ポケモン小説wiki
閉ざされた心の空 の変更点


「限界を超えて、"テレポート"をしたんだから、そんなに早く追ってくるとは思わないけど、やっぱり心配だなぁ……」
「心配しなくても、ここまでそんな速度で上がってくるとは思えません」
不安そうなペペスの声も、心配ないと断言するパインの言葉も、雲を通る風の音に細かく砕かれてしまう……
今いる高度が、高度19500m上空、鳥の声も、竜の咆哮も、お互いの言葉も、風に千切られる絶空の世界。自分の目と、お互いのぬくもりを頼りに、二匹は高度を上げていく。
成層圏に入り、マイナス20℃以上の寒気と冷風が二匹を襲うが、念力を使ったエネルギーの膜は二匹を地上と何ら変わりない世界と同じように包んで、空の寒さなど感じられないくらいに力を与えてくれる。
そして、その力を放出し続けるパインは、体力回復をしたものの、やはり疲労した身体は隠しきれないのか、たびたび堰を漏らすように息を吐いて、ぼやけた瞳をごしごしと擦っていた。
「やっぱり、辛いんだね」
「ええ、さすがにちょっと疲れました」
「そういうところ、変わってないね……君のいうちょっとって言うのは、倒れそうってことだよ……」
ペペスは一言一言を強調するようにパインに言葉を投げかける。パインは暫く押し黙っていたが、諦めたように口を開いた。語気を強めて、まるで棒読みの役者のように言葉を紡ぐ。
「やれやれ、やっぱりペペスは全部お見通しなんですね……」
「ふぅ、パインも強情だね……」
ペペスはため息をついて、肩をすくめた。こんな風に向きになったり、自分がぼろぼろでも決してそれを人にいおうとしない意地な性格も、ペペスには全て分かっていた。
「意固地だね、辛いなら辛いって言えばいいのに」
「意固地なのはペペスも同じでしょう?」
まさか、といってペペスは笑う。パインは少しだけ顔を顰める。
パインの言葉は否定はしないが、肯定も出来なかった。確かに意固地というのは認めるかもしれないが、パインほど頑なにムキになったりはしないものだ。などと自分で思っていた。
自他共に認めていることであるために、ペペスは自分がとても灰色ということは分かっていた。他人様から見れば、ペペスの性格はどっちつかずで、あまり人に関心を持たないという印象を受けるだろう。
そんな自分が意固地になることというのは、もちろん自分に益があることや、害のあることだけであって、他人の為に意固地になることはない。そういう性格を知れば知るほど、ペペスには友達といえるものが少なくなっていったというのも頷いてしまう。
ただただ自分のためだけに働くような省エネルギーのポケモンに、他人がついていてくれるはずが無いからだ。それは別に構う事が無ければ、どうでもいいと思っている節がペペスにはあるし、そんな高慢で大綱的な性格も、他人が近づかない一つの理由として取れるのかもしれない。彼は、自分のことだけを綱で結んで、他人の綱は自分から解いている。
だが、友達になって、親密な関係になれば成程、表面的なめんどくさがりの彼の人格が剥がれていって。本当の彼の姿を見ることができる。そのことをパインが一番よく知っているからだ。友達と付き合うということは、結局表面上の付き合いだ。不覚まで入り込んでしまうと、逆に離れて言ってしまう。あまり他人に深くかかわらないほうがいい、薄く、さっぱりした付き合いが大事だということも、有名な言葉として使われている。君子の交わりは淡きこと水の若く、商人の交わりは甘きこと甘酒のごとし。
まさに、付き合いは、薄く短く。流れる水のようさっぱりと、たまに会えば笑い合える、そんな永劫に続く中が一番いいとされているが、ペペスの場合はちょっと違う。
しつこく付きまとうと嫌がられるが、ペペスは何も言わないのだ。ペペスは何も言わないで、ふぅんとか、ヘェとか生返事をして笑うだけだ……
もしかしたら嫌われているのかもしれないという幹事とはちょっと違う。ペペスは他人に対して怒りという感情をぶつけたことが一度も無かった。少なくとも、ペペスと友達になってから、パインは一度もペペスが怒るという感情を見せ付けることが無かった。
