作者:[[DIRI]] **終焉にて運命は終末する [#cdb05ac4] 本当に、本当に長い道を僕はたどってきた。僕は運命に翻弄され、僕は運命に抗った。けれど結局、僕は運命にされるがままで……。けれど僕は、運命に抗い続ける。向かう先は結局、一番愛したあの人の所。けれど僕は二番目に愛した妻のために戦い続けていく。僕はどんな苦しみだって堪えてきた。どんな痛みにだって耐えてきた。運命に抗い続けて、僕がどんな酷い目に遭おうとも、僕は抗う事をやめない。なぜなら僕は、抗うために生きているから。抗う事が今の僕の全てだった。抗って、抗って、抗い続けて、僕は平和を作り出さなければいけない。僕は、アズサの、ジャックのために平和を作らなければならない。せめて、せめて彼等が平和に生きていけるだけの、小さな平和で良いから……。 「さて……もうここは必要ない。だからここは消去する」 こんばんは、カルマン・アーヴァイン・ローゼンバーグです。多分今午前四時ぐらいでしょうかね。眠いです。ただいまとある島にてとあるイーブイと一戦交える直前です。皆さん核抑止という言葉をご存じでしょうか? 核兵器はそれこそバカみたいに大量の人を殺しますし、そのあと汚染を残しますよね。だからそんなバカみたいな威力のもの一つの所しか持ってなかったらその国が世界の王様になっちゃいますよね。だから様々な国、と言っても数えられる程ですが、そう言う所が核を保有しているんです。そうすると、お互い核兵器を使えなくなります。何でかって言うとやっぱりそれは相手も核を持ってるから、ですよね。やられっぱなしは気分が悪いから、撃ち込まれたなら撃ち返したくもなりますよ。そうすると、相手もこっちも被害甚大、国がヤバいぜ! ってなります。核が発射されてからレーダーに映り、どこから発射されたのか分かります。だから的確にそこに撃ち返してやればいい。発射されたらもう終わりですね、撃ち落とすにしても絶対撃ち落とせる保証無いですしね。でもこういう意見もあるわけです。「核ミサイル喰らいやがれ……!」と数千数万の命をボタンをポチッとなするだけで奪うという相当なプレッシャーを押しのけA国が核ミサイルをB国に向けて発射。そうすると、やっぱりB国は報復の核ミサイルを核爆発の前に撃たなきゃならないわけです。でもしかし、「報復は必要だ、でも私がボタンを押すだけで数万人のA国の国民達が犠牲になってしまう……」とかなってきたらどうする? 優しい人なんでしょうね、その人は。でももう向こうは撃っちゃってんだからそりゃもう一方的な壊滅ですよね。つまり、かなりの精神力を持つ人じゃないとのっけの攻撃でも攻撃されたときの報復でも核ミサイルの発射は出来ないんです。普通の人は人一人殺しただけでガクブル状態になるのに数万となればねぇ? まぁ、撃ったら報復してくるかもしれないし、報復してこないかもしれない。言っちゃえば、机上の空論って奴ですね、誰もやった事無いですし。やったらえらい事ですしね。 それをやろうとしてるのが僕らです。 核は持ってる、だけど僕らは国家じゃない、だからレーダーに映らずに核を発射しなきゃいけない。だから僕はここにあったレールガンだったっけか、それを回収したわけです。数百ぐらいなら殺してもどうとも思わないのが戦争です。僕らは平和を求めて戦争を始めたわけです。 僕が今所属してるのはパラデイソス・ト・エクソーと言う組織。ここのリーダーの意志は僕の意志と一致した。だから僕はここにいた。 「それまでの間……僕を楽しませてくれ!」 僕はただ、平和を作るための一つの駒。前いた組織でも僕は駒だったけれど、ただ殺すだけじゃなく、僕は僕の意志が持てた。 「ちっ……」 白い体毛のイーブイはブースターに進化する。進化したあとも、彼は白いままだった。その姿は以前に見た事がある。海上のプラントで、あの時のクライアントと同じにおいをさせていた。 「全力で来なよ?」 僕は壊れた兵器の上へ飛び上がった。さすがに十数メートルある所へ一度で上るのは無理があるので何度か足場を替えながら。 「さあ、行くよ!」 僕はバトルナイフを抜いて一気に飛び降りた。この建物内の周囲の地形はある程度把握した。瓦礫が積もってる場所に隠れられるだろうな……。あのイーブイ……ブースターか、あいつに隠れられると厄介だから気を付けないと。 僕は着地すると同時に飛び出してブースターに斬りかかる。ブースターは横に跳びつつアサルトライフルで僕を撃つ。腕に当たるけど、大した傷じゃない。僕はこの程度じゃどうにもならない。 「効かないよ、その程度?」 「まだまだ!」 まあ、ぶっちゃけ痛いもんは痛いんですが……。今度は的確に胴体を狙ってくるブースター。