若干の暴力シーンがあります。でもそんなに激しくはありません。 ---- アルレ水島は港からでも賑やかな市場が見えていて、都会という程都会ではないが、田舎という程田舎でもなく、 俺達は祭りでもやっているんではないかと勘違いする程の賑やかな島だった。 「なんだよめちゃくちゃ楽しそうじゃん!こりゃ来て正解だったわ!」 俺はそう言って街へと続くを階段を一気にかけのぼった。 「わぁーっ!待ってよー!」 急に走り出した俺の後ろをラキも必死についてくる。 「うははっ!これはゲーセンとかとは違う面白さがあるな!色々遊んで回ろうぜ!」 俺はそう言いながら色々な店を見て回った。 見た事もない食べ物に果実など、お土産にぴったりのアルレ水島を模したネックレスや置物などなど、様々な物が並んでいて、俺を満足させるには充分すぎる程の市場だった。 「うわぁ〜この実一個で2000円!?てかこの置物でかっ!」 「ねぇ進一、調査はしなくていいの?」 俺が市場の品物に夢中になっているとラキが不安げな顔で俺を見てくる。 「いいっていいって!んなもんたっぷり遊んでからやればいいんだって!」 『〜♪』 俺が言葉を言い放った途端に携帯電話が鳴り始めた。 「んだよこんな時に…って親父……!」 俺は思わず電話に出るのをためらった。いつもは昼まで寝ている親父の朝っぱらからの電話なんて嫌な予感しかしない。 「もしもし…」 『おはよう進一!』 俺が渋々電話に出ると朝聞くにはうるさすぎる親父の声が耳元に鳴り響いた。 「なんだよ親父がこんな時間に!」 『いやぁ〜、そろそろ着いた頃かなと思ってな。それよりお前…仕事をほったらかして遊ぼうとしてなかったろうな?』 親父の言葉に俺は思わず言葉が詰まってしまう。 「…はっ……はぁ!?何言ってんだ?んな訳ねぇだろ!」 必死に言い返す俺だが、焦ってしまって余計言葉が詰まってしまう。 『ふ〜ん、ならいいんだが…じゃあ頼んだぞ。』 親父はそう言って電話を切る。俺も携帯を閉じたが、俺の顔は若干冷や汗で濡れていた。遊ぼうとしてた事がバレるのが嫌でかいた汗ではない。心を見抜かれた気味の悪さでかいた汗だ。 「なんだよ親父…気味わりぃな…一気にテンション下がったわ……」 いきなり遊ぶ気力を無くした俺はとぼとぼと歩き始めた。 「だっ…大丈夫?」 ラキは不機嫌そうな顔をしている俺の前を歩きながら苦笑いして俺を見上げてくる。 「別に…あっ、これ……」 俺は一軒の店の前で立ち止まった。 「よう、にいちゃん!一つどうだい?」 そう言ってくるおっさんだが正直買う気はなかった… ただ、店に並べられている赤と青の透明な色をした竜のようなものを模した置物が俺の目に止まった。 「おじさん、これは何をイメージしてんのさ?」 「あぁ、これはアルレ水島で目撃証言が出ているラティアスとラティオスを模した置物だよ。少ない目撃証言を頼りにして作られた置物だからほんとにそんなのかどうかは分かんねぇけど…売れ行きは良いから俺にとっちゃどうでもいいけどな!」 「ああ…そう……ん〜…でも一応聞いてみるか…そのラティアスラティオスについて何か知ってる事ない?出来れば目撃証言が多い場所とか。」 おっさんの言葉に思わず苦笑いしてしまった俺だが、念のために聞いてみた。 「いやぁ〜、俺はあんまり詳しい事は知らないねぇ。それに、目撃証言が多いのはアルレ水道の各地だから細かい所は分かんないな。」 「いやぁ〜、俺はあんまり詳しい事はらないねぇ。それに、目撃証言が多いのはアルレ水道の各地だから細かい所は分かんないな。」 「そうっすか…」 俺はおっさんの話を聞くと、とりあえずまたとぼとぼと歩き始めた。 「ねぇ、次はどこに行くの?」 「そうだな…とりあえずアルレ水道に。」 俺は観光用に設置された地図を見ながらひとまず一番近くのアルレ水道を目指した。 「うわぁ〜…綺麗だなぁ。」 「うん、都会ではこういうの見れないもんねぇ。」 