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蒼天と霹靂 の変更点


writer is 双牙連刃
writer is [[双牙連刃]]
リクエスト頂きましたデンリュウ×ライコウ作品が一応完成しました!
内容は……かなり散らかっております。散々時間掛かったのに……orz
そこは水に流してやってください。では、
&color(Red){warnning!}; この作品には&color(Red){官能表現};が含まれています!
それは無いだろ! という方はバックボタンをプッシュしてくださいませ!
スタートですよ。
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「はぁ……」

 白い雲が流れていく青空……その空には眩しい位の光を放つ太陽。
 ライトポケモンと呼ばれている私にも、あのような力強さがあれば……。
 こんな切り株に腰掛けて時間を費やしている暇はありませんでした。今日の分の食料を早く集めなければ。

「こないなとこでぼ~っとしとったら風邪引くで?」
「!? だ、誰です!?」

 突然後ろの木の陰から声を掛けられた!? 姿は……確認できません。
 くっ、震えるな私の尻尾! 相手が何かも分からずに恐れるなんて、格好悪すぎる!

「そないに身構えなさんな。ウチはあんさんを襲おうなんてちーとも思ってへんわ」
「襲う気は……無い? ならば、姿を見せてもいい筈です。何故隠れたままなのですか!」
「う~ん、姿見せてもええねんけど、見ても逃げんでくれる? ウチ、逃げられると傷付いてまうよ?」

 語感からして……雌性でしょうか? 聞いたこと無い喋り方ですね。それなのに雌性と決め付けるのは些か軽率でしたね。
 言葉に敵意は感じませんし……どう答えましょうか? ここは姿を確認すべきですね。群れに害無き存在かも分かりませんし。

「分かりました。逃げませんので、姿をお見せ頂けますか?」
「ほ、ホンマか!? 約束やで!」

 木の陰からゆっくりと影が出てきます。うぅ、逃げないとは言いましたが、やはり怖い……そもそも、何故あんな約束をさせられたのでしょう?
 も、もしかして……とんでもなく怖い見た目のポケモンなんでしょうか!? あ、足が震えそうです。

「よ、よぉ、どうや? こんなんなんやけど……」
「え……」

 一瞬で目を奪われました。黄色の体毛に所々の黒いライン。雷雲をイメージさせる首周りの紫の柔らかそうな毛。
 私よりも大きめのそのポケモンは……美しかった……。

「もしもーし! あんさん大丈夫かいな?」
「はっ! あ、大丈夫です。失礼」

 つい見惚れていました。こんな綺麗な毛並みのポケモンには出会った事がありません。
 それで、気付かない内に目の前に彼女(で正しい筈です。)の顔があり、弱虫な私の心臓は飛び出しそうになりました。堪えましたけど。

「良かったわぁ。ホンマに逃げんでくれたんやな。ありがとぉ!」
「い、いえ、どういたしまして」

 笑顔もまた素敵だ……胸が高鳴っている。それほど彼女は美しい。しつこいかもしれませんね。
 それにしても、この森の中にこんな方が居るとは知りませんでした。森の全てを熟知している訳ではありませんけどね。

「なぁなぁ、此処で何してたん? 暇ならウチとお話しせぇへん?」
「暇かと聞かれれば少し困りますね。日課……と言いますか、私は仕事で食料を集めているんです」
「食べるもん集めてるん? そんならウチ手伝う! だからちょっとだけ! な!」

 積極的な方ですね。こちらとしてもこんな出会い滅多にあるものでは無いので断る気は毛頭ありません。

「分かりました。ありがとうございます」
「やったー! ほな行こ!」

 今日の食料集めは、何やら嬉しい方向におかしくなりそうです。

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「ほーん、群れで色んな役に分かれとるんや?」
「はい、私は食料調達係で、他には群れの自衛係に修繕係等があります」
 
 適当に森の中を散策しながら木の実等を持っていた袋に入れ、彼女に話をしています。真剣に話を聞いてくれるものですから私ばかりが話をしている状態です。

「なんか勿体無い気がするなぁ。デンリュウって結構強いやろ? なんで自衛やなくて食料集めやっとるん?」
「私が……ですか?」
「うん」

 痛いところ、ですね。確かにデンリュウは電気タイプの中でもそれほど弱い部類ではありません。
 自衛係も務まるでしょう。私以外なら。

「私は、他者と戦うのが怖いんです。立ち向かう勇気が無いんですよ」

 群れの皆も自分でも認める弱虫の称号。デンリュウになれたのだって自分でも不思議な位ですよ。
 皆を守りたい。その気持ちなら誰よりもあります。だから私は、皆の命を繋ぐ食料を集めることに従事しているんです。
 戦う事を恐れる私に出来る、数少ない皆の為に出来ることを。

「勇気が無い? そうなんか? でもさっきはウチから逃げんで、話しかけてくれたやん」
「それは……群れの皆が危険に晒されるのが嫌だったんで……」
「それって、勇気ちゃうん? あんさんは勇気が無いんやない。他の奴より出すんが苦手なだけや」
「そうなんでしょうか? でも、そう言って頂けると少し元気が出ますね。ありがとうございます」

 いつの間にか励まされてましたね。遇ってまだ間もない彼女にこんな事まで話すとは……どうしてでしょう?
 何でも話せそうな雰囲気、とでも言うんでしょうか。そんな感覚を彼女から感じるのかも知れません。

「お礼言うんはウチの方や。色んな話ししてくれてありがとぉ」
「そんなお礼なんて。大して面白い話も出来ていませんし」
「ううん。話してくれたことが嬉しいんよ。ウチ、いつも独りぼっちやねん。こないに話ししてくれたポケモンに遇えたのも久しぶりで、すっごく嬉しい!」

 彼女が私に笑顔を向けてくれる度に胸の中心が熱くなる。もっと彼女と居たい。彼女の笑顔が見たい。そんな気持ちが込み上げてくる。
 私は……彼女に、恋をしている。遇って間もないから一目惚れという物ですね。

「私なんかの話で良ければ幾らでもしますよ。あ、まだ名前を言っていませんでしたね。私は蒼天(そうてん)、見ての通りのデンリュウです」
「あ~、ウチも名前言ってなかったな。ウチ、霹靂(へきれき)! ライコウっちゅうんやけど、知らんかな?」

 ライコウ? 聞いたことあるような無いような……う~ん?
 まぁ、思い出さなくても大丈夫でしょう。

「ライコウの霹靂さんですね。ライコウについては聞いたことあるような気はするんですが……すいません、思い出せないようで」
「いやいや、ええねんええねんそんな事。そや! いきなりであれなんやけど、蒼天て呼んでええ?」
「え? はい、構いませんよ。そう呼ばれた方がこちらとしても分かり易いですし」
「決まりやな! ウチの事も霹靂でええよ。さんとか何とか付けんでもええし」
「そんな、失礼ではありませんか?」
「ウチがええって言っとるんやから気にせんで。よろしくな蒼天!」
「で、では……こちらもよろしく、霹靂」

 霹靂か……素敵な方だ。気さくだし、何より優しい……。
 もっと一緒に居たい。話をしたい。もっと、霹靂の事が知りたい!

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 時の進むのがこんなに早く感じたのは始めてです。
 空は紅く染まり、西日が森を包み込む時間になっていました。

「もうこんなに時間が経っていたんですね。そろそろ戻らないと不味いか……」
「あ~そうやな。こんな時間まで付き合わせてゴメンな? そや! 食料ってこんなもんでええの?」

 話しながら適当に拾っていた筈なのに、いつの間にか袋はずっしりと重くなっていました。持つのには支障は無いですけどね。
 これだけの量を自分だけでは集めた事がありません。彼女も拾って入れていてくれてたんですか。気付きませんでした。

「十分すぎる位ですよ。お手伝い頂きありがとうございます」
「本当? よかったわ。ウチな、独りで居るゆうたやろ? だから食べるもん探すのも上手くなってん」

 なるほど、納得の理由です。
 独り……ですか。これから彼女はどうするんでしょうか?

