一ヶ月に一度~とか言いながらこんなに時間の掛かったダメな作者です。色々な物にうつつを抜かしていた所為だなんて言えない…はっ! 基本的に原作のストーリーに沿って進めていく予定のこのシリーズですが、随所にオリジナルで色々入れてしまう予定ですので原作をそのまま大事にしているという方は戻るボタンを押す事をオススメ致します。 目次は[[こちら>ポケダン空の探検隊IF 空の特攻隊! 目次]] ---- ん、うーんよく寝た。……あれ? ここ……どこ? ってそうだった、昨日私、プクリンのギルドに弟子入りしたんだったっけ。 隣ではまだアークが寝息を立ててる。よかった、昨日の事は夢なんかじゃなかったんだ。 あれ? ハーモが居ない。っと、窓から外を見たらやっぱりまだ夜明け前だった。流石、染み付いた習慣の成せる技だよね。 うーん、何時もならタウンを軽く五周くらい走ってくるんだけど、今日はどうしよ? そもそも、ここから出れるのかな? とりあえずここから出てハーモでも探してみようか。アークは……もうちょっと寝させてあげよう。 寝室から出ると、通路に沿って部屋への扉が二つ。確か、他のここの弟子が寝泊りしてるんだっけ。こっちにも動く者の気配は無いから、ハーモも居なさそうだね。 そのまま地下ニ階の広場に出ると、締め切られたプクリン親方の部屋のドアがある。こっちも外れか。 「ん? おや、キーネじゃないか」 「あ、ハーモ。お早う、上に居たの?」 「あぁ、上は弟子じゃない探検隊も利用する場所だからね、この時間にしか掃除出来ないんだよ」 なるほどね、ハーモそんな事もしてたんだ。 「ついでに、脱走しようとした弟子が居ないかのチェックもね」 「脱走? そんな事しようとする弟子も居るの?」 「理想と現実には、図らずも大きな溝があるものなんだよ……」 あー、今のでどういうポケモンが逃げ出したのかなんとなく分かったわ。探検もその修行もそんなに簡単な訳無いもんね。って言うか簡単じゃ私的には困るし。 今の話の通りなら、なかなか歯応えのある修行が出来そうじゃない? 一匹修行にも飽きてたし、弟子になったのを後悔しない程度には期待したいかな。 よーし、それならいつもの感じで軽く外でも走ってこようかな。あれしないとなんか物足りなくなっちゃうし。 「なるほどね。まぁそれはいいとして、今って外に出ても大丈夫?」 「それはいいとしてって……構わないけど、どうかしたのかい?」 「あぁ、毎朝町の中走ってるから走らないと落ち着かなくて。いいよね?」 「そういう事か。うん、構わないよ。ただ、日が出るくらいになると皆起きてきて朝礼をするんだ。それまでに帰ってきてもらうよ」 「了解。じゃ、行ってくるね」 って言って行こうとしたら、入口の開け方をまだ教えてないからってハーモが見送ってくれたよ。開け方を教えてくれないのは、流石にまだ信頼度が低いって事かな? ま、開けてもらえれば文句は無いし、時間も決まってるしさっさと行こうか。 そうだなぁ……サメハダ岩の上の崖まで行って折り返して、海岸を軽く見て帰ってこようか。頭スッキリさせるのには丁度良いよね。 この夜明け前のキリッと冷えてる空気が好きなんだよねー。海の近くだからいつも涼しいっていうのはあるけど、この時間の空気は格別かな。 階段を降りて十字路まで来たけど、やっぱりまだ往来は無いね。まぁ、一人で居た時によく見た景色だし代わり映えは無いよ。 階段を降りて十字路まで来たけど、やっぱりまだ往来は無いね。まぁ、一匹で居た時によく見た景色だし代わり映えは無いよ。 そこからトレジャータウンを横切って、サメハダ岩へ。うん、町の中も変わらず静かだな。賑やかな町も好きだけど、こうやってこれから目覚めてく町も私は好き。 そのまま一気に崖まで抜けて……サメハダ岩の崖に到着。波は穏やかで天気は晴れ。今日も良い日になりそうだなー。 サメハダ岩って言うのは、ここトレジャータウンの町外れのこと。海側から見れば分かるんだけど、ここの下って丁度サメハダーが口を開けてる姿にそっくりに崖が割れてるんだよ。 で……実はその割れ目の中で暮らしてるポケモンも居るの。居るのっていうか……私なんだけど。 あー、来るんだったらついでに貰ったバッグ持ってくればよかったな。置いてある木の実とか回収していけたのに。まぁいっか、また昼間に来ようっと。 おっと、日の出も迫ってるし次に行かなきゃ。また町を駆け抜けて、十字路をギルドへ続く階段の逆へ。ここはもちろん、アークと昨日知り合った海岸だよ。 「よし、到着。んー、ここで伸びをするのが一番気持ち良いー」 盛大に伸びをして、体をほぐす為に軽く体操。これをして完璧に体が目を覚ますって感じかな。 波の音が心地良いし、潮風が最高なんだよね。やっぱり素振りや体操するならここ以外無いわ。 よっし、朝の習慣終了! 日も半分くらい顔を出したし、そろそろ戻ろうか。