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神という名の「道具」 の変更点


作者:オレ
一応[[これ>八つの扉へ]]の関係作品だったりもします。



この作品に含まれている要素は&color(red,red){拘束、加虐、強姦(♀→♂)};です。












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&color(Green){ 僕の全身は痣に覆われ、あちこちから血が滲んでいる。&br; 鞭を振るう官憲たちは、それでも変わらない僕の答えに呆れ果てている。};

「責め方を変えてみましょうか?」

&color(Green){ そのうちの一人の女官憲が、冷たく艶かしい声で語る。&br; いるなどとても信じられないけど、嗜虐趣向を持つ人なら歓喜するのだろうか。&br; 僕には当然備わっていないから、こんなのは正直嫌だ。};

「何を考えているかは知らないが、考えを変えるほど強烈にやってやれ」
「いい顔ね、リーフィアの坊や? 男の子にこれは相当効くはずよ?」

&color(Green){ そんな僕の心情が顔に出てしまったらしい、目の前のブニャット官憲は口元を吊り上げる。&br; なんという加虐嗜好だろうか。&br;&br;「これでよく『神の使徒』とやらを名乗れるものですね」};

「まだ言う気ね? 遠慮は要らなさそうね」

&color(Green){ ブニャットは人種独自のらせん状に巻かれた長い尻尾を、僕におもむろに伸ばす。&br; どんな責めであれ苦しいのは間違いないだろうけど、屈する気は無い。&br; 無駄だろうがなんとでもしろとばかりに、僕は虚勢でにらみつける。&br; その瞬間だった。&br;&br;「ひぃあっ!」};

「いい声で鳴いてくれるわね、可愛い坊や?」

&color(Green){ ブニャットの尾の先端が、僕の内股をさする。&br; 今まで繰り返された痛痒に慣れた体だが、真反対の快楽的な感覚は予想だにしなかった。&br; 自慰なら何度もしたことはあるが、他人にこんな風に触られるのは初めてだ。&br; 快感という衝撃とそれに体が反応してしまった悔しさは、始めてに触れられた屈辱を増幅する。};

「ほらほら、もっと楽しませて?」

&color(Green){「くっ! この汚れ物っ!」&br;&br; ブニャットはこちらに尻を向け、尾をらせん状に戻して回転させる。&br; 痺れが腹の奥を突き、熱が頭の中を貫く。&br; 繰り返し繰り返し……。&br; 声を上げないなど無理!&br; だがおとなしく喘ぐわけには……!&br; この「汚れ物」の侮蔑の言葉を合わせるのは、せめてもの反撃だ!};

「『背信者(はいしんしゃ)』の分際で、神の門弟たる私たちを汚れ物扱いしていいと思って?」

&color(Green){「これのどこが神の門弟の行動……うあぁっ!」&br;&br; 思考が徐々に白濁し始めて、このままでは達すると思った。&br; 他人の手で迎える初めての絶頂をこんな形にする、その屈辱に抗ったのがいけなかった。&br; ブニャットは不意にその尻尾の螺旋を細めて、僕の体に刺激を送るのをやめる。&br; 僕の性を抑えていた力が不要となり、やり場を失い体の内側に流入する。};

「ずいぶんと物欲しげな目ね? 今度は同じ男の人に交代しようかしら?」
「まったく……。しかしどうやら望むものは望むか。結局はお前こそ汚れ物だな」

&color(Green){ 炎や鞭で僕の体を虐げてきたバシャーモ官憲は、ブニャットに失笑をしながら僕の前にしゃがむ。&br; まさか男の手でなど、屈辱にも程がある。&br; 何か抗うすべが欲しいのに、鉄の鎖で四肢を縛られては何もできない。&br;&br;「いあっ!」};

「この汚れ物。無様な姿だな?」

&color(Green){ やや両脚を開き気味に固定されているため、バシャーモの手はまっすぐに入ってくる。&br; 僕の欲望に張り出した一物は、バシャーモの手に包まれると全身に衝撃を伝える。&br; バシャーモの手はすぐに動かなかったが、掴まれている感覚は刻一刻僕を突き上げてくる。&br; 胴体も鋼のベルトで固定されて、この生殺しに押し寄せるものはさまざまに僕を破壊する。};

「無様な者には……これがお似合いだ!」

&color(Green){「いっ! ぎいぃー!」&br;&br; バシャーモは強烈な握力で僕の雄槍を圧迫し、同時に手から炎を発した。&br; まるで四肢を枷が思いっきり引っ張って、全身を引きちぎられたかのように。&br; たとえ元が炎の苦手な人種でなくても、断末魔の声は同じだろう。};

「無様な汚れ物である限り、涙はお似合いだな」

&color(Green){ がっくりとうなだれた僕の雄を解放し、バシャーモは立ち上がって冷徹に見下す。&br; 体の中に溜まったものは行き場が無いままで、代わりに瞳から流れ落ちるものが僕の惨めさを増す。&br;&br; 神の教えというものに異を唱えただけで、どうしてこんな目に遭わなければならないんだ?};



&color(Blue){「この時期の雨、嫌いじゃないですね」&br;&br; これから到来する夏に備えるために、神様はこの時期に雨を降らせてくださります。&br; 町の皆さんも用意しておいた水瓶を並べて、がんばって蓄えています。&br; シャワーズ人種である私にとっては、水というものを肌で感じられる時期です。&br; 外に出て雨にぬれると、私が水系統であることに喜びを感じます。};

「聖女様が見当たりません!」
「雨ですしまた抜け出したのでしょう! お探しせよ!」

&color(Blue){ 屋敷の皆さんには申し訳ないですが、私は神様が与えてくださったこの体を楽しみたいのです。&br; 楽しまなければ、それは神様に失礼であることは間違いないですからね。};

「婚礼を控えたこの時期に! ワッチェ様は!」
「万が一があっては……! 困ったお方です!」

&color(Blue){ 大丈夫です、この水にまぎれる体ならばいくらでも逃げられます。&br; だからこそこうしてあなた方から抜け出すこともできたのです。&br; それ以上に婚礼後の妻は、夫の許しなくば外に出てすらいけない厳しいお定めがあります。&br; なのでその前に楽しんでおかないといけないのです。&br; それでは、今日は西の森で遊ぶことにしましょう。&br; 川沿いの道を進むことにしましょうか。};



「ほらぁ、早く『これからは心を入れ替え、神様に尽くします』と言いなさいよ」

&color(Green){「ふざけるなぁっ!」&br; 明滅しつつある意識と視界の向こうで、ブニャットは相変わらず僕のものをなで回している。&br; しかしそこからはもう一つ別に、刺さるような痛みも伝わってくる。&br; 金属の器具で僕のものを圧迫して、行き場を奪っているからだ。&br; 付け根の辺りで開放のために暴れる精液は、他の関係ない場所にまで攻撃を加えている。};