「あの、聞いてもよろしいでしょうか。霹靂、この後はどうするんですか?」
「この後って?」
「私は群れという帰る場所がありますが、貴女はどこへ?」
「適当なとこで夜明かしてまたどっか行くんやけど」
「そう、なんですか」

 それでは、此処で別れればもう会えない……。
 嫌だ! 折角こんなすばらしい出会いがあったのに、もっと話したい事も聞きたい事もあるのに、もう会えなくなるなんて!
 でも、私に彼女を引き止める権利なんてありません。彼女が此処を放れる事を望むのならば、それを受け入れなければならないのでしょう。

「ねぇ蒼天」
「はい!? なんでしょう?」

 俯いていたので不覚にも彼女の声に驚いてしまいました。

「あんな? もしもの話なんやけど、蒼天さえ良ければ明日もウチとお話しせぇへん?」
「それって……明日も霹靂と一緒に居られると取ってよろしいんでしょうか」

 ええええ! 彼女の方から誘ってくれるとは! それほどありがたい事はありませんよ!

「うん! 駄目やろか?」
「いえいえそんな! 必ず来ます! 私なんかで良ければ喜んで!」
「本当!? 嬉しい!」

 彼女が本当に嬉しそうな笑顔を私に向けてくれました! 絶対に来ます! 朝一で来ますとも!

「じゃあ、始めに会った切り株んとこで待ち合わせって事でええかな? あそこならちょこっと拓けとるし、ウチも探し易いんやけど」
「あそこですね。私はいつも休憩で使っているので場所は把握しています。大丈夫です」

 これで明日も霹靂に会える! 胸躍るような気分です!

「じゃ、今日はありがと! また明日な!」
「はい! また、明日!」

 うわぁ~! 明日が楽しみです! 今日眠れないかもしれません!
 いけないいけない、眠れずにいて明日霹靂を待たせるなんて事は絶対に避けなければ!
 それにしても楽しみです。いつもより荷物は多いですが帰り道も苦になりません。家に帰って早く休もう。
 眠って、明日を迎えればまた彼女に会えるのですからね!

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「ただいま戻りました」

 群れの入り口で見張りをしているエレブーに一言掛けて帰ってきた旨を伝えます。これをしないと群れ上げての大捜索に発展してしまうんですよ。
 昔に一度声を掛けずに帰ってきて、その翌日に私を探すための大部隊が組まれかけた事があったんですよね。

「蒼天さんお帰りなさい。今日は少しお帰りが遅かったようですね?」
「その分実入りはありましたよ」
「それは何よりです。お体の調子はいかがですか?」
「至って健康ですよ。お気遣い頂きありがとうございます」
「それは何より。おっと、立ち話が過ぎましたね。どうぞ中へ」
「それでは失礼。あなたも体に気をつけて」
「ありがとうございます」

 いつも通りの会話です。それは何よりというのが彼の口癖なんです。気遣いが出来る良い方ですよ。
 私が居る群れは電気タイプのみで構成されており、三十匹程のポケモン達が共に生活しています。
 少し暗くなっては来ましたが、まだ皆家には帰らずに談笑をしているようですね。
 さて、この食料を食料庫まで運んでしまいましょうか。

「オーッス! 今帰りか? 蒼天」
「あれ? あなたがこんな時間まで起きてるのは珍しいですね」
「俺だってたまには夜更かしの一つぐらいするって! 夜更かしっつー時間じゃねぇけどな」

 彼はライボルトの烈閃(れっせん)。私がメリープの頃からの付き合いだから、幼馴染みの一人です。
 因みに言いますけど、私がメリープだった頃彼はちゃんとラクライでしたよ。

「それにしても、なんか重そうなもん持ってんな? 手伝おうか?」
「ご心配なく。この程度なら余裕ですよ」
「そっか。あーあ、本当に勿体ねぇよなー。本気出せば俺より強い癖に食料調達なんてさ。なぁ、今からでも遅くないから自衛係来いよ」
「食料調達係の長をスカウトしないで下さいよ。自衛係長さん」

 実は私も彼も、群れの中でそれなりのポストに付いてたりするんです。どっちも自分の所属する係の長を勤めてたりするんですよね。
 軽く会話しながら食料庫まで。食料は……集めた分がそれなりにありますし、これなら暫く集めなくても大丈夫そうですね。
 何でそんな事確認したか? 明日の予定がオフかどうかの確認ですよ。毎日の日課とは言いましても、集め過ぎては森の食料の枯渇に繋がりますからね。
 食料庫の入り口に書き置きをして、と。これで他の食料調達のメンバーにも指示は通るでしょう。

「お? 明日は休みにすんのか。奇遇だな! 俺もさぼ……休みなんだよ! 久々にあいつも誘ってなんかするか!」
「残念! 明日はもう予定があるんですよ」

 さぼ……の件はあえてのスルーです。彼にして言えばいつもの事なので。

「予定~? 何だよ~幼馴染より優先するような事なのか~? はっ! さては……誰かすっごい綺麗な奴と会うんだろ~!」
「あなたは何時からエスパーになったんですか? その通りですよ」
「はっはっは~そうだよな! お前にそんな出会いが……うぇっ! 当たったの!? マジで?」

 自分で言っておいて驚かないでほしいものです。

「ど、どんな奴なんだよ? この群れの奴じゃないんだろ?」
「凄く素敵な方ですよ。今日偶然声を掛けられて、話をしている内に親しくなったんです」
「親しくなったぁ~? 思い違いなんじゃねぇの~?」
「思い違いなら、向こうから会おうなんて誘っては来ないと思いますよ」
「ぐほぁ、お前が誘われたの?」
「はい」
「対ポケ恐怖症のお前が?」
「そんなのに掛かった覚えは無いですよ。弱虫であるのは認めますけど」

 あれ? 無言で俯いてぶつぶつ言ってますね。どうしたんでしょう?

「幸せのお裾分けを要求するぅいあ!」
「おわ!? 何ですか急に! 幸せのお裾分け?」
「この俺を差し置いて自分だけ幸せになろうとは……抜け駆けは認めん! 俺にも会わせろ!」

 何を言い出すかと思えばこの女たらしが! 群れの大体の雌と付き合った事が有るくせに、よく言いますよ! 全部振られてるのも知ってますけどね!

「いきなり二匹で会いにいったらビックリさせてしまうかもしれませんし、駄目です」
「しょんなぁ~、幼馴染のお願いも聞いてくれないような心の狭い奴じゃないでしょ君は? お願いだよ蒼天~」

 ふぅ~、私も甘いですね。此処まで言われてしまうと断れないんですよね。

「……分かりましたよ。とりあえず会わせるだけ会わせます。くれぐれも粗相の無いようにして下さいよ?」
「わぁかってるって! 明日は何時頃出るんだ?」
「朝早くからを予定してます。置いて行かれたくなかったら早く起きる事ですね」
「朝早くだな、絶対行くからな! じゃ、俺もう寝る! お休み!」

 自分の寝床へと走っていきました。現金な奴ですよ。
 私ももう休まなければいけませんね。烈閃に大口叩いておいて自分が遅れたら格好の笑いのネタです。
 お休みなさい、霹靂……。

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 現在、朝になり群れの入り口にて見張りをしてくれてるレアコイルさんと談笑中です。
 来ない。烈閃が来ない! あれほど遅れたら置いていくと言ったのに!
 先に行ったなんて事はまずありえません。何処で待ち合わせをしているか言っていませんからね。レアコイルさんも誰も出ていないと言っていますし。
 群れの周りは一応木で柵を作ってあるので、そこから出入り出来るのは飛行タイプのポケモン位しかいません。裏口はありますけど、群れ長の家に直結してるので通るのは不可能です。
 あ、青くて黄色いのが叫びながらこっちに来ました。

