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空の特攻隊! 悪党探検隊現る? の変更点


大分原作とは違う流れになりつつありますが、作者なりに本筋は歪めずに色々加えているところにございます。原作に思い入れのある方、オリジナル要素に不信感のある方は、バックボタンを押す事を推奨致します……。どんと来いという方は、↓より開始となります。お楽しみ頂ければ幸いです。

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「遠征?」
「そう、近々このギルドを挙げての大きな探検遠征を計画してるんだ。で、流石にギルドメンバー全員がギルドを空ける訳には行かないから、弟子内で選抜をして向かう事になってるんだよね」

 今日の朝礼が終わって、仕事に入る前にハーモに呼び止められたと思ったら、急にこんな話になったのよね。探検遠征か、そんなのもしてるんだね。

「それで、私達に相談って?」
「うん、君達ブレイブには、遠征に参加して欲しいんだよね。厳密に言うと、メンバーの引率って形で協力して欲しいって所かな」
「引率……どういう事だ?」
「うん、大規模遠征となると、流石に私だけじゃ全員の統率は難しくなるからね。何チームかに分けて目的地へ向かってもらう事になるんだけど、それのリーダーをやってもらいたいんだ」

 なるほどね。けど、それなら先輩弟子の皆の方がいいんじゃないかなーと思うんだけど。って言ったら、最近の私達の活躍ぶりからの抜擢だよ、なんてハーモからの一言を頂いたわ。
まぁ、受けた依頼はきっちりこなして、とりあえず今の所失敗した依頼は無いしね。あ、ランクもノーマルからシルバーまでさっくり上がってたり。そんなに難しい依頼も無かったしね。

「まぁ、引き受けるのはいいけど……皆納得してくれるのかな? 言って私達、まだ新参者でしょ?」
「ククッ、これでお前達より実力がある弟子が居れば文句も出るだろうが、それが居ない以上文句の出しようも無いだろ」
「それにガディは元々探検家として活躍してた経緯もあるしね。あ、アークは流石にまだリーダーは難しいだろうから、キーネと一緒のチームになってもらうけどね」
「あ、良かったぁ。今までの聞いてて、僕はどうなるんだろって思ってたよ」

 アークも一緒に働いてるんだから実力も上がってるし、やってやれない事も無いと思うけどね? まぁ、そういう事ならアークとはいつも通りのチームね。

「ふむ、そういう事なら俺も異論は無い。メンバー分けは……選抜という事は、まだ決まってないんだな」
「うん。とりあえず発表する前に君達に相談しようと思ってね。本格的に発表するのは明日の朝かな」
「なるほどね。ん? て事は、私達は選抜抜きで遠征参加って事でいいの?」
「もちろん! 今回遠征をするって決めたのも、しっかり引率をこなしてくれそうなキーネやガディが入ってくれたからだからね。ドゴやサニーも悪くはないんだけど、まだまだリーダーを任せるって言うと不安の方が大きくてね」

 ドゴは結構強いけど落ち着きが無いし、サニーも探検の基礎はしっかりしてるけど、予期せぬトラブルに直面するとキャーキャー言って混乱しちゃうみたいだからねぇ……。なんとなく、ハーモが言いたい事は分かるよ。
断る理由も無いし、私達は引き受ける事に決定。ガディは私達以外の弟子を引っ張ってもらう形になっちゃうけど、引率って事なら仕方無いよね。
何処まで行く予定なのか聞くと、それはまだプクリンと協議中みたい。ま、メンバーも決まってないんだからしょうがないか。

「それじゃあ詳細は追って知らせて行くよ。今日も仕事、頑張っておくれヨ!」
「了解了解。それじゃ、チームブレイブ出発! なんてね」
「あはは、それじゃあハーモさん、行ってきます」
「遠征か……一匹ではなかなか難しいものに参加出来るというのも、ブレイブに入った利点だな」

 ガディもなかなか乗り気だね。遠征は楽しみにしつつ、今日の仕事も頑張るとしようか。
出発とは言ったけど、まずは依頼掲示板を確認しないとね。今日は普通の依頼かお尋ね者退治か、どっちにしようかな。
今日も1階は探検隊が結構居るね。あ、掲示板を見てるポケモンも居る……ん? あれって……。

「どうしたキーネ、急に立ち止まって」
「いや、あの二匹どっかで見た事あるなーと思って」
「あれって、ドガースとズバット? ……ん? なんだろ、僕も何処かで見た事あるような……」

 アークと一緒に首を傾げちゃった。なーんかどっかで見た事ある気がするんだけどなぁ? うーん?

