作者:[[想夏]] 懲りずにまた投稿してみました。 注意:この小説にはまだまだ先になりますが官能表現が含まれます。 ----- ――今日の朝はいつもより寒かった。 そのせいなのだろうか、普段より一時間早く起きる。 窓を開けてみると、 「……かなり積もってるな。」 白くなった空から雪が降っていた。小さい頃は好きだったが、今は好きじゃない。通学に不便だし、寒いし。 「学校に行く準備をするか。」 と、いつもとはほんの少し違う朝を迎えた。 俺はディム。種族はルカリオで高校2年。高校は電車で一時間かけて通わなくてはならない所にあり、正直面倒臭い。 俺はいつもと変わらず駅に着き、いつもと変わらず電車に乗った。いつもと変わらない理由で、学校に行くためだ。 いつもと変わらない退屈な日常。いつもと変わらない退屈な生活。今もこれからもこれが続いていくのだろう。 俺はいつもと同じ座席に座った。電車は新幹線の椅子の並びと同じだ。座り心地はまぁいいほうだろう。 俺はいつものように携帯をいじって時間を潰すことにした。 ------ 電車に乗って40分経った。外を見てみると雪はまだ降っていた。起きた時よりも降っているかもしれない。 そのせいか今日はいつもより電車が遅い。やっと家と学校の半分の距離にある駅までついたところだ。 「あの、隣に座ってもいいですか?」 突然声をかけられた。そっちをみると、俺と同じ高校の制服を着たクチートの女の子だった。 …けっこう可愛い。 「構いませんよ。どうぞ。」 こうして隣にクチートが座ることになった。といっても、ただ隣に座っただけだからとくに喋ることもなく、そのまま駅に着いてしまうだろう。 ------ …10分経った。もちろん喋ることもなくただただ時間が過ぎた。……いつもと変わらない事だ。彼女は教科書を見ていた。使っているのを見る限り同じ学年みたいだ。 キキー、 「うわ!!」 「キャア!!」 突然電車が急停車した。駅に着いたわけでもないのに…… いったい何が起きたんだろう。 「乗車中失礼します。只今大雪のため停止いたしました。誠に申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。」 あり得ない。このまま電車が止まったままかよ。 「まさか止まるなんて。どうしよう。」 隣のクチートがぽつりと呟いた。もしかしてこれって話しかけるチャンスかも… ってこのタイミングで何考えてんだ俺。落ち着け。 「すいません。同じ高校ですよね。」 「えっ!?あっはいそうですが。」 驚いた。まさか彼女から声をかけてくるとは。 「えっと名前は……」 「俺はディムです。呼び捨てでいいですよ。後、敬語も使わなくていいです。」 「ディム、よろしく。私はリン。もちろん敬語は使わなくていいよ。それでこれからどうすればいいと思う?」 リンか……明るい感じの人(ポケモン)だな。 「よろしく、リン。まず学校に電話してみる。担任の電話番号知ってるし。」 「じゃあお願い。」 俺は担任のグランブル先生に電話をかけた。 「おう、ディム。どうした?」 「すいません先生、電車が大雪で止まってしまったので学校遅れます。」 「ああ、今日は学校に来なくていいぞ。」 ……今何て? 「さっき決まったんだが、雪がかなり積もったから今日は学校休み。まぁゆっくり休めや。じゃあな。」 ……そんなんでいいのかよ!?何てアバウトな…… 「どうだった?先生たち何て言ってた。」 「今日は大雪で学校休みだってさ……」 「えっ!!じゃあ今電車にいる意味ないじゃない。」 「そうだな。ったくあのグランブルめ……」 「担任ってグランブル先生なの?」 「ああ、今日は学校休みになったから、だって。電話とか普通の会話になると声でかくなりやがって……」 「えっ!現代文の時はあんなに静かなのに?」 「ああ、逆にしてほしいよな。あいつの授業聞いてると眠くてさ。」 「ふふ。こっちの担任の先生はドーブル先生なんだけどね……」 とこんな感じでリンと喋ることになった。リンを改めてみると、ルビーのように透き通っていて、惹き付けられるような綺麗な赤い目をしていて、笑った顔は眩しすぎるほど可愛らしかった。 ……って何考えてんだ俺。会ってまだ10分位しか経ってないぞ。 「ディムは何か夢はある?」 「夢?特にないなぁ。リンは?」 「私はね、全国大会のコンテストで優勝すること。そのために毎日練習してるんだ。」 コンテストの事を話してるリンの顔はとても綺麗だった。無意識に見とれてしまう。 