でもよかった、これが出来ないとストレスで仕方ないところだったよ。 また十字路まで戻ってと……ありゃ、階段のところまでハーモが来てる。どうしたんだろ? 「あれ、どうしたのハーモ?」 「いや、どの辺りまで行ったのかなって見に来たら、丁度キーネが海岸へ行くのが見えたんで、朝日を見ながら待ってたんだよ」 「あっ、そうだったの? 見えてたなら海岸まで来ればよかったのに。この時間の海岸は気持ちいいよー」 「へぇ……なら私も、忙しくない時は付き合わせてもらおうかなぁ。ギルドの中に居るばかりだと、色々溜まってしまって困ってるんだよ」 うわっ、ハーモの吐いた溜め息が重いのが聞いてるだけで分かった。相当色々溜まってそうだねぇ。 「それなら尚更だよ。嫌な事も悩み事も、ちょっとはスッキリするかもよ」 「うーん……なら、明日から考えさせてもらうよ」 「うん、そうしよっ。ところで、そろそろ朝礼の時間?」 「あ、そうだね。そろそろ皆起きてる頃だよ」 それならアークの事も起こしてあげないとね。あー、朝のランニング、誘ってあげればよかったかな? それなら今ここにアークも居たから、わざわざ起こしに行かなくてもよかったね。 ハーモと一緒にギルドの中に戻ると、もう何匹かのポケモンが居た。へぇ、私が走ってる間に来たのかな? 探検隊の朝って早いんだ。 「こらぁぁぁぁ! 起きろぉぉぉぉ!」 「ん? 何、今の声?」 「今のは……ドゴの声だ。あ~、昨日最後に話した時、新人には朝からビシッとしてやるとか言ってたっけ……」 それって……私がここに居るって事はアーク!? こんなところまで聞こえてくる声で起こされたら、アークの耳が大変な事になっちゃうんじゃ!? 急いで地下二階まで降りると、他の弟子だと思うポケモン達が親方の部屋の前に並んでた。けど今はそれに構ってられない! 「新米弟子の癖に寝坊とは図々しい! さっさと……」 「アークに何してんのよぉぉぉぉ!」 「おべげぁ!?」 なんか入口で怒鳴ってたドゴームに真っ直ぐにキックを叩き込んだわ。そのまま藁束の中に突撃よ。 アークは……うわぁ、目、回しちゃってるわ。大丈夫かなぁ? 「アーク、アーク! 大丈夫? 聞こえる?」 「み、耳がぁ……」 「うぐぅ……いきなり何をする!」 「うるっさい! そっちこそ朝っぱらからアークに何しちゃってんのよ! どつき回すわよ!?」 「うっ、その声は……昨日のギルド襲撃犯!?」 「あぁ、やっぱりあの入口で口喧しかった奴。昨日からこのギルドの弟子になったキーネよ。よ・ろ・し・く」 「ひ、ひぃぃ!」 あ、逃げてった。ふん、口ほどにも無いわね。 「うぅ……キーネ、お早う……」 「お早う。朝から災難だったわね……立てる?」 「大丈夫。まだ耳の奥が耳鳴りで酷いけど……」 うん、結構大丈夫そうね。よかった。 「これからギルドの朝礼っていうのがあるみたいなんだ。行こっか」 「そうなんだ。分かった、行こう」 アークの体を起こして、とりあえず広間に戻ろう。多分駆け抜けちゃったから『あれは誰!?』状態かなぁ。 広間に来てみると、やっぱり視線は集まるよね。一匹非常に怯えてるけど。 「あぁ、来たね。アークは大丈夫かい?」 「うん、なんとか」 「まったく……ドゴ、お前は朝から五月蝿い。明日からも朝から痛い目に遭いたくなかったらちょっとは静かにしなよ?」 「き、気を付けます」 私が笑いながらじーっと見てるんだからぐぅの音も出ないでしょうね。明日も同じ事したら窓から叩き出してやるんだから。 まぁ、それはいいわ。皆並んでるんだし、私達も並ばないとね。 「それじゃあ朝礼を始めようか。じゃ、まずは親方様からのお言葉だね。親方様ー」 ん? ハーモが呼んだら前の扉が開いた。……っていうか、こういうのの仕切りって親方自身がやるものなんじゃないの? 「それでは親方様、よろしくお願いします」 「……ぐぅ」 「ん?」 「ぐぅ……ぐぅ~、ぐぅ……」 「あの、ハーモ?」 「疑問は分かるけど、とりあえず今は気にしないで」 ……寝てる。プクリン明らかに寝てるよ。どうやって扉開けてここまで歩いてきたの? 寝てるフリ……とかじゃなくて完璧に寝てるよね、あれ。 目を開けたまま寝るってなんか疲れそう……いやもう、ツッコミどころがあり過ぎて何処から言えばいいか分からないわ。 「はい、親方様ありがとうございました。それじゃあ次、誓いの言葉!」 「ん? 何それ?」 「あぁ、アークとキーネは知らないよね。今はとりあえず聞いてて」 誓いの言葉か、どうやら何か言うみたい。これからは私達も言う事になるだろうし、きちんと覚えておかないとね。 『ひとーつ! 仕事は絶対サボらなーい!』 『ふたーつ! 脱走したらお仕置きだ!』 『みーっつ! 皆笑顔で明るいギルド!』 