ポケモン小説wiki
距離感 の変更点


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書いた人[[GALD]]
色々あるので、そういう大人の事情が呑み込める方だけどうぞ。

打ち込んでいる作業の片手にカップに手を伸ばして中身を飲んでいる。作業が単調なために集中する気もなくてながら作業へと成り下がっていた。真面目な対応を要求されるような作業だったならば、冷めきっても飲み終えることなくカップが置き去りにされる。中身が順調に削られているという事は大した作業ではないということになる。
しかし、中身まで確認しているほど余裕があるわけでもなく口元に持ってきたものの中身が空になってしまっているようであった。違和感に気が付いてか、後ろから本を閉じて近寄ってくる気配にコップを手渡しする。コップの重さがなくなると気配は音も立てずに消えていく。そしてコップが一人でに手元に返ってくるのである、自ら水汲みにでもいっているかのように。
いつの間にか本を読みだしているその存在は、何もしゃべらない。任を終えたからこそ、そのまま本来の読書へと戻ってしまったようだ。何もなくただコップが消えて戻ってくる現象はあまりにも味気ないせいで、声をかけるように言ってみたこともあったけれども邪魔をしたくはないと断られてしまった。こちらの領域を犯したくないなどと、上下関係のようなもの尊重しているようである。
別にそういうような関係でもなかったし、自由にしてもいい所なのに尽くしたがる。世話を焼くことが好きなのではないかとさえ疑ってしまうほどである。勿論彼女に聞いたところで首を縦に振る事なんて一切ないわけで、確かめようのないことである。世話を焼くこと以外にも、彼女は色々と好きなことがある。読書が好きなようで家にある本を読み漁っている。それでも足りないようで、色々買い与えている。本のジャンルはばらばらでいつの間にか博学になってしまった。
他にも教科書までにも手を出してしまい、現状では学力でも負けている。見かけによらず人間味のある面が多く、人間よりも人間としての能力がたけている。人間であるこっちが人間ぽくなく映ってしまうほど、彼女の方が人間みがある能力である。姿形はまるっきりで、それこそ真面目からは遠い。全身黒と断定するよりは紫に近いような配色は、人間の肌の色とは似てもにつかない。
尻尾だって生えているし、両翼を広げるだけで人一人分ぐらいの幅を確保することができる。けれども、この大きさというものは小さい。大きいのだけれども、聞いた話では人を背中に一人乗せたぐらいでは物足りないぐらい大きいはずである。配色も禍々しいものではなくて、もっと清楚感のある白色であるはずであった。それがこんな人程度の背丈で暗黒に染まってしまった存在だとは知りもしかなかった。邪悪な見かけに血で染まったかの如く赤い目には不気味そのもの。
第一印象とは逆に性格は控えめ。何をするにしても自発的に行動をとる前に確認をするほどには慎重で、カラーリング以上に真面目である。物に触れるときも先が5枚に分かれている翼を使えばできなくもないが、安全策を取って能力で浮かしたり動かしたりしている。超能力という物が扱えるようで、直接触れなくとも物を自由に動かすことが得意な彼女にとってはカップを運んで必要なものを取り出して新しいものを淹れるぐらいは動かなくてもできる。
足音が全くないのも自身を浮かせているためである。足はそんなに長くはなく立つことに不自由がなくとも、尻尾が邪魔であったりして物音を立ててしまう事が嫌で体全体を浮かせている。体重という概念を感じさせないせいで、存在そのものまでたまに感知できないこともある。離す時も基本的に受動的なせいで存在感がなさ過ぎることもあり、逆に気になってしまうこともあったがそこは慣れてしまった。