「叶うといいな。」 「うん。ありがと。」 「大変長らくお待たせ致しました。間もなく運転を再開致します。」 やっとか……まぁこのまま止まっていてもいいんだが…… 「やっと動いたな。」 「そうだね。でもディムと話してたから待ってても退屈じゃなかったな。」 「えっ!」 リンの言葉に俺は顔を赤くして動揺してしまう。 「あっそんなに深い意味はなくて……」 リンの顔も同じくらい赤くなる。 ……しばらくの間2人とも口が開かなかった。 「運転を再開致します。次はジップシティです。」 ……乗り換えて自分の家に帰るか。 「俺はここで乗り換えるけどリンはどうする?」 「私もコンテストの練習があるからここで降りるわ。」 俺たちは電車から降りた。……これでリンとも関わることはほとんどなくなってしまうだろう。 「じゃあまたね。ディム。」 「ああ、じゃあな。」 そして俺は帰りの電車の方向を向いて歩き始めた…… 「また次もディムの隣に座っていいかな?」 ―まさかリンからこんなことを言われるなんて…… 当然、リンの声に俺は振り向いた。 「ああ、別にいいよ。」 「うん、約束だよ。」 そう言って俺たちは別れた。俺の心は今までとは少し違う明日が待ち遠しくなっていた。 ------ あの大雪から一週間経った。あれからはリンと一緒に登校することになり、毎日が楽しくなってきた。今まで退屈だった学校も楽しいと感じるまでにだ。 「よお、最近楽しそうじゃん。何かあった?」 こいつは俺の親友であるサンダースのレク。持ち前の明るさで周りを楽しませるのが得意なやつだ。結構女子にはモテる。 「まあ、な。」 適当に相づちをうつ。こいつにはいつもはいろいろなことを隠さずに話すが、今回のことは何故か喋りたくなかった。 「怪しいな。好きな人でもできたか?」 「なっ!?そういう訳じゃ……」 これはレクにいるって答えてるもんじゃ……ってええ!俺はリンのことが好きなのか?確かに一緒にいて楽しいけど…… 「やっぱりな。顔が幸せですって訴えてるし。」 しょうがない……レクには打ち明けるか…… 俺はレクに大雪のことを一部始終話した。話していくうちにリンに対しての感情が好きってことを自覚しながら…よくいう一目惚れってやつか。 「なるほどな。ついにお前にも春が訪れたわけだ。それで相手の名前は誰だよ。」 ……ついにきたか。しょうがない。言うしかないか。 「……リンって名前の子。」 「ああ、あいつか。確かに可愛いよな。結構男子からモテるし。」 「リンのこと知ってたのか?」 どうやら知っていたらしい。レクはかなりの情報通で女子の噂ならほとんどしっている。 「当たり前だろディム。知らない奴はほとんどいないぞ。2つ隣のクラスにいて、学年で一番可愛いってほどじゃなくても、性格が良いからかなり人気だぞ。狙ってる奴もかなりいるし。」 そうだったのか。知らなかった。 「なるほど。最近一緒に登校してる男子がいるって噂がたちはじめたけどお前だったのか……」 噂が立ってたのか……これから少し気をつけないとな。 「このクラスにも狙ってる奴はいるから気をつけろよ。俺はお前の恋が実るように出来るだけ応援するからさ。」 「ああ、ありがとな。」 相談して良かったな。いろいろ危なかっ…… 「ディムー、いるー?」 目立たないように気をつけようって思った所で……ああ、やっぱり野郎共の視線が突き刺さってくるよ…… ------ その週末、俺はリンにきてほしい所があると誘われ、ついていくことになった。 あの後クラスの男子の大半から質問攻めにあった。『いつからそんなに仲良くなったんだ。』とか『どこまでいったんだ。』とか、あれはかなり疲れた…… ……それでもリンに誘われたんだから、後でまたいろいろ質問攻めに遭おうともついていってるんだが。 「着いたよ。ここ、ここ。」 俺はリンが指さす方向を見上げた。そこには…… 「……コンテスト会場?」 「そう。前にも喋ってたコンテストの大会が2ヶ月後にあるんだ。それで、今私がどこまで出来るかディムにみてもらいたいの。」 「何で俺に?」 別に俺に見てもらわなくても、コンテストに詳しい人にみてもらえればいいのに。 「コンテストを見る人が全員詳しい人じゃなくて、一般の人もいるわけじゃない?それでディムだったら何でも思ったことを言ってくれるから感想を聞きたいの。それに……」 そこでリンは上目遣いでこちらを見た。 それに……?続きはなんだろう? 「それにどうしたの?」 「ううん、何でもない。早く行こ。」 