「……なんか前の二つを聞くと引きつった笑顔が浮かびそうね」 「いや、まぁ……気にしない方がいいんじゃないかなぁ」 「よし、それでは朝礼終わり! っと、その前に皆に紹介しなくちゃね。キーネ、アーク、こっちへ」 「あ、はいはい」 ハーモに呼ばれたからその横まで移動。……うん、プクリン完全に寝てるね。立ちながら寝るって器用……。 「昨日ここに入門した新しい探検隊、ブレイブの二匹だよ。リオルのキーネとニャースのアークだ」 「紹介してもらった通りで、キーネです。よろしく」 「えっと、アークです。これからよろしくお願いします」 皆からのよろしくーを聞いて自己紹介は終了。他の皆の事は、追々紹介してもらえばいいか。 「それじゃあ皆、今日も一日よろしく」 ハーモの一言で皆がそれぞれの仕事を始めるみたい。さて、私達はどうなるのかな? 「さて、キーネとアークは私について来てくれるかい」 「了解。何をする事になるの?」 「まぁまぁ焦らないで。すぐに分かるよ」 うーん、そういう事ならいいか。どうやら上に行くみたいだから私達もついて行こう。 地下1階に上がってくると、ハーモは右に曲がっていく。あれ、何かあるね。掲示板、かな? 「ハーモ、それは?」 「これは依頼掲示板って言って、このギルドに寄せられた依頼が掲示されてるんだ」 「依頼……つまり、仕事って事でいいのかな?」 「ちょっと違うかな? 仕事には違いないけど、大体は不思議のダンジョンに関係していて、普通に暮らしてるポケモンでは困難な事がここに寄せられてくるんだ」 「なるほど、それを探検隊である私達なんかが解決するってことね」 「そういう事。基本的に君達にはこういった依頼を片付けていってもらうよ」 ふむふむ、困ってるポケモンを助けられてダンジョンの探検も出来る。一石二鳥で丁度いいじゃない。 「へぇ~、僕はもっと大変な事するのかと思ってたよ。誰も行った事のない場所を調べてくるとか」 「流石にそんなに大変な事はさせられないさ。実力はあっても、君達は入りたてなんだからね」 「まぁ、まずはコツコツが常識よね。それじゃあ、この中から仕事を選べばいいのね」 「うん。あ、それと今日の依頼には私も同行させてもらうよ。君達の実力、実際に見てみたいからね」 ふむ、つまり今日は三匹で行動するってことね。了解よ。 それじゃあ……肩慣らしだし、あまり遠くまで行かない仕事を選ぼうか。 「あれ? この紙が依頼……なんだよね? このランクって何かな?」 「あぁ、それは探検隊ランクって言って、探検隊の評価や実績を分かり易く表示したものだよ。君達は今ノーマルランクだから、それ以上のランクの依頼はまだ受けられないからね」 「ふーん、なるほどね。なら、今日はこの辺りの仕事にしようか」 適当に私が取った紙には、何か色々書かれてた。依頼者は……バネブーね。 「どれどれ……悪者に盗まれた真珠が、湿った岩場ってところで見掛けられたって情報が入ったからそれを見つけて持ってきてほしいと。ふむ、それならここからそんなに遠くないし、いいんじゃないかな?」 「私としては盗まれたってところが気になるけどね」 「なんだか物騒だね……」 「最近はこういう被害も増えていく一方なんだよ。噂では、時が狂い異常が生じている所為で悪いポケモンが増えている、なんて言われてるけど」 「時が狂う? 私は初耳だわ」 「時って、時間ってこと?」 「まぁ、根も葉もない噂でしかないけどね。でも、時というか空間というか、それが捻じ曲がっているような場所が増えてるのは確かだよ」 「……! それって、昨日の洞窟みたいな……」 「不思議のダンジョン、ね。確かにあの場所に居るポケモンはおかしくなってるし、それの影響で悪いポケモンが増えてるとも言えなくもない、か」 そうして考えると、不思議のダンジョンに入るのって結構危険ね……まぁ、そうも言ってられないけどさ。 「ここで考えてても仕方ないさ。とりあえず、今日はこの依頼をこなすとしようか」 「そうね。よし、行こうアーク、ハーモ」 「うん。凄く大事なものみたいだし、ちゃんと見つけないとね」 「見掛けたポケモンは何故持ち帰らなかったのか多少疑問ではあるけどね……」 確かに……何かあるのかな? 一応用心はした方がいいかな。 さて準備、といっても鞄はもうアークが持ってるし、後は行くだけなんだけど……その前にちょっと寄り道させてもらおうか。 「アークもハーモも、ちょっとだけ寄り道していいかな?」 「寄り道? どうしたんだい?」 「昨日急にここに泊まる事になったじゃない? だから、家から木の実とか持ってきたいんだよね。痛ませたら勿体ないし」 「あ、なるほど」 「そっか、結局昨日はキーネの家に行かなかったもんね。僕はいいよ」 「私も異論無いよ。何処なんだい?」 「サメハダ岩。すぐに済ませるから」 あまり時間を掛けても悪いし、ささっと行かないとね。 ギルドを出て、まずは町の方へ。