少しの失言で少しだけむくれることや、呆れるような顔はするものの、声を荒げることも、語気を強めるようなこともしない。ペペスは他人に対して、怒りを露にするという行動を絶対に起すことは無かった。どうしてかと聞いた事があったが、失言だといって忘れてくれともいったが、微笑を浮かべて、ペペスは静かな声で、よく聞こえるように喋ってくれた。その理由が――
「僕はね、自分が怒ることで、どれだけ無駄なエネルギーが消費されるか知ってるからね、怒ること自体が無意味なんだよ……怒っても、エネルギーを消費するだけでいいことなんて何も無いからね」
実に簡潔で、実に教科書に書かれたような言葉を並べてくれた。御託を並べるのとはちょっと違う、ただただ、自分に対して、意味の無いことはしたくないという、ペペスの非常にやる気の無い言葉の一つだった。
怒らないというのは、はっきり言って無理だろう。生き物は生きていくうえで、ストレスというものを抱える、怒鳴り散らしたり、ものに当たったり、好きなことをしたり……
そんなことをして、生き物はストレスというものを発散するのだ……ペペスも何処かで絶対にストレスを溜め込んでいると思っていたが、パインは人目に付かないところでペペスが何をやっているかなど知りたくも無かったので、普段ペペスが何を思っているのか知るために、ペペスとよく一緒になることに決めたのだった。
それが、ペペスとパインが友達になったきっかけだった……
彼女は初めは興味本位で、ペペスを怒らせるような言動をとっていた……ひたすら話しかけてみたり、進行方向の邪魔をして見たり。それはただ単に、普段怒らない相手が怒ったら、どんな反応をするのかという、生き物の変化をこの目で見たいという下らない行為のためだった……
普通ならば、こういう甘酒のようにべたべたとしたくどい関係は、人は嫌がるはずだったが、ペペスは違った。パインが話しかけることには、ペペスが分かる範囲のことならば全て答え、何かやりたいといえば、気が済むまでそのやりたいことに付き合ってくれた。
パインは一度ペペスの家に遊びに行ったことがあり、そして貧乏ということを知った。ぼろぼろの家や、粗末な食料といった感じの貧乏ではなかったが、少なくとも貯蓄のない、何ともいえないあばら家を作って、そこに家族で自由気ままに暮らしていた。パインは親というものしらず、一人で生きてきたために、親のぬくもりや、家族のぬくもりと言うものを知らなかった。
パインは家に招待されたときに、ペペスは少し自虐的に微笑んで、まともなものが無くて、本当に申し訳ないなどと頭を下げて申し訳なさそうに言っていた。
貧乏で、貧困生活を味わって、なかなか経験したくない人生を歩んでいたペペスだったが、特にそういうことは気にしないらしい……
「貧乏でも別にいいよ。僕は、今ここにいて、朝起きたら、父と、母がいて、三匹で食事を取ったり、話したり、それだけで、十分幸せだから……」
そんな言葉を聞いて、パインはびっくりした。殆ど他人と関わろうともしないペペスが自分のことを他人に話すなどという行為をするなんて……パインはびっくりして、冷静になって考えた。
そして、ペペスというピカチュウの本質が、少しだけわかったような気がした。
彼の本質は、他人に対しては、ほどほどに付き合うという感じなのだが、深みまで入り込んだポケモンに対しては、自分の表面上の外皮をバリバリと破って、自身の本当の姿を晒してくれるのだ。
ペペスの両親も、他人に対していろいろと気を配ってくれたり、ペペスと仲良くなってくれてありがとうなどといって笑ってくれたりしていた。やはり家庭内でも灰色で無関心な性格が問題だったのかと思っていたが、そういうわけではない。母親のライチュウがいうには、最終的には自分がどうしたいのかは自分で決めることだから、どんな結果になったとしてもそれは自分で選んだことだから、何があっても責任は自分に降りかかる。それを分かっているからこそ、あんなふうな態度をとるんだ。
分かりやすい言葉で伝えてくれて、思わずなるほどと頷いてしまった。基本的に放任主義なのか、子供は自由奔放に育てるべきと考えているらしい。だがやはり、危険なことや危ないこと、そして知識ある生き物してやってはいけないことというのはしっかりと教え込んでいるらしい。ペペスは怒り方が半端無いといって笑っていた。若干汗を掻いていた為に、うそでもなく、ほんとに恐いんだろう。
