ポケモン小説wiki
脇道2 観察者リーフの記録 の変更点


writer is [[双牙連刃]]

 はい、少し間が開いてしまいましたが、これは[[変わっても、変わらないさ]]の後日談に当たる脇道でございます。
官能は……ありません! 本編のスピンオフとしてあのポケモンが主人公でございます。お楽しみ頂けたら幸い、ではどうぞ。

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 どうも皆さんこんにちは。ハヤト家の観察者、ベイリーフのリーフです。決してストーカーではないので悪しからず。
さて、今回は私の視点で、この家に巻き起こったある事件を追っていかせて頂きます。いやぁ、とても興味深くて、私の知的好奇心はメモリを振り切るかと思いましたよ。
それでは、まずは事件の馴れ初めと行きましょうか。それは、リィちゃんが無事に進化した翌日の朝に始まります。……進化した時のあれも素晴らしかったですけどね。

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「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 な、なんですか今の悲鳴は!? フロストさんの声のようでしたが……一体何があったんでしょうか? とりあえず行くべきですね。
部屋から出ると、今のを聞きつけて皆さんも集まってました。って、なんで皆固まってるんでしょう?
脇から覗き込んでみると……あ、あれ? あれって、いつものリィ、ちゃん?
自分の体を確かめてるのは、確かにイーブイのリィちゃんです。えーと待って下さい? 昨日の朝リィちゃんは進化して、確かにエーフィになった筈です。これはまた一体どうなったんでしょう?
うむむ、ミステリーの予感がしますよ。

「リィちゃん、一体どうしたんですか? なんでイーブイに?」
「わ、分かんない。寝る前は確かにエーフィだったと思うんだけど、起きたらこうなってたんだ」
「あたしも起きたらいつものリィだったから驚いちゃって……」

 むぅ、眠っただけで進化がキャンセルされた? いやいや、そんなの聞いた事ありませんよ。どういう事ですかね?
推察するにしても情報が足りませんね……まずは、落ち着くところから始めましょう。

「と、とにかく、ここに居ても仕方ないですし、リビングのほうへ移りませんか? ここで何が起こったのか考えてもどうしようもないですし」
「そうだな……ここで呆けてても確かに仕方ねぇか」

 ライトさんと一緒に声を掛けて、呆けてる皆に正気に戻ってもらってリビングへ移動です。全員で集まるならここが一番ですからね。
っと、その間に手持ちの情報を思い出しておきましょう。

第一に、昨日リィちゃんは確かに私達の目の前で進化しました。あれは、夢や幻覚の類ではないのはここに居る全員が証人です。
第二に、そのリィちゃんが一晩経ったらイーブイに戻ってしまった。これも紛れもない事実です。
そして第三、その原因が不明……この三つは、今確定してる事実として大きい物として上げられますね。

 こんなところでしょうか? むむぅ、謎ですね。
そもそもポケモンの進化というのは、言わば成長の極地です。それが逆行するという事はまずありません。
すなわち、起こりえない事態がリィちゃんに起きているという可能性がある訳です。そんなの、見過ごす訳にはいきませんよね。
さて、リビングに着いたところで、皆の話に少し耳を傾けてみましょうか。

「リィ、体の調子が悪かったりはしないの?」
「うん、特になんともないみたい。どうして戻っちゃったんだろう?」
「寝る前に何かした事は無いのか? 何か食べたとか飲んだとか」
「ううん、何も」