うん、やっぱり朝よりは活気があるね。 「おやキーネちゃん。今日は一匹じゃ……あら? 一匹はギルドの一番弟子さんじゃないか。それに、知らない子も居るね」 「あ、ガルーラさん。まぁ色々あって、このアークとギルドに入門しちゃってね。今日はハーモも一緒に探検……と言うより探し物ね」 「えっと、知り合い? キーネ」 「知り合いと言うより、探検隊なら誰でもお世話になる方だよ。貸し倉庫を営んでるガルーラさんだ」 「へぇ、ガルーラさんて貸し倉庫なんてしてたんだ」 「まぁ、キーネちゃんは探検隊じゃなかったから知らなくても仕方ないかもね。でもそうね……これからは探検隊なのよね? なら、何か預かって欲しい物があったら私のところに持ってきなさい。きちんと預かってあげるから」 へぇ、それは助かるかな。家ならともかく、ギルドじゃあ荷物を保存しておくのも難しそうだしね。何かあったら利用させてもらおっと。 「うん、ありがと。さ、立ち話してないで用事済まさないとね」 「あぁそうだった。それではガルーダさん、これからもギルドの者のこと、よろしくお願いします」 「はいはい。あ、アーク君……でいいのよね? 君もいつでも来なさいね」 「は、はい。ありがとうございます」 アークもそんなに畏まらなくていいのに。気さくな良いガルーラさんだよ。 さて、ガルーラさんのところを過ぎれば後はすぐ。一応入口は隠してあるし、葉っぱを避けて~っと。 「おぉ!? こ、こんなところに下り階段が……」 「ま、一応暮らしてるんだから入口くらい隠しておかないとね。すぐに済むけど、入る?」 「うーん、ちょっとお邪魔してみようか」 「でも、入っちゃっていいの?」 「もちろん。大した物は無いからね」 てってってーっと降りて……うん、特に変わりは無いわね。 「わぁー! 海が見えるよ!」 「これは……驚いたな」 「ま、ここが私の家。なかなかいいでしょ?」 「完全にサメハダ岩の割れ目の中に居る……ってことでいいのかな?」 「あったりー。見つけた時はラッキーだったわ。他に使ってるポケモンも居なかったしね」 さて、木の実のある箱は……うん、あるある。八個……入るかな? 「アーク、ちょっと鞄貸して」 「うん、はい」 そんなに大きくない鞄だけど、入るのかな? ポイポイっと……うわ、入った。どんな原理なのかしら、これ。 後今必要な物は……無いわね。ま、必要になったらまた取りに来ればいいか。 「オッケー、準備はこれでいいわ。……なんか二匹とも寛いでるわね」 「い、いや、思ったよりもいいところで、つい」 「眺めもよかったし、つい……」 「気持ちは分かるけどね。さ、行こっか」 「うん、そうだね!」 「いかんいかん、一番弟子としてしっかりしなきゃ……よし、行こうか」 本当にハーモって疲れてるのねー。気を張り直したみたいだし、行くとしようか。 ---- トレジャータウンから出てしばらく歩くと、妙にジメジメした岩場に着いたわ。湿った岩場……名前の通りね。 とりあえず危険な反応は無し。でもそんなに良い感じはしないわね……空気が妙だわ。 「ん? どうかしたのかい二匹共」 「……アーク、やっぱり……アークも何か感じるのね」 「うん、なんて言うか……空気が震えてるって言うのかな? 気を付けた方がいいかもしれない」 「え? 私には何も感じないんだけど……」 「ううん、アークの言う通りね。ハーモ、妙だと思うかもしれないけど、気を付けて進んでね」 「わ、分かったよ。……一体、ここに何が?」 「具体的にはちょっと分からないかな。とりあえず、気を付けて進もうよ」 二匹が頷いたのを見て、岩場へ足を進める。何も無ければそれで良し。何かあったら……二匹はしっかり守らないと。 でも、ここ自体あまり足場がよくないなぁ。湿り気の所為で岩自体が滑る。変な足の付け方をしたら転んじゃ……。 「ふぁ、うわぁ! いっててて……」 「あらら、注意する前に転んじゃったか。アーク、大丈夫?」 「無理もないよ。私でも油断すると転んでしまいそうだし……キーネ、よく何事も無く歩けるね?」 「ま、その辺は足の運び方次第かな。こればっかりは鍛錬の仕方に寄るものだから」 「は~、探検隊だった訳じゃないのにその実力、キーネって一体何者なんだい?」 「ただの修行好きのリオルだよ。ちょっとばかり、程度がおかしいかもだけど」 ……強くなりたい。ただ、そう願ってきたからね。でも、まだ……。 おっと、今はそういうのは無し。まずは依頼を解決する事を考えなきゃ。 「私の事は追々話してあげるわ。今は前に進みましょ」 「……そうだね。アーク、立てるかい」 「大丈夫。行こう、ハーモ、キーネ」 「そうね。まだ先までありそうだし、足を止めてたら日が暮れちゃうわ」 「それは勘弁。