「殺されないことに感謝すべきであろう! 神様はお前のような者ですら命を惜しむのだ!」

&color(Green){「そんなことを言う神は邪神だ! 自分は殺していないって言い訳だ!」&br; 昨日のバシャーモとは別の官憲の声。&br; 外から雨音が聞こえるし、いい加減交代したんだろうと想像はつく。&br; この状況ではとてもじゃないけど人種までは確認できないけど。};

「いつまで神様を冒涜する気だ!」

&color(Green){「ぃいぎゃあぁぁぁっ!」&br; 肉棒に刺さる激痛に、何度目かとも知れない悲鳴を上げる。&br; 涸れ果てつつある喉の奥から、どうしてこんなに声が出るのだろう。&br; こんな声はきっと断末魔でも出せないはず。};

「殺しはしないのだ、こいつを切り落とすくらい問題ないのではないか?」
「それは最後の手段ねぇ。楽しめ……一応神様の与えてくださったものですから」

&color(Green){ 明滅から回復した視界で、ブニャット官憲のほかにザングース官憲の姿を確認する。&br; 確認する意味は無いけど、他にやることが無いから。&br; そこから何か脳内に篭もるネタを見つけ出して、逃げ込みたいからだ。&br; とはいえ、ブニャットのあまりにも不穏当な台詞が頭から離れないのが恐ろしい。&br; こんな口の滑らせ方は間違いなく、漫画か何かでしかありえない。};

「確かに神様がこのような体に作った時点で、こいつの罰は決まったのだろうがな」
「もったいな……神様の作った体をそこまで変えるのもいかがなものですしぃ」

&color(Green){ 絶対にわざとだ。&br; わざと本性をさらけ出すことで、僕をどうするつもりなんだ?&br; ブニャットは僕のものを見てつばを飲み込んでいる。&br; このままだと耐え続けたら、こんなやつに僕は体を許してしまうということにならないか?&br; たとえ出られても、それでその先どうなるんだろう?&br; こんな状況……すがれるものがあるならすがりたい。};

&color(Blue){「こんな小屋……前は無かったはずですね?」};

「いいところ……じゃなくて、ちょっと! 誰?」

&color(Green){ この場に似合わない明るい声が聞こえてきた。&br; さっきまでの調子でわざと言葉を漏らした後、ブニャットは腹立たしげな表情でそちらを見やる。&br; もう一枚扉を隔てているから、まだその「すがれるもの」の姿は見えない。&br; でも、かなり無垢な感じの声だ。&br; ひょっとしたら「使える」かもしれない。};

&color(Blue){「え……?」&br; 扉を開けた瞬間、私のすべての思考が止まりました。&br; リーフィア人種の子供ですよね?&br; なのにらしくないほどにその……張り出させて?&br; え? その根元にはなんだか金属の輪が巻かれています。&br; 全身を鎖でがんじがらめにされて、これって何でしょう。};

「まったく、巡回は子供だと思って油断したか?」
「お馬鹿さん! このお方は聖女様よ?」

&color(Blue){ ブニャットとザングースはどちらも官憲の紋章を首に下げています。&br; 失笑をしていたザングースの表情は、ブニャットの説明で一瞬にして驚愕に染まりました。&br; そう、私はこの国の聖女。&br; 聖女とはこの国の最高位、教主の長女あるいは長男の妻のことです。&br; この国は神聖なる世襲を神様から任として受けています。&br; 長子が男であればそのまま教主に、女であればその夫が。&br; その教主になる私の夫を決めるのは、教主である私のお父様のお勤め。&br; 神様の特別な天啓が無い限り、お父様の決定が覆ることはありません。&br; 神様の天啓はあらゆるものの前に絶対なのです。&br; ただし天啓は「神様の奇跡」として通常越えられないような試練を課すのが普通です。&br; だから間違っても、私が婚礼前に男の方のこのような姿を見ることは無いわけで。&br; 私は……私はどうすればいいのでしょう?};

「聖女様! ワッチェ様!」

&color(Blue){「え? あ、はい」&br; ザングースの官憲さんが私の肩をゆすって、意識を呼び戻して下さいました。&br; 目の前の状況はあまりに信じられませんが、いい加減落ち着かないといけませんね。&br; 確か私は雨足に誘われて川沿いの道を散歩していたのでした。&br; そうして西の森の中まで道なりに入ってきたわけです。&br; でもそこで思いがけず見慣れない小屋を見つけて、興味のままに入ってみたのですが。};

「聖女様、どうしてこのような場所に? 誰も止めなかったのですか?」

&color(Blue){「は、はい。いつもよりは警備が堅いとは思いましたが、この体の私一人であれば問題ありません」&br; 雨の中であれば、水に溶けることができるシャワーズなら隠れることは容易です。&br; ましていつも閉じ込められて切ない私は、もっと厳しい警備から隠れるのにも慣れていますから。&br; 屋敷の皆さんがいつも追いかけてくるので、慣れたものです。};

「まったく。ここは『背信者』の処罰のための仮説施設です。聖女様の来る場所では……」

&color(Green){「人々を脅して横暴を振舞い、異を唱えたら聞く耳を持たない蛮族の頭目の娘か」&br; ブニャットが説明しながら聖女を外に案内しようとしたから、僕への警戒は一瞬緩んだ。&br; 狙ったとおりの瞬間にまっすぐ目線を向けて、この間に吟味した言葉を浴びせる。&br; 声の感じ以上に見た目は無垢な子供、それでありながら立場は「聖女」だ。&br; こいつの心に何か一つでも植えつけられれば、脱出の手助けにもなるかもしれない。 もし駄目だとしても、その時はそのとき。&br; そして聖女の反応は……予想通り上出来だ。};

&color(Blue){「誰が蛮族ですって? あなたたち『背信者』は神様の教えを冒涜し……!」};

&color(Green){「そういうところが蛮族なんだ。こうして叫んで殴って相手の言葉を聞かない。野蛮だね」&br; 見た感じ気品があるようでも、やっぱり子供だ。&br; いや、僕も見た目で幼く見られちゃうみたいだけど。&br; どちらにしても無法の存在と見られている僕から「野蛮」なんて言葉、聞き捨てならないよね。&br; 存在自体もさることながら、今はこんなものを晒しているくらいだし。&br; 当然聖女はブニャットの尻尾をすり抜けて、僕の前まで戻りながら怒鳴り始めた。};

「聖女様、このような『背信者』の流言は聞いてはいけません」

&color(Blue){「それでは野蛮と言われたままではありませんか! 聞きましょう!」&br; 神様の教えを冒涜して、人々の心を惑わせる。&br; その「背信者」がのうのうと私たちを「蛮族」扱いするなんて!&br; ならばその「野蛮」のゆえんを取り除いて差し上げましょう!};

