ポケモン小説wiki
空の特攻隊! 始まりは潮騒と共に の変更点


…3DSを持っていなくて新ポケダンが出来ないから(かなり即興で)書いた小説でございます。作者は詮索しないでね♪
基本的にポケダン探検隊シリーズのストーリーに沿った物語進行ですが、一部改変されている点がございますので、純粋なストーリーがお好きな方は閲覧注意でございます。

それでも一向に構わないという方は、出来ればお付き合い頂ければ幸いです!


目次は[[こちら>ポケダン空の探検隊IF 空の特攻隊! 目次]]

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「……手を、手を離すな!」

 こっちに差し伸べられる手、でも、それにはもう触れられない。
強い衝撃が体を襲って、体勢が整えられない。そのまま、力の流れに飲まれていく。
もう声も聞こえない。意識が、遠くなっていく……。


 夕焼けに照らし出された海岸に、一匹のポケモンが佇んでいる。
辺りにはクラブが吐いた泡がゆらゆらと漂い、夕日に照らされ輝いている。
そんな美しい景色の中、これから一つの出会いがある。
その出会いは、全ての始まり。そして、一つの終わりの始まりでもある。
さぁ、物語を紡ぎだそう。新たなる、冒険者達の物語を……。

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「はっ、せいっ!」

 うーん、空気を相手にするのも飽きてきたなぁ。やっぱり独りで鍛錬するのにも限界はあるか。
とは言っても、私だけじゃ他に鍛錬のしようもないし、こうやって型の練習をし続けるしかないんだよねぇ。
探検隊っていうのになろうかと思って、あの変な建物にも行ったけど入り口開いてなかったしなぁ。壊して入っちゃえば良かったかな?
あーあ、ここも綺麗だから訓練場にしてるけど、流石に毎日来ると変化が欲しくなってくるなぁ。
何か面白い物でも流れてきてないかなー? おっ、洞窟の前に何かある! お宝発見!?
……わぁー、ポケモンだった。これって、水死体って奴? 動かないし、きっとそうだよね。
どうしようかな……あ、木の棒見っけ。これでちょっと突っついてみようか。死者への冒涜になっちゃう? とりあえずやってみよ。

「う、うぅん……」
「へ? もしかして、生きてるの?」

 びっくりしたー、気を失ってただけなんだ。水死体なんて思っちゃって悪いことしちゃったな。
意識も戻りかけてるみたいだし、声掛けてあげようか?

「君、大丈夫?」
「う……ここは?」
「ここ? 海岸だよ。君はここに流れついたみたいだね」

 そういえば昨日嵐だったっけ。そっか、それに巻き込まれたんだね。
起き上がったけど、体は大丈夫なのかな? 見たところ、怪我とかはしてないみたいね。
うーん、海に流されたんだったら何処か別のところから来たって事だよね。分かるところだったら連れて行ってあげれるし、聞いてみよっと。

「ねぇ君、何処から来たの? よかったら、私が元居たところまで連れて行ってあげるよ」
「……あれ、何も……思い出せない。僕、何処からきたんだっけ?」
「何も? うーん、海に落ちたショックとかで記憶が無くなっちゃったのかな? 確か、記憶喪失って言うんだっけ。本当に何も覚えてないの?」
「……名前……。そうだ、アークって呼ばれてた気がする」
「アーク? それが君の名前?」
「うん、そんな気がする」

 名前が分かっただけいいか。これで本当に何も分からないじゃ、手詰まりになるところだったしね。
ん? アークが自分の手なんかを見て驚きだしたみたい。どうしたんだろ?

