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虫の島の章 の変更点


*虫の島の章 [#e78b967d]

#contents

**虫の島1 [#a877d982]

「あ!シルバさん!何処に行ってたんですか!探したんですよ!」
あの後、シルバはチャミと共にすぐに村に戻っていた。
長いこと探していたのか、暗がりから現れたシルバにすぐに気づき、駆け寄ってきて一番にそう言った。
「悪かったな。ちょっと用事を済ませてただけだ。アカラは?」
「アカラさんは家で寝ています。あの後、アカラさんはずっと泣いてて…さっきやっと泣き疲れて眠りました。」
ツチカからアカラのことを聞き、そうか…と呟きながら小さくため息をついた。
ツチカもそれには気づいていたが、なんとなく聞く気にはなれなかった。
「え…っと…シルバさん、一つだけ質問してもいいですか?」
急にツチカはシルバに対してそう話を切り出してきた。
「なんだ?」
「えっと…さっきはシルバさんのことでいっぱいで気づかなかったんですけど…後ろの方は…?」
「あー…こいつはチャ…」
「あらー!ごめんなさい!初対面よね?私はチャミよ。よろしくねツチカちゃん♪」
シルバの言葉を遮りながらチャミが横からヌッと出てきてツチカに喋り出した。
「え?…あ、えっと…よ、よろしくお願いしますチャミさん。」
ツチカは戸惑いながらも返事をし、いつものようにチャミのペースに呑まれていった。
「チャミでいいわよー♪そう、一つだけお願いがあるのよ。できれば私も今日一日だけ泊めてもらえないかしら?」
半ば強引な申し出だったが雰囲気はまさにチャミの物。
「あ、はい。構いませんよ?」
流れにつられるようにツチカはすんなりと答えた。
「お前、宿をとってたんじゃないのか?なんで今日は…」
不思議に思い、シルバがチャミにそう聞いたが
「だって二泊もすると思わなかったんだもの。だからチェックアウトしてきちゃってるから今日は宿無しだったの。それにあの騒ぎの後だし…」
チャミは若干頬を膨らませながら不満をブツブツと並べていた。
「あの騒ぎって…お前は広場には居なかったのか。」
「ええ、急に起こされたと思ったら村が襲撃されてるからすぐにて荷物持って避難しろ!だなんて…ホントに迷惑よ!」
シルバの質問を火種に徐々に不満は怒りにも満ちた言葉へと変わりつつあった。
「分かった分かった。もう日もだいぶ暮れてるんだ。さっさとツチカの家に邪魔させてもらってそこで続きを話せばいいだろ。」
このままだと止まりそうになかったので、シルバは先に釘を刺してツチカの家に急ぐことにした。
「お帰りツチカ、とシルバさん達。今日もゆっくりしていきなさいな。」
ツチカの家に着くとチャカナはいつもと同じ椅子に座り、シルバ達を出迎えた。
「チャカナ、アカラは何処に…」
家に上がるとまず一番にチャカナにそう聞いた。
「アカラちゃんならぐっすり眠ってるよ。目を真っ赤に腫らして泣いていたからね…」
チャカナは少し寂しそうな表情を見せながらそう話した。
シルバはそれ以上のことは聞かず、眠っているアカラの頭を撫で、リュックに入っている石版を取り出した。
自分の持っている石版とその石版を合わせると、ひびがなくなり先ほどより大きな石版に変わった。
『俺が記憶の欠片を集めることだけをするのは簡単だ…だが……』
そこまで心の中で考えた後、シルバは
「守ると…約束したからな…」
もう一度眠るアカラの頭を優しく撫でながらそう呟いた。
疲れもありシルバはその日はあまり多くは語らず、すぐに深い眠りについた。
チャミとツチカも少し談笑していたが、あまり遅くならないうちに皆眠りについたようだった。
―――――
「フム…アギトが殺られたか…狂神シルバ。名に違わぬ強さを持っておるようだな…」
重苦しい雰囲気の中、一通の手紙に目を通しながらそう呟く男が一人いた。
軍議用の長めの机に肘を付き、その読み終えた手紙を握り潰しながらその男はニヤリと不敵な笑みを浮かべ
「所詮、アギト(アレ)もデストロイドの試験薬の実験体(おもちゃ)に過ぎん。だが…流石にこれ以上の損害を被るわけにはいかんなぁ…」
机には何脚もの椅子があるものの、彼を除き誰一人として席にはついていなかった。
壁を背にし、整列した彼の部下達はそんな中一言も口にせず姿勢を崩さず立ち尽くしていた。
その重苦しい雰囲気を出している者は間違いなく彼…何処か異質な雰囲気を持っており、明らかに周囲の彼らよりも位は上であることだけは状況から把握できた。