&color(Green){「そもそも『宗教』を『神様の教え』って言うのがおかしいんだ。後で辞書で確認してね」&br; 苛立っているけど、まっすぐに僕の目を見ている。&br; どうやら聞く気はあるみたいだから、これはしてやったりだ。&br; 官憲たちは聖女の剣幕に圧されて動けないし、他の連中が来る前に片付けよう。};

&color(Blue){「辞書でも『宗教』は神様への信仰を説明していますよ?」};

&color(Green){「ところが『宗』と『教』に分解すると、どちらにも『神』の意味は存在しないんだ」&br; 金具で止められて流れられないのは、どうやら精液だけじゃないみたいだ。&br; 流れ込んだところで止められた血液は、循環が悪くて苦しんでいる。&br; 時間が経てば少しずつ腐っていく恐れもあるしね。&br; もちろん、こういう晒してしまう姿には情けなさを感じるのもある。&br; 他の人と多少考え方は違うかもしれないけど、その辺の恥はちゃんと持っている。};

&color(Green){「第一人者とか一家、家長が本来の『宗』だ。関係のない神が湧いているのはなぜだと思う?」};

&color(Blue){「それは……神様がお父様たち歴代の教主の方々を通して、私たちに教えを広げているからです」&br; 問題なく、特に混乱することなく答えられました。&br; 確かにこの者の言う通り、家に示すで「宗」になる文字の成り立ちくらいわかります。&br; このくらいで……このくらいで怯むものですか!};

&color(Green){「神の教えは合理的だ。しかも個々人だけでなく周りも逆らえないから、下手なことはできない」};

&color(Blue){「神様はいつも私たちを見てくださっています。脅し文句などではありません!」&br; これではまるで私たち教主以下聖職者が、神様を使って脅しているみたいではありませんか!&br; 私たちは神様の教えでこの国を守るため、人々を導いてきたのです。&br; そもそも人々の助けになる教えであるのに、何が問題だと思うのですか?};

&color(Green){「たとえ正しい道を示しても、脅しは脅しだ。あなたたちの神は、所詮脅しの『道具』に過ぎない」};

&color(Blue){「あなたは自分がどういうことを言っているかわかっているのですか?」};

&color(Green){ うん、態度を大きくして反論している。&br; でも床についた前足は震えて、こんなの虚勢もいいところだよね。&br; あるいはうすうす思い当たるところがあるんだろうけど、それを言う前にもう一つ。&br;&br;「脅された言いなりの者は、行動の結果相手がどうなるかを考えない。特に長期的視点をね」};

&color(Blue){「神様は私たちを導いてくださいます。私たちが考える必要なんて……!」&br; 怖い、怖い言葉です。&br; 神様がいないなんてことであれば、それでは私たちは何だというのでしょうか。&br; 死後に神様による魂の救済を信じてきたのに、死んだ先はただの闇の中だとでも言うのでしょうか?&br; 神様がいないなんてことであれば、理由を失った万物に人々は怯えるだけでしょう。};

&color(Green){「そのお導きの裏側で、聖職者の金権闘争や戦争のための兵士の徴用。現実は明らかだけど?」&br; そもそもが為政者の立場になるなら「考える必要が無い」など笑止千万だ。&br; 時間もなさそうだし、本心からの言葉でもない様子だから言っても仕方ないけどね。&br; 周りからの教えに洗脳されてきたのなら、この聖女もある意味被害者だろうね。&br; 知らないとは言っても別な被害者を出していたんだ、許す必要は当然無いけど。};

&color(Blue){「黙りなさい」};

&color(Green){「何かな? 僕の考えがおかしければいくらでも聞くよ」&br; もちろんあそこまで野蛮と批判した手前、僕も聞かないつもりは無い。&br; 間違っていればそれを知らないままでいるのは、今のこの醜態以上の恥だ。&br; とはいえこんな聖女の様子じゃ、どこまで実のある反論をしてくれるかはわからないけど。};

&color(Blue){「聖女という立場に生まれて結ばれる相手も選べないのに、脅しているのは私だと言うのですか!」&br; 外に出るにも屋敷の皆さんの目をすり抜けなければならず、後で叱責も受けなければならず。&br; 近く発表される婚儀も、会ったこともない得体の知れない相手なのです。&br; 神様の教えのために必死に耐えているというのに、私を悪だというのですか?};

&color(Green){「嫌なら変えられる方法を探せばいい。変えないのは、結局それでいいと思っているからだ」&br; そして自分だけがかわいそうだと思っているこの発言か。&br; 選べる立場にある人たちが、その選択の結果を得るために苦しんでいることを知らない。&br; 自分が選ぶために苦しまなくてもある程度のところを保証するため、周りが必死なのを知らない。&br; 間違いなくあなたは加害者だ、悪だ。&br; その周りから保証されるものが望むものと違うなら、自分でつかむしかないというのに。};

「ワッチェ様はこちらです! 早くお連れ戻し下さい!」

&color(Green){ 外から雨音に混じっていくつもの足音と、さっきのザングースの声が聞こえてきた。&br; 足音の数がかなり多いということは、多分この聖女を連れ戻しに来たんだろうね。&br; ワッチェというのはこの聖女の名前だろう。&br; 落ち込んで一言も発することができない状態だから、簡単に連れて行かれるだろうね。};

「ワッチェ様! この『背信者』の分際で! 何を言った?」

&color(Green){「さあね?」&br; ザングースに連れられて現れたグラエナは、放心状態の聖女の様子から僕に憎しみの目線を向ける。&br; 後で僕はどうなるかな?&br; でもまあ、これが決め手になって処刑されても、今更悔いは無い。&br; 僕の目的は「神」の教えによって、僕たち庶民に隷属を強いる輩をたたき出すことだからだ。&br; 本当は僕の手でやりたいことだけど、そんなところまで望んでも仕方ない。&br; 僕の考えがこの世で残っている限り、それは僕の「死」ではない。&br; 聖女の心の中で何かが変わったのであれば、迷いであれ何であれその形で生き続けられるからね。&br; うん、口に出したら誤解される言い回しだ。};

「ワッチェ様! こんな輩の言葉を気にする必要はありません! 行きましょう!」

&color(Blue){ どこからか私にかかってくる声がありますけど、私はもうどうにもなりません。&br; 誰もがうらやむ地位に生まれたと聞かされ、あらゆる嫌なものを拒めずに。&br; 誰が見ても、間違いなく私の姿は本当は無様なものです。&br; どれだけの高貴さを身にまとっても、このとび色の瞳の前には見透かされてしまいました。&br;生々しく本能の刃を晒しながら、それでも恥ずかしげもなく言われて反論できない私。&br; 私は、私は……。&br;&br;「いやぁぁぁあああっ!」};