背中を誰かについてこられるのは注意を引かれてしまうが、思慮分別のできる彼女はどこにでもついてくるわけではない。むしろ、どこまで踏み込んでいいのかと慎重に模索しているような感じで、いる場所にいるけれどもいない場所にはいないといったようなラインを引いているようだ。気を使うなら反旗を翻せば簡単なのに、獰猛な牙すら見せようとしない彼女は居心地の悪そうな環境に身を置くことを気にはしていない。
変わった奴ではあるけれども、だからという話であった。元々は勝手に付いてきただけだし、初めて見た時も気持ちが悪いというよりも珍しいという好奇心が先立っていた。それで家に置いてみれば割と普通で人間よりな事ばかりするから、見た目云々よりも一人住んでいる人間が増えたに近い。使用人みたいに雑用をこなしてくれるだけで、何かこれといって行動を起こそうとはしない。流石それは見かねて本を与えてみれば読書をするようになったのである。
消極的で読書が趣味と、図体や能力に関わらず戦闘からは遠い。巷ではモンスター同士に指示を出して戦わせるというのが流行っているらしいが彼女を見ているとそういう気もでない。勿論彼女の種族的には強いという事は間違いないが、あまり他人の目に付くことが好きではない彼女を表立たせる気も出ない。半ば箱入り娘と化してしまう可能性もあるために、夜には外を出歩くようにしている。作業にも一段落したところでそんな時間である。
凝った肩を伸ばしながら指の先まで伸ばす。終わったことを告げるモーションが、彼女の本を閉じさせる。立ち上がると腰が音を立てているかのように痛む。基本的に机で作業をすることが多い身としては外に出るという事は大事なことである。だから、彼女がいることで外に出る理由ができたという意味では感謝をしている。
「いかれるのですか?」
「こないのか?」
「そんなつもりはないです。ただ私が付いていっていいのかって……」
申し訳なさそうに目線を沈ませる。女性の遊び友達すら持たないのに切り抜けれる手段がない。何もなくても下手なことをすれば地雷を踏むことになる。地雷が埋まっているが動かなければ踏むことはない。しかし、そんな楽な話ではない。放っておいても勝手に爆発するような時限式で、解除作業に当たらずに放置するという選択肢はないのだ。
「何時も難しく考えすぎじゃないか?」
「そうでしょうか、私見かけがこんなのですし……」
「俺はそのカラーリング、嫌いじゃないけどな。」
急に顔色を変えだすところまではいつも通りだった。配線を切り取る爆弾処理を未だに間違えたことはないぐらいには何とかなっている。がたいに似合う程度のえめな笑顔を浮かべて、不満はなくなったことを語っている。けれども、いくとは決まっても彼女からは動き出すわけもなくて、こちらから先に部屋から出る。後ろから動き出した音がついてこないが、振り返る必要はない。玄まで歩いて靴紐を結ぶときにも静かな視線だけを向けられていた。
扉を開けて振り返って初めて彼女が付いてきていたことを目視する。靴を履く必要のない彼女は止まることなく、開いている扉をくぐる。夜の世界にでると月の光以外にも街灯などの光源は沢山ある。こうして扉に鍵をかけるときであっても廊下にある電気が手元を照らしてくれるので容易に鍵を閉めることができる。光の下に立つ彼女も暗がりを背景に持っているせいか体が世界に溶け込んでいる。鍵を閉めるときもただ静かに、歩き出して階段を降りるときも一人だけの足音が響く。
車道には街灯も多く車のライトも走り回っているため、裏道の様な暗がりを選んだ。一人では心細くなるようなエリアであっても、後ろから連なる二つの赤い光が睨みを聞かせていた。真っ黒な肌ではないにしても、彼女の配色は暗闇では視覚しずらい。ただ血を求めている獣のような眼光だけが目立つ。無暗に後ろを振り返る気はなかったが、遠目から見れば不気味そのものだろう。彼女の全貌が定かではなくとも、気味の悪い存在がそこにいることを認知させる。