そんな家族の仲でそだれられてきたことをいろいろ教えてくれて、とても有意義な一日だったということをパインは記憶していた。そして、その次の日に、パインは申し訳ないことをしてしまったと思っていた。深みにはまればはまるほど、くどくしつこく付きまとうほど、ペペスは殻を剥がして、ありのままの自分を見せてくれた。
そんなペペスと、一生仲良くしていきたいと思って、パインは本当の意味で友達になった。
それがペペス本人が分かっているかどうかは不明だったが、少なくとも本当のペペスの姿を見たパインにとっては、自分にとってはとっても意固地で、他人には浅い付き合いで、友達には意外と優しい。
それがペペスだと感じていた。
「やれやれ、ペペス、こんな言葉知ってる?」
「おん?」
何か考え事をしていたのか、風に吹かれながら、ペペスはへんな応対をした。面白い声に少しだけ吹き出しながら、パインは自分の言ったこんな言葉という意味を口に出す。
「花は半開を看、酒は微酔に飲む――」
「!?……この中に大いに佳趣あり……」
言おうとした言葉を知っている驚きよりも、先に言いたいことの断片を言われるということに驚いた。きょとんとしているパインを見て、ペペスは口を手で押さえて笑いを堪えた。
「くくくっ……なんで言いたいことが分かるのって顔してるね?じゃあ、パインが言おうとした言葉の続きも紡いであげようか?」
などといって、笑いながら言葉を紡ぐペペスを、パインはとめることが出来なかった。
「花は五部咲きを楽しんで、酒はほろ酔い程度に飲む。これこそ本当の趣……どんなことでも度を過ぎれば興ざめするっていう意味だけど、僕の場合、殆ど常時興ざめ状態だって言いたいんだろ?ほどほどどころか、それをすっ飛ばして興ざめに入ってる。というか、そのくらい他人に関心が無い……それでも、僕が友達になったら、甘酒以上にしつこいくらいの関係を築き上げていった……」
「…………」
「僕は他人に関しては興ざめしてるけど、友達や自分に対しては、とってもしつこく接してるって言いたいんでしょ?そういうところで、意固地になるって言いたかったんじゃない?」
「……………………」
「図星なら図星でリアクションしてくれないと、反応に困るんだけど……」
「……正解したから、あんまり喋りたくありません」
「やれやれ、何年君と一緒にいると思ってるんだい?君の言いたいことも大体分かっちゃったからね……」
言い換えれば、何年もこんな僕に付き合ってくれて、本当に申し訳ない。と思っているんだろうが、、ペペスはそんなことは決して口に出すことはない。なぜなら、そんなことをいえばパインは絶対にそんなことは無いと口に出して反論するからだ。
パインは友達を絶対に否定するような言葉は話さない……そういうところが美点というよりも、パインの性格なのだ。意地っ張りだけど、優しい。そして、僕は無関心だけど、変なところに気を使う……ペペスは自分の性格を何てわけの分からない性格をしているんだろうと自虐して、やっぱりくぐもった笑い声を漏らした。ちょっとだけ喉が渇いていたので、変に声がつぶれてしゃがれたようなうめき声っぽいものが漏れただけだったが……
「……でも、殆ど他人に対して省エネなのに、友達に対してはとても積極的ですよね、それはどうして?」
「さっき話した言葉だけじゃまぁ足りない部分があったからね……僕もちょっとだけ友達が欲しくなったんだよ。でも、そんなにいらない……友達はパインだけで十分だよ」
そんな言葉を話して、ついっとそっぽをむいてしまう。パインは苦笑しながら、それだけじゃ駄目だと心の中で感じていた。
ペペスにはもっと他人に関わって、いろいろなことを師ってほしいと思っていたからである。そして他人にも。ペペスのいいところを知って欲しいと思っていたからだ……
「せめて、六匹くらい知り合いをつくったほうがいいのでは?」
「多すぎだね、一匹で十分さ……友達も、結婚相手も、子供も、そして、心のよりどころもね……」