「うぉぉぉぉい! 蒼天お待たせ~!」
「遅い! もう日も大分昇ってしまってますよ! だからあれほど遅れるなと言ったのに!」
「それでも待っててくれるんだから、やっぱお前は俺の親友だ!」
「煽てても遅れた事実は消えませんよ!」
「あうう、ゴメンゴ~メ~ン! 許してくれよぉ~」
「いいからもう行きますよ!」
「あ~! 待って~! 置いてくなよそうてーん!」

 早く会いたい。この気持ちを抑えて待ってるのがどれだけ辛かったか! 反省が足りないようなので後で雷パンチの刑です。
 木々の間をすり抜けて昨日のあの場所へ。待たせてしまってないと良いんですが……。
 切り株が、見えた! 霹靂はまだ来ていないようですね。
 ん? 前の方から何かが走ってきます。あれは……見間違いじゃなさそうですね。

「蒼天! よかった~、もっと早く来よ思っとったんやけど、寝過ごしてもうて遅れてしまってん。大分待たせてしもたかな?」
「いえ、こちらも今付いたところですよ。よかった、来てくれたんですね」
「こっちから誘ったんやん。来てくれたんを喜ぶんはウチの方や。また会えて嬉しい!」

 こちらに寄ってきての最高の笑顔。反則です。反則級の可愛らしさです。
 あぁ、会っただけでこの喜び。今日一日一緒に居たらどれだけ幸せになれるんでしょう。

「そ、蒼天……待って、くれぇ~」
「あれ? 後ろに誰か居るん?」

 忘れていました。一人余計なのを連れていましたね。私の走りに追いつけないとは……ライボルトとしてどうなんでしょう?

「紹介しますね。彼は烈閃、私の幼馴染の一人でして、貴女の事を話したらぜひ会いたいと言うので連れて来てしまいました。邪魔ならさっさと帰しますので」
「いやウチはええよ。へぇ~蒼天の幼馴染か~」
「はぁ、はぁ……紹介サンキュー蒼天。ライボルトの烈閃です。どうぞよろしく。出来たら結婚して下さい」
「ふぁ!? け、けけけ結婚!?」
「あ な た という人はぁぁ! あれほど粗相の無い様にと言ったではありませんかぁぁぁぁ!」

 自分の右手に電撃を溜めて烈閃に飛び掛りました。雷パンチの刑執行です。

「うわぁぁぁ! 待て蒼天! 俺が悪かった! 話せば分かる! 雷パンチはやめて~!」
「問答無用! 散りなさい!」
「はぎょぉぉぉぉぉ!」

 会心の当たりです。全くこの黄色三角は……初対面で結婚などとふざけないでほしいものです。
 彼女と添い遂げられるなら私が……。

「おぉぉ、かなりの威力やな。大丈夫なんその人?」
「いつもの事だから心配いりませんよ。放置しておけば回復します」
「そうなんか……にしても蒼天強いんやん! 雷纏ってる姿、カッコよかったで!」
「そうですか!? いやぁ、ありがとうございます!」

 カッコいいなんて初めて言われましたよ。まじまじと言われると照れくさいものですね。

「うぅ、俺をダシに盛り上ってる……そんな空気な俺の嫁に誰かなってください……募集中なり……うげっふぅ」

 何かほざいて倒れました。放っておきましょう。
 さて、今日は仕事は抜きで霹靂に会いたいが為だけに来ましたからね。楽しまないと損ですね。

「じゃあ、散歩でもしながら話でもしましょうか」
「あれ、今日は食べるもん探さんくてええの?」
「貴女との時間を大切にしたいので休みにしました。心配ご無用です」
「ウチの為にそこまでしてくれたん? 蒼天は優しいなぁ。ありがとぉ」

 頬を軽く朱に染めながらお礼なんて、あー! 素敵過ぎます!

「これ位なら幾らでも! さぁ、行きましょう」
「うん!」

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 昨日は殆ど私に話をさせてしまったから、そんな理由で彼女は今までの自分の事を話してくれました。

「こないな見た目やろ? 会う奴会う奴みぃんなウチから逃げてくんや。どんだけ笑いかけても、どんだけ優しく話し掛けてもな」
「そんな!? 貴女はこれ程に優しいのに?」
「それは、蒼天みたいにウチから遠ざかろうとせんでくれた奴は分かってくれた。分かってくれた奴は確かに数えるほどなら居る。でも……」

 言い掛けて霹靂の足は止まり、顔は曇りました。思い出したくない事なんでしょうか?

「辛いのなら無理はしないで下さい。話したくないのなら話さなくても……」
「ううん、聞いてほしいんや。こんな風に長く話を聞いてくれたんは蒼天が始めてなんやし」

 彼女の目は真剣そのものでした。どれほどの想いで私に話をしているのでしょう? 私は聞きます。彼女を苦しめている物がそれで減らせるのなら……。

「ウチの近くに居る奴はみぃんな傷ついていくんや。あんな奴と一緒に居る、あんな怖そうな奴と何故一緒に居られるんや、そんな事を仲間から言われてな」
「そんな……」
「それで皆ウチから離れていってまうんや。自分が、独りになりたくないからな」

 そんなの彼女は関係無いじゃないですか! それなのに……何故彼女が傷つかなくてはならないんでしょう。おかしいです!

「蒼天も、そんな風になってまうかも……」
「なりません! 誰がなんと言ったって、私は知っています! 貴女は優しくて、他人を思いやれる素敵な方です。皆が否定するなら、私が皆を説得します!」
「蒼、天……うぅぅ……ありがとう……そんな事言ってくれたんは本当に蒼天が始めてや」
「私が貴女の力になれるなら、幾らでも力になりますよ」
「う、うううぅぅぅ……」

 辛かったんでしょうね……泣きじゃくる彼女の頬を拭う事しか、今の私には出来ません。それでも、彼女を支えたい。独りぼっちで辛い思いを抱えていた彼女を、私は、支えたい。
 大粒の涙が零れなくなるなら、どんな事でもしてあげたい。

「ご、ごめん……折角休みにしてまでウチに会いに来てくれたのに、変な感じになってまって……」
「いいんですよ。辛い思いがあるなら、泣いてすっきりして下さい。私はどこにも行きませんから」
「うん……蒼天は、あったかいね。もう少し傍に行ってええ?」
「はい」

 彼女が私の胸で泣いている……抱きとめて、いいのでしょうか?
 ゆっくりと、驚かせないように彼女の首の辺りに両手を廻してみましょう。
 頬から後頭部まで続いている白い毛……何とも柔らかい。胸に触れている薄水色の髭が少しくすぐったいですね。
 首筋から背に掛けてある紫色の毛、じゃない! 近付いて見てみると材質が全く違いました。ふわふわとしているのは確かですが、生えているのではなく載っていると言った方が正しいようです。
 これは一体? 今の状態では聞きませんけど。

「うらやましい……」
「ん?」

 不意に後ろから声が……。

「恨めしい、妬ましい、うーらーやーまーしーい!」

 声の主は見なくても分かります。空気を読めない私の幼馴染です。

「お前等本当に昨日会ったばかりなのか?! 話す内容といいこの状況といい、恋人同士丸出しじゃねえかー! 何!? あてつけ!? 今恋人の居ない俺へのあてつけ!?」
「そんなんじゃないです!」
「あ、ウチこんな事してまって、恥ずかしい……」

 霹靂が顔赤くして離れてしまいました。余計な事を……。

「あーあ、俺が入り込む余地ゼロだな。もうyou達付き合っちゃいなよ」
「は!? そ、それはもう少し相互理解と言う物が必要でしょう! 私達はまだ会って二日しか経ってないんです!」
「せや! でもそれもええかも……」
「霹靂!?」

 顔を紅くしてモジモジとしながらそんな事言われたら私、本気にしてしまいますよ!

