**絹漉鼬 [#QcqNXCO] writer――――[[カゲフミ]] 簡素なつくりの部屋だった。だいたい六畳くらいの広さでドアを開ければ正面に大きめの窓がある。カーテンが掛かっていて中はまだ薄暗い。 中央には肘置きの付いた回転する椅子が一脚だけぽつんと置かれている。その椅子の正面には姿見が壁に立て掛けられていた。 部屋に入ってきたのはトレーナーと思しき女性と、彼女が連れている一匹のポケモンだった。女性が壁際の電気のスイッチを入れると室内はほんのりと照らし出された。 ややくたびれた感じの蛍光灯。電気がついてもそれほど明るくならない。彼曰く、これくらいの明るさの方が雰囲気が出ていいから取り換えなくても良いらしい。 「今日はお疲れ様。くつろいでいってね」 「ああ、よろしく頼むぜ、カミア」 カミアと呼ばれたトレーナーの後ろからずかずかと遠慮なく部屋の中へ進んできたのはフローゼルというポケモンだ。この部屋の勝手も分かっているらしく遠慮がない。 両手を上にして大きく伸びをしながら息をつくフローゼル。二足歩行だからなのか動作が人間に近いのでやけにおっさん臭く感じられてしまう。もちろん本人には言わないが。 まあ、年齢で言えばまだまだ若さ溢れる現役世代。今日の試合でも素早さを生かした相手の翻弄や、一瞬の隙を付いたアクアジェットの一撃など、めざましい活躍を見せていた。 カミアにとってはなくてはならないメンバー内のエース的存在。手持ちの中で贔屓目にしてしまうのは良くないことなんだろうと認識しつつも。 なんやかんやで彼には甘く接してしまう理由がここにあった。時折自信過剰に思える言動はあれど、それ以上の実力は間違いなく兼ね備えているのだ。 「じゃ、ルトラ。ここに座って」 「へいへい」 待ってましたと言わんばかりに、中央の椅子にぴょんと飛び乗るルトラ。足の短いフローゼルなので、人間用の椅子では到底床に届かずに椅子の上に両脚を投げ出す形になる。 背もたれと座る部分の間にちょうど空間があるタイプの椅子なので、ルトラの二股の尻尾はそこから外に垂らせば座るときに邪魔にもならない。 飛び乗ったときの勢いで回転椅子がぐるりと回っていた。カミアは背もたれに手を掛けて、ちょうど椅子の正面が壁の鏡を向くようにして位置を調整した。 この位置からでは身を乗り出して覗き込まなければ分からないはずの、ルトラの首元からお腹の辺りまでくっきりと映っている。普段より僅かに膨らんでいるであろう、股間の部分も。 明らかにそちらへの期待が抑えきれずに彼はにいっと嫌らしい笑みを浮かべている。ただ、そこまで下品さを感じさせないのはもともと整った顔立ちであるからなのだろう。 人間であるカミアから見ても、ポケモンの中でもいわゆるイケメンとして分類されると認識していた。外見にも恵まれて、さらに強さも兼ね備えて。 性格は若干の難ありかもしれないが、そこまで目も当てられないほどではない。近くに雌が居ればきっとルトラのことは放っておかないんだろうけれど。 あいにくカミアの手持ちポケモンたちはすべて雄というむさ苦しいパーティだった。意識して揃えたわけではなく、手持ちになったポケモンの性別がたまたま重なっただけ。 他の手持ちポケモンたちがどのように溜まってきたものを片づけているかは知らないし、触れずにいようと思っていた。こうやって直接頼んでくるのはルトラくらい。 どうも彼にはカミアに対する羞恥心というものが希薄になっているらしい。ブイゼルの頃から共に戦ってきて、長い時間を一緒に過ごした弊害なのかもしれない。 この椅子に腰かけているルトラの体に背後から手を伸ばして、溜まってきた欲求を発散させてやる。椅子はビニールレザーで水気には強い。床はフローリングで拭き取りはできる。 飛び散った場合の対策はできていた。いつもならばさっそく始めるところなのだが、今日は少しばかり事情が違っていたのだ。 「そういえば、あなたに頼まれたこれ。どうするの?」 「ああ、俺の体の前側を覆うような感じで付けてくれよ」 二足歩行で両手が使えるとはいえ、そこまで指先が器用ではないルトラが装着するのは難しいだろう。首から下に布を垂らして、首元と腰の辺りできゅっと結んでやる。 白い薄手のエプロン。出来るだけ布地が薄いやつ、とルトラには頼まれていた。