#include(第八回短編小説大会情報窓,notitle) &size(25){闘争の先}; ※過度の幻想補正が含まれます。 ※&color(white){官能表現が含まれます}; 作者:[[カナヘビ]] 「トレーナーさん?」 机に座っている男の後ろから、ドアを開けて呼ぶ声がした。 「ん? レナか?」 声に反応して振り返ったトレーナーの視界に入ったのは、入り口から覗き込む1体のレディアンだった。 「ヨハンは……外?」 「ああ。またトレーニングしてるよ。本当に戦いが好きだからね。昨日のこと、頼むよ」 レナと呼ばれたレディアンは、頭を小さく下げて飛び立った。 玄関を出た先からは、戦闘音と思われる音が轟いていた。ポケモンバトルのはずなのに、なぜか金属のぶつかり合うような音が聞こえてくる。 レナは外に出ずに着地し、戸の物陰から覗き込む。 「おら、どうした」 荒々しい怒号と共に、風の刃が空を切り裂く。相手のハッサムはハサミで防ぐが、命中の反動で後ずさってしまう。 ハッサムと対峙していたのは、戦闘欲をむき出しにしたアゲハント、ヨハン。体からあふれ出した闘気は、淡く赤いもやのように彼の体を覆い、剥き出しの闘争心は、鋭く尖った口と共に突き出されていた。 「それのどこがバレットパンチだ。ツボツボの体当たりみてえな速度しやがって。こちとら手加減してやってんだぞ。グズグズしてねえでさっさと当てろ」 悔しさを表にだしたハッサムは、ハサミを震わせてヨハンを睨み付けている。翅を動かすと共に地を蹴り、ヨハンに突撃していく。 「遅え」 ヨハンは翅を小刻みに動かし、ハッサムの突き出したハサミを水平移動してかわす。回避際に後ろを振り返ったヨハンは、小さいシャドーボールを瞬時に作ってハッサムの背中に当てた。ハッサムはめげずに振り返り、ヨハンに攻撃を繰り出していく。 「あのな。何で、オレが遅えなんて言う暇があるんだ? 足を動かして地を蹴る動作が丸見えだぞ? そんなクソのろいパンチでなんでテッカニンやらを倒せたのかは知らねえが、どんだけ強かろうと、当たらなきゃ意味ねえんだよ。ほら、当てろよ。こちとら余裕でしゃべれるぞ」 ハッサムは、充分すぎるほど目に留まらない速度でバレットパンチを放っているのだが、ヨハンは、翅で飛んでいるとは思えないような、垂直や水平の動きで全てをかわしていた。そのあまりに激しく小刻みな翅の動きは、風を切り裂くかのような音を発生させていた。 「ほらほら。オレの耐久知ってるだ。 一発でも当てりゃ充分なんだ。ほら、当てろよ」 本来ならば決してできるはずのない動きをしているヨハンは、挑発じみた言葉を発しながら攻撃をいなしている。 動き続けている間にも闘気は揺らぎ、徐々に色を濃くしていくようだった。 「もういい」 ヨハンは翅を大きく動かし上昇する。激しく動かす翅を闘気が包み、羽ばたくと共にハッサムに吹き付けられる。熱く吹きすさぶ熱風はハッサムにまともに当たり、吹き飛ばしてしまう。吹き飛ばされたハッサムは地に伏し、動かなくなる。 「けっ。こんなのでガチパ組むなんざ、トレーナーもよく考えるな。さて……」 ヨハン言葉を切ると、再びシャドーボールを生成し、放った。それを向けられたレナは、小さく驚きながらも戸に隠れ、凌いだのだった。 「なんだレナ。 お前も戦いたいのか?」 ヨハンは口を尖らせて聞く。レナは恐る恐る物陰から顔を出し、翅を広げてヨハンに近づく。 「ううん。ちょっと、そばにいたくて」 「なんだ、またそれか。オレ、お前と一回も戦ったことねえぞ。弱くてもいいから戦えよ」 「遠慮しとく。戦うの好きじゃないし」 「つまんねーの」 ヨハンは口先を丸め、着地する。レナも倣って翅を止め、ヨハンの横に並んだ。 周囲には、ヨハンとハッサムのバトルを見ていたギャラリーが残っていた。既にハッサムは運ばれ、囲まれているのはヨハンとレナだけだった。 ヨハンはいぶかしげな目でレナを見ていた。溢れる闘気は小さくなったものの、未だにヨハンを覆っている。