「力で統一するのも悪くはないが…頭を使うのも大事だ…戦争はボードゲームと同じ、最終的に切り札(エース)を持っていれば良いだけの事…」
潰した手紙をおもむろに手から離し、離された手紙もまた重力に逆らうことなく地面へ落ちていった。
「全軍、作戦変更。目標はシルバの持つ記憶の欠片だ。一度全戦力を全て本部に回収しろ。」
そう周囲の男達に命令を下すと、その男は手紙を踏みにじり、その部屋を後にした。
「テオン、私に露伴を企ている者がいると聞いた。消しておけ。」
彼のその言葉とともに何処からともなく一人のフライゴンが現れ
「了解しました。ヒドウ様。」
そう、口にするとほぼ同時に彼は闇の中へと消えていった。
ヒドウと呼ばれたその男は再度不敵な笑みを浮かべて、彼も夜闇の中へと消えていった。
―――――
翌朝、シルバ達は皆で朝食をとり早めに島を出る準備をしていた。
昼頃になれば多くの人で溢れかえるうえ、あくまでシルバはこの島を救った英雄ということになっているからでもあった。
「チャカナ、ツチカ。短い間だったが世話になった。この恩は忘れない。」
シルバが礼を言い、そのまま立ち去ろうとしたが
「シルバさん。私から一つだけ頼まれてもらえないかね?」
チャカナが急にそんな話を切り出した。
シルバが頷くのを確認し、続けて
「ツチカをよろしくお願いします。」
そう言った。
「え!?どういうこと?お婆ちゃん!」
このことに最も驚いていたのはツチカだった。
おおよそこんな話は知らなかったようで、豆鉄砲を喰らったマメパトのようになっていた。
「可愛い子には旅をさせよ。あなたも十分成長した。あとは様々なことを見て回りなさい。それが本当の意味であなたを成長させる糧になるから。」
穏やかな表情でチャカナはそうツチカに言い、羽で優しくツチカの頭を撫でてあげた。
ツチカは急なことで心の整理がつかなく、今にも泣き出しそうな顔でオロオロとしていたが、チャカナの顔を見て、ようやく決心がついたのかシルバ達の横にちょこんと並んだ。
「えっと…行ってらっしゃいのつもりでしたが…行ってきますお婆ちゃん。そして、よろしくお願いします。シルバさん、アカラさん、チャミさん。」
そう言い、一つお辞儀をした。
礼儀正しく、お淑やかな女の子、ツチカも加わりシルバの守らなければならないものは増えたが、シルバの顔は何処か笑っているようにも見えた。
―――――
流石に朝早くということもあり、港まですんなりと来ることができた。
アカラの性格や二晩泊まらせていてもらったこともあり、すでにツチカもこの旅の仲間には慣れたようだった。
「よかったのか?ツチカ。きちんと別れを言わなくて。」
港で船を待っている間に村のあった方向を寂しげに見つめるツチカを見て、シルバがふと声をかけていた。
「ええ、いいんです。そんな事を切り出したら私、きっと離れられなくなってしまうので…いつか帰ってきたその時に…」
ツチカは寂しげな表情は残ったまま、偽りのない笑顔でシルバにそう答えた。
ボォォォーー………
そんな汽笛がツチカの決心がつくのを待っていたかのように遠くから聞こえてきた。
まだ朝靄の立ち込める海からゆらゆらと近づく光が見えてきた。
「さぁ、次の島に行こう。」
そう言い、シルバはツチカを連れてアカラ達の所へ行った。
アカラ達もシルバ達の事を探していたのか、丁度港の真ん中の辺りで合流することができた。
「全員集まったな。それじゃさっさと乗船券を買って…」
「シルバ!!」
急なことで驚いたが、シルバの言葉を遮るように叫んだのはアカラ。
その顔はアカラが今まで一度も見せたことのないような、複雑な表情だった。
「ど、どうしたの?いきなり叫んだりして…」
チャミもいつもと様子が違うアカラを心配してか、すぐに声をかけたが
「一つ……一つだけ約束して欲しいんだ…」
静かに…ゆっくりと、自分のペースで喋り始めた。
約束、それだけでアカラが何を言いたいのか初めから分かっていたが、誰も喋らずに見守っていた。
「お願いシルバ…もう…絶対に殺し合わないって約束して…もう…シルバがあんな顔するのも嫌だし、やっと仲良くなれた人とシルバが戦い合うのも嫌だ…だから…!」
真っ直ぐにシルバの瞳を、アカラの瞳が捉えていた。
シルバの答えは既に心の中で決まっていた。だが、それは口に出せば必ず守らなければならない『約束』になる……
「分かった。約束だ。もう、誰も殺さない。そして必ずお前たちを守ると約束しよう。」
それは己に言い聞かせた言葉。己の決意を確かめるために、必ず守るために、アカラと約束を交わした…
「はいはい!辛気臭い話はこれでおしまい!」