「あ、あれ? え?」
「どうしたの?」
「そんな、僕は……人間だった筈なのに」
「人間? それってここから凄く遠くに暮らしてる、私達ポケモンとは違う生き物だよね? でも、君はどう見ても……」

 足と尻尾は茶色で、頭の耳は黒。おまけに額には金色の小判。私が知ってる限り、この姿のポケモンは……。

「ニャース、だよね?」
「そうだけど……どういう事なんだろ?」

 海に落ちた時に頭を打って、なんか色々混乱してるとか? うん、それならある程度納得出来るかな。
まぁそれは置いといて、私も自己紹介くらいしないとね。

「よく分からないけど、私、リオルのキーネ! よろしくね、アーク」
「あ、うん。よろしく、キーネ」
「でも何にも覚えてないのは大変だよね……どうしよっか?」
「うーん?」

 特に何も思いつかないけど、このままにしておくのも後味悪いし、とりあえず私の家にでも連れて行こうか。

「ん? キーネ、危ない!」
「へ? きゃっ!」

 急にアークに押されてびっくりしちゃった。どうしたんだろ?
あ、なんか居る。ズバットとドガース? あ、こいつ等が向かってきたのが見えてアークが助けてくれたんだ。なるほど。

「あ、ごめんキーネ、大丈夫?」
「平気平気へっちゃら! で、誰?」
「へっへっへ、なーに、ただの通りすがりだぜぇ?」
「おっと、こんな所に落し物があるぞ。頂いちまおう」

 あ、私が昼間に躓いた石。イラッ☆ ってきたから後で叩き割ってやろうと思って持ってたの忘れてた。
なんか拾ってご機嫌になってる……もしかして、その石横取りする為に襲ってきたの? 変なの。

「あれって、キーネの物?」
「うん、一応」
「なんだぁ? 返してほしいのか?」
「ううん、あんまり」
「え? そ、そうか?」

 だってただの石だし。でも……。

「ただね、その石っころの為に襲われたのは気に食わないかな。取り返す気はぜーんぜん無いけど、このままで済むと思ってないよね?」
「ひっ、な、なんかこのリオル、迫力が違うぞ……」
「と、とりあえず逃げるぞ!」

 あ、洞窟の中に逃げて行っちゃった。この海岸の洞窟、確か不思議のダンジョンになってた気がするな。んもぅ、面倒だなぁ。
まぁこれも修練だと思って、行ってみようか。

「アーク、私はあの二匹を追うから、ちょっとここで待ってて!」
「え!? でも相手は二匹なんだし、キーネだけじゃ危ないよ」
「だーい丈夫。私、これでも結構鍛えてるんだから」
「……でも、僕も行くよ。力になれるか分からないけど、ほっとけない」
「そう? じゃあ、一緒に行こうか」
「あぁ!」

 と言う訳で、アークと一緒に洞窟へ突入! 何かあったら私が守ってあげないとね。
そういえばここって、潮の満ち引きで通れるところが変わるんだったな。その所為か、壁にフジツボとか生えてる。あんまり触りたくないなぁ。

「なんだか不思議な感じのするところだね?」
「アークそういうの分かるんだ。ここは『不思議のダンジョン』って言って、入る度に中の構造が変わっちゃう不思議なところなの」
「へぇ~、だから変な感じがするのかな?」
「多分ね」

 そしてこの不思議のダンジョンには、そこで暮らしてたポケモン達が居る。当然ね。
でも、ダンジョンの力に影響されてちょっとややこしい事になってるのよね。

「あれ? あそこ、何か居るよ?」
「おっと、アークは危ないからちょっと下がってて」

 カラナクシか。あ、こっちに気付いて飛び掛ってきた。そう、不思議のダンジョンのポケモン達は正気を失ってて、入ってきた者を容赦無く襲ってくるのよね。
動きを見切って、パーンチ。よし、一撃必殺。うわ、ぬるっとする。ちょっと気持ち悪いかも。

「よし」
「急に襲い掛かってくるなんて……これも、不思議のダンジョンの所為?」
「そう言われてるよ。アークも気をつけて進んでね」
「うん、分かった」

 襲ってくるポケモンを蹴散らしながら、どんどん奥へと進む。んもー、途中で見つかってくれれば楽なんだけどな。全然居ないや。
でもアークも結構戦えるみたい。引っ掻くでカブトとかシェルダーとか倒していってくれてる。記憶を無くしてるけど、戦い方は体が覚えてたって事かな? とにかく助かるよ。
そのままどんどん進んで~。結構奥まで来たけど、途中で抜いたとか無いよね? ここのポケモンそんなに強くないから、やられちゃったって事は無いだろうけど。