レナはヨハンと目を合わせることができず、伏し目がちに佇んでいる。 「いつもトレーニングご苦労様。彼……コウヨウはどんな感じなの?」 レナは聞く。ハッサムの名はコウヨウというらしく、ヨハンは大げさに首を振る。 「ダメだあんなんじゃ。正直、あんなのでチャンピオンに勝てたなんて、信じられねえぜ。同じ虫タイプだからって頼まれたが、見込みねーよ。オレがパーティにいりゃ、いくらでも3タテできるってのに」 「ヨハンって、本当に強いのね」 「当たり前だろ? 生まれつき戦いたくて戦いたくて仕方なかったからな。オレのセンスと才能も自然についてきたさ。一時は、トウカの森にメラルバがいるって噂になったんだぜ? まあ、なんだかんだ丸め込まれてトレーナーについてきたはいいものの、世界そのものが弱すぎるぜ。いいか? オレが強いんじゃねえ。チャンピオンだの、なんだかんだだの、揃いも揃って弱すぎるんだ。そのせいで、強すぎるからってパーティ外されるんだから、いい迷惑だぜ」 気がつけば、ヨハンとレナの会話は、ただ単にヨハンの愚痴をレナが聞く形となっていた。 「強くて何が悪いんだよ。たとえば、オレが伝説だったら普通に入れるだろうが。アゲハントが陸のゴミだなんだって言われてるなんて知らねえが、別にそれでもいいじゃねえか。熱風使えたり、ファイアローのブレバを避けられることの何が悪い? こんなんじゃ、6Vだかなんだか知らねえが、意味ねえよ」 「そうね。ヨハン、強いのにね」 一通り溜めたものをだしてすっきりしたのか、ヨハンは一息つく。レナは頭を小刻みに動かし、ヨハンをちらちら見ていた。 「そういや……。最近、やけに増えたよな」 ヨハンは周囲を見渡した。ギャラリーはほぼいなくなっていたが、少数のポケモン達が残っていた。全てが虫ポケモンで、更に雌ばかりだった。 「戦いてえなら戦うんだが……。こいつらそんな目してねえし。何だあの目? オレのこと見すぎだろ」 ヨハンは突っぱねるような口調で言う。 「その……あまり気にしなくていいと思うよ」 レナは掠れるような声で言った。 「そうか? まあ、戦う気はなさそうだし、気にすることはねえか」 ヨハンは言い放つと、周囲には目もくれず、屋内へと入っていく。 「あ、待って……」 レナも慌てて追いかける。 ◇ 種族柄アゲハントは、その見た目に反して攻撃的かつ好戦的なポケモンなのだが、ヨハンに関しては生まれつきそういった性格であった。 幼い頃より戦いに明け暮れ、本来不可能であるはずの技をも発現するセンスと才能は、彼の戦闘欲をどんどん高くしていった。そのおかげで、アゲハントに進化して特性の上でも闘争的になった際も、無性別はおろか異性であっても揺るがぬ闘争心を持ち続けるまでになっていた。余りに過ぎた戦闘能力ゆえ、さすがのトレーナーも、チャンピオンを超えて以降はヨハンを使わなくなっていた。代わりに他のポケモンを育て、そのトレーニングをヨハンに頼んでいるのだった。だが、もはやアゲハントどころか、ポケモンの枠すら超えていそうな彼の強さの前では、トレーニングどころか逆にサンドバックになるのが関の山だった。 そんな彼のそばに。トレーナーの手持ちの1体であるレナは、いつも佇んでいた。 「寝ても覚めてもお前の顔ばかり。戦いたいわけでもねえのになんでオレのそばにいるんだよ」 「ただ単に、いたいの」 「変な奴だな」 ヨハンはコップに用意されたポケモン用栄養剤を吸っていた。ヨハンと話しているレナは、微かに頬を染めている。 「ねえ、ヨハン。昨日、トレーナーさんから話がなかった?」 レナはもごもごと聞く。 「話? ああ、そういやなんかあったな。まともに聞いてなかったから、いまいち覚えてないんだけどな。ツガエだの新しい世代だの言ってた気はするな」 「そ、そうなの……」 レナは黙る。一対目の腕は互いに合わさってもじもじとし、二対目の腕は空をぶらぶらしていた。 「あのね。……例えば、なんだけど。ヨハンって、お嫁さんのことって考えてる?」 レナは聞く。ヨハンはレナに目を向け、小首を傾げる。 