風靡、と雅と言うのは、なかなか同じような発音だが、全然違う意味を持つ。漢字はとても面白いものだ。漢字を書いていると、こんな字だったかな?などというゲシュタルト崩壊を起こす漢字も存在する。漢字というのは結構偉大だった。なかなかどうして、頭を柔らかくしてくれるではないか…… だが、危険と危機というのはどうだろうか?危険。あぶないこと。生命や身体の損害、事故・災害などが生じる可能性のあること。また、そのさま。危機。悪い結果が予測される危険な時・状況。あやうい状態。 どちらも危ないことに換わりはない。そして、今現在高度9000m、上がりながら凍てつく風をよけ、ペペスとパインは身も心も疲弊したまま、どんどん高度を上げていく……その後ろから、綿毛のような羽を持つ、恐ろしい鳥ポケモンが追跡する…… 「逃げるな、犬に鼠!!」 「私は、犬では、ありません!!」 「僕は鼠だけど、逃げちゃいないよ!!」 捨て台詞のような、負け犬の遠吠えのような、何ともいえない枯れるような声を絞り上げて、とにかく二匹は空へと上った……ここでは戦えない、もっと、もっともっと空へ…… ペペスは後ろを向いて追ってくるハミングに電機を浴びせて減速を促させているが、さすがは鳥ポケモンといったところか、空は自分の庭とでも言わんばかりに、ひょいひょいと電気をかわしたり、雲の中に隠れたりして、徐々に距離をつめてゆく……ペペス自身は問題なかったが、問題は助手席よりも運転席にあった。 運転席、つまりパインは、殆ど攻撃をせずに、精密飛行に全神経を集中している。もしパインに攻撃でも当たろう物ならば、たちまち念力の力などぱちんと消えうせて、二匹は高いという次元の壁を越えたところから、パラシュート無しのスカイダイビングをするだろう。それを分かっているために、ハミングは執拗にパインを狙っている。 「くそ、卑怯だぞ!!僕を狙えよ!!」 「はぁ、はぁ、はぁ……」 明らかに疲弊した相手を狙うハミングの行動を見て、ペペスは怒りを露にする。しかし、ハミングはどこ吹く風といった感じでそんな言葉など涼しげに流すと、何もなかったかのようにパインに攻撃を再開させる。 「そらそら、逃げないと氷付けだぞ?どうした?段々速度が遅くなってきてるんじゃないか?」 「はぁっ、ハァッ!!……くぅっ!!」 急な加速、減速、回避。後ろから来る"れいとうビーム"を精密な動作でよけ、更に気圧の変化に対応するために念力の膜を緻密に変えながら上昇する……こんなことを一匹でやっていれば疲弊するのは当然である。 もはやパインは目も虚ろ、体中に異常に粘つく汗を掻き、口からは微弱に泡を吹いている。もはや気絶と意識の境界を頭が彷徨い、殆ど本能で上昇しているような感じであった。 「パイン、しっかりして!!」 「ハァッ!!ハァッ!!!はぁっ!!!!」 もはやペペスの声も届いていないのか、先程までちんたらと上昇していたパインが、急に速度を上げた……その急な動きに、ハミングも面食らう。 「なんだ!?急に動きが、変わった!?」 ペペスは思わずパインの持っていた高度計に目をやり、驚愕に瞳を開いた。現在高度、9700、9900…………振り切った、現在高度不明…… 「パイン、やめて!!何やってるか知らないけど、減速するんだ!!」 「う、うぅぅぅっ、うわぁあああああああああああああぁっ!!!!!!」 どんどん高度が上昇してゆく。パインが持っている高度計は、高度10000を超えると表示されなくなってしまうのだ。つまり、半分まで高度が上がったということだろう。段々と宝島が大きくなってくる……そして、先程攻撃をしてきたハミングの姿も、どんどん小さくなってゆく。相手も追いかけようとしているのだろうが、距離がどんどん離されてゆく…… 「(まさか…………暴走!?)」 ペペスは必死にパインの尻尾につかまりながら、頭でそんなことを思い浮かべていた………脳の許容量を超えた念力を使ったために、自分の体の力が放出してしまったのだろうが、何よりも、ここは何でも出揃っている地上ではなく、何もない空中であるために、パインをどうにかすることなど、できなかった…… 「パイン、パイン!!」 