そう言いチャミが場の空気を一気に変えてきた。
普通ならついていけないかもしれないが、彼らは元々そういった空気の方が好きなのだ。
「そうだな。ところで、次はどの島に行く予定なんだ?」
「僕は特にないけど…」
シルバの質問に対し、アカラはそう答えたが
「それなら私に提案があるわ♪」
そう自慢げにチャミが言ってきた。
「次は虫の島に行きましょう!」
シルバ達が聞くよりも早く説明を始め、提案した場所は虫の島だった。
「虫の島?確か竜の軍が攻めこんできてるって言ってなかったか?」
シルバが聞き直した通り、虫の島には現在竜の軍が攻めこんできている上に、その情報を提供したのは他でもないチャミだったからだ。
「確かにね。でも私が手に入れた最新の情報では今、竜の軍は全部竜の島に戻ってるらしいわよ。」
チャミは嬉しそうにそう言い返した。
「ま、もうこの辺りで近い島はここだけだし、せっかくなんだからもう攻め込まれてる状態でも行くつもりだったからね。」
「なんでだよ…」
若干呆れ気味にシルバがつっこむとチャミは急に真面目な顔をし
「だって最近のシルバくん…元気なさそうだし…私にできることは私の地元でも観光案内するぐらいしか無い気がするから…」
そう寂しそうに呟いた。
せっかくチャミが明るい雰囲気を作ってくれたのにも関わらず、シルバの何気ない一言で再度気まずい雰囲気になってしまった。
勿論そうなれば自然とシルバに無言の圧力がかかっていた。
「分かった分かった。虫の島に行こう。明るくは振舞うが、以前言った通り俺は笑うということはできんからな!それでいいな!?」
完全に悪者になったシルバも半ば強制的に虫の島へ行くことに同意させた。
鳥の島の始発船に乗り、短くもさまざまな事があった鳥の島に別れを告げ、新たな島、虫の島へと船は進みだした。
船内ではアカラとツチカが船旅を大いに満喫していたが、未だ船の揺れに慣れないシルバは船室でゆっくりと船酔いしていた。
その横でチャミは机に向かい、蔓を器用に使い手紙を書き綴っていた。
「チャミ……なにを必死に書いてるんだ…?」
「え!…あ、あぁ…実はま、まだ…島に帰ることを知り合いに教えてないから…急いでその旨を書いてるんだけど…なんだか恥ずかしくって…」
死んだように眠るシルバから急に声をかけられ、とても動揺しながらチャミはそう答えた。
「そういうのは知らせておいた方がいいのか?」
「まあね…急に戻ってきたりしてたらきっとびっくりするでしょうし、やっぱりみんなが元気にしてるかどうかが気になるからね…私なりの言葉で…できた!感謝と謝罪の言葉もこめて送ることにするわ。」
そう言い、船室の窓に行儀良く止まっていたマメパトにその手紙を渡し、神妙な面持ちで窓から飛び去るその姿を見つめていた。
その後しばらく時間が経つと次第に虫の島が見えてきた。
虫の島は鳥の島や獣の島とは違い、より一層深い密林で島が覆われていた。
それこそまさにジャングルの名がふさわしい、海に生える樹林のようだった。
そしてチャミが言っていたように島には本当に何事もなかったかのようにすんなりと入れ、港にもさまざまなポケモン達がおり、その光景は平和そのものだった。
「それじゃ私は戻ったことを報告しに行くから少し待っててね。」
そう言って足早にチャミはその場を離れ、恐らく村があるであろう方向に向かってまっすぐに消えていった。
「返事も聞かずに…」
シルバがそう愚痴を漏らすと
「きっと嬉しいんだよ。島にやっと帰ってこれたんだから。」
「ここはチャミさんに気を遣ってあげましょう。」
そう二人がシルバに言った。
見知らぬ土地に三人、誰もこの島のことを知らないのでチャミが戻ってくるまでの間しばらく待ちぼうけすることになった。

**虫の島2 [#d91e7e3c]

小一時間ほど港で暇つぶしをしていただろうか。
さすがに待つのも疲れてきた頃に元気に尻尾を振りながらチャミが三人に近寄ってきているのが見えた。
「ごめんなさい待たせたわね。それじゃ改めて虫の島をすみずみまで紹介していくわね。」
そう言いながら嬉しそうにシルバ達の少し前に出た。
「そういえば一つ気になってたんだが…」
「なあに?」
シルバの質問にくるりと振り返りながらチャミが答えた。
「なぜチャミはこの島を出て、世界を見て回ろうと思ったんだ?」
シルバのその質問に対し、チャミは極めてにこやかな笑顔で答えた。
「私はこの島が大好きよ。でも、他の島にはいったいどんな人達が住んでて、どんな建物があって、どんな生活をしてるのかが気になっちゃってね。それでいてもたってもいられなくなっちゃったの。」