「嫁? さあな。話には聞いたことあるが、何でいるのかも分かんねえし。いつでも戦える戦闘相手ってことなら、大歓迎だぜ。でも、だったら別に雌じゃなくてもいい気がするんだがな」 ヨハンは言いつつ、その目をレナに向ける。 「なんだ? お前、オレの嫁になりてえのか?」 言われた途端、レナはびくりと体を振るわせた。目にも見えて顔を赤らめ、触覚すらそわそわしている。 「なんだよお前。オレと戦いてえなら、始めからそう言えよ。もったいぶりやがって」 「ヨハン、そうじゃなくて……」 レナの話を聞かず、ヨハンは外へ出る構えをしていた。 「外に来いよ。まあ、勝つことは無理だろうから、戦うだけ戦ってくれたら、嫁にしてやってもいいぜ?」 ヨハンは言うと、そのままレナの視界から消えたのだった。 残されたレナは、顔を赤らめたまま立ちすくんでいた。しかし、そのままではどうにもならない。翅を広げ、外へと出るのだった。 外は、それなりに広めの庭。トレーナーの実家はそこそこ大きく、ポケモンバトルくらいなら不自由なくできる。若干雑草が残るその上に、ヨハンは飛んでいた。 「来いよ。手加減くらいしてやる」 そう言うヨハンの体は、溢れんばかりの闘気に包まれ、炎のごとく揺らめいていた。 レナは恐る恐る戦場へ。ヨハンを包む闘気は、今にも何かに姿を変えそうで、それだけで恐怖すら感じてしまいそうだった。 「それじゃあ……よろしく」 レナは腹をくくったようで、空中ではすに構えた。翅を小刻みに震わせながら、4つの拳を黄色、水色、橙、濃い橙に変色させた。 翅を振るわせるテンポを速め、空を伝わる虫のさざめき。同時にレナは前進し、剣の舞により攻撃力を上昇。黄色い手が電気に、水色の手が冷気に、2つの橙の手が闘気に包まれた。 「スローモーだって。オレが敵なら、お前はもう負けてるぞ?」 欠伸をしたそうに言うヨハン。めげずにレナは追い風で自らの速度を上げ、一直線に向かってくる。 「ふん」 ヨハンは翅を少し震わせ、小さく虫のさざめきを発動し、同時に自身も前進する。 小さくも段違いの威力を持った虫のさざめきは、レナの放った虫のさざめきを相殺、それどころか、その勢いを取り込むように肥大し、レナに向かう。 レナは急停止し、ホバリング。はすに構えて濃い橙色の闘気を纏った拳に力をいれ、空中で突き放った。 レナに向かっていた虫のさざめきは、空をも揺らす気合パンチの闘気に煽られ、相殺された。 虫のさざめきを放った直後のヨハンも、何もしていなかったわけではない。自らの闘争心をエアカッターに終結させ、下部の翅を小刻みに動かすことで蝶の舞を積んでいた。 レナも仕切りなおして体勢を整え、先ほど気合パンチを放った拳に、小さな闘気を纏わせた。続けて虫のさざめきを再び放ち、再度距離を詰める。 互いの距離が徐々に縮まる。ヨハンもまた虫のさざめきを放ち、前進を続ける。 またも相殺されるかと思いきや、ぶつかり際にレナが再度虫のさざめきを放ったことで、さざめきは完全に相殺される。 相殺の瞬間、音のごとく速さの拳が、空を切る。 見えたかはたまた勘か、ヨハンはすんでのところで水平移動をしたことえ回避、至近距離にいるレナに、燃え盛る熱風を浴びせかけた。 「うう……」 熱気に力負けしそうになりながらも、自らの追い風を強め、熱気に対抗する。その刹那、目の前のアゲハントの小さな腕の間に、黒い球が生成されているのが、一瞬映る。 頭で理解する前に反応したのか、身も凍るような冷凍パンチを無我夢中で放っていた。その瞬間に放たれたシャドーボールは相殺され、黒い閃光と散った。 「やるじゃねえか」 ヨハンは翅の動きを速め、周囲にもうるさいほどに羽ばたいく。その文字通り燃えあがる闘争心は、彼のテンションの上昇と共に熱気を増し、温度を上げていく。 「おらぁっ」 まるで暴風のごとく凄まじい熱風は、その広すぎる攻撃範囲で容赦なくレナを襲った。回避しようにもできず、腕を全て冷気に包んで対抗せざるを得なかった。 「うぅっ!」 しかし、その冷気も決して広範囲ではなく、熱風はレナの体を襲う。