 となると……退化の原因が、リィちゃんが自分の意思で何かしらの物を摂取したから起こったのは除外出来ますね。
あ、退化と言えばあれがありましたね。皆がリィちゃんに注目してる内にちょっと確認をしておきましょう。
そ~っとキッチンまで行って一つのダンボール箱を開けます。これには、あの危険な薬品類がまだ保管されているのです。……下手に捨てて誰かが拾ったりしても大変そうですからね。
えっと、目的の色はっと……ピンクですね、退化薬は。
退化薬……ポケモンを退化させる事に成功しちゃってるとんでもないサンプルなんですよね、これ。効き目があるのは私の身で確認済みですし。
うん、私が飲んだ後から減った様子はありません。あれ? 性転換薬が無くなってる……いつの間に?
今はそんな事気にしてる場合じゃないですね。これで、寝ている間にリィちゃんがこれを飲まされたっていう可能性は排除出来ます。そんな事する意味も無いんですけど、推察を絞る為ですから、あらゆる可能性を確認しないといけません。
でも、この薬が使われていれば話は早かったかもしれません。なんせ、一日経つかライトさんのピュリファイで治療可能ですからね。
そうじゃないとすると……いや、これはもしかすると、もしかするかもしれませんね。皆の所に戻りましょう。
ライトさんの不思議な技、ピュリファイ。これの事を失念するとは、私もまだまだですね。

「皆さん、ちょっといいですか?」
「ん、どうしたんだリーフ」
「ライトさん、ちょっとリィちゃんにピュリファイを試してみたらどうですか? もしかしたら、もしかするかもしれませんよ」
「それは、リィっちが病気とか状態異常って事ッスか?」
「そう決められませんけど、物は試しって事でやってみてもいいんじゃないかなって思っただけですよ」
「なるほど……試してみる価値はありそうだな」

 ライトさんが前脚に白い電気を集めていきます。守りの雷、でしたね。特殊な電気を持ってるなんて、ライトさんは本当に何者なんでしょうか?
しかもそれを別の誰かの為に分け与えられる。本当に不思議です。白い電気にリィちゃんが包まれます。
……でも、変化は無いみたいです。つまり、異常ではなく別の要因で退化を起こしているって事ですね。

「駄目、か。やっぱり異常って訳じゃなく退化してるみたいだな」
「うーん、上手くいくかなと思ったんですけど……」
「しょうがないわね。これ以上考えても埒が明きそうにないし、一先ず解散にしましょうか」

 そうですね。これ以上は情報も足りない事ですし、一度解散でもいいと思います。
退化薬、状態異常の二つの原因候補が消えたのですから、それらしいものは限られた筈です。新たな要因を見つけるために、昨日のリィちゃんの行動なんかを皆に聞いていきましょうか。
まずは……実はもう決めてるんですけどね。ここに残るであろうレンさんからお話を聞きましょう。別の目的もあることですし。
あれは、レンさんにはちょっと酷な場面でしたからね……一日経っても、心中は揺れているでしょう。それを見せないのが、レンさんの悪いところなんですよ。

「レンさん、少しお話いいですか?」
「え? どうしたのリーフちゃん」
「昨日のリィちゃんの様子で、何か変わったところは無かったかと思いまして」

 ふむ、リィちゃんの名前にぴくっと反応したところを見ると、やっぱり気にしてるみたいですね。
これは……私に出来るのはお膳立てくらいですね。ライトさんも気遣いは出来る方ですから、それ相応のシチュエーションを作れば上手くやってくれる筈です。
となると、限定的にでもレンさんとライトさんを二匹っきりにしてあげないといけませんね。これが出来るのは、この家の中でも私だけですよ。ふふふ。

「あ、えっと、昨日のリィちゃんだよね? うーん、私は思いつく事は無いかなぁ」
「そうですか。すいません、変な事聞いてしまって」
「ううん、いいの。皆、リィちゃんの為に頑張ってるんだもんね。私も出来る事があるなら手伝うよ」
「……でも、レンさんはそれでいいんですか?」
「え?」
「確かに、あれはリィちゃんの為です。でも、それまでです。……私は、レンさんが自分のしたい事を、言いたい事を言ってもいいと思いますよ。考えたり何かするのは、他の誰かに任せちゃえばいいんですよ」