確実に後ろに、前でなければ横でもなく、こちらの歩幅に合わせた速度で後ろに音も立てることもなく張り付いていくる。気味が悪いということはなかったけれども、居心地が悪いことに変わりなかった。変に気を使われているようなのが、彼女のためになっていないような気がして。だから、歩く速度を落としてみた。それでも、彼女が横に並んでくることもなく合わせて彼女も速度を調整して距離感を一定に保つ。どれだけ頑張ってもこの方法では状況を打開できないことを悟って、力業に移行すべく立ち止まって振り返る。
「どうして後ろにいるんだ。」
「私はマスターに仕えているんですし、これが当然じゃないでしょうか。」
「それじゃ命令だ、後ろを歩くな。」
浮いているので歩いてはいないなどと、子供じみた言い訳を彼女はしなかった。気まずそうに動作を待つけれども彼女が進まないことにはこちらも譲る気はない。こちら側に近寄ることが怖いのか硬直してその場から動かない。睨み合いが続く中、彼女の中での葛藤の末に抵抗することに対する罪悪感が勝ったようだ。目線を合わせずらそうにじりじり寄ってくるので、そっと背中を向けて歩き出した。何も感じえれないけれども、彼女が騙すようなことをするとは思えなかった。
横に並ぶと随分と幅を取るのか直線状には並んでいても間には間隔が出来上がっていた。ある程度までの妥協は許せても壁になるものが残っているようで、その壁を取り払ってまでこの溝を埋めようとは思わない。同じ速度で進んでいくことを視認できるだけで、こうも彼女の存在を感じることにつながるとは思わなかった。黒い肌が暗がりに染みてとらえずらいが、真紅の目は前を向ているよりも地面をみながらこちらの様子を確認しながらちょろちょろと動く。慣れないことに動揺を隠せないのは、普段の読書姿とは正反対である。
「以外と可愛いんだな。」
わざと視線が交差するタイミングを撃ちぬいた。言葉で撃たれた彼女は数秒のけぞった。
「からかわないでください。」
鋭い視線を飛ばしながら、怒りを叫ぶその姿は脅威といえる。別に危害を加えられないと高をくくっているわけではく、存外乙女のように羞恥に吠えることもあることが不思議だった。何故吠えているのかは理解していなかったが、負け犬の遠吠えみたいに情けない抵抗しかできない彼女をただ煽りたかった。ただ好奇心を駆り立てられて、口が動いてしまっただけであった。けれども、彼女はこれを機にそっぽを向き続けた。こちらには視線すら向けることなく怒りを抑えきれていない、全開で拗ねていた。抵抗などではなくて怒りで視線を合わせてくれていない、己が固い意志でそうしている。
足音が一人分しかないせいで幽霊を連れているみたいに不気味なのに、雰囲気が緩いと指摘する気にもなれない。暗がりに光る赤色も、視線に覇気が宿らないようではイルミネーションと変わりない。並走する黒い影は羽音もたてずに静かに進んでいる。律儀に隣に歩いているのは怒りと忠誠心とのバランスで、忠誠心の方が重いからだろうか。けれども、今足を止めてしまうと彼女には置いていかれそうなぐらいには容赦のない速度で進んでいる。合わせるためにむしろこちらがペースを変えている始末である。進行通路も彼女の描くものになっていき、当初の予定はどこに行ってしまったのか。
気が済むままについていけば風が冷たく当たる。騒音というよりは心地の良い静けさを持った波の存在が耳に入る。遮蔽物がないせいで月の明かりをもろに受ける彼女は暗がりから出てきていた。光の源の緩い光に視線を阻まれることもなく彼女は前を見つめていた。ある意味では月を見上げているというよりも海を見渡していると置き換えることもできる。たまには懐かしさや寂しさを思い出してここに戻ってきたくなるのだろうか、なんて野暮なことも聞けずに砂浜に座り込んだ。
夜の海に来ること自体は個人的には珍しい話ではなかった。自宅が海に近いというのが理由なだけで別に泳ぐことに興味はない。それもあってか、人のいない時間にくることで味わえる潮風によって得られる癒しが目的だ。人気のない時間にしか来ないせいか、何かがいれば目立つというものでそれは彼女も同じだった。最初に彼女を見た時には驚いて後退した、それも彼女も同じだった。お互いが距離を取り始めたところで逆に立ち止まったのは思い返せば笑い話にできるけれども、その時は心に余裕さえなかった。敵意がないとかじゃなくて、見かけほど相手にしない方がいい存在ではないとは思えた。