「ワッチェ様!」

&color(Green){ 連れ戻そうとつかみかかるグラエナの前足や尻尾からすり抜けて、聖女は小屋の外へと飛び出した。&br; 泣き叫んで駆け出す姿は情けないけど、それでも生まれは聖女だからね。&br; 僕のような平凡な生まれとは違う、簡単に消せるような存在じゃない。&br; 後はあなたがどうするか……僕の役目はこれで終わったのだろう。&br; さあ、あとはなぶるなり殺すなり好きにしてもらおう。&br; 僕は満面の笑みで、残ったザングースとブニャットをにらみつける。};



&color(Blue){「う……」&br; 何故でしょうか、全身にきしむような痛みが走ります。&br; 起き上がるのも四足を動かすのも、目を開けることすら痛みで億劫になってしまいます。&br; でも、少なくとも目は開けなければなりません。&br; ここはどこでしょう、今の時刻は?&br;&br;「ここは……?」&br; 手が入ったやわらかさのある布団に、私の体は寝せられていました。&br; においから明らかに私のものでないことはわかります。&br; いったい何があったのか、周りにも目線を送ってみます。&br;&br;「本、たくさんありますね」&br; 首も動かすのが億劫だというのに、視界の端で早くも本棚が確認できました。&br; 見たことの無い、しかも分厚い本が隙間無く敷き詰められています。&br; 中にはこの辺では見ないような色のカバーで覆われているものもあります。&br; どう考えても明らかに私の部屋ではないですね。&br; 私はどうしてこのような場所にいるのでしょうか?&br;&br;「野蛮ですか」&br; ようやく戻ってきたのはあのリーフィアの言葉でした。&br; これだけは思い出したくなかったのに、夢だと信じたかったのに。&br; 全身は鎖につながれて、栗色の毛並みや緑の葉はぼろぼろに傷ついて。&br; 何より両脚の間からずっと突き立ったままだったあのおぞましい存在。&br; それでも最初の「野蛮」を、最後まで打ち消せなかった私と比べたらなどとは思いたくありません。&br;&br;「私は、結局良しとしていたのでしょうか?」&br; 私やお父様の後ろの権力の、神様の影を感じて頭を下げる人々。&br; お父様からの権力の証としての私を勝ち取るため、私が見ている前でも金権での争いを続ける人々。&br; あのような金権の争いは神様が禁止しているはずなのに、実際町の人々には禁止しているのに。&br; そうして金権の力で勝ち取られた存在は、私。&br; 私は、ただの権力の証となる道具でしょうか?&br;&br;「神様は道具、私も道具……」&br; 本棚の端に、見慣れたカバーの本が飛び込んできました。&br; あれは確か、私たちが常日頃使っている辞書だったはずです。&br; 周りには背表紙に見たことの無い文字が刻まれていたりするものもあります。&br; 見慣れた書籍も何冊もあります。&br; ですが何故でしょうか、私の興味は見慣れた中のその一冊にのみ向いています。&br;&br;「『後で確認して』とか、言ってましたね」&br; 再び思い出してしまいました。&br; 思い出さなくてもいい、むしろ思い出してはいけないくらいだとわかっているというのに。&br; 私は痛みをこらえ、立ち上がってしまっていました。&br; 心の中では必死にストップを叫んでいるというのに、体は全てを振り切って本棚に向かっています。&br; 本当の私は認めたくない現実を告げているのに、後足は立ち上がって辞書に顔を近づけています。&br;&br;「どうせ嘘に決まっています」&br; などという言葉は口先だけの虚勢でしかありません。&br; 自分ではわかっているはずなのに、口先で本を引っ張り出してしまっています。&br; つばがつかないか心配する方も多いですが、四足の人種は慣れたものなので大丈夫です。&br; 大丈夫かを今気にすべきは、突きつけられた現実です。&br;&br;「嘘で……あって欲しかったです」&br; この言葉がこぼれてようやく、私の体が心の望むように動かなかった理由がわかりました。&br; あのリーフィアの言葉に否定する要素を求めていたのです。&br; 調べれば簡単にわかる嘘をつくような方はいないと、心のどこかではわかっていたというのに。&br; 右の前足で本をたたくように閉じ、足を戻す勢いで辞書は脇に転がしておきます。&br; 神様なんて……神なんていないこの世で、何を気にしても仕方が無いのです!};

「何やつじゃ?」

&color(Blue){「きゃっ、きゃぁっ!」&br; 突然に本棚の陰からか上がった声。&br; 向こうも驚いていたのか、声のトーンがあまりにもすごくて。&br; 私も驚き飛びのいた瞬間、尻尾の中ほどから何かの鈍い音がしました。};

「と、失礼した。目を覚ましたようじゃの」

&color(Blue){「いっつ……」&br; 遅れて伝わってくる鈍い痛み。&br; 鷹揚なものに変わった年寄り口調が、立ち上がって近づいてくる音も聞こえます。&br; 敵意は無い様子ですが、それでもなんだか怖くなってしまいます。&br; 痛みをこらえつつ、ひとまず恐る恐るですが顔を上げてみます。};

「大事無いかの?」

&color(Blue){「は、はい。ありがとうございます」&br; 本当は今ぶつけた尻尾が痛むのですが、そちらは問題外だと思いました。&br; ひとまずお礼を言った瞬間、そのコジョンド人種の方は手で顔をこすり始めました。&br; どうやら先ほどの驚いたような声は、寝ているところだったからみたいです。&br; とはいえ助けてくださった方なのですから、感謝しなくてはいけません。&br; ……感謝、ですか。};

「なんだかうわごとを言っていたのだが、どうしたかの?」

&color(Blue){「私が何か言ったのでしょうか?」 人への感謝もまた、思い出せば神がするように言っていたことの一つです。 ありもしない神が押し付けたものなど、思わず言ってしまって悔しくなりました。};

「確か『騙されて生きていた』とか、相当じゃったの」

&color(Blue){「私はありもしない神を信じ込まされていたのです。当然です!」&br; コジョンドはお礼を言った瞬間の態度の急変ぶりに、当惑した様子です。&br; でも、私にはもう神なんかに従う理由などありませんから。&br; 遊び歩いていた辺りでは見ない顔ですから、このコジョンドも隠遁の「背信者」なのかもしれません。&br; そうであれば、あなたも神に従う必要など無いでしょう?};

「そなたがそのような態度を取るかどうかは、神とはまた別であろう?」

&color(Blue){「ずっとお父様たちから『神』がどうとか言われて、人への感謝を押し付けられてきたのにですか?」&br; 何の面白みも無い儀式に長々と参加させられて、行ける場所も決められて、挙句結ばれる相手まで。&br; あらゆる行動が制限されてきたんですから、ありもしないとわかった今なら抗ってもいいはずです!&br; 怒りをこめてコジョンドをにらむと、向こうは怒るでもなくまっすぐに見つめ返してきました。&br; 何故でしょうか、心の中を見透かされているような感じがします。};