限定一匹に対して心を開くというのはあまりにも寂しすぎるのではないかと思っていた。恐らくペペスは、友達が異性だったならば、その相手と結婚して、その相手と幸せな家庭を築き上げるのだろうと思っていた。パインは運よくその異性という状態であり、更にペペスと親密な関係にある――
「だ、だからって、そんないきなり結婚なんて……!!」
「何変な妄想してるのさ……」
いきなり顔を紅くしてもじもじしだすパインを、ペペスは何かへんなものでも見るような顔つきで覗いていた。パインははっとして、ぶんぶんとかぶりを振った。
「全然違います、そんな妄想してませんから……っ!!!」
「ははーん……さては、僕と一緒に結婚して、幸せな家庭でもつくりたいんじゃないの?」
「!?!?!?!?!?」
確信を突くような意地悪な一言、パインは耳まで真っ赤にして、慌てて違うと否定した。顔に出ているというのに、違う違うと否定して、文々と首を横に振った。千切れんばかりの勢いと、じっとりした汗がペペスに飛び散って、ペペスはくすくすと微笑んだ。
「そんなに否定しなくもいいじゃない……ま、図星か本音か、それともほんとに何も思ってないのか……でも、僕はパインとならそういう風になっても、いいかな……」
「え?」
「これは嘘でもジョークでも何でもないよ……うん、君となら、生涯一緒にいても楽しそうだしね……もしそういう関係になっても、僕は嬉しいと思う……」
「ペペス……」
悲しそうな顔を一瞬よぎらせたのをパインは見逃さなかった。本当にそう思っているのか、自分が幸せになることが、本当に幸せに繋がるのだろうか……?
二人だけで寂しいという気持ちは、絶対に漏らさないだろう。彼は、本当に意地っ張りで、無関心なんかじゃなくて、本当はさみしがりやで、もっと友達が欲しいと思ってるけど、自分から話しかけるのが恐いおく病な性格なんだって……
そして、そのことをいったら絶対に否定するだろう。みょうなところでいじっぱりなのだ……だが、パインには念力が使える。感情の揺れや、微妙な仕草、口に出す言葉で、大体の性格は分かってしまう……
だけど、彼はそんな言葉を絶対に信じない。自分のことは自分が一番分かっているというだろう。確かにその通りであり、それが一番分かりやすい自己肯定だ。だが、他人が見た自分というのは、想像以上に違っているものだ……
人が見た自分、自分が思う自分。それらをすべてあわせたのが、自分という存在だ。自他共に認められるようになれば、それが自分の人格として浮かび上がる。
まだまだ、ペペスの性格は認められない部分があるのだろうか、それとも作ってそういう性格を出しているのかはわからなかった。だが、他人の思い浮かべるペペスの像というものを全て受け入れなければ、ペペスが自分がどんな性格なのかは分からないままだ。
他人が思っているペペスというのは、大勢の人が、他人に無関心で、省エネのポケモン……それが唯一ペペスが他人の評価ということで認めている自分の性格なのだろう……
だが、パインが見たペペスの性格というのを、ペペス自身が受け入れられない限り、ペペスの本当の性格は面に出てこないだろう……
それを認められるようにするには、やはりもっと大勢のポケモン達と触れ合うことが一番の近道になると思っていた……
「その、やっぱり……」
ペペス、友達を作りましょう。私だけじゃない、もっと多くの友達の輪を作りましょう……
誰かに言われてしょうがなくつくるのではなくて、ペペス自身が触れ合える友達を。悩むときや、苦しいときに、支えあえる心のよりどころを……
言葉にしても千切れてしまうということは分かっていても、どうしても伝えたいくて仕方が無い……パインは口を噤みそうになるのを何とか堪えて、言葉を発しようとしたときに、ペペスが目を細めた――
「ん?何か、遠くと下のほうに、ポケモンがいるよ……何か、捕まったり、攻撃されようとしてるみたいだけど……」
「ええ!?」
パインはそんな言葉を聞いて、言葉を噤んで、瞳に念力を働かせる。視力を活性化させた"ミラクルアイ"は、遠くのものの輪郭をはっきりと捉えて、パインの脳内に映し出す。
雲の多い空の一角では、エアームドとドーミラー達が、空に浮いているエーフィとシャワーズに攻撃を仕掛けていた。二匹はそれを回避しながら、目の前に浮かぶ巨大な島を見つめていた。