近寄ろうとするとそのまま逃げだそうとする彼女も、走り出さないこちらに変な期待を抱いたのかもしれない。血に飢えた色をしながらも、鋭さのない視線をずっと変わらずに向けられていた。目の前に立つと背丈はそんなに変わらない上に随分人と違う色や形にかける声を見失った。そんな戸惑いを誤解してか、彼女は視線をそらして「怖いですよね……」と呟いた。迫力の割には寂しいことを言っているようでは三本に尖っている角の様な物もお飾りに感じられてしまった。
友達が欲しいとか、毎日近所で遊んでたいとか、小学生なら誰でも通り過ぎたようなことを何となく思い出していた。今はパソコンぐらいが毎日出会う相手になってしまってはいたけれども同情した。翼の先は指のように割れているけれども、翼を引っ張ってやるなんて大胆なことは流石にできなかった。代わりについてくるかだけを聞いた。恥ずかしいぐらいに嬉しそうな顔をするものだから、色合いに似合ってないとも思ったけれども気にしていそうなことには触れないでおいた。彼女の体質に関係のあることはあまり触れない方がいいというのは出会ってからずっとそうなのだった。
だから、体質以外のことでこんなに怒るとは予想していなかった。こういう事になると打開できないから避けていたせいで、こうして遠くを見つめる彼女を見上げてやるぐらいにしかできることがなかった。月光を見つめ返していた彼女は満足したのか、おもむろにまた移動を始めた。海を渡って向こうにいくなどではなくて帰る場所はやはり自宅のようだった。一言も交わさずにただ歩いた。いつもなら階段の先を歩いているのに今日は背中を見つめていた。ぺらぺらした変な長方形が生えているのを初めて知った。よく考えてみれば彼女が前に出るなんてことしたことがなくて、唯後ろから見つめられていることが多かった。
何枚あるか数えきる前に部屋の前に辿りついてしまったので、ここはといわんばかりに鍵を取り出して扉を開けた。開けたのはいいけれどもここにきて彼女が道を譲ってくるから対応に戸惑った。けれども、いつもに戻ったと先に部屋に入ることにした。扉から手を放しても働くことを断固としてやめてしまったかのように扉は開きっぱなしだった。彼女がくぐることで初めて扉は音を立てて鍵が閉まる。いつも通りの不思議な光景を背にいつもの座席についたところで彼女も後ろから入ってきた。
「その、ごめんなさい私……」
俯いて選びずらそうに言葉を吐いた。
「俺の方こそ悪かったよ。そんなに気にするとは思ってなくてさ。」
「謝らないでください。私が大したことでもないのに気にしたのがいけないんです。」
「いつも遠慮しすぎなんだよ。嫌なことは嫌だって言った方が楽。」
「優しんですね、私が珍しいからですか?」
「卑屈になるな、ルギアだとかそんなことどうでもいいんだ。お前はお前だろ、言い訳をせずに言いたいことは言え。」
変にうじうじすることはいつものことなのに、何となくいらいらした。いつもと違ったけれども、いつもの彼女なら謝るのに、彼女もいつもと違った。
「私だって!もういいです、許さないですから!」
急に爆発した。その勢いに負けて初めて下に出た気がした。頭を下げることなんて何の冗談か、けれどもそれだけでは向き合ってもらえない。妥協点を探したところでようやく着地点がみえるような気がした。
「本当ですか?」
疑いながらも、僅かに開く瞳が惹かれている意思を見せる。彼女はセフティーがかかっているような、控えめなタイプだから。決めつけて安全圏に逃れた気でいた。
「それじゃ、はい。」
差し出されたのは両手だった。厳密には両翼にあたるが、その先には何かが掴まれているわけでもなく手渡されるようなものは見当たらない。どうしていいのかわからない、奇行に走る彼女に合わせられずにリアクションに困った。それを見かねた彼女は都合の悪そうな顔をするけれども、どう助ければいいのかわからないでいた。