「その『神』に言われただけの言葉で、それだけの感謝など失礼ではないか?」

&color(Blue){「それは……その通りですけどね」&br; 間違いなく、この方も「背信者」でしょうね。&br; にもかかわらず、あなたは「感謝」や「失礼」の言葉を口にするのですか。&br; あなたは「神」を信じないのに、どうして「感謝」するのでしょうか?};

「そもそも『神』など後付けであろう。嬉しいと思ったことを相手に伝える、それだけじゃろう」

&color(Blue){「でも、それならどうしてお父様たちは『神』などという言葉を使うのでしょう?」&br; そんな私の考えは、よほど顔に出ていたのでしょうね。&br; それらの問いを言葉にする前に、しっかりと答えてくださりました。&br; 相手の行動に対する嬉しさ、それを伝えるのは確かに大切なことでしょう。&br; あなたなら……あなたなら救ってくださるのではないでしょうか?&br; あの言葉からなにもわからなくなって苦しんだ、私のこの心を。};

「わからぬし、それはそなたが自分で考えるべきじゃ。ひとまず事の顛末を話すのじゃ」

&color(Blue){「は、はい……」&br; 自分で考えるべきかと言いながらも、私を助けてくれるつもりでしょうか?&br; そうでなければ私のことを聞く必要があるとは思えませんが、甘えすぎの感も出てきましたね。&br; 考えても仕方がないので、ひとまず私はことの顛末を話すことにしました。&br; 私は「聖女」の地位に生まれて、誰とも知れない婚約者がいること。&br; 最後と決めて遊ぶための外出をし、小屋の中に捕まっていた「背信者」のリーフィアと会ったこと。&br; そのリーフィアに神を否定されて放心状態となり、気付いたらここにいたこと……。&br; 一通り話したところで、コジョンドは納得の様子で頷き始めました。};

「そのリーフィアの『神』を『脅しの道具』と罵った言葉、少々足りない気がするがの」

&color(Blue){「足りない、ですか?」&br; お父様たちは自分の都合のいい国を作るため、間違いなく神を脅しの道具にしています。&br; それを否定する要素は何一つ見つかりませんでした。&br; だというのに、この方はあのリーフィアの言葉の何が足りないと言うのでしょうか?};

「今は脅しの道具でも、最初に作った者の心は違ったはずじゃ。その者と気持ちを共有するのじゃ」

&color(Blue){「最初に作った方、ですか?」&br; そうだとすると、恐らくは初代の教主でしょうか。&br; いえ、むしろ神の教えを最初に受けた「開祖様」かもしれませんね。&br; でも、その方々もお父様と同じ考えでいたのではないでしょうか?&br; そもそもがどうやってそんなことができるというのでしょう?};

「その者が真剣に考えていなければ、この国が長く続いたことが説明できぬのじゃ」

&color(Blue){「そういえば……」&br; この国は既に三百年もの歴史をつむいでいます。&br; 初代の教主様よりもさらに昔、開祖様の時代もあります。&br; そうだとすれば七百年。&br; 時に滅亡の危機をたどりながらも、結局は今も生き残っています。};

「その者の生きた時代や状況を思い浮かべるのじゃ。余にはあまり想像もつかぬがの」

&color(Blue){「時代や状況……ですか」&br; 開祖様は迫害や異民族の襲来を乗り越えた方と聞きます。&br; 初代の教主様は将兵を抱えて異教との戦いに打ち勝ったという話です。&br; いずれも付き従っている人たちと皆さんで団結して、なんとか生き残ったらしいですが……。&br; ひょっとすると、ひょっとすると?};

「どの道納得がいかないものがあるのであれば、そのリーフィアも早く救うべきじゃの」

&color(Blue){「あ、はい。ありがとうございました」&br; 一瞬思わず漏らした感謝の言葉ですが、今度は間違いなく嬉しい気持ちがあります。&br; この方との会話の中でなんとか答えが見つかった気がしますし、なによりも助けてくださいました。&br; 神に縛られることなく言ってみると、何故でしょうか気持ちにさらに嬉しさが芽生えてきます。&br; 私はコジョンドに手招きされるがままに、建物の外へと案内されました。&br; 本当に……本当にありがとうございます。};


&color(Green){「君はそんな言葉で僕をねじ伏せようとしたのかな?」};

&color(Blue){ リーフィアは先ほどまで鎖で縛られていた四肢を、今度はしっかりと地面についています。&br; 鎖を解いた私は、あのリーフィアを納得させようと話をしました。&br; にもかかわらず私の力不足、リーフィアは一つ一つ丁寧に論破してきました。};

&color(Green){「所詮聖女として甘えて育った身だからね。そんな頭じゃ生きる方法なんて限られてるよね」};

&color(Blue){ ぼろぼろの体だというのに、目には生気がみなぎっています。&br; たとえ他は満身創痍でも、ずっと押さえつけられていたあの勢いがありますから。&br; 説き伏せられると自信満々だったのに逆に追い詰められて、既に逃げ場はなくなりました。&br; 相性の差は歴然で、しかも小屋の中では雨に溶けることもできませんから。};

&color(Green){「聖女としての生まれがなかったら、君じゃ生きることすら叶わない。こうでもしなければね」};

&color(Blue){ そこの金具も既に外しており、勢いはまさに最高潮です。&br; 四肢の間から遠慮なしに顔をのぞかせる刃に、しかし私は恐怖を感じません。&br; リーフィアはこれからその巨根で、私を慰み者にしようとしているのにです。};

&color(Green){「君の価値、しっかり刻み付けてあげよう」};

&color(Blue){ いつの間にか仰向けになっていた私の上に、リーフィアは大股を開いてまたがっています。&br; リーフィアの男の人の持つ宿命が、私たちの胸の間から先端を見せています。};

&color(Green){「どうやら、嫌な様子ではないようだね?」};

&color(Blue){ それどころか、私は望んでいます。&br; 私はあなたを渇望しています。&br; どんな雨でも潤うことのない渇きは、どうやらあなたでなければ抑えられない……。};