心、ここにあらずというのは交戦中の二匹のためにあるというのだろう。瞳の先にエアームドを捉えてなどいなかった……
目指しているのは、宝島だけなのだろう……
続いて、視線を移す。風の中に捉えられている不思議な二匹のポケモンが、これまた不思議な鳥ポケモンから攻撃をされている。種族、タイプ、特性、名前、すべてが正体不明だったが、とりあえずピンチというのは目で見てわかった……
だが、二匹のポケモン達も、それぞれが取りポケモンの後ろを見ていて、目の前のポケモンなど完全無視と言った感じだった。
やはり目指しているのは宝島だけなのだろう、黒雲の上に乗りながら、視線を右へ、左へ、上へ、下へ……
パインはそんなポケモン達の姿を確認した。自分たちがこんな変なところに居るのと同じように、やはり四匹のポケモン達の目的は、宝島に眠っているお宝なのだろう。
「つまり、あのポケモン達は、私達と同じ、宝物を狙う好敵手……」
「好敵手というよりも、害虫だと思うよ。もちろん、他人から見れば僕たちも害虫……害虫同士が、お互いの目的のために動くんだから、まさに害のある蟲………――おいおい、パイン、そんなに恐い顔しないでよ」
「もうちょっとオブラートに包んでいってください!!」
口をとんがらせて、ほっぺを膨らませてむくれる。やっぱり女の子だから、そういうデリカシーの無い発言が嫌いなのだろうか、ペペスは鬱屈そうな瞳でめんどくさそうにため息を吐いた。
「ごめんごめん……」
小さく、めんどくさいなぁと言う言葉が漏れたが、聞こえていても構わないと思っていた。
本当に、細かいことをうるさく言うのだから……そういうところは、あまり好きではないとペペスは頭の中で思っていた。もちろん、口に出していったら殴られるので言わないが……
「全く……でも、たとえ好敵手でも、あんなふうに多対一でかかられるのは危険ですし、数で勝っていても、動きを封じられているのならばただの的じゃないですか……!!」
「危険だと思ったんだろうね、僕達は何か知らないけど、襲ってこないみたいだし、もしかして、一番あたりの道を引いたのかもね……」
「でも、助けないと――」
「ほっときなって」
ペペスの心無い一言に、パインは思わず唇をかんだ。他人に対してはこうだ。自分も他人だが、親密な関係になっているポケモンには絶対にそんなことは喋らない。
つまり、ペペスの頭の中では、四匹のポケモン達は、ただの他人として認識されているのだ。
「他人のために動いても何の意味も――」
「だったら、私ひとりだけで行きます。宝島に降りたら、ペペスは待ってていてください!!」
「え?」
いきなりそんなことを言われて、ペペスは若干困惑したような顔をしていたが、パインはぐぐいっと速度を上げて、宝島に辿り着くと、ペペスを半ば強引に地面に下ろした。
「え、ちょっ――」
「絶対に変なポケモンに見つからないでくださいよ!!」
「ちょっと、パイン、まっ――」
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「ペペスの人でなし!!鬼、悪魔、冷血漢、馬鹿、アホ、間抜け!!」
「はぁっ!?」
パインは先程まで思っていたことを全てかなぐり捨てた。
やっぱりペペスは、他力本願の冷血漢なのだ……
「ペペスの馬鹿!!」
よく聞こえるような声を出して、パインはシャワーズとエーフィのほうへと飛んでいってしまった。
「あ~~~~~~…………何なんだ!!くそっ!!」
残されたペペスは、やたらともやもやした感情を抱えながら、宝島の目の前で拘束されている正体不明のポケモン達のほうへと走っていく……
「全く、わかったよ、やるよ、やればいいんでしょ!?」
パインに聞こえるように叫んだつもりだったが、聞こえるかどうかは怪しかった。
とにかく、近くにいるポケモンを助けようと思った……
こんなことで、チームワークにほつれが出来たら御仕舞いだ――
だが、それ以上にほつれるとまずい何かを感じながら、ペペスは宝島の大地を蹴り上げて、疾走するのであった。

つづく
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