どんな目的で彼が頼んだのかカミアには知る由もないが、きっとろくでもないことを閃いたんじゃないだろうかとは思う。 人間用のものなのでサイズが合っておらず、大体高さ一メートルちょっとくらいのルトラでは丈を余してしまっていた。椅子の上に投げ出していた彼の両脚の先まで白い布に覆われている。 「これでいいや。それじゃ布の上からいつもの感じで……」 「んー、分かったわ」 他に特別な何かを要求されるわけでもなく、この白いエプロンが加わった以外はいつも通り。さてと。少しだけ深呼吸してから、カミアはルトラの首元を両手で撫でながら徐々に下の方へとずらしていく。 短毛とはいえ細かい毛で覆われているフローゼルの肌。普段ならば若干の抵抗があるのだが、エプロンのおかげですうっと滑り込んでいく。 やがてカミアの両手がルトラの胸元の小さな突起に触れた瞬間、彼の口元からくぐもった声が漏れた。ルトラがどうすれば感じるのかはよく知っている。 通常、雄の場合は勃起した性器を擦り続ければ快感と共に発散させることができる。もちろんルトラに関しても一般的な手段で、カミアは何度も扱いてやっていた。 しかしルトラはそれに加えて胸、乳首の方がかなり感度が良いのである。指でやさしく摘まんでくりくりとこね回すだけで情けない声と共に簡単に表情がとろけてしまう。 何でも彼はブイゼルの頃から性欲旺盛で、進化前にも関わらず自分でたびたび処理してきたとのこと。右手で扱いている間に左手が暇だったので、思い付きで乳首を弄ってみたとか。 それを繰り返すうちに徐々に感度が良くなってしまい、病みつきになってしまったそう。フローゼルの三本指よりも、人間の指先の方が器用に動いて余すところなく撫でられるらしい。 頼んでもいないのにルトラがわざわざカミアに教えてくれた情報だ。面と向かって知らされるこちらの身にもなってほしい。まったくもって残念なイケメンである。 しかしどうも今回は普段とは様子が違うようだ。背中や浮袋、足先までもぴくぴくと振るわせて。時折か細い声まで漏らしている。 何となくルトラのいつもの声じゃなく、堪えようとしていてもどうしようもなく喘いでしまうような、そんな声。余裕が無さそうな感じだった。 「ああ……これいいわ」 「エプロンの布で広い面積が擦れちゃってるわけね。でもルトラ。あなたどこでこんなの思いついたの?」 手触りの良い絹製のエプロン越しならば直接触れられるよりもかなり気持ちがいい、らしい。 目くるめく性欲の発散のためには追及を辞さないルトラのこだわりのようなものがカミアにも伝わってきてしまった。 「ほら、きあいのタスキってあるだろ。あれを巻いてもらったときにさ。ちょっと乳首に擦れて、試合前なのに変な声でちゃって危なかったんだ」 きあいのタスキは所持したポケモンの体力が満ち溢れていれば、本来ダウンしてしまうような抜群の攻撃等を受けても一度だけは耐えられる不思議な道具。 俊敏性には優れるものの、耐久面では不安の残るルトラにも相性のいい道具ではあったのだが。そういえば、前の試合で緩まないようにちょっときつめに巻いた記憶はあった。 直後のルトラの様子が妙だったのはそのせいか。なるほど、と納得してしまいそうになる自分が嫌になる。まったくルトラは試合前に何をやっているんだか。 それで布越しに弄ればもっと良くなるんじゃないかと思って今回のエプロンを思いついてしまったわけね。カミアの口からはため息しか出てこなかった。 「そういうわけでもうちょっとよろしく」 「何がよろしく、何だか」 言葉では辟易しつつもカミアの指先は再びルトラの胸元の突起へ向けられていた。いつもバトルで成果を残してくれている彼へのご褒美と強引に解釈すればやってやれないことはないのだ。 人差し指と親指で軽く摘まむようにしながら、彼の二つの突起をぐにぐにと弄んでいく。エプロンを結んでやったときと比べると明らかに硬くなってきている。 白い布の上からでも目立つようになったルトラの乳首。普段は毛の中に埋もれていて良く目を凝らさなければ位置が分からないのだが、今は二つの出っ張りがつんとエプロンの下から主張してきていた。 興奮で汗ばんできたのか、もともと体の表面に水気の多い水タイプということも手伝って、水分を吸いやすいエプロンはルトラの体にぴったりと張り付いている。 バトルのために鍛えられた無駄のない引き締まった彼の体のラインがくっきりと浮かび上がっていて。