アルレ水道には大きなゴンドラや、荷物を店などに運ぶための船が通っていて、景色などに特に興味のない俺とラキでも充分和める風景だ。 「…はぁ、やっぱ眺めてるだけじゃ意味ねぇか…」 その場で10分程水道を眺めていた俺とラキだったが、やはりそう簡単に現れる訳がない。 俺は大きくのびをすると水道沿いにゆっくり歩き出す。 「……やっぱ見つかる訳ねぇよな…とりあえず人に聞いてみるか…」 「うん、そうだね。このまま歩いたり眺めたりするだけじゃ意味ないしね。」 とりあえず俺達は歩きながら通行人を探した。はっきり言って島の人から有力な情報を手に入れるか、自分達が直接出会わない限り、ラティアスとラティオスを見つける事は出来ないからだ。 「すいません、ラティアスとラティオスについて何か知ってる事ってないっすか?」 「いやぁ〜、詳しい事は知らないなぁ…」 通行人に尋ねてみても、やはり良い返事は返ってこない。 「…ささいな情報でもいいんすけど…」 どんな小さな情報でも、あまり有力な情報がない俺にとってはなくてはならないものだ。 だから必死に絞り出そうとするのだが… 「ん〜…このアルレ水道での目撃証言が一番多いって事ぐらいしか…すまないねぇ。」 「あ、いや、いいんすよ。すいません。」 やはりそう簡単に良い情報が手に入る訳がない。いくら島の人でも詳しい事を知ってる人なんてそうそういないだろう。 だが、諦めてはいられない。俺はすぐに次に尋ねる人を探した。 「すいません、ラティアスとラティオスについて何か知ってる事ってないっすか?」 「う〜ん…知らねぇなぁ。」 「すいません、ラティアスとラティオスについて何か知ってる事って…」 「僕にはちょっと分からないなぁ…ごめんね。」 「すいません、ラティアスとラティオスについて何か……」 「ごめんなさい、私には分からないわ。」 「すいません、ラティアスとラティオスについて………」 「知らん。」 「だーーッッ!!もうなんだってんだよッ!!二時間も尋ね続けて有力な情報が一個もなしってどういう事だよコンチクショウ!!」 通行人や店の人に二時間も尋ね続けて良い情報が一つも手に入らなかった俺の苛立ちは最高潮に達して、思わず声を張り上げて叫んでしまった。大声を聞いて周りにいた人が一斉に俺に注目する。 「ま…まぁ落ち着いてよ進一…他の人も見てるしさ…」 苛立つ俺をラキは必死に落ち着かせようとしてきた。 「ふぅ…ひとまず休憩しよう…もぅ疲れた…」 俺はそう言いながら近くにあった自動販売機に近付いた。 「…いいじゃねぇか……」 「…ちょっとだけだって…」 俺がジュースを買おうとした時、隣の路地裏からいかにも怪しい声が聞こえてきた。 「…?」 不思議に思った俺は路地裏を進んで行く。ラキも不思議そうな顔をして俺のあとをついてくる。 先に進むつれ、声も段々と聞こえやすくなってくる。 「これは誰か絡まれてんな。」 よく絡まれる俺にはすぐに分かった。話し方からして一方的な口調で、とてもじゃないが良い感じはしない。 「え!?じゃあ行くのやめとこうよ…」 俺の言葉を聞いて必死に止めるラキだったが、俺はそれでも無視して歩き続けた。 「なんだよいいじゃねぇか一緒に遊ぶくらい?なぁなぁちょっとでいいからさぁ!」 「そうそう!色々おごってあげるからさぁ!」 俺の予想は見事的中。路地裏を抜けた人通りの少なそうな所で俺と同い年ぐらいの女の子が、見る限り大学生ぐらいの男2人組に絡まれている。 「………ッ…!」 女の子は涙目になりながら必死に抵抗している。 「ほらな。」 「げっ…」 ぼーっと見ている俺に対してラキはゆっくりと後退りした。 「けっ…」 その様子を見ていると段々と苛々してきた。俺はそのまま絡んでいる奴等に近付いていく。 「ちょ…何やってんのさ!?ここで喧嘩はまずいってば…!」 ラキの言葉を無視して俺は絡んでいる奴等に近付いていく。 「おいてめぇら!意気がった事してんじゃねぇぞゴラ!」 俺の言葉を聞いて一斉に2人がこちらを向く。