あまりギルドを空けてると、弟子達がサボりだすかもしれないしね」 「それは、プクリンが居るから大丈夫……じゃないわね」 「大丈夫ならどれだけよかったか」 「は、ハーモも苦労してるんだね……」 「分かってくれるのは君達だけだよ、本当に……」 ハーモのストレスをこれ以上増やさない為にも、急ぎ目で進もうか。アークには、少しづつ足場に慣れてもらうしかないかな。 しばらく進んできたけど、不思議のダンジョンだからって訳じゃなく妙だわ。周りが、静か過ぎる。 それに、他のポケモンが出てこない。侵入者である私達がここに居るのに、どうして? 妙な空気の揺れは収まってない。いえ、寧ろ強まってる。間違いなく、奥から感じる。 「凄く、嫌な感じ……怒ってる? ううん、悲しんでる? 違う、止める? 止めてほしい?」 「ど、どうしたんだいアーク」 「そこまで具体的には分からないけど……ハーモ、気を引き締めて行かないと……かなり危険よ」 「え、えぇ!? いやだってここは、そんなにトレジャータウンから離れてないんだよ!?」 「だったら尚更、未然に危険は無くしておかないと、でしょ?」 「でもそれなら君達は……」 「ルーキーだからとか、そういう事言ってる場合じゃないの。覚悟決めないなら、置いていくからね」 拳をハーモに突きつけて、選択を促す。……出来れば、引き返してほしい。これから先は本当に危険だわ。 一瞬怯んだけど、真剣な表情になってハーモは私の拳を避けた。……行くのね。 「そんなに危険があるのなら、一番弟子として弟、妹弟子が危険に向かっていこうとしてるのに自分だけ逃げる訳にはいかないでしょ」 「……ふふっ、怪我してもしらないからね。アーク、行けるね」 「うん! 凄く苦しんでる……苦しんでるポケモンが、この先に居る!」 オッケー、だったら行きましょうか! 先に進むと、そこはどうやらこの岩場の終点だったみたい。……やっぱり、ここからだったのね。 「なっ……なぁ!?」 「まさかとは思うけど……これはきっついわねぇ」 まったく、ただの真珠の回収がとんだ大仕事に変わっちゃったわ。いえ、寧ろ他のポケモンがこの仕事を受けなくて良かったってところかしら。 「このポケモンって……」 「ガ……」 「ガブリアス……」 「グゥオアアアアァァァァァァア!」 「な、なんでこんなところに!?」 「……ハーモ、胸のところを見て」 「あれは、探検隊バッジ!?」 どうやら同業者がなんらかの原因で暴走しちゃってるみたいね。質が悪いわね、もう。 「苦しんでる……狂いたくないって言ってる!」 「分かるの、アーク? 狂いたくない、か……」 「! 不味い、こっちに気づいた! 来るよ!」 うぉっと、考えを纏める暇くらい頂戴よ本当にぃ! 我武者羅に突っ込んできたわね……これは、纏まってる方が危険か。 「う、うわぁ!」 「うわ!? 岩に刺さったぁ!? こんな爪を受けたら一堪りも無いよ!?」 「固まったら不味いわ! 見境は無いみたいだし、ニ匹共避ける事に専念して! よく見れば避けれるから!」 「わ、分かったよ!」 「そうしないと不味そうだ。了解したよ!」 さて、三匹で取り囲むような陣形にはなったけど、探検隊として経験を積んでるハーモはまだしも、アークの方を狙われるのはかなり不味いわね……なんとかこっちに引き付けなきゃ。 「ガァァァァァ!」 「ひょわぁ!? ふ、風圧だけで吹き飛ばされそうだ……」 「くっ、腕を振り回すから近付けない……ちょっとでも隙が出来てくれれば違うんだけどな」 近付く事自体は難しくないけど、返しを受ければ絶対に体がもたないわ。全員そうだろうし、ほんのちょっとでいいから止まってくれないかしら。 っと、こっち来ちゃった! 避けて隙間を……ってうわぁ! 腕の刃の所為で思ったよりも攻撃範囲が広い! ちょっとでも止まったらザックリ持って行かれちゃう! 距離を取って……うぅ~、なんで私だけしっかり睨みつけてくるのかしら!? 完全に狙われてるじゃない! 「嫌になる、わね!」 「キーネ! ど、どうすれば……」 「この、クワァァァァ!」 「!? グゥゥ!?」 ハーモナイス! 多分騒ぐを使ったのね! 頭を押さえてる今なら……。 「でぇやぁぁぁぁ!」 「グァァァァ!?」 「キーネ、凄い!」 「マッハパンチ!? い、いや……」 そんな技使えたらよかったんだけどね。残念ながらただのパンチよ。 でもお腹に10発も叩き込んだら流石に……弱ってるけどまだまだ元気なのね。うわ、地味にショック。 「グゥゥゥ……」 「火に油だったかな……」 「いや、確かに弱ってる。もっと強い一撃ならきっと!」 「……あるにはあるけど、腕を抑えるだけじゃちょっと狙えないかな。さっきので近寄るのは警戒されただろうし」 「つまり、足を止めればいいんだね。それなら、僕にも何か出来そうだ」 「アーク? っと、作戦会議をしてる暇も無さそうね」 鼻息は荒いし、明らかに怒ってるわね。早めにケリを付けないと不味そうだわ。 