「ん、キーネ待って。見つけたよ」
「ほんとだ。もうここ行き止まりじゃない。もっと早く見つかってよね~」
「どうするの?」
「もちろん、特攻よ!」

 休んでる二匹の前に躍り出て、腕組みしながらニッコリ笑う。もちろん怒気を発しながら。

「や~っと見つけたわ。さぁ、覚悟は出来てる?」
「うぉ、本当に追って来たのか!?」
「さっき石はどうでもいいって言ってただろ!」
「聞いてなかったの? 私を襲った事についてはな~んにも解決してないじゃない♪」
「き、キーネ怖いったら」

 震え上がらせたところで、けちょんけちょんにするとしましょうか。大した実力も無いのに私に襲い掛かった事を後悔するのね。

「アーク、ズバットをお願い!」
「分かった!」
「く、来るぞ! 気合を入れろ!」
「ひぃ~!」

 とりあえず真っ直ぐドガースに向かって右ストレートね。少しはイライラが収まるわ。

「せぇい!」
「ぐほぉ!? わ、技とかじゃないのか……」
「そんなの必要無し無し。ボッコボコにしてあげるわ」
「うひぃ! こ、この石は返すからい、命だけはぁ!」

 そこまでする気は無いから大丈夫。悪くて一週間くらい寝込むだけよ。
っと、返されたから受け取ったけど、こんな石どうでもいいのよね。まぁ、持っておいてもいいけど。

「くっ、このニャース強ぇよぉ!」
「観念しろ!」
「アークもなんだかんだ言ってノリノリね。じゃあ、決めちゃいましょうか」
「ひぇぇ、そんなぁ!」

 渾身のアッパーでかち上げて、スタンバイはオッケー!

「アーク! そのズバット、こっちに飛ばして!」
「え? わ、分かった!」

 タイミングを合わせてーっと、よし、今だ!

「「せーの!」」

 跳びあがって、ドガースをシュート。アークが飛ばしてきたズバットに直撃! いやー、あれだけしか言ってなかったのに、まさかアークもタイミングを合わせてくれるとは思わなかったわ。
そのまま二匹はぶつかってノビちゃったみたい。怯えてたのもあったけど、快勝快勝♪

「大、勝利~!」
「ふぅ、僕はちょっと危なかったかな」
「またまたぁ、全然余裕そうじゃない。タイミングまで合わせてくれて、ありがとね」
「いや、あれはキーネがそうするんじゃないかなと思って偶然やっただけだから」

 あはは、照れちゃった。なんだかアークと居ると楽しいな。記憶も無くて行くところも無いなら、本当に私の家に招待しちゃおうか。
ところで……。

「何処行こうとしてるの?」
「き、気付かれただと!?」
「あ、まだドガース気絶してなかったんだ」
「ふっふっふ……二度と悪いこと考えられなくなるまで反省させてあげるわ」
「お、俺達に何かあったら親分がただじゃ済まさないぞ!」

 ん? 親分? それってもしかして、探検隊ギルドの?

「あなた達、ギルドのポケモンだったの?」
「え? ……そ、そうだ! あのプクリンのギルドの皆が黙っちゃいないぞ!」

 なるほど……敵はギルドにありってことだったのね。町での評判は良かったみたいだけど、裏ではこういう事してたんだ、ふーん。
これは、行くしかないじゃない? この世に悪を栄えさせない為に!

「よ~く分かったわ。特別に見逃してあげる」
「な、何?」
「ギルドに戻って伝えるといいわ。あなた達の曲がった根性、叩き直しに行ってあげるってね」
「や、やっぱりこのリオル怖ぇ~!」
「あ、行っちゃった……いいの?」
「だーい丈夫。また後で会うだろうし。さ、私達も出ようか」

 帰りも不思議のダンジョンを通らないといけないんだけどね。面倒だなぁ。
そういえばあの二匹、虫の息だったけど大丈夫なのかしら?