ラキは目を点にしながら呆然とこちらの様子をみている。 「なんだてめぇ?」 「やる気か?あ?」 2人がゆっくり俺に近付いてくる。 「…………」 女の子はこちらの様子を見て少し震えている。無理もない、男3人が目の前でこんな状況になれば普通の奴はすぐに距離をとるだろう。 「やってやってもいいけど…俺に喧嘩フっかけた事後悔すんなよな?」 俺はそう言ってにやっ、と笑うとボキボキと指をならした。 「…ッ……!てめぇぶっ殺してやる!!」 2人はそう叫びながら拳を振り上げ、一気に俺に向かってくる。 「……!」 俺は体勢を低くして同じく2人に突っ込んだ。 そして相手の拳がこちらに届く前に前方にいる奴のみぞおちに尖らせた右の拳を打ち込んだ。 「…ぐぁッ……」 そいつは殴られた部分を抱えてその場に座り込む。こいつは暫く動けない筈だ。 「てめぇぇッッ!!」 もう一方の奴が後ろから殴りかかってくる。俺は次に左の拳に力を入れた。 「おせぇんだよノロマッ!!」 俺はそう叫びながら座り込んでる奴の背中を踏み台にして、向かってくるもう1人の奴の顔面を思い切り殴った。 そして体勢をくずしているところに更に、腹を右の拳で殴りつけた。 最後に思い切り胸に蹴りを入れると、そのまま体勢をくずしてその場に倒れ込んだ。 「う…ぐぅ……」 「けっ…だから言ったろうが。だてにレウロの学生はやってねぇんだよ。」 そう言う俺の後ろでゆっくり座り込んでた奴が立ち上がる。 「て…めぇ……」 「まだやる気か?あ!?さっきは加減してやったけど…次は容赦しねぇぞ?」 俺はまだ反抗してきそうなそいつの胸ぐらを掴んで顔をぐいっと近付けた。 「…ちっ…おい行くぞ!」 そいつは俺の手を振りほどくと逃げる様に走り去っていった。 「まっ…待てよ…」 もう1人の奴も立ち上がるとすぐにその場を去ろうとしたが、俺から少し離れた所に行くと、その場でピタッと立ち止まった。 「…お前、ただですむと思うなよ。」 「んだとこの野郎!!」 「うっ…うわぁ!」 俺が追いかける動作をすると、そいつは腰をぬかして逃げて行った。 「…もぅ!無茶するんだから!」 「…もぅ!無茶するんから!」 2人が去ったのを確認すると、ラキが少し怒りながら近付いてくる。 「いやぁ〜、すっきりした!…あれ?君まだいたの?」 俺がのびをしながらふと後ろを向くと、先程絡まれていた女の子がぼーっとこちらを見つめていた。 「…ん〜、一応聞いとこうかな…あのさ、ラティアスとラティオスについて何か知ってる事があったら教えてほしいんだよ。」 それを聞くと女の子は少し驚いた様な表情をした。 「はは…ごめんな、いきなり変な事聞いて…知ってる訳ないよな。実はさ、親父がポケモンの研究が好きでさ、ラティアスとラティオスのレポートをとってきてほしいって言われたんだ。このインカムも親父が作った物なんだ。凄いとは思うんだけどいつも親父の研究に強制的に手伝わされてほんとウンザリしてて…でも、これが最後だって言ってくれた手伝いだし、このポケモンを研究するのが親父の長年の夢だったらしいから書いてきてやりたいとは思うんだけど…やっぱり誰も出会えた事のないポケモンにそう簡単に会える訳ないよな…ごめんな、つい語っちまっ…って、うわっ!」 俺がふと横を向くと彼女の顔がすぐ近くにあったため、俺は思わず尻餅をついてしまった。 「大丈夫進一?」 そう言ってラキが近付いてくる。 「大丈夫…それと君、次はあんな奴等に捕まらないように気を付けろよ。」 俺がそう言ってその場を立ち去ろうとした時、後ろから急に腕を引っ張られる。 「どうしたのさ…って、うぉっ!?」 俺が後ろを振り向くと、嬉しそうに微笑んだ彼女の姿があり、俺の腕を掴んだまま、急に走り出す。 訳も分からないまま俺は彼女に引っ張られていった。 ---- [[赤い彼女五節]]へ続きます。 ---- 何か微妙なとこで終わってしまいましたが、感想や指摘があればお願いします。 ---- #pcomment()