 じゃないと、いずれレンさんは耐えられなくなります。ライトさんは……誰にでも優し過ぎるから。

「私は、レンさんの事を応援してますよ。余計なお世話かもしれませんけど。じゃあ、失礼しますね」
「リーフちゃん……」

 さて、出来る範囲でのレンさんへの仕込みはこんな物でしょうか。これで、僅かにでもレンさんが素直にライトさんと接してくれればいいんですが……。
引っ込み思案と、朴念仁なお人好し、これをどうにかするのには頭を使いますね……さて、ライトさんへの仕込みの為に一旦部屋へ戻りましょうか。メモも持ってきたいですし。
おっと、その前にレオさん発見。さしてこれからの展開の障害とは思ってないですが、調査とスケジュール確認だけさせて貰いましょう。

「レオさーん」
「ん、リーフか? どうかしたか」
「いえ、ちょっと昨日のリィちゃんの様子を聞こうかと思いまして」
「昨日のリィか? そうだな……進化した以外にはこれといった事は無かったが?」
「そうですか……ところで、レオさんは何してるんですか?」
「俺か? いや特に何をすれば良いかも分からないから、部屋で様子見といったところだな」

 なるほど、これは事情を話せば協力してくれるかもしれませんね。

「それなら、ちょっとご相談があるんですが、いいですか?」
「ほう、聞かせてもらおう」

 ……よし、説明完了です。これで、危険因子のハヤトさんについては問題無いでしょう。

「それでは、お願いします」
「レンには世話になってるからな。しかし、レンがライトを、というのは本当の話なのか?」
「見ていれば分かると思いますが……デリケートな問題なので、公言は謹んで下さいね」
「心得た。こちらは任せてくれ」

 調査についての進展はありませんけど、こっちの準備は磐石になっていきますね。後の危険因子は、プラス君と……ソウ君ですね。
あまり言いたくないのですが、どちらのKY率も危険度ランクSです。もしライトさんとレンさんが雰囲気良くなったとしてもヅカヅカ入り込みかねませんからね。
それだけは、例え神様仏様創造主様が許そうとも私が許しません。神をデストロイしてでも止めますよ。
しかし、どうやってこの二匹を抑えるか……部屋で少し作戦を考えましょう。
私、部屋でハーブ栽培なんて物をやってるんです。爽やかな香りに睡眠導入の香り、その他薬効のあるハーブは大抵育ててます。
これが部屋半分を占めておりまして、もう半分は私の秘蔵文庫になってます。
ハーブ栽培関係の本から始まり、小説系と漫画系、そんなところですね。はい、私の調査やプロファイリング好きはこの辺りが起因ですよ。
あと、ハヤトさんのお古ですがパソコンも完備です。もちろんネット回線配備もバッチリですよ♪
っと、準備しなければ。え~っと、まずは皆さんの行動パターンの書かれたメモを持って、あのハーブも持っていかないとなりません。ちょっとした隠し種ってところですよ。
さてさて、どうやってソウ君達をレンさん達に近付けさせないようにするか、ですか……。手っ取り早く出掛けてもらうのが一番なんですがねぇ?
ん? ドアがノックされる音が……誰でしょう?

「リーフ、あたしよ。入っていいかしら?」
「フロストさんですか? どうぞ」
「ありがとう、失礼するわね」

 突然の来訪者はフロストさんでしたか。ご用件はなんでしょう?

「レオから聞いたんだけど、あなた、レンとライトの仲を取り持とうとしてるんですって?」
「あ、はい。お節介かもしれませんけど、あの時のレンさんの落胆ぶりを見ちゃって、なんとかしたいなと思いまして」
「それ、あたしにも手伝わせてくれないかしら?」

 おっとぉ、これは予想してなかった援軍ですね。しかし、その心は?