尻尾を掴んでいた手を、力強く引っ張って、パインの身体に密着する。べちゃり、と嫌な音がして。ねとねとした汗が、ペペスの体毛に染み込んだ。そんなことなど気にもせずに、ペペスは必死に目を閉じて、暴走した友人に必死の呼びかけをした。 「目を覚まして!!パイン!!」 「ぅぅわああああああああああっ!!!!!!!」 右へ、左へ、上へ、下へ……がくがくと揺れながら、でたらめに飛行していたパインの力が、いきなりふっ、と抜けた。急に体中に寒気が走るほどの冷気が吹き付けて、思わずペペスはくしゃみをしてしまう。何があったんだと思って周りを見渡すと、景色が動いていた。否、違う、これは自分たちが落ちているのだ………… 「パイン!?」 落ちながらパインの身体を揺さぶると、はぁはぁと息を吐きながら、ぐったりとしている。気絶してしまったのだろうか……目を硬く瞑り、呼吸を乱している。 「うわああああああっ!?」 ばたばたと強い風を受けながら、ペペスは絶叫した。高度計に目をやる、高度9800、9700、9600……どんどん高度が下がってゆく、風や寒気の影響もあり、とにかくペペスには何も出来なかった。頼みの綱の友人は、気絶している。 状況が最悪の中、二匹に向かって上昇している物体を捉えた……先程攻撃を仕掛けていたハミングだ……こちらに向かってきているのだ………… 「あっ!!見つけたぞ!!お前た――」 などと、もちろん高速で落ちる物体に、高速で上がる物体が衝突すれば、両者にダメージがいきわたる。ペペスたちと、ハミングは大きく衝突し、ごぎぎ、と嫌な音が空中に木霊した。 「いぎぃっ!?!?」 「ぷぐぉっ!?」 「ウゥ…………えっ?」 変な擬音がして、気絶していたパインが目を覚ました。きょろきょろと辺りを見回して、状況をいち早く確認して、自分とペペスの体を再度浮かせた……だが、やはり疲弊は隠し切れないのか、顔色は悪そうだった………… 「パイン!?目が覚めたの??」 「は、はい、一時的な気絶らしいです、暴走してしまって、申し訳ありません…………」 気持ち悪そうに口を押さえて、パインは首を縦に振った。ペペスは気にしなくていいといって、両手をふってパインを気遣ったあとに、頭を押さえて悶絶しているハミングをにらみつけた。 「パイン、もう無茶なことをして逃げ切るのは無理だ……やっぱりここで撃退したほうがいい…………倒すなり、無力化なりしないと」 「え?で、でも…………」 訝しげな顔をしたパインを見て、ペペスは静かに首を横に振る。ペペスは宝島にいち早くつきたいという気持ちを持っていたが、先程のパインの暴走を見て、そんなことより、友達を助けて上げなければという気持ちのほうが勝ったのだった………… 「大丈夫、パインの体のほうが大事だよ…………あいつをここで撃退して、それからもう一回上に上がろう?ゆっくりでいいから、身体を壊さないで、僕のためにそんな無茶をしないで…………はい、これ……」 ペペスはそっとオレンの実をパインに手渡した。パインは少しだけぼけっとしていたが、やがて嬉しそうに頷いた。 「わかりました。ありがとうございます」 申し訳ない程度にオレンの実を齧って、ごくりと飲み込んだ。あまり換わっていないようだったが、ペペスが見る限りちょっとだけ顔色がよくなったような気がした…………。パインは息を吐いて、注意深く辺りを見回した。ハミングが起き上がり、こちらに攻撃を仕掛けようとしている……ペペスは何をしているのかと思い、パインに話しかけようとしたが、その前に体が一気に持っていかれるような浮遊感が襲い掛かった。この感覚は、先程と同じ、急に浮き上がる感覚…… 「パイン!?何やってるの!?」 「大丈夫ですよ、さっきみたいにはなりません、ここだと少し戦いにくいです。今日の天気予報だと、雲は正午を過ぎると北東へ移動します、そこまで待っていられる時間はありません、だから、こちらから移動します……」 矢継ぎ早に説明をして、とにかく上昇する。ペペスは知っていたのかもしれないが、雲の多い場所で雷を使うと、雲に吸い込まれて散らされてしまう可能性があるのだ。