&color(Blue){「いっつ!」&br; 私の目の前にいたはずのリーフィアは、今は巨木の幹に姿を変えていました。&br; 白昼夢。&br; 私はこのような妄想で、歩きながらに白昼夢を見てしまったのです。&br; そんな私を現実に連れ戻したのは、その場に鎮座して私の頭を受け止めた巨木でした。&br; 鈍い痛みと明滅が、私を徐々に正気に戻します。&br;&br;「どうして……?」&br; 雨だけでなく、風もだいぶ強くなってきています。&br; しかし本当にひどい嵐は、私の心の中にあります。&br; 小屋に入るなり見せ付けられた、あのリーフィアの凶刃。&br; それを私は望んでしまいました。&br; 雨を浴びている以上に、生暖かく湿ったここが何よりの証拠です。&br;&br;「私、まさかあなたを?」&br; いえ、そんな「まさか」ではなく「確実に」です。&br; 聖女という立場に生まれて、誰にも本当のことを言われずにいました。&br; 彼にはどんな目的があるにしても、私に本当のことを言ってくれました。&br; 彼にもっと本当のことを言って欲しい、彼に今までの私を全て破壊して欲しい。&br; そのためには彼に生きて欲しい、もちろん雄としてのも失わないで。&br; あのような拘束器具をつけられては、あなたの立派な証も時間で腐り落ちてしまいます。&br; あなたを助け出して、それから……。&br;&br;「まずはあなたの目的を聞かせてください」&br; 私もある程度の答えは見えました。&br; ただ、それをどこから話すかはあなたの目的次第です。&br; あなたの目的は、きっと汚いものではないはずです。&br; 私は彼を信じながら、小屋の中に誰もいないことを確認します。&br;&br;「いけそうですね」&br; 一応見張りの方はいますが、バシャーモ一人だけでした。&br; 私の捜索で駆り出されているから、この嵐で出歩けない方を選んだのでしょう。&br; 相性がいいので勝ち目はあります。&br; 私は一枚目の扉を、盛大な音を立てて開きました。};



「誰だ!」

&color(Green){ 盛大な扉の音に、僕は意識を現実に戻した。&br; ずっと冷徹に見下ろしていたバシャーモ官憲も、この音には驚いた様子だ。&br; 僕の雄の中で滞った血が悪くなり始めて、少しずつ色が変わりだしている。&br; それほどに時間が経ったのだから、誰かの助けを期待してもいいのかもしれない。&br; もちろん、ただの風ということも考えられる。&br; この小屋の造りの稚拙さから、全体すらも大きくきしんでいるからだ。};

「何者だ!」

&color(Green){ とはいえ、誰かが来るともわからない状況だ。&br; バシャーモは勢いよく扉だけ開いて、すぐには体を出さない。&br; 不意討ちを警戒してだろう。&br; 扉を開けて飛び出したところで、待ち構えた相手によって真っ二つなんてよくあることだからね。&br; 入ってきたのが雨風だけだったのを見ると、どうやらそれだけだろうけど。};

「ふむ、気のせいか」

&color(Green){ バシャーモは一瞬ためらいながら、外側の扉を閉めようと廊下に出た。&br; 苦手な水に濡れるのも、一瞬なら仕方がないと思ったのだろう。&br; 次が外からの侵入者だったら、何一つ隔てずに入ってくるだろうからね。};

「ぐがぁっ!」

&color(Green){ バシャーモが出た瞬間、猛烈な破裂音が響いた。&br; 続いて小屋全体をきしませる、水流音と衝撃。&br; ただでさえも嵐で危ないんだから、もう少し自重して欲しい。&br; 誰が来たにしても、今更これ以上状況が悪くなることなんてないけどね。&br; それにしても、もしかしたら来たのは……。};

「まだ無事のようですね?」

&color(Green){「やっぱり来たか」&br; 僕が生きている様子を見て、聖女は安心した様子だ。&br; 僕の「やっぱり」発言には一瞬たじろいだようだけど、その後は遠慮なくこちらに寄ってきた。&br; この……色が変わり始めた性器を晒しているというのに。};

&color(Blue){「後で、説明してください」&br; 生臭さで全てが閉ざされました。&br; 私が性器の根元に顔を近づけた瞬間、リーフィアはさすがにたじろいだ表情になりました。&br; 他の官憲たちに相当虐められたのか、私がそうしたのが意外だったのかはわかりません。&br; とにかく私は、彼の大事なそこを締め付けている器具を外しました。&br; 四足の種族が手の代わりにすることの多い口で。};

&color(Green){「ひ……っ! がっ!」};

&color(Blue){「出しちゃってください」&br; 一気に緩んだ拘束に、見る見るその部位の血色は良くなっていきます。&br; もともと栗色の毛並みに覆われているのですから、血色を見ることができる場所は限られています。&br; そんな変化を興味深く見ていると、緩んだ出口から精が漏れるのを耐える声が聞こえてきました。};

&color(Blue){「ほら、勿体ないですよ};」

&color(Green){「ひゃあああぁぁぁっ!」&br; その瞬間のやわらかい感触に、僕は何度目とも知れない悲鳴と血の涙を吹き出す。&br; 何日も留め置かれて猛り狂っていた精液と一緒に。&br; こんな舌のひと擦りで、なんてことだろうか。};

&color(Blue){「きゃっ!」&br; 私も思わず声を上げてしまいました。&br; 眉間から下は根元付近に入っていたので、そこには直撃しませんでした。&br; ひたいを中心に頭から背中まで、広範囲に絨毯爆撃を受けることになりましたが。&br; 雨に濡れてきたので心地良さのはありましたが、あなたにまみれるのも別な心地良さがあります。};

&color(Green){「うあ……っ! あ……っ!」&br; 日をまたぎ溜まった僕の体の中の欲望は、その瞬間に抜け出していった。&br; 視界は明滅して思考は麻痺し、あらゆる愉悦と屈辱が僕の精神を侵食する。&br; それが他者から与えられた初めてと、襲い掛かる数日の時間の破壊力なのだろう。&br; もう、いつ意識を失ってもおかしくなかった。&br; だというのに……。&br;&br;「っいぁぁぁーーー!」};

&color(Blue){「もう……一度」&br; 根元を数度舌で撫でてあげますと、また耳を引き裂くほどの悲鳴が上がります。&br; 足をばたつかせようとしているのに、鎖で縛られた四肢ではただ金属音を奏でるだけです。&br; 子供らしい容姿に似合う、可愛らしい姿を見せてください。&br; その子供にあるまじきものは、私の口の中にでもしまっていただきましょう。};

&color(Green){「うわぅあぁぁぁっ!」&br; その柔らかい弾力や温かさに加え、器用に動く舌先はあまりにも強力だった。&br; 突き崩される場所が一定せず、全身の感覚を徹底的に破壊する。&br; 数日にわたる拘束がまだ渦巻いているのだろうか、僕は二度目だというのに早かった。};

&color(Blue){「見た目はあどけなさが残っていますが、これだけの体になる年齢なのですね」};

&color(Green){「あ……っ、あぅ……」&br; 精液を全身で浴びて口元に垂らし、聖女には程遠い姿だ。&br; 婚礼を控えるというからにはある程度の年であろうが、それでも顔つき体つきは幼い。&br; 娼婦であれ少女であれ、とてもではないが聖女とは言えない。&br; 僕は恍惚としていたため、聖女が四肢の戒めを解くのに気付くことすら遅れていた。};