「あたしもね、ああ言ったはいいけどちょっと考えが浅かったと思ってるのよ。特に、レンについてね」
「あ~、確かに極論でしたからね。私もちょっとそういう展開に期待しちゃった節はありますし、フロストさんを責められませんよ」
「ありがと。だから罪滅ぼしって訳じゃないけど、手伝わせてもらえないかと思ってね」
「大助かりですよ。ありがとうございます」

 簡単に説明しますと、私がライトさんをレンさんの居るリビングに行くように仕向けてる間、レオさんとフロストさんにはそれぞれ、ハヤトさんとソウ君達の足止めをしてもらうっていう簡単な作戦です。
その間、ノーマークになってるリィちゃんは私が受け持ちます。聞きたい事もありますし。

「では、作戦通りお願いしますね。どの位稼げそうですか?」
「一時間は連れ歩くわ。あぁ、それとあのグラエナさんにも協力願うつもりだから、かなり稼げると思うわ」
「それは重畳。そちらはお任せします」
「分かったわ。それにしても、普段は見ているだけのリーフがここまで積極的に動くとはね。どういう風の吹き回し?」
「気まぐれ、ですよ。それに……」

 言おうかとも思いましたが、止めておきましょう。自分も想う相手が居るからほっとけないなんて、フロストさんになら気付かれてそうですからね。

「ま、いいわ。じゃあ、これからあいつ等を連れて私は出掛けるわね」
「了解しました。私も行動開始します」

 部屋から出てフロストさんと別れてと……恐らく、リィちゃんとライトさんは一緒に行動してる筈です。リビングに居なかったとすると、あそこですね。
目的地は、フロストさんの部屋です。リィちゃんも一緒に寝起きしてるのはあの部屋ですからね。
部屋の前まで言って、扉にくっ付くと……よし、話し声が聞こえます。予想通りですね。
部屋の前まで行って、扉にくっ付くと……よし、話し声が聞こえます。予想通りですね。

(僕、どうすればいいんだろう……)
(心配するなって。必ずなんとかなるからよ)
(で、でも……)

 うーん、リィちゃんも相当参ってますね。そりゃ、折角やっと進化出来たのに力も試さない内に戻っちゃったら落ち込みもしますよ。
昨日のリィちゃんの行動をある程度把握しましたけど、特にこれといった決定打はありません。だから、ひょっとしてと思ってるものがあるんですよ。
リィちゃんの夢に現れる、一匹のポケモン。自分が見た事のある相手では無いので詳細は分かりませんが、鍵を握ってるのはその方ではないかと思いましてね。
それを確かめる為にも、リィちゃんとお話しないといけません。さぁ、ミッション開始です。まずはノックをして、と。

「すいません、リィちゃんはいらっしゃいますか?」
「ん? その声は……リーフか?」
「あら、その声からするとライトさんもご一緒でしたか。入ってもいいですか?」
「あぁ、構わねぇよ」

 素知らぬ顔をする必要も無いかもしれませんけど、一応盗み聞きが分からないようにという事で。

「お邪魔しますです」
「おぅ。なんか他の奴に聞きまわってたみたいだけど、なんか分かったか?」

 さ、流石ライトさん……私の行動を知ってるとは、お見それしました。

「それが、決定打がさっぱりなんですよね……だから、今度はリィちゃんにお話を聞こうかと思いまして」
「うーん……僕にも思いつく事って無いんだよね」
「もしかしたら、進化する時が不味かったのか? なんか、急に進化が始まったしよぉ」
「それはどうなんでしょう? 一日とはいえ、リィちゃんは安定した状態でした。進化自体に問題は無かったと思いますよ?」

 これは皆からの話で分かってる事です。特に変わり無かったという事は、進化してもリィちゃんは異常無く生活していたって事ですからね。

「だとしたら、問題はなんなんだ?」
「目下調査中、ってところです」
「ありがとうリーフ姉ぇ……そういえば、リーフ姉ぇから良い香りしない?」
「あ、気付きました? ちょっと気分転換に良いかと思いまして、レンさんにハーブティーでも淹れてもらおうかと思いましてね」