何も着ていないのが当たり前のはずなのに、エプロンを身につけている方がかえっていやらしかった。 もしかして、この外見的な効果もルトラの狙いだったりするのだろうか。ちょうど椅子の正面には鏡があって、フローゼルの体長ならばきっちり全身が写る。 最初にルトラに処理を頼まれたときに、姿見が欲しいと言われた。理由を聞くと、感じている自分の姿を確認できた方が余計に興奮するからと恥ずかしげもなく教えてくれた。 正直カミアには理解が及ばない次元の話だった。性欲に溺れている自分をわざわざ見ておきたいだなんて。 確かにルトラ自身、整った顔立ちという自覚はあるらしく、元々ナルシストの気はあった。それを差し引いてもこれはまた別方向に振り切れている感じがする。 まあ、彼がそれを望むなら、出来る範囲で下準備はしてあげてもいい。我慢ばかりしていると試合の方にも響いてくるだろうし、ね。 「そんなに気持ちいいの?」 さわさわと胸を撫でまわすカミアに対して、ルトラはこくこくと荒い息を上げながら頷くばかり。エプロンが被さったままの彼の下半身はぴんと大きなテントを張っているかのように山なりになっていた。 布越しで直接確認こそできないものの、先の方は止めどなく溢れだした先走りの汁で湿っていて。ルトラの元気な元気な雄の先っぽの桃色がうっすらと透けて見えていた。 いつもより先走りが多いような気がするのはエプロンの効果なのか、それとも。布がしっとりと濡れることによって、一物の湿り気が可視化されたからなのか。 勃起した雄の先端が濡れて透けているという状況も、なかなかに官能的な雰囲気はあった。ルトラの提案したエプロンも案外馬鹿に出来ない効果がある。 これだけ股間が湿っているならもう準備は整っている頃だろう。あまり大きな声では言えないが、ルトラはかなり早漏気味だ。バトルの耐久も、股間の耐久も課題が残る。 手軽に発散しやすい体である、と考えればこっちが敏感なのは悪いことばかりではないのかもしれないけれど。さて、そろそろかな。 カミアが仕上げに移ろうかと、これまで焦らすように優しく撫でていた指先に軽く力をこめてルトラの二つの弱点を摘まんでやった瞬間だった。 「んっ……なっ、ああっ……」 「えっ、ルトラ……?」 情けない声を上げながらびくりと背中をのけ反らせるルトラ。椅子がぎしぎしと軋む音がした。直後、山なりになっていたエプロンが激しく上下に揺れ動く。 まさに火山が噴火しているかのようにびくん、びくんと何度も。ルトラの山から吐き出された劣情は濁った火砕流となって、白い布地にじわじわと広がる大きな染みを作っていった。 ぐっしょりと濡れてしまったエプロンは彼の肉棒に張り付いて、その形をくっきりと浮かび上がらせてしまっている。エプロンで隠している意味はもはやない。 ルトラの射精の勢いが良いので飛び散らないようカミアはいつも気を遣っていたのだが、エプロンで覆っていればその心配はないことを新たに学んでしまった。 「や、べえ……乳首だけでイっちまったよ」 「驚いた……初めてよね、こんなの」 いつもの流れならば片方の手で乳首を弄りながら、もう片方で彼の竿を扱いてフィニッシュさせていたのだが。唐突にその段階が省略されてしまい何だか拍子抜けであった。 カミアがおそるおそるエプロンの裾をつまんで持ち上げてみると、ルトラのペニスの表面から粘り気のある白い糸が何本も線を引いていた。むせ返るような雄の匂いに思わずくらくらしそうになってしまう。 あれだけ先走りの汁を滴らせていたのだ。いざ外へ出てきた欲望の量もなかなかのもの。心なしか普段よりも多いような気さえしてくる。 満足そうな表情で大きくお腹を上下させるルトラの呼吸音にあわせて、役目を果たし終えた彼の一物もぴくぴくと小刻みに揺れていた。盛り上がっていた火山は徐々に平地へと戻りつつある。 「カミアぁ……次もこれで頼むわ」 「誰がこのエプロンを洗濯すると思ってるのよ、もう」 椅子からずり落ちそうになってしまうほど、完全に腰が砕けてしまっているルトラ。口元から舌まで出して蕩け切ったその表情はバトルの時の引き締まったそれとは似ても似つかない。 白いから目立たないものの、ルトラの汗や体液その他諸々でエプロンはかなり汚されてしまっている。いきなり洗濯機に放り込めるような状態でもないので手洗いが必要だろう。 