うわやっばい! 地面を滑るように動くのはガブリアスの十八番だったわね。刃を前に向けてるし、当たったらお陀仏だわ。 「くぅぅ」 「不味い、本気を出してきた!?」 「滑るのが上手いなら、こっちに来てみなよ!」 「え? アーク!?」 石なんかぶつけても怒らせるだけだったら! あぁ、ガブリアスもアークを狙ってる! 「挑発なんかしちゃダメ、アーク!」 「任せてキーネ、僕が……チャンスを作るから!」 「アークは何を、ん? キーネ、アークの後ろの岩って」 「え? あれは……水? 水が湧いてる?」 まさか……いやでも、だとしたら絶対にガブリアスの足は止まる。そこにハーモが騒ぐを使ってくれれば……いけるかも! 「ハーモ、騒ぐを準備しておいて」 「なんだって? でも、今撃ったらアークにも……」 「大丈夫、アークを信じましょ」 「絶対助けてあげる。だから、ちょっと痛いのは我慢してよ」 「ガァァァァァァッアァァァァ!」 ガブリアスが滑り始めた。頑張って……アーク! 引き付けて……真横に跳ぶ。やっぱり、考えた通りね。 ここの岩は元々湿り気で滑り易い。だからガブリアスの滑走も速さを増すわ。それ自体は驚異でしかない。 ただし、その先にもっと滑る場所があって、自分の狙う対象が急に横に移動したらどうなるかしら? 結果は、見なくても分かるわ。 「掛かった!」 「ガゥゥ!?」 「横転した!? そうか、勢いがつき過ぎたってことか」 「その通り。ハーモ、私の言うタイミングで騒ぐを使って」 「任されたよ!」 起き上がろうとすれば、自然に地面に手を付く。そして、足場が悪いんだから跳び起きるような事はしない。片膝を付いてる……今! 「ハーモ!」 「クゥワァァァァァァ!」 「ガァァァ!?」 頭を押さえた! まだ立ち上がってない今が……勝機! 「キーネ、お願い!」 応援には、答えたくなっちゃうのよね私って! 両手それぞれに体を巡る気を集めて、踏み込みと共に一気に相手に流し込む。手の平を重ねた双掌の一撃、喰らってただでは済まないわよ! 「二奏……発勁!」 「!?」 「す、凄い。ガブリアスの体に、波紋が出来た!」 それは衝撃と気が相手に伝わった証拠。あー、下にした右手が痛い。威力は申し分無いんだけど、ネックは狙えるタイミングがあまり無いのと、使った後で片手がしばらく使えなくなることね。 でも今回は完璧に入ったんだもん。ぐぅの音も出ないで、ガブリアスはダウンよ。 「ふぅ。なんとか、なったかな」 「た、倒せた? 倒せたんだよね!?」 「体の芯まで痺れてるだろうし、当分動けないのは確かよ」 「それに、嫌な感じがキーネの技で吹き飛ばされた感じがしたよ。だからきっと、もう大丈夫」 「は、はぁ~……まさか倒せちゃうとは……」 「本当ね。アークとハーモがチャンスを作ってくれてなかったらって思うと、ゾッとしてくるわ」 「は、ははは……今更になって、震えてきちゃった。あ、あれ、立てないや」 「震えて当然だよ。私だって、今更総毛立ってるんだから」 はぁ~、私も気を張ってて疲れちゃった。まずは、ちょっと座って休もう。 「多分、これが真珠を見掛けて回収しなかった理由ね」 「でも私達の前に来た探検隊が居る筈だ。まさか……」 「被害にあったんなら、見掛けたって情報も入ってこないでしょ? 多分、異様な気配にだけ気付いて、ここの手前で引き返すか帰るかしたんじゃない?」 「なるほど……じゃあこのガブリアスが、真珠を盗んだ犯人?」 「それはどうだろうね。これだけ危険なポケモンが町の近くまで来たのなら誰かが気付くし、犯人は別で、その犯人がこのガブリアスと出会って逃げ出した時に落としたって考えるべきじゃないかな?」 ハーモの言う通りね。一般のバネブーなんかがこのガブリアスに遭遇してたら、恐らく命は無かったでしょ。 って、そうよ真珠! 私達の目的って真珠じゃない! 「呆けてる場合じゃなかった、真珠を探さなきゃ!」 「あ、そういえば。うーん、ここに来る道中にはそれらしい物は無かったね」 「あったとしても、場所が変わっちゃう不思議のダンジョンだったし見つけられないんじゃないかな?」 「うー、ここにある事を願うしか無いわね。手分けして探そう」 「といっても、ガブリアスが暴れて岩の破片が大分散っちゃってるね……」 「でも真珠なら目立つだろうし、頑張って探せば見つかるよ、きっと」 「ここにあればね……」 「あ、あぅ……」 なんて言ってアークを吃らせてないで探さないと。さっき話してた時の予測として、不思議のダンジョン内を探すのは無理。って言うかダンジョン内で見掛けたんなら流石に拾ってるでしょ。 だからここにあるって言うのが一番確率としてありそうだけど……まさかさっき暴れた所為で割れちゃった、なんて事ないわよね? 「あ、あった! けど……な、なんか予想より大きい」 「見つけたのアーク。