 現在持ってるのは、バジル、カモミール、ペパーミントの三種類です。どれも精神安定や強壮に効果のあるハーブですよ。
これをライトさんに持っていってもらう運びの流れを作りたいのですが、どうしましょうか? ……小手先の話術だとライトさんには通じませんね。ここはストレートに行きましょう。

「そうだ。ライトさん、ちょっと頼まれてもらえませんか?」
「ん、なんだ?」
「このハーブ、リビングに持っていってもらえませんか? その間に、ちょっとリィちゃんに聞きたい事がありまして」
「え、他に僕に聞きたい事?」
「俺が居ちゃ不味いのか?」
「あれ、ライトさんもガールズトークに興味あるんですか~? それなら居てもらっても構いませんけど?」

 こう言えば……よし、照れてるって事は勘違いしてくれたみたいですね。一般的に、ガールズトークなんて言われたら牡は聞くのを躊躇うと思ったんですよ。
まぁ、プラス君なんかには通じない策ではありますけどね。

「分かった、そいつを持っていけばいいんだろ? 行ってくるわ」
「ありがとうございます。では、お願いします」
「あいよ。ま、ゆっくり話してくれや」

 ライトさんの背にハーブを預けて、ライトさんは部屋を後にしてくれました。……レンさん、私が出来るのはここまでです。頑張ってくださいね。
さて、私はこちらの問題解決に勤しみましょう。どうやら、リィちゃんにもなんとなく気付かれてはいるみたいですし。

「リーフ姉ぇ、もしかして……ライトをリビングに行かせる為にあのハーブっていう草持ってきてたの?」
「やっぱり分かっちゃいましたか。まぁ、あからさまに持ってたらバレちゃいますよね」
「そうだったんだ……それで、僕に聞きたい事って何? ガールズトークっていうのが何か分からないけど、違うんでしょ?」
「あらー、そっちも分かっちゃいましたか」
「だって、不自然に雰囲気出そうとしてたし」

 本当に勘の良い子ですね、リィちゃんは。迂闊な事を言えないですね~。
といっても、ここからは特に偽りを言う必要もありません。単刀直入に聞いていきましょう。

「リィちゃん、昨日どんな夢を見ましたか?」
「夢? うーん……覚えてないよ」
「そうですか……もしかしたら、リィちゃんが前に言っていた空間の神様に会う夢を見たのではないかと思ったんですが……」
「パルキアさんに? そういえば、進化したのを教えに行ってなかったな。昨日はパーティとかでちょっと疲れちゃったし」
「でも楽しかったですねー。……ん? 会いに行く?」

 会いに行くって、こちらからそのパルキアさんにでしょうか? そんな事が可能なのでしょうか?

「こちらからそのパルキアさんを見にいけるのですか?」
「見に行くって言うより、こっちがパルキアさんの夢の中に入るって言うのかな? とにかく、そんな感じ」

 ……夢を介して、パルキアさんとリィちゃんの意識がリンクしているという事でしょうか? そんな事が出来ていたなんて、驚きです。
しかし、それを昨日はしていなかった。とすると、退化の理由からはパルキアさんが何かしたのは控除すべきですね。
ですが……もしかしたら、何か繋がる可能性は出てきましたね。
失念していました。私達が持たず、リィちゃんだけが持っている物の事を。
空間制御能力、そして……リィちゃんの首元、毛で隠れている中に光る空の欠片と呼ばれるネックレスの事を。
どちらも規格外の能力を持つ物と把握しています。これが、リィちゃんに作用してる可能性は大いにあり得るでしょう。
これは、直接そのパルキアさんに質問をしたいところです……鍵は、リィちゃんでしょうね。