純真素朴、まさに他の島への好奇心から生まれた言葉だ。
案外、他の冒険者もそういった動機で世界を旅して回る人が多いのかもしれない。
「いいな…チャミはそんな風に自由に旅して回って…」
「お前も今は旅をしてるじゃないか。それじゃダメなのか?」
アカラがあまりに寂しそうにそう呟いたのでシルバがすぐに質問した。
アカラはすぐに笑顔を取り繕い、何事も無かったかのように誤魔化したが、いつものようになにかしろの言葉を返すことはしなかった。
「シルバさん。一つだけ聞かせてもらってもいいですか?」
「なんだ?」
少し歩き始めた時にツチカが不意に質問してきた。
「シルバさんは世界の平和を守るために記憶の欠片を集める旅をしてるんですよね?こんなにゆっくりしてても大丈夫なんですか?」
ツチカのその質問は疑問というよりも不安な気持ちの方が見て取れた。世界を救うにしては確かにのんびりとし、賑やかな旅だ。
鳥の島に居た時もそうだったが、実際観光巡りばかりしているようなものだ。
しかし、そこに存在する神の姿を見ればようやくシルバの旅の壮大さが伝わってくる。
「大丈夫だ。別に世界が崩壊しかかっているわけじゃないし、それにこの旅は世界の安定を保つための旅だからな。」
シルバはそんな不安げなツチカにそう言い、話しながら歩いていたため少し差の開いたチャミたちの所まで早足でつめて行った。
チャミの後をついて行くとだんだんと道幅が広くなっていた。
歩きやすくなったとはいえ慣れない土地、さらには自分達が住んでいた島の森よりもさらに鬱蒼とした木々の合間道。
少し進んではチャミが他のみんなが追いつくまで待っているという不思議な光景になっていた。
「やっぱり島に住んでなかった人にはこの道は歩きにくかったかしら?」
木の根や蔦が伸びて凹凸の激しい道の中、大きく飛び出た木の根に腰掛けてチャミが面白そうにそう言った。
「流石に歩きにくいな。見た目以上に道が平坦じゃない上に蔦が邪魔で進みにくい。」
シルバがそう答えるとチャミはクスクスと笑い
「ごめんね、実は最近村と港を繋ぐ歩道ができてたらしいのよ。けど面白いから昔から使ってたこの道を選ばせてもらったわ♪」
といかにも悪戯をした子供のように嬉しそうにそう言った。
「あのなぁ…」
シルバは呆れた調子でそう言いかけたが、やはりそのまま言葉を続けるのをやめた。
何故かその時のチャミの表情はやけに嬉しそうで、いつもは見せないような不思議な無邪気さがあった。
まるで何者にも縛られていないような…そんな不思議な笑顔に見えて仕様がなかった。
今のシルバには、心の奥から湧いてくるそのよく分からない何かの正体は分からなかったが、確かに不思議な何かが湧き上がってくるのだけは分かった。
「ほら!もうすぐ村に着くわよ!」
光も疎らにしか届かないその林道に一層強い光が差し込んでいるのが見えた。
暗がりに慣れていたため光で少し目が眩んだが、森を抜けるとそこには村が広がっていた。
転々と生える木々から落ちる木漏れ日が印象的だった前の二つの島とは打って変わり、この島は村のある所がポッカリと木々の間に穴が開いており、燦燦と陽の光が降り注いでいた。
しかし、その森にポッカリと開いた穴のほぼ中ほどに人が集まっているのが見えた。
大小様々な人影はシルバ達が村に着いたのに気が付いたようでこちらに振り返っていた。
「!!あれは…」
チャミが驚いた声を上げた。
それもそのはず、村人だと思っていたその姿は全て竜の姿…つまり彼らは竜の軍だったのだった。
「どうして!?さっき私が来たときは何も変わってなかったのに!」
突然の出来事にチャミは現状を理解できず、ただただ困惑していた。
「待ちくたびれたぞ!シルバ!」
そんな声がその竜たちの中から聞こえ、一人のポケモンが歩み出てきた。
「俺は竜の島戦闘集団竜の軍、先遣戦闘部隊竜の翼九番隊隊長のメテオだ。悪いがお前らの行動なんざ筒抜けだ。シルバ!貴様の持つ記憶の欠片を渡してもらおうか!」
そのメテオと名乗るポケモンは巨躯な体格、荒々しい体表、そして赤と青の体色が有名なクリムガンだった。
ここに竜の軍がいるというだけで不測の事態であるのに、さらに彼らはシルバが集めている記憶の欠片の存在さえも知っていた。
シルバが戦闘態勢をとってメテオをしっかりと見据えていると
「待って!村のみんなは何処にいるの!!」
そうチャミが今にも泣き出しそうな顔で訴えかけていた。
確かに先程まで村人たちがここにいたのなら、ここにいた村人たちの安否が気になる。
