初めて投稿させていただきます、[[けん]]と申します。
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同性愛(BL)要素がございます。 閲覧ご注意お願いいたします。
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例年と比べると、非常に過ごしにくい夜の気温となっております。
こまめな水分の補給などをし、熱中症対策を万全に期してください。
ここは主人の部屋。
ベッドとパソコンと小さいテーブルが置いてあるだけの粗末な室内である。
夜だと言うのにこんなにも暑い。
つけっ放しのステレオラジオからは無機質なオンナの声が絶え間なく流れ続けている。
今は主人の扇風機を勝手に使用し、スイッチを強にしたところで何の意味もなさない。
ペットボトルを抱きかかえる形で横たえても、結局は意味がない。
こうなれば冷蔵庫から保冷材を引っ張り出して来ればいいのだろうが、主人はきっといい顔はしないだろう。
うだるような室内に、扇風機を我が物とする自分。
今はまだ一人だ。
頬から滴り落ちる汗の滴が、この夏の夜の暑さを物語っている。
もっと言えば、きっと自宅周辺が大きなコンクリートの建物で囲まれているからかもしれない。
未だにくすぶっている太陽の熱が、自身のあらゆるものをそぎ落としていく。
もう、なにもかんがえたくない。
シーツの上で大きく伸びをしながら、ただ扇風機の風を全身に浴びていたかった。
「お腹空いた」
隣のリビングから大きなあくびと声が聞こえる。
反射的に顔をしかめた。
そうだ、この家には自分以外にもう一人住民がいたのである。
すっかり忘れていて、思い出すのも嫌だったかもしれない。
扇風機を略奪されてしまいそうな、そんな恐れを抱きながらその言葉を無視する。
「もう、主人今日も残業かよ」
ドアが開けっ放しの主人の部屋に、彼はずかずかと入ってくる。
汗滲む彼もまた、涼しさと快適さを求めて自分の今の滑稽な姿をしげしげと眺める。
「ちょっと扇風機貸して」
「これは俺のだから」
ふざけるなと言いたそうな顔をして、彼は頬を膨らませる。
笑みを浮かべながら扇風機の風を独り占めする、自分の姿を見てさぞかし不快な思いをしただろう。
「お前ほんと昔から性格悪い」
「ほめ言葉ドーモ」
今にでも10万ボルトを放ってしまいそうなぐらいには不機嫌な彼を、どうすればいいのかはわかっていたはずだ。
涼しさを独り占めするのも可哀想であるから、少しだけ分け与えることにする。
熱帯夜のうだるような暑さに耐えながら、二人で主人を待つのもあまりに退屈。
「前主人の買ってきてくれたクマシュンアイスが食べたいな」
「また甘いものか、太るぞ」
「甘いものは別腹だ。好きなんだからいいだろ」
太ってしまったらせっかくのお前のすばやさが無駄になるぞ、と無駄口だけは叩きたくなる。
眉間にしわを寄せながら暑さを寄せる彼の前で、それはきっとお怒りの電撃が直撃してくるに違いない。
暑さで機嫌もよろしくないのだ、そっとしておくのが得策であろう。
「たまに思うんだ、お前甘いものあまり食べないよね」
「甘いものは苦手なんだ」
「人生損してるなぁお前」
「余計なお世話だ」
扇風機を囲んでたわいもない話に花を咲かせるのもどうかと。
でもこうすることしか今の自分たちにはできない。
やがてはへとへとに疲れて帰ってくる主人を待った。
うんざりするような熱帯夜にストレスだけを感じながら。
「ブラッキー、水風呂とかどうよ」
「頼む、自分が電気タイプだってことを学んでくれ」
ごめんと彼は小さく謝る。
サンダースはもちろん電気タイプで、自慢のすばやさで敵を翻弄する。
主人のお気に入りのポケモンの一匹で、一番長い付き合いだと自負している。
コンプレックスを抱えている自分とは違い、いつも真面目な物知らずなヤツ。
なんて意味のない他人の素性を考察するなんて趣味の悪いポケモンだと自分は。
「今日の昼間見たマリルリがさぁ、いい尻してて結構好みだった」
「アア、また女の話?」
「なんだかまぁえろいよな、久しぶりに興奮した」
そうだ、彼は主人に似て極度のメス好きであった。
飼い主にポケモンが似る話は幾度か聞いた覚えはあったが、実際に見たのは初めて。
ちなみに自分はあまり異性には興味がなかったため、いまいち彼の思考がわからなかった。
初心すぎるよねと言われても反論はできないが、そのような思いを抱いたこともなく。
年齢からすると自分も彼ももういわゆる成熟期。
牡と牝、それぞれ異性に興味を持ち始める時期。
それを謳歌するかのように、彼は牝の尻ばかりを追いかけている。
いや、きっとそれは自分があまりに鈍感なのかもしれない、自分の感覚なのだからなんとも言えないが。
「主人のバレないようにするのもなかなか大変でさ、興奮がなかなか収まらなくて」
顔を赤らめながら、自分と目を合わせないように彼は口を開く。
自分から言い出し始めるのかと少々呆れたが、正直な彼は仲間の自分によくこういう相談を持ち掛ける。
「だからと言って主人の本を汚すのは」
「わかってるよー! わかってるってば!」
オカズにしたくなっちゃうんだよ、と小声で漏らす仕草に自分は乾いた笑いを漏らす。
彼はきっとわかってないとは思うが、間違えなく彼は発情期。
主人もわかっててその場にそういう本を置きっぱなしにしているのは、なんともいじわるな性格。