「あの、私もそのパルキアさんに会うというのは可能なのでしょうか? いつもはどうやって、パルキアさんの夢の中へ行ってるんですか?」
「えっと、空の欠片を前脚で挟んで、パルキアさんのところへ連れて行ってくれるように祈るの。それで、いつもは行けるよ。でも、他の誰かも一緒に行けるかはちょっと分からないかな」
「そうですか……物は試しと言いますし、ちょっと挑戦させてもらっていいですか?」
「え? リーフ姉ぇもパルキアさんに会いたいの?」
「この退化の真相、もしかしたらそれに近づけるかもしれませんからね。ここまで調べた以上、きちんと真実まで知りたいんですよ」
「……分かった。出来るかは分からないけど、やってみるね」
「はい、お願いします!」

 リィちゃんに促され、蔓の鞭で空の欠片に触れます。へぇ、よく見るとすっごく綺麗なネックレスですね。このトップに付いてるのは……真珠、でしょうか?
リィちゃんが目を閉じたようですし、私も同じようにしましょう。えっと、お祈りをしてるって言ってましたね。なら私も祈ったほうがいいのでしょうか?
そうですね……パルキアさん、リィちゃんの為にも、あなたに確認したい事があります。どうか、私にあなたの御前に行く事を許して下さい……。
お願いします、空間の……神様!
!? な、目を閉じてる筈なのに目の前が、白く……?

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 気がつくと私は、真っ暗な空間に浮いて……いるというか分かりませんが、とにかく居ました。
もしかして、入れたという事でしょうか? 周りには何も無いのですけど?

「あ、リーフ姉ぇだ。よかった、来れたんだね」
「ひょ!? って、リィちゃん?」

 真後ろからいきなり声が聞こえたんで驚きましたよ。そして、この黒の空間の中に、一点だけの茶色を見つけました。

「来れたって事は、ここが?」
「うん、パルキアさんの夢。真っ暗な夢なんて、寂しいよね」
『しかし、最近はリィが来てくれるから、そうでもないがのぉ』
「!?」

 この声は!? あ、光が……宙? に浮いてる。
うわわ、光が変わっていってます! お、大きい……。

「よく来たのぉ、リィや。それに、見知らぬベイリーフよ」
「こんにちは、パルキアさん。えっと、ベイリーフのリーフ姉ぇっていうんだ。僕と一緒に暮らしてるポケモンの一匹」
「えっと、始めまして。紹介された通りにリーフと申します。突然お邪魔した事を、まずお詫びします」
「気にするでない。他の方法で入ってきた者なら有無を言わず追い出すところだが、リィが招いた者なら歓迎しようぞ」

 大きい桃色の龍……リィちゃんが前に言っていた通りですね。これが、空間の神様ですか。

「して、今日はどういった了見じゃ? 他の者をここに招いた以上、何かあったと見受けるが?」
「あ、はい。説明は私からしますね」

 起こった事全てを説明して、私の見解なども合わせて伝えました。そうじゃないと、ここまで来た経緯は伝わらないですからね。

「なるほどのぉ……まずは、おめでとうのぉ、リィや」
「うん……でも、今はイーブイに戻っちゃってるけど」
「これについて、パルキア様は何かご存知ではありませんか?」
「いやぁ、もっと先の事と見て説明せなんだわしの落ち度じゃな、すまぬ」

 という事は、パルキア様には思い当たる節がある、と。ふぅ、これでここに来たのが骨折り損にはならずに済みそうですね。
ん? リィちゃんの首の周りが光りだしたと思ったら、パルキア様の手の上に空の欠片が移動しました。つまり……原因はそれ、ですか。

「リィ、覚えておるか? わしがそなたにこれを授けた時に、もう一つ力を与えたと言った事を」
「……あ、そういえば」
「その力が、リィちゃんを退化させたという事ですか?」
「左様。じゃが、正確にはリィは退化したのではない。在りし可能性の一つに、姿を変えているのじゃ」

 在りし可能性に姿を変える? どういう事でしょう?