実際内蔵ぐちゃぐちゃです。治るんですけど。盲管銃創ってわかるかな? 弾が貫通しないで体内に残っちゃう奴。あれで弾が身体の中残っちゃうと摘出しないでそのまま治癒するから無理矢理排出しないといけなくて口から出すんだよね、べぇって。鉛玉不味いです。あれはいただけない。 さてさて、やられっぱなしもどうかと思うので反撃しましょう。飛びかかって、斬る! かわされます。大振りすぎたね。また撃たれる。 「ぐはっ!」 ヘッドショット! さすがにそれは耐えられません。一乙です。そして例のごとく生き返るんですね。 「僕の体内のナノマシンは急速に傷を再生する……。その程度じゃ死なない」 「くそ! &ruby(アンデッド){不死身};め!」 そんなののしらなくても。好きでなったんじゃないやい。 「こいつならどうだ!!」 「ちょっ」 RPG-7とかどっから出したんだよ。あれ弾道不安定すぎて避けれないんだけど。それでまぁ、撃たれたんですけど、思いっきり横かすめていきました。久々にビビったわ。大方対人信管に換えられてるはず、RPGは対戦車兵器だからね、元々。爆風が僕の体毛を揺らす。これは逃げたい。と言うわけで、瓦礫の上に飛び上がる。弾頭の再装填には時間がかかるはず、その間に攻撃する。投げナイフ五連投! 当たらず。惜しい……。 「動くな!」 足下で爆発が起きて、僕は吹き飛ばされた。二乙目。 「ああぁぁ……」 爆発系統は喰らったときが気持ち悪いから嫌なんだよねぇ……。 「フンッ!」 「ぅおっ!?」 背後に回られていたようで、羽交い締めにされました。この体勢じゃ力で無理矢理放れるのは無理そうなので……。 ザシュッ 首をナイフで掻き斬られました。 無論治るわけで……。 「体内にナノマシンがある限り、僕は何度だって復活する……」 「何をしたら死ぬんだ!?」 あいどんとのうですよ。それ知ってたら大分前に死んでるよ。 「オウム! 何か良い手はないのか!?」 鳥じゃないです。あのブースターの仲間みたいですね。ナノマシンの体内無線で話している様子。 「……そうか、その手があった! 試してみる!」 「どんな手を思いついたか知らないけど、僕には勝てないよ」 殺せるもんなら殺してみろ、って事だね。 まぁ、やられるにしても無抵抗にやられるって事はない。 「もう良い……僕はもう十分だよ。そろそろ死んでくれない?」 僕は黒い炎を纏った。 「死ね!!」 炎を纏ったナイフを投げる。そのナイフは避けようと彼を追尾する。 「ぐっ」 ヒット。急所には当たらなかったか……。 彼は軽機関銃に持ち替え、僕に向かって乱射してくる。 「おっと」 僕はそれをかわしていく。彼の筋肉も変わってるけど、避けれる事は避けれる。 ブースターは今度はハンドガンに持ち替え僕に向かってきた。片手にはナイフを添えて。僕と格闘でやり合うつもりなの? 無謀だねぇ……。僕はブースターに斬りかかる。それはかわされ、また羽交い締めにされそうになる。そんな事はさせない、僕は肘打ちを喰らわせて無理矢理に抜け出した。更に追撃で回し蹴りを一発。普通の奴なら死んでもおかしくないのに、この白いブースターはダメージを受けただけで死にもしない。 殺してやる、そう言う攻撃的な思いは僕にはなかった。ただ僕の邪魔をするから、だから消えて欲しいだけ。殺さなくてもいなくなってくれるなら僕はそれで良い。けど彼は、僕達を阻止するために全力で、各地の戦場をたった一匹で巡ってきた。彼は諦めないだろう。だから僕は、彼を全力で排除する。 「喰らえ!!」 「っと!」 投げたナイフはかわされ、銃弾が頬をかすめる。実力はお互い極限だと思う。純粋にこの戦いは楽しめるものだと思った。 僕がナイフを突き出した瞬間、その腕は受け流され、引き寄せられた僕は体勢を崩し、その隙に彼は僕の背後に回る。もう反応したときには遅かった。僕は足払いを掛けられ、完全に羽交い締めにさせられる。また首を掻き斬る気か、と思った瞬間、僕の首には針が突き刺さっていた。 「ぐっ!?」 「よし!」 気持ち悪い感触と共に血管に謎の液体が流れ込んでくるのが分かった。それは痛みと言うよりもただ身体の芯を急激に冷やしていくような、そんな感触だった。 「くっ……一体何を……!?」 「これでお前も、ただの&ruby(デッド){死者};だ!」 彼が手にしている注射器は、ある劇薬が入っていた。その劇薬は“''ナノマシンの活動を抑制する効力''”を持っている。つまりあれを打たれた僕は、ナノマシンの活動が低下している。僕の大きな体に、あれっぽっちの量だからどの位の効き目があるのかは分からない。けれどそれは確実に僕にとって致命傷に近かった。 ……それももう、良いかもしれない。