&color(Blue){「大体整いましたし、もう少しお話を聞かせてください」&br; リーフィアの拘束を解いた後、次はその器具でバシャーモを縛りました。&br; 万が一途中で意識を取り戻されたら、今度は連れて行かれかねません。&br; 申し訳ありませんが、少なくともバシャーモにはしばらく動かないでいただきます。};

&color(Green){「話……だって?」};

&color(Blue){「あなたの目的はどこにあったのでしょう? 神を捨てさせて自分を崇めさせるためですか?」&br; リーフィアは解放に気付くと、いそいそと床に四足を突いて立ち上がりました。&br; まさか今更それを晒す恥のわけがありませんから、ずっと同じ姿勢でつらかったのでしょう。&br; 足元はかなりふらついていますが、体を伸ばしてやや満足そうです。&br; 私を精液まみれにした直後とは思えません。};

&color(Green){「馬鹿を言わないでよ。僕があんな連中と取って代わる気を持つわけはない」};

&color(Blue){「でも皆さんをただ怯えさせるだけで、それでは彼らとそう変わらないのではないでしょうか?」&br; 敢えて嫌っている彼らと一緒にする、挑発的な態度を選ばせてもらいます。&br; 逃げ出すことさえなければ、お話も行為も欲しいままです。&br; 行為に関しては、あれほど出した直後のあなたには厳しいかもしれませんが。};

&color(Green){「彼らだって、話していけばおかしいと気付いてくれるはずだよ」&br; 僕の望む国は、誰もが自分で選ぶ権利を認められる国だ。&br; 国や教主が個々に考え方を押し付けたりすることなく、個々の意思で国作りに参加できる世界だ。&br; 僕の意思はそこに揺るぎはないわけで、なのに聖女の態度は前と違っている。&br; 自信にあふれたそんな態度は、間違いなく虚勢か何かではない。};

&color(Blue){「話を理解する力、彼らにあるでしょうか? 読み書きですら富裕者の証である状態なのに?」};

&color(Green){「それは……!」&br; 一言で十二分なほどに理解でき、呼吸も止まってしまったかのような感覚だった。&br; 聖女の言う通り、僕たちは学問は生業の傍らでしなければならなかった。&br; 読み書きですら満足にできる者が庶民には少ないくらいで、僕のようなのはまれだった。};

&color(Blue){「学問は読み書きの上にあるもので、それがない思考が皆さんのためになることでしょうか?」};

&color(Green){「それぞれの利己に走って、国は自壊してしまう。当たり前だったね」&br; 本当であれば、人々を道具に落とす洗脳などもってのほかだ。&br; でも今までしてなかったみんなに、それに必要だからと「学問を修めろ」など無理難題に等しい。&br; 道具であるはずの「神」によって人々が道具になるなど、本当は逆もいいところだろうけど。&br; 実際には、人々に「道具」にまでなってもらえないと守りきれない部分があったんだ。};

&color(Blue){「まして開祖から教主が何代にもわたる頃まで、血を吐くような追われる日々が続いていたのです」};

&color(Green){「その辺りは、細かい逸話でなければ僕も疑う気はない。今以上に厳しい時代……」&br; それは人々は神にでもすがるしかなく、為政者は神か何かを使って人々を洗脳する必要があり……。&br; とてもじゃないけどそれを「とんでもない」なんて言えない。&br; 僕は「神」と「宗教」を分けて、行動の寄る辺を神と分離すべきだと思っていた。&br; でも、時代錯誤もいいところだった。&br; そもそもそんな時代が来るかはわからないけど。};

&color(Blue){「私たちが生まれた今の時代でもこうなのです。いくらわめいても、それは変えられません」&br; 仮に学問を強制したとしても、今度は国を支える生産ができなくなります。&br; 皆さんの参加のためには学問が足りず、学問のためには国の基盤が足りません。&br; あなたの望む世界は、そこに至るだけの下地が必要なのです。};

&color(Green){「僕は大事なところを抜かして、自分だけの理想で人々を怯えさせていたのか」&br; 僕はあまりにも最低だ、最悪だ。&br; わからないものにはどういう危険が潜んでいるかわからない以上、その恐怖は僕とて同じだ。&br; ただし僕の場合は読み書きができるから恐怖も取り除けるけど、他の人はそれができない。&br; 恐怖の源を取り除けず泥沼に沈んでいくように……さっきまでの僕と同じ状況だ。};

&color(Blue){「でも、あなたの理想の世界を私は信じます」};

&color(Green){「……え?」&br; 一瞬、耳を疑った。&br; 聖女の表情が本気であるように見えて、目を疑った。&br; それでも否定できなかったので、最後に正気を疑った。&br; ちょっと待って欲しい。&br; たった今、絵空事と否定したはずだ。};

&color(Blue){「国が整って人々が学問を修め、意見や情報を交換できる方法が整えば、それを望むべきです」&br; 私だってそうなってほしいです。&br; この世界のままであれば、私の後の聖女も望まない相手と結ばれなければなりません。&br; あの醜い金権闘争を、いつまでも見ていなければなりません。&br; 望まなくては……ならないのです。};

&color(Green){「そんな世界が実現するって言うの?」};

&color(Blue){「何百年、千年かかるかもしれません。その時のためにあなたの教えを残しておく必要があります」&br; 今の私には間に合わないかもしれません。&br; 本当は私だってあなたと一緒になりたい。&br; でもそれが叶わないのだとすれば、せめて子供たちには同じ思いをして欲しくない。&br; あなたの教えを残して国の下地も整えていけば、いつかそんな悲しみは断ち切れます。};

&color(Green){「君もそこまで望まなければならないほど、神という名の『道具』に振り回されていたんだ……」&br; 聖女がこちらを見る瞳は、こみ上げてきたものに潤んでいる。&br; いくら体は潤んでも、あるいはそれでも治まらない渇望がそこにある。&br; 聖女は……ワッチェは僕を助けてくれた。&br; そこに至るまでに、僕から生きる上での本当の苦しみを教えられたからだというのに。};

&color(Blue){「いつまでもこうしてはいられません。あなたも私も、それぞれの戦いに向かいましょう」};

&color(Green){「その前に君も……ワッチェも『神』という道具を使ってみたら?」&br; 今度は、僕が助けなければならない。&br; ここまで無垢な可愛らしい顔を持つ君に、そんな表情はあまりにも似合わないとわかる。&br; 同時に、僕がワッチェに惹かれてしまったことも知った。&br; さっきまで憎悪しか抱いていなかった相手に、利用するだけ利用しようとした相手に。&br; 君には僕が名前を覚えていたのは意外みたいだけど、僕は愛したい君の名前を必死に思い出した。&br; 誰がどう呼んでいようと、君はもう僕の前では「聖女」なんかではない。&br; 次は僕の名前も呼んでくれるかな?&br; 僕の名前は――};