「もうイチャイチャはいいっての! ところでさ、霹靂さんだっけ? あなたは何てポケモンなんだい? 見た事無いんだよ。教えてくんない?」
「ウチの事呼ぶんなら霹靂でええよ。ウチはライコウ。よろしく!」

 きょとんとした顔してますね。まぁ、烈閃も知らないでしょう。

「なぁ蒼天? 彼女は何て言ったんだ?」
「変な事聞きますね? 彼女はライコウの霹靂。そう言ってるんじゃないですか」

 烈閃が固まりました。あ、冷や汗掻き出した。

「ララララ、ライコウ!? 本当に!?」
「せやけど? どないしたん?」
「蒼天!? お前は何で何とも無いんだ!?」
「どうしたんです? 彼女がライコウであると聞いてから変ですね」
「変なのはお前だ! 誰と会ってるのか分かってんのか!?」

 何でしょう? 神妙な顔されても私は分かりません。

「守り神! 俺達の群れの守り神に定められたポケモンなの! ライコウは!」
「え? 守り神? そんなのいましたっけ?」
「ウチが……守り神?」
「霹靂が疑問に思うのは分かるけど、なんで蒼天がわかんねぇんだよ!」

 と言われましても分からない事は分かりません。

「集会の度に『我等にライコウの導きあらん事を』って群れ長が言ってんだろ! そのライコウが彼女!」

 あー! ライコウのフレーズに聞き覚えがあるなと思ってたらそういう事でしたか! 道理で聞いた事ある訳です!

「いやー、私今まで雷光だと思ってましたよ。ポケモンの事だったんですかあれ」
「分かって何でまだその余裕!? 神様に会ってんの俺等! 何とも思わないのかよ!」
「神であろうが何であろうが霹靂は霹靂。その位で態度を変えるのは逆に失礼ですよ」
「ウチも今まで通りがええな。自分で神やなんて思ってないし」

 烈閃、飽きれて諦めたようですね。さっきの話を聞いていたなら私達の反応も分かったでしょうに。

「もういいや。でも、これは凄い出会いだぜ。あいつにも言っといた方がいいよなぁ」
「あぁ、群れの守り神ですからねぇ。私達だけの秘密なんかにしたら……」
「無理! 死ぬ! かっくじつに殺られる! 仕留められる!」
「ですよねぇ~」
「え? 誰々? なんの話なん? おせえてよ~」

 霹靂は何にでも興味を示してくれますね。楽しい方です。

「私達のもう一人の幼馴染の事ですよ。感が鋭くて、隠し事してもすぐにバレてしまうんですよ」
「俺、あいつに隠し事出来たことねぇ」
「私出来たことありますよ」
「マジで!?」
「10秒で終わりましたけど」
「どないやねん……」

 まぁ、それは帰ってからという事で……。

「そうだ霹靂、気分はどうですか?」
「うん! 話ししてるうちに良くなってきたわ。心配してくれてありがと蒼天」
「それはよかった。お腹空いてませんか? そろそろ食事でも探しましょうか」
「ハイ! 俺、朝飯食ってないからめっちゃ空いてます!」
「聞いてません」
「うわぁぁぁぁん! 蒼天が投げやりだよ~」
「ははは! 楽しいなぁ。可哀想やし、ウチも手伝うから食べもん探そ?」
「しょうがないですねぇ。じゃあ、探しましょうか」
「イヤッターイ! 頑張れ二人とも~」

 動く気が無いようですね。こういう奴には何をすればいいのでしょう。もちろんお仕置きですね。

「もう一発雷パンチいっときましょうか」
「ええんちゃう」
「え? ちょ? 二人とも? フガガガガガガ!」

 その後は、軽い食事をした後に日が沈みかけるまで話をしていました。

----

「今日も……帰ってまうんよね……」
「え……」

 唐突でした。彼女の寂しそうな声が聞こえてきたのは。
 そうか、私達が帰れば彼女はまた独り……ですが私が思いついた妙案を実行するためには一度帰らなければなりません。

「……今日、帰ったら群れ長に貴女の事を話そうかと思ってるんです。と、言いますか話します」
「え? ウチの事を? なんで?」
「もし許しが出ればですが、私達の群れに来ませんか?」
「おお! それがいいぜ! なんたって群れの守り神、嫌がる奴は居ない筈だぜ!」

 驚いているようですね。無理もありません。彼女のこれまでは聞きましたし、群れに誘われる事など無い筈ですからね。

「ウチこんなんやで? 怖がられるんちゃう?」
「拒む者が居れば私が何とかします。貴女が傷つくことが無いように」
「俺も協力する。どうだい?」

 彼女の頬にまた涙が走ります。でも、これは喜びの涙。ですよね?

「二人とも……ありが、とぉ……会えてよかった……」
「お別れみたいに言わないで下さいよ。これからなんですから」
「そうそう! 嬉しいんなら笑って笑って!」
「うん! 明日も切り株んとこに行く! 迎えに来てな!」
「行きますよ、絶対!」
「ああ!」

 笑顔の彼女を見送り、私達は群れへと戻ります。目指すは群れ長の元!

「あいつなら、分かってくれるよな?」
「大丈夫ですよ。彼女は賢いし、何より困っていたり辛い思いをしている者を見捨てない」
「だよな」

 霹靂、貴女はもう独りじゃありません。私達が……私がいます! 必ず貴女に笑顔を!

----

 迷う事無く群れへと戻ってきました。自分でも驚く程の速さで帰って来れましたよ。
 さて、目的地は一つ、群れ長の家です。
 家といっても、木を組み上げて作った社のような物ですが……基本的に木に洞を作り暮らしている私達よりは遥かに手の込んだ物です。

「ふぃ~、結構遅くなっちまったかな? まだ謁見やってるか?」
「やっていなくとも、私達が来た事が伝われば何かしらの反応はあるでしょう。行きますよ」
「おうよ!」

 草を編んで出来ている戸をそっと押し上げます。中にいるのは……。

「おや、蒼天に烈閃ではありませんか? このような刻限にいかがなさいました?」

 中央に一匹のライチュウ。そして護衛のコイルが二匹。護衛といっても、この群れの方々は皆温厚ですから襲われるような事は無いでしょう。ゆえに、付き人と表現するほうが正しいかもしれません。
 このライチュウこそ群れの長。群れを纏める指導者です。ついでに言うと表現として当てはまるのは『彼女』です。

「このような時刻に失礼。長にお話しがあり参りました」
「今、お時間はよろしいか?」

 こういう時は決める男なのです烈閃は。普段からこうなら付き合う相手にフラれることも無いだろうに……。

「急な用向きでしょうか? 今日は相談も多かったので、もう休むところなのです。また日を改めてはくれませぬか?」

 そう言った後に軽いウインク。なるほど、後で別の方法を使って来い、ですか。

「すいませぬがこちらも急用、なにとぞ今おはな」「分かりました。明日、またお目通りを願いましょう」
「助かります」

 こちらに一つ礼をして奥へと消えていく彼女を見送り、烈閃の尻尾を掴んで長の家を後にします。

「なんであそこで話さないんだよ~。明日じゃ霹靂待たせちまうだろ?」
「あなたという人は……長からのサイン、気付かなかったんですか?」

 気付いてないから食い下がろうとしたんでしょうけどね。

「え? てぇことわだ。つまり?」
「『私達専用の入口』から来い。そういう事です」

 納得したみたいですね。本来なら説明自体も要らない筈なんですがね。

「そんならさっさと行こうぜ!」
「ちょっとちょっと、気付かれないように行動してくださいよ? あそこを使うんですから」
「わぁってるって!」

 何をするかと言いますと、結果から言えば長の寝所に忍び込みます。
 バレたら只じゃすみません。たとえそれが長からの誘いでもです。群れの皆からもれなく白い目で見られるでしょう。
 長といえども異性。それの寝床に雄二匹で忍び込むのだから最低極まりない行為ですよね。分かっていますよ。
 それでも行きます。多少のリスクは何をするにも付きものです。