「この空の欠片は、リィの内にある空間の力に作用するようにしておる。それを利用し、リィの可能性にも作用するようにしたのじゃ」
「と、言いますと?」
「イーブイの内に眠る進化の可能性……それが花開く時に、別の可能性へと触れる機会を与えたのじゃ。一つは、進化したというエーフィへと姿を変える為にもう使われておる」
「それって、任意で進化退化が出来るって事ですか?」
「そうじゃ。元の姿であるイーブイ、選びし未来の姿であるエーフィ、そして……選び取りしもう一つの未来の姿へと変わる事が出来るようにしてある」
「選び取りし、もう一つの未来の姿?」
「……まさか、リィちゃんは別のポケモンにも進化出来るという事ですか?」

 パルキア様は頷きました。神様と呼ばれるポケモンにそんな事が出来るようにする力まであるとは……。
うーん、思っていた以上の事実ですね。まさか、そんな事まで聞けるとは思いませんでした。ここまで来た甲斐があったという事にしておきましょう。

「でも、どうやってエーフィに戻ったりするの? なんでイーブイに戻ったかも分からないんだけど……」
「恐らく、元に戻ったのはリィの内にあった進化への不安に空の欠片が反応したのじゃろう。いつも通り、空の欠片になりたい姿を念ずれば、その姿になれるじゃろう」
「それなら戻ってから試してみましょうか。でも、もう一つの進化というのはどうすれば?」
「それは、またいずれ機会が来た時に説明しようかの。そろそろ時が来たようじゃ」

 え? あっ、また目の前が白くなり始めました。どうやらここに居られる時間はそう長くないようですね。

「今日はリィ以外の者とも話が出来て楽しかったよ。じゃが、リィ以外の者がここに来るのは難しいじゃろう。幾らリィと共にであってもな」
「え?」
「そなたは、そなたの願いがここまで入り込む力となったようじゃな。空間の力を持たぬ者では、そういった別の何かで補填せねば空間の揺らぎを越えられないじゃろう。そなたの周りの者を想う気持ち、しかと見せてもらったぞ」

 な、なんだか照れちゃいますね。意識してませんでしたが、そんな事してたんですね、私。
でも、そうすると私がまたここに来れるかは分からないという事ですか……かなり残念です。

「そう残念そうな顔をするでない。そなたの思念は覚えたのでな、来たければ、わしが力を補填して繋げてしんぜよう」
「おぉ、それは素晴らしいです!」
「ただし、ここに来るのならわしの話し相手になってもらうぞ? よいな?」
「もちろんです!」
「よかったね、リーフ姉ぇ。じゃあ、戻ろうか。パルキアさん、またね」
「いつでも来るがよい。遠き地の友人達よ」

 完全に視界がホワイトアウトしていき、パルキア様の姿は見えなくなりました。……こんな体験、やっぱり口で言われただけじゃ俄かには信じられませんね。
でも、体験しました。不思議ですけど、優しくて少し寂しげな空間の神。実際に会ったら、信じるしかありませんよ。

 気がつくと、私の視界にはフロストさんの部屋の中が広がってました。そうだ、ここからあそこへ行ったんでしたね。
リィちゃんは……もう気がついてるみたいです。私の顔をまじまじと見ていました。

「リーフ姉ぇ、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫ですよ。はぁ~、あれって、ちゃんと現実に起きた事なんですよね?」
「うん。ちゃんと僕も、リーフ姉ぇと一緒にパルキアさんに会ったの覚えてるよ」

 正直ホッとしましたよ。これで何のこと? とか言われたらショック過ぎます。
つまり、あの会話も全て本当って事ですよね。だとすれば、リィちゃんがエーフィに戻れる条件も揃った筈。後は実践あるのみです。

「じゃあ、リィちゃん」
「うん、試してみるね」

 リィちゃんが空の欠片を握り、瞳を閉じます。これで成功しなかったら、早速になりますけどもう一度あの空間に行かねばなりませんね……。
いや、その心配は無かったみたいです。見た事のある進化の光に包まれて、リィちゃんは……エーフィになりました。成功です!