「あっ、ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「あっら~……」
「これって、さっきのドガースの声だよね?」
「まぁ、やられちゃったんでしょうね」

 どうせ入り口まで戻されるだけだし、ほっといてもいいでしょう。っていうか何処に居るか分からないし。
二の舞にならないように私達も進まないとね。命は大事よ。
とはいってもずんずん進んでいった道を戻るだけだからそれほど苦労しないで脱出完了。夕日も大分傾いたわね~。

「さて、ギルドに行くとしますか」
「えっと、ギルドって?」
「あぁ、アークにはちゃんと説明しないとね」

 ギルドとは! さっきみたいな不思議のダンジョンなんかを探検して未知なる物を追い求めるポケモン達、それらが集まって情報交換なんかをする場所ね。
そして、その探検をする者達、探検隊の駆け出しが修行を行う場所でもあるの。あの二匹は恐らく、その修行を受けてるポケモンでしょうね。

「なるほど……」
「弟子の横暴を止めないなんて、組織ぐるみで悪事を働いてるんだわきっと。だからあの二匹もあんな事したのよ」
「う~ん、そうなのかな?」
「それでね、アーク。これからギルドに乗り込もうと思うんだけど、アークはどうする? なんなら先に、私の家まで送るけど」
「家? でも、僕はまだ知り合って間もないんだよ? そんなの悪い気がするんだけど」
「な~に言ってるの! もう肩を並べて戦ったりしてるんだからそういうのは言いっこ無し! 行く当ても無いんでしょ? 遠慮なんかしないで」

 ちょっと急な申し出だったかな? アーク、迷っちゃってるみたい。
でも私も助かったし、ちゃんと恩返ししたいんだよね。困ってるならなおの事。

「じゃあ、一緒に行って良い?」
「もっちろん! よろしくね! じゃあ、先に家に……」
「待って。そんな危ないところに行くなら、やっぱり僕も一緒に行くよ」
「あはは、アークならそう言ってくれるんじゃないかと思ったよ。よし、行こう!」

 目指すはプクリンのギルド、悪の拠点へ!

----

 日もすっかり傾いて、もう夕方になっちゃった。まだ家に木の実あったかな? 無かったらカクレオンさんのお店に買いにいかなきゃなぁ。
でもその前にまずは一仕事。海岸へ続く道を上がって、真正面にある階段を上った先……。

「ここが、プクリンのギルドっていう所?」
「そ。変な所だよね」
「変って言うか……なんだか不気味なところだね」

 そうかな? プクリンの形をした建物なんて変としか言い様が無いと思うけど?
んー、でもやっぱり入口閉まってる。もしかして、私が来るのを警戒してるのかな?

「しょうがない、ここはあの入口ぶち破って……」
「ま、待って待って! とりあえずまずは入口に近付いて調べてみようよ。どうするかは、それから決めようよ」
「んー、それでいいかな。じゃ、行ってみようか」

 あんまり面倒なのは好きじゃないんだけど、アークが言ってる事も正しいのは分かるよ。突破するのも手が痛くなるしね。
じゃ、扉に近付いてと……。

「ポケモン発見! ポケモン発見!」
「!?」

 いきなり声がしたから咄嗟にバックステップしちゃった。今のは……下からね。

「誰の足型? 誰の足型?」
「あ、あれ? えっと……足型はリオル! 足型はリオル!」
「今の声……正面の入口とこの下にある穴から聞こえてきたみたいだね」
「あ、本当だ。落ちないように格子状に木を組んであるところを見ると、罠って訳じゃないみたいね」
「ん、近くにもう一匹居るみたいだな、お前も乗れ!」
「えっらそうに言うんじゃないわよ! 姿も見せないで命令なんてされる謂れは無いわね!」
「え、えぇ!? いやあの……どんなポケモンか分からないとギルドの扉を開けれないから、乗ってくれないか?」
「乗 っ て く れ な い か ?」
「の、乗って下さいお願いします……」