「あっ、待てって。」 こうして俺たちはコンテスト会場へ入った。 ------ 「すいません。練習を予約しておいたリンですが。」 リンが受け付けを行う。コンテストは全国的にとても人気で、練習もリンのように予約をしなければ出来ないほどだ。 「リンさんですね…5番練習場でよろしいでしょうか。」 「はい。」 「それではごゆっくりどうぞ。」 「ありがとうございます。」 俺はリンに連れられて練習場へ移動した。 「じゃあ早速演技をみてくれない?」 「ああ。」 リンは俺の返事を聞くと最初の立ち位置に移動した。 ……始まった。音楽が流れると同時にリンは丸く輝く光の球を会場の中心に出現させた。フラッシュを応用したもののようだ。その光はほんの少し温かく、柔らかい光だった。まるで冬の太陽のようだ。 その光に照らされてリンは回りながらスキップをして舞台のあらゆる所を駆け巡る。そして彼女が通った場所にはその場で回転している彼女の分身が次々と現れていく。『影分身』だ。 しばらくしてリンが舞台の中央に戻ってきた。すると、分身と一斉に頭のツノを軸にして回りながらかなり高く跳躍をする。彼女とその分身は跳んでいる間に辺りに光で乱反射してとても綺麗な氷雪を散らばせていく。どうやら冷凍ビームを極限まで抑えて放ったものらしい。 フラッシュの光が消えた所でリンだけが着地をした。と同時に自分の影と氷雪に向かって電撃を浴びせた。当たった瞬間、影と氷雪と電撃はまるで花火のように観客席と舞台で火花を散らした―― 「これで終了。どうだった?」 ……どうだったも何も、 「凄いよ。本当に凄いと思う。詳しいことは俺には分かんないけど、これならかなり良いところまで行けるんじゃないのか?」 俺はリンに率直な感想を述べる。あまりに凄いものを見ると言葉が出ないって本当なんだな。 「良かった。この演技を見てくれたのはディムが初めてなんだ。」 「どういうこと?」 「リン様、練習終了予定時刻になりましたので終了してください。」 タイミングの悪い所でアナウンスが終了を告げた。 「帰りの途中で教えるからまずは外に出よ。」 「わかった。」 俺たちはひとまずコンテスト会場を出ることにした。帰り道、ここに来る前には降っていなかった雪が少し降り始めていた。 「さっきの質問の答えなんだけどね。」 リンがさっきの続きを話し始めた。 「実は今までのコンテストは別の演技でやってたんだ。けど、今回は新しく考えたのでやろうって思ったの。そこであの雪が降り積もった朝の日をテーマにしてこれを作ったんだ。だからディムに一番最初に見て欲しくて……」 俺たちが初めて会ったその日をテーマに……何か凄く嬉しいな(照) 「そうだったのか。だったらなおさら勝って欲しいな。」 「うん、任せて。まずは全国に出られるように応援よろしくね。」 と、リンは俺の手に自分の手を合わせてきた。リンを見ると、顔が少し赤くなっている。それにつられて俺の顔も赤くなっていった。 俺たちは駅まで手を繋いで帰った。今日の出来事でますますリンの魅力を見つけることができ、お互いの心の距離が近づいたように感じた。 だが一方で俺にはリンが遠い存在のように感じた… ------ 次の月曜日、相変わらずリンと一緒に登校した後、俺はレクに教室で週末の出来事を話した。今後の参考にするためだ。 「ばっかだなあ。もう少し先に行けただろ。」 「先って?」 「キスに決まってるだろ、キ・ス。それも分かんないのかよ、この純情奥手野朗が。お前は初恋体験中の乙女か。」 とレクに散々いわれた。 「いや、だってまだ会って間もないし、そんな感じじゃなかったから……」 「お前から聞いている限りそういう雰囲気だったの。それに会った期間じゃなくて気持ちだろ?おれだったら攻めにいってるな。そんなだと、リンちゃんに飽きられるぞ。」 でもなあ…リンが俺のこと好きなのかなんてまだ決まってるわけじゃないし。 「ちょっといい?ここにルカリオのディムって人がいるらしいけど誰かしら?」 と、いきなりグレイシアの女子が教室に入ってきた。みためはけっこう綺麗な感じだ。 「おい、あのグレイシアって噂のレイア様じゃ…」 「本当だ。またディムがらみかよ。あいつ何であんなに美人と知り合いなんだ?」 クラスの男子どもがあちこちでひそひそと話し始めた。レイア『様』?おもいっきり初対面なんですけど誰ですか? 「こいつがディムだけど、なんか用か?」 レクがさっきのグレイシアの質問に答えた。 「へえ、この人がディム…まあまあってところね。」 