先程から雲の少ない場所でしかペペスは攻撃をしようとしなかった、向かってくる光線や綿毛を、"ひかりのかべ"や"リフレクター"などで跳ね返すような後手の戦法しかとっていなかったため、恐らく分かっているのだろう。 「分かっているはずです、ペペスがさっきから攻撃をしなかった理由くらい、ペペス自身がよく知っているのではないのですか?」 「…………まぁ、パインとは長い付き合いだからね、大体伝わっちゃうね、さっきも、雲の少ない場所を通り抜けて上がろうとしてたでしょ?だから余計に精密な行動が必要になって、エネルギーが大量に暴発しちゃったんだよね…………そういうことは言ってくれれば、僕だって守りきれる力くらいはあるんだから、まぁ、さっきはちょっと失敗して弾いちゃったけど、やっぱり無茶をするのはよくないよ…………」 「ええ、分かっています……」 今度はあまり速度を上げないようにと心がけているのか、速度は普遍的で、特異に変わることはない、もちろんハミングに追いつかれるだろう。だが、今回ばかりは追い抜くのが目的ではないのだ…… 「このあたりなら大丈夫でしょう……」 ゆっくりと速度を落として、後ろを振り向く。大きな影が追ってきて、ふわりと止まった。チルタリスのハミングは、不思議そうな顔をして、しかし警戒を解くこともなく二匹を見据えて、言葉を紡いだ。 「逃げるのをやめたのか、それとも諦めたのか、どちらにせよ、何を考えているのかな?」 「それは企業秘密ですよ」 「秘密にすることなんかないじゃないか、はっきり言えばいいじゃないか、こいつを倒して、上の空域に進む……別に難しいことじゃないさ……」 パインがくすくすと笑った。ペペスは亜麻色の瞳をくゆらせて、目を細めてハミングを見つめた。そんな瞳を軽く流して、ハミングはクックと声を漏らして笑う。恐らく、倒すという言葉に反応したのだろう、やはりペペス達を侮っているのか、顔には少しだけ嘲笑の色が伺えた…… 「なかなか面白いこというね。いいね、そういう戦って進むって言う気持ち、僕は好きだよ」 どうやらまったく違ったらしい、肩透かしの変異的な言葉を耳の中にしまいこんで、すこっと空中でペペスは滑った。自分のない頭で捻ったなかなか幻視的な言葉が、変異的な言葉によって殆ど意味の無いものに変わってしまったことに対する憤りとか、残念な想いとかだろうか、そんな気持ちを持ったまま、戦うのも珍しいなと隣にいたパインは少し顔色を曇らせて、鬱屈そうにハミングを見つめた。どうやら言いたいことはそれだけではないらしい。 「でも、その言葉の意味が本当に言葉通りの意味なら、そうなることはないと知ったほうがいいね。君たちじゃあ、僕に勝つことは出来ない。すぐに地上に叩き落されるだろうね」 言うのが早いか、初めから攻撃するつもりだったのか、ハミングは口から"れいとうビーム"を吐き出した。寒気を凝縮したような光線がペペスたちめがけて一直線に放たれる。 「パイン、後ろに隠れて!!」 光線とペペスが触れ合う前に、半ば突き飛ばすような勢いで、パインを思い切り自身の後ろに押し込んで、ペペスは人差し指をびっと前に突き出した。着弾、発光。不思議な白い光と一緒に、ペペスとパインがいた場所から凄まじい冷風と氷弾が飛び散る。ハミングは当たったことを喜ぶこともなく、仕留めた事を確認するわけでもなく、ただただ悠然と、白い煙を見て一言だけ呟いた。 「防いだか」 &ref(挿絵1.jpg); 「けほっ、けほっ……」 「ぺ、ペペス!?」 三つの声が重なり合う、静かな言葉、咽こんだような嗚咽と堰、そして、大きな驚愕の声……同じタイミングで出された声も、ばらばらで空に吸い込まれて消えた。 ペペスの前には、不思議な光を放つガラスのような壁が目の前にすっと隔てており、体が凍り付いてはいなかった。ほぼ擦り傷と殴打の傷が全身についており、特に細胞が壊死しているというわけでもなさそうだった。 「ほぉ、なかなかやるじゃないか……」 ハミングが感心したように頷く、ペペスは人差し指を突き出していた手をぐっと放して、ゆっくりと指を開いてゆく、頬の電気袋に溜まった電気を片腕に熱伝導のように伝えてゆく。まばゆい白の光が暗がりの空を明るく照らし出す……輝く雷は、周りに黒く濁っている雲をてらてらと白くする。 