 よろしい。あんまり気は進まないけど、そういう事ならアークにも乗ってもらうとしようか。
なんか苦笑いしながらアークが格子の上に乗った。これでいいのよね。

「ポケモン発見! ポ……」
「うっさい! そっちが言ったから乗ってるんだからさっさとしてよね」
「ひぇ!? あ、足型は……えーと……」
「どうした、見張り番のダグ!」
「た、多分ニャース!」
「多分じゃなくてそうだから!」
「ひぃぃ! ごめんなさい!」
「き、キーネ、ちょっと落ち着いていこうよ」
「こういうのって相手に主導権握られちゃあいけないのよ。いいのいいの」

 これから一戦交えないとならない相手に容赦なんて必要無し! やる前にやられてちゃお話にならないもんね。

「で、入れるの入れないの!? 入れないって言ってもここ壊して入るけどね」
「な!? そ、そんな事されたら俺が親方に……あ、開ける! 開けるから壊さないでくれ!」

 おぉ、入口の扉が上に上がっていって口を開いた。なるほど、こういう仕掛けだったのね。
アークの顔を見ると、ちょっとドキドキしてるみたいだけど頷いて見せてくれた。それじゃ、乗り込むとしましょうか。
入口の先はすぐに下り梯子になってるのね。……うーん、私達の話は知ってる筈なのにやけに何も無しで入れるわね? 罠の一つや二つあるかと思ったのに。
降りてみると、中は意外と広かったわ。それに、結構ポケモンが居るわね。ふむ、こっちを襲ってくる様子は無いかな。

「わぁ、ここに居るのって、皆探検隊って言うのなのかな?」
「うーん、確か弟子も一応探検隊って事になるみたいだし、そうなるんじゃないかな?」
「へぇ~、じゃあこのギルドの弟子っていうのばっかりじゃないんだ」
「私の知ってる限りではね」

 っと、そんな事話してたら私達の降りてきた梯子の横、更に下へ降りる為の梯子から何か登って来たみたい。あれは……ペラップね。
こっちに真っ直ぐ来たって事は、私達に用があって来たみたい。

「お前達だな? さっき降りてきたのは」
「そうだけど、誰?」
「私はハーモ。ここらで一番の情報通であり、プクリン親方の一番の弟子だ♪」

 なるほど、つまり弟子では一番頭って事ね。それなら……先手必勝!

「せぇい!」
「うわわ!? な、何をするんだ!」
「言わなくたってもう私達が来た理由は分かってるんでしょ? その曲がった根性、叩き直してあげるわ!」
「なななな、何のことなんだ!?」
「……なんか妙だな? キーネ、ちょっと待って」
「へ? アーク?」
「あの、さっき僕達、ここのギルドの弟子だと名乗るポケモンに襲われたんです。それで、ここのポケモンはそんな事をするのか調べに来たんですけど……」

 アークが事情を説明すると、ハーモって名乗ったペラップは固まっちゃった。あ、騒ぎを聞いた周りのポケモンも集まってきたみたい。

「何だってぇぇぇぇ! そんな、そんな事したなんて話聞いた事無いよ!?」
「へ? じゃああいつ等、帰って来て何も話してないって事?」
「そ、そのポケモンはどんな種族だったんだい?」
「えっと、ドガースとズバットのコンビです」
「うーん、うちの弟子にその二匹は居ないよ」
「それって……」
「……どうやら、あの二匹が逃げる為についた嘘に騙されたみたいだね」

 うっそー! つまりあいつ等みすみす逃しちゃったって事!? ぬぁー屈辱だわー。

「うー、こんな事ならあの時見逃してやったりしなかったのにぃ」
「どうやら君達は悪いポケモンを追い掛けてここに来たみたいだね」
「えぇ。どうやら無駄足になっちゃったみたいだけど」
「もしかして大事な物を取られたのかい? それを取り返しに?」
「いいえ、取られたのはこの石っころ。それも取り返しはしたんだけどね、二度と悪い事しないようにするのを出来なかったってだけ」