「ぎゅーってしてください。」
振り絞った勇気を代償にしたものがこれかと、少し姿勢を崩した。けれども、彼女は大真面目に恥ずかしさいっぱいに構えている。ここまでさせておいて下がるわけにもいかずに進むしかなかった。彼女に直接触れるなんてことしてこなかったし、する必要ながなかった。彼女には常に見えない力が働いているので物事を手動で行う必要がないために触れる必要もまたなかった。そんな中での感想は思ったより弾力がある。腹部が出ているという言い方をすると流石に殴られるのは容易に想像がついた。予想はしていたけれどもやはり弾力がある。
そのまま抱くだけならよかったのに、彼女も抱き返してくるせいで変な気分にもなる。彼女の方が大きいせいもあって、抱かれているというような形になる。相手の背中に手を回すので一杯なのに、軽く抱きしめてくるせいでもうどっちが頼まれているのわからなくなった。それに彼女にうずまってしまうせいで、どこか甘い感じがする。糖分とかそういう甘味とは違う感覚に訴えてくるような。こっちの感情何て知る由もなく、表情が見えないぐらいに胸一杯に抱え込んでくる。何分経ったのか、解放された時には大きく酸素を吸い込んだ。
「満足したか?」
「私はしましたけど……」
満足したというよりも落ち着けないで視線をまともに合わせてくれない。ちらちらと送られてくる視線もこちらの顔じゃないのが不穏だ。けれども自分のことだから何となく察しがついていて、言い訳を考えていた。彼女が気にせずに済むような妥当な言い訳を。
「私をそう見てくれてるんですよね?」
「それはだな。」
「嬉しい……」
迫ってくる彼女を受けきれるはずもなく、自分の非力さを感じた。今まで物理的な行動をとる必要がない彼女の力を侮っていたわけではないけれども、そんな動作を目にすることがなかったせいでイメージを持てなかった。反応速度が間に合わなあわなかったことだけがこうなってしまった原因ではないだろうが、逃げ切れなかった事には変わりない。いつも彼女のしているように見えない力などではなく、物理的な力技のせいで顔が随分近い。その顔が近づいてくるのを避けれずに受け入れることしかできない。彼女が口にする時には舌を出して口元をなぞったりなどと、品性の欠けるようなことはしないせいで感じることがなかった。彼女に舌は思いのほか長い。
無理やりこじ開けて入ってくる舌、初めてを脱ぎ捨てたくて仕方のなかった欲求を彼女は爆発させた。唇を重ねるだけのロマンチストではなくて、自分の欲望に飢えた狼。合わせた唇の感触なんて味わう暇もないぐらいに強引に押し付けられ、しかもそれはただの過程なだけで彼女の欲望は生易しい物を求めていない。荒く探し回る彼女、狭い部屋の中を大きな舌、目の前に答えがあるのにそんなに焦って。今まで彼女に我慢をさせ過ぎたことに対する罪悪感と、解放させた彼女に対する安心と、どちらを優先すればいいのかわからないでいた。彼女は迷うこともなく、ねっとりと絡ませてくる。口元が彼女の口にのまれるぐらいに密着して、控えめな彼女の面影なんてない。
どれだけなのか、息が苦しいわけでもないので彼女の気が済むように身を任せた。長いわりに太い舌がこちらの舌に巻き付いて離れない。何度その動作をしたのか、飽きるというよりも満足したようにそっと口元から抜き去る、舌同士に絡まった唾液が離れないで。彼女が言葉を発するまで繋がったままだった。
「前もって読んではいたのですけど、実際とは比べられませんね。」
百閒は一見にしかずとでも恥ずかしいのを誤魔化している彼女であったが、そんな情報を与えたことはない。そこで頭に手を当てた。常識を持っている彼女なら人の部屋を詮索したりするものではないと、決めつけていた。もちろん、押し倒してきた彼女に知識があるのならここで終わるわけがない。
「次はどうしましょう?」
遠慮をするなとは命令を下したが、ここまで積極的に変貌するものなのか。
「私が知る限りだと、こういう時は女性がリードするものなんですよね?」