あれ、なんか隅っこの方にあったね」 「うん、確かにバネブーが頭に乗せてる物だよ。確かに普通の真珠よりは比べられないくらい大きいけど」 「じゃあこれで間違いないんだね。隅にあったからなんともなかったのかな」 「そうみたいね。傷も……うん、無いみたい」 「これで割れてたりしたらさっきの苦労が水の泡になるところだったよ。いやぁ、本当に無事でよかった」 さて、ちゃんと無事に目的の物が見つかったのはよかった。けど、後はこれをどうするかね。 「で、どうしよっか」 「このガブリアスも探検家となると、このままここに置いていく訳にもいかないね……」 「う、うぅ……」 「あ、気が付いたみたいだよ」 「ここは……ぐ、体が、動かない……」 「無理して動けるような麻痺じゃないわ。痺れが取れるまでは絶対安静ね」 首を持ち上げようとしたガブリアスにそう言うと、大人しくまた横になったわ。多分木の実で治すにしても一個じゃ足りないでしょ。 あ、でも家から持ってきた木の実の中にクラボの実あったわね。気休め程度にはなるかな。 「アーク、鞄の中にクラボの実があると思うから食べさせてあげて」 「分かった。えっと……あ、これだね」 「うん、正気には戻ってるから食べさせても大丈夫でしょ」 「ありがとう……? 駄目だ、痺れが取れない」 「ま、それでも楽にはなったでしょ。後は、タウンに戻ってしばらく休めば治る筈よ」 「……そうか、あの技……凄い力だったな」 「覚えてるのかい!?」 「いや、思い出してきたって言った方が正しいな。申し訳ない、君達をとんでもない目に遭わせて……」 話を続けようとするガブリアスの口にそっと動く手を当てる。喋るのは休んでからで十分よ。 「まずは帰りましょ。うーん、何か良い方法無い? ハーモ」 「それなら簡単だよ。探検隊バッジを掲げてごらん」 「バッジを? えっと、こう?」 お、おぉ!? 私達の周りを光が囲む!? 「え? 何が起こるの!?」 「はいはい、喋ってると舌噛むよ」 うわわ、体が浮い……わぁぁぁぁ!? ---- 「ありがとうございます! ありがとうございます! もうこれが無い所為で飛び跳ねてもあっちこっちにぶつかっちゃって!」 「あらら、それなら無事に見つかってよかったね。もう変なポケモンに盗られないように気を付けて」 「はい! あ、これ報酬です!」 おぉ、またずっしりとした袋渡されたわ。あの紙に書かれてた『報酬で5000ポケお支払いします!』って言うのは本当だったのね。 それにおまけって事で数個の種と貴重な薬、リゾチウムも貰っちゃった。確か、素早さを上げてくれる薬だったかな? 私は使わないけど、持ってて損は無いかな。 「確かに。それじゃ、無い方がいいけど……また何かあったらギルドの方にどうぞ」 「はい! ありがとうございましたー!」 「うん、依頼者への対応も合格だね。ニ匹共お疲れ様」 「今回は本当にね。あ、ハーモはい」 「え? 渡しちゃうのキーネ?」 「ん? だってギルドの仕事として私達は仕事したんだし、その報酬はギルドに入れるのが普通じゃない?」 「あ、そっか」 「……くぅ! キーネ達の素直さと優しさに私は脱帽だよ!」 また大げさな……いやまぁ大金貰って素直にギルドに入れるなんて大抵は渋るだろうけどね。 「でも、一割は君達の取り分になるよ。流石に完全にただ働きじゃ嫌になるでしょ? それに、何か道具を貰ったらそれはそのまま使ってもらって構わないよ」 「へー、そうなんだ。……あれ? 一割にしては多くない?」 「今回は特別。あれだけの苦労があったんだから、流石に一割以上の仕事はしたと認めれるでしょ」 数えてみると、1000ポケも上乗せされてたわ。……ハーモからの申し出だし、ここは素直に受け取っておこうか。 「それにしても、今日は流石に私もくたびれたよ。でも、ついて行ったのは正解だったね」 「本当にね。もしハーモが居なかったら決定打に欠けてただろうし、アークが居なかったらチャンスも生まれなかった。案外良いチームかもね、私達」 「でも本当に危なかったよね……本当に、二匹が一緒に居てくれてよかったよ」 「……そう言えば気になったけど、どうしてアークはおかしくなっていたガブリアスの言ってる事というか、そのようなものが分かったんだい?」 「うーん……ごめん、僕にもよく分からない。ただ、そう伝わってきたのは確か、かな」 「ま、考えても仕方ないんじゃない? その辺りは私よりアークの方が感じ取りやすいみたいだし、今日みたいな時は頼りにしちゃうからね」 「うん、任せてよ」 アークの記憶があれば分かるかもしれないけど、無い物ねだりしても仕方ないしね。アークにはそういう事が出来る。それだけ分かれば十分よ。 「やれやれ、アークもキーネも凄いって事は十分に分かったよ。