「ん? なんだぁテメェ等! 俺達の事ジロジロ見やがっ……て……」
「……あ」
「俺達ドクローズになんか用……かぁぁ!?」
「あ、思い出した! あの時のゴロツキ共!」

 誰かと思えば、アークと初めて会った時に絡んできたゴロツキ共じゃない! すっかり忘れてたわ!
そう言えば、元々こいつ等に騙されてここに居るんだったわね。それがまた私の前に顔を出すなんて、良い度胸してるじゃない。

「ここでなーにしてるかは知らないけど、私の前にまた顔を見せるなんて良ーい度胸してるじゃない? 騙してくれたお礼もついでにしてあげるわ、そこに直りなさい!」
「ひ、ひぃぃぃ! あ、あの時の化物リオル!? なんでこんな所に!?」
「あんた等が騙したくれたお陰でこのギルドの弟子になったのよ。言い残す事はそれで十分よね? 腐った根性叩き直してやるわ!」
「ど、どうしたんだキーネ!? いや、お尋ね者相手には大体そんなだが、相手は探検隊だぞ!?」
「いやえっとガディさん、事情を説明するとね?」

 ガディへの説明はアークに任せて、私はこのアホ二匹をぼっこぼこにしてやるとしましょうか。弟子になる切っ掛けになったとは言え、騙されたのに違いは無いからね。
躙り寄ってやったらガタガタ震え始めたわ。ま、当然よね。一度倒してるんだもの。

「ま、待て! お、俺達に手を出してみろ、アニキが黙っちゃいないぞ!」
「あ゛? まだあんた等みたいのが居る訳? だったらさっさと連れてきなさい。纏めて性根を叩き直してやるわ」
「事情は分かったが、落ち着けキーネ。相手はどうも探検隊のようだし、まずは警察隊に突き出すのがいいだろう。調べ上げてお尋ね者になったら、報酬も出るしな」
「なんか見知らぬガブリアスから死刑宣告がされてる!?」

 なるほど、そうすればボコボコにしつつ報酬も貰えると。それは美味しいわね、ちょっと手間ではあるけど。
アークと私のコンビに手も足も出なかったのに、おまけで今はガディも居る。今度は口八丁で逃がすような真似もしないし、終わりって奴よ。

「こ、これは不味い……あ、アニキ! アニキが来たぞ!」
「助かった! アニキー!」
「なんだぁお前等? 邪魔だ、退け!」
「ん!?」

 妙な臭いがしたから咄嗟に避けたけど、さっきまで私が居たところに変な色したガスが噴きかかってきたわ。何これ? しかも凄い臭い……。

「ふぎゃあ!?」
「ぐふぉ!?」
「あ、アーク!? ガディ!?」

 反応出来なかったアーク達がモロにガスを浴びちゃった。こんなの直接嗅いだら体調崩しちゃうわよ……やった奴は、スカタンクみたいね。

「退け! お前もその二匹と同じ目に遭わ……ぐほぉ!?」
「私の仲間に何してくれてる訳? 叩き潰すわよ?」
「ご、ごふ……なんだこいつ……殴られるのが見えなかった……」
「アニキダメだ! そいつが前に話した化物リオルなんだ!」
「ふぅん、あんたがこいつ等のアニキって訳ね。子分が子分ならアニキはアニキで性根が腐ってるみたいね」

 制裁を加える相手が増えたけど、数なんて大した事無いわ。私の拳が見えない時点で、実力なんて底が知れたもの。
スカタンクを心配して傍に言ったドガースとズバット。丁度良いわ、纏まってくれた事だし三匹纏めてフルボッコよ。

「なんだか騒がしいネ? あれ……アークとガディが倒れてる!? 何があったんだいキーネ!?」
「あぁ、ちょっとこいつ等に不意打ち食らっちゃってね。今片付けるからちょっと待っててハーモ」
「こいつ等って……あれ? ひょっとして、探検隊のドクローズ?」
「お、お前はここの一番弟子のペラップだな! このリオルも弟子なんだろ?! 頼むから止めさせてくれ!」

 はい? 何こいつ等、ハーモの知り合いなの?