自分の性癖を説明されているようで返事に困る。そういう趣旨の本が多いことは事実であったし、知識のなかった彼女はそこから知識を得たわけだから間違っていないのだ。彼女は真面目だから、いったことは聞くし本を読んで勉強したことには忠実だった。だから、考えても理屈を並べて投げ出すのではなくて書いてあることを理解する。勉強だって、考えてわからないから投げ出すのではなくて考えて理解しようとするから彼女の方ができる。けれども、この手のジャンルだけはそうさせるべきではなかったと後悔した。
彼女の間違いを説明するには時間を要するし、タイミングすらも与えられない。触れてもいないズボンが動き出そうとするから慌てて握って逃げるズボンを引っ張る。必死な様を嘲笑うというより不思議そうに見下ろしている。
「恥ずかしがらなくても、私は平気ですから。」
無理に先にズボンに力を加えようとしないのは、常識のある彼女がズボンに対するダメージを気にしているからだろう。その代わりに彼女は今度は上着を払いのける。両翼で起用に腹っても袖に腕が通っているせいで脱げるなんてことはない。代わりに腹部がさらされる。そこに長い舌を這わせる。冷たいわけでもないのに、背筋に悪寒が走った。くすぐったい、べっとりとしたものが動いている感触だけが走る。不意を突かれたというのもあったけれども、それだけではなかった。急に冷たいものがぶつかった時に走るような電流に近い物を味わった。驚く表情に機体でもしていたのか、笑う彼女はいつもの楽しい時のものよりも色気があった。頬を腹部に当てながら、だらしなく舌を伸ばす姿勢は雰囲気を醸し出している。
そんな態度に気を取られてしまったからか、ズボンを引き上げていた力が抜けてしまった。力のつり合いが取れなくなってしまったことでズボンは彼女の手に堕ちた。下着ごと全て引きはがされてしまったことで、見えてきたものへ彼女は不思議そうに手を伸ばした。指の様に別れた翼で器用にそのものを掴んで動かしだす。そして掴んだものを適当に動かしさせすればいいことも理解している彼女は、感触だけで持っていることがわかるのだから見向きもせずにこちらを除きながら腹部をなめる。彼女自身にこちらの感想など知ったことではないのだろう。思いのほか弾力のある彼女の手にはざらつきのあるものもなくて、ひっかかるような感触が何もない。だから掴むだけでこちらの形にちょうになり、人の手よりも密着する面積が多い。
動かすだけでも一人でする時とは比べ物にならないのに、いつもは見せない彼女の表情が心まで落ち着かせてくれない。心境に対して体の反応というのは素直なもので、彼女の手に漏れ出した液体が絡まり始めて音を立てだす。粘着性のある感触に気持ち悪さを覚えるどころか、ふふっとだけ息を漏らす彼女はどうなっているのかわかって行っている。柔らかい弾力に囲まれながら刺激が送られてくる。温もりとマッチした感触にただ耐えるだけというわけにはいかない。
こみあげてくる感情、それ以上のものを抑えきれないでいる。つかまれているのが熱くなっているのは、彼女の体温に温められているからでなければ、マッチの様に摩擦によって火を起こそうとしているわけでもない。欲望に対して純粋に答えようとしている。彼女の指に粘液が絡まっていくせいでペースがスピードを上げていく。そのくせに、彼女にてにすっぽりとはまっているせいで快楽からは抜け出せない。苦しそうに息を吐く様子を彼女が楽しそうに見上げている。その原因がどこにあるかわかっているのに、目をそらして上下に動かして音を起こす。徐々に加熱していくのを彼女も理解している、だからある程度のところで動きを止めた。そして、這わせていた舌をしまうと長い首を回して掴んでいたものを一思いに飲み込んだ。