相手は世界中の島々に対して侵攻を続けている集団、こんな状況で安全である確立が低く、チャミの不安も十分に理解できた。
「俺達が侵攻してきたときに全員散ったよ。そこらへんに全員非難してるんじゃねえか?」
チャミの質問に対し、メテオは意外な答えを返してきた。
メテオはそのまま続けて話し出した。
「元々俺は村人とか逃げる奴とかには興味はねぇんだよ。俺が興味があるのは…シルバ、お前みてぇな強ぇ奴にしか興味がない。お前もそうだろ?『狂神シルバ』…」
メテオはそう言い挑発するようにシルバに対し指差し、その指をクイクイッと動かした。
その顔はとても恐ろしい存在には見えず、ただ強者を求める一人の戦士のようにも見て取れた。
ひとまず村人の安否は確認できたので、シルバも再度構え直したが、今度はアカラがシルバを止めた。
「シルバ…!」
「分かってる。約束したからな…」
約束…そう、それは決して相手を殺さない事…
カゲが言っていた今のシルバには一番難しい事…
シルバはそんなカゲの言葉を思い出しながらその記憶を振り払うように頭を振り、剣のように爪を構えず畳み込んで拳を作った。
長いその爪では握り込むことも難しく、はっきり言って十分に力を発揮できるような拳ではなかったが、今のシルバにとっては丁度良い足枷だった。
「待ってくださいよメテオ隊長。暴れたいのは体調だけじゃないんすから…先に俺達にやらせてくださいよ。」
そう言いながら何人かの彼の部下がメテオの横に歩み出てきた。
十…いや二十人程はいるだろう。パッと見はゴロツキとなんら変わりない集団だが、無数の傷と逞しく鍛え上げられた肉体だけはそこらのゴロツキとは違った。
「悪いなシルバ。こいつらもそう言う奴らだ。俺はまず加わらん。部下だけで行かせるが文句無いよな?」
シルバは一切返事をせず、代わりに拳を体の前で構えボクサーのファイティングポーズのような姿勢をとることで答えた。
それを見てメテオは軽く笑い、すぐ横にいた部下の背中をポンと押した。
「下がってろ。」
シルバは後ろを振り返り、三人に安全な場所に移動するように促した。
チャミが素早くツチカとアカラを集めたが、アカラはやはり心配そうな顔をしていた。
チャミ達が十分に離れたのを確認するとメテオたちに向き直した。
妙に張り詰めた空気が流れていた。いや流れていたというよりは滞っていた。
身動きがとれない。そう言っても過言ではない重苦しい空気。
指先一つでも動こうものならその瞬間に戦いの火蓋が切って落とされる。
まさに一瞬触発の状態だった。
「メテオ、今すぐ部下を退かせろ。」
そんな声により場の張り詰めた空気は乱された。
「おやおや…誰かと思ったらドラゴ隊長様々じゃありませんか。」
いかにもつまらなそうな顔をし、その声に対してメテオは答えた。
メテオの部下の後方からやってきたのはドラゴだった。
「忘れたか?今回の任務はシルバと戦うことではない。この島にある記憶の欠片の入手。そして可能ならばシルバの持つ記憶の欠片の奪取だ。」
勝手な行動をとっているメテオに少々苛立っているのか、目がつり上がっていた。
ドラゴの言葉に対し、メテオも苛立ち
「分かってるんだろ?今お前が言ったように俺にはシルバから記憶の欠片を奪える自信があるんだよ。」
真っ直ぐドラゴを見据え、そう言い返した。
「悪いが今のお前に奴は倒せん。」
「なんだと!その口振りだとてめぇなら殺れるって言いたいのか?」
ドラゴの口からでた言葉にメテオは凄まじい剣幕で食い掛かった。
「いや、俺にも今の奴は倒せん。今は戦いを避ける方が無難だというだけだ。」
そんなメテオに対し、ドラゴは冷静に答えていた。
そんな口振りで答えたドラゴを見て、メテオは哀れみにも似た表情で笑い、
「竜の軍唯一の蜥蜴も地に堕ちたな。所詮は怖気づいたってことか。」
「警告はしたからな。」
そんな事を言われてもなお動じずに、ドラゴは言葉を返した。
シルバの方に向き直したメテオの顔は明らかに苛立ちが見えていたが、それでもなおシルバに対する敵対心は捨てていなかった。
「行くぜ狂神!俺が叩きのめしてやる!」
言うが早いかその巨体とは似合わない素早さでシルバとの間合いを詰め、一気に殴りかかった。
が、シルバもそれをくるりと身を翻して避け、そのまま回転を利用してメテオの後頭部に向かって強烈な裏拳を喰らわせていた。
「ガッ…!?」
その一撃がどれほどの重さだったのかを伺えるほどの鈍い音が響き渡り、たった一撃でメテオはよろめき、膝を落としそうになったがぎりぎりのところで持ち直した。
「効いたぜ今の一撃…だがまだだ…俺はまだくたばっちゃいないぜ…」