「おっし、この辺りが……外れた!」
「ささっと入ってくださいよ。後が閊えます」

 長の家正面から裏手へ。そこには私達が『勝手に作ったもう一つの入口』が隠してあるんです。隠すと言っても、壁にはめ込んでるだけですけどね。

「あ、来た来た。全く、変な時間に来ないでよね! 来るにしてもこっちから来てよ!」
「致し方ないでしょう。此処を使うのにはリスクが有りますからね。なるべくは使いたくないのですよ」
「あなた達にまで長モードで接したくないのよ! その辺の乙女心を分かってほしいなぁ」
「どこが乙女だよ。図太さの塊みたいな性格しといて……」
「烈閃うっさい!」
「ほげぇぇぇぇぇぇ!」

 ……私達が喋っているのは先ほどのライチュウ。つまりは長です。なんでこんなに親しげかと言いますと、
 一言で言えば、幼馴染だから。です。
 彼女は雷明(らいめい)。私のもう一人の幼馴染、その人です。

「で? 何の用で来たの? 遊びに来たのなら素直に此処から来るわよね?」
「そうでしたね。端的に言いますと、あなたに会ってほしい方が居るんです」
「けほっ! けほっ! うぅ、正確には群れの皆に、だけどな」

 烈閃のタフさには脱帽ですね。何も被っていませんけど。
 私の雷パンチを二発も食らってケロリとしてるし、今も雷明からの十万ボルトを食らったにも関わらず、会話に混じってきていますよ。

「群れの皆に? そんなに重要な事……というかポケモンって?」
「ふっふっふ、聞いて驚くなよ? あのライコウだよライコウ!」
「ライコウ? あの守り神になってる? うっそだぁ! ライコウって伝説になってるポケモンだよ? そんなのに会える訳無いでしょ」
「ところが私は会ってるんですよ。それも二日続けて」

 場の空気が見事に固まりました。軽く笑って稲妻型の尻尾を振っていたのに、それもピタリと止まりました。

「烈閃が会ったんじゃなくて……蒼天が、会ったの?」
「はい」
「マジで」
「はい」

 また訪れる静寂。この場にあるのは私の顔を見ながら固まった雷明。そして、自分の信頼度の低さに傷ついて部屋の隅に移動した烈閃。
 その静寂は彼女の悲鳴にも聞こえなくはない叫びによって終わりを告げました。

「なぁんですってぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「うわぁ! 雷明叫ばないで! コイルが来て……」

 しまうと言う前に私は彼女が使っているベット用の藁の中に隠れる羽目になりました。
 烈閃は……あぁ、あれだけ淀んだ暗いオーラ出してれば気付かれないでしょう。夜ですし。

「何事ですか!?」

 間一髪です。私が喋りきる事を優先していたらとんでもない事になるところでしたよ。

「い、いえ、どうやら疲れているようですね。私とした事が……夢を見ただけですよ。お騒がせしましたね」
「何事も無いようですね。それでは、失礼」

 コイルはそのまま戻っていきました。部屋の中を探られたらアウトでしたね。烈閃が、ですけど。

「もう、気を付けて下さいよ! いくら幼馴染とはいえ、こんな状況を誰かに見られたら群れから追放になってしまいますよ!」
「ごめん! でもビックリするわよ! あのライコウ様に会えるなんて……」

 なにやらうっとりとしています。どうしたのでしょうか?
 そういえば霹靂が雌である事を言ってませんね。どうしましょうか……結局会えば真実は分かる訳ですし、此処で言及する必要は無いでしょう。

「話を戻しますね。あなたに会って頂きたいのは、ズバリ、そのライコウです」
「オッケー! もちろん大歓迎よ! 明日連れて来てくれるんでしょ!?」
「ええ、そのつもりで約束を取り付けていたので、断られたらどうしようかと思いましたよ」
「じゃあ、皆にも伝えるよう明日は準備しちゃうね。必ず連れてきてよ!」

 彼女が乗り気になってくれて一安心ですよ。

「承知しました。群れ長殿」
「もう、その呼び方は無し無し~。さて! それならあたしはもう休もっかな。明日は忙しそうだし」
「お手数かけますね」
「いいのいいの。じゃ、烈閃持ってってね。そろそろ帰るでしょ?」
「そうさせてもらいましょう。長居するとそれだけ危険ですし」
「俺は……何処までも空気だ……」

 陰気なオーラに身を包む烈閃と共に雷明の部屋を後にしました。
 これで希望は繋ぎました。霹靂は喜んでくれるでしょうか? いや、きっと喜んでくれる筈です! 迎えにいきますよ、霹靂!

----

 私は走る。走る。走る! 霹靂が待っているであろうあの切り株へ!
 どんな顔をしてくれるのでしょう。満面の笑み? それとも不安? どちらであっても私が傍に居ます。喜びなら二倍に、不安なら半分にしてみせましょう!
 彼女は……居た! 切り株の傍で待っていてくれている!

「霹靂~!」

 こっちに気付きましたね! 向こうもこちらに駆け寄ってきてくれました!

「蒼天! どやったん長っちゅうのは!?」
「はぁっ、はぁっ、バッチリです!」
「うわぁぁ~~! やったーーーー!」

 心の底から嬉しそうにしてくれています! こっちも嬉しくなってしまいますね。
 そのまま霹靂が私の方に……って、うええ!? 前足で抱きつかれてそのまま倒れ込んでしまいましたよ!?
 温かい……彼女の体温が全身で感じられます。重いのは我慢です! 見た目よりも遥かに重い! 予想外でした!

「ウチほんまに嬉しい! みぃんな蒼天のお陰や! 大好き!」
「ははは! まだ皆に会っていませんよ。でも大丈夫! 絶対に上手くいきます!」

 私の頬に擦り寄ってくる彼女をなだめて身を起こして頂かなくては群れへ迎えませんね。

「では、群れまでご案内します。行きましょう」
「うん! 蒼天達が暮らしとるとこかぁ~、楽しみやね」

 周りに笑顔を振り撒きながら私の後について来る霹靂。この様子を霹靂に詳しい者が見たらどう思うのでしょう?
 伝説のライコウを従えたデンリュウが居る……そんな風にとられるのかもしれませんね。
 どう見られようと結構。私の優先すべきなのは他人の目などより霹靂を連れて行くことですからね。
 さて、少し早足で歩いてきた訳ですが……群れの入口には着きました。しかし、ここから堂々と入るのはちょっと不味いですね。群れの皆が混乱してしまう。
 でも、私達も万全とはいかなくとも準備はしてますからね。ぬかりはありません。

「よぉよぉ来たなお二人さん。こっちだ」
「おぉ! 一緒に来なかったからどないしたんかと思っとったらこないなとこに居たん、烈閃」

 群れの前に待機させておきました。俺が行く! とか言われましたけど、この役だけは譲る気が無かったので群れ入口近くの木に縛り付けました。

「酷いぜ蒼天~、俺じゃなかったらまだ縛られたままだったぞ? 俺だって行きたかったのに~」
「ふん、何と言われようと彼女のエスコートは私がしました。最初に彼女をす……出会ったのは私なんですからね」

 むくれてしまいましたね。縛り付けるのはやり過ぎましたかね。

「烈閃も一緒に頑張ってくれたんやろ。蒼天から聞いたで。ありがとっ!」
「そ、蒼天お前……俺の事を?」
「昨日の夜、暗くなっていただけなのは伏せておきましたよ」
「サンキュー、やっぱお前は親友だぜ!」