彼女の口は手の中よりも温度が高く、歯のよういな鋭利な存在は感じられない。その代わりにもっと獰猛な舌が一匹暮らしていて、獲物が入ってくるなりにとびかかってくる。唾液よりも滑る液体で身を守ったところで凶暴な舌に絡めとられてしまって逃げることはできない。根元を手で押さえながら彼女は顔を上下に動かしだした。口で咥えて舌で絡めて、先ほどの続きを始める。続きといってもそんな優しいものではない。翼だけでも満足ができたのに、それ以上のものに我慢ができるわけもなく感覚が飲み込まれたものの先端からあふれ出ようとする。それが先ほどみたいに何もないところならばよかったのに、天井に頭を打つぐらいの密室に閉じ込められるせいで部屋一杯に流し込むことになる。液体が出てきたことを味わった彼女は動きを止めて吸い付いてくる。
根元まで飲み込んで吸い上げる様子は、幼少期の子供のようであったけれどもそんな可愛さとは別物。伸びた喉を鳴らしながら全部飲み込んでいく。動いている喉元がそうしていることを語り掛けている。
「良かったんですね、自信がなかったので安心しました。」
「そこに自信を持たれてもな。」
「でも大丈夫ですよ、これは日頃扱いなれてるので。」
下半身、更にその特定の場所に力がかかる。彼女に触られているわけでもないのに、別の存在がそこにいるかのように。視認できない生き物に捕まれていいようにされはじまる。それが彼女の能力だとはわかっても逃れることができず、ただ彼女が満足するまでいいように遊ばれる。不思議な感覚で物理的なのに実態がないというか。掴まれているというより圧力なものに閉じ込められているよう。自分のものが色々な角度から、色々なベクトルの力に押されているようなもの。
元の大きさ程度にもどったそれを彼女見下ろすようにたちがあった。何かに引き寄せられるかのような感覚が抜け切れらないまま彼女が跨ろうとして立ち止まる。
「これから先、したいですか?」
彼女の方が足を止めたのは意外であったけれども、分岐点は間違いなくここだった。欲望に駆り立てられていようとも引き返すべき暗闇が目の前にあるのに、気持ちが中へと誘い込まれていく。
「私は貴方から直接聞きたいんです。そうじゃないと、不安だから。」
彼女も引き返せないとわかっているように、真面目そうな空気を張る。距離を詰めるというよりも、一線を超えたところにまで踏み込むのに躊躇いはあるようだった。
「したい。」
「私でいいんですか?」
ここまでしておいてなんて茶化すようなことは発せれなかった。彼女も自分と同じで、距離をつめることで相手から逃げられるような、不安と欲望に悩んでいるだけ。歩いている鳥に走っていけば慌てて逃げていく、だから歩いて近寄ろうとする。けれども、一定の距離に入れば走って距離を置こうとだってする。だから遠くから見ることしかできないんだって、そうやって沢山のことを諦めて、周りに詰め寄れなくて苦労してたんだって、直感的に理解をする。
「お前だから。」
「嬉しい。」
敬語なんてなくて、ただ喜んで純粋に笑う物だからこっちが照れくさい。物事はこれで終わりじゃなくてここから始まりなのを忘れてしまったせいか、不意に彼女の中に引き込まれて現実を取り戻した。手に平に取り囲まれた時よりも温い空洞、隙間何てほとんどないせいで窒息しそうなぐらいに。潰されるほどには遠いけれどもかかる圧力がある。そんな中にもでも、すんなりと滑り込んでいくは彼女も思うことがあって行為に臨んでいたのだろう。愛おしいからか、生物の本能なのか。
彼女の液体で再度ラッピングされると、彼女は何重にも擦り込むように動き出す。何層にも重なった液体の壁を貫通して摩擦と肉圧が本能を掻き立てる。彼女も淑やかさを投げ捨てて気が狂ったように叫んでいる。あとで聞かされるものなら顔を真っ赤にして拗ねるだろうに、なりふりを構っていないのは夢中だということなのだろう。快楽に溺れたのか、それとも進んだ関係に歓喜しているのか、どっちなのかと思えるようなタイミングは訪れそうにない。浸っている彼女の虚ろな視線だけでも、心が引っ張られる。
両翼を床に抑えるけて腕立てをするよりも速く上下に揺れる。彼女のペースだけで彼女だけの世界に浸っているようで、快楽をともにしながらも一体感には欠けていた。擦れる音に掻き立てられる音に、腹部にぶつかり合う肉の音、全部同じものを聞いているのに違うような気がしてくる。溜まってくる快楽には間違いがないのに、ただ処理をしているだけに思えてくる、だから彼女を物理的に押し返した。不意を突かれた彼女は背中から床にぶつかる。