明らかに一撃が効き、動きが鈍っているのが見て取れたが、それでもメテオは一歩も退かずもう一度殴りかかろうとしたが、それよりも早くシルバが強烈な正拳突きを打ち込んでいた。
もろに喰らい、一声さえも上がらないほどの一撃だったのにも関わらず、それでもメテオはその腕を掴み、必死に抵抗していた。
「ま……だ…だ…」
『なぜだ?なぜメテオは倒れないんだ?殺したくはないが、倒れてくれなければアカラたちが危ない…』
シルバの中ではそんな思いが満ち溢れ、必死に喰らい付くメテオもありはやく彼を倒さなければと焦っていた。
腕を振りほどき、素早く二撃殴り、それでも倒れず立ち続けるメテオに早く倒れてくれることを願い、一撃、さらに一撃と拳を打ち込み続けた。
その度に鈍い音が広場中に響き渡り、次第に広場の白い石畳に紅い痕が付き始めた。
それでも決して倒れないメテオと殴り続けるシルバだけがその場で異様な雰囲気を放っていた。
『倒れろ!倒れろ!!倒れろ!!!』
より一層思いを込めて振り下ろそうとした腕を何者かが止めた。
「シルバ、もうやめろ!こいつにもう意識はない。」
腕を掴んだドラゴがシルバにそう言って二人の間に割って入った。
彼の言った通り、すでにメテオに意識はなくそれでも倒れることなくそこに立ち尽くしていた。
「何故だ!!奴はまだ倒れていないだろ!」
「もうすでに意識はない!こいつは死んでも倒れたくないという馬鹿みたいな根性で立ってるだけだ!!」
現状を理解できないシルバにドラゴは必死に理解させようとしていた。
それでも暴れ、なんとかメテオを倒そうとするシルバにドラゴは
「お前はあの子達を守りたいだけだろ!そこまでして奴を殺したいのか!!」
耳元でそう言い、ほぼパニック状態に陥ったシルバを冷静にさせた。
漸く我に返り、ドラゴに押さえつけられたまま周囲を見渡すと、そこに並ぶのは恐怖に満ちた瞳、瞳、瞳…全てが彼を恐慌の眼差しで見つめていた。
「なぜ……」
シルバが何かを喋ろうとしたがその声は周囲にいた人達の声によってかき消された。
「やっぱり化け物だ!逃げろ!!」
「やってられるかよ!!」
そんな言葉とともにメテオの部隊は蜘蛛の子を散らすように森の中へと消えていった。
「あいつら自分の隊長置いていくか?普通。」
呆れた口調でドラゴはそう言い、シルバを離した。
しかし、シルバもほとんど放心状態でそこに立ち尽くしていた。
「シルバ、お前とは話さなければならないことがある。だが今はあの馬鹿をつれて帰らなければならん。また後でだ。お前ら一度戻るぞ!」
そう言い、仁王立ちしたままのメテオを担いで彼の部隊も消えていった。
先程までポケモン達で溢れ返っていた広場はあっという間にシルバを残して静まり返っていた。
さまざまな思いや困惑の中で釈然としない気持ちを持ったままシルバはアカラたちの元に戻ったが
「シルバの嘘吐き!もう絶対に誰も死なせないって約束したのに!」
シルバが声を出すよりも早く、誰かがシルバに労いの言葉をかけるよりも早く、最初に静まり返った広場に響き渡ったのはアカラの嗚咽混じりの怒鳴り声だった。
河のような大粒の涙をボロボロと零し色んな思いが溢れ出てしわくちゃになった顔をアカラは拭いながら森の中へと走り去ってしまった。
「アカラちゃん!えっと…ごめんなさい!急いでアカラちゃんを追いかけるから…とりあえずまた後で!」
チャミはそう言いアカラの走り去って言った後を追いかけていった。
そしてツチカもおどおどし、何か言おうとしたが結局何も言わずにチャミの後を追っていった。

**虫の島3 [#a906d623]

「ハァ…ハァ…ハァ…ここまでくれば大丈夫だろ…」
「しっかし……あのシルバって奴は化物だな…まさか隊長が一方的にやられるとは…」
深い森の中を必死に走り抜けてきたのだろう。
海辺に近いために木々の密度が疎らになり幾分か見晴らしが良くなった小高い丘で二人のポケモンが口々にそんな事を言いながら荒い息を整えていた。
彼らは逃げ出したメテオの部下だが、部下といってもただ単に彼の部隊に置かれただけのような存在だった。
「どうするよ…これから…。ここで部隊に戻ってもシルバに殺されるか軍で吊るし上げられるかのどっちかしかないぞ?」
「いっそのことシルバに付くのはどうだ?下手に出れば殺されるようなことはないだろ。」
そのためかあまり仲間意識というものが薄く、早速掌を返す算段を整えていた。
が、そんな会話をしていた片方の胸を鋭い爪が一瞬にして貫いていた。
「え?」
その言葉を最後にピクリとも動かなくなった彼の後ろには誰かが立っていた。
