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草原の微風 の変更点


作者 [[朱雀フェニックス]]
*草原の微風 [#id4d9535]
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**第〇話 [#l97c28df]

 春、暖かい時期。生き物たちは冬眠から目を覚まし、虫達は土から出てくる。とても心地がいい季節。
 そんな中、見晴らしの良い丘の上に、一匹で座っている生き物がいた。
「ふふふ。綺麗な空気…」
 その生き物は、大きなふわふわした毛を持ち、茶色い体。如何にも、すぐに風で吹き飛んでしまいそうな姿だ。
「気持ちいいね。此処を見つけられてよかったなぁ…」
 爽やかな空気に呑み込まれてしまいそうなくらい風を感じていた。その後ろの茂みが、少し揺れる。
「!?…だ、誰!?」
 茂みから出てきたのは…
「随分と穏やかだねェ。まさか俺に追われていることをお忘れかィ?」
 その生き物は、鋼の如く固い翼を持った鳥だった。どうやら、追っ手のようだ。
「もうやめて!何が目的なの!?」
「来れば解るさ…大人しく来てもらおう…ルルフ」
 ルルフと呼ばれた生き物…もとい、ポケモンは、はっきりとした口調で、
「どこの誰だか知らないけど、ストーカーみたいに着いてくるのはこれっきりにしてよ!」
と言い丘から跳び、風に乗って違う場所へと行ってしまった。
「チィッ、また逃げられちまったかィ。まあいい。また追いかければいい話だよ。逃がさねえぜィ…」
 鋼の鳥ポケモンは、何処かへ飛び去って行った。
 二匹がいなくなった後の丘には、決して爽やかとは言えない微風が吹いていた。

**第一話 [#wc28624a]

 二匹が丘を跡にして少し経って、その丘の土を踏みしめる、二匹のポケモンが現れた。どうやらこの辺りの匂いを嗅いでいるようで、何かを探しているようだった。
「…!…この匂い…!…やはり…」
「ああ。どうやらあの目撃情報は正しかったようだな、ウェン」
 ウェンと呼ばれた雄のガーディは、匂いを嗅ぐだけで誰がいたか解るぐらいの優れた嗅覚をもっていた。
「…では、ウルカ様…」
 ウェンが尋ねると、ウルカと呼ばれたルカリオは確信した!というような表情を浮かべた。
「…間違いない。ルルフはこの丘で何者かと会っている。…争った形跡がないところから推理すると、風に乗って逃げたな…。ウェン。時間までは解るのか?会ったのは誰か解るのか?」
 ウルカがウェンに尋ねると、ウェンは少し曇った表情になる。そして少し下を向いた。
「いえ…其処までは…」
 ウェンがこう言うと、ウルカは少し考え込んだ。だが、すぐに結論をだした。
「ふむ…手がかりはこれ以上得られないか…戻って調査するぞ!ウェン!」
 ウルカはこれ以上の現場捜査は必要ないと判断し、何処かへ帰っていった。
 しかし、その捜査の一部始終を見ていたポケモンが、茂みに隠れていた。
「……成る程……報告せねばな……」
 そのポケモンは、紺色の角を持った白い体毛のわざわいポケモン、アブソルだった。
 アブソルは、姿を表した後一言呟くと、ウルカ達とは逆方向に駆けていった。

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「ここまで来れば…おっと。さっきはその考えで油断しちゃったから、少し考えなきゃ!」
 ルルフは、隣の岩山のお陰で見つけられにくい場所の大きい森に降り立った。
「もしかしたら戦う事になるかもしれないけど…草タイプのエルフーンである以上、戦闘は避けたいなあ。どうしよう」
 あれこれ考えてもキリがないと思い、ルルフは考えるのをやめた。
「見つかったら見つかったで逃げればいいんだし、今生きれるようにしないと元も子もないからね♪よし、まずは木の実を探そう」
 ルルフにとって、森は全く過酷ではなかった。元々住み家は森ではなかったが、森に近いところに住んでいたため、森によく遊びに行っていた。
 すると、目の前に誰か倒れていた。体からいくつかの葉っぱが生えているポケモンだった。この森のポケモンだろうか。
「ねえ、だ…大丈夫!?…あ、よかった…息、まだあるみたい!…ねぇ、どうしたの?何があったの?」
「う…兎に角…襲われ…ぅ…」
 このポケモンは、そこまで言うと倒れてしまった。ルルフは、とりあえず日陰に移動させて、様子を見ることにした。

