、大きな音を。その後は顔がじんわり熱くなってきて…目の前が、なんだかはっきり見えなくなってきた。次から次にワケが分からないコトばっかり起きて、あたしはただただポカンとして立ち尽くしてるコトしか出来なかった。




…遠くでチャイムの音がなってる気がする。いやこれは確かに、チャイムの音だ。

ハッとした時には、あたしの前にフラウはいなかった。どんだけ立ち尽くしてたのかしら…。
……さっきのは一体全体なんだったのかしら。心臓はドクンドクンって兎に角うるさいし、身体は熱いし、頭もぼんやりしてきて…身体がふわふわ宙に浮かんでるような不思議な感覚になって…何も、考えられなかった。こんなの、初めて。今まで16年間生きてきた中で、ホントに初めて。これは…なんなの?

…って、チャイムなったのに立ってちゃ駄目じゃない。兎に角今は座んなきゃ。そうして振り返ったあたしの目に飛び込んできたのは…。

「え?」
沢山の机と、その1つに座ったフラウだけだった。


あ・すぃーぶる(何故フランス語なのか

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・とあるゲームでの実話part1

住人「おい、俺が持ってるモンなんだか分かるか?聞いて驚け…冷水機だ!」
トランス「いやどう見ても網でしょ…別に驚くようなものじゃないし…」
住人「お前欲しそうだな、蜂と交換ならいいぞ」 トランス「いや別にいらないんだけど…まぁいいよ」
-その後側の木を揺すったら蜂の巣が-
住人「うあぁ!逃げろー! 三(  ゜∀゜)」 トランス「ちょっ、網持ってんだからあの蜂捕まえてよ!」
住人「無理無理無理!オレは蜂だけは苦手なんだぁ!」 トランス「おまっ、何で交換したんだよー!」
-左目負傷後-
住人「お前トランスか!?ガハハハ!蜂に刺されるとかどんくせぇww」
その後思わず自分の網でブッ叩きました。住人と話しているときは待っていてくれる、アニメの敵役的な親切な蜂さん達に謝れとばかりに。

・とあるゲームでの実話part2

トランス「うわ、また蜂の巣だよ!」逃走 別の住人「キャーこないでぇ!」
トランス「じゃあそこどいてくれよ!」
-左目負傷後-
別の住人「キャーこないでぇ!」 トランス「さっきの言葉私に対してだったの!?(涙)」
こうして虐められるトランスでした(どうでもいい

はい、皆様明けましておめでとう御座いました。長らく更新できず誠に申し訳ありませんorzこの作品に至ってもう約一年ぶりの更新になってしまって…口調などその他諸々が若干変わってしまっているかもしれませんね。そして、“ギャグはサブなので…”などとほざいていたのに、今回の有様は何なのでしょうかね(汗)ま、まぁ、純愛というテーマを見失わない程度に色付けしていきたいと思います。そして今回は登場人物を一気に放出してしまったので、少々分かり難くなってしまったかもしれませんね。其々の説明につきましては、今作完結後、二作目に取り掛かった辺りで同時に作成しようと考えていますのでご了承下さい。名無しで種族名だけで呼ばれていたポケモンは特に大きな出番はないと思いますので…(オイ
こんな作品に付き合って下さり有難う御座いました。相変わらずの鈍足更新になってしまいそうですが、今年もこれから宜しくお願い致しますです!

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苦情や質問、誤字脱字の報告、コメントなど何かありましたら此方にお願いします。本当に描写下手なのでアドバイスをして下さると助かります。どうか宜しくお願いします。


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