 機嫌は直ったようですね。霹靂スマイルに助けられた感もありますが……。
 何はともあれ、『長』に彼女を会わせなければなりません。

「烈閃、長は?」
「今は家だ。裏から行けば誰の目にも触れないぜ」
「了解です。霹靂こちらへ」
「へ? 入口ここやないの?」
「先に長の元へ来て頂きます。長から群れの皆へ貴女を紹介して頂く手筈になっているんですよ」
「なるほど~、そんならその長のところに連れてってえな」
「もちろん」

 ……大丈夫か今頃になって不安になってきました。なんせ雷明は、長はライコウを雄だと思い込んでるんですからね。
 
----

「エーーーーーーーーーーーーー!」

 沈黙を破る叫び……やっぱり驚きましたか。

「ライコウ様が雌……そんな……」
「あ~なんか、ショックやったみたいやね」

 裏口からの直通で雷明の元へ来たのは良かったんですが、やはり説明しておくべきでしたね。
 相当ショックだったのでしょう。耳も尻尾も力なく伏せてしまいました。

「ごめんな? ウチが雌なんがそんなに残念やったなんて……」
「ううん、いいんです。こっちが勝手に想像してただけですから……あなたに悪い事なんて一つも無いです」

 うぅ、罪悪感が胸の中で暴れまわる……二人とも、申し訳ない……。

「とにかく、群れ長として歓迎させて頂きますわ。ようこそ、我等が群れへ!」
「ありがとう!」
「早速なんですが、群れの皆に紹介をしてよろしいでしょうか? 形式上、混乱を招かぬようにするためですので」
「かまへんよ。あ、お願いがあるんやけど……」
「何でしょう? 叶えられる事であればなんなりと」
「蒼天に……傍に居てもらってええかな?」

 私!? いや、困りはしませんけど、いいんでしょうか?

「う~ん、蒼天どう? いいかな?」
「私は構いませんけど……」
「なら決まりね。じゃ、二人ともこちらへ」
「って! 並んで登場は不味いでしょう! 私は少し後ろにいますよ!」
「ウチは隣がええねんけどなぁ……」
「だそうよ。観念して来なさい! 大丈夫、説明は上手くするから♪」
「うぅぅ、頼みましたよ雷明、くれぐれもおかしな勘違いの生まれないようにして下さいね」

 まだ霹靂と付き合ってる訳でもないのにまことしやかに噂だけ錯綜されるのは嫌ですからね。
 あれ、若干霹靂が寂しそう? 私、変なこと言いましたでしょうか?

「まっかせなさい!」

 不安です。任せなさいと言う彼女の笑顔からは勘違いの予感が激しく漂います。でももう霹靂も行ってしまった……。
 後戻りは不可能。雷明を信じましょう。何事も無いように祈りながら……。

----


 群れへのライコウ訪問。それは、一時期ですが群れの中でとんでもない話題になりました。
 しかしそれも今は昔、一月もすれば落ち着きを取り戻していました。
 最初は彼女の見た目から恐怖する者も居わしましたが、私達の説得や彼女自身の内面に触れていく内に怖がる者は居なくなっていきました。
 私はと言いますと……。

「蒼天何してん! 置いてくで~」
「あ、待ってください霹れ……ライコウ様!」
「はぁ、堅苦しいわぁ。もう霹靂って呼んでまってええんちゃうの?」
「ボソボソ(しょうがないじゃないですか! 私は、貴女の付き人って事になってるんですから!)」

 そう、霹靂紹介の際、雷明が皆に対して私を霹靂の護衛者にすると言ってしまったんです。
 お陰でいつでも霹靂と一緒には居られるようになりました。ですが、私達の関係は護衛と守り神。そうそう馴れ馴れしくは出来ません。
 一応夜は霹靂で呼んではいますが、夜ですからね。ほんの短い時間しか居られないんですよ。

「おう! しっかり護衛してるか蒼天!」
「此処にいる時は護衛なんて必要無いでしょう! 群れの中ですよ!」
「ちっちっち、甘いぞ蒼天。霹……ライコウ様に悪い虫が付いたらどうするんだ? そういうのから守るのもお前の仕事だろ?」
「それなら仕事を実行しましょう。烈閃、痺れなさい」
「俺かよ!? うわああぁぁぁぁ! 来るなぁぁぁぁぁ!」
「いっつも元気やなぁ烈閃は」

 こんな風に烈閃や雷明も時々遊びに来ます。烈閃は自衛の仕事をした方がいいと思うんですがね。
 一頻り群れ内や外をブラブラして霹靂用に用意された家へと帰る。今の生活はそのような感じですね。

「はぁ、此処に居るんも楽しいには楽しいけど、やっぱ会った時みたいなんがウチはええな~」
「私もそうなんですが、そうしてしまうと群れの皆への示しが付きませんからね」
「む~」

 夜になり、お座りの状態の彼女と二人きり。それはそれで嬉しい状況な筈なんですが……立場が邪魔をする。何とももどかしいですね。
 因みに、護衛という事で私は寝床をこちらへ移しました。というか移されました。雷明に。
 でも寝るのは別々の場所。霹靂から一緒に寝ようと誘われたら考えますが……やはり駄目でしょうね。
 それでも問題も起こらず過ごせているんだから、これが一番なんでしょう。
 でも、でも! 私の気持ちは一緒に居るだけで膨らんでいく!
 好きだ、愛してる! その言葉が胸の中に渦を巻く!
 これ程苦しいのに打ち明ける事さえ許されない……こんな事なら群れへ誘わなかった方が良かったかも、なんて事を最近思うようになっています。
 一緒に居られるのに……それ以上を望もうと思うのは贅沢なのでしょうか?

----

 ……すぐ傍に愛しの雌が眠っている。もどかしさだけが胸に去来します。
 一月、そう、もう彼女と出会いそんなに時間が経っているんです。
 私の中の想いはそれだけの期間色あせず、積もりに積もってきました。
 正直に言いますと、限界です。
 眠る彼女を私は見つめています。己の中の良心と本能とがバトルを始めました。

「なぁ、素直になっちまえよ! 霹靂は寝てんだ、やりたい放題だろ!」
「黙りなさい! そんなことをすれば彼女はどう思いますか! 今の関係だって続けられなくなってしまいますよ!?」
「おいおい、今のままでいいのか? もっとふか~い仲になりたい。そうだろ?」
「うっ、しかし、私はあくまで護衛。その護衛が彼女を襲ってしまうと……」
「はーっはっはっはぁ~! ぼろが出たな? 俺は襲えなんて一言も言ってないぜ!?」
「そ、それは……」
「観念しな。お前の本能である俺に逆らえるかな? 無理だろ?」
「だ、だが! 彼女を悲しませたり、彼女の心が離れていったりしてしまうのは私は耐えられない!
「オーケーオーケー。その意見には賛成だ。なら、どうするかな? いっそのこと告るか?」
「はぁー!? 出来る訳無いでしょ! もし返事がノーだったらどうするんです! 立ち直れませんよ!」
「ヘイヘイへ~イ! 落ち着けって。何も玉砕しろっつってる訳じゃない。かなり望みは高いと思うぜ?」
「その根拠は?」
「お前、俺なんだから分かってんだろ? 自分を霹靂が見る目、気付いてんだろ?」

 確かに、時折霹靂は顔を紅潮させながら私を見ている事はあります。
 っていうか私の本能が何故か誰かさんに似ているような? どうでもいいですな。

「な? 脈有りだって! 俺に任せちまえよ! 喋り方なんかは変えねぇからさ、な?」
「……いえ、それは貴方の役目ではなく私の役目です。下がりなさい!」
「ちっ、お堅い野郎にそんなことが出来るか見せてもらおうじゃねぇか。せいぜい頑張りな」

 良心と本能のバトルを制したのは良心でした。私らしいと言うかなんと言うか……。

「おっと、只じゃ消えてやらないぜ? サービスだ!」

 ……私は、眠る霹靂の唇を奪いました。
 温かい……ずっとしたいと思っていたので制御出来そうもありません。
 そのまま彼女の口へ舌を挿し入れていました。
 歯列、内頬、そして柔らかな舌……順々に舌を動かしなぞっていく……。
 これが霹靂の……。

「う、うぅ? んんん?」
「!!」

 私は何を!? 霹靂に?!