「まだなんだか事情は掴めないけど、とりあえず拳を引いておくれキーネ。彼等はドクローズ、親方様が友達って呼ぶ探検隊の一つなんだ。……一応」

 え、そうなの? えー……なんか納得出来ないけど、そういう事なら一先ず引いておこうか。もやもやするけど。
ハーモに事の経緯を聞かれたから、とりあえず説明したわ。前に絡んできた事も合わせてね。

「エェっ!? じゃあ、キーネが言ってた悪党って……」
「そ、こいつ等よ。正確に言えば、そこに居る紫玉と蝙蝠ね」
「わ、悪かった! 反省してる! だからもう許してくれ!」
「えーっと、納得行かないかもだけど、今は私の顔に免じて、許してあげてくれないかな? 遠征も控えてる今、キーネ達に何かあると困っちゃうし」
「……はぁ、分かったよ。あまりやり過ぎてこっちが悪いみたいになるのも癪だしね」

 あ、ハーモの遠征って一言に周りが少しざわついた。むぅ、なんか余計な事言わせちゃったかな。
しかも連中もなんか小声で喋ってるみたい。腹立つから睨みつけてやったらビクッてしてたわ。

「よ、よし、俺達は急用を思い出したから行く! じゃあな!」
「お、覚えてろよ!」
「お ぼ え て ろ よ ?」
「ひぃぃぃぃぃ!」

 なんかすっきりしないなぁ……アークとガディがやられたのに、こっちはあのスカタンクに一発打ち込んだだけ。割に合ってないと思わない?
なんて愚痴を言う前に、アークとガディを介抱しないと。あのガス、スカタンクが出したって事は毒も含んでた可能性もあるもんね。

「アーク、ガディ、大丈夫? 私の声、聞こえる?」
「ぐ、ぅ……鼻の奥に臭いが染み付いてるようだ……」
「うぅ……」
「良かった、アークもガディも意識はあるみたいね。体、動かせる?」
「くっ、ごめん……体が、痺れちゃって……」

 って事は、やっぱり毒を含んでたのね。ガディの方も辛そうだし、無理に動かさない方が賢明ね。
ハーモにも事情を説明して、今日はアーク達には休んでもらう事にしたわ。万全じゃない状態で探検に出るのは、それだけでリスクがあり過ぎるもん。
依頼を吟味してたサニーやヘイガニのロブにも手伝ってもらって、二匹は部屋まで運び終わりっと。こうなると、今日は私一匹で探検に出るしかないかなぁ。

「二匹は私も様子を看るよ。でもキーネは大丈夫かい? 今日は一匹になってしまうけど……」
「まぁ、私があいつ等に突っかかっていったのも原因の一つだからね。今日は反省して、なんとかしてみるよ」
「ふむ……暇だし付き合ってやろうか? ククク」
「ルガン? まぁ、手伝ってくれるのは有難いけど、いいの?」
「あぁ、こいつも本調子に戻ってきたからな。後は安定するのを待つだけだし、たまには俺も探検しないと鈍る」

 って事らしいんで、そのままルガンが探検に来る事になったわ。ハーモも意外がってたけど、手伝ってくれるのは助かるし私も異論を言う気は無いね。

「……ところで、安定とか言ってたけど、あの釜って本当になんなの?」
「知りたいか?」
「うん」
「……もう少し秘密にしてやる。クックック……」

 な、謎過ぎる……ルガンもあの釜も……。
ま、まぁ気を取り直して、探検に行こうか。今日はどの依頼を受けようかな? ルガンも一緒だし、二匹で決めればいっか。
で、どうせなら天気の良い外を探検するような依頼を受けようって事になって、緑の草原ってとこの依頼が纏まって来てたからそこに決めたわ。まぁ、不思議のダンジョン化はしてるんだろうけどね。

「にしても、一度に五つの依頼を受けるのか……ランクの上がりが早い訳だ。ククッ」
「え、これが普通じゃないの?」
「基本、探検はダンジョンに潜るのに準備が必要になる。深く潜るのにはそれだけ準備が要るし、依頼を受ければ探検の難易度も上がる。複数の依頼を受けるのは、稀だろうな」