子孫を残したい一心で刻まれた本能にはなかなか抗えない、面倒な性質。
正直で底抜けに真面目な彼にとって、この季節はどれだけ自分を苦しめることか。
そんな彼を少し痛い目に合わせたい自分は、きっとどこか性格が歪んでいる。
いや、きっと性癖も歪んでいるのだと悔しくなる。
牝のことを思い出すと途端にムラっとくるんだと言ったのは彼であった。
彼に「どうすればいいか教えてやる」と報じ、扇風機の風がほんのり当たるようにシーツの上に横たわらせる。
これから何をすればいいか、なんてことを思うのも野暮ったくなって。
「なあブラッキー、お前今日おかしいよ」
ぴりぴりと微弱な電気を流しながら、先ほどまでの元気の良さはどこへとやら。
己の欲に負けそうな気持ちを抑えて、自分の瞳を見つめようとする彼はどこか愛おしい。
おかしい、彼は雄なのに。
自分ももちろん雄なのに、こんなにも苛めたくなるのはきっとこの夏の暑さのせい。
「お互いに良くなればいい。後悔は後ですれば良いんだ」
「そういう問題じゃないだろ、雄同士でやることじゃないよ」
「収まりがつかないのはお互いだ、あきらめろ」
汗滲む彼の体を舐めると、彼はぴくりと耳を動かした。
小さく声を漏らしていたかもしれない。
彼の収まらなさそうな欲を、必死で理性で抑えているのが見ていて分かった。
火照った体を涼めるにはどうすることもできないシーツの上で自分は彼を優しく慰めようと徹する。
もう、何も考えることはなかった。
「も、もうやめよう、ごめんって」
震える声で彼は言う。
身体が触れ合うと同時に、彼のちくちくとした体毛が自分の体にもみっちりと押し当てられる。
問答無用で熱を持ったそれも押し当てられるから、ほのかに興奮を指し示す。
きっと、彼は欲求不満だったんだなと。
涙ぐんだ彼の顔を見てしまうと、どうも自分は興奮してしまうみたいで。
「勃った……」
彼は小さく、恥ずかしそうに声を漏らす。
体毛からはみ出たそれは限界まで張りつめていた。
恐らく、彼が一番嫌がっているそのものの姿。
完全に顔を紅潮とさせ、自分の顔を見ないように必死なその姿。
そそられるのは可逆したい欲にまみれた劣情か。
自分でもわからない得体のしれない性癖が露わになろうとしている。
不快だ、自分が不快だ。
牡を苛めてこんな気持ちになる自分が途端に嫌になって。
息を荒くしながら、涙ぐんだ目で天井を見つめていた。
それと同時にぴりぴりと彼から放たれる電流が自分の体にも伝ってくる。
きっと、理性で抑えるのに必死なのだ。
歯を食いしばりながら、ぴくぴく震えるそれを眺めるたびに彼を抱きしめたくなる。
いつから同性にこんな思いを抱くようになったのか、己に問いかけてもわからなかった。
ただ、この甘えるサンダースが愛おしかっただけである。
「ブラッキー、俺どうすれば」
「大丈夫だ、すぐに楽にしてやる」
言葉が終わると同時に、俺は彼のそれを踏むように刺激を施した。
甲高い声で鳴くと、彼は痛そうに呻き声を漏らす。
たまらない、えろいと口を舐めると、その肢で彼のそれをもっともっと刺激を施して。
触れるとぬるっと湿っているのはいささか嫌になったが、彼の上擦った表情と声を五感で感じるのが何よりも快感で。
ほどなくして彼は呻き、びくびくと体を震えさせた。
触れていたそれからはそこそこの子種が吐かされて、彼の腹へと降り立つ。
俺の体にも彼の体液が降りかかりはしたが、そこまで気にすることはなかった。
ただ、涙目で息を整える彼を見ていると別の思いを抱いてしまいそうでそれが怖かった。
今思えばこの気持ちは一体何だったのだろうか。
思い起こしてみても見当もつかない。
「この野郎」
クソッタレ、と言いたげな彼の昂った表情を眺めながら、汗まみれになった体を毛づくろいする。
汚れてしまった目の前の彼をなおざりにしてしまう。
それはきっと、自分が彼にしてしまったことへの罪悪感か現実逃避か。
火照った己の体を顧みず、これは違うんだと己の性癖から遠ざけるように彼もまた遠ざけるしかできなかった。
きっと、自分はどうしようもないポケモンなんだろうと言い聞かせる。
「こんなこと二度としないでくれ」
彼は強く言った。
先ほどまでの放蕩しきった己の姿に後悔していただろうか、少し寂しげな顔。
醜態を晒してしまった恥じらいを捨てきれず、サンダースは自分に言い放つ。
ごめんとも言えず、言葉を失った自分は顔を下げるしかできない。
「あくまで仲間なんだから…」
語尾を濁しながら、彼は言う。
少なくとも、理性が舞い戻った彼にとって先ほどまでの行為はきっと自分自身が許せないだろう。
ひどいことをしてしまった、と後悔してからではやはり遅かったのだった。
「ひどいこと言ってごめん。ブラッキーは悪くないのに」
そういって、彼はリビングのほうへとまた戻ってしまった。
謝るのは俺のほうなのに、とも言えず彼が先に謝ってしまう。
何も言えぬまま、扇風機の静かな風を体に浴びる。
一気に寂しくなった室内は、先ほどまでの暑さなんて微塵も感じられない。
歯止めの利かない思いはどう吐けばいいか、俺にはわからなかった。
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誤字脱字などありましたらこちらへ。
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