頭の端でそう思った。 「……面白いね……ただの死者を殺せるかな?」 僕はもう、生きすぎたのかもしれない。僕はもう、死ぬべきなのかもしれない。彼になら殺されても本望だった。 次の瞬間、天井の一部が抜け落ち、そこから数機の無人戦闘機が落下してくる。 『爆発まで、十秒前』 「&ruby(Emily){晴空};!?」 「……終わったね」 あの無人戦闘機は自爆型。爆弾を搭載しているタイプは晴空と呼ばれる。……僕は死なない、そうみんな思ってる。だから僕ごとここを吹き飛ばす気なんだろうね。僕はここで終わる。最期くらい眺めの良い場所が良いよね、こんな所でも。僕は飛び上がり、壊れた兵器の上へと登る。残り時間は数秒……。 シャキンッ!! 鋭い金属音。目の前を抜ける白い閃光。晴空は崩れ落ちた。起爆させるものがなければ、爆弾は爆発しない。 「ブラン、待たせたね」 白いブースターのそばに着地したのは、白い鎧を纏ったサーナイト。海上のプラントで僕と戦ったあのサーナイトだ。彼女の手にはあの時と同じ剣が握られている。 「ユーキ! もう大丈夫なのか?」 「喜羅からのお許しが出たからね」 サーナイトはカラカラと笑った。まぁ、何日か前会ったときこれでもかってぐらい刺しまくりましたからね。 第二波。また数体の晴空が降りてくる。でもそれらは空中に巻き上げられ、次の瞬間真っ二つにされていた。巻き上げたそれはサーナイトの念力じゃなく、風だった。強風が晴空の機体を宙に浮かせた。 「遅ればせながら、助太刀に参りました。ブラン殿」 「白夜!」 風に乗り現われた狐はいつか見たロコンのなり損ないに似ていた。それは刀を手にしている。……もうなんでもありかぁ……。僕ももうはっちゃけようかな。 「やぁ、死ねないサーナイト! どうだい? キミも死にたいだろ?」 僕は見下ろしながら言った。サーナイトは僕を睨み付け、答えた。 「悪いけど、私はまだ死ぬわけにはいかない」 「だったら! だったら僕を殺してくれ!」 これは本音でもあって、強がりでもあって。でも何となく疲れたって言うのは事実であって……。 第三波、晴空の侵入ルートが増えた。 「あいつは私がやる。晴空を頼むよ」 「わかった!」 「私も助力致します!」 サーナイトが僕のいる場所へ飛び上がってくる。彼女の姿は騎士と言うより、侍か忍者のような。 僕は彼女が構える前にナイフを投げつけた。でもそれは剣によって弾かれる。リーチの長い剣。いくらでも使えて届かない場所からでも攻撃出来る投げナイフ。お互いに違う武器。けれどお互い持っている武器がある。 「待って。正々堂々……ナイフ、ナイフで勝負しよう」 その僕の言葉に、サーナイトは一瞬だけためらった。けれど彼女もその気になって、剣を鞘に収めて置いた。そして僕達はナイフを抜いた。ここからは生きるか死ぬかを決める真剣勝負だ。 火花を散らす剣戟が繰り広げられる。一進一退の戦い。繰り出されるナイフを弾き、かわし、反撃していく。それはお互い同じ事で、お互い傷だらけだった。僕の傷はやっぱり治る事がなかった。ナノマシンは活動していない。それならば本当に死ぬ……。その状況に追い込まれて初めて、死にたくないと感じた。今まで死にたくて死にたくて仕方がなかったけれど、やっぱり死ぬのが怖かった。僕にとって、死ぬ事が運命だ。そう言っていたけれど、運命を受け入れるのが怖かった。今まで僕は運命に抗い続けてきたんだから。 その時、サーナイトが突き出したナイフが僕の胸に突き刺さった。痛みは無論の事感じた。けれどそれと同時に感じたのが、死ぬと言う事に直面した恐怖だった。僕は思わず、サーナイトを突き飛ばし、禁じていた投げナイフを投げつけた。そんな事を予想していないサーナイトの腹部にそれが突き刺さる。怯んだサーナイトの手からナイフを剥ぎ取り、それを彼女の胸に突き立てた。 この程度じゃ、彼女は死なない。お返しとばかりに僕の頬に後ろ回し蹴りを喰らわせてくる。彼女を殺すには……彼女の剣だ。それを拾おうとしてもおそらく妨害されるだろう。それなら彼女の手を塞げば良い。僕は身を翻して回り込むと、彼女の腕を投げナイフで貫き、背中に固定させた。あの体勢じゃまともな行動が出来ないはず。僕は置いてある剣を抜き、彼女を斬りつけようとした。その瞬間だった。 サーナイトの身体に突き刺さっていたナイフが抜け、僕の身体に突き刺さった。僕は思わず、剣を取り落としてしまう。サーナイトはそれを拾い上げた。……僕はもう限界だった。血を流しすぎていた。体を動かす事自体がかなりきつい。もう何をする事も出来ない。目の前には剣を持ったサーナイト……。 「……さぁ……殺せ……。''殺してみろ!!''」 彼女の振るった剣は僕の身体を一閃していた。 