 ……私毎回同じ場所の依頼があったら受けてたし、ついでにお尋ね者の手配書も見てそっちも一緒に受けてたって言ったら、ルガンが本気で驚いてたわ。うーん、アークとガディに無茶させてたかなぁ?
でもどっちも問題無くついて来てたし、依頼の失敗も無かったしね? まぁ、ブレイブの指針はそんな感じでいいんじゃないかな。……今度から、あまり無茶な依頼の受け方は控えよう。

「ど、通りで遠征の引率をハーモに頼まれる訳だな。クック……」
「働き過ぎかなぁ?」
「さぁな。が、依頼を一つこなせば、それだけ助かるポケモンが居るのは確かだろ。いいんじゃないか?」
「それもそっか。まぁ、今日は無理してお尋ね者まで退治しないし、軽く行ってみよっか」
「既に五つ依頼受けてるがな」
「言わないでよ、他の弟子の皆の様子とか知らなかったんだし」

 と、とにかく出発よ! どれだけ受けたって、要は成功すればいいんだもんね。ばっちり今日も決めてくわ。
ギルドを出発して階段を降りる。……あれ? なんか十字路に見た事無い下り階段がある。あれ、なんだろ?

「ねぇルガン、あんなところに下り階段なんてあったっけ?」
「ク? いや、無かった筈だが、なんだ?」

 二匹で首を傾げて近付いてみると、階段のところに看板があったわ。『パッチールのカフェ、本日オープン!』ですって。カフェ?

「ぬぉ!? お客様ナノ!?」
「ソーナンス!?」
「ん? 誰? あなた達」
「ソーナノなの! ここのカフェの従業員ナノ!」
「ソーナンス!」
「えっと、一応姉のソーナンスなの。同じくここの従業員ナノ」

 従業員って事は、本当にここカフェなんだ。いつの間に工事とかしてたんだろ? さり気なくルガンにも聞いたけど、こんなのが作られてたなんて知らなかったみたいね。

「とりあえず入ってみて欲しいノ! きっと気に入るノ!」
「んー……どうしよっか?」
「ククッ? まぁ、急ぐ必要も無いし、少しくらいならいいんじゃないか?」

 まぁね。ソーナノとソーナンスだっけ? この二匹も入って欲しいみたいだし、見るだけならタダだし行ってみようか。
そのまま通されて中を見たら、改めて驚いちゃった。凄い立派な内装のお店が地下にあるんだもん、こんなの本当にどうやって作ったんだろ?

「お? いらっしゃいませ! パッチールのカフェによーこそー!」
「お客さんをまたまた連れて来たノー!」
「ソーナンスー!」
「って事で、いらっしゃいましたっと」
「洒落た店だな……俺は落ち着かん」

 ばっさりね、ルガン。まぁ、私もこういうお洒落なお店には縁が無いかなぁ。
で、なんでかこのお店の説明を色々聞かされたわ。木の実や色々な食べられる道具なんかを使ってドリンクを作ったり、ダンジョンで拾ったけど使わない道具なんかをこのお店に寄付して、再利用するリサイクルなんて事もしてるみたいだわ。探検隊に密着したお店を目指してるんだってさ。
とは言え、今はそんな手持ちも無いし、また後日って事にしといたわ。ガディやアークが元気になったらゆっくり来てみてもいいかもね。

「なるほどな……この十字路はタウンであれギルドであれ、探検隊が必ず通る。探検隊向けの商売をするならうってつけ、という訳だ」
「確かにね。さて、ちょっと寄り道しちゃったけど、今日のお仕事片付けよっか。あ、先に報酬の取り分決めておく?」
「3:7でいいぞ。報酬目当てで手を貸す訳じゃないからな、ククッ!」
「なら別に何か目的があるって事ね」
「……クックック、勘が良過ぎるのも困りものだなキーネ」

 当たりね。全く、何が狙いなのかしらね? 手伝ってくれるって言ってくれてるんだから、それ以上は触れないけど。
報酬の割り当ては3:7で決定して、緑の草原へ出発よ。ま、大して難しくもない物探しだし、さくっと終わらせてきましょうかね。

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 ……夕日を背負いながら、ゆっくりと帰路に着く。今日は本当に楽な仕事だったわぁ。ピクニックの延長くらいなものね。