うかうかしてたらあっという間に追い抜かれちゃいそうだ」 「油断してると、私達が一番弟子になっちゃうかもね~」 「むむっ!? 私にだって意地があるんだから、ルーキーにそれはさせないよ!」 『あはははは!』 いやー、それにしてもお腹空いたわ。今日はもう自由にしていいって言われたし、ご飯までゆっくりさせてもらうとしましょうか。 あ、ガブリアスはどうなったかな? 今は私達の……あぁ、結局ギルドでの部屋はあのままハーモと兼用になったわ。そこに寝かせてるのよね。 「アーク、少しガブリアスの様子見に行かない?」 「そうだね。そろそろ痺れも取れてるかな?」 「うーん、動ける程度には回復してると思うけど……さっきは運ぶのにも苦労したからねぇ」 「バッジで戻れるのが岩場の入口までだったから、そこからタウンのポケモン達に協力してもらってだったからね」 そうなのよ、岩場の入口まですぐに戻れたのはいいけどガブリアスなんて三匹でも運ぶのは無理。だから町の皆に応援に来てもらったのよね。 地下二階に戻ると、なんかハーモが弟子の一匹のビッパを叱ってたわ。何かしたのかな? まぁ、首を突っ込む事無いよね? 部屋まで戻ると、ガブリアスは起きてた。ちゃんと動けるようにはなったみたいかな。 「ん、あぁ、君達か」 「その分だと、もう動くのは大丈夫みたいね」 「でも、まだ無理に起きない方がいいんじゃないかな?」 「心配は無用だよ。あまり迷惑は掛けていられないから」 別に気にしなくていいのに。結果としてどっちにも大した被害が出なかった事だし。 「ガブリアスのガディだ。改めてお礼を言わせてもらう、俺を止めてくれてありがとう」 「リオルのキーネよ。どういたしまして」 「ニャースのアークです。……でも、どうしてあんな事になっちゃったんですか?」 「それが分からないんだ。探検中、急に目眩がしたと思ったら体がいう事を効かなくなって、意識も遠のいていったところまでは覚えてるんだが……」 「探検中って事は、やっぱり不思議のダンジョンを?」 「あぁ、キザキの森という場所を探検中だった」 そこで不思議のダンジョンの力に当てられちゃったって事なのかな? まぁ、そう考えるのが普通かな。 「なんにせよ、正気に戻れたんだから良かったんじゃない。変に治らなくて悪いポケモンになっちゃったりって心配も無さそうだし」 「うっ!? そ、それは勘弁してほしいな……」 うん、笑えるみたいだし、心の方も大丈夫そうね。よかったよかった。 「それにしても、俺もかなり力には自信があったんだけど、まさか完全に倒されるとはな」 「頭数が揃ってたのが一番の要因よ。一匹でも欠けてたら、こうしてここで話をする状況にはなってなかったでしょうね」 「そうか……ん? そのバッジの色は……ノーマル?」 「えっと、僕もキーネも昨日探検隊になったばっかりで、初めての探検でガディさんと戦う事になったって感じで……」 「そ、そうだったのかい!? う、うーん……俺もまだまだ精進が足りないかなぁ」 「ま、正気じゃなかったんだからしょうがないでしょ。気にしなーい気にしない」 もう少し何か聞けるかとも思ったけど、別にいいかな。あまり深入りするのもどうかと思うし。 でも、探検に行く前に噂とか聞いちゃったからやっぱり気にはなるんだよね。増える不思議のダンジョンと悪いポケモン、それと狂う時、か。 ま、気にしたってそんなの私達にどうにか出来るものでもないし。初仕事を無事に終えられてよかったで終わらせておこうか。 ん? なんだろ、鈴みたいな音が聞こえる。 「皆さーん! 晩ご飯の支度が出来ましたよー!」 「あ、もうそんな時間だったんだ。お腹空いてたの忘れてたわ」 「あはは、僕もお腹空いたよ。行こうかキーネ、それとガディさんも」 「え、俺もかい? いいんだろうか?」 「ハーモに言えばなんとかなるでしょ。それに、大変な目に遭った探検家を放り出したらギルドの名が廃るってね」 「うーん……申し訳ない気もするけど、今はその厚意に甘えさせてもらおうか」 「そうそう。さ、行こっ!」 にしても、今日は流石にきつかったわ……明日はこんな事が無いように祈りたいわね。 それじゃ、しっかり疲れもとりたいし、ゆっくりご飯でも食べようか。 ---- 後書きのコーナーとなります。 個人的に感じてた始めての冒険についてのあれ? っと思ったところを弄ったらこんなハードな冒険に…orz 因みにアークの強さは基本的に探検隊シリーズと同様に駆け出しレベルですが、キーネについてはノーマルランクじゃおかしい強さでございます。ガブリアスを倒せる程度…うん、相当だ。 オリキャラであるガディについてはこれからちょこちょこ出てくる予定です。ちょこちょこっていうか…名前がある時点で出てくるフラグしか無いですが。 あまりネタバレしても後の展開に響きそうなのでこの辺りで。…次は早く書き上げられるといいなぁ…。 #pcomment