「蒼天……なんで此処に居るん? んで、今……」
「うわぁぁぁぁ! ごめんなさいぃぃ!」

 私は寝床どころか群れの外まで走って逃げ出していました。
 嫌われた……寝込みを襲われたのに不快に思わない者はいません。
 私の本能め、何がサービスですか! こんな事したら顔も合わせてくれなくなるに決まってるじゃないですか!
 終わった……何もかも、終わったんだ……。

----

 気が付いたらいつもの切り株のところに居ました。
 食料収集をしていた時はいつも休憩に使っていて、毎日来ていました。
 そして、ここで霹靂に出会って、意気投合して……。

「うぐっ、う、うあぁぁぁ……」

 自然と涙が頬を伝います。
 拭っても、拭っても、次から次へと零れていく。
 霹靂に酷い事をしてしまった。その事実が胸を激しく締め付ける。
 彼女を失いたくない。彼女の笑顔が見れなくなってしまう。
 出てくるのは後悔の念ばかり、あんな行為に出てしまった自分が憎い! 憎い!
 右手に電気を溜めて……私は自分の体に雷パンチを繰り出そうとしました。

「こないなとこで泣いとったら風邪引くで?」
「えっ!」

 驚いて後ろを振り向くと、そこには月明かりに照らされた彼女が居ました。
 
「蒼天、なんで逃げたん?」

 問い掛けに私は答えられませんでした。答えようにも、喉が焼け付いたようになっていて喋れませんでした。

「ウチに……キスした所為?」

 また涙が溜まってきます。少しだけ、首を縦に振る事は出来ました。
 霹靂がどんな顔をしているかが分かりません。涙で滲んでしまって。
 彼女が近付いてくる……何を言われてもおかしくありません。覚悟だけでも決めておきましょう。
 その覚悟は無駄になりました。言葉の変わりに私に与えられたのは頬への温かさでした。

「む~、やっぱりちょっとしょっぱいなぁ」
「へっ? 霹靂何を?」
「泣いてる蒼天見たくないんやもん。なんか勘違いしてるみたいやし」

 勘違い? だって、私は霹靂にとんでもない事をしたんですよ?

「証拠みしたげる。目ぇ、閉じて」
「? は、い」

 言われたとおりに目を閉じました。どうなるんでしょう?
 閉じた後に、ついさっき感じたのと同じ温かさが口に触れました。
 途端に目を開くと、そこには私に口付けをしている彼女がいました。
 温かさがゆっくりと離れていきます。少し、寂しいような。

「ね? 蒼天は今どう思っとる?」
「あっと、嬉しい……です」

 正直な感想です。だって、好きな相手からキスされたんですから。

「せやろ? ウチも嬉しいねんで?」
「そう、なんですか?」
「うん。さっきもな、そらちょっとビックリはしたけど……今は嬉しい。だって、そんなにウチの事好きになってくれたんやろ?」

 顔を紅くしてそう言ってくれました。
 私は、私は……嬉しくてまた泣いてしまいました。
 今なら言えるかもしれません。と言いますか今言わなければなりません。追ってきてくれた彼女の気持ちが変わらないように!

「私は貴女の事を愛しています! さっきだって、貴女の気持ちが離れていくのが怖くて怖くて堪らなくて……それで……」

 そこまで言って私の口は遮られました。
 霹靂が前足を私の首に廻して抱き締めてくれたからです。

「ホンマに? ウチ、嘘は嫌やで?」
「嘘なんかじゃありません。一生、貴女だけを思い続けます」

 霹靂の瞳から涙が流れました。でも、表情は笑顔です。

「それなら今度は蒼天が証拠を見せて?」
「証拠? とは一体?」
「此処で……ウチ等番になろ?」
「そ、それってつまりは……霹靂と一つになると?」
「う、うん」

 より一層彼女の顔が紅くなり、きっと私の顔も紅くなっていたに違いありません。
 私の愛に嘘偽りはありません。今宵、愛する貴女と……一つに……。

----

 無抵抗に仰向けになった彼女を見下ろす形になりました。
 此処からどうすればいいのでしょう。実は、その辺の知識には私は疎いのです。
 普段はあまり意識して見ない腹部の白い毛が露になっています。毛並みが整っていて美しい……。

「あんまり見られると恥ずかしいわぁ」
「恥ずかしがる事ありませんよ。とても綺麗です」
「ありがとぉ。でも、恥ずかしいんは変わらんよぉ」

 困ったように笑う彼女がいつも以上に可愛く思えます。
 彼女に触れる事が出来る。でもどこから? まずは……目の前のお腹からいきましょう。
 私が腹部に触れると、彼女の体がピクリと震えました。なるほど、普段は体の下を向いている部分ですから敏感なようです。
 ゆっくりと毛並みを乱さないように上から下へ撫でていきます。
 心地良いのでしょうか? 目を細めて……いや、うっとりするような感じに変わっています。
 お腹の感触は柔らかで、彼女が息をするたびに上下するのが手から伝わってきます。
 少しずつ撫で始める位置を上へとずらして行くと、また柔らかな触感が手に伝わり出しました。
 撫でていく内に彼女にも変化が起こりました。息が少しずつ荒くなっていきます。お腹の膨らみ方も早くなってきたみたいです。

「蒼天……もっと、上も……」
「はい……」

 艶のある声……いつものはきはきとした声も好きですが、これもまたいい。
 言われた通りに撫でる位置をお腹の上、つまりは胸の位置にずらします。
 お腹とは違った弾力のある柔らかさ。癖になりそうです。

「んん~、気持ちいい……」

 更に妖しく、甘くなっていく霹靂の声。聞いているだけで私の理性を溶かしていくのに十分な破壊力です。
 でもあまり溶かされると、私に霹靂の寝込みを襲わせたあの本能が暴れだします。それは不味い。
 ゆっくりと撫でるのを続けていると、私の手に柔らかわとは違う物が触れました。

「ひゃっ!?」

 途端に跳ねる彼女の体、気持ち……良かったのでしょうか。

「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫や。続けて」

 続ける……それならば……。
 硬くなっているそれを重点的に刺激してみましょうか。

「ふぐっ! あ、うぅぅぅ!」
「此処は、気持ちいいみたいですね?」

 何も言ってくれません。息遣いは荒く、口からは少し涎が流れています。

「困りましたねぇ。気持ちの良くない事はしたくないですし……」

 私は手を止めています。どんな反応をしてくれるんでしょう?

「蒼天……止めないで……」
「どうしました? 聞こえませんよ?」
「うっ、蒼天の意地悪ぅ」

 少しだけ涙目になった彼女。やり過ぎると嫌われてしまいますかね?