「探検の仕事が、今日くらい楽だったら俺も面倒がらずにやるんだがな。クッククク!」
「とかなんとか言って、ルガンもなかなかやるじゃない。相手の動きを完璧に見切って毒突きで一閃。確実にドゴやサニーなんかより腕は上でしょ」
「だから出しゃばるとあいつ等のやる気が無くなるってな。クックック、まぁ今ならとんでもない後輩が出来たから、俺なんか眼中に無いかもだけどな」
「みーんな私を買いかぶり過ぎだったら」
「おっと? 俺は別にキーネの事だと言った覚えは無いがな」
「……ルガンの意地悪」
「よく言われる」

 不貞腐れた振りしながら横目にルガンを見ると、割と上機嫌なのか、頬っぺ膨らませながら歩いてるわ。意地悪って言われて喜ぶんだから変態だ。なんてね、まぁそれは関係無いか。
そこでふと疑問に思った事。結局、今日のルガンの目的ってなんだったの? 特に何かした訳でもないし、普通に探索して終わったけど。

「……ねぇルガン、もう今日も終わるんだから、最後に何が目的だったか教えてよ」
「あぁ、大した事じゃない。俺の目的は、お前だ」
「はい? 私?」
「厳密に言えば、お前の力とその破邪の指輪だな。……キーネ、なんで隠してるかは知らないが……お前、相当使ってない力あるだろ」

 な、なんと……そんなの見抜けちゃう系なのね、ルガンって。バレたの、ルガンが初めてだなぁ。

「どうして、そう思ったの?」
「今日一日、破邪の指輪の様子を見せてもらった。……その指輪は、力を失ってる訳でも眠ってる訳でもない。ただ、力を使えなくなってるんだ」
「どういう事?」
「専用道具は、その持ち主……種族やそいつだけが持つ力を増幅したり、変化させる物だ。故に、その持ち主の状態に左右される。その指輪が力を使えないでいるのは、お前が本来の力を半分も使ってない所為だ」
「そうなの? って言うか、なんでそんなに詳しい訳?」
「他の奴に言うなよ? 俺は、一応専用道具を生み出した一族の末裔って奴らしい。それで、専用道具を扱う術や錬成方法を知ってる訳だ」

 マジで!? そうか、それで破邪の指輪についても妙に詳しかった訳ね! ついでに、あの釜はその一族で使ってる釜で、専用道具を掛け合わせたりする事で違う専用道具を作り出せる物だったみたいね。

「……俺の方の秘密を話したんだ。そっちも、俺の質問に答えろ」
「そうねぇ……私のは、秘密なんて程の物じゃないよ。単に、私が全開バリバリで暴れるとちょーっとばかし危険ってだけ」
「……嘘は無しだ」
「ちぇっ、ダメか。……半分は、本当だよ。私が鍛えあげてきた力は、ちょっと間違えば相手に致命傷を与えかねない。使っていいのは、発勁くらいまでってね」

 暴走したガディに使った二奏発勁……あれだって、普通のポケモンに使ったら重度の麻痺を発生させるリスクがある。あの時のガディは体に負荷が掛かるレベルまで力が暴走してたから、麻痺もあの程度までで回復出来たのよね。
もう半分は、力を鍛えた理由が、あまり他の誰かに言っていい事じゃなかったから。私が力を、技を鍛えたのは、復讐の為だから。

「復讐?」
「そう、復讐。私を育ててくれた恩のあるポケモンを……殺した相手への、ね」

 物心付いた時から私の傍に居てくれた、大切なポケモン。黒い影のような者に襲われた私を、身を呈して守ってくれた。私を命懸けで生かしてくれた、大切な、もう居ない……私の師匠。
そんな師匠の復讐の為に、私は旅を続けて、自分を鍛えてきた。今でこそアークと出会ってプクリンのギルドに身を置いてるけど、もしそれが無かったら、また私は復讐の相手を探して、旅に戻っていたかもしれない。いや、きっと戻ってただろうな。

「宛も無いのに、か?」
「うん……私の今までって、それしか無かったから。旅をして、悪党を退治していったら、いずれ辿り着けるかもってね」

 ま、ギルドでお尋ね者の情報が得られるって分かった今は、それを頼りにするのが一番の近道だと思ってるし、一応ブレイブのリーダーだしね。当面の間は、一匹旅に出る気は無いよ。