目の前が真っ赤だった。身体が冷えていくのが分かる。身体はそこら中傷だらけで、もうただ立っているのも不可能に近かった。 「ハハ……ハハハ……ハハハハハハ……」 ここまで来ると、もう諦めがついてしまう。僕は笑った。それが今できる限界だった。足下がおぼつかない。僕はゆっくりと後ろによろめき下がっていく。僕は足を踏み外し、十数メートル下の地面へと落下し、地面に叩き付けられた。 傷が治らない。だから傷口からは血が流れ続けている。致死量となる分の血液はもう抜けてしまっている。まだ僕が生きているのは気力と言うものだろう。 「まだ生きてるのか」 「もう虫の息です。何も出来ないでしょう」 僕の顔を覗き込む二つの顔が見える。白い二つの顔。 「とどめを刺そう、ブラン。こいつには今までさんざんにやられてきたけど、復讐なんてくだらない。楽にしてやろうよ」 「……ああ」 僕の隣に飛び降りてきたサーナイトの言葉で白いブースターは僕の額へ銃口を向けた。 『やめろ!! やめてくれ!!』 突然その声が彼等の行動を遮った。そしてその声を発したものが現われる。ステルス迷彩を施した小型のホバークラフトが現われる。そのホバークラフトに付けられているディスプレイが映し出しているものを見たとき、僕は目を見開いた。 「誰だ?」 「最近保護したキュウコンだよ、子連れの未亡人みたいだけど……」 僕は必死の力を振るい、動かない身体を動かした。それでも這っていく事しかできない。這っていく事しかできないけど、僕はその人の下に這っていく。 「! 動くな!」 「こいつ……!」 ブースターとサーナイトは武器を構える。けれど僕はそんなもの眼中になかった。 「あ……アズサ……」 「?」 僕が必死の力を向けているのがディスプレイの先にいるキュウコンだと悟ったのか、彼等は武器を下ろした。 ディスプレイの前へたどり着いた僕はそこに映るキュウコンをかすむ目で見つめた。そのキュウコンは僕の愛妻、アズサだった。 『旦那様……!』 「アズサ……」 『……酷い格好、そんな格好じゃ一緒にいれないじゃないか』 「そう……だね……」 震えるアズサの声に答える僕の声はそれ以上に震えていた。周りの人達には悪いけど、今だけは僕達だけの時間を過ごしたかった。 「ごめんね……僕もう死んじゃうみたい……」 『……旦那様っていっつもそうだ。私達のために体を張って何かするかと思ったら、そのあとすぐにわがまま言ってさ……』 「ハンターから追われてたときも……」 『私とジャックを置いて出ていったときも、だ』 「……僕は……平和を創りたかった……」 僕の発する言葉の大きさは秒単位で小さくなっていく。どんどんと、今にも消え入りそうな程に。 「僕は怪物だ……だからみんな僕を恐れた……僕を殺そうとした……。キミも、ジャックも巻添えを食いそうになった……。そんなの僕は……僕は嫌だ……怪物は僕だけなのに……」 『……旦那様……』 「……僕はここで死ぬんだ……。僕は平和を創れなかった……」 『ううん、僕達は平和だったよ、お父さん』 「……ジャック……」 ディスプレイに映し出されたのは僕の血を分けたロコン。 『……お父さんが間違えたんだよ。僕達はお父さんがいたときも平和だったのに』 「……そっか……」 最後に会ったときよりも成長した彼は、僕のこんな惨めな姿を見ても動じなかった。……ディスプレイ越しじゃ、彼の鮮明な表情までは分からないから。 「ジャック……お父さんとの約束……ちゃんと守ってくれた……?」 『うん……。ちゃんと守ったよ』 「そう……。じゃあ……これからもその約束……ちゃんと守ってね……。お父さん……もう……」 そこまで言ったとき、遂にジャックは表情を歪めた。声に出さずに、ただ涙をこぼしている。 「ジャック……良い子でね……」 『……うん……』 「アズサ……」 『何? 旦那様』 「……愛してるよ……二番目に……」 その言葉は僕とアズサの絆の印。僕と彼女の愛の言葉。 「……出来るだけ……遅く僕に追いついてね……」 『……うん』 こうしている間にも、世界は動いている。僕らの時間は過ぎ去っていってしまった。 「……話は済んだか?」 「……八割方……ね……。でももう……僕に時間がない……」 ブースターに出来るだけ苦笑しているように返し、僕は息を吐いた。その時、目の前に白い狐の顔が現われた。 「あなたの意志は、我々が継ぎます故。……父君の眠るこの場所で、あなたも死ぬのですよ……」 「……ありがと……。さぁ、若人諸君……僕の屍を越えていけ……」 「本質的には……良い奴だっただろうに……。姉さんも、不死黒焔も、改造されたらこうなっちゃうなんて……」 サーナイトの言葉を聞き、僕は言った。 