 元はといえばこの石を持ってたのが襲われる原因になったのよね。いい加減捨てようかな。

「おや、その石、何か模様が入ってるみたいだね」
「え? あ、本当だ」
「なんだろう? 不思議な模様だね」
「ふーむ、何処かの遺跡の一部かもしれないね。誰かが持ってきた物かな」

 うーん、でも石には変わりないし、価値は無いに等しいくらいよねぇ。
ま、これについてはどうでもいいわ。捨てても捨てなくても大した物な訳じゃないし。

「あーぁ、じゃあもうやる事も無いし、帰ろっかアーク」
「そうだね。すいません、ご迷惑掛けちゃって」
「いやいや、誤解が解けたんなら気にしないよ。でも、その悪いドガースとズバットは気になるね……」
「確かに。あの様子だとまーた悪い事するかもしれないし、改心させてないとなると私ももやもやして気持ち悪いなぁ」
「ふむ、そういう事なら……」

 なんだろ? ハーモが私とアークの顔を見て頷いてる。

「君達、探検隊をやらないかい!」
「は? 探検隊を?」
「そう。見たところ悪いポケモンを懲らしめようとしてるみたいだし、事情を聞いた限り、海岸の洞窟らしいけど不思議のダンジョンを探検もしたみたいじゃないか。素質はバッチリそうだしね♪」
「でも、探検隊になるのと悪いポケモンを懲らしめるのにどういう関係が?」
「それは、なってくれれば明日にでも説明するよ♪ ……素質のあるポケモンをみすみす逃すのも勿体無いしね……」

 なんか後ろ暗い思念を感じた気もするんだけど、悪くない話かな。前になろうとしてここに来ようとした事があるし。

「うーん、探検隊ってなるのに必要な事ってあるの?」
「あぁ、それなら簡単だよ。やる事は二つ、まずはここの親方であるプクリン親方に会うこと。そして、ここで探検隊としての修行をするんだ」
「修行。修行かぁ」

 強くなるのにも丁度良さそうでいいかも。修行ならこっちからウェルカムだしね。

「キーネ、どうするの?」
「私はありかなーって感じかな。アークは?」
「僕としては、どっちにしろ記憶も無い事だし、しばらくは君と一緒に行動したいかな」
「それなら……一緒に探検隊、やってみよっか」
「うん! ……実はちょっと面白そうだなって思ってたところだったんだ」
「決まりだね♪ それじゃ、親方様に挨拶してもらうからついて来て♪」

 成り行き任せなところもあるけど、結果オーライって事にしておこっと。探検隊かぁ、なれば色々な所に行き易くなっていいかも。
さっきまで居た場所から更に下って地下二階、どうやらこっちがギルドに修行に来てるポケモンの利用するところみたいね。

「ところでハーモ、ここって地下な筈なのになんで外が見えるの?」
「呼び捨てって……まぁいいや。ここは崖をくり抜いて作られた場所だからね、地下に居ても外が見えるのさ」
「へぇ、あ、本当だ。凄い所に建ってるね、ここ」
「ほらほら、親方様はこっちだよ」

 ハーモに促されて、窓を見に行ったアークも戻ってきた。なんだかんだで好奇心旺盛だね、アークって。
さて、何やら意味深そうな扉が開けられて、中に居たのは……。

「親方様、新しく探検隊になりたいと言っているポケモンを連れてきました」
「語弊があるなぁ、ハーモが私達をスカウトしたんじゃない」
「うっ、いやそうだけどね?」
「キーネ、まぁまぁ」

 ……って言うか動かないんだけど。あれ、どうしたんだろ。

「……あれ? 親方様?」
「やぁっ!」
「わぁ!?」
「僕、プクリン! このギルドの親方だよ?」
「……なんで疑問形なの?」
「気にしないでおいて。こういう方だから」

 ま、マイペースというかハイテンションというか、なんとなく大物な感が無くはないって言えば聞こえはいいかな?