「やった! リィちゃん、エーフィに戻ってますよ!」
「本当だ。よかったぁ……これで皆に心配掛けないで済むよ」
「……でも、そこからイーブイには戻れるんですか? そっちも試してみましょうよ」
「そうだね。よーし」

 ふむ、本当に戻るのも出来るようです。だとすると、気になるのはパルキア様が言ってたもう一つの未来の姿という奴ですね……。
一つと限定されてる以上、他の姿には確定以降なれないと考えるべきです。なら、また慎重に選ぶべきでしょう。
といっても、時間切れで結局詳細は聞けなかったのですし、まだ皆には伏せておいたほうが良さそうですね。私があの空間に行ったのも踏まえて。
プラス君やソウ君が食いついてくるのが目に見えるようですよ……パルキア様にも迷惑になりかねないですし、伏せるのがベストだと思います。

「ははっ、安心したらなんだかお腹空いちゃったな」
「そうですね。……あれ、もう3時間も経ってる」

 そんなに時間が経ってるとは思いませんでした。うーん、あそこでの体感時間と現実ではズレがあるという事でしょうか? 興味深いですね。
となると……蒔いた種はどんな芽を出したんでしょうか? 悪い芽になってないといいんですが……。

「お昼過ぎてるけど、レン姉ぇなら何か作ってくれるかな?」
「そうですね。……もう入っても大丈夫ですよね?」

 小声で自己確認です。三時間、それだけあれば何かしらの話は出来た筈です。邪魔が入ってなければ、ですけど。
これは迂闊でしたね……まさか3時間も私自身が動けない状況になるとは思っていませんでした。レオさんとフロストさんが上手くやってくれた事を祈るばかりですぅ。
足早にリビングまで行って、一呼吸置いてから扉を開けました。……とりあえずは静か、ですね。
おや? レンさん、ソファーにいらっしゃるみたいですね。ライトさんは何処でしょうか?
……近付いてみたら分かりました。どうやら、上手くいったみたいですね。

「リーフ姉ぇ? どうし……あれ?」
「ふふっ、ここは起こさないようにしましょう。レンさんほど上手くはありませんけど、私が簡単な物を作りますね」
「そうだね。こんなところ起こしたら、ライトに叱られちゃうよ」

 だって、レンさんの膝枕で気持ち良さそうに眠ってますからね♪ 蟠りは、もう無いと思っていいでしょう。
さーて、リィちゃんの為に頑張ってご飯作りましょう。私だって、レオさん程じゃなくてもレンさんに教わってるんです。頑張りますよー!

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 さて、如何でしたでしょうか? これが、リィちゃん退化の真相に迫った私の記録です。
あの後ですか? 皆が帰ってくる前にそっとレンさんを起こして、レンさんにライトさんを起こしてもらいましたよ。ゆえに、膝枕を見たのは私とリィちゃんだけです。冷やかされるのも、ご両人には可哀想ですからね。
しかし気になります……レンさんとライトさんの間に、一体何があったのでしょうか? あの後からまた妙に仲が良くなったようですし、これからの調査もしっかりやらなくてはなりませんねぇ。
おっと、長くなっても悪いですし、そろそろ幕と致しましょう。それでは、またお目に掛かる日が来るかは分かりませんが、しばらく、御機嫌よう……。

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という訳で、リーフ主体のスピンオフ脇道でございました。以降はコメントエリアです。ここまでお読み頂きありがとうございました!

元になった11話へは上のリンクより戻れます。では!

#pcomment

IP:219.115.200.118 TIME:"2012-07-14 (土) 13:17:50" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E8%84%87%E9%81%93%EF%BC%92%E3%80%80%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E8%80%85%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0)"

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