――by [[カケル]] ---- 依頼された仕事を何でもこなす…。 通称「何でも屋」 俺は高校卒業後、すぐにそこへ就職した。地元にある何でも屋だったからかな…すんなりと入れた。 友達のほとんどが大学へと進学する中で俺だけが進学しなかったんだ。 寂しい思いはあるけど、元々勉強が嫌いな俺にとっては就職するのは良い選択だと思う。 それに、何でも屋は前から興味があった仕事だったしポケモンとも深く親しめる。俺にはぴったりだ。 入った当時は、色々と大変だった。何でも屋にある俺用の個室へ荷物を運んだり、制服を採寸したり色々な手続きをしたり…。 でも、これから何でも屋で働けることを考えると、全然苦にならなかった。 新しい生活が、俺を待っている気がして…。 最初は掃除やら電話の応答やら食料調達などといった仕事らしい仕事はさせて貰えなかった。 その時に出来た友達は色々と愚痴ってはいるものの俺より人一倍働いていた。 俺だって負けないくらい働いたさ、どんなことだろうと俺にとって全てが新鮮だったから――…。 ―何でも屋に勤め始めて、一ヶ月くらい経ったある日のこと。 その日は俺達新米だけは休みの日だった。久しぶりの休みということで、息抜きに出掛けようとしたんだけど…外は生憎の雨。 友達誘ってみたんだけど、やっぱり雨が降っているから嫌だってさ。結局、俺一人・・・。 まぁ、それでも俺は愛用の傘を手に外へ出た。久しぶりの私服は何とも着心地が良くて、足取りもいつもより軽く感じたな。 …水溜まりに入って靴がずぶ濡れになったけどね。 仕事中にはゆっくり街の中なんて見渡せ無いから、今のうちにゆっくりと見ておこう――…。 ―いやぁ、買った買った。 前の日は初めての給料日だったから、好きなものが買えてめっちゃ嬉しい。 でも、まだ外は雨が降っていた。この様子だと、今日一日降ってるな。 店を出て、近道がてらに人通りの少ない裏通りを通ることにした俺は、袋を抱えて歩き出したんだ。 突き刺さるようにアスファルトに降る雨が、弾けて雫となった。 「・・・ねぇ」 ふと、そう呼ばれた気がして・・・何気に足を止めた。 耳を澄ましても雨がアスファルトを叩く音、それしか聞こえなかった。 こういうのは俺は苦手なのに・・・まったく誰だよ。 その一瞬は、俺は単なる悪戯だと思っていた。 「ねぇってば・・・」 その声を聞くまで・・・・。 雨なのに・・・暖かい今日、裏通りに立つ俺は傘を手放して後ろを振り返る。 「僕に・・・名前をつけて・・・」 ひとつの小さいシルエット、雨でずぶ濡れで茶色いその体が小刻みに震えている。 まんまるの綺麗な黒い瞳は、俺だけを視界に入れていた。 言葉だけでなくて、全身を使って必死に伝えようとしているように俺は見えた。 俺も・・・その小さな訪問者を視界の真ん中で捉えている。 まるで操られているかのように・・・。 まるで運命の出会いのように・・・。 実際は、そう言ったほうが正しいのかもな。 ―忘れもしない、この日は・・・。 ―俺と「あいつ」が出会った・・・特別な・・・雨の日。 ―その日は本当に・・・・一日中雨だった。 ---- IP:126.111.48.199 TIME:"2012-09-12 (水) 08:22:24" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%B5%86-%E3%82%AD%E3%82%BA%E3%83%8A-%E3%80%80story.0%E2%80%95prologue%E2%80%95" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"