翅も動きが鈍り、ホバリングすることさえきつくなっていく。 片や強大な熱気。片や、小さな冷気。その威力差は明らかだが、それでも明確な温度差ができていた。 距離はそれほど離れていない。その温度差を利用し、一矢報いる一か八かの手段が、レナの頭をよぎる。 「お願い……」 レナは冷気の範囲を広めていった。拳の根元から、限界の腕の根元まで。それでも、熱気の温度と勢いは収まらない。 氷に覆われた腕に、電気が通る。拳から腕全体にそれが行きわたった時、レナは冷気のみを腕から亡くした。 「がっ」 炎ほどの温度と氷の温度。大きすぎる温度差が空気に通り道を作り、雷パンチのためにためられた電気は冷気の壁がなくなった途端に自動で放電を起こし、回避する間もなく空気を伝ってヨハンに感電した。 途端に熱気は忽然となくなり、気温は常温に戻る。いくら蝶の舞を積んでいたとしても、雷パンチなどの物理攻撃にはなすすべはなく。ふらついてバランスがとれないヨハンは、地面に落ちてしまう。 「あうっ」 それは、レナも同じ。放電地点から一番近くにいたレナは、ヨハンと同じく電気を受けてしまい、地面に落ちる。両者とも地面に落ち、互いに闘気と熱気に包まれて疲弊していた。 互いに。 熱風を受け続けたレナの体は、全身が熱く火照っていた。揺らぐ空気は淡い赤に染まりゆき、煙でも出そうなほどの熱気が、大きく揺らいでいる。 「何……?」 空気と物理法則と自然の摂理を揺るがすレナの闘気は、時間が経つにつれて色濃く収束していき、1つの腕に収まった。 熱すぎる温度は、虫ポケモンの脆い体を無常にも熱していき、発火させる。 目に見えて、現実的に燃え上がったレナの腕。レナは驚かず、その腕に力を込め、狙いを定めた。 ヨハンは動けなかった。もともと耐久に関しては、自身も言っていた通り脆かった。レナは走り、炎のパンチを振りかぶった。 「やあああっ!」 燃え上がる拳はヨハンの体に直撃し、石にでも当たったかのような鈍い音が響いた。 「あ……あああああああああああ!!」 レナは自らの拳を押さえ、痛みで地面を転がりまわった。収まっていなかった炎はレナの体に燃え移り、体を包んでいく。 「やべっ。おい、トレーナーっ」 ヨハンがトレーナーを呼びにいく声を最後に、レナの意識は消えていった。 ◇ 「大丈夫か?」 レナが目を覚ますと、そこはトレーナーの家だった。 ポケモンに当てられた共同の部屋のベッドに寝かされているようだった 自身の体をみると、所々焦げた跡があったが、大したケガなどはなかった。 「やれやれ。まさか、2体目が発生するなんてな。ヨハンだけでも原因分かってないのに、どうすればいいんだか。とりあえず、無事でよかった」 トレーナーは言うと、ヨハンに目配せをして出て行った。 バトルでもないというのに、ヨハンの闘争心は未だににじみ出ていた。ヨハンの体に沿って線が引かれたかのように、淡く赤い気が揺らめいている。 「大丈夫か?」 ヨハンは聞く。 「うん。大丈夫。……でも、惜しかったな」 レナは微笑みつつ言う。 「あの時は動けなかったからな。防ぐためには鉄壁しかなかった。岩石砲もぶっ壊す硬さだから、そりゃ痛ぇよ」 ヨハンは首を振る。 「でも……なんで、炎のパンチが……」 レナは呟く。自らが出したものではあったが、その起因するところに心当たりがなかった。 「分からねえな。オレと同じ、種族を超えたことができるってだけだ。まあ……」 ヨハンは口を尖らせ、顔をレナに近づけた。 「要するに、すげえってことだ。驚いたぜ。ポケモンなんて、普通は一度に1つしか出せねえ。でもお前はいくつも出していた。それだけでも充分だってのに、覚えられない技を発現するか? まあ、段々慣れていけ。オレも最初は、熱風が体に燃え移ったりしたもんだ」 ヨハンはにやつきながら言い、口を丸めた。 一方のレナは、至近距離にヨハンの顔があることで、動悸が激しくなっていた。顔は見る見る赤くなっていく。 「ヨハン。その……お嫁さんの話なんだけど」 レナは切り出す。