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「お!丁度いいところに大木が!ラッキーだね♪じゃあ木陰で休ませてもらうよ」
 ルルフは草ポケモンを木陰で横にさせ、体力が回復するまで待つことにした。
 幸い此処はポケモンの気配が少なく、奴等にも見つかりにくい場所だ。ルルフはこの大木に感謝した。
「うぅっ…」
 休んでいると、草ポケモンが目を覚ました。傷は完全には治っていない。
「あぁ!目を覚ましたみたいだね!体力はどう?」
 草ポケモンが目を覚ましたことに安堵し、喜んでいると、草ポケモンは四足で立ち上がった。
「君が助けてくれたんだ…ありがとう。…君は?」
 草ポケモンにそう訊かれ、ルルフはどう答えればいいか少し迷った。
「えっと、僕はエルフーンのルルフ!訳あってこの森にやってきたんだ!」
「自己紹介ありがとう。…僕は リーフィアのリフィル。この森に住んでるんだ。宜しく。」
 ルルフは少し安心した。お互い余所者だったとすれば、どうすればいいか全くわからなかったであろう。
「ところで…何故倒れてたの?気になる!」
 好奇心でそう訊くと、リフィルは少し暗い表情になった。
「僕…故郷に帰ってたとき、悪ポケモンに襲われたんだ。僕が両親の身代わりになったから、両親は逃げれたけど、僕はあっさり倒された。…でも途中で少し意識があった時、『そのへんの森に捨てとけ』って聞こえたんだ。多分…それが偶然、僕の住む森だったんだと思う…。」
 リフィルが話し終えると、二匹の間に暫く沈黙が流れた。が、ルルフはそんな空気が嫌だったから、なんとか喋ろうと努めた。
「そう……そんなことが……
 あ!ご、ごめんね!わざわざ嫌な記憶を思い出させちゃって…」
「いやいや、両親は無事逃げれたし、僕も偶然住む森に戻れたことだし、全然大丈夫だから!」
 言葉ではそう言っていたけれど、顔はやはり何処か悔しげだった。
「…で、これからルルフはどうするの?」
 ハッ!とルルフはなった。そうだ。これからどうするか考えてなかった…
「うーん…」
「だ…だったら、僕の住み家に一緒に住もうよ!」
 リフィルがそんなことを言うとは思っておらず、ルルフは驚愕した。
「え…それは嬉しいけど、迷惑じゃなかな…」
「いや、拒む理由なんてなにもないよ!遠慮しないで!」
 この時、リフィルの顔は嬉しそうだった。やはり、一匹では寂しかったのだろうか。
「うん!じゃぁ住まわせてもらうよ!これから宜しくね!」
「うん!僕の住み家はこっちだよ!ついてきて!」
 ルルフは、これからの生活が、とても楽しみで仕方がなかった。これから、どんな暮らしになるか、二匹は期待していた。
 この森には、優しく包み込むような微風が、まだ吹き続けていた…。

**第二話 [#s55847ae]

 ルルフとリフィルが一緒に住むことになった頃…。
「……頭領……報告が……」
 薄暗い所に、沢山のポケモンが集まっていた。ここは洞窟だろうか。其処に一匹のアブソルが、誰かに跪いていた。…このアブソルは、恐らくウェンとウルカの会話を聞いていたアブソルだろう。
「何事かね?…アルク…」
 頭領と呼ばれたポケモンは、アルクと呼ばれたアブソルに聞き返した。…頭領は、頭に帽子のような物を着けていて、胸に白い毛を生やし、尻尾が紅き鳥ポケモンだった。
「はい…ルルフの許に手下を送り込んで、一度鉢合わせした所に、二匹のポケモンがやってきて、何やら捜査をし
てました…」
「ふむ…捜査…か…。報告ご苦労。どうやらそのポケモン達、二匹のグループでは無さそうだな…」
 頭領はそういうと、手元にあったカップにコーヒーを注ぎ始めた。どうやら部下が既に作ってあったようだ。
「たった二匹きりで捜査する、というのは不自然だ。…何か組織が遣わせたのだろう…。…ストバとミラン!アルクと共に奴等の拠点を探せ!」
 そういうと、頭領はコーヒーを一気に飲み干した。
 ストバはクロバット、ミランはヤミラミだった。この組織は、頭領と同じタイプが入ったポケモンの組織なのだろう。
「わかったぜ、ボスぅ」
「了解、頭領」
 ストバとミランはそう答えると、アルクと外に出た。
 奴等なら、きっとやれる…
 頭領は、そう願っていた。

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「着いた。此処が僕の住み家だよ!」
 リフィルの住み家に到着したルルフは、疑問で首をかしげた。
「これ…穴だよね…?この下に家があるの?」
 わけがわからなくなっているルルフに、リフィルは少し声を細めて言った。
「…穴の向こうに林があるでしょ?あの林は、通り抜けるのが凄く難しいんだ。この穴は、敵から身を守る為に、そんな林の向こうに繋がっていて、そこに僕の住み家があるんだ…」
 この事を知られたら、きっと敵にやられてしまう。だから声を細めているのかと悟ったルルフは、リフィルが凄いポケモンなんだと思い、住み家に行くのが楽しみになった。
「兎に角、行ってみよう!」