今度は起き上がって立場が逆転すると彼女は怒る事よりも、自身を見返して気まずそうに視線をそらした。そんな彼女にうつ伏せになるように命令を下すといつものように素直に従う。そしてその太い尻尾を肩にかけるように持ち上げると足の間が曝け出される。
「あの、やっぱりやめ、」
言葉をいうよりも先に背後から突き立てた。背後の見えない彼女はあらぬ声を出して言葉を遮ってしまう。さっきまでは彼女に一方的だったのとかわり、今度はこちらが存在感を強める番。先ほどまでは彼女のペースだからというのがあったのに、自分のペースでし始めるとどんどん速くなっていく。彼女の尻の肉にぶつける音が大きく回数が多くなっていくのがわかる。彼女の中に欲望が引き込まれていくように、彼女に欲望だけを打ち付けていく。彼女がこれを望もうとそうでないと、体の方は変わらない柔らかさで締め上げる。
先ほどまで自分の欲望を叫び散らかしていた彼女も、ぶつかる側になって初めて相手がいることを認識したのか声を堪えようと体を床に強く押さえつける。そんなことをしても逃れることなんてできない。押し寄せてくる快楽を感じているのは自分が一番わかっている。それでも耐えようと、翼を強く握って目を閉じる彼女の口はだらしなくあいていた。こちらのペースの方が速いせいで彼女には耐えかねているのだろう。
「本当に……待って。」
嫌だという意味ではないにしても、いやと悲鳴の上げた彼女は体を震わせた。液体はすでにたくさん漏れ出していて、これ以上は必要がなかったけれども更に彼女が追加してくれる。限界にまで達した彼女は満足したように思えたけれども、それは彼女だけで以前と止まる気配はない。溜まり切った快楽を吐き出した反動に黙り込んでぐったりとしているけども、彼女の体は打ち付けられる都度に振動している。更に強く、尻尾を抱き寄せてさらに深くへ。
自分の限界が近いからこそ、反射的に彼女の奥をめざしてしまっているのかもしれない。太い尻尾がこちらの腕力で凹むぐらいには締め上げられている。そんな痛覚よりも快楽に溺れている彼女は切れた息の合間で、喘ぎながらだらしなく痴態を晒している。普段の大人しい彼女がここまで乱れるのも、ギャップがあって新鮮だった。だから愛おしいと求めてしまうのかもしれない。彼女の尻の感触も十分にたのしめるものであるのに、感触より快楽の方が強くて彼女の中しか見えていない。
「いいんだな。」
「はい……!」
察しのいい彼女はこれからのことを理解している。それとも、もともとここまでくる事が目的で自分だけが果てても行為が続くことを受け入れているのかもしれない。だから彼女の尻尾を強く抱き寄せて、腰を入れ込んだ。後悔とか先のこととか、何も見えていなくてただそうすることだけしか考え付かなかった。少しの間奥にまで押し込んでいると、彼女の方も静かになる代わりに切らした息を整えようと荒く呼吸を始める。出し切った脱力で尻尾から手を放して抜き出すと、そっちのほうも随分と力がぬけているようだった。
少しまだ白いのが残っているようで床の透明な液体の上に垂れる。その惨状がどれだけのことをしてしまったのかを語っているようで、少し恥ずかしくもなる。けれどもその上に横たわるのが自分の思う存在なのだと思うと、悪い気分はしなかった。
「満足したか?」
「ええ。でも、最後に一つだけいいですか?」
横たわったままで何を頼んでくるのか、今更増えたところでと軽く肯定してしまう。
「これから溜まったら私に報告してください。私がちゃんとするので。」
いつも世話をしてもらっているとはいえ、距離感が縮まりすぎた。
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何かありましたら
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