レイアと呼ばれたグレイシアはそういっておれを品定めするようにみてくる。……なんだこいつ。 「俺に何の用だよ。」 「別に。ただどんな人か見にきただけよ。」 ムカつくやつだなあ。初対面でそれはないだろ。 「こんなところにいた。なにやってるのよレイア。」 と、なぜかリンが教室にはいってきた。 「別に。あなたの会話にいつもでてくるディムって人が誰か知りたかっただけよ…リンならもっといい人を選べるんじゃない?例えばこのサンダースとか。」 レイア(…だっけ?)が言った。……くそっ、気にしてることをずばずばいいやがって。 「別にいいじゃない。レイアには関係ないでしょ。」 「ちょっといいかな?お2人はどういう関係で。」 レクが2人の会話にはいった。……ナイス、レク。 「えっと、ディムこの人は?」 「ああ、俺の親友のレク。俺が一番信頼を置いているやつ。ところで俺も2人の関係を知りたいんだけど…」 「うん。この人は私の友達のレイアって言うの。ごめんね。いきなりでびっくりしたでしょ?」 なるほど。性格がまったく違う2人がよく友達になったな。俺とレクも人の事いえないけど。 「へえ、レイアさんはわざわざ友達の気に入ってる人を見に来たんだ。」 とここでレクがとんでもないことをいう。まさかリンが俺の事を気に入ってるなんてそんなことないだろ。 そこでリンとレイアを見てみると、2人とも赤くなっていた。 「べっ別に気にしてなんかないわ。たまたまこっちのほうで用事があったからついでにきただけよ。」 …逆に気にしてること丸わかりです。 一方、リンはまだ赤くして、一向にしゃべる気配がない。 ……もしかしてリンが俺のこと好きだって認めていいのか? 「おい、3人とも顔真っ赤だぞ。」 レクが話す。…もともとお前が作った状況だろうが。 「うっうるさいわね。行くよリン。」 「えっ、待ってレイア……じゃあね。ディム。また放課後に。」 「あっああ。またな。」 そこでリンとレイアは自分の教室に帰って行った。なんだったんだいったい。……まだ野朗どもの目線はこっちに向いてるし。 「これで分かっただろ。リンちゃんはお前のことが好きだって。」 そのことのためにあんなこと言ったのか。 「なんとなく分かったよ。………ありがとなレク。」 「なにいってんだ。俺とお前の仲だろ?早くキスまでこぎつけろよ。」 なんだかんだいってレクは頼りになるな。……一言余計だけど。 ------ その日の放課後、今俺たちは約束どおり2人で一緒に帰っている。 「今日の朝はいきなりレイアがあんな事言ってごめんね。」 「いや、別に気にしてないよ。」 そこで、会話が途切れてしまう。リンに気にしてないとはいったものの、俺はかなり朝のことをかなり気にしている。 リンもどうやら気にしているようで、俺たちはなかなか会話が弾まず、ただただ駅へ歩いていった。 突然リンが口を開いた。 「あ、あのね……」 「ん、どうした?」 りんの方を見ると、顔を赤くさせながら、もじもじしている。一体どうしたのだろうか。 「お母さんにはもう許可をもらってるんだけど……」 次の言葉がでないようだ。そうはいっても、俺がここで気がきいた言葉を言えるわけもなく、ただ黙ってしまう。……つくづく自分が情けない。レイアの『リンならもっといい人を選べる。』という言葉が思い出される。 「……今から私のうちに来ない?」 「えっ……」 しばらくの沈黙……リンからこんなことを言われるとは思いもしなかった。 「い、嫌なら別にいいの。ただお母さんにディムのことを喋ったら、『今度うちに連れてきなさいよ』っていわれてて……」 「いや、行くよ。むしろ行きたい。」 「う、うん。じゃあ行こ。」 こうして俺は電車を途中下車して、リンの家にいくことになった。 ------ 「ただいま。」 リンの家に入った。家の中はとても綺麗で新築のようだった。 「あら、お帰りなさい。」 リンのお母さんが右の扉から現れた。 「約束どおりディム君を連れてきたよ。」 「はっ初めまして。ディムです。いつもリンさんにはお世話になっております。この度はお誘いいただきましてありがとうございます。」 いつもは使わない敬語を使ってリンのお母さんに挨拶をした。やはり、好きな人の親の前は緊張してしまう。 「いいのよ。そんなに固くならないで。さあ、2人とも入って。」 「おじゃまします。」 とこんな感じで家の中に入った。リンのお母さんがリンになにか耳打ちをする。すると、リンは顔を赤くして俯いてしまった。何をリンに言ったのだろうか? 