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「はぁ…はぁ…この穴、長いね…」
「林が長いからね…」
 穴を越えたルルフは、疲労でもうヘトヘトなのに対し、リフィルは慣れなのか少し疲れただけだ。
 ルルフが前を見ると、立派なツリーハウスが其処にあった。下に木製のはしごがあり、木に登れないポケモンへの配慮もちゃんとある。
「さあ兎に角入って入って!」
「うん!じゃあ上がらせてもらうね!」
 二匹ははしごを登っていき、登ったところに木製の家がある。
 一匹で作るのは大変だなぁ、とルルフは思った。「お邪魔しまーす!じゃなくて、ただいまだった…アハハ…」
 挨拶をきちんとして家の中に入ると、なかなか綺麗な家だった。窓から入る日光が美しく見える。
「少し狭かったかな。…はい。木の実。…ちょっと貯めが少ないな…。木の実を取りに行かないと…」
 リフィルが木の実用のかごを背負い、森へ向かおうとする。
「あ、だったら僕が採ってくるよ!リフィルも二匹分用意するものとかいっぱいあるだろうし!」
 やることが沢山あるリフィルを心配して、ルルフの気を利かせた言葉だった。それにリフィルは、無言で頷くと、ルルフにかごを渡した。
「じゃあ、行ってくるよ!木の実いーっぱい採ってくるねー!じゃっ!」
 風のようにルルフは家から出ていった。リフィルは、木の枝を拾ってきて、椅子やベッド等を作った。

**第三話 [#z6b318ba]

 ルルフは、木の実を採りに、リフィルのツリーハウスの梯子を降りていた。木の実を入れる&ruby(かご){籠};を持っていた為、少々降りにくかったが、なんとか頑張って降りた。いざとなれば、エルフーン独特の毛でゆっくり下降できるからいいのだが。
 ふと、ルルフは穴の向こうの林を見た。リフィルは『通り抜けることはすごく難しい』と言っていたが、詳しくはどんなものなのだろうか。ルルフがそっと足を踏み入れようとすると…
「こらー!そこのきみー!」
 入口に一匹のクルミルがいた。ルルフは少し驚き、身を退いた。
「リフィルのいってたことわすれちゃったのー!?ここをとおらないようにリフィルがあなをほったんだよー!」
 何故その事を知っているんだ、君は誰だ、リフィルと知り合いなのか、などと色々な疑問が頭に浮かんだが、とりあえずルルフは穴に入った。

----

「よし!この位あれば二匹で足りるよね。帰ろう!」
 木の実を籠に詰めて、リフィルが待つツリーハウスに戻ろうとしたら…。
「見つけたぜィ…ルルフ」
 後ろには、あの丘で会った鋼の鳥がいた。
 まずい。早く逃げなければ。ルルフはそう思い、走って逃げるが、鋼の鳥が尖った岩を周りに出し、退路を絶たれた。
「俺からは逃げられねぇってのがわからねぇのかィ?…来てもらうぜ」
「だから何で!?何を求めているの!?」
「問答無用だッ!」
 鋼の鳥はそう叫ぶと、翼から白い空気の刄を飛ばす。
 もう駄目だ。ルルフでなくても、そう思っただろう。
 その刹那。白くて大きい衝撃波のような物が横から飛んできて、空気の刃と&ruby(そうさい){相殺};しあった。
 何事かと、ルルフが飛んできた方を向くと、
「貴様…そこで何をしている!」
「場合によっては……排除する……」 其処には、ウェンとウルカがいて、鋼の鳥を睨んでいた。&ruby(もっと){尤};も、ルルフはその二匹の事を知らないのだが…。
「えーっと、…誰ですか?」
 ルルフがそう言うと、ウルカは鋼の鳥の前に立ち塞がり、ウェンが尖った岩をキバで砕いていってルルフの前に来る。
「紹介が遅れたな…俺はウェン、あちらはウルカ様だ…」
「さ、様?それはどういう関係で?」 ウルカは鋼の鳥を吹っ飛ばし、それを追うという事で、ウェンとルルフから離れて戦うことにした。
 あんなに強そうに見えた鋼の鳥も、ウルカと戦っていると弱く見えるなとルルフは思った。
「…これを見てくれ…」
 ウェンから渡された紙は、どうやらウェンの名刺のようだった。
 …成敗団体ルキジオン パトロール部中員 ウェン
「せ、成敗団体ルキジオン!?なにそれ」
 だが『団体』である以上、ウルカはウェンの上司なのだろうと解釈した。
「後で話す…一先ず安全な所へ…」
 ルルフがウェンの行く方向に向かう途中、ウルカの方を向くと、戦闘はまだ続いていた。だがウルカの方が優勢だったので、ルルフは安心する
 ウェンに呼ばれて気付いて、慌ててルルフはウェンの行く方向へ移動した。
 そして、その様子を見つめる影が三つあることには、誰も気付いていなかった…。

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IP:61.7.2.201 TIME:"2014-04-01 (火) 00:30:42" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E8%8D%89%E5%8E%9F%E3%81%AE%E5%BE%AE%E9%A2%A8" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/33.0.1750.154 Safari/537.36"

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