「お、お前は!テオン!!ち、違うからな?ただ冗談で話してただけなんだ!せ、せめて俺は殺さないでくれ!」
テオンと呼ばれたフライゴンはその爪に付いていた血を振りほどき、極めて無表情なままもう一人を睨みつけた。
「例え冗談であったとしてもヒドウ様に反旗を翻すような発言は私が許さない。」
「分かってる!もう言わん!これからは心を入れなおすから!」
彼の感情の篭っていない言葉に必死に助けを求めたが
「一度裏切った者を救うはずがないだろう。私は竜の軍の『竜の尾』だ。私の任務は…」
そこまで言うとテオンはくるりと彼に背を向け、そのまま振り返る勢いで鋭い尾を彼の前で振りぬいたと思うとおびただしい量の血を喉から噴き出しながら言葉もなく倒れた。
「ヒドウ様の敵…裏切り者の排除だ…」
吐き捨てるようにそう言い、木々の陰の中へと消えていった。
――――
森の中を歩く一人の姿がそこにあった。
『なぜ…なぜあの時…』
一人そんなことをただ悶々と繰り返し考え、当てもなく森の中をシルバは進んでいた。
やりきれない思いを忘れるためにどうすればアカラたちとの約束を守りながらこの旅を続けられるのか必死に考えていた。
それでも思い出されるものは自分へ向けられる畏怖の目。
ただ守りたい一心で戦った自分へ向けられるアカラたちの怯えた瞳だった。
なにかやりきれない思いが胸の中に溢れ、近くに生えていた木を思い切り殴っていた。
「悩んでいるようだな。」
そんな声が聞こえたかと思うと目の前の木の陰がスゥと自分と同じ形になった。
「カゲか…。何故俺は皆を守るために戦ったのに…」
「何故恐れられるのか…。と聞きたいようだな。」
カゲに対し質問すると言葉を続けるかのように質問に返答してきた。
「お前には決定的に足りない物がある。普通のポケモンなら全てが一様に持っているものだ。」
そう言いながら真っ直ぐにシルバを指差して
「お前には記憶が無い。それは自分の今までの経歴だけではない。お前には感情に至る記憶すらないんだ。」
そう言い放った。
普通なら驚愕するだろう。
だが今カゲが言った通りシルバには感情が無かった。
ただ言い放つカゲの言葉をシルバは静かに聞いていた。
「感情…か。それが俺に必要な物なのか。」
「否、お前が生きていくには不必要なものだ。」
先程必要だと言ったばかりなのにカゲはシルバの言葉を否定した。
「どう言う意味だ。何故足りない物なのに俺には要らない。」
「それは…」
カゲはそこまで言い、返事の代わりに素早く鋭い回し蹴りをシルバに浴びせていた。
「そういうことだ。」
だがカゲが続けて言うとシルバは不意を突かれたのにも関わらず回し蹴りを片腕で止めていた。
カゲは素早く退き、そのまま殴りかかったが同じようにシルバはそれを受け止め更に反撃に移っていた。
シルバの重い一撃もカゲは難なく防ぎ、攻撃の応酬が繰り広げられた。
鏡にでも写したかのように二人の動きは似ており、シルバが殴ればそれをカゲは防ぎながら殴り返し、同じようにシルバもその攻撃を防ぎながらまた攻撃をするといった埓のあかない攻防が続いていた。
数十分は続いただろうか。
お互いに一撃ももらわず、息も切れてさえいなかった。
それにもかかわらずカゲは攻撃を止めて話し出した。
「お前は戦っている最中に何か考えたか?」
そのカゲの問いに対しシルバはただ首を横に振って答えた。
「その通りだ。お前は戦うこと以外を考えていなかった。戦うだけならお前は最強だ。」
漸くカゲの言いたい事が理解できたシルバは
「しかしそれでは困る。俺にはアカラたちを守らなければいけない。それにアカラとの約束もだ。」
ただ自分が戦うだけであれば負けることは無い。
それは同様に自分が絶対の強者であり、感情が無いゆえに手加減もできないからだ。
シルバは心で物事を判断できなかった。
そのためメテオとの戦いでも目視で倒れなかった彼がまだ戦えると判断し攻撃を続けていたのだった。
「感情の記憶はお前は忘れたのではなく持ち合わせていないだけだ。覚悟はあるか?」
言葉の意味はよく分からなかったが、それで約束を果たせるならとシルバは頷いた。
「だったら『恐怖』しろ。それが今すぐお前に必要な物だ。一度殺してやろう。」
カゲがそう言ったと思ったその時、カゲの目が紅く光りだし彼自身も陽炎のようにぼやけた姿へと変わっていった。
途端にシルバの足元から無数の影が触手のように伸び、シルバを身動きできないように一瞬で縛り上げた。
不意を突かれたといってもこれは流石に予想の範疇を超えていた。
振りほどこうとしたが四肢を大の字に広げられ、一切の抵抗を許さなかった。