ヨハンは分かっているというように頷いた。 「ああ。もちろんいいぜ。お前ならトレーニングしがいがあるし、何よりバトルも楽しいからな。いいぜ」 やはり、訳も分からずうけ合うヨハン。レナは、またもや炎が出てしまいそうなほど顔を赤くしているが、自身の中で何かを決めたのか、頷いた。 「ヨハン。その……上に来てくれない?」 「ん? なんだ?」 レナの頼みに首を傾げながらも、ヨハンはゆっくり飛んでレナの上で滞空する。 「もっと、近づいて」 レナの顔は最高潮に染まっている。 「おい、大丈夫か? 燃え出したりしないだろうな?」 ヨハンは言いつつも、降下する。 恥ずかしさで目を逸らしてしまいそうになるレナだが、気力で前を向く。ヨハンの顔が至近距離にくるやいなや、その丸まった口を一気にくわえ込んだ。 「ぬむっ」 予想していなかったのか、ヨハンは小さく翅を動かしてもがいた。しっかり拘束されていることに観念したのか、ヨハンいぶかしげな顔で、レナの上にかぶさる形で着地した。 レナは、ヨハンの口を口内でゆっくり舐めていた。こすり付けすぎず、味わうように、転がす。 口をあけ、ヨハンの口がゆっくりとでてくる。彼の闘争心は少し大きくなり、揺らめいている。 「何してんだ?」 ヨハンはいぶかしげに聞く。 「お嫁さんていうのは……、子供を作る相手なの。あたしと、ヨハンとで、子供を作るの。は、恥ずかしいけど……ヨハンなら、あたしいいから……」 ヨハンは首をかしげた。 「子供? へえ、そうだったのか。まあ確かに、オレとお前の子供だったら、強くなるだろうな。つっても、子供ってどうやって作るんだ?」 ヨハンに聞かれると、レナは再びヨハンの口をくわえた。今度は強めに激しく、転がしまくっていく。腕を伸ばして彼の体を掴み、互いに密着させる。 「んむ……」 レナは再度、口を解放する。 「ヨハン。……その、水が溢れてきたから……吸ってくれない?」 レナは下部へ目を向ける。 ヨハンも目線を追うと、彼女の足の間が、しとどに濡れていたのだった。 「なんだよこれ。漏らしたのか?」 言いつつも、ヨハンは口を伸ばし、そこに突っ込んだ。 「あ……」 細い物が動く感覚が分かるのか、レナは思わず声をもらす。ヨハンのほうも、動かすうちに本能が出てきたのか、訳も分からないままひたすら口を動かしていた。 「あ……なんだこれ」 ヨハンの戸惑う声と共に、口は引き抜かれる。レナはやはり、紅潮せずにはいられない。 ヨハンの股の間からも、その体に見合った彼の象徴が、抜き出かけていた。初めての感覚に戸惑いを隠せずうろたえるヨハンを、レナはゆっくり抱きしめる。 「それを……今度は入れてみて?」 レナの言葉に、見る見る目を丸くするヨハン。しかし、その本能をいたく刺激されたのか、大いに疑問に思いつつも、体の位置を少し下げ、挿入する。 「ああっ」 喘ぐや否や、ヨハンの闘争心が爆発的に揺らめき、熱を持った。体を震わせ、初めての感覚に身をもだえさせていた。 「う……。ヨハンの……好きにして……」 顔をしかめるレナ。ヨハン自身も何がなんだか分かっていなかったが、震え上がる闘争心と本能の赴くまま、翅を羽ばたかせ、徐々にストロークさせていく。 「はあ……ヨハン……好き……」 レナは、熱気に煽られつつも交尾を楽しんでいた。速くなった彼のストロークは乱暴に打ち付けてくるが、それでさえ幸せと思えるほど、レナは交尾できたことに感動していた。 「なんだこれ……体に湧き上がる気力。意味分かんねえ欲求。まだやりてえ。この先まで。あああ……」 接合部は、熱気のせいでもはや潤滑油は蒸発し、乾いた肌音のみが鳴っていた。それは未だに激しさを増し、ヨハンの気をのせていく。 「うう……ああ……ヨハン」 レナもつられて体を動かし、自らの熱気を高めていく。 互いにその先を欲求しあい、動き続ける。一方は知り、一方は知らずに。知らずとも、その先に求めるものは、必ず訪れる。 「なんだ……あ……ぐっ、うわっ」 絶頂の瞬間、ヨハンは一気に倒れこみ、レナに体を預けた。