「僕は……不死黒焔なんかじゃない……」 「?」 僕は最期の力を振り絞り、僕の、僕という存在を世界中に響かせたいかのごとく叫んだ。 「“''僕の名は、カルマン・アーヴァイン・ローゼンバーグ!! 怪物と呼ばれた、妻と子を持つ一匹のウインディだ!!''”」 その言葉を言い終えると、僕は宙を仰いだ。埃やゴミが舞っている。抜けた天井からも空なんて見えはしなかった。けれど、僕が見ていたかったのはそれよりも更に先の部分。 “これからそっちに行くから、待っててね。” そうなんと無しに思ったとき、僕の意識は途絶えた。そしてそれ以降、僕の身体は動く事はなかった。 ---- 暗い。 暗い。 暗い……。 寒い。 寒い。 寒い……。 目が回る。 吐き気がする。 体に力が入らない。 ……って僕死んだろ、意識あんのかい。 おっかしいな~、真っ暗だけど意識あるってどういうこったい。 あ、目瞑ってんのか。死んだのに体あんのね。 力が入らないからなんだかめっちゃ時間かかった。時間とか何かよくわかんね。 十分ぐらいかけて目を開ける。ちなみに体内時計。 目を開けると真っ白な場所。 何も無い真っ白な場所。 見渡す限り真っ白。 ……解決策も何も見つからないので体を見てみる。 ……足無ぇし。やっべ、とんだゴースト。 色も半透明です、本当にありがとうございました。 ……それ以外は特に変わりなし。 ナイフとか身に着けてたものは無くなってるけど。 まったく、いつまでこうしてるんだろう。 この身体は浮かんでるだけでまともに動かせない。 このまま……僕は冥界にもいけないのかな……。 「そこのウインディ、こっちこっち」 空耳、アワー。深夜見る昼の顔。 って、そんな訳あるかい! 「誰?」 お、しゃべれた。意外と色々出来んじゃん。 「こっち来て~、冥界行きはこっちだから」 ふとそっちを向くと、キュウコンでした。 それは見覚えのある人でした。 「……コウヤ?」 「そうだけど?」 マジかい、再会めっちゃ早いやん。 「……やっと会えたね、コウヤ……」 「そんなの良いから、早くこっち来て。お仕事できないとクビになっちゃうんだから」 冷たいなぁ……。あれか? 怒ってんのか? そうだね、生前子供まで儲けましたからね。僕は既婚者です。 僕の一番愛してる人はどこか不機嫌そうで。怒ってる人とはあんまり関わりたくない。 「早く来てって言ってるでしょ!」 「あ、ゴメン……」 そうは言われても、まったく動けないわけで……。足無いしね。てか地面がそもそも無いんで。そんなこんなしてるうちに、痺れを切らしたコウヤが手伝ってくれました。彼女が僕の体に触れたとき、フフフ……不覚にもドキッとしましてね……。この場で襲おうかとか考えました。でも、僕は思ったわけです。死んでんのに出来るのか? って。 「まったく、今日は仕事が忙しいんだからあなただけに手を焼いてられないんだけど」 「すいません……」 「はい、そこに立って」 「立ってるって表現は正しいんでしょうか」 「うるさい」 怒られました。 「冥界行き。行ったら足付くから大丈夫でしょ? 行ったら指示があるから従って」 「わかった。……あの、コウヤ?」 「何?」 彼女の反応を見てるとすごい不安なんです。 「……僕のこと……覚えてるよね……?」 その言葉を聞いた彼女はきょとんとした表情をした。 「……逆に聞くけど、何であたしがあなたのこと覚えてないと思うの?」 「だって、コウヤ素っ気無さ過ぎるから……」 「仕事中だから。嫌でしょー、一緒に連れて行かれる人と番人がイチャついてたら。今はあなた一匹だけだけど」 うはっ、タイミング悪っ。他の人いたらこんな心配しなかっただろうに。 「とりあえず行って。別の場所に行かなきゃならないの」 「わかった。じゃあまた」 「会えたらね」 最後の言葉不穏すぎるんですが。 とりあえず、言われたとおり冥界にやってきました。なんかね、ワープ的な。ふわわーんて。フワンテか。なんか冥界は普通な感じ。いやまぁ、何が普通って、普通に町があると言いますか。現世と違うのは全体的に薄ぼんやりしてることでしょうか。でもここにいる人もみんな薄ぼんやりしてるんでモーマンタイ。町中でどうすりゃ良いんでしょうかね。コウヤは忙しそうだったし……。 「あ、今日死んだ人ですよね?」 「内容を&ruby(そしゃく){咀嚼};してみると吹いた」 通常こんな内容出てこないですもんねー。 僕に声をかけてきたのはオオタチ。ウホッ、いい雄。そんな気は無いですがね。今言いたくなったんです。 「僕に付いて来て下さい。とりあえず冥界に来た人は仕事を決めないといけないんで」 「え、ニートとかダメっすか」 「働かないとすぐ現世に転生しなきゃいけないんですよ。