&color(Blue){「あの中で、あなたは燃えているのです」&br; 私はカーテンをめくって、あの小屋が激しく燃え上がっている様子を覗きました。&br; 彼はあの中で再び厳しく拘束され、周りに並べられた柴と共に焼き払われることになりました。&br; あらゆる脱出経路を奪ったため、彼があの中から逃げ出すのは不可能です。&br;&br;「そういうことにすれば、人々は信じますからね」&br; 言いながら私は、カーテンから前足を離してベッドに飛び込みます。&br; そして首に下げた宝玉を外して、表面を少しいじると……。};

&color(Green){「あとは明日の朝、君があそこに行けばいいんだよね」};

&color(Blue){「はい。あそこを探る振りをして、この球体に封じられたあなたを解放します」&br; 閃光と共に、私の愛しいあなたが現れました。&br; 正確に私の全てを見抜いてくる目線に、もう一つ親愛の情が加わっています。&br; 明日には「神様」の言葉である「天啓」により、婚約はあなたとのものに変わります。};

&color(Green){「『天啓』として僕を小屋ごと焼き払い、僕自身はこの機械で脱出する」&br; そして焼け跡を調べる振りをして、ワッチェが機械の中の僕をそこで解放する。&br; 逃げ場もみんなに監視させるから、生還した僕を見れば奇跡は完成する。&br; 一夜を過ごすここで出されるとは思わなかったけど、君は僕の姿を早く見たかったんだろうね。&br; そう思うと僕も嬉しい。};

&color(Green){「今でもこの機械の仕組みは理解できません。こんな機械を作り出せるなんて、思いませんでした」};

&color(Green){「まだ誰も知らない、僕の発明品だ。捕まるのが開発が上手くいってからで良かったよ」&br; 球体の表面にスイッチがあり、真っ二つに割れるように開く形だ。&br; その口が開くことで、僕たちのような生き物を出し入れできる機械だ。&br; 仕組みは一度説明したけど、ワッチェは理解するのがどうにも大変そうだった。&br; 生まれてこの方ずっと「神」の教えできていたんだ、仕方ないのかもしれない。};

&color(Blue){「ところでせっかく作ったこの機械に、名前はついているのですか?」};

&color(Green){「うん。『怪異なる力を秘めた球体』で、たとえば『モンスターボール』とかどうだろう?」&br; もちろん、今ワッチェに言われて慌てて考えた。&br; 今までは誰かに見せる前提はなかったから、まったく考えてなかったんだ。&br; ひとまず、ワッチェが納得の表情をしてくれて良かった。&br; ネーミングが悪いとか言われたら、この先必要になりそうだから大変だった。};

&color(Blue){「子供たちの名前も、あなたに任せて大丈夫ですね」&br; 付け焼刃で考えたのはわかりましたけど、でも悪くはありません。&br; 近い将来のことを考えて確認したのですが、これなら悪い結果にはならないはずです。&br; これなら安心して……安心して子供を作れます。&br; 早く欲しいので、私は早速あお向けになります。};

&color(Green){「そんなに急かさないでよ。まだ準備は……」};

&color(Blue){「十分です。帰りもずっとあなたのことを考えていたおかげで」&br; あお向けになると、私の大事なところが完全にあらわになります。&br; いつまでも成長しない胸も、あなたへの妄想で濡れたそこも。&br; さあ、早く突き破ってください。};

&color(Green){「仕方ない……仕方ないね」&br; などと言ってみるけど、こんなあられもない格好の女の子を見るのは初めてだ。&br; その生々しい場所に、僕の本能も一発で目覚めてしまった。&br; この前から結局二日間も処理できなくて、いい加減渦巻くものが溜まっている。&br; 誰が敵味方になるかわからない戦いに挑むんだ、将来戦力になる子供たちは早く欲しい……。&br; そんな建前もあるけど、僕としてもワッチェの奥深くまで知りたいんだ。&br; あの滑らかな肌は、僕の毛並みとは違う質感を楽しませたいみたいだ。&br; あの無駄な肉のない胸は、僕の密着を望んでいるみたいだ。&br; そしてあの……この辺にしよう。&br; 僕はワッチェの体をまたぎ、先端を入り口にあてがう。};

&color(Blue){「早く来て、アフィアン」&br; 私の声に呼ばれるままに、名前の主はゆっくり体を寄せてきた。&br; アフィアン……これからずっと、よろしくお願いします。};



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大会終わって遅くなりました。
まずは投稿におけるミス申し訳ありませんでした。
この作品は、当初は右端揃え等の書き方で書くつもりでいました。
しかし当該のプラグインは無い上にいずれにしても「視点の急変が忙しい」と指摘される始末でした。
途中で家の引越し等も重なり、作品としても駆け足になりすぎた感が残ってしまいました。
コメントで「深かった」とおっしゃってくださった方はありがとうございます。
次回はしっかりと見切りをつけて、落ち着いて書けるようにしたいと思います。
- コロコロと視点が変わるために読みづらかった印象があります。色分けによってそれを何とか緩和しようという努力は見えましたが、それでも少し見辛かったかな、と。

さて、このお話は中世で魔女狩りを行っていた時代をモチーフにしたのだと思われますが……神という存在に対しての考え方という重いテーマを扱っている以上、キャラの掘り下げをもっと深く行う必要があったように思えます。
文字数が足りなかったというべきでしょうか、心変わりが唐突過ぎて、官能にはいるシーンも唐突過ぎた印象を受けます。
現実の宗教と必ずしも同一ではないとはいえ、姦淫は大体重罪ですし。世間知らずなお嬢様気質の聖女であれば、それに対して妄想するだけでも罪と思ってもおかしくないはず。
展開のためにキャラの掘り下げ、もしくはキャラを犠牲にしてしまったかと。出来ればもっと文字数を多くしてでも、丁寧に心理を描写して欲しいと思えた作品でした。
あと、右端ぞろえは『RIGHT:』で出来たはずです。私の作品、テオナナカトルではたまに使っていましたので……
――[[リング]] &new{2012-04-13 (金) 22:10:12};
- 色分けや右端揃え等、小手先でごまかしたことからの結果であると思えてなりません。
魔女狩り等の時代を参照しているのは間違いありませんが、それを踏まえて「そういう時代もあった。その上で今を考えるとどうか」というのを描きたかったという部分があります。やはり気持ちを落ち着けて書くことが重要だと思い知りました。アドバイスありがとうございます。
――[[オレ]] &new{2012-04-16 (月) 20:52:40};

#comment

IP:122.25.224.163 TIME:"2012-11-03 (土) 21:44:14" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%A5%9E%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E5%90%8D%E3%81%AE%E3%80%8C%E9%81%93%E5%85%B7%E3%80%8D" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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