「パイン、あいつに近づいて……」 「…………わ、わかりました」 何を言い出すのかとパインは己が耳を疑ったが、ペペスは遊びや冗談でそんなことを言っているわけでもなさそうだったので、静かに頷くと、空中停止している二匹分のベクトルを、前進に変えて、ゆっくりと加速してゆく……何を思ったのか、ハミングはぎょっとして、二匹を見つめるのみであった。先程まで逃げていたポケモンがいきなり凄まじい速度を上げて、こちらに向かってくるのを見れば、気が狂ったか、それとも何かとんでもないことをしだそうとするものかどちらかである。そして二匹の行動は、後者であった。 「!?何をする気だ?」 「速度を上げて、ぎりぎりまで近づくんだ!!」 「わかりました……」 どんどん速度を上げる、発光した腕を突き出したまま、真剣な眼差しで相手を見据える。ペペスは、何だかよく分からないけど、戦いをするときに両親から教わったことを無意識に心の中で思い出していた…… ペペスの父はデンリュウで、母はライチュウだった……非常に仲のよかった家族だっため、ペペスは愛情をいっぱい受けて育っていった。戦い方は父に、思いやりの心は母にもらっていった……そんなペペスは、母親似だったことを何だか複雑な心境だった。 父のことも母のことも好きだったペペスにとっては、どちらか一方に偏ることなどで気はしなかったのだ……どちらも大切な両親だった。どれだけ自分が苦しくても、自分を愛してくれた両親のためにも、自分は弱音を吐くことが出来ない。ペペスは心の仲に何時も両親の姿を思い浮かべて、今の今まで生きることが出来た。 家が貧乏で、まともな食事にありつけないときもあったが、大切にしてもらっているペペスにはそんなもの苦にもならなかった。ペペスは両親が大好きであり、またペペスの父と母も、ペペスを愛している。だからこそ、ペペスが無茶をすれば、ペペスの両親はそれを止めるだろう。現に今、ペペスは物凄い無茶をしているのは確かだ、口の端から血を拭う事もなく、片目はぬるりとした出血が見えなくしている。全身擦り傷や切り傷にまみれているし、息遣いも荒くなっている。 こんな姿を両親に見られたらなんというのだろうか、などとペペスは思ってしまった。自分を大切に出来ないといわれて怒られるだろう、そして、二度とこんなことをしないでくれといわれるだろう。だが、ペペスは思っていた、若いからこそ無茶をできるのだろう。今無茶をしなければ、老い先短い老後の世界になってからそんなことは出来ないのだ。どうせなら、やる前から後悔するよりも、やって後悔したほうがいい…… 心と身体を通わせながら、血と風によってぼやけた視界で、ハミングの姿を捉えた。 以前、父と一緒にいたときは、どういう風に戦い方を教えてもらっただろうか?ペペスは思い返す。何をしていたのか、ポケモンと戦うときは、体力、相性、足場、天候、持ち物、そして運。全てを駆使しなければいけないということも聞いた事があった。なるほど、今ならばその意味が痛いほど分かってしまった。 相性はまだいけるかもしれない、足場も頼れるパートナーが何とかしてくれるが、自分の体力だけはどうしようもなかった……今現在の天候もよろしくない。雲が動き始めれば、電撃が全て吸収されてしまうだろう。だからこそ、この一撃に全てを込めるつもりで、ぎっと瞳を強く輝かせる…… 攻撃をするときはどうしただろうか、父はなんといっていただろうか、そう、思い出す……電気を一点に集中させて、にっくきターゲットを見つめる、大きく息を吸い込んで、体中のエネルギーを開放する。狙いをよく定めて、狙い撃つは十万の電撃…… 「"10まんボルト"!!」 超至近距離で、ペペスは今時分がもてる最大の電撃を叩き込んだ。バリバリと雷が回りに飛び散り、けたたましい音が空中で鳴り響く。地上のポケモンが見ていたら、雷が鳴ったと勘違いするだろう、実際に鳴ったが。一瞬だけ強く光った光は、すぐに消えて、ペペスは学理と肩を落としてパインに力なく話しかけた。 「ごめん、パイン、ちょっと下がって様子を見よう……」 「ええ、分かりました」 ペペスはビカビカと発光している電撃が収まるのを、下がって様子を見ることにした。