こっちは割りと平和で環境も良いからずっといたいって人もいるぐらいで。あ、簡単に言えば、死んだ後の第二の人生って感じです」 「すっげー矛盾してる。けど嫌いじゃない」 死んだ後に第二の人生とか意味わかんないです。でも死んだ後意識ある時点で意味わかんないよね。まあそれはよしとしよう。 連れて行かれた先で、サーナイトが何かPCをカチャカチャやってました。 「カルマン・アーヴァイン・ローゼンバーグ。やっと死にましたか」 「無駄に生きてすいませんでした」 「まったくですね。最初死んだと思ってあなた用の仕事を割り振っていたのに何で何回殺されても死なないんですか。迷惑もはなはだしいです」 「僕に文句言わないでください」 「文句言う相手があなたしかいないんです。黙って私の文句聞いてください」 何この仕打ち。その後十分ぐらい文句言われ続けました。いじめだろこれ。 「さて、文句はまたいつか続きを話すとして、仕事をあなたに与えなきゃならないんですよ。それが私の仕事なので」 「てか冥界に来て早々慣れない環境で戸惑ってる相手にメンタルダメージ与えるのってどうなんですか」 「気のせいです」 お前しばくぞ。 「あなたの仕事ですが……当初は冥界の番人、ホウエン地方が調度その頃空いていたのでそこを任せようと思っていたんですが、あなたが死ななかったせいで今は別の人が番人をやっています。それでは……」 サーナイトがPCを操作する。冥界にもあるんだなそういうの。僕は殺し屋時代もっぱらPCで動画とアニメ三昧でした。徹夜で親父にもぶたれた事無いけど上司にはぶたれた事あるパイロットが操る二足歩行ロボットのアニメは全部見ました。あぁ、ララァ、僕には帰れる場所がある、ってか。光回線すげーよ、地下でもちゃんとネット出来んだもん。 「それでは、新人格創造の仕事でどうでしょうか? あなたにぴったりだと思うんですが」 「kwsk」 「まずは冥界の世界観から教えなければなりませんね、めんどくさい」 お前もうちょっと真面目に仕事しろよ。 「冥界は死後の世界、現世ではそう一括りに呼ばれています。まあ、天国と地獄、と言う考え方もありますが、それは冥界の内のひとつの部分に過ぎません。冥界にはいくつかの種類の人がいます。まず死人、あなたや私がそれに当たります。次に天使。現世に直接行けるのは天使だけです。そして神。彼らは冥界を総ている人のことです。現世で言う政治家ですね」 「あのー、悪魔とかは?」 「それはただ単に性格が悪い天使や死人です」 しょぼい。 「天使は要するに、冥界の番人であったり、お告げをしたりする仕事をしている死人がそう呼ばれています。しかし神は神として生まれているので誰かが換わることはほとんどありません。進化の神は例外として現世の者が神として君臨していますが、彼も冥界にいます」 「へ~」 「それでですね……。冥界はただ死人が集められる場所ではないんです。ここには転生するための人格が集められる、だから現世の平均寿命が延びていくと新しく現世に生まれる人ばかりになり、冥界の人口が減少していくんです。それは仕事をする人が減っていくのでよろしくない。だから新しい人格を冥界で補充していく必要があります。それで新しい人格を創造する必要があるわけですよ」 「なんとなくわかりました。で、それどうやるんですか?」 「早い話、現世と変わりません」 おい。 「意味わかんないっす」 「要するに、現世では肉体的に産まれ、冥界では精神的に生まれるんです」 「kwsk」 「頭悪いですね」 お前は口悪いよ。 「……てか、その仕事内容って詳しくどんな感じ?」 「そうですねぇ……避妊を一切しない性風俗ですかね」 「ちょ、待てーい!」 突っ込みどころは色々あるけども。 「僕にぴったりってこういうことか! それじゃ現世にいた頃の僕の黒歴史もう一度繰り返せと!?」 「あなたの……」 サーナイトはなんか言おうとして止まりました。 「……あなたは顔が良いですから、人気も高いと思いますよ」 「経営の人みたいな口調で言うな。その仕事に付いたら僕どのくらいのペースで……」 「一日最低十回は覚悟を」 「キミが僕の立場だったらどうする」 「丁重にお断りします」 「ですよね。僕もだよ!」 一日十回とか殺す気としか思えん。僕これでも三十路だぜ? 一番ハッスルしてた頃でも十回とか死ねたのに。最高は……アズサと十一回かな、あれは何だっけ、イアの実かなんか、興奮作用がある木の実を食べてしまったため、もー、辛抱たまらん感じで。ちなみに僕はフィーバーしてましたがアズサは七回目ぐらいで意識無かったです。翌朝がっつり叱られました。今思えばあれのせいでジャックが出来たのかもしれない。 