「今から貴様にあのクリムガンが受けたダメージをそのままお前に浴びせてやる。避けるなよ?まあ避けられんが。」
言うが早いかカゲの裏拳がシルバの後頭部を捕らえていた。
「ガッ!?」
今まで一度たりとも味わったことの無い激しい痛み。
さらに後頭部を殴られたことによって起こる脳震盪で意識を保つのも怪しかった。
だがそれで気を失いそうなシルバの頭を更なる激痛で無理やり覚醒させた。
カゲの正拳突きが真っ直ぐにシルバの胸を貫き、突き抜ける痛みが木々のざわめきでどれ程のものだったのかが容易に確認できた。
二撃。
それは今までシルバが一度も受けたことの無い真の痛みだった。
防御は今まで散々してきた。
多少痛かろうが大事に至るほどではなかった。
そんなものとは比べ物にならないダメージがたった二撃でシルバの脳に警笛を鳴らしていた。
だがそれでもカゲの攻撃は終わることは無かった。
すぐさま鋭い一撃がシルバの顔を貫き、そこから間も置かずに乱打が始まった。
その攻撃全てが非常に重たく、気を失いそうになるが次の骨が軋む音と突き抜ける鈍い打撃音で気を失うことさえ許されなかった。
漸く拳の雨が止み、シルバの荒い息遣いだけが聞こえるようになったとき
「止めだ。」
そう言い放ち振り上げたカゲの拳にシルバは初めて恐怖した。
『こ、殺され…』
ビタリと眼前でその拳は止まり、風圧だけがシルバの顔面を撫でていた。
「これでお前は一度死んだ。死の『恐怖』、しかと理解したはずだ。」
そう言いながらカゲはシルバから離れた。
同時に自分を拘束していた影も消え去りシルバは地面に倒れこんだ。
シルバはその場から立ち上がれずにただただ震えていた。
「恐怖の感情のついでだ。お前が使う幻影の能力は現実に干渉する。それを覚えておけ。」
その言葉を最後にカゲは現れた時と同じように木々の陰の中へと溶けるように消えていった。
「そうか…。メテオはこれを味わっていたのか…。やっと俺も理解できた…。」
一人残されたシルバは決して恐怖から震えていたわけではなかった。
恐怖を理解したことで心から湧き上がる何かに突き動かされるように身震いさせていた。
傍から見ればおかしいが、今シルバ自身は気付いていない喜びに打ち震えていた。
それでもシルバにとってそれは大きな進歩になっているのだから…。
――――
時を同じくしてシルバのいる森とは真逆の方向にある浜辺にアカラはまた目を真っ赤に腫らして座っていた。
「はぁはぁ…だめじゃないの!勝手に知らない土地で闇雲に走り出しちゃ!」
漸くアカラに追いついたチャミがアカラの背中に声をかけた。
いつもならその時点で泣きながら色んなことをチャミに訴えかけるのだが今回は返事もせずただ海を見つめていた。
少しの間沈黙が続いた。
打ち寄せる波の音と風にざわめく木々の葉音だけが二人の静寂さを紛らわしていた。
「横に座らせてもらうわね。」
先にチャミが静寂を破り、アカラの横にとぐろを巻いて少しリラックスした。
体操座りで膝を抱えたままただ遠く遠くの海を見つめているだけ。
「風が気持ち良いわね。」
元々あんまりにも静かなのが苦手なチャミは何とか色んな話題を振ってアカラと喋ろうとしていた。
そのまま少しチャミの一人語りが続いていたがツチカが遅れて登場してくれたことによってそれも終わった。
暫くはチャミとツチカが色んな話をしていたが
「僕ね…あの時、シルバのことが怖くて堪らなかったんだ…。」
急に喋りだしたアカラに二人は少し驚いたがそのまま邪魔せずに聞くことにした。
「でもそれでも逃げ出したいなんて思うことは一度もなかったんだ。なのに…。」
そこまで言うとアカラは静かに涙を流して喋るのを続けられなくなっていた。
少し時間を置いて
「あの時のシルバが敵なのか味方なのか本当に分からなくなっちゃったんだ…。シルバに僕がついていくって言ったのに…。」
泣いていた理由は単に怖かったとか嫌だったとかそういう意味ではなかった。
アカラは初めて抱いたシルバ自身への恐怖に罪悪感を持っていた。
勝手についてくると言ってはっきり言ってシルバに何度も迷惑をかけているのに勝手に自分を守ってくれているシルバを恐れていたからだった。
「いいんじゃないの?確かにあの時のシルバくんは怖かったわ。」
「でも…!」
「だからきちんと謝ってもう一回約束すればいいんじゃないの?大事なんでしょ?シルバくんも、みんなも…。」
チャミの言葉で気持ちが楽になったのか、アカラはそのまま静かに頷いてまた静かに泣いていた。

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