「冗談ですよ。では」

 片方はそのまま手で、もう片方は……。

「はうっ! 舐めたらダメェ! 気持ち良過ぎるぅ!」

 う~ん、ちょっとし難いです。首が長いんで、手の位置に横に並べるのが困難なんですよね。
 でも口では嫌がってますが、体は善がっていますし、喜んでくれているんですよね。

「も、もうイっちゃ! あぁぁぁああああぁあ!」

 霹靂の後ろ足の間、そこから飛沫が上がりました。

「胸ってそんなに気持ちの良い物なんですね。いかがでしたか?」
「凄かった……蒼天って、こういうの始めてや無いの?」
「初めてです。凄くドキドキしてますよ」

 揺れる目線で私を見つめてくれる霹靂、その顔が何とも言えぬ妖しさを含んでいて……私は興奮していました。
 がっつくつもりはありませんが、私は次の行動に出ました。

「霹靂、乗っても大丈夫ですか?」
「うん、平気やけど、どうするの?」

 許可が下りたので霹靂に馬乗りになる形です。

「柔らかいですね」
「そう? 気持ちええ?」
「もちろん」

 霹靂の顔に自分の顔を近づけていきます。そのまま口付けをするために。
 触れ合ったお互いの口から舌を絡ませあいます。霹靂の舌が私の口の中を弄る。不思議ですが、嫌な感じはありませんね。
 さて、馬乗りになったのにももちろん理由があります。横からでは出来ないんですよね。
 キスに夢中で霹靂は気付いていない……はず、だから!

「ん!? ふぅん!」

 尻尾の珠で霹靂の秘所を撫で上げました。舌の締め付けも強くなってなんとも心地良いです。
 でも、まだ両の手が空いているんですよね。これは、彼女の胸へ……。
 ピクピクと彼女が痙攣をしている。それほどに、感じてくれている! んだと思います。
 私自身も彼女のお腹に必死に自分のモノを擦り付けていました。先走りで滑りがだんだんと良くなっていって……。そろそろっ!

「ん、うぅ!」
「ふぅううううう!」

 彼女のお腹の上で思い切り出してしまいました。彼女も私の尻尾に思い切り掻けていますし、お相子ですよね。
 流石に疲れたのでしばしの小休止。どちらも汗でべたべたですし、彼女にいたっては色々な液体に濡れて大変です。
 でも、本番はこれから、なんですよね。

「霹靂、大丈夫ですか?」
「大丈夫やないよぉ……いきなり三箇所も弄られたら頭真っ白になってまうやん」

 息を整えながらこっちを見て膨れてしまいました。やりすぎましたかね?

「はぁ~、毎度こんな感じでされたらいくらウチでも体もたへんかも」
「……気をつけます」

 やはりやり過ぎたようです。理性の制御も途中から無くなっていましたし。

「じゃ、最後やね。優しく、な?」
「はい」

 いつもは腰掛けるだけだった切り株に、彼女を寝かせて、そして……。

「行きますよ。霹靂」
「うん。来て、蒼天」

 私のモノを霹靂の秘所にあてがい、少し力を入れながら彼女の中に挿れていきます。
 十分に濡れているのでスムーズに中を進んでいきます。

「うっ、ちょちょ待って」
「え? あ、はい」

 彼女に止められて途中で停止。うねうねとしていて、凄く……気持ちいいです。
 霹靂の前足が伸びてきて私を優しく包みます。そのまま抱き寄せられてしまいましたよ。

「どうせなら、ちゃ~んと蒼天の顔見ながらしたかってん」
「重くはないですか? 辛かったら下りますよ?」
「平気。続き……して」

 コクリと頷き、更に霹靂の奥へと進みだします。
 そして最深部に到着。私のモノはすっぽりと彼女の中に入ってしまいました。

「蒼天の、中でビクビクしとるよぉ」
「とても温かいです。霹靂の中」

 しばらくはこの温かさを味わっていたい。私はそうだったんですが……。

「ううん、じっとしてたらなんか変な感じやわ。お願い、動いてえな」
「分かりました」

 霹靂は早く動いてほしかったようです。迂闊でした。
 ゆっくりと引き抜いて、再び中へ。中の壁が絞るように私のを締め付けるので堪りません。

「ハァ……もっと、早く動いても大丈夫。気持ちええよ」
「あ、あまり早く動かすと我慢出来なくなりそうでして」
「いいやん。そのまま出してくれれば。蒼天との子供なら、ウチは大歓迎やで?」

 紅くなってしまいました。でも、この行為を続けるってことは、そういう事ですもんね。

「良い父親になれますかね?」
「蒼天ならね。さ、続けよか」
「はい」

 嬉しい。愛する者と一つになって、その方が自分との子供まで望んでくれた。
 伝説であろうが守り神であろうが関係無い。私は、霹靂を愛し続ける。一生離れたりはしない!
 徐々に腰を振るスピードを上げていく。それに伴って快感の波も大きくなっていきますぅ!

「ふぅああああああ! そそう、て、んんん! 気持ち、ええ!」
「へき、れき! だぁ、い、すき、で、すうううぅぅぅぅ!」
「ウチもぉ! もう、そうてん、から、はなれないいいいぃいいぃぃぃ!」

 絶頂が近付いてきて、確かめ合う気持ち。混じり気の無い本当の気持ち。
 私は、幸せです。

「あ! ああああああぅううううああっああああああぁぁ!」

 霹靂の、最後にして最高の一締め。私の中でも溜まりに溜まった快感が弾けました。

「出、るぅ! はあああああぁ……」

 ドクドクと音を立てる私の精液が、霹靂の中へと注がれていきます。
 二回目な筈なんですが、さっきよりも寧ろ量が多い。射精も遥かに長いですし。
 ビュル、ビュル、と終わらなく精液を吐き出し続けるモノを、一滴も逃さないように霹靂が締めてきます。
 彼女のお腹が膨らんでいく。触れ合ってるからよく分かります。
 結合部に目をやると、霹靂から出た透明な液体が青い稲妻のような尻尾に伝わっています。
 ですが、一向に私の精液が出てこない。まだ射精は続いてますし、お腹も相当膨らんでいるんですが。
 あ、やっと収まってきました。そろそろ抜いてもいいでしょう。

「駄目! まだ抜かんといて!」
「へ!? 霹靂!?」
「今抜いたら折角必死に漏らさんようにしとった蒼天のが出てまう! だから待って!」
「そうなんですか!? って、あううう!?」

 張り詰めている内は気付きませんでした。相当な力で締め付けられてます! 痛いです!
 でも、その締め付けを意識してしまうとまたモノが大きくなってきてしまいました!

「やーん! 蒼天待ってー! ほんまに出てまうー!」
「と言いましてもですね! この状態だと勝手に!」
「我慢してえな! 蒼天との始めてのやつやから漏らしたくないねん!」
「無茶ですよー!」

 結局この後、しばらくしてから徐々に収まらせる事に成功。霹靂は本当に私のを漏らさず胎内に納めてしまいました。

----

 交わった切り株の上、私と霹靂は月を見ながら行為の余韻に浸っていました。

「う~ん、動いたら出てまうなぁ。どうしよか、これ」

 いつもよりも遥かに大きくなっているお腹を前足で擦りながら彼女が零した言葉です。
 霹靂のお腹は、もう卵が宿っているかのように膨らんでいます。これを保持しておけば確実に子供が出来るのではないかと思うくらいです。

「あの、体も洗わなければいけませんし、多少は諦めるしかないですよ」

 お腹を正直、直視出来ません。いくら愛してる相手でも出しすぎました。
 少しでも減らすために促した言葉だったのですが、霹靂は唸り声を上げています。

「多少は諦めるかぁ~。折角蒼天が頑張ってくれたのにな~」
「こ、これからはいつでも出来るんですし、ね?」

 その言葉に反応して霹靂が笑顔になりました。

「うん! これからはいつも一緒な。心も……体も♪」
「ええ、愛してます。霹靂」
「ウチも愛してる。ダ・ン・ナ様♪」

 月が見守る中、優しい口付けをもう一度交わしました。二人の……変わらぬ愛を確かめるように……。
----
後書き!
いやぁ、長くなってしまいました。
時間を掛ければ掛けるほど増えてしまいました。お陰でつぎはぎな感じが出たかもしれません。
ちょっと告知的な物を一つ。
しばらく先になると思いますが、この作品の霹靂サイドの話を同時に書いておりまして、いずれアップするかもしれません。
それだけです!余計な告知、失礼しました!
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