作:[[KOW]] *[[秘められしチカラ>魂-スピリッツ-#main1]] [#qc85123c] ---- CENTER:|≪|序幕|[[01>秘められしチカラ01]]|[[02>秘められしチカラ02]]|[[≫Next>秘められしチカラ01]]| ---- RIGHT:2010/11/14 LEFT:''序幕-プロローグ ― Prologue'' 雲一つ無い、吹き抜けるような青空。草木はまだ青々と茂っている。 季節は晩夏に迫った、ある昼の出来事。 その一瞬から、一筋の物語が流れだそうなどと誰が想像するだろうか。 そう、主人公である彼でさえも、知る由は無かったはずである。 「ん……」 弱々しい声を上げ、彼は目を覚ます。 まるでよく見かける寝起きの犬のようだ。 否、ここで犬という表現を使うのは失礼であろうか。 「ふぁ」 小さなあくびを一つ。特徴のある紅い瞳が湿る。 額、四肢の付け根などには黄色い輪の模様が付き、黒い体毛で覆われている。 ――ポケモン、ブラッキー。 種族が多種多様である中、ポケモン同士はいとも簡単に会話をこなす。ましてや、希少ではあるが人間とコミュニケーションをとる者も存在する。 犬ではなく、オウムの類を例に挙げるべきであったか。しかし、それでは鳥類を想像してしまう。 一概に形容し難いことが、ポケモンの特徴だと言えるだろう。 「おなかすいた……」 どうやらお腹を空かせているようである。彼――フロルクの紹介もここまでにしておこう。 #hr 「お」 一つの影が見えた。大きな木が立っている。 目を凝らすと、赤い実まで確認できる。何の実だろうか。 とにかく、おなかがすいている時にはちょうど良い。少し小走りになりながら近付く。 「……あれ?」 見たところ、こいつはかなり高いようだ。木の予想外の大きさに、思わず変な声を出してしまう。 僕の丈を二倍……いや、もっと高いはずだ。 ……僕はおなかがすいているんだ。高いところに逃げても無駄だぞ。 念じるままサイコキネシスを発動させる。 ――降りてこい。 「っ!」 まっすぐ落下する赤い実。ポテン、と乾いた音が響く。 相手は動かない。まったく。今の僕にとっては、これ以上のない獲物だ。 どんな物でも構わない。おなかはすいている。……導き出される答えは――。 「っ……!」 ――いただきます。 #hr 「……んっ、……ふぁ」 美味しかった。素直にそう思える。 「あら」 木をもう一度よく見てみる。 ――ない。 三割くらいが赤く染まっていたはずだが、見る限り緑のようだ。 僕が食べてしまった。そうとしか考えられない。……自覚は無いのだが。 「ふぁぁ……」 眠い。おなかいっぱいだ。思わずあくびが出てしまうほど。 ……思い起こしてみれば、僕は小さな違和感があることに気づく。 ここはどこだろう。僕は……フロルク。ブラッキーだ。 ――ん……? なぜ緑の上で眠っていた? 食べてしまった赤い実の名前は? ここは? ここは……どこなんだ? おかしい。何も、……分からない。 「僕は……」 何を必死に? おなかがすいていたから食べていただけだ。必死にならざるを得ないであろう。 ……違う。なんだか違う。どうして何も分からないのか、これが知りたい。 ――いや。 何を必死に……? ……さっきからおかしい。同じようなことばかりが頭に思い浮かんでしまう。 もう、どうでも良い。 そんなことさえ思える。 混乱する頭は眠気を訴えている。 ……眠ってしまおう。何も分からないのに詮索するのは、他でもない無駄なことだ。 そう思って目をつぶる。頬をなでる風が、少しだけ冷たかった。 #hr 世にも珍しく、噂にも耳にしない、摩訶不思議な出来事に遭遇することがある。彼の体験も、その内の一つとなり得るであろう。 さて、彼が目覚めたことは必然であったのだろうか。それとも……。 ---- CENTER:|≪|序幕|[[01>秘められしチカラ01]]|[[02>秘められしチカラ02]]|[[≫Next>秘められしチカラ01]]| ---- ''今幕の呟き'' ほぼ全面書き換え。 自分の文章に不安が出てきたのはここだけの話。 ---- 何かあればお気軽に #pcomment(below);