恐らく、相手はそう簡単に食らうとは思えないだろうが、少なくともあれだけの行動を起して無傷という結果に終わってしまうということだけは考えないようにした。 光が収まってあたりが見渡しやすくなる。電撃を至近距離で受けたハミングは、体中に電気を帯電させながら、ふらふらと浮遊していた…… 「グッ、なかなか……味な攻撃をしてくれるじゃないか…………」 どうやら避けようとして失敗したらしい、ひどく体中から焦げ臭い匂いが漂ってくる。ペペスは警戒を解かずに、相手の様子を伺った。一撃を決めたくらいでは、相手が倒れるとは思っていないからだ。だが、ペペスに戦う力はもう殆ど残っていないため、ペペスは相手の攻撃を避けたらそのまま逃げようと考えていた…… 「ほら……返すよ!!」 ハミングはぐぐっと翼を広げて、自分に逐電されたものをそのまま二匹に向けて放出した。バリバリと雷特有の耳が壊れるような音がして、二匹に向かって電撃が放たれた。 耳を劈くような奇音と、異常に発行する電撃が二匹に向かって迫る。ペペスは驚愕した、チルタリスの羽は雲のようなもので出来ているため、電撃を吸収するものと考えていたが、実際に放電してきたために、先程の攻撃はあまり意味の無いものということが分かった。つまり戦うだけ無駄だったのだ…… 「!?まずい!!」 「回避します!!」 「いや、避けるな!!」 回避しようとしたパインの行動を手で制して、パインが驚愕に顔をゆがめた。何を考えているのだろうという顔もしていた。ペペスはこれ以上パインに力を使わせたら、本当に今度こそ空から真っ逆さまという最悪の展開を恐れて、これ以上念力を使わせないようにした。 代わりに、攻撃を全て自分に受けようという考えを思いついた。電気というのは逐電するポケモンも存在する。電気タイプの中でも、エレブーやサンダースなんかも逐電をするタイプになる。だがピカチュウは電気タイプでも巨大な電気を逐電する力などはないが、少なくとも避雷針代わりにはなるとペペスは思い、パインを押しのけて、ぐっと両腕を広げた。 「何をしているんですか!?」 「避雷針」 「っ!?」 パインが目を瞑って何かを唱えていたが、もう遅いかもしれない、多分死なないだろうなどと暢気に思いながら、ペペスは目の前に迫る電撃に供えて歯を食いしばった。こんなときまで灰色の思考で、自分の危険とかはどうでもいいのかなと思っていた…… 「"テレポート"っ!!」 パインの声がして、今いた場所にいた二匹がいきなり別の場所に転送された。ペペスはきょろきょろと辺りを見回した、先程と同じような景色に見えるが、上にある宝島は何だか大きくなっている。はっとして下を見たら、小さくなった電気が横に伸びるのが見えた…… 「パイン?何したの??」 「現在高度……い、10000……14000m……ここまでくれば、きっと相手も上がってくるのに時間がかかります…………」 「……」 「私は、ペペスに無茶をさせたくないために、ペペスと一緒に来たんです。あまり無茶をしないでください……」 そういって微笑むのは、彼女なりの優しさなのだろう、自分も危ないというのにそこまでペペスのことを考えてくれているという気持ちに、何だかさっきの軽率な行動が申し訳ない気持ちになった。 「ご、ごめん……」 「分かればいいですよ、さぁ、上に上がりましょう…………」 二人がお互いに頷きあって、上を目指す。殆ど戦う力は残されていなかったが、今なら何がきても何とかなりそうだなとペペスは思っていた…… 逃げることも、戦うこともどちらも大切だ。 問題は、状況に応じて、どちらを優先させる行動かということを見極めることだろう。 現在高度14300m……ペペスとパインの頭上には、どんどん大きくなる宝島が、影を作って浮遊しているのだった…… 続く ---- - 二人の「持ちつ持たれつ」な姿に 深い友情を感じました(涙) ―― &new{2010-08-02 (月) 04:41:34}; - おーこれはこれは! ―― &new{2010-08-03 (火) 02:43:58}; #comment