「探検隊になりたいんだよね? じゃあ一緒に頑張ろうね!」
「は、はぁ……」
「それじゃあまずはチーム名を決めちゃわないとね!」
「チーム名?」
「君達二匹はチームって事になるからね。必ず決める事になってるから、ちゃちゃっと決めておくれ」

 いやそれそんな簡単なノリで決めちゃいけない物でしょ。これからチームとして名乗る事になる物なんでしょ?
うぅーん、私こういうの考えるのって苦手なんだよね。アークに聞いてみようか。

「アーク、何か良い名前ある?」
「うーん……そうだ、『ブレイブ』なんてどうかな?」
「ブレイブ?」
「うん。意味は、勇気とか勇敢……だった筈。キーネにはぴったりかなと思ったんだけど、どうかな」

 ブレイブ、勇気か……うん、いいんじゃないかな。

「オッケーそれ貰っちゃおう。良い名前だしね」
「決まりだね! じゃあブレイブで登録しちゃうよ。登録登録♪」
「悪いポケモンを追い掛けてここまで来ちゃうくらいだから、確かにぴったりかもね」

 ハーモの苦笑いがちょっぴり気になりはしたけど、まぁいいや。
これで終わりなのかな? あ、後は修行ってどうするのか聞かなきゃ。

「たぁーーーーー!」
「へ!? 何々!?」
「おめでとう! これで君達も今日から探検隊だよ! やったね!」

 それはいいんだけど、最初の妙な気合は何!? 驚かしたかったの!?
いや、多分なんにも考えてないね。あれは……そういう賢しい事を考えるタイプには見えないわ。なんていうか、天然の塊って表現がしっくり来る感じ。

「これは僕からのプレゼント! さぁ、開けてみて♪」
「あ、ありがとう……」

 目の前に置かれた箱を開けてみると、中には探検隊初心者キットって書かれた紙が貼られたバッグが入ってた。
バッグの中には更に色々入ってるみたい。えっと、地図にバッチが二つ、それにリボンとスカーフが一つずつかな。

「その地図は不思議な地図。と~っても不思議な凄い地図だよ」
「……簡単に説明すると、持ち歩きながら行った場所が浮かび上がってくる凄い地図だよ」
「そしてそれが探検隊の印の探検隊バッチと、自分の力を高めてくれる道具♪ そのトレジャーバッグも不思議で、君達が活躍すると入る物が増えるんだ!」
「……ハーモ、どういう原理なの、これ?」
「私に聞かれても困ってしまうんだけど……そういう物だって覚えててくれればいいよ」

 腑に落ちない事もあるけど、貰える物は貰っておこうかな。
そうだ、折角貰ったんだからスカーフとリボンを身につけちゃおうか。……私、スカーフがいいなぁ。よーし!
リボンを手に取って、アークの首に巻いてと。

「えっ、え? キーネ?」
「ちょっと動かないでねアーク……これで、よしと」
「おや、なかなか似合うじゃないか」

 うん、白い毛にオレンジのリボンってなかなか似合うね。あ、ちょっと可愛いかも。

「えっと、なんで僕がリボン?」
「あ、あはは、ごめんね? でも、早い者勝ちって事で……私がスカーフじゃ駄目?」
「……もう巻かれちゃったからね、それじゃあキーネには僕が付けてあげるよ」
「ありがと。それじゃ、腕に巻いてくれる?」

 首だとちょっと窮屈な感じがしちゃうんだよね、私。……うん、ばっちり。赤いスカーフなんて、結構お洒落かな。

「わぁ、いいないいな~。仲良し仲良し♪ でも、二匹とも見習いって事になるから、無理しないで頑張ってね~」
「はーい」
「それじゃあ修行の事を説明するから出るよ。では、親方様」
「は~い。ハーモ、よろしくね~」

 これで挨拶は終わりみたいだね。あ、溜め息ついてる。ハーモも苦労してるみたいだね。

「さて、それじゃあ修行について説明するよ」
「えっと、修行は今日から始まるんですか、ハーモさん」
「もうハーモでいいよ。今日はもう日も沈んじゃうし、修行は明日からだね」
「あ、ならもう帰らないといけないのかな」
「いや、修行をするポケモンはここで寝泊りしてもらう事になるんだ。それは今日から始めてもらうよ」