「背負ってるんだな、お前も」
「まぁ、ね。……って言うか、いつものあの意味深な笑いは?」
「真面目に話してる時くらいは控えるさ。まぁ、理由があるなら仕方無い。その指輪が真価を発揮出来る時が来るよう、祈っておいてやるよ」
「そりゃどーも。……復讐の事、皆には伏せておいてね」
「了解した。さーてタウンだぞっと、ククク」
「……真面目にしてれば、結構カッコイイのにね」
「惚れたか?」
「まさか」

 そんな事聞いてくるぐらいだから惚れられたいのって聞いたら、一番弟子に一目置かれる奴になら、だって。可愛くないよねー。
でも久々に話して、ちょっとすっきりしたかな。復讐の事なんて、アークやガディに話したら心配させちゃうもの。
あ、十字路に見覚えのある姿がある。アークとガディ、元気になったみたいね。

「キーネー! おーい!」
「アークー! ガディもー!」
「無事なようだな、二匹共」
「当然。今日の依頼もバッチリだよ」
「依頼者が待ってるだろ。先に頂く物を頂くか、クククッ!」

 二匹と合流して、ギルドに戻ったわ。私達の姿を見て、待ってた依頼者達も寄ってきた。当然探してきてって頼まれた物は全部用意してあるもんね。
それぞれにお目当ての物を渡して、依頼終了。報酬結構ザックザク。ま、ギルドに納める分を引くとそうでもないんだけどね。まぁでも、これでもうちのブレイブは大分貯金してるけどね。
3:7の……7をルガンに渡して、残りはこっちが受け取る。貰った道具は折半にしてね。ルガンが何か言いたげだったけど、ウィンクしてそのまま受け取らせたわ。なんだかんだお世話になったしね。
あれ? なんか探検バッジが光ってる。あ、アークとガディのもだ。色が……変わった。これって、ランクアップだわ。

「まさか、今日の依頼でランクアップしたのかな?」
「みたい、だな」
「ククッ、そう言えば、ゴールド手前で放っておいたんだったな。ついでに俺もゴールドに上がったらしい」
「マジで!?」

 よく考えてみると、今日の依頼の中にもシルバーランクの依頼があったわ。で、メンバーの中にランク足らずのメンバーが居たら受けられないんだし、ルガンもシルバー以上じゃないと辻褄が合わないんだったわ。
これは良い土産話が出来たわね。ハーモ、私達がシルバーに上がった時も驚いてたし、今回もきっと驚くだろうなぁ。

「あ、居た! もう、ダメじゃないかアークもガディも! 私もキーネに君達を頼まれた以上看てませんでしたとは……あれ?」
「やっほー。今日も無事帰ってきましたよってね」
「キーネお帰り! ルガンも無事そうで何よりダヨ♪」
「クーックックック! 元気過ぎて、この有様だ」

 ルガンが自分のバッジをハーモに見せてる。おぉ、驚いてる驚いてる。そう言えば、私達が上がった時にパズ以外の弟子がシルバーになったーとかって言ってたっけ。
で、私達のバッジも見せたら口を開いたまま固まっちゃったよ。ハーモはどうか知らないけど、現状の弟子での最高ランクっぽいからね。

「でぇぇ!? ブレイブもゴールドになったの!?」
「ま、ちょっとばかしオーバーワークをし過ぎたお陰でね。ハーモも言ってくれればいいのに、日に何個も依頼を受けるのは滅多に無い事だって」
「え!? 何個も受けてたの!? いや、なんだか異様に日に渡される報酬が多いなーとは思ってたけど……」
「最高で何個だったかな?」
「えっと、覚えてるのは……お尋ね者合わせて、12個くらいだったっけ」

 しれっと凄い数言ったからまたハーモ固まっちゃったよ。知らなかったとは言え、やっぱり働かせ過ぎだったよね。
固まったハーモを正気に戻して、とりあえずご飯かな。少しお腹空いたし。

「しかしゴールドか……まさか俺のランクをあっさり抜かれるとはな」
「あれ、ガディってシルバーランクだったの?」
「あぁ。こういった依頼は数回受けた事はあるが、主に未開の地の探索を生業にしていたからな。ブレイブに入って、こうもあっさり上がってしまうとは思わなかった」
「正直、最短のランクアップだと思うヨ……私でさえ一年くらい掛かったのにな……」