「今日は鍋にしてみたの。ディム君も一緒に食べましょう。」 「それではお言葉に甘えさせていただきます。」 「ええ、たくさん食べてね。」 俺たち3人は会話をしながら食事を楽しんだ。 会話の内容は主にリンの家の家族構成、学校での様子、ニュースで話題になっている芸能人等だ。 リンの家は単身赴任中のお父さん、成人して仕事をしているお兄さんがいるみたいだ。 「ごちそうさまでした。」 「いえいえ。ディム君って本当に行儀がいいわね。これならリンも任せられるわ。」 「もうやめてってば、お母さん。」 その言葉に俺とリンは顔を赤くする。 どうやらお母さんには気に入ってもらえたようだ。でもきまずすぎてこの場にはとてもいられない。 だれかとバトンタッチができるならしたいところだ。…そもそもバトンタッチは俺にはできないが。 「すいません、そろそろ家に帰らないと…」 「あら、もうそんな時間?またいらっしゃいね、ディム君。」 「はい。今日はお邪魔しました。」 リンともう少し一緒にいたいが、親も心配するので帰らなければいけない。 「あっ、明日の朝に作ろうと思っていた肉じゃがの食材がないわ。リン、悪いけど買ってきてくれない?」 「うん。わかったわ。じゃあ駅まで一緒にいこう。」 こうして俺とリンはもう少し一緒にいられることになった。 ------ 「今日は家に呼んでくれてありがとな。」 「うん。こっちも楽しかった。」 俺たちは駅まで会話をしながら歩いた。行きみたいにきまずくはならず、かなり会話が弾んだ。 そして駅に着いた。そのとき、 「ねえ、私のことどう思ってる?」 「えっ……」 リンの言葉に心臓がばくばくと鳴り出す。 「私のことを友達としてみてる?それとも…恋愛感情をもってるかって事。私は…薄々分かってるとは思うけど……ディムの事がすき。今まで誰かをこんなに好きになったことが初めてなの。ディムはどうなの?」 さらに心臓がばくばくとなった。俺の答えはもちろん。 「お前のことが好きだ。俺もこんな気持ちになったのは初めてだよ。」 「じゃあ私とつきあってくれる?」 「ああ、当たり前だろ。」 …こんなに速く付き合う事ができると思わなかった。夢なら一生醒めてほしくない。…これは夢じゃないが。 「よかった。ディムと両思いで。これからもよろしくね。」 「ああ。こんな俺でよければ。」 両思いだったのは本当に嬉しい。ただレイアの言葉がまだ俺の心の中に引っかかっていた。 …未だに俺がリンにとってふさわしいのかを疑問に思っている。 「ねえ、ちょっとしゃがんで。」 リンの声で物思いからさめる。俺は何の疑問ももたないままリンのいうとおりにした。 「こうでい…!!」 突然の事にうごくこともできなかった。リンの顔が1cmも満たないところにあったからだ。しばらくしてリンの唇と俺の唇が重なっている事が分かる。…俺はリンとキスをしていた。 「…ファーストキス。ずっとディムにあげたかったの。恋人同士だから別にいいよね?」 「…俺も初めてだよ。なんか恋人同士だってやっと実感しはじめたよ。」 リンの唇はとにかく柔らかかった。 「今日はありがと。本当はもっとディムと一緒にいたいけど、明日も会えるもんね。」 とリンは今まで見てきた中で一番の笑顔で言った。 …リンと付き合うことは今日だけでなく、明日も明後日も続いていくことなのだ。そう考えると自然と俺も笑顔になる。 …笑うってことは何度もしてきたが、こんな風に自然と笑顔になるのは初めてかもしれない。これが『幸せ』ってことなのか? 「ああ、またいつもみたいに電車の中で会おうな。」 一生の中で最高の笑顔で俺はリンに応えた。 「うん。また明日。」 そして俺は電車のホームへ向かう。リンのことを頭に浮かべながら。 ―To be continued― [[後編へ>雪の降り積もる朝 後編]] ------ やっとキスまでいけた… まだまだ続きます。 ------ 感想等コメントがありましたらどんどんどうぞ #pcomment IP:125.13.214.91 TIME:"2012-08-07 (火) 18:14:08" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E9%9B%AA%E3%81%AE%E9%99%8D%E3%82%8A%E7%A9%8D%E3%82%82%E3%82%8B%E6%9C%9D" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"