「てか、冥界って見た感じ現世とあんまり変わりないじゃん。結婚みたいなのもあるんじゃないの?」 「ありますね。現に私も冥界で結婚しました」 「だったらそういう人がハッスルすれば良いんじゃないの!? 何でそんな役職を設ける必要があるのさ!?」 「あのですね……。現世には冥界の人格が転生することによって初めて新しい命として現世に現れることが出来ます。その転生する人の才能というものは良ければ良いほど好ましいです。冥界にとっても後々の仕事が楽になりますから。そのために、転生前、冥界で教育を行うんです。新しい人格であればゼロからですからその分お金がかかります」 「金あんの!?」 「あなたが言ったとおり、冥界はあまり現世と変わらないので。私も子供がいますが、それはまぁお金がかかるんですよ。生活費は自分と夫の分だけで冥界では自ずと共働きになりますから大して苦しくありませんでしたが、子供が一人増えれば所得が無いのに生活費が増えてさらに子供を学校にやるお金がかかりますし、その他習い事にもお金がかかり、正直生活苦しいです」 「そりゃ大変そうですね。ざまぁ」 デコピンされました。地味に痛いお。 「良いじゃないですか、あなたは散々……」 「あーあーあー!! 聞こえない聞こえないぃぃぃ!!!」 「……ま、本当なら人気の職ですけどね。この職業は男性専用ですから。冥界でも結婚はしたくないけど子供は欲しいという女性が多いので。冥界でもシングルマザーが問題になっているんです」 「種馬みたいに言わないでください」 「良いじゃないですか? 自分の子供は出来るけど一切面倒見なくて良いんですから?」 「丸投げ? いや僕がどうこう言えることではないけどさ……」 今まで丸投げでしたものね。 「とにかく、僕その仕事嫌なんで別の仕事紹介してください」 「ちっ」 「あれ、今舌打ちした? 舌打ちしたよね?」 「気のせいです。えーと……いくつか空いている仕事がありますが、リストにしておきます。自分で良いなと思うものを選んでください。冥界での生活に慣れるまで二週間猶予がありますので。その間にさっさと決めて私に伝えてください。出来るだけ早く。私はそれを登録する必要があるので。めんどくさい」 「めんどくさいって言った? 今確実にめんどくさいって言ったよね?」 「言ってませんよ、しつこいな」 神様、とりあえずこの受付嬢に真面目に仕事するように言ってください。てか嫌いすぎだろ僕のこと。 そのサーナイトは仕事のリストを印刷して僕に渡してくれました。AODが無いんで手で受け取ろうとしたら怪訝な顔で見られました。うはっ、うっかりしちゃってた、てへりんこ。何か首から提げる筒みたいなのにリストを入れてもらったんで、後で見てみることにします。 「それでは、決まったらここへまた来てください。私が不在の時もあるでしょうから、その時はどっかその辺にいる人に『マーサさんに用があるんですけど』とでも言ってください。十分ぐらいで行くので」 割とゆったり来るな……。 「……あの」 「まだいたんですか」 「いや僕キミの視界から一ミリたりと出てないけど。さっきから動いてんの口だけだけど」 「じゃあ光の速さで消えてください」 こんなに嫌われてたら僕もう生きていけない。はい、死んでますよ僕。 何とかスルーを決め込んで僕は質問してみました。 「二週間僕はどこで過ごせばいいんでしょうか」 「そうですねぇ、そういう施設もありますが、あなたが行ったらどうせトラブルが起きるでしょうし」 「僕どんだけトラブルメーカー? プゲラ」 「……ああそうだ、カルマン・アーヴァイン・ローゼンバーグ、ここを尋ねなさい」 そう言って、マーサだっけか、このサーナイトは地図をくれました。……地図が読めないなんてことは無いんだからっ、ただマーサがたるそうに殴り書きしたこの地図が見づらいだけなんだからっ! さて、誰かに道聞こう……。 そんな感じで、僕はある家の前にやってきました。うん、家は人工的です。どう見ても人間の家です、本当にありがとうございました。でもここに住んでいるのはポケモンです。僕のすごく身近な人です。マーサの地図に家主の名前が書いてあったからわかったんですが、さて、いざここまで来てみると最後の踏ん切りがつかないというか。でも僕はここで勇気を出そうと思います。だって僕はここに住んでいる人にすごく会いたいのですからぁぁ~! 深呼吸を一、二回、二秒瞑想してから僕はドアをノックした。返事は無いけど中からごそごそと音が聞こえてくる。ドアが開くまでの間、やっぱり僕は深呼吸して頭を冷やしていた。まず何て言うべきだろう。どう行動すべきだろう。結局決定意見が僕の中で出される前にドアが開いていくわけで。