疲れて、抜く気力もないヨハンを、レナはいとおしそうに撫でるのだった。 「ありがとう。ご苦労様」 しかし。彼女の秘孔は、まだ物欲しげにひくついているのだった。 ◇ 「成る程な。全部分かってみりゃ単純なことだったんだな。バトルしすぎてて全然知らなかったぜ」 ヨハンとレナの前に置いてあるのは、1つのタマゴ。庭に置かれたそれは、なぜか既に淡く赤い熱気をまとっていた。 「あたし、焦ってたから、教えるの後になってしまったの。他の雌に取られたくないし、好きだったし……」 レナは顔を赤らめて言う。 「まあ、なんだ。まだいまいちよく分かってねえが、要するに交尾したからタマゴが生まれたんだな? そんでお前はオレが好きだと」 ヨハンは顔を近づけた。レナは顔を赤らめ、やはり伏し目がちになってしまう。 「まあ、いい。そういうことなら話が早え。お前とはこれからも戦うし、交尾もある意味じゃ戦いだ、やっていこうじゃねえか。それで、2体でこいつを育てていけばいい。だろ?」 「うん」 レナは頷く。嬉しさの篭った笑顔は、太陽のように晴れ晴れとしていた。 「さあて」 ヨハンは翅を振るわせる。 「こいつが生まれるまで、また戦ってもらうぜ。お前も、発言した技を制御しなきゃならねえ。そうしていくうちに、オレもお前を好きになっていくさ」 「こいつが生まれるまで、また戦ってもらうぜ。お前も、発現した技を制御しなきゃならねえ。そうしていくうちに、オレもお前を好きになっていくさ」 戦闘準備の整った彼に倣い、レナもまた、自らの拳を色づけていくのだった。 END ---- あとがき なんというか、ひどいの一言です。 一番最初に速攻でロケットスタートきっときながら、そのあとほぼなにもせず、書いたのは最終日だけという。 いや、ちゃんと煮詰めてはいたんです。ただ、中々文章にできなくて。そしたらなんと、こんなよく分からない構成に。 多分、投稿した瞬間に後悔した作品は初めてだと思います。 作品について。 『ちょう』ということでどうしても蝶しか思い浮かばず、マイナーの中のマイナーであるアゲハントを選ぶことに。 当初は、旅パで加えられたアゲハントが、廃人化していくトレーナーに対して憂いるようなものを構想していたのですが…… 構想するうちになんだか楽しくなってきてしまってですね。アゲハントが超勝気口調であることは即決まったのですが、なぜか『闘争心を具現化させるのは?』みたいになり、暴走が始まり、結果こんなになりました。 ですが、それを文章に表すことなく、結局最終日に。文字数の関係で、カットする予定だった官能も入れて、とてもお粗末な作品ができあがりました。 アゲハントの無茶苦茶な設定に関しては全く問題視していないのですが、物語の起承転結の無さや、所々の言動の不足など、思い返すだけでも気持ちの悪い文ができてしまいました。まあ、僕の信念上、誤字脱字は直しても文章の修正などは一切しないんですけどね。 それでも、結果は2票。慈悲深い方々に感謝します。本当にありがとうございます。 コメント返しさせてもらいます。 >>このアゲハント強すぎ →闘争心がありすぎる上に才能があるとこうなってしまいます。ただ、この程度の無茶苦茶さは、僕の中ではかわいいほうだったり。これから先、もっとすごい能力が出てくると思います。 >>良かったです。 →こんな作品にかけてもらえる言葉としてはあまりに過ぎたものです。でも、本当にありがとうございます。 みなさん、投票、ありがとうございます!! みなさんからの感想、指摘、評価、重箱の隅つつきなど、何かあればなんでもお寄せください。 カナヘビはみなさんの言葉を真摯に受け止め、より良い作品作りにむけて精進していきます。 #pcomment(闘争のコメント,5); IP:122.218.127.18 TIME:"2015-09-22 (火) 06:20:44" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0)"