「まあそう言うなよ。次のバトルも頑張るからさぁ」 「調子いいんだから」 やれやれと肩を竦めるカミア。ルトラの口調こそ軽かったが、実際にバトルの面では実績を残してくれている分カミアも彼のことを大事にせざるを得ない状況がある。 これがなければ本当に頼もしい相棒なんだけれど。気持ちいいことに対して貪欲すぎる、性欲の強さが玉に瑕。とはいえあんまり欲求不満なのが続くのも体に悪いし、バトルの結果にも影響が出てくるだろう。 初めてルトラに処理を頼まれたとき。あれは彼がフローゼルに進化して間もない時だった。むらむらしてきてやばいから何とかしてくれないかと懇願されたとき、ぎらぎらした瞳で迫られてやむを得ずこの部屋に招いてしまったが最後。 それ以来、定期的に彼の欲求を発散させる手伝いをさせられる羽目に。下手に断っていたら何だか押し倒されかねない勢いがあったのでカミアも断り切れなかったのもある。 これはバトルで成果を残してくれているルトラへの報酬。最初のうちはカミアもそう割り切って処理に応じていた。しかし、最近は自分に完全に身を任せて、あられもない姿をさらけ出してくれている彼に何だか別の感情を抱き始めているような気がするのだ。 パートナーのポケモンと一線を越えてしまったトレーナーは案外少なくないとの噂を聞く。お互いのことを良く知っていて信頼関係が強いポケモンとならば猶更のこと。このままルトラとこの関係を続けていたら、ひょっとすると。 「さ、そろそろ立てるでしょ。エプロン外して、体拭かないと」 トレーナーとパートナー。下手ないざござを避けるためにはある程度の距離はとっておくべきなのだろうけれど。どうも、最近はその自信がなくなりつつある。 じわじわと浮かび上がってきた自分とルトラへの疑念を振り払うかのように、カミアは彼に呼び掛ける。そろそろルトラも射精後のふわふわした状態から復帰している頃だろう。 はいよとやる気のない返事と共に、ルトラは椅子から床の上へのそりと。飛び乗ったときのような勢いはない。降り立った足元に垂れてくる生臭い体液が射精の激しさを物語っていた。 床はフローリングなので問題ないし、濡れタオルはあらかじめ用意していた。段々とルトラの後処理の手際が良くなってきていることにも疑問を感じてきてしまう。 「ん、どうかしたか、カミア?」 「何でもないわ。ほら、エプロン外すからじっとしてて」 こっちの気を知ってか知らずか。当のルトラは暢気なものだ。むしろ、それくらいで居てくれた方がカミアも気が楽だ。様々な水気でべとべとになってルトラに張り付いていたエプロンを、カミアは外しに掛かったのだった。 おしまい ---- ・あとがき フローゼルはとってもえっちでかわいいのでおっぱいをひたすらいじいじするしょうせつをかきました。 こかんからちんちんらしきものがはえていてもかわいいからもんだいないですね。みんな濡れ透けエプロンの背徳感に気づこう。 以下、コメント返し。 >どんどんと道を踏み外していきそうなルトラ君と、一緒に沼に嵌まりそうなカミアさん。 短いながらも物語としてしっかりまとまっていたと思います。願わくば一線越えた先が読みたい……。 (2020/05/25(月) 22:53)の方 いよいよ我慢できなくなってしまったルトラが半ば強引にカミアを……なんてネタも無きにしも非ずだったり。トレーナーとポケモンの爛れた関係というのは書いていてぞくぞくしますね。 >布に覆ってのプレイという、今回の作品群の中では割かしシンプルであるがゆえにストレートにエロスでした。作者さんも普段は後処理を考えて布に出しているのでしょうかと勘繰ってしまいました。 (2020/05/30(土) 17:56)の方 隠すことでかえって余計にえっちに見えてしまうという普段全裸なポケモンでは割とありがちなネタだったかもしれません。布に出すと洗濯がとんでもなく大変になりそうなのでやってないです( 皆様、投票ありがとうございました。 【原稿用紙(20×20行)】18.4(枚) 【総文字数】6445(字) 【行数】105(行) 【台詞:地の文】8:91(%)|520:5925(字) 【漢字:かな:カナ:他】35:62:8:-5(%)|2288:3997:540:-380(字) ---- 何かあればお気軽にどうぞ #pcomment(絹漉のコメントログ,10,)