 そういう事ね。まぁ、私達はかなりイレギュラーな方法でこうなったみたいだし、あまり気にしないで貰おう。
で、2階に戻ったら、鼻息荒めのパズが私達に寄ってきた。どうやらシルバーランクに上がったバッジを得意気に持ってね。
な、なんか複雑な心境だなぁ。パズはこれで皆に並んだでゲス! って言ってるけど、私達ついさっきゴールドに上がっちゃったしね。
でもパズも頑張ってるんだなぁ。最初一緒に探検した時とは見違えたって言ってもいいかもね。
他のギルドの弟子も集まってるし、晩ご飯の用意も出来てるみたい。なら、食堂に行っちゃおうか。

「おっ! ブレイブとルガンが帰ってきたぞー!」
「はいただいまっと。私達が最後だったんだ」
「まぁ、別にサボってた訳じゃないからとやかく言われる気も無いがな。クククッ……」

 まーた意味深に笑って皆を怯えさせてる。役作りに余念が無い事で。
それぞれにいつもの場所に行って、食事開始! と思ったけど、先にハーモに止められちゃった。どうしたんだろ?

「あー、皆済まない。食べる前に聞いておくれ」
「えー、なんだよハーモ? こっちは腹減ってるんだぞー?」
「そうだー! 食わせろー!」
「いやだから、話を聞いてくれるだけでいいんだったら。えー、コホン」

 あー……なんか言う事分かったわ。まぁ、朝にやらかしちゃったからなぁ。明日の朝まで待たせるのもあれだしね。

「まぁ、皆少し話を知ってしまっているかもしれないけど、近々……このギルドを挙げて遠征を行う事になったヨ!」
「え、遠征!?」
「遠征でゲスか!」
「そう、遠征! まぁ、まだ何処に行くかとかは決まってないんだけどね? で、弟子の中からメンバーを選抜して、ギルドに残ってもらう組と遠征に行く組を決めさせてもらうからね」

 おぉ、ざわついてるざわついてる。私達はもう行くのが決まってるから、驚かないけどね。

「それで、遠征には選抜メンバーで行く事になるんだけど、全員で固まって動くのは大所帯になり過ぎるって事で、現地までは幾つかのチームに分かれて向かってもらおうと思うんだ」
「おぉー、ならリーダーは俺だ! 俺がやる!」
「残念ドゴ、実はもうその弟子には話を通して、了承をしてもらってるのさ。……ずばり! ブレイブのガディとキーネ、それと私と親方様の3チームに分かれて行動してもらう予定だよ!」

 『なんだってー!?』って声が食堂に響いたわ。まぁ、ガディはともかくとしてチームの一角のリーダーが新参探検隊のリーダーじゃあそうなるでしょ。
あ、でもなんかドゴ以外は納得! みたいな顔してる。そんなに納得されても困るんだけどな。

「な、なんでだ! そりゃあブレイブやキーネが凄いって言うのは俺も疑いようは無いけど……」
「でしょ? おまけにブレイブは……あ、ついでにルガンも。本日付けでゴールドランク探検家&探検隊に昇格したんだよ! これははっきり言って快挙だヨ!」
「な、なんですとー!? ち、ちょっとバッジ見せてくれ!」

 って事なんで、バッジお披露目会になっちゃいました。おぉ、皆驚いてる驚いてる。
皆のも見せてくれたけど、やっぱりシルバーみたい。あ、ハーモのはウルトラランクって言う大分高いバッジみたい。
僕のも見てーって言って、プクリンのバッジも見せてもらったけど……バッジの最高位のマスターランクってバッジらしいわ。意外……って、そのくらいじゃないと自分のギルドなんて持てないか。

「ま、まぁバッジの見せ合いは終わりにして、と。とにかく、ブレイブはこの短期間でゴールドに上がれちゃうくらいの腕前を持つ探検隊だ。遠征の引率を任せてもいいと判断させてもらった訳だよ」
「ぐぬぬ……悔しいが、これはしょうがないな」
「受けた以上はしっかり働かせてもらうよ。という事で、よろしくね」

 おぉ、弟子の皆が遠征に向けて燃えてる。まぁ、私も気持ちは分かるよ。面白そうだしね。
ん? なんかそんな中でハーモが微妙な顔してこっち見てた。なんだろ? あ、私が見てるのに気付いて、申し訳無さそうな顔になった。……何かあるわね。
とりあえず食事になっちゃったから、後でハーモには聞き出すとして、私も自分の分は食べちゃわないとね。

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……書き方等で作者が特定されてそうな気もしますが、まだまだ続きます。
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