僕は緊張した。緊張してもう何かお腹痛い。この数秒で僕もう&ruby(いかいよう){胃潰瘍};かも。 「はい、どちらさまですか?」 そんな感じでドアの中から現れたのはウインディ。僕にとってはすごく懐かしい人。なんだか複雑すぎてよくわかんない感情がお腹の中でぐるぐる混ざって気持ち悪いけど、何とか顔に出さないように……。僕は笑顔を作って彼女に話しかけた。 「久しぶり……母さん」 そう言われたウインディは一瞬呆けて、次の一瞬で笑みを浮かべ、その次の一瞬で子供を叱り付ける親特有の表情になった。あぁ、すっごく懐かしい。 「……カルマン」 「な、何?」 「自分が今まで何をしてきたか、わかってるんでしょうね?」 母さんは顔は怒ってるけど冷静に言葉を連ねて精神的にダメージを与えていくタイプの叱り方する人なんで、ちょっと今もメンタルダメージ。 「う、うん……。悪いことは一杯してきたよ……」 「人殺し」 窘めるような一言。僕にはちょっとダメージが大きい。 「……反省はしてる。でも、後悔はしてない」 「どうして?」 母さんは理由を言わせることを常套手段としているため、僕が理由を言うまでこの問答を繰り返す。さて、僕の記憶力はいかがでしょうか。 「確かに、僕はたくさん人を殺してきた。けど、理由がちゃんとあった。歪んでても、その時は正当な理由だった。誰かを守るためって理由もあった。だから僕後悔してない。逃げる方が多分後悔してた。後悔はたくさんしてきたけど、命に代えても守りたい人がいたんだ。僕には正当な理由だったんだよ」 「後悔しないことが全て?」 「違う。僕が後悔したら、僕が後悔させたくない人にも後悔させちゃうから。だから……」 母さんはにっこりと笑った。 「強くて、優しい子。それがあなた。カルマン・アーヴァイン・ローゼンバーグ。私の息子だよ」 その言葉が胸に響いてきて、その言葉が僕の欠けてた心を埋めてくれた。母さんは僕の頭をやさしく撫でた。僕、もう三十路だよ? ……けど、二度と会えないと思った母さんだから、少しの間くらい、甘えて良いよね? 「……あの、母さん。それでさ……」 「何?」 「僕今日死んだんだよね。だからその……住む場所無いんだ。二週間の間」 母さんは僕の言いたいことを理解したのか、ちょっと思案顔。 「……ゴメンね、カルマン。あなたを家に住まわせてやるのはちょっと……」 「どうして? 僕が……」 「ううん、違うんだよ。あなたが何をやってきたかは私達にとっては関係ない。けど、そうだね……何と言うか、お隣さんがね、多分カルマンを嫌ってるだろうから」 「隣誰なの?」 「女王様、って言ったらわかるらしいけど」 どう考えてもエマです、本当にありがとうございました。多分僕が嫌いなんじゃなくて僕が嫌だと思ってると言ったんだと思います。あんな仕打ち僕にしたんですから。軽くトラウマだよあんなの。 「綺麗なレントラーで旦那さんと娘さんを早くに亡くしてて、冥界に来てから再会したらしいけど」 「……うん、誰かはわかったんでもう僕からも遠慮したいぐらいで」 もうあの仕打ちはごめんですよ。あ、旦那さんいるんだから大丈夫かな? どっちにしても勘弁願いたい。 「ゴメンね、カルマン」 「良いよ、大丈夫。いざとなったらその辺で寝るからさ」 「わがままでゴメンね。いつでも遊びに来てくれて良いからね」 「うん」 僕はその場を後にした。……あ、父さんのことがっつり忘れてた。今度遊びに来たら会おう……。 「さて、どうしますかねぇ」 ため息混じりに呟いて冥界の空を見上げる。雲のような空がいつまでも続いていて、多分星空は見えません。星でも数えながら寝ようと思ったんだけどなぁ……。 「どこにいるかと思ったら。入れ違いだったみたいだね~」 コウヤです。どうやら僕を探してたみたいです。 「コウヤ、仕事終わったの?」 「ええ。って言うか番人は交代制だから」 「そんなもんなんですか。で、えーっと、何で僕を探してたの?」 「そりゃー、ねぇ? お隣さんあれだし?」 「世界で一番女王様ですね、わかります」 「だ・か・ら、あたしの家に招待しようかなと思ったわけ。優しいでしょ」 そうですね。 「言っとくけど、それでも仕事決まるまでだからね。それからはどっかの部屋借りてそこに住んでよ?」 「え?」 「私が部屋借りてる所ホントは男子禁制」 「色々突っ込みたいけどこの際どうでも良いや」 「よし、それじゃ付いてきて~」 付いて行きますとも。……僕はこの時、この後起きてしまう辛い事実を知る由も無いのでした。僕テラ涙目でワロス。 ---- まだ続きます。期待せずにお待ち下さい…… ---- #pcomment(コメント/終焉にて運命は終末する,10)