 あ、そうなんだ。それなら明日、家にある木の実なんかはこっちに持ってこようか。駄目にしちゃうの勿体ないし。
とりあえず部屋に案内するって事になったからまたハーモと移動。……あ、本当だ、弟子の部屋っていうのが二つある。

「あれ、ここじゃないの?」
「うん、言っちゃうと君達は飛び入りだから、部屋の用意とか出来てないからね。今日は私と同じ部屋を使ってもらうよ」
「そっか、急に決まったもんね」
「そうそう。はい、ここが今日の部屋だよ」

 そのまま突き当たりの部屋に入ると、なんだか大量の藁が積まれてた。ここが、ハーモの部屋なの?

「ここはベッドに使う藁を入れておくのも兼ねてるから、準備も早く終わるでしょ」
「あ~、なるほど」
「それなら、早速寝るところを準備しようか」
「うんうん、明日からは朝早くから修行が始まるからね、ゆっくり休む為にも頑張ろう!」
「おー」

 ま、修行は始まってるって事で、私とアークの寝るところをさくさくっと作るとしようか。

----

 準備も無事に終わって、ふかふかした藁のベッドが二つ完成した。明日からはどうなるか分からないけど、今日はここが寝床だね。
なんだかもうギルドの皆が集まっての晩御飯は終わっちゃったみたいだから、ハーモがりんごを二つ持ってきてくれたよ。これで晩御飯は済ませて、今日はもう寝ちゃうだけだね。
あ、ハーモは今、弟子が夜中に逃げ出さないようにギルドの入口がしっかり閉まってるか確認しに行ってる。……本当、忙しそうだよ。

「……ねぇキーネ、まだ起きてる?」
「ん? うん、起きてるよ」
「今日は……ありがとう。僕の事助けてくれて」
「あはは、それは言いっこ無しだよ。私もアークに色々助けてもらったしね」
「ううん、こんな、自分が何者なのかも分からない僕の事をリードしてくれたの、凄く嬉しかった」
「アーク……」

 やっぱり、心細いのかな? 記憶が無くて……。
でも、それが当たり前だよね。自分が何処から来て、何処に帰るのかも分からないんだもん、不安だよね。
うーん、こういう時って励ますような事言った方がいいよね。でも、なんて言おう?

「でも今日は楽しかったなぁ。キーネに出会って、一緒に戦ったり探検隊になったり」
「あ……ごめんね、結局色々巻き込んじゃって」
「気にしないで。さっき言った通り僕は凄く助かったし楽しかったもん」
「そっか……うん! それなら明日からも一緒に頑張ろ! そうしてれば、きっとアークの記憶も戻るよ!」
「そ、それはどうかな?」
「そうだよ!」

 ……励ましとどうかと思ったけど、少しだけアークが笑った声が聞こえたし、オーケーだよね?
それじゃあ、あまりお喋りしてないで寝ようか。気を利かせて、ハーモが部屋に入らないで待ってる事だしね♪

「それじゃ、そろそろ寝ようか」
「うん。お休み、キーネ」
「お休みアーク。それに、ハーモもね」
「……やれやれ、気付いてるならもう少し早く声を掛けてほしかったよ」
「私達の話、盗み聞きしてたんだからそれくらい許してよー」

 ……明日からは探検隊として修行が始まるのか。一体、どんな事をやる事になるのかなぁ。
それに、出来ればアークの記憶の手掛かりも探したいよね。アークもきっと思い出したいだろうし。
なんにしても、色々始まるのは明日から。今はゆっくり休もう。
……お休み、アーク。それにハーモ。

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恐らく珍しい、ゲーム内ではパートナーとなるポケモンからの視点で進めるストーリーいかがでしたでしょうか?
更新は月一度程度にはなると思いますが、これからも続けていこうと思います。
変なところもあるかもしれませんが、その辺りはアドバイスや誤字報告を頂けるとありがたいです!

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